ぎし、ぎし・・・・・
地下室に鎖の音が響く。
ぎし、ぎし・・・・・
地下室に、鎖の音が――
「へっ、なんだ、てめぇ」
拷問道具が並べられた薄暗い部屋の中心にある長机。勿論、ただの長机ではない。足枷(あしかせ)や手錠が打ち込まれたそれは、罪人の拷問のため、戦前に使われたものだった。
大量の血を吸い込んだであろうその部屋は、とてもこの世とは思えない雰囲気だった。罪人にとっては、この部屋はこの世とあの世の境でしかない。
そして平成の時代である今、この部屋の封印が数十年ぶりに解かれた。一人の男が長机に仰向けに寝かされている。もちろんその手には手錠がかかっており、首と足には枷がはめられている。男に自由も人権もない。そして、明日さえも残されていないかもしれない・・・・・
男は意外にも淡泊な顔をしていた。髭はきちんと剃られているし、髪の毛も整えられている。しかし、その目からはあきらかな"悪"が感じられた。
そしてその男を、女が見下ろしていた。
女は、二十歳前後であろうか。綺麗な顔立ちと整ったボディライン。街ですれ違ったら誰もが振り向くような美女であった。しかし、その目には男のものと同じ"悪"がはっきりと認められた。
「なんだ、てめぇ」
男は再び言った。身動きがとれない男に許されている唯一の自由が、喋ることだった。
「怖く、ないの?」
女が尋ねる。凛とした声だ。
「怖く?へへっ、そうだな、怖くはないさ」
男の答え方はあまりにもあっさりしていた。
「確かに今の俺に自由はない。駄弁ることしかできねぇ。でもな、俺は悪を犯したんだ。これくらいの報いをいつか受けるだろうという覚悟はできていた」
「なるほど、ただ者じゃないわね」
女の返答に、男はにやりと笑った。その笑いは、男の状況にはあまりにも不似合いだった。
「俺を誰だと思ってるんだ。平成の大量殺人鬼だぜ?ただ者のはずがねぇ」
「"殺人鬼"っていうくらいだから、もっと狂った男なのだと思っていた。想像よりも冷静で頭も切れる男ね、貴方」
にやにやと笑っている男にうってかわって、女の方は笑みの一つも見せない。
「今まで、何人殺したの?」
「数えてないから覚えてねぇよ」
「じゃあ私が教えてあげるわ。先週までで、貴方は26人の男女を殺した」
「わざわざ数えていてくれたのか。ご苦労なこった」
「新聞の一面を見ればすぐに分かるわ。最近の新聞は、26っていう数字が流行りみたいだから」
男は女を鼻で笑う。
沈黙の末、男は自らの腕を強く動かした。
ぎし、ぎし・・・・・
手錠の鎖が音をたてた。勿論、男はその手錠を外すことができない。男の腕は激しく揺れるだけで、自由を手にすることはできない。
「ただ者じゃないって言えば、お前もただ者じゃねぇな。警察が散々捜し回って見つからなかった俺を、こうやって知らねぇ場所に閉じこめてるんだ」
男の言葉にも女は反応を示さない。
「俺は捕まらねぇと思っていた。俺が殺した26人は俺のキャリアを具体的に表した数字だ。そのたび警察があがいたが、結局どうにもならねぇ。俺は次を繰り返す。でもよ、今回でお前に捕まっちまったってわけだ」
次の瞬間、男の目つきが代わった。それは獲物を睨む猛獣の目だった。
「どうやって俺を捕まえた?」
男の睨みに、女は動じなかった。状況は絶対的に女が優位であったが、それだけではなかった。女は、もはや恐怖という感情を捨てていた。
「思っていたより簡単だったわ。貴方の姿がカメラに写っていた。その男を捜して、後ろから近づき、スタンガンで気絶させた。そうしてここに運んできて、貴方の自由を奪った」
「カメラなんて見あたらなかったが・・・・・」
「当たり前でしょう、隠してあるカメラなんだから」
女は男を阿酒笑うかのごとく言う。
「ねぇ、そのカメラ、何のためのカメラだったか分かる?」
「そんなの、分かるわけ・・・・・」
「この場所を隠すためのカメラよ」
男の言葉の途中で、女は言い放った。
