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ロジャー・ラビット事件日誌

ロジャー・ラビット』(1988年)はディズニー、ワーナーなどアメリカ中のアニメキャラ・オールスターと実写の共演を大きな目玉として大ヒットしました。今では(流通数は比較的少ないですが)DVDも発売されています。子供が楽しめる作品として購入した人もいるのではないかと思いますが、話自体は殺人事件を扱ったサスペンスであり、結構複雑です。そこで『ロジャー・ラビット事件日誌』と銘打って話の流れをまとめてみることにしましょう。

このページは特にネタバレ注意です。
直接的には描かれておらず、映画内で明らかになった事実には下線が引いてあります。

テディ殺害事件


アクメ殺害事件の半年前(以前)

  • ドゥームがトゥーンタウンに金をバラまき、判事に当選する。
  • ドゥーム、市の幹線道路計画を聞いた時、フリーウェイ(高速道路)の運営を思いつく。高速道路を普及させるには、5セントで乗れるトロリーを廃止させる必要がある。廃止するためにトロリーを買収。また、トゥーンタウンには道路が走っていないため、高速道路計画をする上の阻害になる。よって、トゥーンタウンを消そうと企む。そのために、クローバーリーフ*の株を買い占め、クローバーリーフ名義でアニメ会社のR・K・マルーンにトゥーンタウンの権利を渡さないと、トゥーンたちを溶かして消すと脅迫する。

1947年

  • マルーンがクローバーリーフにスタジオを売るという話が浮上。
  • トゥーンタウンのオーナー・マービン・アクメ*はトゥーンタウンを売らない限りはスタジオを売らない、とマルーンの案に反対する。

1日目(アクメ事件当日)

  • マルーン、このままではトゥーンが消されてしまう、と危惧する。そこでトゥーンタウンの権利者であるアクメを脅迫するネタを握ろうと考え、ジェシカ・ラビット*にアクメとの密会現場を演出し、探偵に撮影されないと、夫・ロジャー・ラビット*を解雇する、と脅迫する。そしてジェシカとアクメの密会現場を押さえようとする。
(映画本編はここからです)
  • マルーン製作のアニメーション『キッチン騒動*』が撮影開始するが、主演のトゥーンであるロジャーがNGを連発する。
  • マルーンがエディに「ロジャーが妻ジェシカの浮気疑惑を気にして撮影に集中できないために諦めさせるため、ジェシカとアクメの密会現場を撮影してほしい」と依頼を出す。(実際にはジェシカの密会現場ではなく、アクメの弱みを握りたかった)
  • エディはドロレスからカメラを借り、任務を遂行。
  • ジェシカ、ドゥームがトゥーンタウンを死ぬほど欲しがっていることをアクメからこっそり聞く。
  • アクメが帰る際、持っていた遺言状をジェシカに渡す。(しかし、消えるインクで書かれていたため、その時点では白紙だった)
  • マルーンとエディからジェシカの浮気現場を突き付けられたロジャーはショックでどこかへ去っていく。
  • ロジャーはジェシカの楽屋へ行くがジェシカに会えなかった。そこで白紙(本当はアクメが「消えるインク」で書いた遺言状だったが、その時も文字は消えていた)を拾い、ラブレターを書く。しかし、直接妻に読みたかったため、持って帰ってきた。
  • ドゥーム判事、トゥーンタウンの権利者であるアクメを殺害。その際、アクメの遺言状を破棄する予定だったが、アクメが楽屋に遺言状を置いてきて持っていなかったため、未遂に終わる。
  • ロジャーが帰宅すると、イタチがロジャーを逮捕するために待ち伏せしていた。ロジャーはアクメ殺害容疑がかけられていることを知り、エディに依頼を出すため、エディの事務所を探す。

2日目(アクメ事件翌日)

