秋山澪はわんこ唯の夢を見るか?
部室に行くと、唯が寝ていた。
「唯だけなのか……」
「ン……。澪ちゃーん」
突然名前を呼ばれて、ビクッと体を震わせる。一瞬、起きたのかと思ったが、どうやら
寝言だったらしい。名前を呼ぶくらいだから、私の夢でも見てくれてるのか、と思いきや
すぐに「りっちゃーん……ムギちゃーん、あ~ずにゃ~ん……むにゃ」などと次々に他の
部員の名前も呼び始めたりして、それがまた拍子抜けというか……。
寝言だったらしい。名前を呼ぶくらいだから、私の夢でも見てくれてるのか、と思いきや
すぐに「りっちゃーん……ムギちゃーん、あ~ずにゃ~ん……むにゃ」などと次々に他の
部員の名前も呼び始めたりして、それがまた拍子抜けというか……。
「にしても……何だ? この髪形」
今の唯はいつものショートボブではなく、頭の上の方で短いツインテールを作っていた。
お馴染みのヘアピンは外され、机の上に置いてある。そう言えば、ちょっと前に教室でこ
んな髪形にしてたな。私はあの時、憂ちゃんが持ってきた唯のヘアピンを受け取ってたか
ら、あんまり見られなかったんだけど。
お馴染みのヘアピンは外され、机の上に置いてある。そう言えば、ちょっと前に教室でこ
んな髪形にしてたな。私はあの時、憂ちゃんが持ってきた唯のヘアピンを受け取ってたか
ら、あんまり見られなかったんだけど。
「ま、髪形は良いとしても、問題はこっちだよな」
私は覗きこむようにして、ソファの背に半分隠れた唯のお尻の方を見る。そこから本来、
人間にあるまじきものが顔をのぞかせていたからだ。
人間にあるまじきものが顔をのぞかせていたからだ。
「尻尾……だよなあ。どうみても」
本物なのか、作り物なのか。まあ本物だったら色々問題な気もするが、ちょっと気にな
るので触ってみる事にする。
るので触ってみる事にする。
「おっ……これはなかなか」
ふかふかのもふもふで結構な手触りだった。いつだったか、唯が私の指を「ぷにぷに~」
だのと言いながら延々触り続けたことがあったが、今になってその気持ちが分かった気が
した。これがずっと触っていたい感触というやつか。さっきから唯が変な声を出してるの
は気にしないことにしよう。
だのと言いながら延々触り続けたことがあったが、今になってその気持ちが分かった気が
した。これがずっと触っていたい感触というやつか。さっきから唯が変な声を出してるの
は気にしないことにしよう。
「み、澪ちゃん……そろそろ勘弁して欲しいんですが」
「なんだ、唯。起きたのか」
「そりゃ、あんなことされれば誰だって起きるよッ!」
「あんなことって……」
「澪ちゃん、尻尾はそんな安易に他人に触らせていいものじゃないんだよッ!」
「そうなのか?」
「そうなんです」
そもそもなんで尻尾生えてるのか聞きたいんだけどな、私は。と言うかその口ぶりだと
それは作り物じゃなくてマジで生えてるのか。
それは作り物じゃなくてマジで生えてるのか。
「しかしその髪形で尻尾まで生えてると、本当に犬みたいだな」
「犬みたいって言うか犬なんだよ」
「いや、人間だろ……」
「人間だけど、犬なんだよ」
「なんだそりゃ」
「信じてないでしょ」
「まあな」
そんな感じで適当にあしらってると、だんだん本当の犬みたいに、唯の犬耳――本当は
髪を括ってるだけなんだろうが、耳にしか見えないのでこう形容させてもらう――と尻尾
がちょっと寂しそうに垂れ下がり始めた。それから唯は踵を返して部屋の隅の方へと歩い
て行く。機嫌を損ねてしまったようだ。
髪を括ってるだけなんだろうが、耳にしか見えないのでこう形容させてもらう――と尻尾
がちょっと寂しそうに垂れ下がり始めた。それから唯は踵を返して部屋の隅の方へと歩い
て行く。機嫌を損ねてしまったようだ。
「ゆーい」
名前を呼んで手招きしてみるが、ふてくされてるのか、唯はそっぽを向いてやってこな
い。食べ物で釣ろうかと思ったが、あいにく私は持ち合わせてなかったし、部室に据え置
