※現代にゆっくりがいる設定です。

【兄弟の暇つぶし】


「暇だね兄さん」
「そうだな弟」

大型連休を利用して田舎へと帰郷した大学生の兄弟は、実家の居間に並ぶ畳の上で時間を持て余していた。

「考えてみれば実家には何も無かったんだよな。娯楽施設も遊び道具も」
「都会で暮らしてると、そう言う事を忘れるものだね。兄さん」

兄弟の故郷はたいそう田舎ゆえに遊びと言えば
学校のグラウンドでのスポーツ、山と川での冒険である。
いずれも20代にもなると今ひとつ魅力が無い。

朝から何もやる事が無い兄弟は見もしないテレビをつけ
畳みに転がり、窓の外に広がる森と一体化したような緑の庭を眺めていた。

すると突然、茂みから何個かのボールが飛び出してきた
───しかしそれは、よく見ればゆっくりの一家であった。

「へー外見て兄さん。ゆっくりだよ。懐かしいね。まだいたんだ」
「ここらへんは田舎だし、あいつらすぐ繁殖するからなー」

兄弟は庭に乱入しモゾモゾと動き回るゆっくり一家をしばし眺めていると
どちらとも言わずに無言で起き上がった。

「なあ弟。子供の頃やった遊びをやらないか?」
「奇遇だね兄さん。僕も丁度そう思ってたところだよ」


◆ ◆ ◆


庭の芝生の上に転がる饅頭生命に兄弟は対峙する

「ここはれいむたちのゆっくりぷれいすだよ。にんげんさんはさっさとでていってね!」
「まりさはもりでいちばんつよいゆっくりなんだよ!!
 ばかなにんげんは、まりさにいたいめあわされないうちにしっぽまいてにげてね!」
「ばーきゃばーきゃ!!むのうなじじいはとっとときえちゃえ!」
「おお、ぶじゃじゃま!!うじゃいうじゃい!!」

成体のまりさとれいむ(両親)と子ゆっくり2匹(まりさ、れいむ)の特筆事項が何も無い一家。
親はバレーボール、子はテニスボールぐらいの大きさだろうか。
家族揃って不愉快な垂れ目、ニヘラと笑った口、突き出した下膨れの顎
そしてお決まりのお家宣言をする。(特に子供たちの不愉快度が高い)

それに対し腹を立てるでもなく無言で近づく兄弟。

「ゆ?れいみゅのこえがききょえないの?ばきゃなの?くしょじじいはさっさと───」

一歩前に出て丸く膨らみプンプンと怒り顔の子れいむの眼前で、
右手にキンチョール、左手にライターを構える兄。

「ヒャッハー汚物は消毒だぁぁぁ~」

ブヴァッァァァーー!!
結構派手な音と共に真正面から。即席火炎放射器の炎が子れいむの顔を舐める
(※良い子は決して真似しないでください)

「ゆっぴゃぁぁぁあっっあぢゅいぃぃぃぃ!!!」

予想もしていなかった炎によって髪とリボンが燃え上がった子れいむは
もみあげをブンブン振り回しながら、悲鳴を上げ地面の上を転げ回る。

突然の惨事に事態が飲み込めず呆然とする家族。
すかさず、弟は親まりさの帽子を剥ぎ取り──

「ゆっ!!まりさのおぼうし!かえしてね!」
「こんなボロ布、ケツ拭く紙にもならねーぜ!!」

ビリビリに破いて投げ捨てた。

目の前で転げまわる子れいむ、散乱する布キレ。途端に叫びだす一家

「な、なにずるのぉぉぉ!!!ばでぃさのおぼうじやぶっぢゃだめでしょぉぉぉ!!!」
「おちびぢゃぁん!!でいぶのおぢびじゃぁぁんん!!ゆっぐりじでぇぇ!!」
「れいみゅ!!まりさがぺーりょぺーりょするきゃらゆっきゅりめをしゃましてぇぇ!!」
「ゆっ・・ぴゅう・・」

顔を真っ青にしてビリビリに裂かれた帽子の破片を集めるまりさ。
饅頭の表面が焼け爛れた子れいむを気遣うれいむと、子まりさ。
地面を転がりまわったおかげで炎は消えたが、皮膚は爛れ、髪はチリチリ、リボンは焦げていた。
30秒前までの傲岸不遜な威勢はどこへやら、あっという間に阿鼻叫喚の図に早変わりだ。

