ある木立の中にあるゆっくり一家の巣にて。
「ちょっと少ないんだぜ」
この巣の主であるゆっくりまりさは食料置き場を見てそうつぶやいた。
確かに、このゆっくり一家6匹を冬の間養っていくには少々少ない。
「むきゅう、でもぱちぇの言うとおりちょっとずつ食べればちゃんと冬越えできるよ」
そしてこのゆっくりぱちゅりーの言ったこともまた事実である。
ゆっくりぱちゅりーの計算によればこの量でもギリギリ家族6匹を養うことが出来るはずだった。
辛い冬になるだろうが仕方ないとぱちゅりーは思った。
今年は不作で食料が少なかったのだからこれでも割と食料を溜め込めた方なのだ。
ゆっくりぱちゅりーが持ち前の知識をフル活用してなんとか食料のある場所を考えて
そのぱちゅりーの指示に従ってゆっくりまりさが食料を調達してくるという形でこの一家は動いていた。
冬前になって子ゆっくりまりさ二匹も餌集めに参加できる程度に大きくなったのはありがたかった。
本当はもう少しゆっくりさせようとまりさは思っていたのだがぱちゅりーがもう行けると判断したので渋々一緒に行ってみると
若さに見合わない素晴らしい働きを見せてくれてまりさはとても驚いたものだ。

実は子まりさ二匹はぱちゅりーからみっちり狩の知識を仕込まれていた。
ぱちゅりーはそのゆっくりにしては類稀なる知識を存分に一家のために使っていた。
いや、一家のためだけではない。
他のゆっくりが助けを求めてくればその知識でもって解決策を考えてやるのがぱちゅりーの性分だった。

「むきゅー」「むきゅー」
「むきゅっ、ゆっくり冬を越そうね」
ぱちゅりーは擦り寄ってきた二匹の子ゆっくりぱちゅりーを舐めてきれいにした。
この二匹はゆっくりぱちゅりーとゆっくりまりさの子で珍しいことにゆっくりぱちゅりー自ら出産を行ったのだ。
ゆっくりぱちゅりーが出産して生き残れるケースは非常に稀だ。
二匹も出産して母体が生存しているケースは奇跡と言ってもいい。
ぱちゅりーもそれがわかっているのでこの子たちは大事に育て、ゆくゆくは自分の知識を全て受け継いでもらい
他のゆっくり達に役立ててもらいたいと考えていた。

「むきゅー、みんなでがんばって冬を越えようね!ケフっ」
ぱちゅりーは食料が少なめで不安になってるみんなを元気付けるために満面の笑顔で言った。
慣れない事をしたからか咳き込んでしまいあわててまりさが背中を擦ると周りのみんなは思わず笑ってしまった。
まりさとぱちゅりーも一緒になって笑い、巣の中からは笑い声が絶えなかった。

ある日、冬に向けての最後の追い込みにまりさが餌集めに出かけている時のこと。
「むきゅー…むきゅー…」

「美しくゆっくりゆかりんのおうちから住ね!」

子ぱちゅりー二匹とゆっくりおひるねを楽しんでいたぱちゅりーは甲高い鳴き声で目を覚ました。
「むきゅ!?どこからはいってきたの!?ここはぱちゅりーとまりさのおうちだよ!
ゆっくりでていってね!」
ぱちゅりーは子ぱちゅりー二匹を背中に隠して侵入者を警戒して睨み付ける。
「ゆー、そこの扉がスキマだらけだから間からゆっくり入ってきたよ
ここはゆかりんのおうちにするから美しくゆっくりゆかりんのおうちから住ね!」
巣の入り口についている扉は外敵から身を守るためにぱちゅりーが設計を考えまりさに指示して作った自信作であった。
その扉からあっさり進入してくるとは、驚きを隠せずぱちゅりーはさらに警戒を強くした。
「むきゅぅ、むきゅぅ」
「むっきゅー!だめだよ!ゆっくりできないならはやくでていってね!」
そのゆっくりの言い様にぱちゅりーは怒りを露にして威嚇行為の泣き声をあげた。
子どもは突然の事態に怯え必死に母の背中に隠れて震えていた。


そんな時、バタンと扉が開いてゆっくりまりさたちが巣に帰ってきた。
「ただいまだぜー、ゆ?」
「しらないひとがいるよー」
「ぱちゅりーおかあさんのおともだち?」
巣の中に見たこともない種類のゆっくりが居て戸惑うゆっくりまりさたち。
ゆっくりまりさもぱちゅりーと同じく見知らぬゆっくりに対して警戒し、鋭くにらみつけた。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆ?ゆっくりしていってね!」
『ゆっくりしていってね!』
ゆっくりゆかりんがゆっくりしていってね!と言うのでついつられてまりさたちも返事を返してしまった。
巣の中になし崩しに流れる和やかな空気。
「むきゅー!そんな子とはゆっくりできないよ!まりさもはやく追い出してね!」
そんな中ぱちゅりーだけは警戒を解かず、子ぱちゅりー達の前に立って威嚇を続けていた。

「そんな紫もやしよりゆかりんの方が役に立つよ!追い出すならそこの紫もやしを追い出してね!」
「むきゅう!?ひどいよ!ぱちゅりーは役立たずなんかじゃないよ!」
「むきゅ、おかあさんにあやまってね!」
「あやあってね!」
ゆかりんの暴言にぱちゅりーは激怒して頭を赤紫に染め、子ぱちゅりーもそれに続く。
「ゆー、役立たずじゃないならもっと食べ物集められるはずだよ」
「ゆ、そんなことないんだぜ、たべものがあんまりなかったのにぱちゅりーのおかげでやっとこれだけあつめることができたんだぜ」
だいぶ遅れてやっとまりさがぱちゅりーの見方をし始めた。
「ぱちゅりーは馬鹿だから食べ物の場所知らないだけだよ
ゆかりんはたくさん食べ物のある場所を知っているよ!」

「む、むっきゅうううう!!!ぱちゅりーは馬鹿じゃないよ!あやまってね!ゆっくりしてないであやまってね!」
他の悪口なら堪える事が出来ただろう
しかし馬鹿だけはこれまでその知識を持って家族や周りのゆっくりを助けてきたゆっくりぱちゅりーにとって絶対に許すことが出来ない暴言であった。
「ゆ!たべもの!」
「おなかすいた!はやくおしえてね!」
「ゆー、そんなにいうんならおしえてほしいんだぜ」
だが子まりさ達は食べ物がたくさんあると聞いて興奮して完全にゆかりんについていくつもりになっていた。
まりさもいぶかしんでいるものの、子ども達の熱気に押されて仕方なく承諾してしまう。
「むっきゅ!この時期にそんなにたくさん食べ物があるはずないよ!うそつきとはゆっくり出来ないから早くでていってね!」
それはぱちゅりーの知識から照らし合わせてまず間違いない事実だった。
「鼻につくわ、そのゆっくりできない馬鹿特有のおこりんぼぶり」
しかしゆかりんはぱちゅりーの言動を歯牙にもかけず絶対の自信を崩そうとしない。
「むっきゅぅぅぅうう!また馬鹿っていった!早くゆっくりでていってね!」
「ゆ、ゆっくりしないとからだにわるいんだぜぱちゅりー」
完全にぶち切れたぱちゅりーを頬をこすりつけてなんとかなだめようとするまりさ。
「むっきゅ…!むきゅぅ…!まりさもなんとか言ってね!」
「ゆゆ!?で、でもたくさんたべものがあるばしょしってるならおしえてもらいたいんだぜ」
「むきゅうううううう…!」
「美しくゆっくりついてきてね!」
「ゆー!たべものー!」
「これでふゆもゆっくりできるね!」
結局賛成多数によりなし崩し的にゆかりんの言う食べ物がある場所を見に行くことになった。
しかし子ぱちゅりーは体が弱いのでとりあえず家にお留守番させる。
未だ内心穏やかではないぱちゅりーも渋々ついていった。

