唯澪@ ウィキ

エルドラド

最終更新:

yuimio

- view
だれでも歓迎! 編集

エルドラド


THE ALFEEの「エルドラド」(モンタナ・ジョーンズED)を聴いていてなんとなく思いついた話。
元の歌詞とは全然関係無いです。

『エルドラド』

金。
他の物質による化学変化や錆びのような酸化を起こさない、化学的に極めて安定した物質。
その不変の輝きを、人は古来から永遠の象徴として尊んできた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

秋も深まった頃、街の公園の銀杏並木の下を散歩するのが好きだ。
黄色い落ち葉の舞う中を、詞を考えながら歩いていると、とても落ち着いた気分になる。
でも、今年の秋はちょっと違う。
そわそわして、どきどきして、甘酸っぱくて……落ちつくどころじゃない。
何故なら……。
「桜並木も奇麗で良いけど、銀杏並木も良いね。なんかロマンチックだよ」
唯が、大切な恋人が側にいてくれるから。

「良かった。ムギや梓はともかく、唯はこういう所は退屈なんじゃないかってちょっと心配だったんだ」
「退屈なんてしないよー、澪ちゃんとのデートだもん。きっとどこへ行ったって楽しいよ」
「えっ!? そ、そう言ってくれるとう、嬉しいかな」
「ふふ、照れてる澪ちゃん可愛い」
まったく、これじゃ詞を考えるどころじゃないな。

そんな風に話している間にも、落ち葉はほろほろと舞い落ちる。
歩道はもう落ち葉でいっぱいだ。
「歩道も落ち葉でまっ黄色だねー。まるで金貨を敷き詰めてあるみたい」
「へえ、唯にしてはなかなか詩的な表現だな」
「むーっ! 『唯にしては』なんてひどいよ、澪ちゃん!」
「ふふ、ごめんごめん」
むくれる唯をなだめつつ、私は唯の言葉にイメージが刺激されるのを覚えていた。

「金貨を敷き詰めた道か……。まるでエルドラドだな」
「澪ちゃん何それ?」
「昔、ヨーロッパ人が南アメリカのどこかにあると信じた黄金に溢れる国だよ。
 建物や身の回りの品まで全てが黄金で出来ているというこの国を見つけようと、
 たくさんのヨーロッパ人が南アメリカへ渡ったんだ」
「うわぁ~、そりゃ探しに行くよねえ。で、エルドラドは見つかったの?」
無邪気な唯の声。真相を言うのはちょっと気が引けるけど、言わないとな。
「どこを探しても見つからなかったよ。
 いや、そもそもそんな国は最初から無かったんだ」
「最初から無いものを一生懸命探してたのか……可哀想だね」
「ああ……」

新大陸でいくら黄金を手に入れても、征服者達は満足しなかった。
エルドラドにはさらなる黄金があると信じていたから。
血にまみれた探検の果てに全てが幻だと分かったとき、後に残されたのは
破壊され尽くした文明と大地だけ。

エルドラド、それは華やかなイメージとは裏腹に、人間の愚かさの象徴なのかもしれない。
そんな物悲しさに囚われていると、急に手のひらに温もりを感じた。
見ると、唯の手が私の手をきゅっと握り締めている。

「唯、どうした?」
「澪ちゃんがなんか悲しそうな顔してたから、つい……」
「そうか……ありがとうな」
礼を言って、もう片方の手で唯の頭を撫でてやる。
「えへヘ……どういたしまして」

唯の心底嬉しそうな笑顔。
私の大好きな笑顔。
いつからだろう、この笑顔がこんなにも好きになったのは。
……きっかけはたぶん一年の合宿の時。
まばゆい光の中、笑顔でギターを弾く唯を見てから。
あの一瞬は、今でも私の心の中で輝き続けている。

そうか。
合宿だけじゃない。部室で、教室で、商店街で、修学旅行で、学園祭で、ライブハウスで……。
唯と、みんなと過ごした日々の記憶。
どれ一つとして色褪せることなく、黄金のように輝き続けているその記憶こそは、
世界でただ一つ、私の心の中にだけ存在するエルドラドなんだ。

「手、このままつないで歩こう、唯」
「おお!? 澪ちゃんってば急に大胆ですな~」
「ああ、今の私は大胆なんだ。だから……こんな事もできちゃうんだぞ」
素早く周りに人がいない事を確認すると、引き寄せた唯の額にちゅっとキスをする。
とたんに真っ赤になってうつむく唯はとても可愛くて。
……エルドラドに黄金がまた一つ増えたかな。


END

初出:2->>636->>637

  • エルラルドを愚かさの象徴と言ってるのに・・・・ -- (名無しさん) 2010-12-18 12:26:58
名前:
コメント:

すべてのコメントを見る

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー