※この作品はpixiv内での同タイトル作品に感化され書かれたものですが、本家様は関係ありません
※とある音に関して突っ込み所があると思いますが、そこはゆっくりスルーして下さい




ゆっくり達がそろそろ冬篭りを始めようという時期。
ここにもせっせと冬篭り用の餌を集め、巣に溜め込んでいるゆっくりの一家がいた。
親れいむと親まりさの番と、その子供の子れいむ四匹に子まりさ四匹の計十匹家族だ。
親ゆっくりはキャベツ程の大きさ、子ゆっくり達はトマト程の大きさだ。
越冬には多くの餌がいる。そのためこの家族は一家総出で餌を集めに出ていた。
もっとも、子ゆっくりだけではこの寒くなってきた時期一人で遠出するのは危ないので、れいむ種とまりさ種の二手に別れての餌集めだが。

「ゆっ、まりさ、いっぱいあつまったね!」
「そうだね、れいむ! これだけあればゆっくりできるね!」
「ゆっくちできるね!」
「ゆっ、ゆっ~♪ れいみゅもがんばったよ!」
「まりしゃも! まりしゃも!」

それぞれその日集めた餌を持ち寄って巣に帰ってきた一家は、自分たちの頑張りの成果を見て満足そうだ。
このゆっくりの一家が巣に溜め込んだ餌は、一家全員が無事に春を迎えることができるだけの量があったのだ。

「ゆぅ~♪ はやくふゆにならないかな~♪」
「まりさ、それをいうならはるにならないかな~♪ だよっ」
「ゆっ、そうだねれいむ。はるになったらいっぱいゆっくりしようね!」
「「「ね~♪」」」

親まりさの声に楽しげに追従する子まりさ達。それを聞いて幸せそうに笑うれいむ種。
今この一家にあるのは幸福感。皆無事に冬を越え春を迎えるという未来絵図。
現在未来において幸せしか無い、まさに理想的なゆっくり一家だった。





だが、そんな一家の存在を快く思っていない者がいた。



ガバッ

一瞬の出来事だった。
巣の中で仲良く、楽しげに笑いあっていた時だった。親れいむが気付いた時、巣の入り口の一番近くにいた子まりさが一匹いなくなっていた。

「……ゆっ? まりさ?」

親れいむの呟いた声に親まりさも入り口へ振り返る。子ゆっくり達も入り口へと視線を向ける。
ついさっきまでそこに居たはずの子まりさが居ない。
代わりに、

「ゆゆっ!! にんげんっ!?」

巣の入り口の、男がいた。ゆっくりは人間だと思ったが、実はその男は妖怪だった。
妖怪が人の形をとっていることが多い幻想郷では珍しくもないが、ゆっくりにはその違いは分からないようだった。
人間で言えば二十代前後と思われる外見のその男は、手に麻袋を持っていた。その麻袋の中からはくぐもった「ゆっー! ゆー!」という子ゆっくりの声が聞こえてくる。

「ゆっ! おにいさん、れいむのかわいいおちびちゃんかえしてね!」
「ゆっくりかえしてね!」

どうやらこの男が子まりさを攫ったようだと判断した親ゆっくり達は男に抗議の声をあげる。
子ゆっくりも「かえちぇ~!」だの「ゆっくりかえさないとおかぁしゃんがやっつけちゃうよ!」だの親達に続いた。
だが男はそんなゆっくりの言動に一切の反応も見せず、

「ゆっ!?」
「やめてねっ! ゆっくりやめてね! まりさのかわいいおちびちゃんもってかないでね!」

男は淡々と機械的に、他の子ゆっくり達も麻袋に詰め込んでいった。
早々と二匹の子ゆっくりが麻袋に詰め込まれたところで、他の子ゆっくりは巣の奥へと逃げ出した。
親ゆっくりもそれに気付いたのか子ゆっくり達に続いて巣の奥に逃げ込もうかと思ったが、奪われた我が子を取り戻さなければという思いからしばし逡巡した。
その僅かな間が命取りだった。
親ゆっくり達が迷ったその隙に、男は親れいむと親まりさを捕まえ、凄まじいほどの手際のよさで子ゆっくりとは別の大きい麻袋に放り込んだ。

「ゆぅぅぅっ! れいむおかぁしゃん、まりしゃおかぁしゃんー!!」
「どぼじでごんなごどじゅるの゛ぉぉぉぉぉ!!」
「ゆっくちちていってね!」
「やべでねっ、おかぁしゃんかえちてねっ!」
「ゆっくちやめちぇね!」