「今の世の中、こんな拷問部屋は敬遠される。いいえ、敬遠されるなんてものじゃないわ。私達はすぐ異常者扱いをされるでしょうね。この拷問部屋は戦前に使われたものだけど、こういう部屋は戦争と共に全て壊されてしまった。だから、こういう場所が残っていると知られてはまずい。だからこの地下室の所有者である私の家系は茂みにカメラを隠して、この拷問部屋の扉を見つける者がいないか見張っていた。それに偶然、貴方が写っていた」
「へぇ、じゃあここは俺があのガキを殺した場所の真下なわけか」
その男の言葉に、女がぴくりと反応した。しかし、女は深呼吸をし、平静を保つ。
「さっき私は、貴方が殺した人数を26人と言ったわ。でも、それは先週までのカウント。現在、貴方が殺した人数は27人」
「そんな数字、大した意味はねぇよ」
「三日前、一人の小学生の男子児童が殺されました」
男を無視して、女は淡々と呟き始めた。それは誰かに語りかけるというよりも、ほとんど独り言に近かった。
「その男子児童は下校途中、近道として茂みの前を通りかかりました。そこで男子児童は何者かに殺害されました。生きたまま開腹し内臓をえぐるという異常な殺害方法は、過去に26人もの男女を殺害した"平成の大量殺人鬼"によるものではないかと推測されています」
女の独り言が終わるやいなや、男はふっと息を漏らした。
「推測されています、か。へっ、確かにそのガキを殺したのは俺だよ。殺害方法までぴったりだ」
「そうね、警察もまだ確証がないから"推測"なんていう言葉で発表しただけ。これが貴方の犯行だということは、日本中の人々が疑いもなく信じている」
「ふん、そいつは名誉なことだね」
男は断じて反省の色を見せなかった。
「それでは問題。この拷問部屋は、何故今も残されているのでしょう」
女が突然話を振ってきたので、男は多少たじろいだ。女は男に数秒しか時間を与えず、自らその解答を口にする。
「正解は、貴方のような人間に罰を見せるためです」
「ふっ、27人の人間を殺した俺に、正義面して制裁か。それなら、俺をすぐに警察に突き出せば良かったんじゃないのか?」
「はずれ」
女は冷たく言った。
「私は27人の中の26人はどうでもいいの。問題は、最後に殺されたその男子児童・・・・・」
「あのガキがどうかしたか?殺し方は残りの26人と大差のない、残酷なものだった。俺があのガキに特別に何かしたってわけじゃあ・・・・・」
「大差のない?」
その女の一言は冷たさを通り越して、恐怖すら含んでいた。
「なら教えてあげる、貴方が最後に殺した男子児童っていうのは私の弟よ!私の弟は自分の誕生日に浮かれて帰宅する途中、貴方に殺された!貴方は未来のある私の弟の命を奪った!!」
女から冷静さが消えた。女が持っているものは、怒りそのものだった。
「そうよ、だから今から貴方に正義の制裁を加えてあげる!!あははははは!!!」
狂っていた。大量殺人鬼の男よりも、今の女は確実に狂っていた。
「ふん、そうかい」
男はあくまで冷静だった。
「俺は今まで散々な地獄を見てきた。俺が犯した大量殺人は、その地獄の鬱憤を晴らすためだったんじゃないかと自分で分析している。そんな俺は、今更拷問による死なんて怖くもないね。俺を拷問で殺すことによってお前の気が晴れるならさっさとやりな。俺もいい加減、この世なんて飽き飽きしてんだ」
本気だった。彼は今の状況を恐怖と感じていなかった。周りにある拷問器具の数々は、男にとって見慣れたものだった。
「ふふ、軽口を叩いていられるのも今のうち」
女は男の頬を軽く撫でる。
「大丈夫、今までで見たことのない、地獄の深部を見せてあげるから!!あはははは!!!」
女はおもむろに履いていたスカートを脱ぎだした。
流石の男もこれには面食らった。
「おい、お前、何やってるんだ?」
「あはははは!!!今のうちに男の性欲でも高まらせておきなさい、あはははは!!!!」
女はそう言って下着に包まれたその大きな尻を男の方に向けた。
「貴方には私の10倍、弟の100倍の苦しみを味わってもらう。それくらいの覚悟はできてるんでしょ?あはっ、あははははっ!!」
男は内心、女の尻に見とれていた。今まで見た中でも、最も美しい尻だった。
しかしその数秒後、男はその美を見失うことになる。
「ふふっ」
女が微笑んだのが、地獄への挨拶だった。
ばふぅっ!!
