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  • エピローグ 汲み上げられた水

vipac @Wiki

エピローグ 汲み上げられた水

最終更新:2006年08月07日 18:19

匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集

 ジャンヌが持つ機械としての基本構造であるブロック式のおかげで爆発は広がらずに、内部にまだ残ったままの核にも衝撃を与えること無く「Leviathan-R」は肉を支える意思を無くして落下が始めた。
 今まで持っていた前方へのエネルギーと吹き上げる爆発の後押しを受けて、高速で前進しながら落下。ハンドレールガンを構えたままでいるファシネイターを通り越して、その遥か背後に広がる砂漠に着地、砂を薙ぎ散らして、そのまま何kmも滑って砂漠の街の半分を均してやがて止まる。
 街の広場とつい先日までは活気があふれ返っていた、今は無人の市場は巨大な機体によって例外無く平坦にされてしまう。均されなかった街の半分も、薙ぎ散らされた砂の津波に押し流されてただの廃墟と化してしまった。
 それでも、街一番の高所である高台だけは我関せずと言った様子でただ空を見上げて黙りこくっている。
 高台はこの砂漠のど真ん中に存在し、この砂漠の中で最も空に近い。そこにあれば何時でも空を見上げる事が出来るはずだ。
 青い火を噴きながら着地したカラスとその中にいるノブレス。そして遥か遠くでエンストを起こしたトラックに乗っているシーラだけがその様子を見ていて、ファシネイターは見ていなかった。
 ジナイーダにとってはそんなことはどうでもいいことだ。失ったものに対するそれ相応の悲しみを正面から受け、涙を流さないはずは無かった。

               *

 あれからピッタリ一ヶ月がたった。重苦しい混沌を撒き散らした核の炎の脅威も過去のものとなり、砂漠の中心には一ヶ月前と変わらず高台があって、その頂上ではスコップを持った女性が立っている。
 女性は眼下に広がる発展途上の街には目もくれない。とてもやさしい表情をし、小さい風になびくスカートを片手で押さえて空を見上げるその女性は、一ヶ月前から比べるとちょっとばかり長くなった髪を振り払ってから空を見上げる。
 女性は鳥だった自分を捨てていくために今日この場所を訪れて、今両手で重そうにスコップを持ち上げる。鈍い鉄の色がやさしい太陽の光を反射して輝いた。


