「まずはアナタからです!」
決意に満ちたその声と共に、リヴィオのダブルファングから銃弾が放たれた。その常識外の威力は、騎士甲冑越しでも確かなダメージを与えてくる。それを理解している
シグナムは銃口が向けられると同時に、自らのデバイスの名前を高々に呼び上げた。
「レヴァンティン!!」
『Jawohl! Panzergeist!』
パンツァーガイスト。シグナムが身に纏う騎士甲冑を強化する防御魔法だ。砲撃すら凌ぐ魔法を己に付加したシグナムは、ダブルファングの弾丸の雨を、まるでオモチャのBB弾のように弾きながら、リヴィオへと間髪入れずに間合いを詰める。そして振るわれる瞬息の剣閃。だけど残念ながら、彼女の攻撃は、ただ空気を切るだけのものだった。
「……速いな」
目の前から瞬時に消え去ったリヴィオの気配を後ろに捉えたシグナムは鷹揚に振り返りながら、そんな感想を漏らした。
「堅いですね。全く戸愚呂といい……アナタのようなタイプは苦手かもしれません」
リヴィオは顔にやるせない笑みを浮かべ、溜息交じりにシグナムに相槌を打った。
「光栄だ、と言えばいいのか? だが、手加減はせんぞ!」
「望むところです。こちらも手加減する必要はないと判断しましたから」
その言葉を置き去りにして、再びリヴィオがシグナムの視界から消え去った。目の端にも止まらない圧倒的なスピード。それはシグナムには到達できない領域のもの。つまり両者の間には、決して埋めることの出来ない絶望的な移動速度の差があるというわけだ。しかし、シグナムはそこに僅かな恐れすらも感じずに、素早く己の経験から状況への最適な解答を導き出した。
「レヴァンティンッ!!」
『Schlangeform』
シグナムの呼びかけに従って、剣であるレヴァンティンが、鞭状の連結刃へと急速に変化。
そのシュランゲフォルムの射程は、優に百メートルを超える。
「シュランゲバイセン!!」
シグナムが続けざまに叫ぶと、レヴァンティンはシグナムの周りと木々の間に縦横無尽に展開された。そしてこれこそが、シグナムの出した答えだ。即ち、超スピードの弱点とは、急制動、方向転換にある。スピードが上がれば上がるほど、慣性は増し、細かな移動は困難になるのだ。従って、素早い敵を倒すには、敵が移動する道を制限してやればいい。そうすれば敵の機動は遅くなり、予測しやすくなり、また迎撃も容易くなる。加えて、今シグナムたちが闘っているのは、木が乱立する林の中。敵の技量が低ければ、この障害物の多さで自滅すらも狙えるという寸法だ。これはまさしく蜘蛛の巣だ。一度捕まれば、最後。シグナムの刃は容赦なく、リヴィオの命を刈りたてるだろう。朝日を照り返す銀の刃の群れは、それが絶対的な事実であるように冷たく、厳かに存在していた。
静寂。木漏れ日が暢気に届けられ、朝の爽やかな風が通り抜けるそこは、闘いとは無縁のように思われた。シグナムの緊張がそれに伴って、僅かに弛緩した直後、レヴァンティンの柄に振動が訪れた。獲物が蜘蛛の糸に引っかかったのだ。シグナムはすぐさまレヴァンティンを操り、連結刃を糸に捕らわれた敵へ殺到させようとする。だけど、目を向けた先には、リヴィオどころか、何一つない。ただの勘違いかと考量すれど、それ否定するかのように断続して手元に振動がやってくる。不思議に思ったシグナムは丹念に周囲に目を凝らして、ようやく理解をした。
一瞬の影を残し、シグナムの目に確かに映ったリヴィオの姿。彼は木を蹴り、刃の峰を蹴り、不可能と思われた急激な方向転換を行っていたのだ。化け物か! シグナムは心中で堪らずに吼えた。この曲芸じみた技を可能にするのには、一体どれほどの肉体強度と反射神経を持ってすればいいのだろうか。己の思惑を超えて、蜘蛛の巣を掻い潜ってくるリヴィオにシグナムは心胆寒からしめられる。しかし、シグナムとて、それだけで闘いを終わりにできるはずもない。即座に迎撃を、とシュランゲフォルムを解こうとする。が、時既に遅し、リヴィオはレヴァンティンの連結刃を蹴り上げて、シグナムの頭上に到達。そしてその勢いのまま、リヴィオはダブルファングの銃口をシグナムの両肩にねじり込み、地面に押し倒した。
