#1 電話

梓「夏フェス凄かったなぁ」

 夏フェスから一週間後、梓は夏フェスのことを思い出しながら考え事をしていた。

梓「唯先輩達と一日中いろんな音楽聴いたりしてすごい楽しかった……けど」
梓「……何か物足りない」

 夏フェスを楽しんだはずの梓であったが、この一週間ずっとこの事が頭から離れずにいた。

梓「はぁ……何なんだろうこの気持ち、面白くなかったとか不満とか何もないはずなのにどうして……」

 そのとき梓の携帯が着信を知らせた。

梓「ん……唯先輩だ」

梓「はい、もしも『疲れたよー!』…し?」
梓「いきなりどうしたんですか?」
唯『もうね!疲れちゃったよ!』
梓「はぁ……だから何がですか?」
唯『勉強に決まってるよ!』
梓「あぁ、受験勉強ですか?」
唯『うん、そう!もうくたくただよ~』
梓「疲れるほど勉強してそうには思えませんが」
唯『あずにゃん!それはひどいよ!私一生懸命頑張ってるのに~』
梓「はいはい、それでどうして電話してきたんですか?」
唯『ぶー、あずにゃん冷たいよ!』
梓「……用がないならきりますね」
唯『うぅ……待って~』
梓「それで何か用ですか?」
唯『うーん、用っていうか最近勉強ばっかりであずにゃんとお話あんまりしてなかったな~と思いまして』
梓「そうでしたっけ?しょっちゅう電話やメールしてる気が……」
唯『足りないんだよ!』
梓「私は十分足りてます」
唯『またまたそんなこと言っちゃって~、寂しいくせに~』
梓「電話きりますね」
唯『ごめん!待ってください!』
梓「くだらないこと言ってないで真面目に勉強してください」
唯『うん……というかね……』
梓「はい?」
唯『あずにゃんにほんと寂しいおもいさせてるんじゃないかって……』
梓「またですか……だか『そうじゃないよ!』」
唯『そういうことじゃなくてさ、あのさ……去年に比べると……』
梓「あ……」
唯『今年は一人も新入部員見つけれなかったし、受験勉強であまり一緒に演奏もできてないから。
  あずにゃん一人にしちゃって、寂しいおもいさせてるんじゃないかっておもってさ……』
梓「唯先輩……」
唯『ごめんね……』
梓「な、何言ってるんですか!そんなことないですよ!私なら大丈夫ですから気にしないでください!」
唯『……』
梓「別に私は一人だってちゃんと練習もしてますし、何も……」
唯『そっか、それならいいんだけど……』
唯『えっとね、あのね……』
梓「は、はい」
唯『実はずっとおもってたことがあってさ』
梓「何でしょうか?」
唯『あずにゃん……夏フェス楽しかった?』
梓「え?はい楽しかったですけど……どうかしたんですか?」
唯『うんと、じゃあ満足した?』
梓「えっと……」
唯『今回の合宿はあずにゃんにとって満足のいくものだった?』
梓「……はい、そうですね」
唯『そっかぁ……私はね……』
梓「……」
唯『ちょっと物足りなかったな~って思ってさ』
梓「!」
唯『えへへ、私だけかなぁ』
梓「あ、あの!」
唯『うん?』
梓「実は私も……その、物足りなかったって思ってたんです」
唯『そうなの?』
梓「はい、帰ってからずっとそのことばかり考えてました。
  楽しかったし不満もないはずなのに、どうしても物足りなく感じて、でもそれが何なのかわかんなくて」
唯『私はね、一緒に演奏がしたいんだと思う』
梓「……」
唯『いろんな人の演奏を見て、聴いて……とっても勉強になったし楽しかったよね。
  でもやっぱ自分で演奏したいよね、みんなで一緒にやりたいよね』
「唯先輩……」
唯『去年はあずにゃんと一緒に演奏したり、教えてもらったりすごく楽しかった。
  私、あずにゃんと早く一緒に音合わせたくてしかたないんだ。
  それがなかなかできなくて、それで物足りなく感じてるんだと思う』
梓「私もそうなのかもしれません。夏フェスですごい演奏とかみて私たちもこんな演奏できたらとか思って。
  先輩達と……唯先輩と音あわせたくなってたのかもです」
唯『そっかぁ、あずにゃんもそう思ってくれてるならすごく嬉しいな』
梓「わ、私も……」
唯『ねえ、あずにゃん
梓「は、はい?」
唯『二人でさ、合宿の続き……しない?』