 砂漠の中心には街がある。一度メチャメチャにされてしまい、電波配信の地図上から姿を消してしまったはずだったが、本日この日に地図の上にまた現れることになる。
 ノブレスとシーラはその街の安い喫茶店の窓際の、以前より更に安物の椅子に腰掛けて安いテーブルを挟んでエドと向き合っている。
 シーラは相変わらず電卓とのにらめっこに夢中で、ノブレスは気が抜けたようにへらへら笑いながら、ガラス窓の向こう側で力仕事に精を出す酒屋の看板娘を眺めていた。主にスカート下辺り、見えないぐらいが丁度いい。
 シーラはノブレスの様子に気付くと、ノブレスの耳を力いっぱい引っ張ってから猛獣のように牙を剥き出して凄む。ノブレスは首を振って最大限の抗議をするがもう遅い、死刑執行五秒前。
 助け舟は必要だろうと思えた。
「あー、ノブレスもそんな悪気……はあるな。ともかく話が進まんから後にしてくれ」
 言ってエドは古臭い電卓を叩いて数字をたたき出していく。コア、腕、頭、脚、弾薬とメンテナンス用のパーツ。自分が妥当と思う値段をたたき出して数字を足していく。
 カタカタと軽い音が耳に心地よく、窓の外から降りしきる日光が気持ちをぬるま湯に浸してくれる。
 ゼロの数が数だけに計算にはやけに時間がかかる。その間にシーラはまたも凄んで、電卓は机の上に置き去りにしてノブレスに掴み掛かる。
 第三者の目から見ればノブレス達のやっている事は痴話喧嘩と全く変わりないし、エドにだってそのように見える。微笑ましいものだ。ウェイトレスがお盆を胸に抱えて実に楽しそうに笑っていて、近くの席に座っている男が暑そうに手で顔を扇ぐ。
 電卓を叩き終えて、エドは笑いをこらえながらノブレス達に見えるように電卓を差し出した。
「これぐらいの値段でどうだ?」 
 シーラはノブレスの口の両端を引っ張る手をそのままに首だけを電卓に向けて、ノブレスは電卓に目もやらずに言葉にならない言葉を漏らしてシーラに抗議する。
 シーラが電卓の数字に顔をしかめて、
「ちょっと安すぎるんじゃない?」
 ノブレスの顔にサーっと青筋が落ちて来て、エドは耳をほじくった。サイフのヒモがヒモ定数0(堅結びの事。ヒモ定数はMITで研究中)のシーラの発言には思えない。
 その通常起こりえない事が起こるほどの異常事態は電卓の数字から起こっている。
 一ヶ月前、アライアンスの事実上の消滅により仕事を失った技術者達は、新たにミラージュ・キサラギ・クレストの三社を自分達の手で創立しなおした。
 アライアンスによる独裁統治は無くなり、三つの会社による民主的を建前にした分轄統治が行われることとなる。
 その体制の整理はまだやっている途中。今はまだアライアンスの名前を抹消されただけで「リメイン」という名の組織が緊急的に成立し、特例による特別処置として残っていたパーツを放出した。
 その放出パーツの値段はいくらか以前よりも安く設定されていたが、いかんせん使用者であるレイヴン、または新たにレイヴンを名乗ろうと言う人間の少なさからパーツのニーズと放出量は明らかにかみ合っていなかった。
 そのせいでパーツを仕入れる店は少なく、リメインが広告費用をケチったこともあり、パーツの値段引き下げはほとんど知られていない。
 そしてまた、知られていない所為でパーツの在庫は一向に掃けずに更に値段は下がって、おそらくは企業に送りつけられてリサイクル用の部品になるであろう。
 そこに目をつけたのが情報屋のエドだった。エドは知られていない情報を耳に収め、口を縛ってありったけの金で安くなったパーツを買い占めた。
 現在の状態ではまだ赤字のままだが、エドの予想によればこれからレイヴンになろうという者は絶対にたくさん出て来るはずだ。
 潜在的な願望に加え、今回世界を救ったのはレイヴンである。傭兵に焦がれる者も倍増するというものだろう。
 そういう奴らに正規の値段よりも安く、買い取った値段よりも高くパーツを売りさばけば儲けも天文学的。
 そんな事情があってエドがノブレス達に提示したパーツの値段は正規の半額、五割引、五十%オフ。一ヶ月前の取引からすればゼロの数が二つも違う。
 驚くのも当たり前の金額だった。「安売りの話」を知らない人間からすればエドは正気とは思えないはずだ。
 ノブレスは今更ながらに電卓を除いて目を点にしている。直後に妙に真剣な表情になってボソリと。
「お前いくら入院するの嫌でもちょっと安すぎるぞ、人生考え直せ」
 対してエドは愛想笑いを顔一杯に浮かべて手を振る。
