0-3.日曜(昼2):物語_2
どうにも、この学園に近づいた時から、予感はしていた。
また、厄介な事が起きる。
緋夕は、第六感とも言うべき何かが、自分に囁くのを聞いた。駅に降り立った時からして、引き返したい気分になった。
しかし、そこから引き返すには、模試代がもったいなかった。
なんにしろ、一度は高校浪人している身である。三年間、周囲の人間より一つ年上で過ごしてきたのである。遅生まれなので、歳の感覚は『友人達の中で一番早く誕生日が来る』ぐらいではある。本来、学年が上なのだという自覚も薄れている。
だが、これ以上、浪人するのはヤバい。成人式で小中学校の友人に出会ったら、現役合格した奴は既に大学二年、自分は大学にも入っていないどころか受験戦争真っ最中。大変、御免被りたい状況である。
六月、推薦での試験が始まった今日この頃、高三連中のほぼ七割が受験を意識し始める時期。緋夕も真っ当な受験生の例に漏れることなく、模試を受ける事にした。
思い起こせば、その申し込みの時から、おかしな事が続いていた。
申し込んだ後、事務員の手続きミスで、こんな地元から離れた場所に会場を取らされたり。後で苦情とともに問い合わせてみたが、希望する場所はすでに埋まって入れないと言われた。幸か不幸か、行って行けない距離ではなかった。結局、事務員にごり押しされて、試験場の変更も出来ずに今に至る。
ここに来たら来たで、どうにも言い表せない不安感が募った。
外に、霊がいないのだ。地縛霊も、浮遊霊も、何も見えない。早朝や昼だとて、それは青空に隠れる月のように、見えにくいだけでそこらにいるはずの霊が一切、見当たらない。
久々に帰ってきた親に、模試の試験会場がここになった事を告げた時、不審な事を言っていたのを思い出す。曰く、この地は退魔師の中でも異質で悪名高い、トキハミの一族の本拠地がある場所だとか。あの親が言うなら相当のものだ。同じぐらい、悪名高い退魔師のくせして。気をつけろ、と言っていたが、緋夕に限って、気のつけようもない運の悪さがある事を、父は理解していない。
トキハミの一族が、街の霊を全て、消し去っているというのか。それも違う気がした。退魔の力を持ったものが浄化したなら、もっと清浄な空気で包まれているはずだ。ここにはどこか、陰鬱で澱んだ気配が散漫している。
試験会場に着いたら、そこの試験官が怪しかった。
外見からして怪しい。この梅雨にあるまじき陽光の下で、全身黒尽くめ。入ってきた途端、教室がざわめいた。スーツのジャケットは黒、中にはシャツでなく黒のタンクトップ、黒のGパン。ご丁寧にサングラスまで掛けている。グレイのスーツに白シャツが通常の『先生』だろうに、仮にこの学校の教官だろうが、ラフすぎる。せめて黒のジャージだったら納得できたんだがなぁ、と無意味な感想を抱いてしまった。
おかしな試験官に見守られながら、午前中の試験は過ぎた。
途中、その試験官、外見だけでなく、行動も怪しい事に気付いた。ごく自然に何か『力』を使って、動いている。
霊能者の血筋からか、緋夕には霊やその類の『力』が見えた。一応、『力』を使い、悪霊を祓う技もいくつか携えている。しかし、黒尽くめの試験官の『力』は、緋夕のそれと違うように思えた。緋夕のそれが、呼吸法、詠唱から、内なる『力』を活性化させ、発現するものなら、黒尽くめの試験官が使う『力』はあまりにも自然に、第三の手のようにある『力』だった。存在自体に『力』が使われている。おそらく、彼はその『力』を失ったら、立つ事さえままならないのではないか。
結果、試験官の気配はどこか、人間と違っている。黒尽くめのインパクトに、『人と違う』事が当然のように思わせ、緋夕も気付くのが遅くなった。
彼が父の言っていた『トキハミ』なのか。
試験官は人として異質だったが、人に対する敵意はない。
三限目の試験が、黒尽くめの号令により終わる。昼の休憩時間の始まりだ。受験生が思い思いに羽を伸ばす中、緋夕は机をすり抜け、件の試験官へと近付いた。
「あの」
「ん? どこか、分からない所でも?」
分からないのは、あんたの正体だ。流石に素直に正体を尋ねるわけにもいかず、前に進み出てしまった事を今更後悔する。
「古文の……」
「伊勢物語?」
試験官が持つ、問題用紙をぱらぱらと捲る。
「ここが」
「つゆとこたえてきえなましものを、……ああ、これか」
これは、と短歌の解説をする試験官を見上げ、ごくりと咽喉を鳴らす。
