Chaosmode(カオスモード)-序章-(プロローグ)
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ここは都内のとある学校。クラスは男子クラスと女子クラスで分かれていて、共学だが共学じゃない。そんな軽く混沌とした学校だった。
* * * キーンコーンカーンコーン と授業終了のチャイムが鳴る。 総務による号令が終わった途端に赤褐色の髪を持つ少年は 「っしゃぁぁあ!授業終わったぁぁぁぁ」 と高らかに叫んだ。 「おい、煉(ひれん)、そんなに嬉しいか?」 呆れた顔でその少年の近くに居る、友達と思しき人は言う。 「もち!隼(じゅん)だって嬉しくないことはねぇだろ?」 「まぁな、それよりお前は未だに部活入らないのか」 「あー、部活ってあれじゃん、めんどいじゃん。めんどいと思ったら、それはやめるべきだと思うんだよね」 煉(ひれん)と呼ばれたその少年は真っ当とも言えるような意見を言った。 「この俺、天劾煉(てんがいひれん)は、めんどくないっ、と言えるような部活が出来るまでは部活に入らないことを誓ってやるぜ!」 そんな格好良くもなく、むしろ格好悪いようなことを言う煉を、隼と呼ばれた友達は呆れたと言う顔で見ていた。 「つーわけで、俺は部活なんて行かず帰るからっ、隼は野球がんばっ!」 「へいへい、お前は帰宅部でも頑張ってろ」 隼は皮肉とも言えるような発言をすると、練習着に着替えてグラウンドへ向かう。 「さてと、帰るかっ」 煉は前のくだりから分かるように部活に所属していない。なので授業が終わると早々と家に帰る。
はずだったのだが・・・
* * *
―ありゃ?
学校から俺の家まではほぼ一直線。 普通に帰れば迷うはずはない。 だがそれでも・・・俺は迷った。 別に人生の選択とかじゃない、普通に道に迷った。 「あっれ?おっかしいな・・・」 見たことある風景、見たことある道。 こんな状況で迷うはずがない。 だが、どの方向に行けばいいのか分からない・・・。 「なんだよ・・・この混沌(カオス)状況・・・」 俺はこの時、とてつもなく嫌な予感がした。 |
Chaosmode(カオスモード)-第一章-混沌の始まり(Start of chaos)
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「!」
何かの気配に気づいた俺はバッと後ろに振り返る。 しかしそこには誰もいなかった。 「・・・気のせいだったか」 「とりあえず・・・戻ってみるか・・・」 仕方ないので来た道を戻り、違う道を通ることにする。 気がつけば自分の家にきちんと帰還できていた。 「うん、ふつーに帰れたな。まぁ気にしなきゃいい話か・・・」
* * *
俺、天劾煉は母親がいない。中学に入るときに父親と離婚している。
そんな父親は単身赴任でたまに帰ってくる程度で基本俺は1人だった。 「たっだいまー・・・っても誰もいねーけどなー」
そんな俺は適当に飯を作り、普通にゲームやパソコンをやったりしてる高校生だ。
人並みに自炊ができるとかくらいしかこれといった取り柄はない。
「・・・暇だなー」
父親が定期的に送ってくる仕送りにも限りがあるので、ゲームとかに無駄に使えるわけではない。
・・・
* * *
寝ていた。しかも制服のまま。
そして時計を見ると深夜の三時。この時間だと寝る気にもならないし、起きてるのもどうかと思う。 こんな時は考え事に耽る。 「今日は・・・補習があったっけなー・・・」 ふと思い出したのは昨日の意味不明な混沌状況。 「ただの度忘れだよな・・・」 やはりあの悪寒は杞憂だったのだろうか。 そして・・・ 俺は目ざましの音で起きた。 「・・・」 「ぇ・・・?」 三時に起きた。でも起きたってことは・・・二度寝っ!? ふと時計に目をやる。 補習の時間は七時半。今の時刻は七時二〇分。 学校までは歩いて二〇分前後。 「走れば行けるっ!・・・はずっ!」 昨日からずっと制服のままという混沌状況だがそんなことは気にせず飯も食べずに家を出て行く。
* * *
俺の学校は緩いけど厳しいとこは適当に厳しいので補習は遅れると色々あとで混沌としたことになる。
「畜生っ!完璧に遅刻時間とかならサボるけど、こんなギリギリ間に合いそうな時間だと行かなくちゃならない気になるのはどうにかしてほしいぜっ!!」 そんなことを呟きながら煉は走っていく。 「・・・!」 思わず止まる。何故なら昨日のあの場所。方向感覚が意味不明になったところだ。 そこ周辺が、 無惨にも破壊されていたからだ。
* * *
「ちょ・・・どうなってんだよ・・・」
周辺を見渡すと罅の入った道路、破壊された塀。 「何が起きてんだよ・・・」 ふと気づく、こんなことになっているんだ、家の主が気づいて通報したりしていてもおかしくはない。だが、
何故、誰もいない?