「ここだよ!ゆっくり集めてね!」
そう言ってゆかりんは普段は食べれるものがないのであまり寄り付かない場所にみんなを連れてきた。
「ゆー?」
「たべものどこー?」
「全然たべものなんてないよ!やっぱりゆかりんはうそつきだったね!
ゆっくりきえてね!」
「ゆー、これ、これを食べるの」
そう言ってゆかりんはそこらに落ちていた木の実をくわえた。
「むーっきゅっきゅっきゅ!」
ゆっくりぱちゅりーがその体の弱さとは裏腹に大声で笑い声をあげた。
「きゅっきゅ、ゲホッ!ゴホっ!むきゅぅ~」
「だいじょうぶだぜぱちゅりー?」
案の定咳き込んでしまいまりさが心配そうに背中をさすった。
しかしぱちゅりーのハイテンションっぷりはとまらない。
「むきゅ!その木の実は毒があるから食べられないよ!
バーカ!バーカ!むきゅきゅきゅ!それ食べてゆっくり死んでね!!」
その通りでゆかりんの示した木の実はそのまま食べると腹を壊してしまうので絶対に食べないようにと
ぱちゅりーが周りに言い聞かせていた食べ物だった。
ざまあみろと言わんばかりの勝ち誇った表情でぱちゅりーがまくし立てた。
しかしそれでもゆかりんの余裕は崩れない。
「ゆ、こっちに来てね!」
「ゆー?」
「なんなんだぜ?」
そういうとすぐ近くに流れる川まで行って口にくわえた木の実を水に浸す。
「こうやって半日置いておくと毒が抜けて食べれるようになるよ!
こっちに半日浸しておいたものがあるよ!これあげるからゆっくりたべてね!」
「む、むきゅ!?そんなの嘘だよ!信じちゃだめ!ゆっくりできなくなるよ!」
自分の知らない知識を出されて狼狽するぱちゅりー。
私はそれを食べてひどい目にあったゆっくりもたくさん知っている。
絶対に食べられるわけがないのだ、そう自分に言い聞かせるぱちゅりー。
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」
しかしおいしそうに半日水に浸しておいた木の実を食べるゆかりん。
それにつられてまりさ達もその木の実を口にした。
「ゆ?うっめ!これめっちゃうっめ!!」
「うんめえええええ!!」
「うまいぜうまいぜうまくてしぬぜ!」
大絶賛するまりさ達であった。

「む、むきゅ~…!?」
予想外の事態にぱちゅりーは完全に混乱し、まともに言葉も出てこなかった。
「たべもの置き場を見せてもらったけどあの食べ物は犬さんも食べるから取りに行ったら
犬さんに見つかって危ないものがたくさんあったよ!あれは取りに行っちゃ駄目だよ!」
「む、むきゅ!?」
ついにとどめを刺さんと駄目押しの事実を明かすゆかりん。
ぱちゅりーとて無論それは知っていて、だからこそその食べ物は絶対に犬とかち合わない時間に取りに行くよう徹底させていた。
「ゆ?!どうしてそんなものとりにいかせてたの!おかあさんひどいよ!」
「まりさたちにあぶないことさせるおかあさんはゆっくりしね!」
しかし子ども達はそんなことを知るわけもなくぱちゅりーを糾弾する。
「むきゅ、むきゅ!?」
ぱちゅりーは子ども達に体当たりされたのと怒りと混乱でまともに弁解も出来ずに居た。
「こんなひどい奴なんかとはゆっくりできないでしょ?
紫もやしは追い出してゆかりんとゆっくりしようね!」
そしてゆかりんの攻撃は未だ止む事を知らない。

「おかあさん…ぱちゅりーはくちうるさくていっしょにいてもゆっくりできなかったよ!」
「むらさきいろでせきばっかりしてきもちわるいよ!」
「む、むきゅ!ひどい゛い゛い゛!」

今まで育ててもらった恩も忘れて暴言を投げかける子ども達に心を切り裂かれるぱちゅりー。

「…まりさもぱちゅりーはくちばっかりでうざいとおもっていたんだぜ
えさをとってこないくせにいつもえらそうにしててヘドがでたんだぜ
もうぱちゅりーとはゆっくりできないからゆかりんとゆっくりするぜ」

「む゛、む゛きゅう゛う゛う゛!」

その言葉が止めだった。


「むぎゅ…ゲボっ、ゴボっ…!」
その後、ぱちゅりーは理不尽なことに今までの報復として一方的なリンチを受け放置された。
体中が痛み思わず咳き込んで周りに餡子を撒き散らす。
体の痛み以上にそんな時背中を擦ってくれたまりさがもう居ないことが何よりも辛かった。
自分はみんなのために必死に考えていたのにまりさ達がそんな風に自分のことを見ていたなんて。
冬の訪れを感じさせる冷たい風が着々とゆっくりぱちゅりーの体温を奪っていく。
もう動く気力も沸いて来なかった。
もう目を瞑りこのまま天へ還るのを待とうと体の力を抜いた。


