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街の港に一人の大男が腕を組み、瞑目しながら、静かに佇んでいた。そこには朝日が降り注ぎ、海から爽やかな風さえ流れ込んできている。
気持ちを落ち着けるのには、最適な場所だ。だが、それとは相反するように、その場にはは重苦しいほどの雰囲気が立ち込めていた。
さもありなん。そこにいた大男とは、ラオウである。その男がいるだけで、空気は威圧され、地面を押し潰すかのように重くなるのだ。


しかし、その地に笑みを作り、軽やかにして足を踏み入れる男がいた。かつては美男を誇ったが、今は醜くも全身を黒い体毛に覆われたシンである。
彼はポップが逃げ、トキが去った方向に先回りをして、待ち伏せをしてやろうと、沿岸を俊足の足で駆けぬいていたのだ。
そしてその判断は正しかったと言える。何故ならシンの最愛の女性――ユリアを欲さんとする最悪の敵が、目の前に現れたのだから。


「ラオウ……おまえの命運もこれまでだ」


ユリアに仇名す者は殺す、と奇美団子の力で、自らの身体能力を底上げしたシンは、格上の相手にも何ら恐れず死刑を宣告する。


「その構え……南斗聖拳のシンか。フフ、ユリアが惜しくなって、地獄から化け物となって蘇ってきたと見える。
だが、この拳王に後退はない!! あるのは前進勝利のみ!! この拳王手ずから、うぬを再び地獄に突き落としてくれようぞ!!」


真っ直ぐと突き出されるラオウの豪腕。それは生前のシンであったなら、反応すら出来ないスピードだ。
しかし、シンは余裕の笑みで以って、ラオウの拳に応えた。


「どうした、ラオウ? あまりにスロウ過ぎて、欠伸が出てしまったぞ」


パシッ、とラオウの剛拳をシンは手の平で軽く受け止めたのだ。
そしてすかさず反対の手で、ラオウの胸を穿たんと神速の貫手を放つ。
爆発音が響き渡った。シンの攻撃に反応したラオウの本気の拳と真っ向からぶつかり合ったのだ。


お互いの腕が後方に弾き飛ばされる中で、双方に実力を確認し合った二人。
次の瞬間、彼らは大きく息を吸い込み、相手を捻じ伏せんと、一気に拳の弾幕を放った。
拳と貫手がぶつかる度に、爆音が辺りを支配する。音の伝導。
最早、そんな言葉で表現するには生易しい空気のうねりが、二人が立っていた地面を抉り、海面に波すらも起こす。
彼らが立っている場所は、台風の目に成りつつあった。


「見える見える見えるぞおおおぉ!! ラオウ!! おまえの攻撃がハッキリとなああぁぁ!!!」


その咆哮と共に放たれたシンの貫手が、再度ラオウの拳と激突。
突きの速さでは決着が付かぬと見た二人は、今度はそのまま力比べと持ち込もうと、お互いに腕をぶつけたまま大地に力強く足を踏み込んだ。
ラオウのシンの力が拮抗し、二人から漏れ出る闘気は、嵐を形作る。港にあった倉庫群は、その余波でひび割れ、細切れとなって彼方に吹っ飛んでいった。


災害のような勝負。それで先に根をあげたのは二人ではなく、意外というか、当然というか、その下にある地面だった。
大地は二人の圧力に耐え切れず陥没し、そのまま海に沈んでいってしまったのだ。
立つ場所を失った彼らは、それを契機として、お互いに距離を開ける。
勝負は次の局面を迎えようとしていた。


「フッ、衰えたか、ラオウ? それともおれが強くなり過ぎたか。どちらにしろ、次で決着を付けてやる!!
ケンシロウ、そしてラオウと闘い、おれはおまえらの北斗神拳を見切ったのだからなあぁ!!!」


身体の奥底より漲る力と自信のままに、シンはラオウを屠る奥義を放つための新たな構えを取った。
だが、そんなシンに対して、ラオウは北斗神拳の構えを解き、明らかな冷笑と怒りを送り届ける。