「くっ・・・本当何が起きてん・・」
「ぐぁ!・・・っ・・。」 いきなり重力が重くなったかのように倒れこむ。 「体が重・・・。」
・・・。
ぼやけてほぼ見えない視界の中にうっすらと人影が見える。
「ハハッ、人?何でこっちにいるかは知らないけど、何か色々やばそうだし、消しとくかぁ?」 ・・・消す?誰を?人・・・俺しかいないわな・・・。 あー・・・なんでこんなことなってんだろ。俺普通に学校行く途中じゃなかったっけなー。 「まぁ、消え(つぶれ)とけ」 俺の意識はその声を聞いて途切れた。 |
Chaosmode(カオスモード)-第二章-混沌空間(Chaos Space)
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・・・ん・・・何か聞こえる・・・。
「・・・起きてっ!てかそろそろ起きろぉぉぉ!」 バコッ! 顔面を殴られて、意識が戻りかけた瞬間また失いそうになった。 「ぐはぁっ!・・・」 「あ、まずっ・・・起きてた」 「いきなり何してんだぁぁぁぁ!」 そこにいたのは中2~3くらいと思われる少女。赤い髪が肩を少し越えるくらいまで伸びている。制服が煉の学校の女子制服と同じなので、恐らく同じ学校の。 「それが命の恩人に対する最初の言葉っ!?助けなきゃ良かったっ!」 「命の恩人って・・・むしろ、殺されそうになっ・・・」 煉はそこで思い出した。さっきのことを。 「あれ?ここ何処?」 「ああ、言い忘れてた、私は凛音。よろしく」 凛音は手を差し出す。 しかし、 「いや、名前とか聞いてないし」 「・・・」 「・・・」 「えと、もう一度聞くけど、ここ何処?」 煉は聞く。 「え・・・と・・・、まさか、此処のこと、何も知らないわけ・・・?」 少し慌てたような感じで凛音は言う。 「うむっ!」 「・・・」 「・・・」 「なんてことっ・・・何も知らない人が此処に来るなんて・・・」 凛音は軽くがっかりした様子でうなだれる。 「いや、リアルで何も分からないんだけど、説明してくれねぇ?」 「・・・あんま、気は乗らないけど・・・」
* * *
一方、
「ちっくしょうっ!あの餓鬼共、何処消えやがったっ!」 煉を消そうとした男は煉達を探していた。 「男の方は良く分からねぇが、あの女の方は・・・まぁいい、無理すると危険だからな、ゆっくり潰すとするか・・・。」
* * *
「・・・ってわけで、ここは混沌空間っていう普通の人間は入れない世界なのっ!分かったっ?」
「へー、で?」 適当に返事する煉。 「・・・で?、じゃなーい!ちゃんと聞いてたの!?」 凛音は半分キレかかってる感じだ。 「とりあえず、ここが混沌空間っていう普通とは違う空間だってのと、 普通の人がここには入れないってのは分かった」 「何だ、ちゃんと聞いてるじゃん」 凛音は少しホッとした様子である。 「でさ、後者なんだけど、俺どう考えても普通のにんげ・・・」 「だぁぁかぁぁらぁ!普通の人間は来れないのっ!あんたにも何か特殊な力が宿ってるのよっ!」 「あー、はいはい、分かりました」 煉は適当に返事をしているが、実際はそうではない。 (あー、夢ならいいんだけどなー。てか補習どころじゃなくなっちまったなー。) もっと適当だった。
「でさ、さっきから特殊な能力、特殊な能力言ってるけどさ、つーことはさ、お前も何かできんの?」
「ぇ・・・」 「できねーの?」 「いや・・・できるけどさ・・・、あの・・・ね?使いすぎるとあれって言うか、秘密っていうか・・・」 「怪しいな、おい」 「いや、ちゃんと使えるもん!さっきあんたを助けた時だって使ったんだからねっ!」 確かにあの状況で煉を助けるには何かなければできなかったはずだ。 「ん、まぁ確かにな・・・」 「というわけで私は命の恩人なんだから、恩返しとして一緒に戦いなさいっ」 「・・・何と?」 「・・・説明してなかったっけ?」 「してたかもだけど聞いてなかったに1票」 プチッ 煉はそんな音が聞こえた気がした。 その数秒後、軽く3メートルほど吹っ飛ばされた煉の姿があった。
* * *
「・・・というわけでこの混沌空間には普通の空間に干渉する力があるの、しかもこっちからやれば何も証拠はあっちに残らない、そんなシステムに気づいた能力者達がこっちで悪さしてるってわけ」