再び目を覚ましたとき、ぱちゅりーは暖かい空気に包まれていた。
「むきゅ…」
ここは天国だろうか、そう思い辺りを見回す。
「ゆ、ぱちゅりーがめをさましたよ!」
「ゆっくりしていってね!」
「む、むきゅ?ゆっくりしていくね!」
寝ぼけ眼のまま小さなゆっくりれいむに囲まれるぱちゅりー。

「大丈夫?ゆっくりしていってね!」

そこへ食べ物を持ってやってきたのは知り合いのゆっくりれいむだった。
「むきゅ!?れいむ!?ぱちゅりーはいったいどうなったの?」
このゆっくりれいむはゆっくりまりさの古い友達で今も一家ぐるみの付き合いをしており
ぱちゅりーもよくゆっくりれいむ一家に助言をしていた。
「ぱちゅりーがぼろぼろでお外に倒れてたのをれいむがおうちにつれてきたんだよ
まりさ達はどうしたの?」
「むきゅ…実は」
ぱちゅりーはれいむ達にゆっくりと事情を話した。

「ゆー!それは酷いよ!まりさにあやまってもらってきたほうがいいよ!」
「むきゅ、でももうまりさ達はぱちゅりーのことなんか…」
そう言ってぱちゅりーは俯いた。
まりさ達の言葉が残した傷はとても深かった。
しかもそれだけではなく知識において自分に並ぶゆっくりは居ないという自負が
粉々に砕かれたのもぱちゅりーがまりさ達の所へ行きたがらない理由の一つだ。
「ゆー、駄目だったられいむのおうちに来ればいいよ!」
「…いいの、ぱちゅりーは体が弱いから餌もとってこれないよ…?」
「ぱちゅりーみたいなものしりがおうちに居てくれたらとっても助かるよ!
だからいつでも来てね!」
「む、むきゅぅ~」
そう言ってれいむはぱちゅりーにキスをした。
顔を真っ赤にして黙り込むぱちゅりーであった。
それにしても心がとても軽くなった。
自分を必要にしてくれる人が居ることほど嬉しいことは無い、そうぱちゅりーは心から思った。


「むきゅっ、むきゅっ」
れいむ達に勇気付けられて早速家を出た。
思い立ったら吉日、という言葉もあるが少し前から雪が降り始めていたので完全に積もる前に一度まりさ達に会わねば
次に会えるのは冬越し明けになりかねないからというのが大きかった。
大分時間をかけてやっとのことでまりさとぱちゅりー、いや今はまりさとゆかりんのおうちに着いた。
「むっきゅぅぅ~~~」
器用に口を使って扉の鍵を開ける。
この扉を作ったのはぱちゅりー自身なのでこれはそう難しいことではなかった。
「むきゅ、まりさ…子ぱちゅりー…?」
「む゛き゛ゅぅ゛ぅ゛ぅ゛う!!!おがあざあ゛あ゛あ゛あん!だずげでー!!!ゲハァ!ガハァ!」
「む、むきゅ!?子ぱちゅりー!!!」
扉を開けると同時に子ぱちゅりーの悲鳴が聞こえあわててぱちゅりーは巣の中に飛び込んだ。
すると奥の方に泣きながら餡子を吐いている子ぱちゅりーが一匹居た。
「むきゅううううううううううう!!!!」
すぐさま子ぱちゅりーに駆け寄り周りを睨み付けるぱちゅりー。
「むきゅううう!!!ぱちゅりーのあかちゃんになにをするのおおおおおおおお!!!!!!!げほっ!?」
怒りの余り叫びすぎて咳き込んでしまうぱちゅりーであったがしかし部屋の真ん中に陣取るゆかりんを睨み付ける視線ははずさなかった。
まりさたちは突然の乱入者に唖然としたままだった。
「その子はゆかりんのこと臭いっていう悪い子だったからおしおきしてたんだよ!」
「むきゅうううう!!!酷いよ!あやまってね!…もう片方のゆっくりぱちゅりーはどこ!?」
ゆかりんへの怒りもそこそこにぱちゅりーは子ぱちゅりーが一匹しか居ないことに気づきあわてて辺りを見渡した。
しかしどこにも子ぱちゅりーの姿が見当たらない。
ぱちゅりーの動悸は時が進むにつれ早くなっていった。
その時、ゆかりんがそっと横に退いた。
何かする気かと警戒の色をさらに深くするぱちゅりー。
ゆかりんの居た辺りをよく見ると黒ずんだ紫の小さな泥団子のようなものが一つ、下敷きになっていた。

