045

揺れる水面のアイオライト ◆H3I.PBF5M.


ホテル夢有羅布楽雅。
 F-6エリア、川岸にあるホテルである。
 西洋の城をイメージしたデザインは、利用者に貴族気分を存分に疑似体験させてくれる働きがあった。
 その館内、最も広く豪奢な部屋で渋谷凛は目覚めた。

「う……ん」

 重い頭を叱咤して起き上がる。その動作だけで身体が柔らかなベッドへと沈み込んだ。
 数秒放心して、凛は現状に気付いた。
 自分の身体。一糸まとわぬ裸体である。薄いシーツがかけられているものの、下着も何もない。

「そうか、私……あのエンブリヲって男に……アンジュ!?」

 慌てて周りを見回すが、そこにはあのぶっきらぼうでがさつな美人はいない。
 レッスンルームよりやや広めの大きな部屋の真ん中にどんと置かれたキングサイズのベッドに、凛は一人で座っていた。

「……ここから逃げないと」

 幸いエンブリヲは室内にはいない。
 周りを見回すも、服の類は残念ながら転がっておらず、やむなくシーツを身体に巻きつけてベッドから降りた。

「ここ、どこ?」

 高校一年生、そこそこ有名になってきたとはいえまだまだ駆け出しのアイドル。
 男子と付き合ったこともなく、その方面の興味も知識も薄い凛は、自分のいる場所がどこなのかという見当はつけられなかった。
 部屋の中には無造作にバッグが放り出されている。
 自分のバッグはアンジュが持っていたはずなので、これは凛のでもアンジュのでもない誰かのもの、ということになるが。
 恐る恐る近づいて中を開けてみる。

「あぁっ……ふぁああああ! んのぉぉぉぉぐっ! ふぐっ!」

 一秒で閉めた。汗がだらだらと吹き出す。
 性的な興味の薄い凛でも、さすがに全裸の男を直視する趣味は持ち合わせていなかった。

「何。今の」

 見間違いであって欲しかった。あるいは幻覚か。
 よろよろともう一度デイバッグを持ち、少しだけ隙間を開ける。


「うおおおおおあああああああっっっ!!!!!」

 0.5秒で閉めた。汗がすっかり冷たくなった。
 獣の咆哮とともに、むせ返るような臭いが広がった。
 決して香りとは呼べない、たとえるなら一日ぶっ通しで散歩させて、たっぷり汗をかいた愛犬ハナコのお腹のような臭いとでもいうのか。
 だが、二度見て分かった。このバッグの中には人がいる。
 どうやってかはわからないが、生きている人間がまるでミニチュアのように収納されているのだ。

「なんなのこの人……!?」
「おやおや、もう眼が覚めてしまったのかい? 待ち切れなかったようだね」

 と、凛の背後から声。
 シーツを抑えつつ振り向くと、そこにはバスローブに身を包んだ長い金髪の男、エンブリヲがいた。
 風呂あがりらしく、髪は湿り湯気が昇っている。

「済まないね、凛。君の身体も清めてあげようと思っだんだが、私も疲れていたのでね。先にシャワーを浴びさせてもらったよ」
「あ、あんたは!」
「おっと、それは返してくれたまえ。悠にはまだまだお仕置きが必要なようだからね」

 眼を離した覚えはない。しかし、凛が瞬きするとエンブリヲの姿は消え、いつの間にか背後に立たれていた。
 凛の手からバッグがもぎ取られ、エンブリヲの後ろに投げられる。

「何なの、その人。あんたが何かしたの?」
「悠は私の友人だよ。ただ、まだ私を信用してくれなくてね。暴れられては困るからこうしているんだ」
「勝手な理屈……! あんた、アンジュが言った通りの変態なんだ!」

 バッグの中の彼が、自分の意志ではなくエンブリヲによって束縛されている。
 その事実は、エンブリヲが非道な人物であると凛に再認識させるには十分だった。
 この場には助けてくれるアンジュも、身を守る武器もない。
 それでも凛は、笑顔のままで他人を踏みつけにするこの男に媚びて安全を得ようとは思わなかった。

「それは誤解だよ。アンジュもすぐに気づく。私こそが彼女に相応しい無二の人物なのだとね」
「アンジュはそう思っていないみたいだよ。言ってたじゃない、タスクって人の方が百倍良いってね!」
「……困った娘だ。いかに温厚な私でも、あの汚らわしいサルと比較されては穏やかではいられないな」

 エンブリヲが凛に眼光を向ける。
 その瞬間、凛の身体をかろうじて隠していたシーツが弾け飛んだ。

「またっ……!」
「君はそうして何も隠さないほうが似合っているよ」


 両手で胸と局部を隠す。途方もない屈辱だった。
 アイドルとして、男性ファンに性的な目を向けられるのは仕方がないとしてまだ割り切れる。
 しかしこれは違う。男の身勝手な欲望に晒され、抵抗もできずに嬲られているだけだ。
 震え出しそうな恐怖を、沸き上がってきた怒りで何とか誤魔化そうとする。