「いい奴はいねーのかよ・・・」 「いることにはいるだろうけど、集団で来た能力者に消されちゃったりして、少ないのよ。」 「あのさ、軽くガクブルなんですけど、どうすればいいですか?」 「戦いなさい?」 「いやです」 「戦って死ぬのと、今此処で死ぬのどっちがいい?」 とびきりの笑顔で聞いてきた。 「どっちも死ぬじゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!」 「ってのは冗談として、戦わないと戻れないよ?」 「は?」 「普通に考えて、あなたが入ってきた場所に待ち伏せとかしてるに決まってるじゃない。」 「え?入り口って1つだけなわけ?」 「いや、いくつかあるけど・・・基本分からないし・・・普通の世界からも・・・」 「探したほうが早いんじゃ?」 「他の能力者がいないとも限らないし、場所なんて基本分からないのよ?普通に考えて入ってきたとこから帰るのが一番だと思うけど?」 「マジかよ・・・」 「しかも台風みたいな存在だから急に現れて、急に消えちゃったりするから、早めに行動しないと危険だよ?」 「ちょ、それを早く言え」 「結局のところやるしかないのかよ・・・」 やる気の出ない煉だったがこうなってしまったし仕方がない。 「お、やる気になった?」 「てかやるしかねぇんだろ?」 「まぁ、そうなんだけどね、じゃよろしく!えーと・・・」 「あぁ、名前言ってなかったな、煉だ、よろしく」 「・・・それ、名前?てか苗字は?」 「名前だよっ!苗字は俺的に気に入ってないから教えんっ!」 「・・・じゃ・・・よ、よろしく、ひ、煉。」 「どうした?何か変だぜ?」 「べ、別に変じゃないっ!」 「そういや、俺が喰らってたのは何なんだ?」 「あ、やっぱ何か喰らってたんだ・・・」 「能力は見えないのか?」 「いや・・・見えるものが大体だけど・・・見えないものとなると厄介なんだよね・・・」 「・・・お前はそんな前からいるわけ?」 「そんな前じゃないけど1ヶ月くらい前に初めてここに来たかな・・・」 「ふーん」 「ってそんな話は後々っ!早く行かないと入り口消えちゃうかもよっ!」 「へいへい」 二人は走っていく。さっきの場所に戻るために。
* * *
「そういや、戦うってもどうやって戦うんだ?言っとくが何か凄い能力を持ってるわけじゃないぜ?」
煉は走りながら言う。 「むー。自覚してないってのも珍しいのよねー。まぁ敵だって基本はただの人間なんだから殴ったり、蹴ったりすれば、ダメージを与えれるのよ?」 「あ、そうなの。てっきり軽く無敵だと思ってた」 「そんなの倒せないじゃない・・・勝算がないのに戦うわけないでしょ・・・」 凛音は軽く呆れた様子で言う。 「そろそろさっきの場所に着くから準備しといてね・・・」 「ああ」
* * *
近くの塀に隠れる二人。
さっきの場所の近くには1人の男が立っていた。 「・・・さっきいたのはアイツ?」 凛音が聞く。 「いや・・・俺いきなりひれ伏せられたから見てないんだけど・・・」 「・・・使えないなー・・・」
と、凛音はため息をつく。
「何かひでぇ・・・」 煉がそう呟いた瞬間だった。
「!」
「ぐぁっ・・・」 まるで重力が強くなったかのように倒れこむ二人。 「こ・・・れが・・・あんたの喰らっ・・・てた・・・」 「ぐ・・あ・・・ぁ・・・?」 煉は異変を感じていた。 さっきと同じような重みだが、今回はぎりぎり喋れる程度。つまり、威力が弱まっているということに。 そんなことを考えていた矢先、こちらに人影が近づいてきた。 「ハハッ、わざわざそっちから出向いてくるとはなぁ、まぁそう思って網張ってたんだけどよ」 そう話しかけてきたのは二十歳前後の男。まるで人を嘲笑うかのような顔をしている。 突然の事態にどうしようもない煉、半ば諦めかけていたその時だった。 「・・・裁きの手(エクスキュージョン)!」 と凛音が叫んだのだ。 「ちょ・・・お前・・・何・・・言って・・・」 煉の言葉は凛音の手から発せられた水色の閃光によってかき消された。 「チッ、またそれか」 突然重力が軽くなったかのように重みがなくなる。 煉が何が起きたか分からなかった。とりあえず立ち上がる。 「こほっ・・・一体何が・・・!!」 そこで煉が見たのは凛音の手。 それはうすい赤色のオーラのようなもので覆われていた。
それを見たその男は、
「ハッ、厄介な能力だな、さっきは良く見えなかったが手の形に変形すんのか、お前の能力(それ)は。」 「・・・。」 煉は話についていけてなかった。凛音に何度も説明を聞いていて、能力があることも聞いていた。それでも事態が分からなかった。そう、頭では分かっているけど行動することができないかのように。 「あんたは下がっててっ!予想以上に厄介だからっ」 凛音は叫ぶ。 「あ・・・あぁ」 煉はそう言ったはいいがどこに下がればいいのかすら分からない。 とりあえずその場を離れることにする。そこで見た光景は壮絶なものだった。
敵の周りの地面がどんどん抉れていくのだ。
最初は何がなんだかわからなかった煉だが、ようやく分かってきた。凛音から聞いたことも含めて、能力というものが一体なんなのかも。 煉が考えた敵の能力はこうである。
重力を操る能力。
対して凛音の能力は恐らくあの手。手の形なら自由自在だが他は何もできない。
普通に考えて、凛音の分が悪い。 「くっ・・・」 煉は奥歯を噛み締めた。
―――悔しかった。
凛音に戦うと約束しておいて(半ば強制だが)、実際にやってみれば何もできないことに。
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Chaosmode(カオスモード)-第三章-裁きの手(Execution)
