「トキ……あなたまでこんな殺し合いに乗ってしまうというの?」
悲嘆に暮れた声を、やっとのことで口から吐き出したのは
ユリアと呼ばれる女性だった。その涙に濡れた顔は、既に色を失い、悲痛の表情のみで彩っている。佳麗とも思えるユリアの生来の顔立ちの面影は、もうどこにもない。かつて人の為にと医術の道を歩んだ心優しき人物が、今は正反対とも言える暴虐に手を染めているのだ。その悲しい事実は、ユリアの心を徹底的に打ちのめした。
「フハハハハ! そうだ、ユリア。人助けなど、馬鹿のすることだ。この時代は力だ! 暴力が全てを決めるのだ!」
その放言と共に、男はユリアの服を力任せに引き千切り、地面へ押し倒した。
「フフフッ、ユリアよ、おれは前からおまえのことを、いい女だと思っていたのよ~! 光栄に思うがいい! このトキのものになることをっ!」
男は女の露になった胸を力任せに揉みしだき、顔を舌で這わす。女からの抵抗は既にない。ユリアは、北斗神拳や南斗聖拳の名だたる者たちが好意を寄せた花のような麗人だ。その美貌を思うがままにできる。そのことに圧倒的な充足感と征服感を覚えた。さて、ユリアの顔は今どうなっているだろうか。より満足感を確かなものとするために、男はユリアの顔を覗いた。
「なっ!?」
男は屈辱と悲哀に塗れた顔を想像していた。自分の意志とは無関係に、事に及ばれようとしているのだ。そこに嫌悪感があってしかるべきだ。そしてそれを踏みつけて、男はユリアをモノにするはずだった。しかしそこにあったのは、さっきとは打って変わって慈母のような眼差しを向けるユリアの温和な顔だったのだ。
「トキ……あなたにも辛いことがあったのね」
そう言いながら、ユリアは男の頭を優しく撫でる。その手はまるで母親が子をあやすような慈しみを持った温かさだった。男の剥き出しの劣情をも、ユリアは包み込み、受け入れる。その姿勢に男は思わず子供のようにユリアの胸に飛び込もうとした。しかし、その直前に男は自分に向けられた想いを理解し、マグマよりもなお熱い怒りを覚えた。
「ふざけるなああっ!! お前はこのおれに同情でもしたというのか!!? この天才のおれを!!!?」
男は表出した憤りのままにユリアの顔を手で叩きつけた。
「このおれを見下すなああっ!! 天才のおれは羨まれるべき存在だ!! 天才のおれは人の上に立つべき存在だ!! だからお前はおれの言うとおりにならなくてはいけない!! おまえはおれの単なる糧だ!! それを思い違えるな!!!」
ユリアの顔が風船のように膨らみ、辺りに血が飛び散っても、男は手を止めなかった。寧ろユリアの顔が酷く歪む程に、男はより強く手に力を込めていった。それほどまでにユリアのことが、許せなかったのだ。いずれ、このままではユリアは死んでしまう。その決定的な運命を覆したのは、一本の鞭だった。
「むっ!?」
音を切り裂き、目にも止まらぬ速さで迫り来る鞭を、僅か一瞬の驚愕をそこに残すことのみで、かわすことができたのは、ひとえに彼の実力によるものだろう。やたら自分の才を誇示するのは、そこに裏打ちされた実力があるからこそなのだ。
「下種ではあるが、どうやらただの雑魚というわけではないようだな」
声のするところを見てみれば、そこには朱色の艶やかな長髪を後ろ手に撫で付ける、目鼻の整った端正な顔立ちの人間がいた。容姿こそ端麗であれ、その目つきは鋭く、針のように尖った空気を身に纏っている様子からも、付け入る隙を許さない。手強い相手だ。一目見て、男は相対している相手の実力の程を看破してみせた。しかし、それでも己の才に及ぶものではない、と男は敵を嘲ってみせる。
「フハハハ、女の癖に少しはやるようだが、所詮は女。この北斗神拳のトキにかなうものではない!」
「女? 今……おれのことを女と言ったのか?」
「な……っ!?」
女、と言葉にした途端にナイフのよりもなお尖鋭とした殺気が、男を貫いた。そのあまりの鋭さに男が驚きの声と共に後ずさりする。しかし、その刺すような冷え冷えとした気は、恐怖で動きを縛るのではなく、逆に火照った男の頭を冷やし、冷静さを呼び起こした。
(おっと、こんなことをしている場合ではなかったな。おれの目的はトキの悪評を振りまき、奴と敵対する相手を作り出すことだ。この場には何故か分からんが、北斗の兄弟の他にも南斗六聖拳もいる。上手くいけば、あの馬鹿な奴らが食い合ってくれる。更にそれに乗じて、このおれがトキとの闘いに疲弊した相手を仕留め、最後にこの時代の覇者となる。これがこの天才
アミバ様の完璧なる計画よ!)
なればこそ、トキの醜聞を宣伝してくれる人間が必要になってくるし、それが多いに越したことはない。無駄に事を荒立てる必要は、どこにもないのだ。
「フハハハハッ! まあお前ら程度の雑魚は、このトキが直接手を下してやる価値もない。精々、僅かに延びた寿命の分を楽しむんだな!」
トキと名乗る男、アミバはそう言い残すと、高笑いを続けながら、颯爽とその場を去っていった。
【一日目 深夜】
【現在地 D-4】
【アミバ@北斗の拳】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】武器支給品、ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 トキの悪評を振りまく
1. 次の獲物はどこだ
2. 木人形(デク)はどこだ
「大丈夫ですか?」
助けに来た男は、アミバが去っていくのを確認すると、急いでユリアの治療に取り掛かった。
「ええ、ありがとう。……あなたは?」
「おれの名前は蔵馬です。偶然ここを通りかかったところを、あの男に襲われているのを見まして、助けに入らせていただきました。あの男とはお知り合いのご様子でしたが?」
「ええ、あの人の名前はトキ。かつて私の命を救ってくれた方です…………」
ユリアは顔の痛みにもめげず、昔を懐かしむようにトキの説明を続けていった。
【現在地 D-4】
【ユリア@北斗の拳】
【状態】顔がパンパン
【装備】なし
【道具】武器支給品、ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 殺し合いを止める
1. トキの凶行を止める
2.
ケンシロウに会いたい
【備考】
※アミバをトキだと思っています
【蔵馬@幽遊白書】
【状態】健康
【装備】ローズウィップ@幽遊白書
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 とりあえずは情報を集め、現状を把握したい
1. ユリアの治療
2. ユリアの話を聞く
3. トキは放ってはおけないか
4. 浦飯、桑原、飛影、幻海を探す
【備考】
※アミバをトキだと思っています
【支給品説明】
ただの薔薇。しかし蔵馬が妖気を通すと、鞭になる。
最終更新:2012年02月27日 00:37