「む゛、む゛ぎゅ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!」

ぱちゅりーはそれが何なのかすぐにわかってしまう自分の知識を恨んだ。
「ゆ、子ぱちゅりーはゆっくりできなかったね!」
そういうとゆかりんはケタケタと笑い出した。

「どお゛じでどべでぐれ゛な゛がっだの゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!どお゛じでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」

涙を流しながらぱちゅりーはまりさ達を問い詰めた。
「おかあさんおかあさんうるさかったからまあいいかとおもったぜ」
「こぱちゅりーはあたまでっかちでうざかったよ!」
「むらさきでむきゅむきゅいってるからきもいよ!!」
しれっとそんなことを言うまりさ達。

「その子ぱちゅりーもつれてとっとと出て行ってね!」

ゆかりんがそう言ってぱちゅりーに体当たりをした。
「むぎゅおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
ぱちゅりーは激昂してゆかりんに挑みかかった。
「ズギマ!?」
ぱちゅりーの噛み付きがゆかりんの皮を切り裂いた。
病弱なゆっくりぱちゅりーが他のゆっくりに噛み付いて皮を食い破ることなど
通常ではありえないことだが母としての怒りがぱちゅりーに普段ありえない力を与えたのであろう。
皮が破れたスキマから納豆がこぼれてぱちゅりーを汚した。
「ゆー!やめてね!ゆっくりできないぱちゅりーはでていってね!」
「ゆかりんこっちだよ!ゆっくりにげて!」
「うぜーぜ」
しかし所詮はぱちゅりー種、まりさ達に再び囲まれて体当たりを繰り出され、その後はまたもただのリンチだった。
「むきゅ、むきゅ…!」
しかし母としての想いがぱちゅりーに最後の力を与えた。
最後の力を振り絞って包囲網から抜け出すと生き残った子ぱちゅりーをくわえて一瞬で外へ飛び出した。
外に出たぱちゅりーは追っ手を恐れてすぐにれいむの家に走ったがまりさ達が追ってくることはなかった。


「むっきゅ、むっきゅ、もうすぐおうちにつくからね…、そしたらゆっくりできるよ、それまでがんばってね…!」
「む、むきゅー」
かなり弱りつつある子ぱちゅりーを自らも傷ついた体で必死に激励した。
雪がかなり強くなってきている、急がねば体力を吹雪に奪われて動けなくなってしまう。
そう考えて体を休ませてあげたいのを我慢してぱちゅりーは歩き続けた。

「れいむー!あけてー!ぱちゅりーが来たよ!ゆっくりしてないであけてー!」
ついにれいむの巣について、やっと一安心とぱちゅりーはどんどんドアに体当たりした。
「ゆー、ぱちゅりー…?」
ドアが開いてゆっくりれいむが出てくる。
もう大丈夫だとぱちゅりーは子ぱちゅりーの方を向いて笑った。

「ゆ゛ゆ゛!?臭いよ!あっちいってね!」

その次の瞬間、ゆっくりれいむは眉根をひそめてバタンと扉を閉めてしまう。
「むきゅ!?れいむ!?ぱちゅりーだよ!ここを開けてね!」
「ゆー!そんな臭いぱちゅりー知らないよ!れいむの知ってるぱちゅりーは臭くないぱちゅりーだよ!
いっしょにいたらゆっくりできないからどこかにいってね!」
なんということだろうか
ぱちゅりーがゆかりんに噛み付いた際にぱちゅりーに付着した納豆は凄まじい臭いを発していたのだ。
れいむはこれは耐えられないとぱちゅりーを拒絶してしまった。
「む、むきゅううううううううううお願い!この子だけでも入れてね!お願いじます!
お゛ね゛がい゛い゛い゛い!!!!!ゥオェネングァイィィィィッッッッーーーーー!!!!!」
ぱちゅりーが何度も扉を叩くがその戸が再び開かれることはなかった。