「見切っただと? 自惚れるな、小僧!! うぬ如きに見切れるほど、北斗神拳の歴史は浅くはないわ!!」 


シンがその言葉の意味を理解するのに時間はいらなかった。
何故ならば、その直後、シンの両腕に電気のようなものが流れ、両肩が膨れ始めたのだ。
あまりの苦痛に、堪らずシンの口から苦悶の声が漏れ出る。
そしてそれによって栓が開けられたのか、風船のように膨らんだシンの肩は、ついに内部から弾け飛んだ。


「バカなああぁぁ!!! 秘孔だとおおお!!!?? いつの間に突いたああッ!!??」

「北斗残悔拳」


両腕をだらしなくぶら下げ、動揺を顔一杯に広げるシンに向けて、ラオウは遠慮なく詰め寄り、北斗神拳の奥義を見舞った。


「頭維(四合)という秘孔を突いた。この左右のこめかみに刺さった親指を抜いてから三秒後に、おまえは死ぬ。
愚かなるシンよ……その三秒で、この世紀末覇者ラオウに逆らった罪を後悔して死ぬがよい!!」


北斗神拳を一時でも見切ったなどと勘違いした無知蒙昧な輩に侮蔑の眼差しを送り、ラオウは親指を引き抜いた。
残り三秒。北斗神拳のラオウの告げる言葉に嘘はないと悟ったシンは、痛む肩を無視して、急いでバッグの中を漁る。
取り出したのは、奇美団子。既に頭部が異常な膨らみを見せる中、シンは噛む時間すら惜しいと、団子を一気に飲み込んだ。


変化は如実であった。頭部の膨張や両肩の怪我が治ったのは勿論のこと、黒い体毛で覆われた肌は、不気味な青色の鳥肌へ変化。
更には頭髪は金色へと変わり、腕からはびっしりとした金色の羽毛が生えてきたのだ。
より一層、人間とはかけ離れた姿を晒したシンは、それに悲観するわけでもなく、傲岸な笑みでラオウを嘲った。


「どうした、ラオウ? もうとっくに三秒は経ったぞ。フフフ……フハハハハハハハ!!
そう!! おれは無敵!! 最強になったのだあ!! このおれの前では、北斗神拳なぞ、最早子供の遊戯でしかないわ!! ラオウ!!」

「ぬぅ……この痴れ者が!! 北斗八悶九断!!」


シンの変貌、秘孔の無効化。ラオウの頭に疑問がちらつくが、それら一切を排して、再び奥義を放つ。
自らが誇る北斗神拳を侮辱するなど、ラオウにとって到底許し難きこと。最早それは、相手の死でしか贖えない大罪だ。
しかし、ラオウの断罪の拳は、その意志とは反対に、虚しく空(くう)を切るだけであった。


その事態に、思わず目を大きく開けるラオウ。消えたのだ。
文字通りシンの姿が、ラオウの視界から消えてしまったのだ。


「フフ、一体どこを見てい……ッ!?」


音もなくラオウの背後に現れたシンの台詞は、途中で遮られた。
敵の気配と殺気に反応し、無意識無想に繰り出される必殺の拳――無想陰殺。
そのラオウの後ろ蹴りが、シンを容赦なく襲ったのである。


「拳王ラオウ、恐るるに足らず!!」


だが、それすらも容易くかわされ、シンはラオウの眼前に現れた。
そして奥義の不発で決定的な隙を晒すラオウを前に、シンは地に伏すかのように上体をかがめ、自らの勝利を高々に叫ぶ。


「あの世への手向けだ!! 受け取れ、ラオウ!! 南斗孤鷲拳奥義 南斗翔鷲屠脚!!」


大地を揺るがす膨大な闘気。それを足に集中させ、敵の真下から飛び蹴りを喰らわすという南斗孤鷲拳に伝わる一撃必殺の技。
その威力は凄まじく、ラオウの厚い胸板を、ごっそりと削り取り、ラオウの巨体を軽々と空高くに吹き飛ばした。