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凛音はもちろん戦っていた。能力的不利も関係なく。相手と同じように戦っていた。
ただ一つ違うのは凛音が、
なるべく全ての物を庇いながら戦っている、ということ。
混沌空間のダメージは通常の世界に少なからずダメージを与えてしまう。
そのことを良く知っている凛音は通常の世界への破壊をなるべく防ぐために相手の攻撃を しかし、もし相手が煉が考えていた能力だったとすれば庇うことはできなかっただろう。 凛音は冷静に相手の行動を分析し、一定の距離を保ちつつ、離れたところから『裁きの手(エクスキュージョン)』を使い戦っている。 この凛音の『裁きの手(エクスキュージョン)』だが、いくつもの制限がある。 どう頑張っても十メートル前後までしか伸ばすことができず、両手以外から能力を発動することもできない。
何かに気づいたかのように相手の男は言う。
「チッ、テメェ、俺の能力の詳細が分かってきてるな?」 そして止まる男。それに合わせて凛音も後ろ走りをやめる。 「ふふ、最初は重力に干渉するエライ能力かと思ったけど、そんな大層な能力じゃないわね」 凛音は確信しているかのように言う。 「私の勘だとあなたの能力は一定範囲にしか影響を及ぼせず、重力に干渉してるわけではなく、『カオス』を平べったくして上空から力を加えているだけ。違うかしら?」 フッ、と男は苦笑しながら、 「流石だな、この短時間でそこまで明かされるとは・・・」 し・か・も、と凛音は続ける。 「これは今まで見てきた全能力、私も含めて、言えることだけど、精神的に安定していないとうまく使えない。その中でもあなたの能力は凄く精神依存が高いみたいね?」 「・・・」 男は黙って話を聞いている。 「だから、さっき私の『裁きの手(エクスキュージョン)』を受けた時もすぐに能力が解除されてしまった。そうでしょ?」 それを聞くと、男はハッと笑い、 「それが分かったからってどうした?要するはテメェの攻撃を受けずにお前に追いつきゃいい話だよなぁぁっ!!」 言い終わる瞬間に走り出してくる男。 凛音はそんなことは予想の範疇だったので、合わせて後方に走り続ける。 「ふふっ、そんなことができるかしら?これでも脚とスタミナにはある程度自信があるのよ?」 凛音は相手との距離を見極めるために男のほうを向きながら走っている。ちゃんと前を向いて走れば余裕で突き放すことも可能だろうが、そんなことはしない。そんなことをすれば煉の方へ向かったり、破壊の限りを尽くしてしまうだろうから。 凛音は周囲に気を配りながら、ある場所へと向かっていた。
―廃ビルである。
ここなら、あまり周囲に気を配る必要なく能力を使用することができる。
「ふふ・・・、ここなら何も庇うものはないからね・・・」
そこで男は不気味に笑う。 「ククッ・・・フハハ・・・、フハハハハッ、馬鹿かお前は。俺の能力を覚えているのか?普通に考えてこんな狭い場所じゃ、こちらがさらに有利になるに決まってるだろーがっ」 確かに正論だ。しかし、凛音は、 「確かにその通りね、でも知ってる?私はさっきからある程度の距離を保ちながら走っていたの。その距離は・・・」 今まで地面へのダメージを最小限に抑えるために両手から出していた『裁きの手』を片手だけにする凛音。 「八メートル、よ。」 凛音は言い終えると同時に右手に全ての赤いオーラのようなもの、「カオス」を集中させる。 「裁きの手っ!」 「!!」 男の能力は平べったくした「カオス」を下から押し付けるもの。 しかしそれはあくまで平べったくしたものなので『裁きの手(エクスキュージョン)』のような密度の濃い「カオス」の前には貫通されてしまうものなのだ。 「ガハァ!・・・」 いきなりの攻撃に対応できず、もろに喰らってしまう男。 対応できなかったのも無理はない、凛音が男に攻撃したのはこれを含め三回しかない。 煉を助けた時、さっきの重力攻撃から脱する時、そして今。 今まで防戦一方だった者が、いきなり攻撃してきたので、凛音のように戦闘経験がある程度あるなら対応できるかも知れないが、戦闘経験の浅い男には、かわすなんてことはほぼ不可能だった。 「くっ・・・畜生っ・・・テメ・・・」 言い終える前に第二撃が飛んできた。 ぐあぁぁ、と男は数メートル吹っ飛んでいく。 その『裁きの手(エクスキュージョン)』の威力は上昇している。 「なっ・・・さっきよりも強・・・」 第三撃が飛んできた。それも、さっきより強く。 ―畜生っ、何で強くなっていきやがるっ!? そんな男の心を見通すかのように、凛音は言った。 「何で強くなっているのかって?そりゃぁそうでしょう?近づいてきているんだから」 「!」 そう、「カオス」を操るのは、あまりにも酷い精神状態では不可能。 しかも、あいにく男の能力は凛音が言っていたように精神に干渉されやすい。 一撃目を喰らった時点で自分へのダメージによって「カオス」を思い通りに操ることができず、男の能力『混沌(カオス)重力(グラヴィティ)』を使うことはできなくなっていたのだ。 よって、妨害のなくなった凛音は思う存分近づき、近づいたことで威力の上昇した『裁きの手』を放つことが可能となっていた。 もうこうなってしまったら凛音のペースに間違いなかった。 『裁きの手(エクスキュージョン)』を使いつつ、至近距離で男を壁に押し付ける。 「消えなさい」凛音は冷たい声で言い放った。
