「NTRれいむ.3」
「さて、自分の嫁を差し出したクソムしまりさ。楽しいショーがはじまるよ。ゆっくりしていってね」
鬼威さんは告げる。
蓋付きのガラスケースに閉じ込められたまりさへ。
これからおまえの目の前で、れいむは犯されてしまうだろうと。
妻のまむまむへ夫のものではない、別の
ゆっくりのぺにぺにがとあてがわれる。
れいむはただ欲望のままに遊ばれ、すっきりするための道具として好いように使われることになる。
情交の果てに待っているのは、さらなる絶望だ。
すっきりすれば即妊娠のゆっくりなのだから、子種をその身に受けたれいむのその後は想像するまでもない。
だがまりさ、おまえには止められない。
おまえはゆっくりなのだ。
文字通りに手も足も出ない、どうしようもなく無力な存在なのだ。
まして力無きだけが罪ではなく、妻の窮地の招いたのは、おまえの浅はかな言動が故ではなかったか。
ならばいっそ、その屈辱に甘んじるのが相応しかろうと、鬼威さんはそう告げているのだった。
「……まつのぜ! にんげんさん、ちょっとまつのぜッ!」
まりさは金色の髪の毛を振り乱して鬼威さんを制止する。
ガラスケースの内側からでは、もみあげも舌も鬼威さんには届かない。だから必死になって声を張り上げる。
一向にまりさを見ようとしない鬼威さんの気を引くために、狭いケースの中をびよんびよんと跳ね回り、すっ転んでしたたかに顔面を打ちつけても、帽子のずれた見っとも無い姿のままで声の限りに叫ぶのだ。
「ちがうのぜ! こいつぁまちがってるのぜ!」
内から湧き出る言い様のない焦燥感に焼かれ、まりさは気が狂いそうになっていた。
まりさのお嫁さんが見知らぬゆっくりに犯される。ましてその相手はお飾りなしのゆっくりだという。
耐え難いほどの痛みが、まりさの餡子脳を激しく掻き乱していた。
お飾りのないゆっくりは、ゆっくりできない屑だ。
お飾りで互いを認識しているゆっくりという種にとって、お飾りがないということは、人間で言えば顔のないのっぺらぼうのようなものだ。
誰ともわからない。むしろ誰でもない。
それでいて自分によく似た無貌のモノ。
そんなものは排除すべき異質だ。迫害すべき下等な存在なのだ。
よりにもよって、そんなお飾りなしに大事なれいむが犯されてしまうなんて。
「おかしいのぜ! なっとくいかないのぜ!」
なぜこんなことが起きているのか。いったい何が悪かったというのか。
考えたところで、まりさには何もわからない。わからないが、どうしよもなくゆっくりできない。
ゆっくりできることは正しく、その逆は誤りだ。
だからこれは大いに間違っているのだと、まりさは訴える。
「にんげんさんのくせに、こんなかんたんなことがわからないなんて、どうかしてるのぜ?!」
必死にゆっくりの理屈を説いたところで、人間の鬼威さんには届かない。
何度繰り返しても結果は同じだ。
「……こんなのって、ないんだじぇ……」
いつの間にかまりさの声は弱まり涙に震えていた。
徹底的に無視されることで、まりさの不安は際限なく広がっていき、まりさの許容量を遥かに超えて溢れていた。
もはや半泣きでガラスにへばりつくのが精一杯の状態だ。
このままでは本当にれいむがお飾りなしに犯されてしまうと、その現実を、否応無しに実感させられてしまっていた。
「……にんげんさん、ごめんなしゃい。まりさがばかだったのじぇ。
だから、だからもう、ゆるしてほしいのぜ。
れいむを、たすけってやってほしいのぜ……」
鬼威さんは黙ったまま、何も応えない。
「……おいおい、なんなのぜ、そのたいど。
このまりささまが、こうしてあやまってるのぜ? なんとかいったら、どうなのぜ?
にんげんさんには、ぷらいどがないのかだぜ?
かー、がっかりなのぜ! 」
鬼威さんは応えない。
「このくそじじぃ!