「ほう、流石はラオウだ。一瞬早く身を仰け反らせることで、致命の一撃を避けたか。
だが!! そんなものは、僅かに寿命を先延ばしにしたにしか過ぎん!!」


空中で血の花を咲かせるラオウが、いまだ息をしているのを確認したシンは、ラオウを追いかけるように空へ跳ぶ。


「とどめだ!! 南斗施鷲斬!!」


ラオウの身体を両腕で抱きしめるかのような形で、シンの無数の突きが襲い掛かった。
ラオウの逃げ場を塞ぎ、且つ命をも奪い取らんとする絶殺の奥義。
二つの奇美団子を口にしたシンの拳は、最早ラオウですら、目で追うことなど不可能で、その気配なぞ当然捉えることは出来ない。
ラオウはその巨体で以って、シンの攻撃を余す所なく受け止めた。


滝のように血を流しながら、ラオウは音を立てて、地面に激突する。
血達磨になり、息を喘がすラオウの姿には、王としての威厳など、微塵も残っていない。
しかし、そんな無様を見せたところで、シンの殺意が収まるわけでもなかった。
完全なる死を、とシンは手刀を殺意でぎらつかせ、血溜まりに伏すラオウに向かって、遠慮なく歩み寄る。


そしてシンの足が、ラオウから流れる血を踏みつけた瞬間、再び電流のようなものが、シンの体内を駆け巡った。


「なッッ!! う、動けんだとお!!? ま、まさか、あの状態で秘孔でも突いたというのかあ!!!? このおれにいいいぃぃぃ!!!??」

「でりゃあああぁぁ!! 天将奔烈!!」


不思議と棒立ちになったシン。その隙を逃すまいと、ラオウは死せる身体に鞭を打ち、自身の最強の技を送り込んだ。
数々の強敵を一撃の下に屠り去ってきたその拳は、人間を超越したシンの頑健な胸にすら容易くのめりこみ、宙へ勢いよく吹き飛ばす。
シンの身体は、その余勢でもって海面を何度もバウンドしながら、海の彼方へと消え去っていった。


「がはあぁ」


その場に残ったラオウは、口から大量の血を吐き出した。勝敗は紙一重のものであった。
ラオウが先の戦闘で学んだ波紋。それがなかったらシンの猛攻を止めること叶わず、首を切断されていたことだろう。
だが、ラオウの心中に訪れたのは、死を回避した安心ではない。それは格下であったシンが、自らの膝を地に付かすまでに至った強さへの疑問だ。


「これも愛……哀しみ故にか……」


シンの宿星である殉星を思い出し、ラオウはその胸中を推察する。
シンであるならば、この地獄ような場所で、ケンシロウと同じだけの哀しみを背負うことに疑いはない。
そしてそれが天にも届きかねない強さを生んだということにも。
哀しみ。ラオウがそれに寄せる想いは、シンとの闘いで、より一層切実なものへと成っていった。



【一日目 朝】
【現在地 D-7 海】
【シン@北斗の拳】
【状態】胸部打撲、波紋ビリビリ、気絶 、武獣装甲其の二魔雉の装(雉の姿)
【装備】妖気計@幽遊白書、奇美団子@幽遊白書(残り一個)
【道具】武器支給品、支給品一式
【思考】
 基本 ユリアを最後の一人にする
 1. ZZZzzz
 2. ポップ、トキ、ラオウを殺す
 3. 人を見つけ次第殺す
【備考】
※北斗神拳の秘孔縛に耐性を得ました
※北斗神拳の内部破壊に耐性を得ました
※現在の身体能力はラオウを遥かに凌駕しています


【現在地 D-7 市街地 港】
【ラオウ@北斗の拳】
【状態】胸部割創、全身刺傷、出血多量、疲労(大)
【装備】なし
【道具】武器支給品、ランダム支給品、支給品一式
【思考】
 基本 ケンシロウに勝つ
 1. 回復に専念
 2. ユリアを……
【備考】
※哀しみとは、他者への情にあると思っています
※哀しみを背負うには、情を向けた相手を殺すべきだと思っています
※哀しみを、切実に求めています
※ユリアを殺すことに、躊躇いを覚えています
※水影心により、波紋法と霊光鏡反衝を覚えました



76:You Are So Beautiful <BACK  NEXT> 78:Sex Bomb
60:Love Changes Everything シン :[[]]
65:The Long and Winding Road ラオウ :[[]]




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最終更新:2013年10月31日 23:06