「いやいや、これは救世主サマへの大特価だかんな、今ここにこうしているのもあんたのおかげってワケだ」
 エドは内心でニシシとほくそえむ。これでもまだ儲けが出ているのだから、驚いているシーラの顔が面白くてたまらない。
 その言い方にシーラが不信感を煽られて、眉を更に深く八の字にする。
「なんかたくらんでんじゃないでしょうねぇ」
 上着の内ポケットに隠している拳銃が見え隠れするが、それほどの企みも少々のやましさも持っていないエドはニヤニヤ笑うのみである。
 シーラがエドを睨みつける。じっくりねっとりと見つめてくる瞳からエドは目が離せない。離したら殺される。
 シーラは笑っているエドの目を見据えてその向こう側でも見えないものかと目を凝らす。二秒も見つめたが、にごった目には半笑いしか見えない。
「トイレ」
 ガタンと椅子を鳴らして立ち上がり、ズンズンとトイレに向かって歩いていく。どうにもエドの態度が不可解でいるらしく、眉は八の字のままで化粧室の扉を蹴り開けて姿を消す。
 エドはシーラがドイレに消えるまで歩いている間中ずっと瞳で追いかけて、扉が閉まってからやっと肩で息をする。
 問い詰められるというのは結構つらい。これまで幾度も尋問されつつ情報を一度もばらした事の無いエドですらちょっとやばかったのではないかと思った。
 ノブレスはシーラからはすぐに目を離して所在の無い瞳を窓の向こうに向ける。
 さっきまで酒屋の娘の尻を追いかけていた瞳は歩いている氷屋のボウズとまだまだ出来損ないの市場の間を行ったりきたりする。
 建物の欠片も残さずに滅んだ街がたったの一ヶ月で復興する。通常ありえない話だった。
 話に聞いただけならばノブレスも信じないが、この目で見てみると信じないわけにはいかなかった。
 街の中心になる高台を中心に同心円状に街が広がっていく。第二のへそとなる市場はほとんど復興され、居住区にはもう居住用の家屋が百は出来上がっていた。
 鳥と蝶が骨を休めるために喫茶店の屋根に止まり、酒屋の屋根では風見鶏が踊っている。人通りも以前ほどとは言えないが、かなり多い。
 柔らかい日差しのしたではしゃぐ子供とその手を引く男親、少し遅れて女親が後についていく。クソ暑いのに妙に糊の利いた暑苦しい格好をした男が重そうなケースを抱えて市場を走っていく。電波配信された地図がプリントアウトされた紙をそこらじゅうにばら撒いて走っていく男がいる。
 一ヶ月前にただの砂漠と化した場所にある光景とは思えなかった。人の波は一度引きながらもすぐに砂の海に押し寄せる。自然の事情などお構い無しに街を作っていくその様子は、驚くほど自然なように思えた。
 燃料不足でクーラーをケチった喫茶店内は思った以上に蒸す。ほほを一筋だけ汗が伝った時、エドが声をあげた。
「なあ」
「あ?」
 ノブレスは手元のアイスコーヒーをストローで啜って、目だけをエドにやる。エドは身を乗り出して、依頼された仕事の達成にかかる。
「今度さ、リメインがレイヴンの仕事斡旋もすることにしたんだ。『リメインズレイヴンズ』って名前にしてな。それで企業の分轄政治の上に立って意見のまとめなんかもやることになる」
 「Remains Ravens」つまりは「残されるワタリガラスたち」。砂漠に残されたレイヴンたちにはまあまあな名前だろう。
 分割統治の更に上の組織。意見の総まとめ役をすることになるその組織にはしかし中核となる人物がいない。新しく集団を作り上げるとなれば、カリスマ的なものがあるとよい。
 そのカリスマの器にノブレスには納まってもらいたい、そういう依頼をエドはミラージュから受けていた。
「それでお前にその組織の中核メンバーになってもらいたい。組織としての体裁は整えるし、そうなれば援助も出来る。何なら名前を貸してくれるだけでもいい」
 中核メンバーになったところで損は無い。ノブレス自身が了承するだけでノブレスには無償の支援が届く事になるし、仕事も手に入れやすくなるはずだ。
 しかし、
「止めとく」
「なんで?」 
 ノブレスにはそれは大した利益には見えなかったし、もし生きていればエヴァンジェにもリムファイヤーにもジャウザーにも利益は見えないだろう。
 気に入らない事だってある。名義を欲しがっているという事は、名前そのものの使用権が欲しいという事だしそれに、
「俺はあんまり偉くなりたくない」
 エドがハトに豆鉄砲食らったような顔をして、それを見てノブレスは微笑んだ。
 用を足して帰ってきたシーラがハンカチを手に怪訝な顔をしている。