ゆっくりできないにんげんは、しね。ゆっくりしないで、いますぐしね!」
鬼威さんはまりさをどこまでも無視し続ける。
まりさの語彙は底を尽き、口をぱくぱくと開いてみても、それ以上の言葉が出てこない。
「……っ……」
一瞬の静寂の後、
「ぴぎぇぇええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
まりさのわずかな理性が砕けた。
「にんげんしゃん、もうやめでぐだざい。ばりざがわるがっだでず。
ごべんなざいしばす。あやま゛るがら、あやま゛るがら!
どべて!
もう゛そのでを、どべでくだざい!
いぢめにゃいで! ばりしゃはもうむりだじぇ!
ごれいじょう、ばりしゃをいぢめにゃいでほしいの!
ばりざのれいぶをどらないであげで!
ばりざのれいぶをだずげでぐだばい!
れいぶはにげてぇぇえええええっ!!」
涙と涎を撒き散らして、まりさはケースの中を転げまわる。
癇癪を起こして暴れる姿は、ゆっくりとはいえ子供の親とは思えなぬほどの無様さだ。
針の一本も刺されていないままに、いったいどれほどの苦痛がまりさを苛んでいるのか。
そんなまりさの姿を見下す視線が三つあった。
「にゃ~に、ありぇ~」
「ぷっくすっ、きゃっちょわりゅ!」
「やめちぇよね、れいみゅはじゅかしぃわ」
あわれあわれ、と勝ち誇ったように嘲笑う三匹の赤ちゃんゆっくりたちに、まりさの気持ちなどわかろうはずがなかった。
四本の針に串刺しにされたあかちゃんまりさは、穴という穴から、涙やしょんべんやうんうんを垂れ流しながら「……ゅぎぇ」と小さい悲鳴を吐くのみであった。
そんなまりさたちに背中を向けたまま、鬼威さんは手早く作業を進めていた。
「ゆーん、れいむはおそらのたびでつかれたのー」
ケースの中で目を閉じて寝そべるれいむの傍ら、帽子なしのまりさを片手で鷲掴みにして振り回している。
「……んー、こんぐらい揺すっときゃ十分か」
帽子なしまりさの表情を確認し、鬼威さんがつぶやく。
頬を紅く染めてうっとりと目を細めるその様は、人間で言えば羞恥に身悶える女のそれであった。
ゆっくりには身体を揺らされると性的な興奮を高めるという生態がある。
鬼威さんはゆっくりのこの生態を利用して、帽子なしまりさを発情させていた。
なぜ揺すられると興奮するのかについては、揺れによる振動が擬似的なすーりすーりとして作用するからだいう説がある。
すーりすーりとは、親密なゆっくり同士が「すーりすーり」と口にしながら互いに肌をこすり合わせる行為のことで、これにより親愛の情を表したり、また番の場合は性交渉の前戯とする。
それが相手も無くただ揺すられただけで、すーりーすーりと誤認して反応してしまうのは、しょせん餡子脳であるが故の働きである。
さらに言えばもともと動きが緩慢なゆっくり同士のすーりすーりに比較し、外部から与えられる急激な振動はより強く性的興奮を喚起させる効果があった。
帽子なしまりさの意思など関係なかった。
初めは痛みを恐れて逃げ回り、持ち上げられたら「まりさはおそらをせいふくしたのぜ」と得意になって、揺らされたら全てを忘れて発情する。
こんなお粗末な生き物に感情を与えたもうたのは、果てして神の御業か悪魔の所業か。
「んふっ。んふふ……」
半開きの口から涎を垂らして、帽子なしまりさが熱い吐息をもらす。
手前に突き出された腹とも腰ともつかない表皮の一部が勃起しており、吐く息に合わせて上下している。
これがゆっくりの生殖器である、ぺにぺにだ。
雌雄同体であるゆっくりは、ひとつの個体でぺにぺにとまむまむの両方を有している。