「これ、鬼が食べてしまった、って話ですよね。先生は、鬼が本当にいると思いますか」
問いに対して、試験官はサングラス越しに質問者を見据え、ふっと口角を上げた。
「鬼……ね。そりゃあいるだろう」
嘯くような口調に、緋夕は見上げる視線をきつくする。
「例えば、お前なら鬼と言われてなにを想像する? 角を生やした強面の虎の衣を着た怪物? それとも、もっと別のものを?」
身長差は頭一つ分ある。近くに立つと、見上げなければならない。
「そう想像できるということは鬼に対するイメージがあるということだろう。それは鬼の存在を肯定することにならないか? ああ、それに鬼教師って言葉もあるな」
「……先生?」
試験官は緋夕に睨み上げられ、口元に苦笑を浮かべる。
「この問題の中での鬼は、人間の行為を象徴したものだ。鬼の正体は藤原公の使いだな」
解説する試験官は、普通の教師のようになっていた。話が終わってしまい、再び緋夕は試験官の前で立ち往生をせざるを得なくなった。
「お前の聞きたい事は、こんな事じゃないんだろう」
言われ、緋夕は息を呑む。だが。
はたと、黒尽くめの試験官が顔を上げる。緋夕から視線が逸らされ、あらぬ方向をきつく睨んだ。
「おっと」
さも、何もないように視線を戻し、試験官は肩を竦めた。
「昼休みの時間がなくなるな」
「……え」
「昼食を買いに行くなら早く行かないとまずいだろ」
言い切り、試験官はくるりと180度回転し、緋夕に背を向ける。
あながち懸念の外でない事でもなく、教室の後方にある掛け時計をふと見た隙に、黒尽くめの姿は教室の外へと消えていた。
緋夕は落胆の息を付いて、教卓に腰を付いた。
追いかけて、そこで何を話しかけたら良いのか。考えるとあえて黒尽くめを追い掛ける気にもならず、荷物をまとめ、教室を出た。
昇降口に着いた時には、既にコンビニで弁当を買えるかどうかだけが気になっていた。大体いつも、運が悪いのか、時間が遅いのか、コンビニには緋夕が嫌いな肉の多い弁当しか残っていない場合が多い。
思ったより、昇降口に集まる人影は少ない。緋夕が試験官と話している間に、大勢が我先にと飛び出していったのか。いや、模試を受験している生徒の大半がこの学園の生徒と考えると、食堂でもあるのかもしれなかった。
そして、校門を出る所で、とうとう緋夕は『厄介ごと』に直面せざるをえなくなった。
そいつは、人の形をしていた。外見は中学生か、小さな身長だが、頭を金髪に染めた少年だった。霊に取り憑かれたかのように、全身から妖気を漂わせている。殺意を秘めた空ろな目で校舎を見上げる少年に、緋夕の目は釘付けになった。
「どうか、したのか」
周囲の人間は、この少年の異様さに気付かない。ただ通り過ぎる中、緋夕は既知の人間に話しかけるような口調で、問うた。
「……」
少年は答えない。
緋夕を相手にせず、ゆらりと動き出し、少年は校舎へと近付く。
今は昼休みとはいえ、この状況でこの少年が試験会場へと赴き、何をしでかすか分からない。
なにか、『おかしなもの』にでも取り憑かれているのだろうか。おもわず、ポケットに手をやる。簡単な護符を、持ち歩いてきていたはずだった。
九字を唱えて印を切る。やはり、気が乱れている。
目を細め、護符を一枚取り出し、過ぎ行こうとする少年の背中に貼り付ける。これ一枚で、その辺の浮遊霊ぐらいなら蹴散らせる技が秘めてあった。
少年の身体が電撃を受けたようにビクリとしなり、膝をつく。彼が悲鳴を上げなかった事に感謝しなければならなかった。買出しに坂を下る一般の高校生達の目を気にして、緋夕は辺りを伺いながら、労わるように話しかけようとした。
「大丈夫か?」
「ダイジョウブ、じゃねぇよ」
突然、背後から声が掛かる。聞こえたと思った瞬間、その肩を後ろに引かれていた。怪力に緋夕の身体がしなり、頭が振り子のように揺れる。視界に入る赤のメッシュ。強く掴まれた肩に、緋夕は苦悶の表情を浮かべる。
「テメェは誰だ……、今、そいつに何しやがった」
しまった、誰かに『力』を使うところを見られていたのか。まずい、傍目には緋夕のせいでこの少年が倒れこんだようにしか見えない。
「ち、違う……ッ」
「あァ!?」
更に後ろに引かれ、向きを無理矢理変えさせられたところに、膝蹴りが腹へと入る。身をくの字に折り曲げられ、緋夕は地面へと転がった。