 唯と梓の夏が再び始まる。

 #2 唯の悩み

 梓と唯の電話の数日前……

律「あー、そろそろ休憩しよーよー」
澪「またか律!もう少し真面目に勉強したらどうだ!」
律「だってー、もう疲れたし……」
澪「まだ何時間もやってないだろ!ほら、しっかりしろ!」
律「えー……」
澪「まったく……少しは唯を見習ったらどうだ?」
唯「……」
律「前から言いたかったけどさ、唯が真面目に勉強してるのはおかしいと思うんだ!」
唯「……」
澪「やる気をだすのはいいことじゃないか。だから律ももう少しだな……」
紬「まぁまぁ、澪ちゃん少し休憩いれましょ?」
澪「ムギがそう言うなら……」
律「よし、何か食べにいこうぜ!」
澪「そうだな……もうお昼か」
律「さあ、行こう行こう!」
紬「待って、唯ちゃんがまだ……」
澪「唯、一回休憩いれよう」
唯「……」
律「そういや唯って、最近やけに勉強に集中してるけど何かあったのかな?」
紬「夏フェス終わったあたりからずっとこんな感じよね」
澪「いいことだとは思うけど……少し心配だな」
律「おい、唯!ゆーい!」
唯「ふぇっ!ど、どうしたの?」
律「どうしたのっておまえな~、何回も呼んでるのに気づかないから」
唯「え?あ、ごめんね全然気づかなかった」
澪「唯……最近どうかしたのか?」
唯「うん?」
紬「唯ちゃん勉強頑張ってるけど、ぼーっとしてることもおおいのよね」
唯「うーん……」
澪「何か悩み事でもあるのか?」
唯「ちょっと……ね」
律「とりあえずどっか食べにいこー」

 移動後

澪「それで、どうしたんだ?」
唯「うん、あずにゃんの事が気になってね……」
澪「梓の事?」
唯「うん、あのさ」
律「ま、まさかっ!」
澪「おとなしくしてろ!」
律「すみません」
唯「去年に比べると私たち受験勉強で忙しいからあずにゃんと一緒に演奏できてないよね」
澪「まあ、そうだな」
唯「今年は新入部員も入らなかったし、あずにゃん一人なんだよね。
  あずにゃんはきっと私たちと演奏したくて……でも私たちが受験勉強あるからって遠慮してると思うんだ。
  すごく寂しい想いさせてるんじゃないかって心配になってさ」
紬「唯ちゃん……」
澪「言われてみるとそうだな……唯はほんと梓の事考えてるよな」
律「唯は梓の事大好きだもんなー」
唯「うん……」
紬「……」
唯「何かしてあげれたらいいんだけど、何も思いつかなくってさ」
律「みんなで時間つくって、練習するでいいんじゃない?」
唯「うん……そうだけど。そうなんだけどさ」
唯「…ぃ……だから…さ……」
澪「え?」
唯「何かしてあげたいなって思って」
律「唯……」
紬「唯ちゃん、私にいい考えがあるの」
唯「どんなこと?」
紬「もう一回合宿するってのはどうかしら?」
唯「……うん、いいかも!」
律「おー、遊べるな!」
澪「待て待て!そんな暇ないだろ!」
律「大丈夫だよ!少しくらい問題ない!」
澪「おまえが一番心配だ!」
紬「うん、みんなで行くのはちょっと難しいと思うの。
  だからね、唯ちゃんと梓ちゃんの二人でってのはどうかな?」
唯「え?私とあずにゃんだけ?」
紬「うん、そう二人だけで」
律「えー、私も行きたいー」
澪「とりあえず黙ってろ」
律「うぅ……」
紬「そのほうがいろいろ伝えれると思うの……お互いにね」
唯「ムギちゃん……」
紬「合宿の場所は私に任せて!だから唯ちゃんは梓ちゃんのことをお願い」
澪「まあ、梓のことなら唯に任せたほうがいいしな」
律「そうだなー、唯!頑張ってこい!」