ゆーゆー泣き喚く一家を見下ろしながら兄はキンチョールを地面に置き、
必死にバラバラの布切れとなった帽子を集めるまりさ(そんな事しても全く意味はないが)に冷淡に声をかける。

「おいまりさ、『まりさはあまあまなんて大嫌いです。辛いのが大好きです』と言ってみろ。」
「なにいっっでんのくぞじじい!!そんなこどいうわけないでじょぉぉ!!
 ばかなにんげんはざっざとばでぃさのおぼうじとおちびちゃんにあやまるんだよっ!!」

破られた帽子、焼かれた愛娘の仇、理不尽な要求
それらに対し、目に大粒の涙を溜め大きくぷくーっと膨らみ叫ぶまりさ

「ほう・・・それほど言いたくないのか・・・」

対照的に兄は冷めた顔でニヤリと口の端を歪め
家族に囲まれて看護されている焼けた子れいむを左手に掴み取あげた

「ゆぴぃ・・だしゅけてぇ・・おきゃぁさん・・」
「おちびちゃん!!おちびちゃぁぁん!!!」
「れいみゅをはなしぇくしょじじい」
「黙れ!!汚らわしい饅頭どもが!!よく見ていろ・・・」」

反抗するれいむと子まりさを蹴り飛ばし
左手に持つ焼けた子まりさの底部に人指し指を刺し込む

プスンッ!!

「ゆぴゅぅぅぅぅっっっ!!!!!????」
「「「おぢびぢゃぁぁぁんんん!!!!」」」
「フッフッフ、さ~て、なん本目に死ぬかな~俺を止められるのはまりさ、お前だけだ。
 お前のたったひとつの言葉だけでいいんだ。強制はせん!自分の意思で言うんだ。」

火傷に加え底部を貫通する激痛に、子れいむは悲痛な叫びをあげる。
それに対し、口が裂けんばかりに絶叫し解放を求める家族。
まさに地獄絵図、兄弟達には心地よい光景だ。

「にんげんざん!!ゆっぐりまっでね!!」

兄の足元で顔色を失ったまりさが必死に声を上げる。

「ん~~~!?」
「ま、まりさはあまあまなんて・・きらいです・・・からいのがすきです・・・」

まりさは目を伏せながら小さくか細い声を出す。

「なぁに~~、きこえんな~~~。その程度でおれの心が動くと思っているのか~。」

ブス!!

「ゆぴぃぃぃおどぉぉしゃぁぁんん!!!いぢゃいよぉぉぉ!!れいみゅじんじゃうぅぅぅ!!」

だが兄はそんなまりさの姿勢を許さない。子れいむの底部に二つ目の穴を作る
甲高い絶叫が再び庭に響く。

「まりざぁぁ!!!はやぐなんどがじでねぇぇ!!!れいむがゆっぐりでぎないでしょおおおっっ!!」
「おどぉぉじゃぁん!!ゆっぐりしないでたしゅげであげちぇにぇぇ!!」
「ゆっ!!まりさはあまあまなんてだいっきらいだよ!!からいのがだいすきなんだよぉぉ!!!
 だがらおちびちゃんをはなじでぇぇ!!!」

新たな子供の悲鳴に親れいむと子まりさが絶叫し
まりさは目から涙を滝のように流しながら、口をブルブル震わせ逆ギレ気味に叫んだ。

「フッ、フフフ。フハハハハ。いいぞまりさお前はとても正直なゆっくりだ。
 辛い物が死ぬほど嫌いなゆっくりが!!親の愛とはすばらしいなぁ!!ハッハハハ。
 では辛いものが好きなまりさ、このカラシとワサビとタバスコをブレンドした物を食べろ」

兄は黄・緑・赤がブレンドされた奇怪な練り物が盛り付けられた小皿をまりさの前に差し出す。

「ゆ・・っぐぅ・・ごんなのむーしゃむーしゃしたらゆっくりできないよ・・・」

顔をしかめ横を向くまりさ。刺激臭で分かる。
ゆっくりに取っては毒物とさえなりえる香辛料の塊だ。

「では、この子れいむを殺そう」

最早、意識の無い子れいむに再び拷問を始める素振りを見せる兄

「まりざ!!なにやっでの!!こどもがじんじゃうでしょ!!はやぐだべなざいよ!!」
「ゆっ!?まっで!!まっでぐださい!!たべまず!!たべまずがら!!おちびちゃんをはなじでくだざいっ!!」