* * *
煉は凛音達のいるビルへと向かっていた。
凛音との会話を思い出しつつ。 『いい?混沌空間で死んでも通常の空間では死なないの』 『・・・どういうことだよ』 『混沌空間で死んだ者は能力を失い、混沌空間に関する記憶を全て失って通常の空間へ送還されるの』 『・・・何でそんなことお前が知ってんだよ?』 『教えてもらったのよっ、それはともかく理解したっ?』 ―――教えてもらった つまり、それは以前、凛音の傍に善良の能力者がいたということだ。 しかし、それが今、傍にいないということは、その能力者は消されてしまったということだろう。 凛音はなるべくそれに関しそうなことは全て流そうとしていた。 「・・・、あのやろっ・・・!」 煉はさらに速度をあげて走っていく。凛音の元へ。
* * *
人は、窮地に陥ると猛烈な力を発揮することがある。
この男はそれを違う形で発揮した。
―――力の暴発という形で。
凛音がとどめを刺そうとした時だった。それが起きたのは。
凛音は男の異変に気づき、いち早く離れようとした。 しかし、遅かった。 暴発した力により凛音は壁から向かいの壁まで一気に吹っ飛ばされた。 「くぁ・・・ぐっ・・・」 そして男はゆっくりと近づいてくる。 「フハハハハハッ、そうだよ、そうだよなぁ?下にやらずに前に『カオス』を放出すれば、距離は短くなるが威力はあがるよなぁぁ?」 もう男は冷静を取り戻しているようだった。 凛音は近づいてくる男を見て逃げようとしたが、あまりのダメージに「カオス」どころか体すらうまく動かない。 「まぁ、俺をもてあそんだ罰だな。潰れて死ね。」 ―終わった。そう凛音が思ったときだった。 「っっざっけんなぁぁぁぁ!!」 赤褐色の髪をした少年が飛んできた。凛音のほうが年下だが。 そしてその少年の名前はもちろん、煉である。 煉の拳は男の頭にクリーンヒットしていた。 前に「カオス」を放ったために、横と後ろはカバーできていなかったのだ。 その瞬間、男の集中は消え、「カオス」の放出が止まり横へ二メートルほど吹っ飛ぶ。 「っ・・・!ひ・・・煉・・・。どう・・・し・・・て?・・・」 「あんな状況で何もせずにいられるかっ!」 煉は軽く息を切らしている。かなり走っていたから。 煉は凛音の腕を持ち、立ち上がらせる。 そこで男も立ち上がり、 「ハハッ、そういやお前もいたっけなぁ?能力もなしに突っ込んでくるとはいい度胸だな?女の子助けてヒーロー気取りってか?」 「・・・」 一回殴っただけで倒せるはずがないのは分かっていた。でも煉はどうしようもない。 凛音はもはや戦える状態にない。 ―畜生っ! 煉は考えても男を倒す手段を思いつくことはできなかった。 「じゃぁムカつくから、お前から行くわ」 男はそういうと煉のほうに突っ込んで来た。 いきなり吹っ飛ばされるかと身構えた煉だったが、胸倉を掴まれただけだった。 男は煉を向かいの壁の方向へ動かすと、 ドンッ 「カオス」によって突き飛ばした。 一気に壁に吹っ飛ばされる煉。 「ぐはぁぁっ!」 さっきの重力紛いのもので押されている時とは比べ物にならない痛み。 思うように体は動かない。 「ひ・・・煉・・・」 凛音は呟く。 「次はお前だぜ?お嬢さん?」 「!」 凛音は回避行動に移りたくても移ることはできなかった。 しかし、男がしたのは『混沌(カオス)重力(グラヴィティ)』の方だった。 男は言う、 「前にやるのは予想外に『カオス』を使いすぎるんでねぇ、これでゆっくりと押し潰してやるよ」 「く・・・ぁ・・ぐ・・・」 徐々に重くなっていく体への負荷。 「消えろ(つぶれろ)」 そんな時だった。向かいの壁の方から赤い閃光が放たれたのは。 |
Chaosmode(カオスモード)-第四章-混沌化(Chaos mode)
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煉は男の技で吹っ飛ばされ、うまく動けない。
あるのは痛み。 しかし、自分の心配などしてはいられない。 煉は向こうの壁側にいる凛音を見た。 凛音は地面にひれ伏し、男によって押さえつけられている。 煉と同じ技を喰らっているために、凛音は『裁きの手』はおろか、指一つ動かすことはできなくなっていた。 『混沌空間』で死んでも現実では死なない。そんなことは煉にも、もう分かっていた。 このままこの世界で死んでしまった方が楽なのかもしれないが、煉は凛音にそんな風にはなってほしくなかった。 どんな記憶でも忘れてしまうのはどうかと思うから。 思うように動かない体を無理やり動かそうとした時だった。 煉の体から、