幸か不幸か、校門から人がはけており、その暴行を見た者はいなかった。
冷や汗を浮かべ肩で息を繰り返す緋夕を見下げ、暴力を振るった男は舌打ちし、少年の方へと向く。
「おらアス、起きろ」
緋夕は蹴られた腹を押さえながら立ち上がる。警戒して、構えを取る。目の前にいたのは、緋夕よりもやや背の高い不良然とした格好の少年だった。
不良の少年は、先の少年を蹴り、反応がない事を見て取ると、再び舌打ちを漏らし、顎を上げ高い所から見下ろすように、緋夕を睨んだ。
指を鳴らし、握り拳を作る手の先を緋夕はじっと見つめる。次の瞬間、相当な素早さをもって繰り出された拳を、緋夕は避けた。避けることが出来たのが不思議なほど、無駄のない動作だった。ただの喧嘩好きの不良ではない。
驚愕の表情を浮かべる緋夕を、苦虫を噛み潰したような顔で憎々しげに見やり、不良はまた二発、三発と拳を繰り出してくる。身体を反らし拳を避け、避けきれない分を呼吸を合わせるようにして受け流す。
ますます不良の眉間に皺が寄り、ざわり、と髪が逆立つように揺れた。
こいつにも……なにか、『憑いて』いる。印を切りたいが、それで攻撃を避けきれるか不安だった。
状況を説明して、説得すべきだろうか。しかし、いきなり蹴りやら拳やらをかましてくるこの相手にそれがどこまで有効かは不明である。
はっと気付いた時には、不良の脚が人としてありえない程の速さをもって繰り出されていた。呼吸が変わる。合わない。仕方なく足を滑らせスライディングし、ハイキックを避ける。
しゃがんだ背の向こうで地を踏みしめる音がする。再び脚が持ち上げられる気配を感じ、転がり逃げようとしたが、その肩を踏みつけられた。
踏みつけられた肩に痛みははしるが、意識を途切れされるほどのものではない。おまけに、不良の注意がそれた。一瞬の隙。両手が開く。不良には、何かわけのわからない言葉を緋夕がつぶやいたようにしか見えたかったろう。とにかく、動きを封じる方が先決だ。
「ァ、ガッ……」
獣染みた呻きが漏れる。咽喉をも痙攣させたように、口からはただ途切れ途切れの呻きが聞こえてきた。
踏みつける力が緩んだ足を払い退け、緋夕は立ち上がる。
ゆらりと揺れながらもまだ膝をつかない不良の根性に、緋夕は内心感嘆の息を吐いた。
「ごめんな、ちょっとばかし『力』こめさせてもらったぞ」
まったく、どうなってるんだ、この学園は。こんな『憑かれ』が二人もいるとは。幸い人としての意識は二人とも保っているようだが、それにしたってここの気の乱れ方は尋常でない。
「俺はただの模試を受けに来た受験生だよ。ちょっと危ない雰囲気だったんでね。それで、『おまえ』は何者だ?」
肩で息をしながら、緋夕は問う。不良の質問に、まずは忠実に答えることにした。
不良の咽喉が、「ぐッ」と異質な音を出す。それからゆっくりと吐き出された吐息に、不良の呪縛が解けてしまった事が分かる。緩慢に動き出す身体に、緋夕は再び構えた。
「ヘヘッ、悪ィなァ、『こいつ』は答えたくねェってよ」
幾分か冷や汗を掻く顔に、意地の悪い笑みが浮かぶ。しかし、その笑みもすぐに引き締まったものに変り、吊り上がった目が緋夕を睨んだ。
「で? 受験生が、相棒に何の用だ」
「相棒?」
その表現がなんだか妙で、思わず聞き返した。
「テメェが一撃くれたヤツの事さ。あいつは、オレの大事なツレでな。普通なら、テメェみてぇなナヨいヤツにヤられたりしねぇ筈だが……」
ギッと物騒な視線が緋夕の指に行く。
「その、『力』か」
不敵に、不良が鼻を鳴らした。
「家のヤツラ、力じゃ敵わねェって、とうとうイカレたのを用意してきたか」
「家?」
「違うのかよ」
不良は肩の揺れを抑えるように、短く息を詰めながら低い声を出す。緋夕は素直に首を傾げた。
「何の事だ」
「……マジで、家とは関係ねぇってか。じゃあなんで、アスを襲う」
「言った。善からぬものが『憑いて』いて、危なそうだったからだとね」
言うと、不良は哂った。
「『悪魔』か……ハッ、じゃあオレも退治するか?」
緋夕が見つめる中、先程の速さに比べればひどくゆっくり、不良は肩を揺らす。まだ呪縛が効いているのか。緩慢に、再び拳を構えようとする不良に、緋夕は掌を突きつけた。
「待て」
びくりと不良が瞠目する。『力』が放たれるとでも思ったのか。先程までの猛者にしては幾分怯えた挙動にふっと緋夕が微かに口角を上げると、不良は歯を噛み締め、ギッと眼力を強くした。