「この変態!」
「フフ、芯が強いな。この状況でそのような言葉を吐けるとは。
 ますますもって、その花弁を散らせるのが楽しみになってきたよ」

 エンブリヲがバスローブの紐を解いた。ふわりと落ちる衣。
 凛と同じく裸体となったエンブリヲの、ある一部分が変貌を開始していく。

「ひっ……!」

 それを目にすると、怒りなど一瞬でどこかに消えてしまっていた。
 いま眼にしているのは何だ。
 自分の身体にはないもの。
 女性の身体にはないもの。
 男性の身体にはあるもの。
 父親や、プロデューサーの身体にはあるもの。
 保健体育の授業をこれほど恨めしく思ったことはなかった。

「いやぁぁぁっ! 来ないでっ!」
「おやおや、先ほどの気丈さはどこへ行ったのやら。しかし……ふむ。
 最近はアンジュに心を奪われていたからか、そういった反応も久しぶりで悪くないな」

 にこやかにエンブリヲが笑う。
 まるで天使のように整った顔立ち。しかしその実、この男は悪魔以外の何者でもない。
 歯の根が楽器のように打ち鳴らされるのを意識しながらも、震えが止まらない。
 凛はいま、襲われようとしているのだ。
 命の危機、ではない。貞操の危機に。

「やだっ! 来ないで! 来ないでよぉっ!」
「怖がることはない。すぐに君も私の素晴らしさを知る。生まれてきた幸福を実感できるだろう」

 じわじわと、焦らすようにエンブリヲがにじり寄ってくる。
 恐慌を来たした凛は背中を向けて窓へと駆け寄った。とにかくこの場から逃げ出したい。
 しかし無情にも窓は開かない。鍵がかかっているわけでも壊れているわけでもなく、エンブリヲがそうはさせじと空間を閉じているからだ。
 万全の時ほど力が出せないものの、無力な少女の干渉を跳ね除ける程度はわけもない。

「フフフ……その反応。何度味わってもいいものだ、新雪を踏み荒らす背徳感というものは」
「嫌ぁっ! 助けて……助けてよ、プロデューサー! プロデューサーぁ!」
「おや、想い人がいたかね。これは嬉しい誤算だ。君の心を奪った時、はたしてその男はどんな顔をするのだろうね?」


 ガタガタと震え出す少女を前に、エンブリヲは嗜虐的な笑みを浮かべる。
 超越者となったエンブリヲは自制心や良識といった感情を抑制するタガを持ち合わせていない。
 穢れなき少女を自らの色に染め上げる。その変わり果てた彼女を見て彼女の想い人はどんな顔をするのだろうかと考えると、愉快でたまらなくなる。

「やだぁ! 来ないでよぉ!」
「怖がることはない。未央も、そして卯月とみくと言ったか?
 君の友人たちもすぐに連れてきてあげよう。 みな、この私が差別なく愛してあげるよ」
「……っ!」

 ガタガタと震え泣き叫ぶだけだった凛の瞳が、その瞬間、ビクリと引きつった。
 アイドル活動を通じて知り合った、時間にすればまだまだ短い関係。
 それでも凛にとって、本田未央島村卯月、前川みくは、同じ道をともに走るかけがえのない友達だ。
 その親友たちを、エンブリヲは汚そうとしている。
 彼女たちがこの男に組み敷かれ、蹂躙される光景を想像したとき。
 カッと、頭の真ん中が熱くなった。

「……こと」
「ん? 何だい、聞こえないよ凛」
「……そんなこと、させない!」

 身体を隠すなんて考えもどこかに吹き飛んでいた。
 全力でエンブリヲに向かって体当たりを仕掛ける。

「おやおや、積極的だな。待ち切れなくなったのかい?」

 エンブリヲが凛を迎え入れるかのように両手を広げた。
 何を勘違いしているのか、凛が自分から抱かれに来たと思ったらしい。
 抱きつく……と見せかけて、大きく横に切り返す。
 普段から走り込んでいる成果がここで生きた。
 スポーツ選手並とまではいかないまでも、エンブリヲの伸ばしたてをかい潜るには十分。
 頭から飛び込んだ先は、先ほどエンブリヲが放り捨てたデイバッグ。
 バッグの口を掴み、三度、今度は全力で開いた。

「お願い……っ! あいつを、やっつけて!」

 飛び出してきた全裸の男は、血走った眼を凛に向けて……だが力強く頷くとエンブリヲを睨みつけ、喉も枯れよとばかりに咆哮した。

「ペルソナァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!!!

 青年の目前にかぼちゃをかぶった小さなぬいぐるみ……のようなものが現れ、手に持ったランプを掲げる。
 瞬間、そのランプから、紅蓮の炎の渦が迸った。

「ああああああああああああああああああああああああっっっっっっっ!!!!!」

 怒号が鳴り響き、噴射された炎がエンブリヲを呑み込んでいく。
 火勢は衰えず、そのまま壁を焼き消して夜の空を赤く照らし出す。
 ガスの炎など比べ物にならない、まるで火山の噴火の如き圧倒的な狂熱が、凛の眼前を駆け抜けていった。


「……ぁぁあぁ……っあ、か、あ」

 炎が途切れるとともに、青年は糸が切れたかのように倒れる。
 叫びとともに体力をも絞り出したか、その顔色は青いを通り越して土気色だった。
 エンブリヲが「暴れられて困る」と言ったから、この場を切り抜ける唯一の道だと信じて凛は彼を解放した。
 しかし、まさかここまでとは。どうやってあんな炎を出したのかはわからない。
 それでも凛は、エンブリヲのような得体のしれない恐怖をこの青年には感じなかった。
 エンブリヲは炎に呑み込まれ、いない。死んだのだろうか。努めてそれを考えないようにして、凛は倒れた青年に近づいていった。