 汗を拭う。明るすぎる太陽が高台の上を焼く。その上にいた女も一緒に焼く、焼く、焼く。
 それでも女は止まらずにでかいスコップを掲げてひたすらに穴を掘り進む。


 ノブレスが扉のベルを鳴らした時には昼の二時を回っていた。元レイヴンの女との待ち合わせの場所は高台。今すぐ行ってもいいのだがノブレスには用事があったし、シーラもスコップと墓代わりの十字架をトラックまで取りに行かなければならない。
 そういうわけでノブレスはフラフラと市場へと姿を消して、シーラは街の東口に置いたままのトラックまでのんびりと歩く。
 全財産も何もかもがほとんど予備ガレージに置きっぱなしで、トラックにはほとんど何も積まれていない。エドとの取引は最終的に呼びガレージに呼び出して行うことになって、今のシーラは手ぶらのまま街の高台周辺広場をぶらぶら歩いている。
 手を後ろで組んで、太陽を見上げれば暖かい日差しが柔らかく降り注いでいるのが見える。直視できないほどに強く鋭い光のはずなのにどこかやさしい慈悲の光。
 抜けるような青空と頬をなでるわずかな風。肩にぶら下げた小型の携帯ラジオの電源は入れっぱなし。
 ずいぶんとゆったりした、午後の泥のように生暖かく安心する音楽が垂れ流しになっていて、それを通す安っぽいスピーカーが独特の感触を作り上げている。
 広場の真ん中には噴水が立っていて、同心円状にわずかに木造ベンチがおいてある。そのわずかなベンチの上では徘徊老人が杖を突いて舟を漕いでおり、タコのように禿げ上がっていて、ジーパンとタンクトップと着たオヤジが座っている。
 オヤジは一升瓶をまるでひょうたんかなにかのように軽々しく傾けて一気に酒を煽る。顔がほんのりと赤く染まっていた。
 シーラはそのオヤジに見覚えがある。一ヶ月前ノブレスに絡んだハゲ野朗だ。二発も蹴ってやったらすぐ逃げ出したが、その後に高台でもすれ違った。
「よおぉ、オペレーターの姉ちゃんじゃねえか」
 声もかけずに立ち去ろうとしたシーラはオヤジの声にビビッて足を止める。振り返る。出来るだけにこやかに、できるだけさわやかに、風のように吹き抜けよう。酔っ払いの相手はしたくない。
「えーあー、うー、おひさしぶりですねえ」
 特にさしたる接点も無いせいで挨拶からずっこけた。酔っ払いの事だから変に絡まれるんじゃないかと思えてまだちょっとビビっている。
「ノブレスのあんちゃんは元気かあ? もうけさせてくれてありがとよぉ」
 ここで立ち止まる。絡んできた酔っ払いを蹴飛ばしただけのシーラには不可解な言動だった。
 そもそもノブレスと一緒にいたことがばれてるはずは無かったし、一緒にいたのがノブレスとばれてるはずも無かった。ノブレスはこのタコオヤジと高台で何か話していたらしいが、ノブレスが自分の正体をばらすような事をするとも思えなかった。
 長いベンチの端には徘徊老人、真ん中にはガタイのでかいハゲ、ベンチはもう一人分しか空いていない。シーラとしてはオヤジと出来るだけ距離を取りたかったがそれは出来なさそうだった。
「ここあいてるぞぉここ!」
 タコはムダにデカイ声でがなる様に声を張り上げる。シーラの腹のそこでマグマが煮えた。
 ベンチの空席に腰掛けて、笑顔を装う。大人一人分の空きは小柄なシーラにはちょっと大きすぎて、その分だけハゲと距離をとる。それと聞かなきゃならん事はさっさと聞いてしまえ。 
「何で私がノブレスのオペレーターだと思ったんですか?」
「オペレーターじゃないのか?」
「……いえ、そりゃあまあそうなんですけども」
 話が通じるようには思えなかった。双方とも頭の中で微妙な思い違いがあるようで、そのことについては話が噛み合わないのだろうと見える。
 シーラには特に離す事も見当たらずにベンチにもたれかかって空を見上げる。このクソ暑い砂漠のそのまたど真ん中にある噴水には多くの若者が集って、服も脱がずに水浴びを楽しんでいる。
 視界の端にその様子を捉えたシーラは一瞬その中に突っ込んで生きたいような衝動に駆られたが、それも一瞬、理性が欲望をあっさり律する。
 はしたない事をしてはならない。すけた服をどこの誰とも知らん奴に見られるのは嫌だったし、それをなんとも思わないようになるのも嫌だった。
 ハゲは一升瓶の中の酒をかっくらってスケールのでかいげっぷをした。オリンピック級にでかい。宇宙規模ではしたない。
 そしてベンチの前を横切る影があった。
 影は男で、男は紙の束を手に持っていた。その紙の束を盛大に周囲にばら撒きながら風のように走っていく。
「ごうがいーごうがいー」
 叫ぶ男がばら撒いた紙をシーラは一枚だけ拾い上げて、そのまま見つめた。
 号外というほどのものではない。ただ地図が書かれてるだけだ。
 砂漠周辺のほとんど真っ白の地図。元アライアンスの本部がある辺りまでしかフォローされていない地図の中心近くにはジャンヌの残骸が描かれていた。
 それを確かめるように、シーラが東の空を見上げると、距離があっても嫌に目立つ赤い塔があった。青と黄色にはさまれた、血のような赤は目立たないはずが無い。
 もう一回地図に顔を落とすと、ど真ん中に小さい点が打ってあるのに気がついた。ハゲがそれを横から覗き込んで、シーラは鬱陶しそうに地図をハゲの方にやる。
 ハゲがニカッと笑って言う。
「お前この町の名前なんていうか知ってるか?」
 何を言っているのかシーラには掴みかねる。この街には名前が無い。
 それはこの街がキャラバンの休憩場として自然発生したものだからで、だからこそ名前が無い。
 ええと、とつぶやくシーラが持つチラシの真ん中の点のちょっと左、見辛い黒字で小さく書いてある。
 「Well」


