ゆっくりいじめ系143 わからないちぇん

 とある飲み屋の一角。
 完全に出来上がっているらしく顔を真っ赤に染めた男が、ひたすらゆっくりちぇんに話しかけていた。
「……だから、おれはいってやったんだよ……このバカヤロー! ってな……すしたら、あんのヤロー上にちくりやがって……っんっとにじょうだんじゃねえよなぁ」
 ちぇんは、ろれつが回っていない男の言葉をただ黙って聞いている。
 時々にこくこくとうなずいている所を見るに、真剣に話を聞いているらしい。
「……なんだよ、お前に分かるか!?」
 割れそうなまでに大きく音を立ててグラスを置く。
 だがちぇんは、大きな音にも怯えず、ただゆっくりと呟いた。
「わかるよ……わかるよ」
 手に頬をこすりつける。その動きは、男を慰めているかの様だった。

「そうか、分かってくれるか……分かってくれるか……」
 涙を流しながら、ゆっくりちぇんを抱きしめる男。
 強く抱きしめすぎているのか、ちぇんの目にも涙が浮かんでいる。
「ゆぎゅっ! わがるけどぐるじいよー!」
「すまんすまん、それでな……」
「うん。……わかる。わかるよ」
 男は、苦しそうにしているちぇんに軽く謝り、話を続けた。
「……で、おれはいってやったんだよ……このバカヤロー!!! ってな……」
「うんうん……わかるよ、わかる」
 酔った男のグチはまだまだ続く。ちぇんは、それをただ分かって、慰める様に頬をすりよせる。
 幻想郷の夜がゆっくりと更けていった。





 『わからないちぇん』





 暇をもてあましてぶらぶらと散歩していたら、面白いものを見つけた。露店だ。
 珍しいので近くまで行ってみると、そこには『なんでもわかるよ! ゆっくりちぇん』と書かれた看板があった。
 ゆっくりちぇんは、何にでも『わかる』と答える極めてウザいゆっくりだ。
 だが、そんなウザいちぇんも、飲み屋でクダをまいてる人の相手をさせる場合には役に立つと聞いた事がある。
 何でも『わかる』と言い、決して相手の事を否定しないちぇんは、酔っ払いの相手をさせるにはもってこいなんだそうだ。

 ただ、少し不思議に思う事がある。
 そこで、僕はパンチパーマにTシャツ、ハラマキに妙なガラのズボンと、変わった格好のおっちゃんに質問する事にした。

「なー、おっちゃん」
「なんだ? ボウズ、ちぇんが欲しいのか?」
「いや、まだ買わないけど……こいつら、本当に『わかる』ってしか言わないの? 『わからない』って言う時もあるでしょ」
 そうなのだ。ちぇんは『わからない』と言う時もある。
 危機が迫った時、不機嫌な時など「わかる」と答えた場合自分にとって不都合がある時は「わからない」と発言する。
 そこについて聞いてみると、おっちゃんは豪快に笑いながら答えた。
「ボウズ、こいつらは全部おっちゃんがきっちり調教しとるからな。死にそうな時とかはわからんとも言うだろうが、普通に可愛がってたらわかるしか言わんから安心しろ」
 試しにと、おっちゃんは箱の中のちぇんを一匹取り出して、ぶん殴った。
「いだい! わがるよ! いだいよー!!!」
 かなり力を入れて殴ったらしく、一部が凹んだちぇんが泣き喚く。
 なるほど、確かにここまでやられても「わかる」と答えるならば、相当手荒に扱っても「わかる」だろう。
「買うよ、おっちゃん。いくら?」
「おぅおぅ、買ってくれるかい……10銭だ」
「おっちゃん、ありがと。じゃあねー」
「可愛がってやんなよー」
 信じられない位安いちぇんを買った僕は、おっちゃんの声を背中に受けて家に帰る事にした。



 それから数日、ゆっくりちぇんを殴ったり蹴ったりして遊んでいたが、段々と物足りなくなってきた。
 かなり強く殴っても、泣きながら『わかる』としか言わない上に、近づいて頬をすりよせてくるというお決まりのパターンにうんざりしてきていたのだ。
 一度そう思ってしまうと、もう『わかる』と言われる事すらウザく感じてしまう。手に頬をすりよせられる事が嫌になってしまう。