それを見て再び嬌声を上げるれいむ、まりさは必死に兄に対し懇願の声を上げる。
もはやそれまでの唯我独尊の表情は粉々に砕け散っていた。

「よかろう、さあ食え。まりさ『むーしゃむーしゃしあわせ~』と言ってみろ」

と、香辛料ミックスの皿を再びまりさの前に差し出す兄。

「まりさ!がんばって!おちびちゃんのためだよ!」
「おとーしゃんがんばっちぇ!!」

まりさの目は既に刺激で赤く充血し涙が一杯だ。
しかし、家族の声援を背に意を決して口に含む。

「ゆっぐぐぐぐ・・むぅ~じゃ・・」

まりさは一生懸命に耐え口を閉じた。が、体は正直だ。

「ゆげっはぁ!!ゆぶぅぅぅっぅ・・・だべだでないよぉぉ・・」

激物の香辛料を一口咀嚼して殆ど口からゲロゲロと吐いてしまった。
顔をクシャクシャに歪め、涙をボロボロと流し、タラコ状に腫れあがった唇からは口内洗浄の為の涎がダラダラと垂れた。

「ほーう。まりさ・・・貴様は子れいむがどうなっても良いようだな」

軟弱なまりさにすかさず追い討ちをかける兄。

「ゆっ!?まりさのばきゃぁ!!なんでむーしゃむーしゃしないの!!ばがなの!じぬの!」
「おとーしゃん!しあわせーっていわなきゃだめでしょ!やきゅたたじゅ!」

家族の罵声に兄弟の笑い声が重なる。

「!?ばっで!!いばのはれんしゅうだよ・・!!ごでがだちゃんどだべるんだよ!!」
「くっくっく、ならばもう一度チャンスをやろう。『むーしゃむーしゃしあわせ~』と言ってみろ」

不細工に輪がかかった饅頭は、小さな餡子脳をフル回転させ膨らんだタラコ唇で懸命に弁解する。
兄は低脳生物の必死さに笑いを我慢できないような表情でそれを受け入れた。

「ゆ~ふ~、ゆ~ふ~・・・おちびちゃんをたすけるためだよ!まりさはできるゆっくりだよ!!」

家族の不安な視線を一身に受けながら、まりさは涙を流す大きな瞳を吊り上げ
腫れた唇を引き締め、ゆっくりらしからぬ覚悟を決める。
そして、一気に大口で香辛料を口に含んだ。

バクン!!

「ゆんんんんん!!!!!ゆぅぅぅっっっ!!!!!!」

まりさの口内で爆薬が破裂し、目に稲妻が落ちたかのよに視界を失う。
思わず身を捻り転がり回ってしまう。しかし、口は開かない。開いたら全てが台無しだ。

(ゆぶぅぅぅっっ!!ばりざはでおどぉーさんだよ!!かぞくをまもるんだよ!!
 あとでみんだであまあまをいっぱいむーしゃむーしゃずるんだよ!!)

歯が舌が頬が、硫酸を流し込まれたようにジワジワと焼け爛れていく。
一噛みする毎に中枢餡にキリを刺し込まれるような、あるいはカミソリで薄くスライスされるような激痛が襲う。
しかし、抵抗するように根拠の無い自己暗示をかける。

(あとであまあまをたべるんだ!!みんだであまあまをだべるんだ!!あまあま!!あまあま!!あまあま!!)