唯「みんな……うん!あずにゃんと二人で合宿行って来るね!」

 #3 出発前

 唯先輩と二人だけの合宿に行くことになった私は、待ち合わせ場所で来るのを待っていた。

梓「もう!遅いじゃないですか!」
唯「ご、ごめんねぇ……」
梓「まあ、予想通りというか予定通りというか……唯先輩らしいですね」
唯「うぅ……」
梓「早く行きましょ」
唯「ほんとにごめんねぇ」
梓「別にそこまで気にしなくてもいいですよ」
唯「あ、あずにゃんありがと~」
梓「どうせ遅刻するだろうと思って、それをふまえた上で予定たててましたからね」
唯「あずにゃんそれってなんかひどいよ……」
梓「ふふっ、悔しかったら時間通りにくることですね」
唯「あずにゃんはしっかりものだねぇ」
梓「まぁ……今日は特別ですしね……」
唯「うん?何か言った?」
梓「い、いえっ!何でもないですっ!」
唯「え、でも今あずにゃん……」
梓「ほら、行きましょ!乗り遅れると困りますし!」
唯「う、うん」

 私ってば何言ってるんだろう……変に意識しすぎかな。
 でも、楽しみだったのは事実だし、やっぱり特別……だよね。

梓「そういえば今日も寝坊ですか?」
唯「あずにゃん!それじゃあまるで私がいつも寝坊してるみたいじゃない!」
梓「実際そうじゃないですか」
唯「ごめんなさい」
梓「だから気にしないでいいですって」
唯「でもでもっ、いっつもってわけじゃないんだよ?」
  楽しみでなかなか寝れなかったりとかさ、あずにゃんもそういうのあるでしょ?」
梓「まあ、ありますけど。でも私はちゃんと起きれますよ」
唯「さすがあずにゃん!」
梓「別に普通だと思いますけど」
唯「そうだよね!なんてったって今日は特別なんだもんねっ!」
梓「うっ///聞こえてたんじゃないですかぁ」
唯「えへへ……ねえ、あずにゃん」
梓「な、なんですかっ」
唯「私にとっても今日は特別だよ」
梓「唯先輩……」
唯「だからおもいっきし楽しもうね!」
梓「はいっ!」

 #4 到着

梓「こ、ここですか……?」
唯「う、うん。ムギちゃんの言うとおりに来たから間違いないと思うけど……」
梓「二人だけなんですよね……?」
唯「そのはずだよ……」
梓「ムギ先輩……これはでかすぎですよ……」

