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ポップを殺す。
その考えの下に雷泥は刀を向けた。その切っ先は僅かに揺らぐこともない。例えどんな状況、状態に追い込まれても、雷泥がその技を無様に崩すことはないだろう。それほどまでに雷泥は修練を積み、その果てに次元斬一刀流を開眼したのだ。技の入りに、何ら瑕疵(かし)はない。しかし、そのような態勢にあっても、雷泥は奥義を発動することはなかった。


一体何故だ。その理由を自らに問いただし、雷泥は心の内で溜息を吐いた。迷っているのだ。
ポップを殺すか、どうかを。その答えに行き着いて、雷泥は自分を嘲笑った。自分は一体ポップに何の思い入れがあるというのか。彼は間違いなく敵だ。自分を下し、次元斬一刀流の看板を地に着けた仇だ。なればこそ、早急にポップを殺し、威信を回復すべきなのは、雷泥自身が一番良く分かっていた。それなのにいつまで経っても奥義彗星突のトリガーを引くことができない。


殺人の是非における今までにない程の葛藤。雷泥はそんな自らに呆れつつも、問題を解決すべく、雑念を排し、意識を集中した。今、ポップを殺すのは簡単だ。だけど、それで強さの証明に繋がるものなのか。雷泥にとって、不意打ちや奇襲は、何ら恥ずべきことではない。寧ろ、それに対応できないのは、単なる弱さの露呈でしかないものだ。しかしそう思えど、正面からの戦いでの敗北の後に、その思想を掲げても何ら説得力はないのは確かなことだった。


だったら、このまま負けを認めるというのか。その惨めな言葉を前に、雷泥はしばし呆然とした。それは己が築き上げてきた剣の否定でしかない。そしてそれは今までの自分の人生は全く無意味なものだったと認めて、ゴミ箱に捨てるようなものだ。死んで捨てられるなら、まだいい。だが生きて、ゴミとして汚く過ごすことなど、剣に矜持を宿す雷泥には許容できるはずもなかった。


やはりポップは殺すべき。強さとは結局の所、生き抜くこと。戦いにおいて生者こそ、勝負の結果を語れるのだ。不意打ちを仕掛けるのが悪いのではない。ここで隙を見せたポップが弱いだけなのだ。そしてついに雷泥はトリガーに指をかけた。


カチリ、と音が響く。


雷泥の刀が鞘に納められて鍔が鳴った。そしてそれ以外に音はなかった。つまり、それは雷泥はポップを殺さなかったということだ。成る程、確かに敗北は惨めなものであった。最強を自負する次元斬一刀流は呆気なく敗れ去り、その身は敵の情けを受けるまでに至った。だが、別に雷泥が負けるのは今回が初めてのことではない。修行時代は腐るほどを泥をすすり、勝つことなどまれなほどであった。だが、負けによって、剣が潰えたことも一度たりとてない。その先はいつだってより強くなった剣があったはず。敗北は恥ではない。糧なのだ。なればこそ、それを敢えて口にするのが肝要。無駄に生き死にを急ぐことはない。次元斬一刀流をより高みへ昇らせるためにも、背後からではなく、再び正面からポップと相まみえて、決着をつけるのが必定なのだ。


その結論に辿り着いて、雷泥はようやく肩の力を抜くことができた。それはポップを殺さないことへの安堵か? それとも約束を反故にしなかったことに対する安心か? そのどちらでも構わない。雷泥は懐から取り出した爪楊枝を口にし、朗らかにポップに話しかけた。


「小僧、某の負けだ。約束どおり、お主に協力しよう……」

「……あぶねえ、おっさん!! よけろッ!! 後ろだ!!」


あまりに予想をかけ離れたポップの悲痛な叫び声が雷泥に返ってきた。雷泥が放った言葉は、ポップが望んでやまなかったはずのものだ。そこには喜びに溢れたポップがいるべきなのだ。だけど、振り返ったポップの顔には驚愕と焦りで支配されていた。一体何だ。雷泥に心中に疑問がひしめく。しかしポップの言葉、表情の意味を理解する前に、突如として雷泥の心臓から腕が生えてきた。そしてその血に塗れた手は、否応なしに一つの事実に辿り着いてしまう。


「……不覚ッ」


その言葉を残して雷泥は死を迎えたが、そのまま倒れることは許されなかった。雷泥を貫いた手は引き抜かれることなく大きく振りかぶられ、ポップの方へ雷泥の身体が投げ捨てられたのだ。そしてその後ろを追随して跳ぶのは、雪のように白い髪を暗闇になびかせる男。雷泥を暗殺せしめた南斗孤鷲拳 正統伝承者のシンだ。