大きな音が地下室中に響き渡った。
そしてその音の直後、長机に磔(はりつけ)にされていた男の目が、大きく見開かれることになった。
「うわぁっ!!く、くせぇっ!!」
男はまさに地獄を見たような形相だった。
「どう?地獄へ堕ちることに対する自信、少しは揺らいだ?」
それは女の屁だった。人間であれば誰もがする、あの屁である。
しかし、女のそれは異常だった。その異常さは男の殺人ぶりよりも、先ほどの女の挙動よりも、何もかもを超越した"異常"であった。
「え?なにこれ?これ、お前の屁?・・・・・ゲホッ、ゲホッ!!」
男は強く咳き込みながらも何が起こったのか理解していなかった。
「え?ちょっとまって?おまえ、屁こいたの?え?うそだろ?くせぇぞ?」
そこまで言って、男は現実に帰った。
「え、ぐ、ぐぜ・・・・・、ぐぜぇ!!うわあああ!!ぐっぜええぇぇぇぇ!!!」
男は暴れ始めた。暴れた。暴れまくった。
しかし男が暴れるたびに響くのは
ぎし、ぎし・・・・・
という、鎖の音だけだった。
「お、おい、ありえねぇって、何だよ、本当にお前の屁なのか?嘘だろ?こんな臭いの屁があるはず・・・・・」
「何?何て言った?」
女は男の言葉を途中で切り捨てる。
「あり得ないって言った?あり得ない?」
女はその人間を超越した屁を発射した体勢から動いていなかった。しかし、その口は饒舌だった。
「弟が殺されたとき、私がどんなに『あり得ない』って念じたか、分かってる?」
男はまだその臭いに悶えている。
「てめえにあり得ないなんて口にする権利ねぇんだよこの野郎おおおお!!!!!」
悶える男の耳にも聞こえるくらいの大声が、女の口から飛びだした。
男の形相は確実に変化していたが、女のそれも、先ほどまでのしたたかで麗しいものではなくなっていた。
女は興奮したように息を荒らげていた。が、深呼吸でそれを落ち着け、
「これくらいで悶えないで」
と、穏やかに言った。
「まだ貴方は地獄の門を叩いたにすぎない。これくらいで悶えるなんて、これまで貴方が見てきた地獄って、何だったのかしらね?あははは!!!」
そんな女の前で、男は必死に考えていた。
――あんな屁をこく人間なんて、この世に存在するはずがない。さっきのは女が隠し持っている毒ガスそ放つ装置から放たれたものに違いない。
しかし、男の考えにはあきらかな矛盾があった。
――しかし、女は何処にそんな装置を持っているんだ?・・・・・いや、持っていない。持っているはずがない。
と、なると、残っている答えは一つである。
――じゃあ、さっきのは本当にこの美女の尻から出た屁だっていうのか・・・・・?
男は戦慄した。"恐怖"したのだ。忘れていたはずの恐怖を、男は鮮明に思い出した。
「じゃあ、貴方も充分すぎるくらい"地獄"の存在を見たでしょう?」
女の言葉に、男は若干の安堵を感じる。
――これで、助けてくれるっていうのか?
男はそう願った。もう二度と、先ほどのような臭いは嗅ぎたくないと思った。心から思った。
「それじゃあ、もう一回行ってみようか?きゃははははははは!!!!」
――嘘だろ?
男はそれが嘘だと信じたかった。
しかし、現実とは冷酷だ。それは男が身をもって感じてきた自然的法則。
「覚悟しなさい。・・・・・出来るものならね」
ぶっすううううううううううう!!!!!
「う、うおええええぇぇぇええぇぇ・・・・・・」
男の口から汚物があふれ出した。女の尻から吹き出した凄まじい勢いのそれは男の感覚を腐らせ、昨日まで食べて消化させたものを逆流させるには充分な代物だったのだ。
寝ている男と、その男に尻を向けている女。その距離は裕に2メートルはあった。しかし男はその体に「生暖かい風」を感じた。それが女の屁であることは疑いようもない事実だった。
「く、くせえよう・・・・・、臭くて死んじまうよう・・・・・」
「ふうん、臭くて死ぬ?」
女は男の声に反応を示す。
「あっは、大丈夫、殺さないから」
その後に振り返って、男に叫びかけた。
「生き地獄って言葉知ってるでしょ?死よりも恐ろしい地獄でしょ?きゃははははは!!!!!」
「や、やだ・・・・・、もういい・・・・・、やめろ・・・・・」
ぎし、ぎし・・・・・
「何で?」
女は問う。
「何で?」
女は問う。
「何でやめなきゃいけないの?」
女は問う。
「弟も貴方に対して『やめろ』って言わなかった?」
女は問う。
「でも貴方はやめなかった。そうでしょ?」
女は問う。
「だから私もやめなーい!!あははははは!!!!!」
ぶびいいいいいいいいいいいいい!!!!!!