 市場の店の並びは一ヶ月前とちっとも変わらなくて、そのおかげで目的の店はずいぶんと探しやすかった。
 広げられたシートとテントの間を縫って市場を歩き、一ヶ月前に案内されたとおりに歩き回る。
 案内された順に店に挨拶して、その最後に木彫りを売っている店を訪れた。
 ポケットに突っ込んだ左手を出さずに右手だけを掲げて一ヶ月ぶりにやせっぽちのターバンに挨拶した時には日はもう傾き始めていた。
「久しぶりー、頼んだ奴出来てる?」
「おお、トモダチ、当然出来てるヨ」
 シートの上に並べられた品の数々は依然と変わりなくそこにある。違うといえば、あの異様な存在感を持つワシが三体も店先に並んでいる。
 そのトリオが存在感のほとんどを食ってしまっている所為で、ほとんどの木彫りはしょげてしまっているようにも見える。
 ガリは店の顔のようにえばりきった三つのワシを引っつかんでノブレスに差し出す。
 ノブレスは屈んで、数枚の硬貨と引き換えにワシを受け取り、そうした直後にガリは品物をおいたシーツを畳み始めた。
「どうしたんだ?」
 せっせと大きい風呂敷をまとめるガリは顔をもたげて
「今日はもう店じまいよ」
 なんでまた、とつぶやいたノブレスが立ち上がって見つめた通りの向こうに、沢山の薪を持ったデブとノッポが歩いている。