「む…きゅ……」
完全に八方塞になったぱちゅりーは冬越しを出来るであろう穴を探してよろよろと彷徨っていた。
だがそれはぱちゅりーのためのものではない、子ぱちゅりーのための物であった。
穴倉に収まって、自分の口の中に入っていれば何とか寒さを凌げるであろう。
食べ物も自分の体を少しずつ食べていけば小食の子ぱちゅりー一匹ならなんとかなる。
ぱちゅりーは子ぱちゅりーのために自らゆっくりハウスとなる覚悟を決めたのだ。
この子が生き残ってくれるなら悔いは無いとぱちゅりーは思った。
ただもっとたくさん伝えたい知識があったのにそれが伝えられないのがぱちゅりーには少し残念だった。
だが覚悟を決めてもそう簡単に穴倉は見つからなかった。
今にも尽きてしまいそうな自分の命の灯火にぱちゅりーは焦った。
なんとか最後になる前に穴倉を見つけなければと夢中で探し回った。
その焦りが普段のぱちゅりーなら絶対に犯さないミスを犯させてしまった。
「む゛ぎゅ!?」
通りがかった犬に思い切り頭を踏まれてしまう
犬の習性を熟知しているぱちゅりーならば絶対に近寄らない場所に近づいてしまった。
幸いぱちゅりー自身に別状はなく犬も寒さで鼻が利かないのか足元の饅頭に気づかずにどこかへと言ってしまった。
「むきゅ~~…」
頭が痛くなって涙を流す。
口の中に甘い味が広がって居るのに気づきまた咳き込んで餡子を吐いてしまったのかとあわてて中の子ぱちゅりーを吐き出した。
「む…きゅ…?」
口からゴミクズの用に潰れた子ぱちゅりーが吐き出された。
「む゛ぎゅう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛ん゛!!!!!!!!!!!!!」
なんたることか、犬に頭を踏まれた際そのまま噛み潰してしまったのであろう。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
気が動転したぱちゅりーは子ぱちゅりーにすぐに寄り添うも既に息があろうはずも無かった。
まりさと激しく愛し合いながら交尾した日のこと、死を覚悟しながらも双子の子ぱちゅりーを無事出産できた日のこと
初めてまりさとぱちゅりーと子ぱちゅりー二匹で「ゆっくりしていってね!」と言えた日のこと
子ぱちゅりーに自分の知識を伝えていった日々のこと
全てが口の中の甘い餡子の味に塗りつぶされていった。

「あははは…あはははっ、あははははははは」

ぱちゅりーはそのまま吹雪の中をどこへいくともなく歩いていった。


「うへへ…ひひひひいひえはははひゃっひゃんっは」
ぱちゅりーはすべてにぜつぼうしてさまよっていた。
そのときどん、となにかにぶつかる。
「ひひ…むきゅ?」
「よう、だいじょうぶかだぜ」
ぱちゅりーのめのまえにあのゆっくりまりさがいた。
「ごめんだぜぱちゅりー、ゆかりんはじつはとんでもないうそつきだったんだぜ
もうにどとぱちゅりーにひどいことしたりしないぜ」
「ま゛、ま゛りざああああああああああ!!!」
ぱちゅりーはなきながらまりさにだきついた。
「まりさ!だいすき!だいすきいいいいいい!!!
ぱちゅりーつらかったよ!とってもつらかったよ!!」
「ごめんねだぜ、もうあんしんしていいんだぜ」
もうなにもすがるもののなかったぱちゅりーはまりさにあんなひどいことをされたのにもかかわらず
まりさのむねにとびこんでいった。
そうだ、もういちどこどもをつくろう。
そしてこんどこそふたりでだいじにそだてるのだ。
ぱちゅりーがかおをあからめてそのことをいおうとするとまりさはあついせっぷんをして
そのままふたりはからだをこすりあわせながらあいしあった。