――もう、分かるって言われるのはうんざりだ。大体、何を分かってるんだよ。お前みたいな饅頭に僕の何が分かるってんだ。

 理解出来ていないのに『わかる』と言われる苛立ちが募っていく。
 その発散のため、段々と殴る手、蹴る足に力が入る。
 でも、ゆっくりちぇんは『わかる』と答えてすりよってくる。
 それが更に苛立ちを増幅させて、より力が入っていく。


 負の連鎖とでも言えるこの状態を改善したのは、寺子屋の休み時間中の、友人の一言だった。
「あそこの露店で売ってるゆっくりちぇんに『わからない』って言わせたら1円やるぜ」
 にやにやと笑う友人は、恐らく同じ露店でゆっくりちぇんを買ったのだろう。
 絶対に出来っこないというその目が、僕のやる気を引き出した。
 どちらにせよ、今の虐待を2~3日も続けていたら死ぬんだ。
 なら、より面白いやり方を選んだ方が楽しいじゃないか。

「良いよ、でも1円の約束は忘れるなよ」
「上等だ。ルールは死んだ時以外って事にしようぜ、それと期限を決めたいんだけど……」
「期限付き? じゃあ、一週間な」
「忘れるなよ。一週間でゆっくりちぇんに『わからない』って言わせたら1円払うからな」
「良いよ、やってやろうじゃない」

 寺子屋が終わると同時に席を立つ。
 友人が呆れた目で僕を眺めていたが、そんな事は気にもならなかった。

――一分一秒も惜しい。早くゆっくりちぇんに『わからない』と言わせたい。

 お金より、むしろ『わからない』と言うゆっくりちぇんが見たいという思いから、足は自然と早くなり、全力で走って帰った。


「わかるよ! おかえりなぶふぇ!?」
 家に帰った僕は、その勢いのままゆっくりちぇんに蹴りを入れた。
「わがるよー! いだい! わがるよー!」
 泣きながら『わかる』というちぇん。
 この期に及んで、まだ『わかる』ちぇんに怒りがこみ上げてくる。
 僕はちぇんを踏みつけながら、どこまで『わかる』のか試してみようと決心した。



「どうだ? わかるのか?」
「わがるぅぅぅぅぅ!!! わがるがらやべでぇぇぇぇぇ!!!」
 約束の一週間目。
 ゆっくりちぇんの顔には無数の細かい傷跡があり、片目は焼け焦げ、もう一方は刃物で切り刻まれ、二又の尻尾は片方が根元から切られ、もう片方はぐちゃぐちゃに潰れていた。
 だが、そこまでしても『わかる』と言うちぇんに対し、流石に僕は諦めた。
 殺す時には『わからない』と言うかもしれないが、それは負けている事になる。
 この時点で、僕の中ではゆっくりちぇんに『わからない』と言わせる事は、既に勝負になっていたのだ。
 ちぇん自身はただ鳴き声をあげているだけかもしれないけど、ここまでしても言わないんだから、ちぇん自身も悪いと思う。
 しかも、気持ち悪い事にどれだけ痛めつけても僕の手にすりよってくる。

――それで許してくれるとでも思っているのだろうか。だとしたら、大きな間違いだ。

 フラフラしながらも人形に頬をすりよせるちぇんをしばらく眺めてから、僕は友人の家に遊びに行く事にした。


 人形を飼い主の子供だと思ってほほをすりよせていたゆっくりちぇんは、蹴り飛ばしてくる足も殴りかかってくる手もない事から、ようやく暴力が終った事を認識した。

――わかるよ、やっとわかってくれたんだね……わかるよ。

 体のあちこちが痛い。目が見えない。自慢の尻尾は、もう何日も前に感覚を失った。それでも、這いずる様に寝床に行き、眠りに付く。

 そして、昔の夢を見た。
「わかるよ」と言ってあげれば、誰もが喜んでいた頃の夢だ。
 真っ赤な顔のニンゲンが、色々な事を言う。ちぇんは、それを聞いてただ「わかるよ」と言い、頬をすりよせてあげれば良かった。
 たまにアンコが漏れそうなほどに強く抱きしめられたりもするけど、それでもちぇんは、皆が喜ぶ顔を見るのが好きだった。
 ニンゲンが酸っぱい物を吐き出した時は、そのまま死んでしまうんじゃないかと心配になって、急いでニンゲンを呼びにいった。
 その時「てんちょー」と呼ばれる偉いニンゲンが寝かせてあげると、すぐに落ち着いたからほっとしたと同時に、ニンゲンは中身を吐き出しても死なないと知った。
 その時は、吐き出したニンゲンにずっと頬をすりよせていた事を「てんちょー」にもニンゲンにも感謝され、得意になって跳ねていた。
 穏やかで楽しい毎日。ゆっくりちぇんは、幸せだった。