「ねえ、大丈夫!?」

 自分も彼も全裸であるが、躊躇いなくその傍に膝をついて揺さぶってみる。起きない。
 建物は内部から吹き飛ばされ、空が見えている。よほど高温だったのだろう、壁はドロドロに溶けてアメのように滴っていた。
 風が凛の髪を揺らす。だがしばらくは、この熱気は冷めそうにない。
 しかし……助かった。人のカタチをした悪魔はもういない。
 凛の命も貞操も、ひとまずは救われたのだ。
 とりあえず青年の介抱をしようと、何か彼の汗を拭けるものがないかと周りを見渡して。

「やれやれ、せっかくいい部屋を見つけたのにな。悠には困ったものだよ。
 油断も隙もないとはこのことか。快感に翻弄されながらも、私に一矢報いる好機をずっと待っていたんだろうね」

 ベッドに足を組んで腰掛けるエンブリヲがいた。
 温まりかけていた血が瞬時に冷えていく。
 エンブリヲには傷一つなく、その表情には何の焦りもない。

「だが、空が見えている部屋で……というのも悪くない。籠もった熱気も風が流してくれるからね」
「な……なん、で……?」

 にこやかに、だが二度目はないとエンブリヲは笑う。
 今度こそ万策尽き、凛は抵抗の意思すら奮い起こせなかった。
 ゆっくりと近づいてくるエンブリヲから逃げようともせず、呆然と青年の手を握る。

「ああ、悠はしばらく起きないよ。あれだけの力を放ったんだ……相当疲労しているだろう。私と同じように。
 これでもう、私と凛の邪魔をするものはいないというわけさ」

 近づいてくるエンブリヲ……得体のしれないナニカ。

「人間じゃ……ないの……?」
「そうだね。人間というくくりにカテゴライズされるのは甚だ遺憾だ。かといって、神とはもう言われ飽きている。
 創造主、と言いたいが君や悠は私の生み出したホムンクルスではないようだ。だからここでは調律者と名乗っておこう」

 量子の揺らぎを支配し、次元を渡る能力を得た不死の存在。
 凛にその正体を看破することなど、できるはずもなく。


「さあ。もう邪魔者はいない。始めよう、凛」
「あっ」

 腕を取られ、乱暴にベッドに放り投げられた。
 長く伸ばした艶のある黒髪が花のように広がる。
 力の入らない手で何とか身体を隠そうとするも、エンブリヲの手によって阻まれる。
 全身を舐め回すような、男の無遠慮な視線。群れた汗の匂いを嗅がれて、吐き気がする。
 いつもアイドルのことを第一に考えてくれるプロデューサーとは違う。
 獣欲を満たすことしか考えない、エゴに塗れた男の暴力。

「いやぁ……止めてよ……!」
「可愛いよ、凛。さあ、一つになろうか」

 そして、エンブリヲが腰を進める。
 凛の中心、未だ誰にも許したことのない最奥へ向けて。

「いや……いや……いやあああああああぁぁぁっっっ!」

 絹を裂くような凛の悲鳴に、エンブリヲはこれ以上ないほどに頬を歪ませ――

「ぐわああああっ!?」

 そして、絶叫した。
 次の瞬間、全裸の男が吹き飛ばして吹き抜けとなった外壁から、疾風のように蒼い影が滑り込んできた。
 エンブリヲが振り向くのと、その影が光を閃かせるのはまったく同時。
 一瞬の静寂の後、声を上げていたのはエンブリヲの方だった。
 呆然とする凛に構わず、影はエンブリヲにさらに接近。
 再び光が閃くも、エンブリヲはその瞬間幻のように消えて、数メートル離れた場所へと移動していた。

「ぐぐ、ぐ……お、おおおお……! き、き、貴様ァ……!?」
「そのような無様を晒しておきながら調律者などと、笑わせてくれるものだ。これからは道化と名乗ったらどうかね」

 凛を庇うようにエンブリヲと向かい合う、その影は。

「私はキング・ブラッドレイ。故あって、貴様を斬りに参った者よ」

 月光を弾く細剣を優美に構える、隻眼で壮年の男だった。


  ◆


「いやぁぁぁああああああーっ!」

 甲高い嬌声が耳をつんざく。
 一人夜の街を往くキング・ブラッドレイは、どうやら三番目の参加者と遭遇したようだ。
 そっと腰を下ろし、建物の影に隠れて気配を殺す。
 やがて声が大きく、そして騒がしく近づいてきた。

「離して、離してよっ!」
「待ってくれ、俺は怪しい者じゃない! 暴れないでくれ!」

 どさっ、と何か重いものが地面に落ちる音。
 ブラッドレイは刺剣に指を絡ませつつ慎重に近づいていく。

「寄るなぁーっ、この変態! あんたもさっきの変態の仲間なんでしょ!?」
「なっ、違う! あいつは俺の敵だ! 君に危害を加えるつもりなんてない!」
「信じられるわけないでしょ! さっきのあいつだって、最初はそう言って近づいてきたんだから!」
「それは……ああ、もう! とにかくそのナイフを下ろすんだ! 素人が触っていいものじゃない!」