帽子なしまりさが興奮によってぺにぺにを発露させたのは、過去に父親として生活をしていたからか、それともれいむからのメスの臭いを感じ取ったからか。
「ゆふん、なかなかの美れいむなのぜ」
鬼威さんの手を離れた帽子なしまりさは、おろされたケースの中を自分の意思で這い進み、未だ瞳を閉ざしたままのれいむの前に立っていた。
「どれ、ちょっと味見をしてもらおうか、なのぜ」
下卑た笑みをたたえて、帽子なしまりさはそそり立ったぺにぺにをれいむの口へと近づける。
「ゆゆっ?」
夢か現か、半覚醒のままれいむは、覚えのある刺激的な臭いにすぐさま反応した。
そうして唇に触れる固い感触から何かを悟り、意識よりも先にれいむの女だけが目を覚ます。
「……もう、まりさったら。すっきりはあかちゃんたちがもうすこし、おおきくなってからなんだよ。
いつもみたいにおくちでしてあげるから、さいごまですっきりしちゃだめなんだからね」
しかたがないわね、とれいむが舌をのばしてぺにぺに触れる。
「んほっ!」帽子なしまりさがの身体がびくりと跳ねた。
ぺにぺにから伝わる生暖かい感触に気を良くしてか、さらなる刺激を求めてれいむへと押しつける。
「あふぅ。ごーいんだよ、まりさ。
むにゅむにゅ。
あいからず、においがきつよね。まりさのぺにぺにさんは。
んちゅ。
やだっ、きょうはいつもよりも、はむはむしづらいよ。
どうしてこんなにおおきくしてるの?」
れいむは器用に舌先をからめ、ぺにぺにに唾液を擦り付けるように丹念にねぶる。
「んじゅ、ゆっ、んじゅ」
れいむ横たわった体勢のまま、時に音を立てて吸い上げ、時に大胆に根元まで口にふくんで愛撫する。
「んほー、いやらしいのぜ、れいむのしたづかい。
こいつは、そうとうのすきものなのぜ。こんないんらんなゆっくり、みたことないのぜ。
いったいなんぼんのぺにぺにをくわえこんだら、ここまでうまくなるのぜ?」
「おかしなことをいうのね、まりさ。
ぜんぶまりさが、れいむにしこんでくれたんでしょ?」
れいむがぺにぺにから口を離して、上目遣いでまりさを見つめる。
愛しい相手へ媚びる、女の仕草。
だが、そこにいたのは愛しい夫のまりさではなく、忌々しいお飾りのなしのゆっくりだった。
「んふっ!」れいむの視線に気づいた帽子なしまりさが満足げな笑みを返す。
れいむは目を丸くして硬直した後、盛大に口から餡子を吐き出した。
「ゆべぇぇええええええええぇぅぅ、ぅうげぇぇえええええええええええぇー!!」
べしょべしょと、粘ついた音を立てて餡子が溢れ出す。
それは拒絶だった。
狂おしいほどの拒絶。
相手を、お飾りなしのゆっくりを拒み、知らずそのぺにぺにを口にしていたれいむ自身をも拒み、それが現実であったことさえ全身で拒絶した。
発作的な自殺に近い。
いやいやと、子供が駄々を捏ねるのは訴えるその先がいるからだ。
こんなに不満なのになぜ聞き入れられないのかと、その憤りを周りかまわず当たり散らしているようでいて、伝えたい相手というのが必ずいるものだ。
だが、れいむの望みを叶えてくれるの者はいない。
これは違う、現実ではないと誰に言われようとも、れいむ自身が知ってしまっている。
知ってしまったからには、もう戻れない。
でも、どうしても許容できない。認められない。
矛盾を抱えた思考は停止したが、体は勝手に明確に拒絶の意思に反応し、結果自分の身の安全さえ省みないほど大量に餡子を吐き出したのだった。
れいむの口から吐瀉された餡子を浴びながら、帽子なしまりさはイっていた。
顔面にゲロ餡子を受けて、その熱に包まれながら「すっきりー」と恍惚の表情を浮かべる帽子なしまりさもまた、狂っていた。
時を同じくして、まりさも口から餡子を出していた。