「待て。おまえとおまえの相棒を退治しようと思ったわけじゃない。望むなら、すぐに術を解いても良い」
「だから、見逃してくれってか? おいおい、そりゃあ虫が良すぎる話じゃねぇか」
「……条件がある。おまえがそいつを抑えられるなら、だ」
冷や汗を流しながら、捲くし立てる不良の声を無視するように、強く、緋夕は言い切る。不良の少年は強い口調に眉を顰め、短く息を吸い込んだ。年下なのかもしれない。不意に思う。緋夕の呪縛を食らって、居竦んでいる。
「アスはオレの言う事ならなんでも聞く」
搾り出すように声を震わせ、苦々しい表情で不良は言い捨てた。
「そうか」
なるべく素っ気無く、強引に押し切るように返事して、緋夕は不良の横を通り過ぎた。服の前を揃える手が僅かに震える。気付かれずに済んだ事にほっとした。
「いいのかよ。そいつが復活したら、テメェを襲わせるかも知れねぇぜ」
しゃがみこんだままの少年の後ろに膝を突くと、後ろから不良がそんな事を言ってきた。
「おまえはできない」
「んだと!?」
振り返らず、断言する。息巻く不良の声を背に、緋夕は一瞬目を瞑る。できるはずがない。強い自我を保っている不良はともかく、どうにも、こっちの少年の方は尋常じゃなかった。不良の奴の言葉を聞くかどうかも分からない。
この負けん気の強い不良なら、言う事を聞かせると言った以上、絶対に服従させようとするだろうと簡単に予想できた。何にしろ、どうにかこの少年が学校の中に入るのを抑えてくれれば良い。
ふっと気持ちを切り替え、緋夕は小さな少年の背に付いた護符を剥がした。
「……」
始めに、指がピクリと動いた。それからゆっくり項垂れていた頭が上がりだす。漏れ出でる妖気に緋夕は腰を浮かせ、不良からは見えない場所で慎重に印を組んだ。
「アス!」
不良からの呼び声に、座り込んだままの頭がくるりと後ろを向こうとする。まるで悪魔憑きのように首だけ回転しそうな仕草に、一瞬緋夕は呼吸を忘れた。
「アス、おいっ!」
再度の呼び掛けに、腰が浮く。方向転換に上半身が捻られ、身体が付いてきた事に緋夕はわずかに安堵の息を吐く。変な事に気を取られている間に、緋夕の身体は不良に押し退けられていた。
「シエ」
前に立つ不良を見上げ、少年は呆気に取られたような声を出す。不良はしゃがむでも手を差し出すでもなく、すぐ前に立ち、少年を見下ろしていた。
「大丈夫か」
緋夕の余所余所しかった一言でなく、切羽詰った一言。相棒だ、と言った不良の言葉をしみじみと理解する。『相棒』を視認した瞬間に、少年の瞳からは殺気が消えた。
全て、余計な懸念だったか。印を組み解き、緋夕は腕を降ろした。
不良が先の少年を抑えられない、そんな懸念はすでに無用のものに成り果てていた。
少年は虚ろに支配された瞳に生気に満ちた光を戻し、縋るように焦った声を相棒に投げかけた。
「シエ、レグが」
「あ?」
「レグが、危ないって」
「……聞かせろ」
この二人の『憑かれ』との出会いは、緋夕の背負った『厄介ごと』の始まりに過ぎなかったのだった。
苛立ちにつま先を上下させて、樋坂晶は高等部昇降口の壁に寄りかかっていた。
和田忍に急遽学校へ呼び出され、彼は喜び勇んで学校までやってきた。それが生徒会役員として呼ばれたものであっても、休日でさえ忍さまの役に立てると思えば、天にも舞い上がる気分になれた。
だが、苛立ちを感じている部分は他にある。
「遅い」
思わず、不機嫌たっぷりに呟くと、隣の真貴子がびくりと肩を揺らした。ばさりと大袈裟なほどに揺れた量の多い髪を見下ろし、晶は不意に出た本音を取り繕う笑顔を浮かべながら、内心ため息をつく。隣に居るのが忍さまだったら、もっと幸せだったのに。晶よりも早くこの場に参上していた真貴子に心の中で八つ当たりをする。
生徒会準役員、廻真貴子。準役員とは、新入生で生徒会に正式に所属していない者を指す。しかし、役員がほぼ教師からの指名で成り立っているこの学園のこと、新入生の目ぼしい者にはすでにお声が掛かっていて、生徒会を手伝わされる。中等部でも生徒会をやっていた真貴子は当然、高等部でも役員に数えられている。晶も同じように中等部から引き続いて役員をしており、真貴子とも旧知の仲だった。
「あと、来るのは……」
「咲羅さんだけかな?」
晶と同じく、二年の生徒会役員、六本木咲羅。彼女もまた、中等部から同じく生徒会に所属している。中等部時代は主に会計担当だったが、今は副会長になっている。