 ブラッドレイが騒動の現場に辿り着いたとき、そこには青年と少女がいた。
 尻餅をついている少女が小型のナイフを青年に突きつけている。
 対峙する青年は、同型と思われるナイフをさらに二振りベルトの後ろに差し込んでいたが、それを抜く素振りもなく。

「とにかく、落ち着くんだ。俺は君の敵じゃない」
「ち、近づかないでよ! 鳴上くんはどこ!?」
「……彼は、あの場に残った。おそらくエンブリヲに捕まっている」
「見捨ててきたの!?」
「仕方なかったんだ! 向こうは銃を持ってたし、君も彼も自分で動くことはできなかっただろう!
 彼には悪いと思っているが、どちらか一人しか……助けられなかったんだ」

 凶器を突きつけられてもなお辛抱強く、青年は少女の説得を続ける。
 ひと目で動転していると分かる少女は、瞳を激しく泳がせながらもナイフを下ろす気配はない。

「あいつ、エンブリヲは、人を遙かに超越した力を持っている。
 君も実際に体験したと思うが、他人の感覚を操作したり、空間を自在に跳躍したりできる。
 もっとわかりやすいので言えば、不死だ。あいつは通常の方法ではどうやったって殺すことはできない」


 続く青年の言葉に、様子を窺っていたブラッドレイの眉がぴくんと跳ねる。

「ハイゼンベルクの悪魔、あるいは不確定世界の住人。
 あいつはおよそ万能と呼べる力を持っている。あの場で無理に君たちを救出しようとしていれば、間違いなく俺も殺されていただろう。
 それを俺は……いや、その鳴上という彼はわかっていたからこそ、俺に君を連れて逃げろと言ったんだ」
「でも……!」
「わかってる。彼はおそらく、エンブリヲの拷問を受けているだろう。だが、すぐには殺されないはずだ。
 彼はエンブリヲともマナとも違う能力を持っていた。あれはエンブリヲの気を引いただろう。少なくともあの力を分析し終えるまでは、彼は生かされる」
「ほ、本当に?」

 鳴上某というのが彼らの三人目の同行者、ということか。
 その鳴上はエンブリヲという敵対者に捕獲された。この二人が言い争っていたのはそれが原因とブラッドレイは推察する。

「ああ、賭けてもいい。それに、俺も彼をこのままにしておく気はない。アンジュやヒルダ、モモカ……仲間と合流して何か手を考える。
 エンブリヲを殺すことはできなくても、動きを封じる方法を。そして必ず、彼を助けに行く。だから、俺を信じてくれないか」

 ゆっくりと、それこそ第三者の視点で観察しているブラッドレイにしかわからないくらい僅かな体重移動で、青年は少女との距離を詰めていく。
 その歩法はブラッドレイをして感嘆せしめるほどに見事。何らかの武芸を高い領域で修めているのは間違いない。
 正面から向かい合っている少女には、青年がじりじりと距離を詰めていることに気付いてはいないだろう。

「そうだ、まだ名乗っていなかったね。俺の名はタスク。君の名前も教えてくれないか?」
「ほ、ほん……待って! まだ信用できない! 私、さっきあんたに襲われたじゃない!」
「え?」

 虚を突かれた青年、タスク。少女の弾劾は続く。

「鳴上くんとも、あの変態とも会う前! 私が最初に会ったのはあんただった!」
「何を言って……いや、そうか。あいつめ……!」

 タスクが苦々しい顔で舌打ちする。思い当たる節でもあるかのように。

「それもエンブリヲの力だ。あいつは近距離、極短時間でなら、複数体が同時に存在することができる。
 そのとき俺の容姿だったのもあいつの力かどうかはわからないが」
「他人を操作できるとか、死なないとか、次は分身!? わけわかんないよ!」
「待ってくれ。そのとき君は、俺の姿をしたそいつに襲われてどうやって切り抜けたんだ?」
「それは、鳴上くんが助けてくれたから」
「彼か。つまり、あの巨大な人形みたいなやつを出したんだな。じゃあ、俺の偽者は何か武器を使ったか?」
「え、ええと。たしか、落ちてた石を拾ってた、かな」

 記憶を辿りながら応えた少女に微笑みかけ、タスクは腰の後ろからナイフを二本引き抜いた。
 少女が警戒する前に、その足元へと放り出す。


「じゃあ、やっぱり俺じゃない。俺にはそのナイフが支給されていた。
 俺があの人形を相手にしようと思ったら、石なんかじゃ頼りなくてとてもじゃないがそんな真似はできないよ」
「え……じゃあ、ほんとに別人?」

 理のあるタスクの言葉にか、あるいは武器を自ら放り出したその潔さにか。
 乱れていた少女の息がようやくの落ち着きを見せ始めた。

「おそらくあいつは、俺の姿をした分身に君を襲わせ、そこを自分が助けることで君の信頼を得ようとしたんだろう。
 同時に俺の悪評も広められる。とは言え、その鳴上が来なければ君は本当に、その……襲われてたと思うけど」
「う……それは、たしかにそうかも。あいつ何回も私の服に手を伸ばしてきたし」
「あいつはあの通り、女に見境がない。なまじ凄まじい力を持っているものだから、倫理観や良識なんて持ち合わせていないんだ。
 おそらく君のことも鳴上のことも、自分の欲望を満足させる道具としか思っていなかっただろう」
「……はあ。私、ほんとに危なかったんだ……」