「臭い゛よ゛お゛おお!!!」
「ゆ!?だめなんだぜえええ!!!!」
「ゆ!おしおきだよ!」
あの後傷口から漏れた納豆のにおいに耐え切れず遂に子まりさは臭い、といってしまった。
その瞬間子まりさはゆかりんの作った地面のスキマに落とされる。
「鼻につくわ、その少女臭のわからないゆっくり特有の馬鹿さ加減」
ゆっくりには絶対に上れないように作られたその▽字型の穴に落ちた子まりさにゆかりんは上から重しを放り投げた。
「ゆぐううううううう!!!」
子まりさが押し込められる痛さで悲鳴を上げた。
「ゆ、ゆううう…」
しかしまりさは何も出来ないで居た。
「ゆ!ゆかりんの少女臭がわからない馬鹿な子たちとは一緒にゆっくりできないよ!
早くゆかりんの子どもを作ろうね!」
そう言ってゆかりんはまりさに圧し掛かって交尾を始めた。
冬越し中に交尾など食料のことを考えれば本来はありえないことである。
しかし食料は充分過ぎるほどにあるのだ、それこそ子どもが10匹増えても養えるほどに。
断る理由は無かった、それもその食料がゆかりんにしか取り出せないとなれば断れる理由さえ無い。
ゆかりんは知識をふんだんに使い山のように食べ物を集めるとそれを入れる貯蔵庫を作るようまりさ達に指示し
まりさ達もそれにすぐに従った。
そしてその貯蔵庫にゆかりんの設計した扉を付けるように指示した。
これにもまりさ達はすぐ従った。
しかしそれは扉ではなかった。
絶対に開けないように、そしてゆっくりの力では絶対に壊せないよう頑丈に作られたそれは扉ではなく壁だったのだ。
まりさ達のゆっくりぶれいんでは誰一人それに気が付けなかった。
貯蔵庫に入れるのは扉の上のスキマから入れる体のやわらかさを持つゆかりんだけとなった。
まりさ達はそのスキマから出される食料を配給され管理された。
冬の間の食料は完全にゆかりんの手に入りまりさ達は絶対服従を誓うしかなくなったのだ。
「ゆっゆっゆっ…」
恐らく冬の間中ずっとこうやって犯されるのだろうとまりさは思った。
そして自分は死ぬまで出産し続けるのだろう。
子ども達だって生かしておいて貰えるのか怪しいものだ。
ゆっくりしたかっただけなのにどうしてこんなことに。
絶望の最中でまりさは深く愛し合ったいとしい人のことを思い涙を流した。


「ゆっ、れいむゆっゆっれいむぅ…!」

れいむとは子どものころからの知り合いでまりさとは深く愛し合っていた。
一緒に家族を作ることを真剣に考えたが残念なことにその当時二匹には一家を養っていくだけの力は無く
涙を呑んでそれぞれ別々に暮らすことにしたのだ。
その後、なんとか食っていくためにあのぱちゅりーと家族を作った。
ぱちゅりーはゆっくりれいむの一家にもさまざまな知識をもたらして、れいむの一家の幸せに力を貸してくれていた。
まりさもれいむが幸せになれるならこれでいいと思った。

ああ、もしあの時ゆかりんが追い出そうとしたのが紫もやしのぱちゅりーなどではなくれいむだったなら
そうだったなら絶対に自分はゆかりんに屈することはなかったはずだ。
こんなことなら無理をしてでもあの時れいむと家族を作るべきだったのだ。
もはや取り返しのつかないことを嘆いてまりさは涙を流しながら絶頂に達した。


本当の賢者は知識を分け隔てなく与えたりはせずに自分と相手に必要な知識を理解してその上で目的のために知識を引き出す。
そうやって妖怪の賢者、八雲紫を模したゆっくりゆかりんはこのまりさの巣の中に自分のための国を作った。
誰にでも分け隔てなく知識を与えたゆっくりぱちゅりーは模した相手と同じ大図書館であった。
誰にも見向きもされなくなった図書館というのは本当に悲惨なものである。


――――――――――――――――――――…
吹雪、というほどでもない雪の降り止んだ朝
少年は昨日森に作った小さな雪だるまがどうなっているかを見に行った。

すると雪だるまがあった場所には強度が足りなかったのか
首が壊れてとんがりを乗せた団子ようになっている雪だるまとそれにひたすら体をこすり付けているゆっくりが居た。
そのゆっくりは焦点の合っていない目でずっと体を雪だるまにこすり付けているようだった。
何度も口を付けたのか唇はいてついて腐り落ち半分取れかけていた。
体をこすり付けている部分は凍って皮が割れ、出てきた餡子がまた凍ってしまっているのにそれでも擦り付けるのをゆっくりはやめなかった。
雪だるまの方はゆっくりが吐いた餡子を頭の上からかぶり見事に白黒になってしまっていた。
あんなにきれいに白く出来たのに、と少年は残念と思うと同時にこの横のゆっくりはとても哀れなものだとなんとなくそう思った。
そこで少年はゆっくりを踏み潰してその哀れな生を終わらせて上から雪をかけて隠した。

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最終更新:2022年05月03日 16:57