飲み込む度にドロドロに溶けた鉛を喉に流し込んだかのような感覚。
最早、口内が爛れ何も感じなくなったが必死に最後の一言を発する為に真っ赤になった瞳を見開く

「む゛む゛む゛ぅじゃ・・・」

その刹那 ────
ポスン・・・と横で眺めていた弟がワザとらしく悶絶するまりさの目の前に板チョコのカケラを落とす。

「お~っと、まりさの前にチョコレートを落としちゃったよ。うっかりだぁ
 落としちゃったし拾ったゆっくりの物だね。ものすごくゆっくりできるスイートな甘々何だけどなぁ
 これ食べたらヘブン状態になれる、至高のゆっくりおかしなんだけどなぁ」

餡子脳には思いもよらない突然の出来事、弟の言葉はまりさの耳に入らない。
森では得る事のできない最上級のあまあまが目の前にある。ちょっと舌を伸ばせば口に入る距離。
饅頭の全てを眼球にしたように視線は釘付けとなり、体液が全て涎と化して穴と言う穴から流れ出しそうだ。

「ゆ゛っゆ゛ゆ゛・・・・」
「で・も!"甘い物が大嫌いなまりさ"には要らない物だよねぇぇ!!!」

グシャッ!!

間髪入れず、弟はまりさの目の前に落ちたチョコレートの破片を思いっきり踏みつけ
地面の土にグリグリと混ぜ込む。

「!!!!?????・・・・・」

まりさの真っ赤な目に絶望の色が広がり、涙がさらにあふれ出てくる。後から後から溢れて来る
ゆっくりできない困難を乗り越え激物を飲み込み。それを忘れられる、あるいは癒してくれるお菓子が・・・
身が捻じ切れる程に望んだあまあまが・・・目の前で踏みにじられた

「ゆっぐ・・!?ゆっげぇげぇっ・・むーぢゃむうぅぢゃ・・じあ、じあわぜぇぇぇ・・ゆげぇっっ!!」

かろうじて、まりさは最後の一言を言った。言い切った。そして口から餡子を吐き倒れた。
死んではいない。中枢餡が出ていないから。

「あまあま・・・あまあまあま・・・・えろえろえろ」
「まりさ!!だいじょうぶ!!しっかりして!!」
「ゆっ~おきゃぁさ~ん。まりしゃさっきのあみゃあみゃたべちゃいよぉ~」

まりさは妙な言葉をつぶやき続け白目を剥いて気絶した
心配して駆け寄るれいむと餡子脳全開の子まりさ。

「ハッハッハ!!見事だまりさ!!約束どおり子供を返してやろう!!」
「おおぶざまぶざま!!愚鈍な饅頭による最高の見世物だったよ!!」

兄弟はその姿に満足し、左手の焼き&穴あき子れいむを
気絶したまりさの横に転がした。ちなみにこの子れいむは既に意識無く半死状態だ。

「れいぶおぢびぢゃぁぁ!!!!」
「おきゃぁさん!!まりしゃあみゃあみゃがたべちゃいっていっでるでしょぉぉ!!」

倒れたまりさと子れいむに騒々しく声をかけるれいむ。。
ゆ~んゆ~んと鳴き声をあげ必死に2匹の体を舌で舐めてるがそんな事でどうにかなるわけない。
ちなみに子まりさはゲス脳全開で「あみゃあみゃきゅれにゃいおやはくじゅだよ」と叫んでる。

兄弟は一部始終に笑いすぎて腹筋が痛くなった。

次は弟のターンだ
瀕死の家族を前にして、先程のチョコに未練たらたらで土を舐め続ける子まりさを持ち上げると
用意していた『ゆで卵スライサー』(ゆで卵をピアノ線が張られた網で輪切りにする道具)に挟み込む。

「ゆっ!?にゃに!!じじいやみぇろ!!ゆっぎゅりできにゃいよ!!ころしゅれちゃいにょ!!」
「ゆっ!?くそじじいなにするの!?まりさおちびちゃんをゆっくりしないではなしてね!!」

得体の知れない物に挟み込まれる残った唯一の子供を見て、今度はれいむがぷくーっと膨らみ叫ぶ。
ゆっくりの行動はワンパターンだ。

「れいむ~もしお前がこの子まりさを見捨てると言うのならばお前だけは助けてやろう」

弟はジタバタと暴れる子まりさを動けない程度の力で挟み、足元の母れいむに向かって声をかける

「な、なにいっでるの!?ばがじじい!!ざっざどまりさおぢびぢゃんをはなじでねぇ!!」
「ほほ~う、随分と生意気な口の利き方をする物だな・・・状況が分からないと見える」