中等部の生徒会から変わったことといえば、当時の学年トップ日野西智秀が抜けたことだろうか。あのまま、学年主席の座を保っていれば、日野西はそのまま生徒会に所属していたろう。だが、高等部に入って、外部生から入学した天野才に主席の座を奪われてから、取り憑かれたように勉強に専念し始めた。元々陰気な部類で、忍さまに及びもつかないほど人気もない男だったが、高等部に入ってから、かなり嫌われ者になっている。
かといって、その天野才が代わりに生徒会に入っているかといえば、それも否だった。天野は「やる事があるから」と、生徒会の役目を拒んだ。教師側も、五科目満点を取る彼女に何も言えずに引き下がった。見兼ねて、忍さまが直々に赴かれて差し出した手も、天野は払い落とした。しかし、部活動をしている姿を見ていても、天野は特に部活に熱中しているようにも思えなかった。不可解な女だ。日野西はともかく、忍さまを敵に回して、他の者達が黙っているのかと思うのか。その苛烈な冷たさは瞬く間に高等部中に広がり、生徒会入り断った翌日に、彼女の孤立は決定した。
「え、あの、あと、獅子ヶ谷君も」
「もう一度確認しないと」真貴子の言葉を、晶はやんわりと抑える。本心では、嫌な顔を浮かべながら。
「確認する必要ないんじゃないかな。来るなら来るだろうし」
獅子ヶ谷怜具は真貴子と同じ準役員の一人。今の一年の学年トップだった。
生徒会に選ばれる基準は成績が最もたるもので、次に品行やら、貢献度で選定される。現に生徒会長の忍さまは三年の学年トップで、更に品行もよし、中等部でも生徒会に入っている。文句なしだろう。
獅子ヶ谷が入学式の新入生総代として指名された時から、生徒会準役員に選ばれるだろうとは思っていた。リハーサルと式前に呼び出され、晶達と打ち合わせした時も、真面目な態度であったし、品行方正だろうと踏んでいた。彼が望んで、うまくいけば、高等部からの外部生では珍しい、生徒会長にもなっただろう。
だが、その後が問題だった。
素行の悪い生徒達とつるみ始めたのだ。いや、もしかしたら、以前から仲が良かったのだろう。獅子ヶ谷は友人と同じような派手な頭髪にこそしなかったが、左耳にピアス穴を開けた。ひとつならともかく、三連ピアスだ。彼は先生に注意され、「校則にはありません」と平然と言い返した。確かに校則にはない。頭髪も自由だ。『学生らしいもの』との指定で、基本的に茶髪に染めている者も少なくない。簪を頭につけている女子も見かけたことがある。だが、校則がなくても保たれていたのは、この学園の生徒が優良子女の通う学園だったからだ。一般試験でも面接があるのだが、一年の問題児達はあれでどう合格したのか不思議で仕方ない。
獅子ヶ谷を含む、一年の問題児達はとにかく教師に反抗的だとされ、心象はかなり悪いようだ。獅子ヶ谷は新学期が始まって当初に言われた通り生徒会は手伝っている。その態度は入学式の時と変わらないし、ピアス以外は真面目そうな雰囲気を持っている。呼び出しには、気だるげながらも大抵応じる。このまま生徒会役員になりそうだが、最初に思った通りには、出世しないだろう。書記になるなら、晶が仕事を教える必要があった。
「……でも、忘れてるかもしれないし……」
「わざわざ呼び出さなくてもいいよ。折角の休日なんだ、休ませてあげよう。ね?」
言い含めると、しぶしぶながら真貴子は頷く。
本当の所、人が来ないなら誰も来ない方がいいと思っている。誰も来ないなら、忍さまと二人きりで仕事ができた。折角、三年の先輩方は殆どが模試でいないこの状況を。真貴子も咲羅も来なければ、と思う。
「……あ、そうだ、真貴子さん。司馬先輩にはもう渡してあるのかな?」
「え、何をですか」
話が逸れるよう、水を向けると真貴子が怪訝な顔をする。この心配性の少女の意識を逸らすには、三年の先輩、司馬将の話をするのが一番だ。
「お弁当」
笑って言うと、真貴子は顔を真っ赤にする。
「あ、あ、はい。あの、先程。しょうちゃん……いえ、司馬センパイ、今日は日曜だからいらないって。でも、その、日曜の朝って暇だし、私も学校に赴く用事ができたので……。午前中に作って、休み時間に待ち合わせして」
懸命に言い繕おうとする姿が微笑ましい。