 ゆっくりちぇんは、幸せだった頃の夢を見続ける。
「てんちょー」が悪いニンゲンに叩かれた時にかばったら、悪いニンゲンは、笑いながら許してくれた。
 その後、自分が悪いニンゲンに連れて行かれたけど、辛くはなかった。
「わかるよ」と言ってあげれば、悪いニンゲンも笑顔になって、悪くないニンゲンになったからだ。
 悪いニンゲンにお金を払って、子供が自分を連れて行った時も、辛くはなかった。
 自分を連れて行く時、子供は笑顔だったし、ちょっと叩かれたり蹴られたりしたけど、そんなに痛くなかったし、頬をすりよせてあげると、くすぐったそうに喜んでくれたからだ。

 でも、最近は違う。
「わかるよ」と何度言ってあげても、殴り飛ばされる。
 頬をすりよせようとしたら、ボールの様に蹴り飛ばされる。
 常に険しい表情でちぇんを見て「オマエニナニガワカル」と言いながら、何度も何度も痛い事をされる。
 それでも、ちぇんは諦めなかった。
 悪いニンゲンだって「わかるよ」と言ってあげて、頬をすりよせてあげれば悪くないニンゲンになったのだ。
「わかるよ」と言ってあげて、頬をすりよせればきっと元通りの悪くないニンゲンに戻ってくれる。
 そう信じて、ちぇんは何度も「わかるよ」と言い、頬をすりよせた。

――わかるよ、つぎはわかってくれるよ。つぎがだめでも、そのつぎはわかってくれるよ。

 そして今日、ついに分かってくれた。
 頬をすりよせても痛い事はしないし、怒った声も聞こえない。
 ちぇんは、悪くないニンゲンに戻ってくれた少年と、明日はどうやって遊ぼうか考えながら、数日ぶりにゆっくりと眠りについた。



 かくれんぼで遊んでいる最中に何かを思い出したらしく、友人が声をかけてきた。
「なぁ、アレどうなった?」
「アレ? ……なんの事だよ、それより見つかっちゃうから離れろよ」
「1円賭けてただろ、ゆっくりちぇんの事だよ。アイツ、どうなった?」
「あぁ、アイツか……結局、言わなかったよ」
 それを聞くと、友人はほっとした顔と笑顔が混ざった奇妙な顔になった。
 多分、1円なんて大金は持っていなかったんだろう。
「ふーん……なぁ、後で見に行っても良いか?」
「良いよ……ついでに、あげても良いよ、そんな事より、離れろって」
 ぐいぐいと友人を押しのけていると、後ろから「○○ちゃんみーっけ」と声が聞こえてきた。
「ほら、見つかっちゃったじゃないか! だから離れろって言ったんだよ!」
「良いだろ、別に。そんな事より、早く見に行こうぜ」
 僕の手を引っ張って、早く早くとせがむ友人。
 あんなものをそんなに見たいのかと少し呆れながらも、見つけた子に謝りつつ、大人しく引っ張られていく。


 家に帰ると、ゆっくりちぇんは死んでいた。
 僕が家を出た時のボロボロのままで、頬をすりよせていた人形を抱きしめる様な体勢で、眠っている様な死に方だった。
 友人は「うわぁ、気持ちわりー!」などと嬉しそうに言っていたが、僕はこの死体の片付けを思うと、面倒でたまらなかった。
 とりあえず、人形を引き剥がして、ゆっくりちぇんの死体を持って外に出る。

――その辺のゆっくりにでも食わせたら良いや。

 ちょうど、近くをゆっくり親子が通りかかったので、そいつらの方に投げ渡した。
 ゆっくり親子は、何も考えずに貪り食っていった。

「よし、じゃあ戻るか」
「次の鬼はお前だからな」
「えー、お前が先に見つかってたじゃないか」
「お前が隠れるのをジャマしなかったら見つからなかったんだよ」


 もうゆっくりちぇんの事など忘れた少年達が離れていく。
 その様子を、ゆっくり親子に食べられて半分になったちぇんが眺めていた。








 ゆっくりちぇんより、むしろガキがウザったくなっちゃったかも……。
 10スレ>>38のリクエストを聞いて、ちぇんを虐待してみました。
 >>36の参考になるかな?

 by319

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最終更新:2008年09月14日 05:45
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