赤い閃光が放たれたのは。
* * *
凛音の意識は薄れかかっていた。
もはや声を出すことすらできない。 全身の痛みと押しつぶされていくような感覚。それしかなかった。 向こうの壁から赤い閃光が放たれる前までは。
次の瞬間だった、全身の押しつぶされるような感覚がなくなり、それまで視界にあった男の足が消えていた。
「・・・へ・・・?」 突然の出来事に凛音は驚く。 それはそうだろう、この状況を理解できているものなど誰もいなかったのだから。
* * *
男は後ろの光には気づいていた。何だ?と思ったら次の瞬間、脇腹に衝撃が走り吹っ飛ばされたのだ。
「グァ・・・ッ、何が起きてやがる・・・」 視界を元に戻すと、そこにはさっき吹っ飛ばしたはずの少年が赤き『カオス』を纏い、立っていたのだから。 「・・・どういうことだ?、そっちのもマトモな能力持ってたのか?」 いや、それでも俺の『カオス』を圧縮して前に飛ばしたもの、いうならば『混沌(カオス)射出(カタパルト)』を喰らっているんだ。まともに立ち上がれるはずがねぇ―――男は色々考えていたが、 途中で考えるのをやめた。 煉達と男の距離は六メートルもなかったからだ。 男の目測では『混沌(カオス)重力(グラヴィティ)』は七メートル前後、『混沌(カオス)射出(カタパルト)』は一メートル前後が限度だ。 この距離なら『混沌(カオス)重力(グラヴィティ)』で動きを止めさせることができる。 『混沌(カオス)重力(グラヴィティ)』は基本薄くしているため見えない。しかし放っている男自体は自らの『カオス』なのでどこでどうなっているか把握している。 男が『混沌(カオス)重力(グラヴィティ)』を放った時だった、煉の纏っていた『カオス』が右腕に収束されたのは。
* * *
煉は自らに起きたことを理解してはいなかった、否、理解しようとしなかった。
彼の脳での最優先候補は凛音を助けることだったから。 さっきとは違い、思うように、いや、思った以上に行動することができた。 自らの体に纏われた赤いオーラのようなものを全て足に収束して、一気に床を蹴飛ばして突撃した。方向はもちろん、凛音のいる、前へ。 それは本当に一瞬だった。流石に光や音なんかよりは速くはないが自動車なんかよりは普通に速かった。 一瞬で男の元に辿り着いた煉は男のガラ空きな脇腹を殴り飛ばす。 その打撃によって男の体は横の壁に吹っ飛ぶ。 「凛音っ!」 左手で凛音を抱き起こす。 「ひ・・・煉・・・み・・・右・・・」 凛音がそう呟く。 右側では吹っ飛んだ男が立ち上がり、何かをしようとしていた。 しかし煉は冷静に、 「・・・混沌(カオス)剣(ソード)」 そう呟くと右手に煉の『カオス』は右手に収束していった。
* * *
「混沌(カオス)重力(グラヴィティ)ィィッ!」
男はそう叫ぶと滞空させている平べったくした『カオス』を落とした。 しかし赤褐色の髪の少年はまるで見切ったかのように右手に『カオス』を収束させて剣のような形状にすると、滞空していた男の『カオス』を切り裂いた。 「ハハッハハッ・・・・ハ?」 勝った、と確信していた男は起きたことを理解するのに時間がかかった。 「ふ・・・ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 男は切り裂かれた『カオス』を修復するともう1度空中から力を加え落とした。 煉はそんな男の様子を見ると、黙ったまま右手の『混沌(カオス)剣(ソード)』でもう1度『混沌(カオス)重力(グラヴィティ)』を構成している『カオス』を切り裂いた。 傍(はた)から見れば、煉は空中で剣(のようなもの)を振り回しているだけに見えるだろう。 何度も何度も『混沌(カオス)重力(グラヴィティ)』を放つ男だが、体力の限界が近づいていた。 そんな男に煉は言う。 「諦めろ。お前じゃ無理だろ。」 「テッッメエェェェェェ!」 男は『カオス』を修復し、目の前に固めると、前に突撃しながら、『混沌(カオス)射出(カタパルト)』を放った。 そんな男の様子を見た煉は右手の『混沌(カオス)剣(ソード)』の刃長をかなり短くし、槍のように突いた。
『混沌(カオス)射出(カタパルト)』を。
「なっ・・・」
男は絶句している。それどころか目の前で起きたことに後ずさりしている。 『混沌(カオス)重力(グラヴィティ)』は薄くしている為見えないのであって、『混沌(カオス)射出(カタパルト)』は『カオス』を圧縮している為、普通に見ることができる。 そんなものを砕くなど、今の煉には容易なことだった。 「次はお前だ」 煉はそういうと刃長を元に戻して、もうどうすることもできない相手の元へと突撃した。 |
Chaosmode(カオスモード)-第五章-副作用(A side effect)
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バコッ!