 少女が放心したように空を見上げる。星のない、真っ暗闇の空を。

「なんで私、こんな目に遭ってるの?」
「ごめん、その質問には俺も答えられない。俺も状況が理解できていないんだ。
 でも約束する。俺は君を絶対に傷つけないし、他の誰かに襲われたら全力で守る。今だけでいい、俺を信用してくれないか?」
「……うん、落ち着いた。ごめんなさい、あなたは私を助けてくれたんだよね。
 私、本田未央。よろしく、タスク……くん」

 ほうっと大きく息を吐き、少女が無理やり笑ってみせる。
 笑顔とはとても言いづらいが、それでもたしかにその顔から敵意と警戒は消えていた。

「わかってくれればいいんだ。よし、まずはそのナイフを返してくれ。
 見たところ刃物の扱いは不慣れのようだし、君が持っているべきじゃない」
「あ、うん。ごめんなさい。返すね……あれ? 何だろこの出っ張り」
「え? ちょ、それは」

 ビィィィィィン!
 離れたところにいるブラッドレイにも届く、空気を震わせる音。
 一秒後にはその空気が切り裂かれる。未央が握り締めていたナイフから刀身だけが発射された。
 瞬間、タスクが驚くべき反応速度で屈んだ。その頭上を目にも止まらぬ勢いのナイフが通り過ぎて行く。
 柄の部分に強力なスプリングを内蔵し、いざとなれば刃先を瞬時に射出できる戦闘用のナイフ。それがタスクに支給された武器。
 もちろんタスクはその機構を知っていたので、未央が何気なくギミックのスイッチを押し込んでしまった瞬間に伏せ、ぎりぎりのところで回避できた。
 未央に悪気はなかった。ただ単純に、偶然の結果としてスイッチを触ってしまったに過ぎない。
 ゆえにタスクに責める気はない。未央の行為が故意ではないとわかっていたからである。
 しかし、物陰で見ていたブラッドレイはそうもいかなかった。
 自分に向かってきたものではないとはいえ、紛れもなく殺傷力を秘めた武器が放たれたのを見て、僅か……ほんの僅か、隠形が緩んでしまった。


「っ、誰だ!?」

 そしてその緩みを、タスクは見逃さない。
 伏せていたタスクが四肢を巧みに瞬転させ、落ちていたナイフを両手に拾い上げた。
 同時にぽかんとしていた未央を引き倒し、自分がその上に膝立ちで覆い被さることで彼女の安全を確保。
 タスクは寸分の狂いなく、ブラッドレイが潜んでいた建物の影に視線を投げていた。完全に察知されている。

「……驚いたな。あの僅かな気当たりで、私を見つけ出したか」

 こうなればもはや隠れている意味は無い。
 ブラッドレイは両手を挙げ……と言っても、タスクと同じく瞬時に全方向に回避できるよう、足運びを整えた上で、二人の前に姿を晒す。
 タスクは両手に構えたナイフをブラッドレイに突きつける。少女に接していた時の柔らかい笑顔はそこにはない。
 生と死の間を潜り抜ける戦士の眼だ。つまりは、ブラッドレイにとっても油断ならない相手ということになる。

「今度は私が言う番なのかな。落ち着いてくれたまえ、タスクくん。こちらに戦闘の意思はない」

 だが、ブラッドレイは先に剣を抜かなかった。
 無論、戦えば勝つ自信はある。
 機知に富み、場馴れしているであろうタスクとやり合うのは一方ならぬ苦戦が予想されるが、それでも強敵というほどではない。
 タスクの武器はもう種が割れてしまっている。奥の手がある可能性もないではないが、エンブリヲという輩との戦いで持ち出さなかったのなら、真実、武器はあのナイフだけなのだろう。
 そして、近接戦ならブラッドレイの上を行く者はいない。人間、錬金術士、ホムンクルス、そして魔法少女という未知の存在が相手でも、それは変わらぬ強固な自負だ。
 そのブラッドレイが当初の方針を曲げてタスクとの接触を求めたのは、彼の発言に大いに興味を惹かれたからに他ならない。

「私は君たちと話がしたい。武器を置いてくれないか?」
「……あいにく、ひと目で一戦やらかしたとわかる人間をおいそれとは信用できない。
 それに、俺より強い相手を前にして、武器を置けというのも受け入れられないな」

 先の、美遊と呼ばれていた魔法少女との一戦はブラッドレイの身体のあちこちに傷跡を残している。
 脱ぎ捨てた軍服はあの後戻って回収し、裾を切って応急処置に用いたのだが、あちこちが焼け焦げている。
 何より刺剣だ。鞘がないこの剣はベルトに抜き身で差しているのだが、刀身には美遊の返り血と脂が僅かにこびりついていた。
 軽く拭いはしたものの、研ぐなり油を挿すなり本格的な処置をしなければ全ては落とせない。
 だがその不手際を責めるよりも、夜の不自由な視界でそれを見て取ったタスクの抜け目なさを褒めるべきだろう。
 ブラッドレイの鍛えられた筋肉、隙のない足運び、何よりその身に纏う触れれば裂けるような空気。それらは全て、闘争を日常とする戦士特有のもの。
 タスクは一瞬で彼我の戦力差を理解してしまったのだ。