「喰らえ!! 南斗千首龍撃!!」


雷泥の死体を盾にしての猛攻。千の数を幻視してしまう無数の貫手が、雷泥の身体を貫いてポップへと襲い掛かった。その攻撃は地に立つことを強いられた人間ならば、驚異なものだ。人を挟んだ形で尚届く攻撃は防御も回避もしづらい。しかし、咄嗟にそのことを判断してのけたポップにはトベルーラで上空へと退避。見事にかわしきってみせるが、それを見てシンは僅かに悔やむことなく、ポップに嘲笑を浴びせかけた。


「もらったあ!! 南斗獄屠拳!!」


ポップの飛翔に遅れることなくシンも同様に空を飛び、すかさず南斗孤鷲拳の奥義を放った。それはかつて北斗神拳の伝承者を打ち破った技。その比類なき一撃はポップの膝、肘の四肢の関節を瞬時に切り裂き、地面に落とした。これで敵は反撃することも、逃げることも叶わない。シンは猛禽の目を光らせ、鷹の如く素早く空を降下し、獲物を殺しにかかった。


「終わりだああ、小僧!!」


シンの極限まで鍛え上げられた足が炸裂し、大理石の床を粉砕し、地中深くにめり込む。それはまさに必殺の一撃。だがその結果を前にしても、シンの顔は快晴の如く晴れ渡ったものではなかった。ポップの死を示す証拠が、どこにもないのだ。勿論、シンが誇る南斗聖拳の奥義を尽くせば、跡形もなく敵を吹き飛ばすことは可能だ。だけど、今シンが放った技は決してそんなものではない。そして途端に一筋の冷や汗がシンの頬を伝う。


「まさか逃したのか!?」


最悪の可能性に思い至り、シンは心は地震のように揺れ動いた。自分が何のために電光石火の殺人を心掛けたか。それは最愛の女性ユリアに、自らが殺人を犯していることを知らせないためにだ。もし知られてしまえば、ユリアは自分の殺人という凶行を止めるために自殺してしまう。それが確かだからこそ、必殺を望まなければならない。それのなのに、殺人の現場を見られ、あまつさえ取り逃がしてしまった。シンの心の中に焦燥が浮かび上がる。何としても見つけ出さなければならない。何としても殺さなければならない。もし自分のことがユリアに伝わってしまったら、ユリアが死んでしまうのだから……。



【雷泥・ザ・ブレード@トライガン・マキシマム 死亡】



【一日目 黎明】
【現在地 A-8 博物館】
【シン@北斗の拳】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】武器支給品、ランダム支給品、支給品一式
【思考】
 基本 ユリアを最後の一人にする
 1. 急いでポップを探して殺す
 2. 人を見つけ次第殺す
【備考】
※雷泥の支給品は博物館に置いてあります




「すまねえ、ヒゲのおっさん……助けることができなかった」


雷泥と一番最初に出会った砂浜で、ポップは悲嘆に暮れた声を発した。それがしょうがなかったことは、ポップ自身は理解している。奇襲の上に、相手は魔法使いが苦手とする接近戦のスペシャリストである武闘家だ。あのままやりあってたら、死は免れられない。故にルーラで、あの場を逃げ去ることにした。しかし、それが最善であったとしても、ポップの中からやり切れなさは、どうしても拭えなかった。仲間となってくれた剣士を助けることができずに、むざむざ死なせてしまったのだ。その事実が重石のようにポップの背中にのしかかる。


「はあ……でも、いつまでも拘っているわけにはいかねえんだよな……」


自分の思いを切り捨てる言葉を吐き、回復呪文のベホマを自らにかけた。四肢に負った傷が治っていく一方で、心に澱のようなものが溜まっていくのをポップは実感した。必要なこととはいえ、人の死を簡単に割り切ってしまうことに抵抗を感じてしまったのだ。


「ああ……分かっているよ。これが魔法使いの役割なんだ。……感傷も後悔もいらない。今はただ前を見据えろ」


そう言うポップの顔は、誰よりも後悔に塗れた悲痛な表情で彩られていた。



【一日目 黎明】
【現在地 A-8 砂浜】
【ポップ@DRAGON QUEST-ダイの大冒険】
【状態】疲労(極小)、魔法力消費(小)、手足の筋の断裂(回復中)
【装備】ブラックロッド@DRAGON QUEST-ダイの大冒険
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
 基本 禁呪の解呪
 1. シンから逃げる
【備考】
※博物館の展示品は全て把握しました



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09:I Will Always Love You シン 54:Runaway
29:Here And Now ポップ 54:Runaway
29:Here And Now 雷泥 Game Over



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最終更新:2012年05月20日 03:38