※嘔吐描写注意
「ゆっくり食べてね!」
どこかの場所、いつかの時間。
一匹のゆっくりが、一心不乱に大量の何かを食べ続けている。
その様子を、イスに腰掛けてじっと見つめる男が一人。
「はぐはぐはぐはぐがふがふがふがふがふむちゃむちゃむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……」
汚らしい食べ方のためにゆっくりの周りはぐちゃぐちゃになっていたが、そんな事は気にもせず、延々と食べ続けるゆっくり。
男もその様を叱る事もなく、ただじっと眺めていた。
「がふがふがふがふむちゃむちゃむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……ゆげふ! ゆげぇぇぇ……」
不意に、ゆげゆげとアンコと何かの混じったものを吐き出すゆっくり。
びちゃびちゃと先ほど食べていたものを汚していくその音は、人間のするそれと全く同じものである。
違うのは、吐き出すものの色が黒い事と、発するのが甘い臭いだという事だけだ。
「ゆげぇぇぇ……え”ふっ! ゆ、ぜびぃ……ぜびぃ……ゆぅ……がふがふがふがふむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……」
ある程度吐いて落ち着いたゆっくりは、また山を崩す作業に戻った。
食べすぎで吐いたというのに何故か更に食べるゆっくりをこのまま放置しておけば、吐き戻しすぎて死ぬだろう。
だが、死へ確実に近づいているゆっくりを止める事もなく、男はじっと見続けている。
「がふがふがふむちゃむちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……ゆげぇ! え”ろ”ろ”ろ”ろ”ろ”ろ”……」
案の定、もう限界を超えているゆっくりは、それほど食べない内にまた吐き戻してしまった。
パンパンに膨らんでいた顔が、みるみるうちにしぼんで元の下膨れ饅頭へと戻っていく。
その目にはうっすらと涙が浮かび、顔色は真っ青になっている。
「げほっ、がぼっ! ゆ”……ゆげぇ……」
荒い息をついて、ぐったりとその場に潰れるゆっくり。
それを見て、これまでじっと見つめていた男が靴音高く近づいてきた。
「んげほっ、え”ほっ……ゆ、ゆっぐりだべるよ……だから、ごっち、ごないでね……」
青い顔に恐怖の色を浮かべて、男から少しでも離れようと試みるゆっくり。
その様子を見て何か思ったのか、男はその場に座り込んだ。
ゆっくりの顔から恐怖の色が消え、僅かに血色を取り戻すと、そのまま山に近づいていった。
「ゆっぐりだべるよ……だべるよ……」
必死の形相でじりじりと山に近づいていくゆっくり。
僅かに動くだけで戻しそうになりながらも、近づく事はやめない。
「だべるよ……だべっ! ……え”ろろろろろろろ……」
長い時間をかけて山のふもとまで来たゆっくりは、食べる直前に自分で吐き出したものの臭いに負け、その場にアンコをぶちまけ始めた。
ドボドボと音を立てて凄まじい勢いで流れ出るアンコは、しばらく
「んげろろろろろろ……おげぇぇぇ! げふっ! え”ふっ! ゆべぇぇぇぇぇ……」
元の大きさに戻っても吐き続けるゆっくり。
顔色は紙の様に白くなり、顔には何の表情も浮かんではいない。
後数分で、顔中のアンコを吐き出してしまうだろう。
ここはゆっくりの処理場。
ここに連れて来られたゆっくりは、ここにある仲間の死がいを全て食い尽くすか、即座に殺されるかのどちらかを選ぶ事となる。
ほとんどのゆっくりは死がいを食べる方を選ぶが、どれもが食べきれずに終わる事となる。
数百匹分のゆっくりの死がいは、一人や二人では食べきれないほどに多量にあるのだから、元から不可能な事だ。
それでも挑戦をやめないのは、ゆっくりが間抜けだからなのか。生きたいという想いが強いからなのか。
それは人間には分からない。
男は『それ』をつまみあげて山に投げ置いた。
てっぺん辺りに落ちた顔は、周囲と同じく苦悶の末に死んだ事を物語っている。
そこまでの苦しみを味わっても、決して自分から死にたいと言うゆっくりがいない事が、男には不思議でたまらなかった。
――次のゆっくりに、ちょっと聞いてみようか。苦しんだ末の死と、苦しむ事ない一撃の死と、どっちが良いのかを。
そう考えつつ、男はゆっくりと部屋を出て行った。
おしまい
ゲロ吐くゆっくりいじめものを短くまとめてみようと思ったら、こんなんが出来ました。
なんだこれ。
by cyc=めて男
最終更新:2022年05月18日 21:37