「これか。まあ、言い訳はせぬよ。さきほど好戦的な輩に襲われてな。斬って捨ててきたところだ」
「っ、殺したのか?」
「そうせねばこちらが死んでいた。君ならばわかるだろう」

 この姿を見れば。
 腕の出血、炎で炙られたかのような軍服。尋常ならざる相手だったと、タスクなら確実に推測できると踏んで、詳しくは説明しない。

「その、好戦的なやつの特徴は? 名前は?」
「ふむ。君の仲間であれば申し訳ないと思うがね。美遊、と呼ばれていたよ」
「ミユ……呼ばれていた? 仲間がいたのか」
「武器と喋っていたのだよ。魔法少女というらしい」
「は? 魔法少女?」


 険しく歪んでいたタスクの眉に疑問符が浮かぶ。
 それはそうだろうとブラッドレイも思うが、こればかりは嘘をついても仕方がない。元よりブラッドレイの知識の範疇にもない存在だ。

「うむ。いや、誇張ではない。空を飛び、炎を放ち、光熱波を放つ。
 見えなかったかね? 先ほど中々派手に光ったのだが」
「……さっきのあれか」

 近辺のエリアにいたのならば、美遊が最後に放った騎英の手綱(ベルレ・フォーン)という光を目撃していてもおかしくはない。
 目ざといこの青年はやはり、それを目撃していた。

「どういった理由で襲ってきたのかは知らんが、私とてむざむざ命を落とすつもりはないのでね。
 君がそれを咎めるのであれば……残念だが、話はできないということになるな」

 その場合は実力を以って……と、匂わせたわけではないが。
 タスクもまた、他の参加者との接触を必要としていたのは嘘ではない。
 息を吐き、警戒を緩めた。

「……わかった。まずは、話をしよう」
「うむ、助かるよ。ところで」

 コホン、とブラッドレイの咳払い。

「その体勢は如何なものかな。健全な男女交際というにはその、いささか過激すぎるのではないかね?」
「へ?」

 と、ここでタスクは自分がどのような体勢でいたのかようやく認識したようだった。
 未央が先程からずっと黙りっぱなしなことも。
 タスクが視線を下げる。何もない。
 後ろを見てみる。未央の両足が伸ばされている。スカートがめくれ上がり、三角形の布地が僅かに晒されている。

「……きゅぅ」
「うわーっ! ごめん、そういうつもりじゃなかったんだーっ!」
「はっはっはっ。若さとはいいものだ」

 男性の局部をズボン越しの間近で押しつけられ、漂ってくる匂いやら想起されるイメージやらで未央は完全に失神していたのだった。


  ◆


「まったく度し難いな。若い婦女子を手篭めにしようだなどと」
「き、貴様、な、何……者だ!?」
「言ったはずだ。故あって貴様を斬りに来た、と。どの縁かは、それでわかるだろう?」

 ブラッドレイが剣先で一点を指し示すその先は、エンブリヲ自身。
 固く膨れ上がった怒張の中ほどが、鋭いナイフに真横からぶっすりと刺し貫かれていた。

「ぐ、く……ぐうおおおっ!」

 全裸のエンブリヲが、自分自身からナイフを引き抜き投げ捨てた。
 その形状には見覚えがある。数刻前にやり合った仇敵、タスクが構えていたナイフだ。
 ブラッドレイは未央が発射したナイフの刀身だけを借り受け、凛を陵辱しようとしていたエンブリヲに向かって投擲したのだった。

「また、あのサルの差し金かァ……!」
「何がしかの真理を得たか、多少は異能を扱うようだが。それを扱う貴様自身があまりに愚昧。
 欲望にかまけて私の接近に気づかぬようではな。タスクという若者は私に気付いてみせたぞ」

 ブラッドレイは来ていた軍服の上着を脱いで凛に掛けた。
 応急処置のため裂いたり焼け焦げたりしているが、全裸よりはマシだ。

「あ、あの?」
「じっとしていなさい」

 言い捨て、ブラッドレイはふわりと床を蹴る……疾走を始める。
 瞬きの間にエンブリヲの眼前に到達し、刺剣を突き出す。
 しかし刃が首を刎ねる寸前、エンブリヲが掻き消える。
 その瞬間、ブラッドレイは自分の後ろへ向かって足を蹴り出した。

「ぐぅっ!?」
「それが貴様のお家芸か。種が割れれば陳腐なものだな」

 背後に転移し、ブラッドレイの感覚を操作しようとしたエンブリヲ。
 しかしその目論見は、後方を確認することもなく放たれた蹴りによってあっさりと阻まれる。

「ごっ……!?」
「鈍いな。私がタスクと関係がある時点で、貴様の能力も理解しているにきまっているだろう」

 エンブリヲが空間を支配して転移することも、人に触れることでその感覚を暴走させられることも、ブラッドレイは既に知っている。
 こちらからの攻撃を転移で回避すれば、間違いなくエンブリヲは背後から仕掛けてくる。タスクはそう言っていた。
 ブラッドレイは、エンブリヲが目前からいなくなった瞬間に刺剣を横にして目の前にかざした。
 その細い細い刀身に、月明かりでほんの僅か映し出された後方のゆらぎ。
 銃弾すら止まって見えるブラッドレイの「最強の眼」を以ってすれば、転移終了の前兆を読み取ることは赤子の手を捻るがごとく。
 前方であれば最強の眼で、後方であっても刺剣と最強の眼の組み合わせで、全方位をカバーする。
 転移が終わりエンブリヲが実体化した瞬間を狙うのはわけもないことだった。


