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  • 現代にゆっくりがいます。
  • ゆっくりは幻想郷から落ちてきました。
  • おおかたどこかの誰かさんがスキマでも使ったとお思いください。

  • それでも幸せなゆっくりがいます。

ゆっくりと現代

近年突如現れた饅頭に知能が付与されたようなびっくり生物(なまもの)ゆっくり。
モノの数年でかなりの数に増えた彼らは、少しずつ都市部へと流れ込み始めた。
町に行けばおいしいものがあるに違いない、と妙にポジティブな希望を抱いて。
しかし、彼らに待ち受けていたものはそんな幻実ではなくありふれた現実だった。


「ゆっゆっゆっ……」
ここに跳ねているのはゆっくりれいむ。れいむは実にゆっくりできていなかった。
この『町』というところは前にいた山よりゆっくりできないものが多いのだ。
「これじゃぜんぜんゆっくりできないよ!」
そうごちりながられいむは跳ねる。
昨日も黒い四つのわっかが現れて道の真ん中で寝てた親友だったまりさが潰された。
「いたたた……」
跳ねるのを止める。ここの道は霊夢達には固すぎる。
長時間跳ね続けると皮が腫れてしまうからこうして足を定期的に休まなければ跳ねることもままならない。
「でもすーりすーりすると……」
ここにきて間もないころにれいむは子供達のにこれと同じような道ですり潰されたようむを見た。
この道で張って進む事はできない。れいむはそう思っていた。
「ゆぅ、おなかがすいたよ………」
ここ数日何も食べていない。ここは草が極端に生えていなかった。
最初はお花を食べていた。だけどお花は妙に苦かった。
それでも空腹よりはましだと思って食べていたのだが、
「花を荒らす奴は誰だ」
と人間が夜に見回りするようになったから食べられなくなってしまった
「ゆうかよりこわいよ……」。
山にいたころに長から人は怖いものと教えられてきたから人には近寄らないようにしてきた。
だから人の多い昼間は隠れている。夜がれいむ達の生活時間だ。
「ここにはれみりゃがいなくてよかったよ……」
れいむは少しだけホッとする。だがホッとしたところで空腹感は変わらない。
れいむは再び跳ねてご飯を探しに行く。
「ごみさんでもいいからなにかたべたいよ……」
ごみ集積所にたどり着く。夜にゴミを捨てる不届き者はまだまだ健在らしくゴミ袋はたくさんあった。
「ゆゆゆ、やったね!」
れいむはすなおに喜び、ごみ集積所へと跳ねていく。だがその喜びはぬか喜びに終わった。
「フーーー!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
先客の猫がいたのだ。猫にとってもこういった生ゴミは貴重な栄養源。
よくわからんポッと出の丸っこい新参者にとられるわけには行かないのだ。
「ゆぅぅぅぅぅぅ………」
このれいむは勝ち目のない戦いはしないことにしていた。
このいかにも強そうな猫に戦いを挑んで食べられてしまったら元も子もない。
トボトボとその場を立ち去っていく。
空腹感は増すばかり。
「ゆぅぅぅぅぅ……こ、こうなったらにんげんさんのおうちに」
人の家に侵入する。これも山にいたとき人里にいったというまりさから聞いたものだ。
そのときに簡単な構造を教えてもらった。
まりさいわく
「にんげんさんはおうちにたくさんたべものをたくわえてるんだぜ!だからすこしぐらいもらってもいいんだぜ!」
とのこと。このまりさはしばらく後に見かけなくなったのだが多分人間に捕まったのだろう。
そう考えると怖くなってきたが
「す、すこしぐらいならばれないよね」
悪さをするのは気が引けるが自分ももう少しゆっくりしたいのだからいいよね、と自己正当化を行いめぼしい家を探すことにした。
夜道にていんていんとマンガみたいな足音が響く。
そして人の家の前に着いた。
しかしおかしい。まりさの言ってたような戸があるわけでなし、屋根へ上るための梯子もない。というか家が妙に四角い。
昔自分が遠目に見たにんげんさんの家屋はもっと平べったくなかっただろうか。
「ゆぅぅぅ・・・・・・」
どうしようか、と困っていたときれいむは一つの突破口を見つけた。
ガラス窓だ。そうだ、まりさは確かこうも言っていた。
「とうめいないたでおおってるところはいしをぶつければすぐにわれるぜ」と。
れいむはそのまりさの言葉に賭けた。
庭に手ごろな石がないかを探す。 あった。
口に入るかを確かめる。 入る。
石を口に咥えて方向を確かめ、れいむは石を噴き出した。

カィン

「ゆ?   ゆぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」
石は当たった。確かに当たった。しかし、音はしてもガラスは割れなかった。
技術の発展はガラスでもある程度の衝撃は防げるようになったのである。
今のへろへろのれいむの射出した石では20発撃ってやっと割れるかどうかだろう。
「ま、まりざのうぞづぎぃぃぃ………」
今は亡き無謀と勇気を履き違えたゆっくりに恨み言をこぼしもうだめだ、とへこたれるれいむ。
ふと足元の草に気づく。
「ゆっ!くささんだよ!たべれるよ!!」
そうだ、草はあまりおいしくはないが食べられるではないか。
家に入ることばかり考えていて足元にある食べ物に気づかなかったわけである。
灯台下暗しとは正にこのこと。
それはともかくれいむはくさに噛り付く。
食べる、食べる、食べる!!
「む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~!」
寝静まっている人やゆっくりもいるだろうからか控えめの声でれいむは久しぶりの食事の喜びを表した。