 二人は紬に用意してもらった合宿先の別荘に到着していた。
 しかしその別荘は、去年泊まった別荘よりはるかに豪華で広い建物であった。

梓「二人だけだっていうのに、なんでまたこんな立派な……」
唯「あー、そういえば……」
梓「何かあったんですか?」
唯「うんあのね、ムギちゃんが言ってたんだ。
  私たちが一年のときと、去年あずにゃんも一緒にいったときと毎年合宿で別荘使わせてもらったんだよね。
  だから今年も合宿で別荘使うかと思って、あらかじめ予定いれてたのがあったんだってさ」
梓「なるほど、それがこの別荘……っていうわけですか」
唯「うん、たぶんそう。けど今年は夏フェス行ったからここ使うことなかったんだよね。
  それで私たちにここを使わせてくれたのかな」
梓「何か悪い気がしますが……」
唯「ま、まあせっかくだし!」
梓「そ、そうですね!」
唯「にしても広いなぁ……迷子になっちゃいそう!」
梓「それはないですね」
唯「えー、かくれんぼはできるよ!」
梓「遠慮しておきます」
唯「うぅ……あずにゃんがつめたいよぉ」
梓「はいはい、そんなことより荷物を早く置いて遊「練習しよっか!」行きま…え?」
唯「うん?」
梓「えっと、今なんて?」
唯「だから練習しよーって」
梓「えっ」
唯「どうかした?」
梓「い、いえっ、そうですね練習しましょうかっ!」

梓(てっきり練習は後回しにして遊ぶものだと思ったのに……)

唯「あれ、あずにゃんもしかして遊びに行きたかったとか?」
梓「なっ!違いますっ!早く練習しましょう!」
唯「あはは、そんなにあわてなくてもいいのに」

梓(うぅ、何か調子くるうなぁ……)

 こうして二人きりの合宿が始まった。

 #5 練習

唯「さすがにスタジオも立派だねぇ」
梓「はい、二人で使うにはもったいなすぎますね」
唯「……ねえ、あずにゃん」
梓「はい?」
唯「あずにゃんはやっぱりみんなで来たかった?」
梓「え?」
唯「私と二人きりなんかじゃなくて、軽音部のみんなと来たかったのかなって」
梓「えっと……別にそういうわけじゃないですけど……」
唯「……」
梓「……」
唯「よし!練習はじめよっか!」
梓「え、あ、はい」
唯「一緒に練習するの久しぶりだね」
梓「そうですね、楽しみにしてました。」
唯「あずにゃんは一人で練習してたの?」
梓「はい、でもやっぱ一人だとなかなかはかどらなくて」
唯「そんなこと言うなんてあずにゃんにしては珍しいね」
梓「やっぱ、あの、その……」
唯「うん?」
梓「……唯先輩と一緒に練習したかったんですっ」
唯「おおう、嬉しいこと言ってくれるね!」
梓「唯先輩はどうなんですか?」
唯「私は勉強の息抜きにたまーにさわってたくらいだけど。
  でもやっぱ、私も早くあずにゃんと一緒に演奏したかったよ」
梓「そ、そうですか……時間はたっぷりありますし、頑張りましょ!」
唯「うん!」

 ~♪

唯「なんていうか、お互い上手くなってる気がするね!」
梓「そうですね、久しぶりにあわせるとは思えないくらいいい感じでした」
唯「夏フェス見ただけでもやっぱ影響あったのかなぁ」
梓「かもしれないですね、やる気はすごいでましたし」
唯「うんうん。いつかはでたいねぇ」
梓「そうですね」
唯「よし、次の曲!」
梓「はい!」

 ~♪

唯「ふぅ」
梓「今日の唯先輩の演奏かなりいいですね」
唯「あずにゃんと一緒だからだよー」
梓「いつもに比べるとずいぶん真面目に練習してくれてますし、普段からこうだといいんですが」
唯「今日は特別だからね!」
梓「もう……そんなこと言わないでくださいよ」
唯「でもさ、そういうあずにゃんだっていつもより頑張ってるんじゃないかな」
梓「それはまあ……今日は特別ですしね」
唯「えへへ♪」
梓「……///」
唯「少し休憩いれよっかぁ」
梓「……はい」

