注・かなり特殊な作品です。ニコニコ動画のゆかりんぶりげいど(sm6555799とか)をお聞きになりながら読んでください。
虐待はありません。
魔法の森の一隅で不思議なものが見られると聞いて、俺はそこへ向かった。
夜が更けて真っ暗になると、突然どこからともなく地面にピンスポットライトが降り、一団の
ゆっくりが現れた。
一頭はナイトキャップに似た柔らかそうな帽子。ゆっくりぱちゅりーか?
いや、金髪だ。あれは珍しい、ゆっくりゆかりん・ゆっかりんだ!
そしてその周りにいるのは、もっと奇妙なゆっくりだった。
「罪」と書かれた袋のような形をしているのだ。二十頭もいるだろうか。
よく見れば、後方の暗闇に、ゆっくりちぇんとらんしゃまの式神親子と、ゆっくるなさ、ゆっくるらん、ゆっくりりかの三姉妹もいる。
ゆっかりんがピンスポの中央に出て、罪袋はやや後ろで横一列に並んだ。
ハッと気付けば、おれの周りに、大勢のゆっくりが観客のように集まって、ゆっかりんを見つめていた。
一体何が始まるのか。
俺はごくりと唾を飲み込んで、こっそりとゆっかりんを見つめた。
ゆっくリバー三姉妹が、キレのいいドラムのイントロを入れるとともに、ゆっかりんと罪袋が歌いだした。
ダラララ
「ゆかゆかーゆかりーゆかりゆかゆか
くずれおーちるすーなのろーうかく
ゆかゆかーゆかりーゆかりユカリンリンリン
とけてきーえるはーやみのくーにい」
「ゆかゆかーゆかりーゆかりゆかゆか
やみがおーりるひーがしのそーらー
ゆかゆかーゆかりぃー ゆかりん!
あかくそーまったあー かぜに 」
驚いた。
ゆっかりんは、いきいきとした高く力強い美声だった。
そして罪袋は美声とは言えないが、なかなか勢いのある男声だ。
両者はわずかなズレもなく歌声をハモらせていた。
それは、ゆっくりとは思えないほど見事な合唱だった。
「ゆかゆかーゆかりーゆかりゆかゆか
ゆられはーかなくーきえてーゆくは
ゆかゆかーゆかりーゆかりユカリンリンリン
たったひーとつのー凍ったともしび」
「ゆかゆかーゆかりーゆかりゆかゆか
あまねくーよのわーびしさだーけー
ゆかゆかーゆかりぃー
そぉっとのーこしてー」
罪袋が、さっと隊列を変えた。
中央に顔(罪?)を向け、半円状に取り囲む。
ゆっかりんはうっとりとした半眼になり、独唱モードに入る。
「んーんー んーんーんー んーんー んーんーんー
いーまー すーぐーにー とーきー はーなーてー
んーんーんーんーんーんーんー んーんーんーんー
こーこーろーをーしーばーるー くーさーりーをー」
罪袋が鼻声でハミングしながら、一小節ごとにビクンビクンと跳ねる。
いささか不気味だ。
「んーんー んーんーんー んーんー んーんーんー
いーまー すーぐーにー とーきー はーなーてー
んーんーんーんーんーんーんー んーんーんーんー
こーこーろーをーしーばーるー くーさーりーーー」ダカダカダカダカ
ドラムの間に罪袋が駆ける。
ゆっかりんを囲む逆V字型のフォーメーションだ。
袋の布(皮?)を震わせて熱唱に入る。
「かっわいっいよ! かっわいっいよ! ゆーかりんーん
いーにしーえとー かーわらーずにー つー づーくー
しょうじょ臭ーが しょうじょ臭ーが あっがががが ゆっかりんりん
うーつくーしきー あーおいーろでー そーまりーし てーんくーうー」
いやに力の入ったコーラスだ。
ゆっかりんに掛ける熱い思いが伝わってくる。
「かっわいっいよ! かっわいっいよ! ゆーかりんーん
つーかさーどるー しーきたーちあー やー つーりー
しょうじょ臭ーが しょうじょ臭ーが くつしたしゅうも ゆっかりんりん!