 午後五時を過ぎた頃にシーラが二本のスコップと四つの十字架を重そうにかついで高台を登りきった。
 高台の一番景色のいいところでは既にスカートを履いて髪もちょっとだけ伸ばし、すっかり女らしくなったジナイーダが一人でエンヤコラとスコップを懸命に振るっている。
 堅くなった土を渾身の力で砕いて、掘り上げた土を後ろに放り上げる。そうして出来た穴が二つだけあって、それはもう半分もの数。
 シーラは慌てて、スコップを一本放り出してジナイーダに向かって走り出す。
 ジナイーダの肩を叩き、「久しぶり」と嬉しそうに声をかわしてから十字架を放り出し、スコップを地面に突き立てた。
 土は固く、なかなか掘り上げられない。
 高台は大昔にあったグレートなんたらとかいうでっかい一枚岩というわけではない。土台になった岩の上に湿った土が覆いかぶさって、それが野ざらしにされて乾燥する事で堅くなる。
 砂漠の真ん中で何がどうして乾燥したのかは知らないが、そのおかげでこの景観のよい丘の上に魂を祭る事が出来る。
 深く深く。さした十字架が決して抜けないように深く掘る。
 夕方も過ぎて温度も低くなって、それでも暑い事に変わりは無く、ジナイーダとシーラの頬と額を伝う汗は消える事が無かった。
 赤い空をバックにしてひたすら無言でスコップを地面に突き立てる。突き立てたスコップを足で押し込んで、柄に体重をかけててこの原理で一気に掘り起こす。
 太陽が西の山のすぐ傍まで傾いて、空に一番星が輝き始めた頃にはさすがにシーラもへばり始めて
「ノブレスどこで道草食ってんのよー」
 愚痴を漏らしたが、返事はどこからも帰ってこない。返事を唯一することの出来るジナイーダはしゃべるだけの酸素ももったいないという風で、ただ一点だけを見つめて穴を掘り続けていた。
 ジナイーダはシーラと違って朝からずーッと穴堀をしているというのに、すぐにはへばりそうには見えない。同じ女性なのにこうも差が出ると、シーラだってあきれてしまう。
「元レイヴンは体のつくりでも違うのかしらね」
 小声でつぶやいた頃にジナイーダが四つ目の穴を掘りきった。
 ジナイーダは一旦スコップを放り出し、落ちていた十字架の一つ、「若き猟犬ここに眠る」と彫られた十字架を拾って、穴の底に突き立てる。
 そうそう深い穴ではなく、当然十字架の下の部分しか埋まらない。そうでなくてはいけない。今ジナイーダが作ろうとしているのは墓なのだから。
「シーラ、これ支えてくれない?」
 ボーっとしていたシーラは突然声をかけられてびっくりして、取り落としたスコップを拾いなおしてから十字架を支えた。
 ジナイーダはほうった土をかき集めて、穴を埋めていく。
 掘るのは難しいが、埋めるのは簡単で、あっという間に墓は出来ていく。
 他の十字架も同様に地面に突き刺して、穴を埋めていく。
 「戦いの長ここに眠る」「仇殺しの刃ここに眠る」そして最後に「体無しのバカ野朗ここに眠る」
 字を彫ったのは全部ノブレス。考えたのもノブレス。ノブレスは自己をおとりにするような真似は立派なバカだと言った。
 いくつも空に星が輝き、高台の下の広場がどこかにぎやかになってきた頃に、ノブレスはやっと高台を上ってジナイーダと合流する。
 遅れに遅れているのに、ポケットに両手を突っ込んで悠々と歩いている。
「一体どこ行ってたのよ!」
 シーラは怒気をはらんだ声でノブレスを呼ぶが、ノブレスはちっとも慌てる事は無かった。
 ノブレスの目は長めのスカートを履いたジナイーダに固定されていて、だけどもそこにはいやらしい想念は存在しなかった。
 実に一分かけてジナイーダに追いついたノブレスは笑って、
「似合うじゃん」
 シーラにはその横から雑言をぶつけるような無粋な事は出来ないように思えて口をつぐんだ。
 ジナイーダははにかむように少しだけ微笑んで、なびいた風にスカートを押さえる。同時にノブレスの目が邪に染まって下方を向く。なびいて持ち上がったスカートの更に


              蹴。


              *
 音楽が聞こえる。たった一つの吹奏楽器による喜びの水のメロディーの名前は「マイムマイム」。音は高台直下の広場から聞えて来る。
 立てられた四つの十字架にはそれぞれ形の違うワシの木彫りのネックレスがぶら下げてある。
 景色のいい高台からはジャンヌの残骸も守りきった街もその街で開かれるお祭りの様子も見られる。高台にいる英霊にもきっとマイムマイムのメロディーは聞えている。
 最初は一つの楽器による演奏だったマイムマイム、その楽器が二つに増え、三つに増え、四つに増え&&数え切れないほど多くの音質が全く同じ音を奏で、あたりはにわかににぎやかになっていく。
 空を見上げれば満月が見え、その満月は舞って散る黒い鳥の羽を照らし出す。その姿は満月の光から離れると闇にまぎれてすぐに見えなくなってしまった。
 「Well」とは古代語で井戸を表す。この街は砂漠のど真ん中、水を求めた水龍になぎ払われた救いの井戸の街である。救いの井戸は水を無限に沸かせ、それを求める人々はごまんといる。
 ウ・シャブデヴ、マイム、ヴェ・サソン、ミ・マイネイ、ハ・イェシェア。そしてあなた達は救いの井戸から水をくみ上げる。ヘヴライの歌詞。旧約聖書のイザヤ書十二章三節。マイムマイムは砂漠の踊り。砂漠に飲まれる地球に信じられないほどぴったりの砂漠の……


   アーマード・コア Side Story The Lost Ravens 

   Fin

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