スライサーの網に力を込め子まりさにピアノ線を食い込ませる。

プツン!プツツッッッ・・・

布が徐々に裂かれる小さな音、命の次に大切なお帽子が破れていく音。

「ゆぴゃぁぁぁっっ!!やめじぇぇぇ!!ぎれぢゃうぅぅぅまりしゃのおびょうしがぎれぢゃぅぅぅ
 だじゅげてぇぇぇ!!!おきゃぁぁぁさぁぁんん!!!」
「ゆっ!!おぢびぢゃん!!やべで!!やべでぐださい!!にんげんさん!!
 れいぶがわるかっだですあやばりまずからやべでぐださい!!!」

調子こいていた子まりさの泣き声が聞こえた途端に額を地面にこすりつけるように足元で懇願するれいむ。
母性本能が強いと言うか、プライドが無いと言うか。

「ふん!下賎な饅頭が生意気な口をきくからだ。もう一度聞こう。
 もしお前がこの子まりさを見捨てると言うのならばお前だけは助けてやろう」
「ゆっ!?だじゅげでおがぁじゃぁぁん!!まりざじにちゃぐにゃいよぉぉぉ!!」
「ゆっ!!ぞんなごどでぎないよ!!れいむとおぢびぢゃんをこうかんしてね!!
 れいむはどうなっでもいいがらおちびちゃんをだずけでください!!」

涙を流し訴えるれいむ。中々見上げた親心だ。

「だめだ!お前が子供を見捨てないと言うならば、れいむお前も潰す!そして家族全員死ぬのだ!」
「ゆゆっっ!!!どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉ!?でいぶのがわいいおぢびぢゃんをだずげでよぉぉ!!」

だが弟は妥協しない。れいむは元から崩れている顔をさらに崩し泣き叫ぶ。
そんな泣き饅頭に弟は心底意地の悪そうな顔で語りかけた。

「可愛い子供ぉ?れいむ~なにを躊躇う必要がある?
 お前はあのまりさの姿でこれからゆっくり出来ると思うのか?あの子れいむがゆっくりできると思うのか?
「ゆ・・・・そ、それは」

突然の発言に言葉を詰まらせるれいむ。
弟の言うとおり、子れいむは最早生き残る事は難しく、まりさは未だ気を失っている。

「今の時代、障害を持った家族は最早自力でゆっくりする事はできん!!
 となればれいむ、お前は動けない家族を一人で養わなければならん。
 それでもいいのか!!お前ほどの賢いゆっくりがなにを迷うことがある!!家族を見捨てろ!!
 今はゲスがほほえむ時代なんだ!!」
「ゆ~・・・・」

元々食料調達はまりさにまかせっきりで、狩が得意ではないれいむは黙り込んでしまう。
が、数秒してパッと花が咲くように明るい顔で宣言した。

「にんげんさんゆっくりりかいしたよ!!まりさおちびちゃんをみすてるよ!!
 ゆっくりできないかぞくなんてごみいかだよ!!ゆっくりしょぶんしてね!!」
「おぎゃぁさぁぁんん!!!にゃにいっでるのぉぉぉぉ!!!
 ぎゃわいいまじざがゆっぐりでぎなぐなっちゃうでしょぉぉぉぉぉ!!!!」

先程までの涙はどこへやら酷い台詞を発するれいむ。
今度は処刑台の子まりさが絶叫する番だ。

「しょうがいをもったおちびちゃんも、ははおやにめいわくかけるおちびちゃんもだめなこだよ!
 まりさもゆっくりできないし、あたらしいだーりんをさがしてゆっくりするよ!!」

一片の曇りも無い爽快な笑顔、自身の安全を確信しきった
いっそ清清しいまでの『でいぶ』の表情だった。

「おがぁぁじゃぁぁんん!!!なんじぇ!?なんじぇ!?いいごにじまず!!
 れいみゅをいじめちゃりしましぇん!!わがばばいいばぜんがらだずげでくだざいぃっっ!!」
「うるさいよ!!まりさおちびちゃんがいとるれいむがゆっくりできないんだよ!
 だまってゆっくりりかいしてね!そしてゆっくりしないでしょけいされてね!」
「お・・お・・おぎゃぁぁざぁぁんんん!!!!!!!」