かれてある物も、今は切らしているようだった。
い。食べ物で釣ろうかと思ったが、あいにく私は持ち合わせてなかったし、部室に据え置
かれてある物も、今は切らしているようだった。
「やれやれ」
仕方がないので私の方から唯の所に近づいて行く。顔こそ背けているが、私が近づくほ
どに大きく揺れる尻尾と犬耳が愛らしい。
どに大きく揺れる尻尾と犬耳が愛らしい。
「私が悪かったよ。機嫌直してくれ、な」
そう言って、頭を撫でてやる。千切れんばかりに振り乱されている尻尾は、見ていてち
ょっと心配になるほどだ。
ょっと心配になるほどだ。
「わんッ!」
「うおッ!?」
突然、唯が犬みたいに鳴いて、私に飛びついて来た。いきなりで受け身が取れず、唯が
私に馬乗りになる形となる。息を荒くしてじゃれつく唯を適当に「よしよし」とやってい
ると、だんだん私の制服をはだけてきて――。
私に馬乗りになる形となる。息を荒くしてじゃれつく唯を適当に「よしよし」とやってい
ると、だんだん私の制服をはだけてきて――。
「ってお前何やってんだーッ!」
「澪ちゃん大好きッ!」
「誤魔化すなーッ!」
※
「んっ……そこはダメ……」
「どんな夢見てるのよ、あなた」
「……はっ。和?」
「ええ。ずいぶんな夢を見ていたみたいね、澪」
「ここ、教室……唯の机?」
ああそうか、和と唯と一緒に勉強してたんだっけ。途中で寝ちゃったのか。しかし、和
の言う通り、ずいぶんな夢を見てしまったものだ。唯にじゃれつかれてそのまま……。そ
う、ちょうどこんな風に制服もはだけて――。
の言う通り、ずいぶんな夢を見てしまったものだ。唯にじゃれつかれてそのまま……。そ
う、ちょうどこんな風に制服もはだけて――。
「って、何でッ!?」
「何でって寝苦しそうだったから」
「だったら起こしてよ……」
制服の前を直しながら、不満げに呟く。
「いや、“起こすなッ! まだこの夢に浸っていたいッ! ”ってオーラが出てたから。
ちなみに唯も同意見」
ちなみに唯も同意見」
「むう……」
「あ、ついでにそれやったの私じゃなくて唯だから安心して」
何を安心すればいいのかよく分からないが、そうこうやってると――。
「あ、澪ちゃん、起きたんだー」
「ゆ……いッ!?」
「どしたの? そんな驚いて」
「だってお前、その頭」
「あ、これ? どう? かわいい?」
「犬耳……」
「澪、あなた大丈夫? まあ確かに犬っぽいとは思うけど」
「髪括ってるだけだよー。って言うか澪ちゃん猫耳より犬耳派?」
そう言ってカラカラと笑う唯。和もちょっと笑いをかみ殺している感じだ。私は一気に
恥ずかしくなって耳の先まで顔を真っ赤に染める。なんだかもう踏んだり蹴ったりだ。
恥ずかしくなって耳の先まで顔を真っ赤に染める。なんだかもう踏んだり蹴ったりだ。
「澪ちゃん、澪ちゃん」
いつの間にか、唯が机の前まで来ていた。私が顔を上げると、彼女はちょっと照れたよ
うにモジモジして、それから意を決したように一つ深呼吸をする。呆けたような顔をして
いると、突然、唯は私の大好きなあの人懐っこい笑顔を浮かべ、こう鳴いたのだ。
うにモジモジして、それから意を決したように一つ深呼吸をする。呆けたような顔をして
いると、突然、唯は私の大好きなあの人懐っこい笑顔を浮かべ、こう鳴いたのだ。
「わんッ!」
それはまるで、夢の続きを見ているようだった。
(了)
オチをつけるということの難しさを知る。というかオチてない。
たまには違った書き方やろうとしたら一人称地の文の書き方忘れてたという
たまには違った書き方やろうとしたら一人称地の文の書き方忘れてたという
初出:2->>302
- 何て破壊力だ… -- (名無しさん) 2011-03-15 21:49:22
- 可愛すぎて死んだ -- (名無しさん) 2012-01-20 02:39:05
- 萌え萌えキュンっ -- (名無しさん) 2012-08-30 01:50:59