こちらはきつく歯をかみ締めすぎたため、飴細工のようにもろい歯が砕け、口の周りの皮を裂いて中の餡子がこぼれだしたのだ。
まりさは見ていた。
れいむの痴態を。
お飾り無しのぺにぺににむしゃぶりつく、自分のお嫁さんを、届かぬ距離からずっと眺め続けていた。
声を出すこともできす、ひょっとしたら息をするのさえ忘れて、血走った目を見開いてただもう食い入るようにれいむの口元を見つめていた。
「……ゅぐぅ」
生唾を飲み込む。
それだけで、何日も狩りに出たのではないかと思えるくらいどっと疲れが襲ってきた。
愛しいれいむが大量の餡子を吐き出している。
あまりに多くの餡子を外へ出したられいむの命まで危険にさらすことになる。
だが、不思議とそれを心配する自分がいない。
まりさの身体を支配しているのは昏い衝動だ。その衝動をなんと呼ぶべきかはわからない。
まりさの下腹部で蠢くそのドス黒い何かは、悔しいとか屈辱的であるとか、そんな感情を押し潰してしまうほどに強烈で、まりさは正直なところ、自分のが何を今想っているのかが全く分からなくなっていた。
それは恋人に向ける愛情でもなければ、家族を守る愛でもない。かけがえのない大切な存在へ向けられている強い感情なのは間違いないが、酷く利己的でおぞましいものであるように思われた。
それが証拠に、帽子なしのまりさより一回り小さいまりさのぺにぺにが、痛いほどに尖って天を突いていることを自覚していたからだ。
「……はぁ、なんぞこれ……」
鬼威さんは渋面を作っている。
虐待鬼威さんの仕事はゆっくりを虐待することだ、そう定義している。
効率的でなくてもいい。効果的な虐待を行うための装置であればいい、それが鬼威さんの鬼威さんとしてのスタンスだ。
屠殺なら機械に任せるのが一番だし、殴って潰したところで、一瞬のものだ。
むしろ放っておいても勝手に自滅するような生き物に、わざわざ手を下す必要があるとすれば、勝手に死なせないことが重要なのだ。
このれいむも放置すれば後わずかで死ぬだろう。だが、まだその時ではないと、鬼威さんは判断した。
「おい、クソムシまりさ。これ没収だ」
まりさの入ったケースの蓋を開けると、鬼威さんはまりさからお飾りを奪った。
素早く帽子を取り上げてまた蓋をすると、餡子まみれですっきりの余韻に浸っているまりさの頭へ帽子をのせた。
次に鬼威さんはれいむ叩いて転がし、上に向けた。だらなしなく開いたれいむの口をさらに大きく広げ、手近な餡子の塊をてきとうに拾ってその口へと押し込みはじめた。
「ゆべっ! ゆぎゅ、ぎゅ、う! ……げぼっ、げぼっ! ゆべぃぃぇえええっ!」
「あ、やっぱり? 吐き戻しちゃうか……」
「ばにずるの、ごのぐぞにんげん!」
れいむが唾と餡子を飛ばしながら鬼威さんに噛みつく。
「お、上等。……ほら、まりさだぜ」
案外丈夫なもんだと内心せせら笑いながら、お飾りをかぶせた帽子なしまりさをれいむの前へ差し出す。
「まりさ! まりさなんだね!
よかった、よかったよー。
れいむはね、さっきこわいゆめをみてんだよ?
まりさにはいえないような、とってもこわいゆめだったんだよ?
れいむ、すっごくかわいそうだったんだから、まりさはれいむをたっぷりなぐさめてよね!」
今しがた見たばかりの悪夢を追い出そうと、れいむが帽子なしまりさへ擦り寄る。
帽子なしまりさはれいむの柔らかい肌の感触に、揺すられまでもなく、しなびたぺにぺに再度活力を満たしていた。
「……好きにゆっくりしてな」
鬼威さんは二匹にそう声をかけ、お飾りを返せと叫ぶまりさの口を押さえに、その場から歩み去っていった。
最終更新:2013年06月24日 20:00