「では首をもらおうか」

 躍りかかるブラッドレイ。蹴りが急所に入ったか、エンブリヲが激しく咳き込みながら、いつの間にか拾い上げていた自身のデイバッグへと手を突っ込む。
 取り出したのは金属製の柄。エンブリヲの指が踊ると、その先端から光が飛び出した。
 ブラッドレイの斬撃は、その光によって受け止められる。
 実体のある刺剣と実体のない光剣だが、刺剣は溶断されるということもなく光剣とせめぎ合っていた。

「ほう、これはまた斬新な剣だな。それも貴様の能力か?」
「調子に乗るなよ、このサルが!」

 エンブリヲがもう片方の手でデイバッグから拳銃を取り出し、ブラッドレイに突きつける。
 その瞬間ブラッドレイは、剣を握る手元を僅かに引く。力任せに光剣を押し込んでいたエンブリヲはバランスを崩し、身体が流れる。
 一瞬の間にバックステップ。次いでエンブリヲから連続して銃弾が放たれる。
 軽く踏み出せば剣の届く至近距離。そんな状況で放たれる必殺の弾丸は、発射され射線に乗る前にすべて、叩き落とされた。
 縦横に踊り閃くブラッドレイの刺剣によって。

「バカな、この距離で……!?」
「能力を使えなければ、生身の戦闘はタスクくんには遠く及ばんな」

 エンブリヲが動かす銃口の先と寸分違わず……いやそれ以上の速さで刺剣が閃く。
 照準が完全に先読みされていた。

「こ、の……化け物が!」
「同じ言葉をそのまま返そう。この程度か? 人間ですらない化け物よ」

 瞬時に全弾を撃ち尽くし、カチカチと虚しい音を響かせるエンブリヲの拳銃。
 弾切れをエンブリヲが認識した時には既に、ブラッドレイがその懐へと飛び込んできている。

「ぬおおおあああっ!?」

 宙を待うエンブリヲの片腕。しかしエンブリヲもさるもの、ブラッドレイが剣を振り抜いた隙を逃さず、気息を整え転移を強行。
 続く袈裟切りの追い打ちを避けることに成功していた。
 再び現れたエンブリヲは荒い息を吐き、ブラッドレイを喰い殺さんばかりに睨みつけた。

「こ、の……下等種の分際で私の身体を……!」
「そうやって見下ろすから、見落とすのも当然というもの。私がどうやってここに辿り着いたと思っている」


 ブラッドレイは落ちてきたエンブリヲの腕を空中で細かく寸断した。
 声もなく事態の進行を見つめる凛には、その斬線の軌跡すら眼では追えない。
 示し合わせたように、光剣の柄がブラッドレイの手に収まる。

「ふむ?」

 エンブリヲへの警戒を一切緩めぬまま、装置を弄る。
 光が消え、また点き、消える。簡単なスイッチ操作で光の剣が出現すると知ったブラッドレイは満足気にそれを片手で握る。
 右の刺剣、左の光剣。鳥が翼を広げるように、大きく両腕を広げて構えた。

「先ほどの豪炎。この近くにいれば嫌でも目に入っただろう。
 察するにそこの若者の仕業であろうが、アレのお陰で私はここに来ることができた」
「ぬうう……」
「わかるか? 貴様は人間を見下しながら、その人間に足を掬われているのだ。調律者が聞いて呆れるな」

 エンブリヲに支配されながらも渾身の力で炎を放った鳴上悠
 恐怖に打ち克ち逆転の一手を導いた渋谷凛。
 その積み重ねがあったからこそ、ブラッドレイはこうしてエンブリヲを追い詰めている。

「貴様の底は知れた。では……斬って捨てる」

 思わず底冷えするほどに、何の感情も込められていない殺害宣言が放られた。
 憎いからとか怒っているからとか、そんな感情的な理由ではない。
 これから歩く道の上にいるから排除する。これ以上ないほど事務的に死刑を宣告し、剣の双翼を構えたブラッドレイが飛び出していく。

「……!」

 エンブリヲの銃が火を噴く。ブラッドレイは大きく飛び退くことで弾丸を回避。
 その隙にエンブリヲは鳴上悠を引っ掴んで転移した。
 瞬時に光剣を消し、刺剣を鏡に周囲を探るブラッドレイ。
 十秒、二十秒……一分二分と過ぎてなお、エンブリヲは現れなかった。

「退いたか」

 安全を確認し、ブラッドレイは剣を収める。
 風が残る熱気を吹き払い、沸騰した戦場に残ったのはキング・ブラッドレイと渋谷凛、二人だけだった。


  ◆


「ねえタスクくん、ほんとにあのおじさん一人で大丈夫かな?
 私たちも……てか、タスクくんも一緒に行ったほうが良かったんじゃ」
「そうすると未央、君を守る人がいなくなる」