「零距離です。戸愚呂は耐えられましたが、アナタはどうですか、シグナムさん?」
「貴様っ!?」
シグナムの声を無視して、リヴィオは無情にも引き金を引いた。静寂を突き破り、たちまち轟音が辺りを支配する。大砲とも見まごう威力の機関銃を、リヴィオは数秒にも渡って発射し続けたのだ。その情け容赦のない銃撃により、騎士甲冑はガラス細工のように砕け、シグナムの身体から血と悲鳴をも飛び出させた。
「ふぅ…………次は弾薬庫!!」
手から武器を取りこぼし、動かなくなったシグナムを確認すると、リヴィオは額に湧き出た汗を拭い、
アーカードと
ヴァニラ・アイスがいる弾薬庫へ目を向けた。そして二人の戦闘を即座に止めに行くべく、足に力を込めたが、それはたたらを踏むことになってしまった。
「……待て」
と、シグナムが息も絶え絶えに声を掛けてきたのだ。
「何ですか? 急いでいるんですけれど?」
文句を垂れながらも律儀に応答するのは、リヴィオの性分なのだろうか。
リヴィオはシグナムの方に振り返り、口を開いた。
「私を殺さ……ないのか? こ、これは……バトルロワイアルだぞ」
「殺しません!」
「な……何故だ?」
何故。そう問われて、リヴィオの脳裏に真っ先に思い浮かんだのは、ウルフウッドとヴァッシュのマヌケな面だった。果たして、彼らに自らの行動の要因はあっただろうか。そしてあるとしたら、それは何と呼ぶべきものなのだろうか。リヴィオはしばらく黙考していたが、突如天啓のように答えを得た。あったではないか。彼らを表すのに、ふさわしい言葉が。それだからこそ、自分は助けられ、心から憧れたのだ。理由としても、申し分ない。そしてそのその言葉とは――
「――正義の味方ですから」
リヴィオは自信満々にそう告げると、今度こそ弾薬庫へ足を向けて、走り去っていった。取り残されたシグナムは、リヴィオから受けた言葉を静かに反芻する。意味の無い言葉だ。参加者全員の命をバーンに握られている以上、そこに救いようはなく、差し伸べられる手は全て空虚なものとなる。正義などと悠長にのたまっていられるのは、単なる現実逃避でしかない。寧ろ、愚か者の証明と言った方が正しいかもしれない。しかし、そんなシグナムの胸に
八神はやてと過ごした懐かしき日々が蘇る。
「正義の味方…………確か主はやてが好んでそういったアニメを見ていたような気がする」
バトルロワイアルに参加する前、闇の書の蒐集を開始する前の穏やかな光景が、リヴィオの言葉を機に、シグナムの中でゆっくりと再生されていった。
【現在地 B-5 弾薬庫近辺】
【
リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】
【状態】疲労(大)
【装備】二重牙(ダブルファング)@トライガン・マキシマム(残弾50%)
【道具】支給品一式
【思考】
基本 殺し合いの打破
1. 核爆弾と弾薬を危険な奴らから守る
【備考】
※弾薬庫には核爆弾@トライガン・マキシマムが置かれています
【シグナム@魔法少女リリカルなのは A's】
【状態】両肩ボロボロのグチャグチャ、魔力消費(中)疲労(小)、しんみり
【装備】レヴァンティン@魔法少女リリカルなのは A's
【道具】武器支給品、ランダム支給品×2、支給品一式×2
【思考】
基本 八神はやてを最後の一人にする?
1. 八神はやて以外は全員殺す……?
2. 八神はやてが心配
【備考】
※トキを殺したと思っています
※殺人にはいまだ躊躇いがあります
※以降の闘いは、奇襲に徹するつもりです
最終更新:2013年12月10日 21:38