この後輩が先輩の司馬の弁当を毎朝作っていると聞いた時、晶は感心し、同時にほんの少し……、ほんの少しだが悔しく思った。女の身であれば、憧れの先輩に弁当の差し入れをするなど、造作もないような事に思えた。下手でも必死で料理を勉強するだろう。けれど、晶は男で、憧れの先輩は女だった。しかも、お嬢様だ。その弁当の中身を作っているのは、雇われの一流板前。勝算は皆無と思い直した。
模試の休み時間、しかも昼の休みでなく短い休み時間に呼び出された司馬に同情しながらも、こんなに甲斐甲斐しく可愛らしい後輩に世話を焼かれては、司馬もまんざらでないだろうと予想できる。晶は自分と憧れの先輩の姿を、この微笑ましい幼馴染カップルに投影してみた。
お弁当は無理だ、だからせめて生徒会の書類を全て纏め上げ、忍さまの手元に渡す。
すると、「ありがとう、助かるわ」と忍さまは微笑む――……。
「あ、着ました!」
真貴子が声を上げる。途端、幻想の忍さまが薄れた。
顔を上げた晶は、校門からやってくる二人の影を視認する。驚く事に、獅子ヶ谷の姿があった。いよいよ、生徒会室に二人きりの幻想がかき消される。晶は肩を落として、現実に直面する事にした。
「あら、まだ上がってなかったの」
「あなた達を待っていたから」
集まるなり、憎まれ口を叩く咲羅にやんわりと言い含める。
内心の声にも気づいているだろう、咲羅は晶を一瞥し、更に言葉を重ねた。
「先に行ってても良かったのに」
「ここにまず全員で集合してから、忍さまの下へ。それが忍さまからの伝達では?」
「そうだったかしら」
あくまで生徒会長の言葉を守ろうとする晶に、咲羅は呆れた視線を送り、疲れたように溜息をつく。
電子機器に弱い忍さまは、携帯電話をお持ちにならない。急な伝達は家電を主体とした連絡網で伝えられる。しかも、実際忍さまが連絡をするのは咲羅のみだ。後は、副会長でかねてから信頼の篤い咲羅が順通りに生徒会全体に伝える。その方が効率的だ、と咲羅が決めた。それまでは生徒会長自ら全員に確認していたというのだから、もったいない事をしたものだ。
連絡網の伝言は全て忍さまのもの、とは思わないが、それでも忍さまの言葉を取り次いだのは咲羅だ。その咲羅がこのように嘯いては、晶の心中も穏やかでない。
「とりあえず揃ったことだし、上がろうか。忍さまがお待ちだ」
晶は内心の上など一切漏らさない完璧に隙のない笑顔を浮かべ、誰より先に昇降玄関を潜った。
願いは、叶えられた。
その願いは魂と引き換えに叶えられた。
それでも、少女はそれを願った。一部の者に崇拝され、皆に敬愛される存在だった彼女も、その実、内面は脆かった。蝶よ花よと育てられた彼女は、それ故儚く、ある時は毅然とした雰囲気を持ち、周囲の者と一線を駕した存在となっていたが、自分が否定される事を知らなかった。
いや、これほど、身を引き裂かれるような痛みをもった事がなかった。
おそらく、こんな時でなければ、箱入りのお嬢様だった彼女の『良い経験』となった事だろう。しかし、不安定になった彼女の心の隙に、悪魔が降り立った。心の中の悪魔は、彼女に囁いた。
夢を、見せてやろうぞ……。
彼女はそれを望んでしまった。
そして、願いは叶えられた。
「ふん、小賢しい天使どもめ……こんな結界で妾を捕らえたと思いかえ」
生徒会室の窓から一望できる街を見下ろし、『和田忍』は呟いた。忌々しげな口調は平静の彼女とは程遠い。普段の彼女を知る者がいれば、違和感に眉を顰めただろう。
「……しかし、忌々しい……。このような脆弱な器に宿らねば動けぬなど」
『忍』は自らの前に伸ばした掌を裏に表に返して、心底嫌そうに自らの掌を睨む。
『流石はクローセル様というべきか。美しい器をお選びですな』
背後からの声。声帯を震わすでなく発せられたそれは声というより『思念』に近い。
振り返れば、そこには空間が裂け、そこから覘くような眼が一つ、宙に浮かんでいる。人の顔ほどの大きさを持つその眼は、裂け目を目蓋のようにして存在する。
『その者の立場、どうやら人の上に立つ者だったご様子。まさにお似合いの器だ』
「似合うなど。そなたに言われると皮肉に思えて仕方ない」
『これはこれは手厳しい……』
おどけた様に思念を飛ばす眼に、『忍』もくすりと笑みを漏らす。
「なんにせよ、妾は器無くして自由に動けぬ。もどかしいものだが、このような姿にした天使に一矢報い、結界を抜け出すまでは仕方なかろ」
『天使どもに一矢を! さて、我等が将はどのようになさるおつもりで?』
「先見のお主がそれを問うか?」