数時間後、れいむは自分の巣に戻っていた。
あれから数件ほど別の家の庭に入っては草を毟り巣に運んでいたのだ。
人の家に入らずともお庭に草があったのは助かった。これでしばらくは暮らしていける。

「やっと、ここでゆっくりできそうなきがしてきたよ……」

とれいむが思った矢先、むんずと何かに掴まれる。
「ゆ?」
目線を開けるとそこには にこにことわらった 古臭いドレスを着た ふとましい体つきゆっくり。
「れ み り ゃ だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「う~♪」

ハッピーエンドが好きな一部の人には実に最悪な話なのだが
れいむがれみりゃがこの町にいないというのは
たまたま今まで出会わなかったというだけだ。
実際のところは数日ほど前に一匹の胴付きれみりゃが町に来ていた。
そして、れいむと同じようにご飯を探し回っていた。
だが、ここはれみりゃの住んでた森のテリトリーより広く。生きているゆっくりは森より少ない。
潰された死体はみかけるが生きたゆっくりはそうそう見つからない。
つぶれたゆっくりはおいしくない。
それだけの理由でれみりゃは生きたゆっくりを探した。貴族は食わねど高楊枝と言ったところか。
そして今日、おなかをすかせてふらふらのれみりゃはついにおいしそうな獲物を見つけたのである。
たまたまそれがさっきまで大変だったれいむなだけで別に誰でも良かった、といっておく。

「うぅ~、いただきまぁす」
「ゆべぇ!?」
頬に齧り付く。齧りとった箇所から餡子が漏れ出てくる。
「あまあまぁぁぁぁ」
甘い。今までつぶれたゆっくりを我慢してきた甲斐があったものだ。
「ひゅ、ひゅうっぐりひゃべふぇべ!?」
頬に開いた穴で満足に発声はできない。
「れみりゃはおなかすいてるんだどぉぉぉ おとなしくたべられるんだどぉぉぉ」
「ひゅヴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
齧る。齧る。啜る。毟。啜る。喰らう。
今までの空腹を癒すかのように一心不乱にバレーボールサイズのれいむを食べ続けるれみりゃ。
このサイズを食べつくしたなら数日はもつだろう。その間に次の獲物を探そう、とれみりゃは考えていた。
なに大丈夫だ、自分ならきっと見つけられるとも思っている辺りはほんと楽観主義だが。
一方食われ、餡を削られどんどん薄れ行く意識の中
(もっとゆっくりしたかった……)
と思いながられいむの意識は消えていった。
明け方近くにれみりゃはれいむを食べ終えた。
「うぅ~♪ おなかいっぱ……うぅ!?」
日が昇り始めていた。
今まで森に住んでいたこのれみりゃが日傘を持っているわけがないのでこれは致命的だった。
食欲に我を忘れ、時間を考慮していなかった結果がこれだよ!
「うぁぁぁぁ、うぁぁぁぁぁぁ!!」
たちまちれみりゃの体は火傷の症状を表し始めた。このままではれみりゃは灰になって死んでしまう。
「う?」
食べていたれいむの巣だったポリバケツに気づき、慌ててれみりゃはそれを被った。
これでもう太陽に当たらない。
「うぅ~♪」
しかし、慌ててもぐりこんだせいで変に嵌ってしまいバケツから出ることができなくなってしまった。
歩けるには歩けるのだがちょこちょことしか歩けず、視界が見えないのでどっちに進めば良いのかもわからない。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁうぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!だれがだじゅげでぇぇぇぇぇ!!ざぐやー!ざぐやー!!」
誰も来るわけがない。ここは人一倍人を恐れていたれいむが見つけた場所だ。
そんなところに人がくるわけなど当然なかった。


このれみりゃは奇特な人間が来なければ死ぬまでバケツの中にいるしかなかった。

これはほんの一部の例である。
ゆっくり達がこの世界の都市に適応するまではもう少しの時間がかかるだろう。


後書き
アスファルトの床には首だけのゆっくりにはさぞかし響くだろうなぁ、と思って書き始めたらなんか違う方向に………。
しかも、先越されたぁぁぁぁぁぁ!
現代都市にゆっくりを住ませようとしたらかなりきつい感じがしました。
あいつらはいるとしたら田舎に住ませてやるべきです。それでも畑荒らしたら潰されますし、冬眠寸前の熊に食われたりと大変な気がしますが。

公園に落ちたドスとかはなんかうまくやってけそうなイメージがあります。
ドスが少食、という設定ならですが。

以前書いたもの
fuku3328.txt ドスに纏わる二、三の話.txt
fuku3313.txt 小ネタ.txt
fuku3290.txt 中立な話.txt


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最終更新:2022年05月21日 23:54