今生の別れとは思えない母子の会話。
絶望の子まりさ。ゴミでも見るようなれいむ。笑いを堪える弟。大笑いしてる兄。

「ヒャーッハッハッハ、まりさぁぁ~どうだぁ~悔しいか~お前は母親に見捨てられたんだ~
 不要なゴミのようになぁぁ!!そしてこれから苦しんで死ぬのだぁぁ!!おお、ぶざまぶざま!!」
「ゆぴゃ!!やめちぇ!!みゃりしゃはゆっきゅりできるよ!!だからおにぃしゃんたしゅけ『南斗水鳥拳!!』

弟は勢い良く『ゆで卵スライサー』のピアノ線を挟み降ろす

「シャオウォ!!!」
「ゆぴゃい!!??」

短い絶叫。驚愕の表情が"縦に裁断される"。さながら線切りだ
切断された直後は、かろうじて顔のパーツが正位置を保つが──

「ゆぷぷぷっっ・・・なん・・じぇ?・・おきゃぁ・!?・ゆびゅぴゅあぁ!!」

断末魔を合図に子まりさはバラバラに崩れ落ちた。
ボタボタと"子まりさの破片"が倒れた家族の横に散らばる。

「ゆふんっ!やくそくだよにんげんさん!れいむだけはみのがしてね!」

不細工なナスビの様な体に不愉快な破顔で宣言するれいむ。

「イヤ駄目だ」

しかし、兄はさらりと否定。そして兄弟揃って笑い始める。
予想と違う展開に狼狽を隠せないれいむ。まさか自分が助からないなんて!?と言った表情だ。

「ゆっ!?なにいってのばきゃなの───ゆっなにずるのはなじで!!」

兄は左手でれいむを掴みあげると、顎の下の*印の穴に細い棒のような物を何本も挿し込む。
挿し込むたびに「ゆっ♪ゆっ♪」と気色悪く顔を赤らめるれいむ。本当に気持ち悪い。

「ゆっ!!なにするの!?いくられいむがかわいいからってごういんすぎるよぉ~」
「・・・・餡子爆死惨。これは七百八ある経絡秘孔のうち『中枢餡下部』といってな。
 この指をぬいてから3秒後にてめえは死ぬ。その3秒間に自分のゆっくりできなさを思い知れ」

何を勘違いしたのか体をグネグネさせて恥らうれいむに冷水を浴びせる兄。
弟はあにゃるから延びる長い導火線にライターで着火し。カウントダウンの指を立てる。3本。

「─3」 バチバチバチバチバチバチ──

「ゆっ!!!???なに゛なに゛なに゛なんでぇ!!!」
突然のゆっくりできない処刑宣告に困惑するれいむ。あにゃるに感じる違和感も無視して兄に叫ぶ。

「ゆ!?なんでぇぇ!!やぐぞくがちがうよぉぉぉ!!ゆっぐりでぎないぃぃ!!ばぎゃぁぁぁ!!」
「おまえが一度でも約束を守ったことがあるのか?一度でも命ごいをしている家族を助けたことがあるのか?」

目を白黒させて絶叫するれいむに無表情で答える兄。

「─2」 バチバチバチバチバチバチ──

「やべでぇぇ!!!でいぶじにだぐないよぉぉぉ!!だずげでぇぇ!!
 うんうんでてねぇ!!ゆっぐりでぎないものどいっじょにうんうんででぇぇ!!!」
「きさまにはその醜い死にざまがふさわしい!!あと数秒できさまの餡子は地上から消えうせる…おわりだ!!」

必死にあにゃるに差し込まれた爆竹をひり出そうと、顔を真っ赤にして歯食いしばり
排泄肛に力を込めるれいむ。だが一向に出てくる気配は無い。
まさに醜悪を絵に描いたような下品さだ。

「─1」 バチバチバチバチバチバチ──

うんうんが出ない事を察すると今度は真っ青になりながら兄弟に背を向け
近づいて来る導火線の火花から必死に逃げようとあさっての方向に駆け出す。

「でいぶはかしこいゆっぐりなんだよ!!ゆうじゅうなゆっぐりなんだよ!!
 あだらじいがぞくをづぐってゆっぐり『バンッ!!』」
「─ゼロ」

下半身の爆発は駆け出したれいむを持ち上げるように身体を空中に押し上げ
れいむは爆ぜた。

「"ゆっくりしたい"ゆえに饅頭は苦しまねばならぬ!"ゆっくりしたい"ゆえに饅頭は悲しまねばならぬ!
 "ゆっくり"を捨てろ!!饅頭に"ゆっくり"などいらぬ!!はむかう者には死あるのみ!!」