『意地の悪い御方だ。この結界の中器も無き状態で、死ねと仰るか』
『忍』はふっと口角を上げてから面白そうに眼を細め、宙に浮く眼を見やる。
「そうじゃな……。この結界、周到な事に精神体全ての力を奪うように出来ておる。天使でさえ、自由に往来できるのは結界を張った本人だけであろ。しかも、このような大掛かりな結界を張れる者、直接の戦闘能力はあまりないと見た」
『しかし、かような憎き天使ども、我等を結界に閉じ込めただけとは思えませぬ』
「恐らくは、天使の中で人間と血の混じりしものを使うか、我等のように人間の器を奪ってくるか……どちらにせよ、力不足の感は否めぬな。結界に捕らえたとはいえ、それだけで我等を屠れるとは思っていまいに。なんにせよ、まずは手足、眼となるものを用意せねばなるまいて」
『眼は私がなりましょうぞ』
「うむ。……器が揃ったようじゃ」
優美に微笑む顔は和田忍そのものだった。しかし、全身から溢れ出る雰囲気が全く違う。微笑む姿は凄みのある笑みに変り、瞳には妖しい光が宿る。
「トロアド、ハゲンティ、エリゴス、ヴァピュラよ」
『忍』が呼ぶと、生徒会室の空間が震え、四つのゆがんだ影が現れた。
「くれぐれも無理強いせぬようにな……。妾が流儀に反するゆえ」
昇降口に集まった四人は、晶を筆頭に部室棟へと入った。生徒会室は三階の一番奥にある。明かりの付けられていない廊下には、陽光だけが差していた。穏やかに歩いているように見えて割と早く足を進める晶の後を真貴子が慌てて追いつこうとし、そんなもの関係ないように平素の通りに歩く咲羅。何も喋ろうとしない三人の後ろから、獅子ヶ谷が暢気に殿を来る。
と、晶が扉の前に差し掛かるかどうかの所で先に生徒会室の扉が開いた。
今、生徒会室に居らっしゃるのは、『忍さま』だけの筈だった。開いた戸から出て来られるのは、当然ながら忍さま以外にありえない。
『忍さま』は確かな足取りで四人の前に立ち、にこりと笑みを浮かべられた。
「……?」
違和感が、あった。例えば、座る動作一つ、戸を開ける動作一つ、歩く姿、前に立つ姿、すれ違った時でさえ晶に向けるほんのわずかな、優しい微笑。それら全て、晶の眼には焼きついている。
ありえないことに、晶は憧れの『忍さま』を前にして呆然と立ち竦んだ。
後ろの咲羅、真貴子、獅子ヶ谷の三人は、『忍さま』へのそれでなく、晶への違和感に怪訝な顔を向ける。
「よう参ったな」
にこり、朱の強くなったように感じる唇が、言う。
そこで、晶以外の三人も違和感の目を晶から忍へと移した。
「……忍さま?」
搾り出すような声が、晶から漏れる。
「ふふ」
例えば、儚げに下ろされる睫毛。生徒会室の窓から入る西日に赤く染まって綺麗だった。
なのに、この妖艶な光を放つ瞳はなんだ。今は昼時だと言うのに、赤く、血の澱むような光の宿る、眼光が晶の眼を射る。
手が晶の頬へと伸びる。白い美しい形の手はそのままに、青白く、そして爪が僅かに尖っていた。あれ程触れたかった手が伸びてくるというのに、晶は短く息を呑んで逃げていた。
まるで、別人だ。
口調も、仕草も、何もかも晶の知る彼女ではない。
首を振る。違うと、目を逸らそうとする。だが、逸らせない。
「なかなか、良い眼をしておる。……トロアド?」
『忍さま』がその名を呼んだ途端、晶は気圧される様な威圧感が身を包むのを感じた。咄嗟に眼を瞑る。
『ほほ、顔を挙げい。人間よ』
「だ、誰だッ」
再び眼を開けた時、晶の目の前から忍さまの影が消えていた。「忍さまっ」叫んで、周囲を見渡した。だが、廊下は一転として混沌とした闇の世界と化して、求める姿は何処にもなかった。
『喜ぶが良い、人間。貴様はクローセル様に選ばれた』
空間に裂け目のようなものが現れる。開かれた眼が、晶を視る。その眼は、晶の身長の倍、あるいはそれ以上もの大きさに見えた。それだけ強大に見える威圧感があった。
悪魔トロアド。教えられるでもなく晶はその名を知り、そして、脳の中にそれがいるのだと気付いた。
何が起きたのか、分からなかった。
再び耳にして思う。違う。口調が、彼等の知る『和田忍』とは全く違っている。ふと感じ取った途端、膨れ上がる違和感。訳も分からず、怜具は一歩後退った。
なにか。違和感は増大し、それ自身が熱量を持って膨張しているかのようだった。蜃気楼が揺れるように目の前の空間が歪む。なにかおかしい。現実味を失った背景の中、忍の薄笑みだけが浮き立つ。