「ひぎゃあああああああああああああ!!!!!」
男が叫ぶ間も、女の屁は止まらなかった。長すぎるその屁がやっと止まったとき、男は半分白目をむいていた。
男の鼻の穴から血が噴き出した。その数秒後、喉の血管が切れ、男は吐血する。臭いは男を蝕み、壊した。
叫び、悶え、逃げだそうとする男のもとに女は近寄る。
女は男の顔を上から覗き込む。
「苦しめ!苦しめ!!苦しめええ!!!きゃひひひひひひひっ!!!!」
女の精神状態も普通ではない。普通ではないのだ。
「やめろ・・・・・、やめろ・・・・・、やめろ・・・・・」
男も狂ったように同じ言葉を繰り返していた。
「そんな頼み方じゃやめるものもやめられなくなるわ。きゃひっ!人にものを頼むときは、どういう風に言えばいいのかな?」
女の言葉に男は黙り込む。ぜぇぜぇと苦しそうに呼吸をしながら、必死で考えている顔。それは先ほどまでの男と同じ人物とは到底思えない。
「お、お許しください・・・・・」
男がやっと口を開いた。
「私は下劣な男でした。卑怯で、世の中で最低の人間でした。27人の人間を殺すという愚かな行為を行っていました。貴女様が全て正しい。私は貴女様に忠誠致します。永遠に忠誠を誓います。だから・・・・・、だからもう私を苦しめるのはやめてください・・・・・、お願いします、お願い致します・・・・・」
男の言葉に頷く女。
「よく言えたわね。そうそう、そう言えばいいの」
「で、では、助けてくださりますか?」
「まぁ、よく言えた子にはご褒美をあげないとね」
女はくるりと振り返り、男の顔に標準を合わせる。
びゅびゅしゅううううううううう!!!!!
「おごおおおおおぉぉおあああぁああぁああ!!!!!!」
先ほどよりも近い距離で、男は女の屁をもろに浴びてしまった。
「きゃひひひひはひひはハハひひヒはひひひ!!!!!」
女は高い声で笑う。
「ご褒美はどう?美味しい?私の美味しいご褒美、美味しい?ご褒美よ、ご褒美なの、ご褒美、ごほうび、ごほうび、ごほうび、キャーっひっひひひひひひ!!!!」
「ひ、ひぎっ・・・・・、ひぐっ・・・・・」
男は震えていた。今浴びた「風」は「生暖かい」ものではなかった。
「熱かった」。「熱かった」のだ。
屁でこれほどの熱を感じるか?いや、感じるはずがない。
しかし、この女なら。
この女は異常だ。
俺以上に異質な存在。
俺を超越する存在から、俺は逃げられるはずがない。
男は震え続けた。
「本当ならね、今の距離で私のを食らったら、死んでるからね。貴方は何故自分が生きてるか分かる?」
「分からない?なら教えてあげる」
「私が手加減をしているから」
「でも勘違いしないでね、私が手加減をしているのは、」
「貴方に究極の苦痛を味わってほしいから!!あひひっ!!」
狂っている。狂っている。狂っている。
やめてくれ。やめてくれ。やめてくれ。
「もう嫌だ・・・・・、ぜぇ・・・・・、許して・・・・・」
「許さない。私は許さない。私は弟に誓って貴方を許さない」
女は男の顔に自らの顔を近づける。男の見開いた目を、女の狂った目が見つめる。
「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない」
「ひ、ひっ!!」
「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない」
女はそう繰り返しながら再び男に自らの尻を向ける。
むっしゅうううううううううううううううう
ほとんど発射音のないそれは、すかしっ屁であった。男の体を今まで以上に蝕むのに充分な破壊力だった。
「ぐざいいいいいいいいいっひいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
「ケヘヘヘヘヘヘヘヘヒヘヘヘヒヒヘヘヘヘ!!!!!」
「いああああいいいやだあああああああああ!!!!!!」
「私、昔から不思議だったんだあ、なんですかしっ屁って普通のより臭いんだろうね、ケヘケヘヘヘヘヘ!!!!」
「へへ、へ、はぁ、はぁ・・・・・、へへ・・・・・」
女は呼吸を安定させる。
「貴方が地獄を見始めて15分が経った。まだ15分かって思ったでしょう?ケヘ!私は貴方に一晩中、地獄を見せ続ける気でいるから、ケヘヘヘ!!」
「そ、そんな・・・・・、も、もういい・・・・・、殺してくれ・・・・・」