とーなりーあうー きょーうかーいも きーりさーいてー すっ すーめー!」
ダッ ダララッラッ
靴下臭ってなんだ。ゆっくりには、そもそも足などない。
何か深い意味のある歌詞なのかもしれない。
ドラムが入ると、罪袋たちは、今度はゆっかりんの周りを勢いよくぐるぐると回りだした。
「ゆーかーりーんりん ゆーかーりーんゆーかーりーん
(かわいいよ!)
かーなーしーみにー かーたーちーがあーるーなーら
ゆーかーりーんゆーかーりーん ゆーかーりーんりーん
いーまーこーこでーみーちーて はーなーにーなれーえ」
パート別の輪唱だ。罪袋たちは土煙を蹴立てて激しく走り回る。
ゆっかりんも空に抜けるようなよく通る声で、朗々と歌いあげる。
意味はわからないが何かものすごい盛り上がりだ。
「ゆーかーりーんりん ゆーかーりーんゆーかーりーん
(かわいいよ!)
あーやーかーしのー すーべーてーのちーかーらーを
ゆーかーりーんゆーかーりーんりーん
こーこーでーささーげーるーからーあ」
ここでゆっかりんは休憩。どこからか出したハンカチを口元にくわえる。
変わって、立ち止まった罪袋たちが、観客席へ向けて唱え始めた。
「ゆかゆかーゆかりーゆかりゆかゆか
ゆかゆかーゆかりーゆかりー ゆかりんりんりん
ゆかゆかーゆかりーゆかりゆかゆか
ゆかゆかーゆかりーゆかりゆかりぃー ゆかりん!
ゆかゆかーゆかりーゆかりゆかゆか
ゆかゆかーゆかりーゆかりー ゆかりんりんりん
ゆかゆかーゆかりーゆかりゆかゆか
ゆかゆかーゆかりぃー」
ゆかりだけでここまで歌えるのも、ある意味凄い。
罪袋パートが終わると二番に入ったらしく、ゆっかりんが復帰して「いにしえと~」のBメロを繰り返し始めた。
期待をたっぷり含んだ力唱でそこを駆け抜けると、いよいよ二番サビに突入する。
あっ、ゆっくりらんとちぇんも飛び込んだ! ゆっかりんの背後左右を固める。
大幅に強まった高音がギンギンに響きだす。
「ゆーかーりーんりん ゆーかーりーんゆーかーりーん
(かわいいよ!)
(あー かなしみに!)
かーなーしーみにー かーたーちーがあーるーなーら
ゆーかーりーんゆーかーりーん ゆーかーりーんりーん
いーまーこーこでーみーちーて はーなーにーなれーえ
ゆーかーりーんりん ゆーかーりーんゆーかーりーん
あーやーかーしのー すーべーてーのちーかーらーを
ゆーかーりーんゆーかーりーんりーん
こーこーでーささーげーるーからーあ」
ゆっかりん熱唱!
ナイトキャップもどきのZUN帽をピリピリ震わせ、担いだ傘をぐるぐる回して
梢も震えよと歌いたてる。
もちろん罪袋の回転爆走もいよいよ激しくなり、祭りか戦争のような騒々しさだ。
「ゆーかーりーんりん ゆーかーりーんゆーかーりーん
(かわいいよ!)
たーたーかーいがー たーかーなーるこーどーうーと
ゆーかーりーんゆーかーりーん ゆーかーりーんりーん
みーなーぎーるちーかーらーか そーくーしーてくーう
ゆーかーりーんりん ゆーかーりーんゆーかーりーん
(かわいいよ!)
(あー このせかい!)
こーのーせーかいー おーわーらーせてーしーまーえ
ユカリンハ少女臭ダッテイッテンダロ!だーらずぅー!
