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熾烈な戦闘だった。波濤のように押し迫る闘気と燃え盛る炎の闘気がぶつかり合い、空間を歪ませていく。鍛え抜かれた拳が清水のような清澄な技によって放たれた。それとせめぎ合うは、人知を遥かに超えた超魔生物の豪腕。その二つが織り成す衝撃の余波は地面を抉り、周囲にあるもの全てを吹き飛ばしていった。


「もう一度訊く、ハドラーよ。お前はダイと闘うためなら、他の者の犠牲を厭わないというのだな?」


拳から滲み出た血を舌で舐め取りながら、ケンシロウは確認のための質問をぶつける。目の前の異形たるハドラーは目的のためなら、何でもするというのだ。闘いの決着を求める姿勢というのは一人の拳士としてケンシロウも理解を覚えるものだったが、それ以外は許容できるものではなかった。この場には自分やダイの他にも多くの人間が、そして何よりユリアがいるのだ。彼らの命に危険が及ぶと言うのであれば、看過できるものではない。


「おれの目的は一つ。ダイとの決着だ! 他の者の命など、どうでもいい!」


拳に出来た傷を再生させながら、ハドラーは何ら気後れすることなく己の気持ちを、巌の如き筋肉を纏うケンシロウにぶつけた。無論、もう少し言葉を考えて発すれば、ケンシロウとの争いは回避できたことは、ハドラーとて知っていた。だが、ハドラーは自分を人間の敵と自分を位置づけている。それなのにわざわざ人間を慮った発言など、彼にはできようはずもなかった。


「ならば、ここでお前を倒すのみだ、ハドラーよ!」

「面白い。ダイではなく、ただの人間の貴様が、この俺に吼えるか!」


二人の闘気は、その言葉と同時に膨れ上がり、空を突き上げる。次が最後の一撃。相対する敵の気構えから、二人は同時にそれを悟った。それならば、そこに繰り出されるのは必殺の奥義に他ならない。そしてそれを打ち破るのも同様の奥義でしかない。ハドラーは神々が創ったとされる最硬度の金属――オリハルコンで出来た覇者の剣を取り出し、ケンシロウは史上最強と謳われる拳法――北斗神拳の構えを取った。


「受けてみよッ! 我が全身全霊の一撃!」


ハドラーは炎の暗黒闘気――魔炎気を身に纏い、更にそれを右腕の覇者の剣に収束させた。大地を穿ち、空を突き破らんとした魔炎気は一点に集中し、莫大な火力と破壊力を体現。そしてハドラーはその巨大な炎の固まりとなった剣を、超魔生物の力でもって勢いよく振り下ろしてきた。隕石をも思わせる破滅の集合体。そんな絶望に対してケンシロウが繰り出したのは、北斗百裂拳であった。転龍呼吸法で己の潜在能力を全て解放して放たれるその奥義は、押し寄せる炎を飲み込み、更に押し返さんとする拳の激流となった。





「超魔爆炎覇!!!」

「あたたたたたたたたたーーっ!! 北斗百裂拳!!」





決着は一瞬で着いた。轟音と共に爆発が生じ、二人を中心に地面がめくれ上がっていく。そしてそれと共に一人の男が炎に身を焼かれながら、吹き飛んでいったのだ。それは明確なる勝負の結果。だけど、その勝敗は堅牢な橋を渡るように確実なものではなく、綱渡りのように危ういものであった。それを示すかのように、その場に残ったハドラーは堪らず膝をついて、血を口から吐き出した。


「ぐ、はっ…………ははははははッ!!」


やがてこぼれ出したのは、ハドラーの笑いであった。嬉しいのだ。正面から正々堂々とぶつかり合い、勝ち取った勝利。それも相手は自分を負かすかもしれないほどの強者だった。それは強さを求めて、地位と魔族の身を捨てたハドラーに一つの達成感と充実感を与えるに十分なものだった。だけど、それでも足りない。満ち足りない。ハドラーが勝利したい相手は、宿敵アバンの弟子で、決して挫けぬ心を持った勇者ダイなのだ。そしてその時こそが、ハドラーにとって、自分の命に本当の意味を見出せる瞬間なのだ。それならば、いつまでもこんな所で感慨になど浸っていられない。再び目にすることになった怪我の再生に首を傾げながらも、ハドラーはダイを求めて、その場を飛び去っていった。



【一日目 深夜】
【現在地 F-5】
【ハドラー@DRAGON QUEST-ダイの大冒険】
【状態】健康
【装備】覇者の剣@DRAGON QUEST-ダイの大冒険
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
 基本 ダイと決着をつける
 1. ダイを探す
【備考】
参戦時期はダイとの決戦前です
※回復能力を有しています




ケンシロウは敗北を喫した。胸には剣による深い切り傷と、魔炎気による重度の大火傷。それは紛れもない敗北の証明だ。勿論、北斗神拳の究極奥義たる無想転生を使えば、ケンシロウがハドラーに勝つことは、容易なものだった。だけど、無想転生はどちらかと言えば、実体を空に消し去るというように回避に重きを置く技だ。それではハドラーの改心は狙えない。


ケンシロウが考えたのは、真正面からハドラーと堂々と闘い、打ち砕くことだった。そうすれば、闘いへの執着は削ぎ落とされ、盛る闘気も収まるはず。ハドラーが放った人間の命を何とも思わない残酷な言葉とは裏腹に、彼の心を表すかのような清廉な瞳がケンシロウには窺えたのだ。そこにあるのは言葉にあるような修羅や外道ではない。自分の誇りと矜持を貫き通す真摯な姿勢だ。それならば、正しき道を歩む十分な余地があるはず。そしてそんな考えの下、ケンシロウはハドラーの奥義を自らの拳でもって迎え入れたが、結果は惨敗。ケンシロウの思惑は水泡と帰した。


これでケンシロウは死んでしまうのだろうか。成る程、確かに敗北による傷は重大なものだ。皮膚は炭化した部分も多く、厚い胸板もごっそりと削り取られた。普通であれば、動くことすらままならない。もしかしたら、死にすら到達するかもしれない状態だ。でも、ケンシロウはそんな怪我よりも、痛く、辛く、重い哀しみを幾つも背負って、何度も立ち上がってきたのだ。


だから、断言しよう。
この程度で彼の命脈は尽きることはない、と。
世紀末を明るく照らした太陽はいまだ翳らず、と。



【一日目 深夜】
【現在地 F-5】
【ケンシロウ@北斗の拳】
【状態】胸に大きな裂傷、上半身大火傷、気絶
【装備】なし
【道具】武器支給品、ランダム支給品、支給品一式
【思考】
 基本 殺し合いの打破
 1. ユリアの保護、ハドラーを打ち負かす
 2. ラオウとの決着
 3. 殺し合いに乗った修羅・外道の排除



【支給品説明】
  • 覇者の剣
ロモス王国武術大会で優勝賞品として出されたオリハルコン製の剣。



23:Come Together <BACK  NEXT> 25:Pride
ハドラー 44:I Will Get There
ケンシロウ 71:Water Runs Dry



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最終更新:2013年03月08日 23:19