「殺してあげるってば。貴方が最高に苦しんだあとにね、イヒヒヒヒ!!」
「あ、あぐ・・・・・」
「はぁ、はぁ、もう、我慢できない・・・・・」
そう言うと女は自ら履いていた下着を脱ぎ始める。女の真っ白で、美しく、大きな尻がその本性を見せた。
「ひぃ、ひぃ、ひぃ・・・・・」
呼吸を乱しながら、女は男が寝そべっている長机の上にあがった。
「ひぃ、ひぃ、ひぃ・・・・・」
女は男の顔を跨ぐように立つと、自分の真下にある男の顔を見下ろし、次の瞬間、一気に腰を落とした。
ずずうん・・・・・
地響きのような音と共に、女の尻が男の顔の上に落下した。女の細い体からは想像できないその体重は、その巨乳、巨尻から来たものであった。
「む、むぐぅ・・・・・」
男が女の尻の下で呻く。
「あ、息が苦しい?ごめんごめん、すぐどけるから。きゃひっ!どけても吸える空気は貴方の望むものじゃないだろうけど」
そう言うと女は自分の尻を少し浮かせる。男の顔の真上に女の巨大すぎる尻が現れたため、男は視界をも制限された。
「もう薄々気が付いてるとは思うけど、この状態で発射するから」
恐ろしいことをいとも簡単に言い放つ。
男は逃れようと必死で暴れた。しかし響くのは鎖の音だけ。先ほどまで怖くもなかった拘束道具は非情にも男を恐怖の底へ陥れる。
ぎし、ぎし・・・・・
「そんなに暴れないで」
女は優しく語りかける。
「暴れてもどうになるものでもないもの」
ぎし、ぎし・・・・・
「ねぇ、もう観念してこの後のことを想像してみたらどう?」
ぎし、ぎし・・・・・
「私がこの状態で貴方の大嫌いなものを放つと、貴方はどうなるか」
ぎし、ぎし・・・・・
「地獄の苦しみでしょうね、まさに地獄。でもね、私の弟を失った悲しみからしたら、そんなもの、まったく哀れじゃないわ」
ぎし、ぎし・・・・・
「ねぇ、想像してる?」
ぎし、ぎし・・・・・
「私の肛門からメタンガスは放出され、貴方の鼻の中へ吸い込まれるように入っていく」
ぎし、ぎし・・・・・
「今までしたどれよりも濃いそのガスは、貴方の鼻腔をつつく」
ぎし、ぎし・・・・・
「そうしたらどうなるかしら?きゃひひひひ!!!死よりも苦しい恐怖を感じるでしょうね!!貴方にはお似合いだわ!!けひひひひひひ!!!!」
ぎし・・・・・
「や、やめろ・・・・・」
「え?」
「やめてくれ・・・・・」
「もう一度、言ってごらんなさい?」
「やめてくれやめてくれやめてくれやめてくれっていってるんだよやめてくれやめてくれもうゆるしてくれゆるしてくれゆるしてくれしんじゃうしんじゃうこのままだとしんじゃうしんじゃうしんじゃうしんじゃうしんじゃうしんじゃう!!!!」
男はもはや正常な言葉を話すことすら叶わなかった。
「もう何て言ってるのか分からないわ、アヒヒヒヒイヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!!」
「ゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるして」
「ケケケケケケケケケケケケケケケケケケ!!!!!」
女の尻の穴が膨らんだ――
ぶあっふうううううぅぅぅうううぅぅぅぅううううううぅぅううううう!!!!!!!!!
「ぎひいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!」
女は手加減することをもう覚えてはいなかった。
「ケヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ!!!!!!!!」
ブビブビブビブビブビブビブビブビィィィイイイィィィイィィィィイ!!!!!!
「キヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!!!!」
びしゅううううううぅぅうううぅぅぅぅうううううぅぅぅぅうううう!!!!!!!
「ギヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!!!」
女は言葉通り、一晩中、男に屁を浴びせ続けた。
しかし響くのは、狂った女の笑い声と屁の発射音だけ。
男の叫びと鎖の響きは、いつの間にか消え失せていた。
最終更新:2012年03月11日 21:41