累々たる死饅頭の中心で腕を組み高らかに宣言する兄。
こうして兄弟の遊戯は幕を閉じたのだ。


◆ ◆ ◆


「兄さん、ちょっと待って。れいむの様子が変だよ」

ノリノリの兄を急に制する弟

「何だよお前、最後のキメ台詞を邪魔するなよ」
「いや、ごめん。このれいむまだ生きてるみたいなんだけど。」

弟の指先には確かに小刻みに震え、か細い声を上げるれいむが見て取れた。

「ゆぶぶぶっっ・・・いだいよぉぉ・・あじざんが・・・なんにもがんじないよぉぉ・・・」

前のめりに倒れ、涙を流しながら悲鳴を上げている。

「ありゃ?・・・・おかしいな?爆竹の量が少なかったかな?」
「ん~なんせ10年ぶりにやる事だしね。勘が鈍ってるんじゃない?それか爆竹が湿気てたとか・・・」

兄弟の予定ではれいむの下半身を全て吹き飛ばしジ・エンドだったはずだが
期待より爆発が小さく、底部に饅頭を割ったような裂け目を入れるのみにとどまった。
予想外の展開に兄弟はどうした物かと考え込む表情を見せる。と、そこに。

「でいぶぅぅぅ・・・よぐも・・がぞくをうだぎっだねぇ・・・」

香辛料ミックスを食べ生死をさ迷っていた親まりさが、酷いガラガラ声で復活してきた。

「ゆっぐりざぜなぐじでやるよお!!!!」

地獄の底から響くような台詞を言うが早いか、香辛料の小皿をれいむの底部に擦り付けた。
『傷口に塩を塗る』と言う表現があるが、れいむのバックリと割れた底部に
塗り込められたのはワサビ+カラシ+タバスコだ。想像するだに恐ろしい激痛だろう。

「ゆんやぁあぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
 いだいぃぃぃやげるうぅぅぅでいぶのあじざんがぁぁぁ!!!!ゆびゅぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

今日聞いた悲鳴の中で最高のソプラノ音が庭に響いた。

「ゆ・・っぐっり・・じね・・・」

まりさの言葉通りれいむは口から泡を吹き動かなくなった。激痛によるショック死だろう。

「もう・・おうぢがえるよ・・みんだでゆっぐりずるんだよ・・」

『でいぶ』に一矢報いたまりさであるが、自身も決して大丈夫とは言えない。
動きづらい体をゆっくり、ゆっくりと兄弟たちの側へ振り向かせる。その大きな目には涙が浮かんでいた。
誰の為の涙なのかは、何の為の涙かは分からない。

「おちびぢゃん・・おうぢにがえろ・・ゆっぐり・・しよう・・よ」
「残念だな。お前の家族はもう死んでいる」

絶妙の間で冷酷な言葉を投げつける兄。
まりさの目に映るのは、焼かれた上に拷問死された子れいむ。細切れにされた子まりさ・・・・

「ゆっ!!ゆっ!ゆぴょぉぁあ゛っーーーーーーー!!」

驚愕、絶望、奇声、眼球がグルグルと回り、デスマスクを貼り付けまりさは憤死した。

こうして愚かにも人間のテリトリーに踏み入れたゆっくりは全滅した。
ここは田舎。強い人間が弱いゆっくりを踏み潰す力が支配する民家の庭。

「ん~久しぶりにやると楽しいもんだね兄さん」
「そうだな童心に帰った気がするな。笑いすぎて腹筋がおかしくなりそうだった」

大きく伸びをする弟に同意する兄

「まだ日も高いし、山に大物でも探しに行かない?」
「そうだな・・・飯食ったら行ってみるか。ドスとか居ると楽しいよな」

兄弟は爽やかな笑顔で家に入っていった。
後ろにゆっくり一家の死体を残して。


──────あとがき─────
書くのにえらい時間がかかってしまいました。

作:六人

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最終更新:2022年05月03日 22:34