あーなーたーが のーぞーむーならぁー!」
聞き取りにくい罪袋絶叫のところでは、いきなり周り中から同じ叫びがガヤガヤッと湧き上がり、叫び終わるとともに、ゆーっ! と歓声がはじけたので、俺は心底たまげた。
いつの間にかまわりに山のようなゆっくりが集まって、ステージ(?)と一緒になって歌っていた。
「あー ゆーかーりーんがー まーわーるーと
あー おーとーずーれたー はーるーのーは
ぱーたーぱーた はーばーたーくまーんーじーがさー
じーまーりーに こーこーろーみだーさーれーてくー
あー おーふぁんーつみーえーてーるよー!
あー ふーうーいーんのーはーざーまがー
可愛いよゆーかりー可愛いーいよー
ゆーがーんーでゆーれーてーいるー」
この部分、罪袋が中央のゆっかりんに押し迫って、何か下から覗き込むような異様なポーズで異様に力を込めて叫んだが、何の意味だろう。おふぁんつってなんだ?
ゆっかりんは思いっきりSっぽく目を輝かせて、二、三匹の罪袋を蹴っ飛ばしていた。
「あー ゆーかーりーんがー まーけーるーと
あー あーなーたーにはー 死ーしーてーも
はーげーしーくやーぶーれーる 少う女ぉふくーうー
みーえーぬーまぼーろーしーの あーのーさーくらー
あー 加齢臭じゃねぇ しょうじょ臭がー
あー どーれーだーけ かーかーってもー
ユカリンハ少女臭ダッテイッテンダロ!だーらずぅー!
こーたーえー みつーけーるーからぁー!」
だーらずぅー! と森中のゆっくりが叫んだような大絶叫。
過ぎた途端に、ゆぅぅぅぅ! ゆぅぅぅぅ! とカーテンコールみたいな叫びが起こり、紙ふぶきのような木の葉やらゆっくりちるのの雪片が盛大にパーッと舞い、ドスの閃光がどーんと夜空に突き立って、さながらカウントダウンイベントの花火爆発のような大騒ぎとなった。
そのゆーゆーと騒々しい歓声の覚めやらぬ中、引き波のようにフェードしながら、ゆっかりんwith罪袋が歌い終えていった。
「ユカユカゆかりゆかりユカユカ ユカユカゆかりユカリユカリンリンリン
いーまーすーぐーにー とーきー はーなーてー
ユカユカゆかりゆかりユカユカ ユカユカゆかりー ゆかりん!
こーこーろーをーしーばーるー くーさーりーをー
ユカユカゆかりゆかりユカユカ ユカユカゆかりユカリユカリンリンリン
いーまーすーぐーにー とーきー はーなーてー
ユカユカゆかりゆかりユカユカ ユカユカゆかりー
こーこーろーをーしーばーるくーさーりー
んーんー んーんーんー んーんー んーんーんー
いーまー すーぐーにー とーきー はーなーてー
んーんーんーんーんーんーんー んーんーんーんー
こーこーろーをーしーばーるー くーさーりーをーっ」
スパッと曲が途絶えて余韻が遠ざかる中、八角星の陣形を組んだ罪袋隊の中央で、らん、ちぇん、そしてゆっかりんの三頭が、斜めに顎を引いて目を閉じ、ポーズを決めた。
スウッ、とピンスポが消え、すべてが闇に沈む。やがて湧き出す虫の声。
星明りに目が慣れたとき、あたりのゆっくりは煙のごとく消え、気がつけばそこには俺ひとりなのだった。
(おわり)
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この作品は動画を見たおかげで電流走って思いつきました。どこかの誰かが作った一発ネタっぽいマッシュアップですが、なんかものすごくツボにはまったので、そこへさらにゆっくりをコラボレート。
各アレンジャーさん、勝手に使っちゃってごめんなさい。
最終更新:2009年03月29日 03:43