と、ぐらり、まず先に傾いだのは晶の身体だった。
はっと気付いて怜具は晶に手を伸ばしかけ、前に一歩踏み出す。途端、真貴子、咲羅の身体も連続して身を折った。前方の晶に向けた手が迷い、すぐ横の咲羅を振り返る。すると視界には退路も眼に入った。しかし、見せた迷いの隙、悪寒が怜具を襲い掛かる。
ぞわり、と。総毛立つ感覚が、生徒会室から現れる。
恐る恐る、しかし絶対的な吸引力に眼を捉えられ、怜具は前方、生徒会室を向く。
そこはもう生徒会室でなく、歪められた空間の奥、闇の中から異形の獣は現れ出でた。逆立つ獅子の鬣は赤く、背には大鷲のような翼が生える。異質だった。親しみの全く湧かない姿。恐れ、畏怖させる緑の眼孔は、怜具の精神を苛んだ。
『問う』
思念が、空間に反響する。四方に飛ばされた思念は、しかし、全て怜具に向かって集まってくるようだった。
『我とまみえし者よ、汝が求めるは何か』
何のことか、全く検討もつかなかった。
こんな状況で答えを返せるほど、度胸があるわけじゃない。できるのは四焉くらいじゃないのか。
「……って、何考えているんだ、俺は」
場にそぐわぬ思考。だが、親友の姿を思い出し、恐れが一瞬引く。怜具はぎこちなくも笑みを浮かべ、眼を瞑ってみた。獅子の姿をした異形が見えなくなる。そのまま深く息を吸い込むことで、余裕もできた。
眼を開け、周りを見る。異形と自分だけになったかのように思えた歪んだ空間も元の通りの形を取り戻し始めた。
こんな時、四焉ならどうするか……。
ふっと息を吸い込み、怜具は決意を結ぶ。
まずは近い咲羅だ。膝を折る彼女の側に腰をわずかに落とし、肩に手を伸ばす。
「先輩! 咲羅先輩!」
呼びかけても、反応は薄い。「うう」とも「ああ」ともつかない言葉だけを繰り返している。
「廻さん」
前方の真貴子も反応がない。
「……樋坂先輩」
無理だ。こんな、悪魔とも妖怪ともつかないバケモノ。怜具の住む世界の住人だと思えなかった。本当は自分はまだベッドの中で安眠しているんじゃないか。夢の中ではないか、とまで思った。
『答えを。我とまみえし者よ、汝が一人にその権利はある』
「……そういえば、斎が朝なんか言っていたか」
携帯を探りつつ、後退る。
「今日は家から出るな……って、出ちゃったしなぁ」
異形から眼を逸らさず、無意識に喋る。自分への確認に近い。
「もし、何処でもこんなのが現れているなら、神生達は大変だな……」
猛獣使いに大切なのは、猛獣を恐れぬ心だ。怯えはすぐに獣が感じ取る。優位にさせてはいけない。眼力で負けてはならない。
やっと引き出した携帯を片手で開け、アドレスを探るのが面倒で着信履歴から斎のものを選択する。しかし、呼び出しの音すら鳴らない。電波がない。普段は三本立っているのに。
「じゃあ、どうする……?」
『面白い』
汗が額を伝う。
ふと気が付くと、異形が目の前に近付いていた。怯まずに居られない威圧に、足がたたらを踏む。
『汝、人の身にて悪魔と対しようというのか』
異形は笑った。獅子の口は変わらなかったが、空気の揺れがなにか伝わってきた。
『まみえしものよ、まこと汝は我とまみえるに値するもの』
「……」
『故に汝の求めしものを我は与えよう』
目を細め、怜具は答える。
「いらない。必要はない。お前なんかに与えてもらうものはない!」
初めて異形の言葉に答え、怜具は手を振り払った。
片足が九十度揺れるも、前に蹲る三人が眼に入り、足が止まる。
助け出す方法は。
「くそっ、どうして思いつかない」
何の為の頭だ。
三人の予想重量と、自分の耐久力を無意味に比べる。各部室のドアは鍵で閉じている。無理やり蹴り倒すのには、少々時間が掛かる。無意味だ。
「どうしたらいい……!?」
怜具は知らず、口にしていた。
『応。我が司りしは智恵、汝が求めし智を与えよう』
「っ!」
失敗に気付いても遅い。異形の獅子が怜具に飛び掛り、その脳内に吸い込まれていく。
一体となる感覚。周囲の風景は変わらず見えるのに、闇に包まれる視界、いや、視神経、違う、脳、思考、精神。
全てが、支配される。
「う、わあぁぁああああ」
悲鳴を上げて倒れた怜具の指が、本人の与り知らぬ場所で動く。
手に握ったままの携帯端末は、短い沈黙の後、コール音を立て始めた。
続く
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