 #6 休憩

梓「そういえば、聞きたかったことがあるんですが」
唯「なあに?」
梓「どうしてまた、急に合宿しようと思ったんですか?」
唯「電話で言ったのがだいたいの理由だけど、あずにゃんといっぱい演奏したかったからかな」
梓「でもそれなら、わざわざ合宿までしなくても……学校とかお家とかでもやれますし。
  何より唯先輩は受験勉強忙しかったんじゃ……」
唯「こうみえて勉強はかなり頑張ってるから大丈夫!……だと思う」
梓「思うじゃだめじゃないですか」
唯「えへへ……えっとね、合宿を提案してくれたのはムギちゃんなんだ」
梓「ムギ先輩がですか?」
唯「うん、みんなに話聞いてもらってね、そしたらムギちゃんがもう一回合宿ってのはって言ってくれて。
  それすごくいいなって思ったんだ」
梓「どんな話です?」
唯「え!うん、まぁ、いろいろとね……」
梓「そうですか……でもそれだと、先輩方も来たかったんじゃないですか?」
唯「……さっきも聞いたけど、あずにゃんは私と二人きりじゃないほうがよかったの?」
梓「そ、そういうことを言ってるんじゃなくてですね……」
唯「これは私のわがままみたいなものだし、忙しいみんなを巻き込みたくなかったんだ。
  実際りっちゃんなんかはすごく来たがってたしね」
梓「えっと……」
唯「みんなに言われたからってのもあるし、みんなが遠慮してくれたってのもあるかもしれない。
  けどやっぱ、私があずにゃんと二人で来たかっただけなんだ」
梓「……」
唯「迷惑だった?」
梓「いえ、そんなことは……」
唯「私とあずにゃんの最後の夏の思い出がほしかったんだ」
梓「え?」
唯「みんなでの思い出はいろいろとあるよね。もちろん二人での思い出もいろいろあるけど。
  お互いの家に泊まったりとかはしたけど、こういうふうな旅行?みたいな感じで一緒にさ、
  来たことなかったよね。だからそれがすごく楽しみで、楽しくて……いい思い出になると思うんだ」
梓「……」
唯「嫌……だったかな?」
梓「…んで…いうこと……」
唯「……あずにゃん?」
梓「何でそういうこと言うんですかっ!」
唯「え?」
梓「唯先輩にとって私ってなんなんですかっ!」
唯「……」
梓「夏フェスのときにはあんなこと言ってたのに……」
唯「……」
梓「すみません、何でもないです。少し外行ってますね」


 #7 唯の思いと梓の思い

 本当は私と二人きりで合宿なんて嫌だったのかな?

 考えても私にはあずにゃんがどうしてあんなふうに怒ったのかわからない。

 電話のときも、移動中も、ここきてからも、練習してるときも楽しそうに見えた。

 私が楽しかったからそう見えただけなのかもしれないけど。

 少なくとも嫌そうとか怒ってはいなかったと思う。

 それが急に……さっきの話の途中でだよね。

 あずにゃんにとって嫌なことを言ってしまったのかな。

 そんな私にたいしてあずにゃんは怒った感じで言ってたっけ。

 『何でそういうこと言うんですかっ!』

 何でそういうこと……私、どんなこと言ったっけ……。

 『唯先輩にとって私ってなんなんですかっ!』

 私にとってのあずにゃんは……。

 『夏フェスのときにはあんなこと言ってたのに……』

 夏フェスの何に関係してるのかな。

 やっぱり考えてもわからない。

 直接……話してみるしかないかな。


 はぁ……何であんなふうに言っちゃったんだろう。

 唯先輩がそういうつもりで言ったってわけじゃないのに。

 それでもやっぱり……唯先輩からは言われたくなかったのかな。

 せっかく楽しくやれてたのに、だいなしにしちゃったなぁ……。

 怒ってるかな……困らせちゃったかな……嫌われたりしてないよね……?