巣の奥に逃げ込んだ子ゆっくり五匹が泣きながら男に懇願する。だが男はそんな声には耳も貸さず、巣の奥に腕を差し入れた。

「「「「「ゆ゛ぅぅぅぅぅ!!! ごっぢごないでぇぇぇぇ!!!」」」」」

家族達を攫っていった恐怖の存在たる男の腕が、自分達がゆっくりするはずの巣の中に入れられたことで半狂乱に陥った子ゆっくり達。
越冬のために溜め込んだ草花や木の実に虫の死骸、寒さを凌ぐための藁やチリ紙を押しのけ蹴散らしながら、我先にと巣の最奥に向かって行く。
男の腕は巣の中を掻き回しながら子ゆっくり達を手探りで探す。子ゆっくり達は涙と恐怖で顔を染めながらガタガタと震えるのみ。
やがて男の腕は巣の奥にいた子れいむのリボンを掴んだ。

「ゆゆっ!? やべでっ、れいみゅのりぼんひっぱらないで!」

体を踏ん張りながら抵抗するも、まるで無駄。あっという間に巣の外に引きずり出され、麻袋の中に放り込まれた。
この調子で残った四匹の子ゆっくりも次々に巣の中から引っ張り出され、残らず麻袋に詰められた。
最後に男は巣の中に向かって「ゆっくりしていってね」と声をかけ、中に一匹も残っていないことを確かめると、ゆっくりを入れた麻袋をかついでその場を後にした。












妖怪の山の麓に一軒の小屋が建っていた。ゆっくり一家を誘拐した男は、その小屋の中へと入っていく。そこに男は住んでいるのだ。
男は土間から床にあがると、囲炉裏の側にこしかけ、麻袋を引っくり返してゆっくり達を取り出した。
「ゆべっ」と顔面や頭から床に落ちるゆっくり達。親ゆっくりは痛みに顔をしかめ、子ゆっくり達は痛みに泣き喚いた。
男はゆっくり達が落ち着きを取り戻すまでの間に、小屋の中を見回り、戸締りがしっかりしていることを確認すると、部屋の隅に置いておいた小さい木箱を持って再びゆっくり一家の側に戻っていった。

ドスン、と大きな音を立てて木箱を床に置きながら男は床にあぐらをかく。
ゆっくり一家はメソメソと泣きながらお互いを慰めあっていたが、その音でようやく男の存在を思い出し、男に向き直った。

「おにいさん、なんでこんなことするの!」
「まりさたちをゆっくりおうちにかえしてね!」

まずは親ゆっくり達が怒りの声を上げるが、男はそんなもの聞こえないとばかりに木箱の蓋を開けた。

「もうすぐふゆなんだよ、れいむたちはおうちでゆっくりしたいんだよ!」
「ゆっくりおうちにかえしてね!」

男は構わず木箱の中に手を入れ目的の物を取り出し、同じく箱に入っていた小さい物を、先に取り出した物の中に入れる。

「しょうだよっ、ゆっくちかえちてね!」
「おにいしゃんもゆっくりちたいよね?」
「いまにゃらゆるちてあげるよ!」
「ゆっくちできないおじしゃんはゆっくりちんでね!」

バン!

子ゆっくり達のギャーギャー五月蝿い声を、一発の銃声が静めた。
男が木箱から取り出したのはリバルバー拳銃と銃弾。男は弾丸を装填したリボルバー拳銃で、子まりさを撃ち殺したのだ。
八匹の子ゆっくり達が固まっていたそこには、残った六匹の子ゆっくりのほかに、床にこべりついた餡子が少量。
銃弾に体を吹き飛ばされた際に飛んだ子まりさの帽子が、ひらひらと床に落ちる。
それにより、ゆっくり達は何が起こったのか理解した。

「ばりざのおちびぢゃんがぁぁぁぁぁ!!!」
「ゆ゛ぎゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

「まりじゃぁぁぁぁぁ!!」
「どぼぢでぇぇぇぇぇぇ!!」
「ゆぐっ、えぐっ……ばりざぁ……」
「ゆわぁぁぁぁぁぁん!! まりしゃがちんじゃったぁぁぁぁぁ!!!」

再びの騒音。
男は拳銃を上に向け引き金を引く。

バン!