煉が破壊したのは、
―――ただの壁だった。
「なっ・・・!?」 ぼろぼろと崩れ、落ちる壁の欠片。 「どうなってる・・・?」 当たる寸前まで、敵はいた。 男が何かしようとしていた様子もない。 当たる寸前に消えたのだ。 近くを見渡すが、逃げれそうな場所などあるはずもない。 男のことが気になったが、凛音のことを思い出し、慌てて駆け寄る。 「凛音っ!」 「て・・・敵は・・・?」 かすれそうな声で凛音は尋ねる。 「敵は・・・いきなり消えた・・・」 「・・・へ・・・?」 煉の返答に疑問を持つ凛音。 「消えたって・・・どういう・・こと・・・?」 「いや・・・止め(とどめ)を刺そうとしたら・・・消えた。」 「え・・・まさかそれって・・・痛(つ)っ・・・!」 「お、おい、無理すんなよっ」 「う、うん・・・。それで、男が消えたのって・・・どこ?」 煉は凛音を抱え、男が突然姿を消した壁の方へ向かう。 「ここだけど・・・」 「・・・」 凛音は手を煉が開けた穴の下あたりにかざす。 「!」 何かが変わった気がした。例えるなら、いきなり強風が前方から吹いてきたような感じだ。 「・・・何か起きたのか?」 煉は尋ねる。 「ちょっと外を見てみなさい・・・」 廃ビルのガラスのない窓から外を覗くとそこには、
「人・・・だと・・・!?」
普通に人が何人も歩いていた。 煉は最初どうなってるのか分からなかったが、ようやく気づいた。 「ま・・・まさか!」 「そう、ここは・・・」
―――通常の世界
「じゃぁ・・・!あいつは・・・!」 「たぶん・・・逃げたでしょうね・・・」
混沌空間(カオススペース)の入り口は台風のようなもの。
つまり、突然現れたり、消えたりする。 そう、男は混沌(カオス)剣(ソード)を喰らう寸前で発生した入り口――この場合なら出口に入ったというわけだ。 混沌空間(カオススペース)の出入り口は基本分からないので、男が分かっていたわけではない。 本当に偶然。 ―――畜生ぉぉっ! 煉はそれを理解すると、心の中で絶叫した。 奥歯を噛む煉を見て凛音は言った。 「まさに・・・悪運が強かったってことね・・・」 「・・・あぁ・・・」 起きてしまったことはいくら悔やんでも仕方がない。 「とりあえず・・・出るか・・・」 「・・・ちょい待った・・・、その状態(まんま)で出るのはどうかな・・・」 煉はさっきからずっと『混沌化(カオスモード)』のままで、体中に『カオス』が纏わりついている。 力を加えているわけではないので、抱えている凛音にダメージがあったりはしない。 「・・・これって解除しようと思えば解除できるよな?」 煉は少し焦った様子で凛音に聞く。 「た・・・ぶん・・・」 そう言うと凛音は抱えられたままカクンッと意識を失ってしまった。 「おいっ、凛音っ!?・・・息してるし、大丈夫か・・・」 煉は少し焦ったが、呼吸を確認すると安堵の息をつき、 『混沌化(カオスモード)』を解除した。 「おお、すんなり解除できた・・・・ってぐぁぁぁぁっぁあ!」 解除した瞬間に全身が筋肉痛、みたいな痛みに襲われた。 「こ・・・これは死ねる・・・」 しかも凛音を抱えているので、さらにきつい。 煉は気合で何とかすると、なるべく人目につかないように家に向かった。
* * *
「やっと・・・着いた・・・」
煉はようやく家に着いた。途中学校帰りの隼(じゅん)とかを見つけて、慌てて隠れたりと色々大変だったのだ。 凛音はたまに何か言っていた気がするが、すぐにこてんっと寝入ってしまった。 そんな凛音を抱えながら家に着いたのは、午後五時だった。 「学校・・・普通に休んじまったなー・・・」 煉はそんな独り言を呟きながら家に入る。凛音をリビングのソファーに寝かせると、全身筋肉痛な体を頑張って動かし、自室に入った瞬間ベッドに倒れこむように寝てしまった。
* * *
男は廃ビルの近くの裏通りに向かっていた。
「くっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」 凛音の『裁きの手(エクスキュージョン)』を大量に喰らった上に、大量の『カオス』の使用、煉に倒される寸前までいかれたので、体力は軽く限界に近づいていた。 裏通りのバーがある場所の横、地下へと続く階段があった。 男はそこをゆっくりと降りていく。 降りた先の扉を開けると、 「おかえり、No.65(シックスティファイブ)、その様子だと、かなりやられたようだね?」 と、声をかけられた。 「黙れ、No.38(サーティエイト)」 ボロボロの男、No.65(シックスティファイブ)はそう言うと、 「部屋を借りるぞ・・・」 「あぁ。ゆっくり休んでくれ、報告はまた今度頼むよ」 チッ、とNo.65(シックスティファイブ)と呼ばれる男は舌打ちをすると奥にたくさんある部屋の一つに入っていった。 No.65(シックスティファイブ)にNo.38(サーティエイト)と呼ばれていた黒い短髪の男は、 「ははっ、No.65(シックスティファイブ)があんな風に戻ってくるなんてねぇ、報告が楽しみだ」 と、軽く笑いながら呟いた。
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煉はいつもより早く起きた。それもそうだ、昨日は午後四時前後に寝てしまったのだから。
「・・・あー」 煉は寝ぼけながら、昨日の出来事を思い出していた。 そこで異変に気づいた。全身の筋肉痛がなくなっている。 そんなことより、もっと重大なことに気づいた。 バッと布団を払い、立ち上がると、リビングに向かう。 「凛音ぇぇっ!・・・ってあれ?」 パッと見、凛音の姿が見つからない。 「どこ行きやがった・・・?」 と、煉が探していると、小さな声が聞こえてきた。 「・・・こっ!ここっ!気づいてよーっ!」 ふと足元を見ると、凛音がいた。
―――小さくなっていたけど。手の平サイズに。
「はぁぁぁぁ!?」 煉は思わず叫ぶ。 そんな煉の様子を見て、 「やっと気づいたっ!酷すぎるっ、いくらこの姿とはいえ気づかなさすぎ!あんたがリビング入ってきた時から言ってたのに!」 と凛音は怒る。小さいけど。 煉はポカンとしながら、 「えーっと、凛音だよな?」 「そうだよ!」 と凛音は叫ぶ。 「小さくなってるそれも、能力・・・だったり?」 と煉が聞く。 「んなわけないでしょっ!なりたくてなってるわけじゃないわよっ!」 と凛音は言う。 「・・・ていうか、あんたもそれはなかなか面白い副作用ね・・・」 「副作用!?」 煉は思わず叫ぶ。 「うん、『カオス』を使いすぎると、しばらくして副作用が発生しちゃうの。少しくらいならならないんだけどねー」 「『カオス』ってあれか、赤い奴か、俺、そんなに使った!?」 と煉。 「いや・・・たぶん、あんたの、えーっと、言うならば『混沌化(カオスモード)』ね、あれは絶対使いすぎると思う。」 「は?」 勝手に技を命名されているが、そんなことは気にせず、煉は聞く。 「どういうことか、詳しく聞きたいんだけど・・・」 「ぎゃー、摘むなっ、痛い痛いっ」 煉に服を掴まれて浮かされた凛音は何か絶叫している。 「別に私がやってるわけじゃないしっ!ちゃんと話すから離してぇっ!」 煉はそう聞くと少し涙目になっている凛音を机に降ろした。 「うぅ、えーっと、だから、あんたの能力、『混沌化(カオスモード)』は、必然的に全身から『カオス』を放出してるでしょ?」 「うむ」 「あれ、使いすぎ」 「・・・」 沈黙する煉。 「マジですか?」 「マジだよ?」 「・・・どーすんだよ、これ」 と煉は溜め息をつく。 「いや・・・あんたのはまだ普通に生活できるレベルじゃない?」 と小さくなってしまった凛音が言う。 「いや・・・でも・・・」
「女になってるのはキツいだろっ!」
「そこまで胸ないし、男で通るって!」 と凛音がビシッと親指を立てる。 「それって怒るべきなのかな?喜ぶべきなのかな?」 「?」 煉の返答に凛音はキョトンとしている。 煉は心はふつーに男なので、胸ない、とか言われて、それってどうなんだろ、って思っただけだ。 「ていうか、お腹減った。何か作って、てか作れるの?」 と凛音。 「自分で作れよ・・・」 「この姿で作れるわけないでしょっ!」 「そりゃそうだな」 仕方なく煉は適当に朝食を作り始める。 そこでふと疑問が沸く。 「凛音ー、お前の分ってどれくらいにすりゃいいのかな?」 「・・・大体分かるでしょ・・・」 と凛音は少しふてくされた顔をしている。 自分の分をテキトーに切って小皿に盛ってやりゃいいか、的なノリで考えていた煉のもとにこんな言葉が飛ぶ。 「あのさー・・・、さっきから気になってたんだけど、男口調で女声喋ってるのなんかおかしいよ?」 「・・・」 「・・・」 沈黙が走る。 「どうすりゃいいんだよっ!」 煉は叫んだ。 |