  • エディはサンティーノ警部補*からアクメが殺されたことを聞く。
  • 「殺害方法がアニメっぽいこと」と「妻ジェシカの浮気相手であるアクメへの殺害動機があること」からロジャーを容疑者としてドゥーム判事指揮のもと捜査が始まる。
  • ベビー・ハーマン*がエディにアクメの遺言状が行方不明になったことを告げる。アクメはトゥーンタウンをトゥーン達に譲る、と公言していたため、トゥーンタウンを狙っている真犯人に遺言状を処分されたのでは、と推測する。
  • 容疑者・ロジャーがエディに依頼に来る。
  • ロジャーがふざけてエディに手錠をかけたため、外すためにドロレスのバーへ。
  • ドロレス、トゥーンタウンを欲しがっているのはマルーンではなく、クローバーリーフ産業であることが分かり、エディに伝える。
  • エディ、ロジャー、ドロレスの元へドゥーム判事がやってくる。
  • エディとロジャー、バーから逃走し、ドゥーム判事に捕まっていたベニー・ザ・キャブ*を救出し、映画館へ逃げ込む。
  • エディは映画館のニュースで、マルーンとクローバーリーフが手を組んでいることを知り、マルーンとの接点が明らかになる。
  • ジェシカ、ドゥームがマルーンを銃殺しようとしていることを知り、後を追う。
  • エディはマルーンを脅迫し、マルーンの目的を聞き出す。
  • エディがドゥームの銃に命を狙われ、マルーンが被弾し、死去。
  • エディ、現場から逃げるジェシカを目撃し、ジェシカを疑う。
  • ジェシカがエディの命を救い、アクメとマルーンを殺した犯人がドゥームであることを告げる。
  • ドゥームが犯行を自供。(今までの計画をすべて話す)
  • ロジャーとジェシカを殺そう(溶かそう)とするが、エディに阻止されてタンクローリーに潰される。
  • ドゥームが死ななかったことから、その正体がトゥーンであることが判明。
  • ドゥーム、テディ殺害を自供。
  • ドゥーム、エディを殺そうとするが、返り討ちにされて溶かされてしまう。
(事件解決)
  • エディ、ドゥームがマルーンを殺害した証拠品(=ロープ)をサンティーノ警部補に提出。
  • ロジャー、ジェシカにラブレターを読む。「消えるインク」で書かれていたアクメの遺言状の文字が現れる。
  • トゥーンタウンはアクメの遺言状どおり、トゥーンのものになる。


考察

  • 犯人
ドゥーム判事

  • 被害者
マービン・アクメ、R・K・マルーン

  • 動機
殺人の動機は本人から間接的に語られている。
高速道路を普及させる上で邪魔となったトゥーンタウンを消すために、タウンの権利者アクメを殺害。遺言状を破棄するつもりだったが、見つけられず、やむなくアクメの権利が切れる事件翌日の24時まで待つことになるが、脅迫していたマルーンが探偵エディに事実を話そうとしたために口封じのため、銃殺。

  • 殺しのタイミング
なぜ、あの日に事件を起こしたのか。事件の流れを見ると、マルーンによる脅迫事件の発端はドゥームである。しかし、マルーンは「アクメと密会しないと、ロジャーを解雇する」とジェシカに脅しをかけている。この時、ロジャーには動機が発生する。このタイミングでドゥームがアクメを殺せば、容疑は第三者(=ロジャー)にかかる。もちろん、ドゥームはこのタイミングでアクメを殺している。

では、もしマルーンの脅迫内容がこれと違っていたら、どうするつもりだったのか。もちろんロジャーに容疑をかけることはできない。だとすれば、マルーンがジェシカ(後にアクメにもそうするはずだった)を脅迫した内容を指示したのはドゥームかもしれない。しかし、映画内ではそのあたりが明示されていない。そもそも、ドゥームは最初からロジャーに罪を着せるつもりがあったのかも不明であり、ロジャーへの個人的恨みも無いはずだからである。

  • ドゥームの正体
ドゥームの正体は終盤でわかるようにトゥーンである。ドゥームの初登場シーンの時点で、視聴者にはヒントが与えられている。ドゥームはトゥーンを溶かすディップを紹介するために、トゥーンを実際にディップにつけて溶かしている。ディップは人間には害がなく、トゥーンを溶かすためだけのものである。しかし、ドゥームがディップにトゥーンをつける時、なぜか手袋をはめている。これは自分自身がトゥーンであり、ディップに触れて溶けてしまうのを防ぐためであった。

  • エディの推理
エディの推理が冴えわたるのは、映画館でニュースを見た時。クローバーリーフとマルーンが不動産取引をしたニュースを知った時、マルーンが自分に撮らせた「ジェシカとアクメの密会現場の写真」が、アクメをゆするためのネタであったことに気付く。

しかし、エディは真犯人を突き止めておらず、探偵である彼の活躍シーンといえば、名推理と言うより、アクションである。


2010/8/24 追記

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最終更新:2021年01月11日 15:58