子まりさの命を奪った音にゆっくり一家はビクッ、と身をすくめ口を閉ざした。
ゆっくり達の視線が男に集まった事を確認すると、男はようやく口を開いた。

「まずは、黙れ。次に許可なく喚いたら、さっきの子まりさのように撃ち殺す」

その言葉でゆっくり達は押し黙ったが、目に涙を溜めてガタガタと震え始めた。音を立てたら殺されると思っているのかもしれない。
男が手に持つ物が何かは知らないが、こちらの命を簡単に奪い去る物だという事は理解したのだろう。
男はそれでも静かに口をつむぐゆっくり達に満足したのか、ゆっくりと口を開いた。

「さて、お前たちにはゲームをしてもらう。その名も『コシアンルーレット』だ。
 まず、『ロシアンルーレット』は知ってるか?」

男は親れいむに訊ねたが、親れいむはガタガタと震えるのみで押し黙っている。
男が「喋っていいぞ」と言うと親れいむは震える声でまくし立てた。

「ゆ゛っ、じらないよ!」

「そうか、ではまず『ロシアンルーレット』から説明しよう」

リボルバー式拳銃に一発だけ弾丸を装填し、適当に弾倉を回転させてから自分の頭に向け引き金を引くゲーム。
このリボルバー拳銃は六発装填だから、引き金を引いて弾丸が出る確率──つまり死ぬ確立は六分の一。
ランダム方式は一人が引き金を引いた後、再び弾倉を回転させ次の者に渡す。これを弾が出るまで続ける。
順番方式は一人が引き金を引いた後、そのまま次の者が引き金を引く。同じく弾が出た時点で終了となる。
この事を懇切丁寧に、親ゆっくり二匹が理解するまで説明してやった。
四回目の説明でようやく親ゆっくり達が理解ロシアンルーレットについて理解すると、男は本題に入った。

「それで、お前たちにやってもらう『コシアンルーレット』についてだが、まず最初に言うことは、引き金を引くのは私だ。これはお前たちに手が無いから当然だな。
 そして頭に銃口を向けるのはゆっくり、お前たちだけということだ」

男のその説明に、子ゆっくり達は首を傾げたが、親まりさはそれがどういうことか気付いたようだ。

「ゆっ! それじゃあおにいさんはしなないよっ、ふこうへいだ──」

バン!

拳銃の弾丸が親まりさの脇をかすめ、何本かの髪を千切り飛ばした。
親まりさは弾丸が通り過ぎた場所を横目で見やり、ガタガタと震え涙を一滴流した。

「……喋っていいぞ」
「…………ゆ゛っ。お、おにいさんだけずるいよ。ふこうへいだ、よ」
「黙れ饅頭俺がルールだ」

一刀両断。

「そして次にこのゲームでお前たちが得るもの、俺が奪うものについてだ。
 このゲームに勝ったらお前たちにはたくさんのお菓子をやろう。とってもあまぁい物だ」

男がそこまで言ったところで、子ゆっくり達が目の色を輝かせて色めきたった。

「ゆっ! おかち!?」
「おかちちょうだい、おかち!」
「あまあまちょうだいね、おじしゃん!」
「ゆっくりちょうだいね!」

バンバンバン!

弾丸を装填してすかさず三連射。
子ゆっくり達の目の前の床に、三つの穴が開いた。

「許可があるまで喋るなと、言ったはずだが?」

ガタガタと恐怖を思い出し、再び涙目で震えだす子ゆっくり達。
そのうちの一匹子れいむが「ゆっ、ごめんなしゃ──」と言いかけて、撃ち殺された。
原型を殆ど残さず、吹き飛ばされた子れいむ。後に残ったのは床に少量こべりついた餡子と、離れた所に落ちたリボンだけだった。
これで残った子ゆっくりはれいむ種三匹まりさ種三匹の計六匹。
ゆっくり達は再び泣き喚くところだったが、喋ると殺されると思いボロボロと涙を流しながら口を閉ざした。

「さて、続きだ。次に俺が奪うものだが、それは当然お前たちの命だ。既に二つ奪ってしまったがな。
 だが安心しろ。お前たちがゲームに参加して、見事俺に勝利すれば君たちは晴れて自由の身だ。しかもお菓子つきだ」

「そして肝心のルールだ。まず俺がこの銃を親れいむか親まりさの頭に向ける。
 そしたら引き金を引くかどうか、銃を向けられたゆっくりが答えるんだ。引き金を引いて空撃ちだったら、ゆっくり一匹の生存権をゲット。
 お前たちは今八匹だから、八回空撃ちが出たら全員解放だな。
 もちろん弾丸が入っていたらゲーム終了だ。
 弾丸が入っていると思ったら天井に向けて引き金を引く。この時弾丸が入っていなかったら生存権をゲットしていたゆっくり一匹の生存権を再び剥奪する。
 弾丸が入っていたら弾丸を込めて再スタートだ」