 すぐに謝りにいったほうよかったかな……はぁ、どうしよう。

 #8 二人の気持ち

 どうしようか悩んでいると後ろから近づいてくる音が聞こえた。

唯「あずにゃん、ちょっといいかな……?」

 こんなとき、いつだって唯先輩は私の傍に来てくれる。

梓「ゆ、唯先輩」
唯「えっと……さっきはその、ごめんね?」
梓「い、いえそんな……」
唯「私何も考えずに適当なこと言っちゃってたのかもしれないね。
  結局私は、自分のことしか考えてなかったのかな」
梓「そ、そんなことは……」
唯「ごめんね、考えてもどうしてもわからないんだ。
  どうしてあずにゃんを怒らせちゃったのか、私の何がいけなかったのか。
  嫌かもしれないけど、話してもらえないかな?」
梓「ち、違うんです!私が悪いんです。私が勝手に変に思い込んだだけで…唯先輩は何も悪くないんです!」
唯「そんなことないよ」
梓「そうなんです!」
唯「それでも……やっぱり私が悪いんだよ」
梓「な、なんでですか……?私がこう言ってるのになんで……」
唯「どういう理由であれ、私があずにゃんを怒らせたことにかわりはないんだよ」
梓「そんなこと……」
唯「ねぇ、あずにゃん。一緒に話そ?」
梓「唯先輩……はい、そうですね。すみませんでした。」
唯「それで……」
梓「えっと……ですね。正直くだらないことかもしれません、私が勝手にそうとらえてしまっただけですし。
  あのですね、唯先輩夏フェスでこう言ったじゃないですか。
 『これからもずーっと、みんなでバンドできたらいいね』って。」
唯「うん」
梓「あのときはすごく嬉しかったです。これからもずっと唯先輩と一緒にいられるんだって思って」
梓「だから……その……」
唯「……そっか。ごめんね、やっぱり私が悪いよ」
梓「え?」
唯「最後……なんて言っちゃったのがあずにゃんにとって嫌だったんだよね」
梓「……そう、ですけどでも、私が勝手に唯先輩の言った意味とは別にとらえてしまっただけで……」
唯「うん、言い方悪かったよね。これが最後だなんて私も嫌だよ!」
梓「すみません……わかってはいたんですけど、気持ち……抑えれなくって」
唯「でもあれだね!」
梓「はい?」
唯「あずにゃんがそこまで私のことを想っててくれただなんてすごく嬉しいよっ!」
梓「なっ///そんなんじゃありませんっ」
唯「えー、違うのー?」
梓「違いますっ」
唯「そっかぁ……ねぇ、あずにゃん」
梓「な、なんですかっ」
唯「あずにゃん聞いたよね?私にとってあずにゃんは何なのか……って」
梓「は、はい」
唯「私にとってあずにゃんは……一番大事で大切な、可愛いあずにゃんだよ」
梓「……なんですかそれ」

唯「あずにゃん……好きだよ」

梓「……!」
唯「大好き……」
梓「あ、あの!どういう意味でしょうか!」
唯「こういう意味……だよ」

 そう言った唯先輩は私の両頬を優しくつつみこみ、顔を近づけて……。

梓「!!」
唯「ん……伝わった……?」
梓「あ、え、えっと、その、あの……///」
唯「うん」
梓「私もっ、唯先輩のことがっ、そのっ、だ、大しゅきでしゅ!」
唯「……」
梓「ああああああっ///」
唯「もぉ、可愛いんだからぁ♪」
梓「うぅ……すごく恥ずかしい///」
「ねぇ、あずにゃん」
梓「は、はい///」
唯「これからもずっと一緒にいようね!」
梓「はい!」
唯「そうだ、あずにゃん」
梓「はい?」
唯「お互い告白しあったし、キスもしたし……私たちって恋人同士ってことでいいのかな?」
梓「こ、恋人同士///」
唯「あれ、違ったぁ?」
梓「い、いえよろしくお願いします!」
唯「えへへ、こちらこそよろしくね♪」

 こうして私と唯先輩はいろいろあったものの恋人同士になったわけです。
 軽音部の先輩後輩として始まった合宿が、恋人同士の合宿になるとは……。
 そんな私たち二人きりの合宿はまだ始まったばかり……。
 このあとどうなってしまうのか、考えただけで恥ずかしいです///

唯「あずにゃん、泳ぎにいこっか!」
梓「はい!」

END



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最終更新:2012年09月11日 05:54