男はこの内容のルール説明を、親ゆっくり達が理解するまで丁寧にしてやった。
六回程同じ内容を繰り返し、ようやく親ゆっくり達は理解した。この間男はリボルバー拳銃に弾丸を込め、銃口を子ゆっくり達に向け続けていた。

コシアンルーレットのルール
  • 使う銃は六発装填のリボルバー拳銃
  • 引き金を引くのは男
  • 銃口を向けられるのはゆっくり
  • 引き金を引くか引かないかは、銃口を向けられたゆっくりが決める
  • ゆっくりに銃口を向けた銃が空撃ちだったらゆっくり一匹の生存権とお菓子一匹分をゲット
  • 天井に向けて撃った場合、弾丸が入っていれば弾丸を込めて再スタート。弾丸が入っていなければゆっくり一匹の生存権とお菓子を剥奪
  • このゲームに参加できるのは親ゆっくりのみ


「さて、以上だが、何か質問はあるかな?」

男はゆっくり達にゲームのルール説明を終えると、ゆっくり達に発現を許した。
そこで親れいむが口を開いた。

「ご、ごんなげーむじだぐだないよっ! でいぶだぢをおうぢじがえじでね!」

恐怖と涙に震えたダミ声であったが、そこには屹然とした勇気があった。
この状況でこんな事を言うとは、愚かここに極まれりだ。
だが男は

「したくないならいいよ。さっさと逃げればいい」

あっさりとそう言った。
その言葉に最初親れいむも親まりさも理解できなかったが、数秒の後言葉の意味を理解すると。

「ゆっ! ゆっくりかえるよ!」
「じゃあね、おじさん! まりさたちはゆっくりかえるよ! さぁ、おちびちゃんたち、おうちにかえるよ!」

と、さっきまでの無様な姿はどこへ行ったのか、一転して明るい顔で宣言し男に背を向けた。
瞬間

バン!

銃声が轟き、親まりさの帽子が親まりさの頭上から消えた。

「……ゆっ?」

親まりさは突然のことに疑問符を浮かべる。
だがパサリと前方に落ちた、風穴の開いた自分の帽子を見つけると、何があったのか理解し男の方へ振り向いた。
そこには自分に向けられた拳銃があった。

「ゆっ、ゆ゛っ、ゆ゛っ゛!?」
「どうした? 早く帰らないのか?」
「ゆゆ! いわれなくてもかえるよ! じゃあね、おじさ──」

バン!

親れいむのモミアゲ一房が千切れとんだ。

「ゆ゛ゆ゛っ!?」
「どうした? ゲームしたくないんだろう? さっさと帰ればいいじゃないか」

親れいむと親まりさは顔を見合わせた。ここ事に来てようやく二匹は理解した。
ここから生きて帰るにはゲーム──『コシアンルーレット』を受けて勝利するしかないと。

「ゆゆっ、……そのゲームやるよ」
「ほぉ! そう来なくてはな! さぁ、まずはどっちからやる?」
「ゆ! れいむからやるよ!」
「そうかそうか。じゃあ早速始めようか」

親れいむが名乗り出て、ようやくコシアンルーレットは始まる。
男は嬉々として拳銃に銃弾を込める。
ゆっくり達の命がかかった、死のゲームが今、始まる。



つづく


───────────
あとがきのようなもの

スレでロシアンルーレットネタが出てたので、誰かが他に出すかもしれないと思い取り合えず前編だけでもと思いアップしました
残りは今日明日中にアップできると思います

これまでに書いたもの

ゆっくり合戦
ゆッカー
ゆっくり求聞史紀
ゆっくり腹話術(前)
ゆっくり腹話術(後)
ゆっくりの飼い方 私の場合
虐待お兄さんVSゆっくりんピース
普通に虐待
普通に虐待2~以下無限ループ~
二つの計画
ある復讐の結末(前)
ある復讐の結末(中)
ある復讐の結末(後-1)
ある復讐の結末(後-2)
ある復讐の結末(後-3)
ゆっくりに育てられた子
ゆっくりに心囚われた男
晒し首
チャリンコ

byキノコ馬




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最終更新:2022年05月03日 20:25