 ブラッドレイと別れた未央とタスクは、街を離れ島中央部の図書館へ向かう道を歩いていた。
 市街地にはエンブリヲやブラッドレイが遭遇したような強力な参加者がいる可能性が高い。
 そのため一度街から離れ、安全を確保できる施設で朝を待ちつつ仲間と合流するということになった。

「それに……あの人は強い。多分、やり合ったら俺は何もできずに殺されると思う」
「軍人って言ってたもんね」
「すごく鍛えてるみたいだけど、それだけじゃない。何ていうか、もっと得体のしれないものを秘めてるような、そんな感じがする」

 タスクの脳裏に、ブラッドレイの好々爺然とした顔が思い浮かぶ。
 しかし長く戦いに身を置いてきたタスクには、あの柔和な表情の裏に計り知れない魔性が潜んでいる気がしたのだ。
 ファーストコンタクトを切り抜け、ブラッドレイと情報を交換したタスクたち。
 話がエンブリヲに捕まった鳴上悠に及んだところで、ブラッドレイが彼の救出を名乗り出たのだった。

「では、私が行ってその鳴上青年を助けてこよう」
「いいんですか!?」
「なに、先ほど怖がらせたお詫びだよ。それを以って信頼してくれ、というわけではないが」

 鷹揚に笑いエンブリヲの情報を求めるブラッドレイに、タスクは知りうる限りの情報を開示した。
 その流れでタスクの恋人にして主たるアンジュにも話が及んだ。
 タスクは自分と彼女の関係を適当にぼかしつつ、ブラッドレイに捜索を頼んだ。

「俺なら、道具と内部の解析情報があればこの首輪を外せると思う。それにアンジュなら、この街というかこの世界から抜け出すこともできるかも」
「ほう? 具体的にはどうやって?」
「ヴィルキス……アンジュのパラメイルだけど。一言で言えば、巨大な人型の機械だ。あれにアンジュが乗れば次元跳躍が可能になる。
 もちろんそんなものを使わせたら殺し合いにならないから、広川になにか細工をされて呼べないようにされてると思うけど」
「ふむ。首輪を外すのは君が。この島から抜け出すのにはそのアンジュ女史が、それぞれ必要になるということか」


 無論、会ったばかりかつ剣呑な雰囲気を隠しもしないブラッドレイにアンジュのことを頼むのは、気がかりでないわけではない。
 しかしアンジュはあの気性だ。何も知らせずに遭遇すればブラッドレイに食って掛かり、あまつさえ先制攻撃を仕掛けるかもしれない。
 そうなったら終わりだ。上下か左右か、とにかく彼女だったものの残骸が二つできあがるだけだろう。そうさせないために、あえてアンジュの情報を知らせた。
 仮に敵対したのだとしても容易に命を奪えないよう、この殺し合いからの脱出には不可欠の人物であるという価値もつけて。
 もし彼女に危害を加えるなら、自分も首輪の件では絶対に協力しない。その意図は間違いなくブラッドレイに通じているだろう。
 後は祈るしかない。ブラッドレイが本当に善良あるいはさほど好戦的ではない人物で、殺し合いに意欲がなく、純粋に脱出を目指している御仁であると。
 未央には言えないが、タスクはブラッドレイを仲間だとは思っていない。
 本当に悠を救出してくれるならそれもよし、エンブリヲの前に散るのだとしても痛手を与えてくれるならそれもよし――そういう目論見もある。

「それにしても……なんであいつ、まだ生きているんだろう」
「あの変態のこと?」
「うん。俺たちはたしかにエンブリヲを倒したはずなんだ。でもあいつは生きていた。
 もしかしたら他にもあいつの同位体がいて、消滅を免れたのか。でもどうもあいつの様子じゃ、あの戦いのこと自体覚えていなさそうだった。
 あいつがこのバトルロワイアルというのを画策したんじゃないかって思っていたけど、違うようだしなあ」

 これについては情報が足りない。そもそもにして、マナやノーマやドラゴンを知らない未央や悠という存在がいる点も見逃せない。
 広川という男はあるいはエンブリヲ以上の力を持っているのか。
 薄ら寒いものを感じながらも表情には出さず、タスクはさりげなく未央を警護しながら図書館へ向かう道を往く。
 とにもかくにも、まずアンジュとの合流だ。モモカ、ヒルダといった仲間たちとも急ぎ再会したい。
 サリアについてはタスクはさほど面識がないのだが、最後は一緒に戦ってくれた。ここでも敵ではないだろう。
 タスクの二歩後ろを歩く未央は、落ち着いたとはいえ不安を隠せない。
 夜の道を歩くだけで落ち着かなくなるのは、荒事に慣れていない普通の人間なら当然だ。
 彼女らが巻き込まれたのには、広川の度が過ぎる悪辣ぶりを感じざるを得ない。
 改めてエンブリヲと広川打倒を誓いつつ、未央の友人も無事であってくれと願いながら、タスクはひたすら前へと進んでいく。


  ◆


「下等なサルどもが、この私を……っ!」

 誰もいないジュネスの屋上に転移したエンブリヲは、苛立ちの捌け口として未だ気を失っている鳴上悠を思い切り蹴りつけた。
 二度三度繰り返す。が、悠は何の反応もしない。完全に気絶していた。

「ちぃっ……これ以上は本当に危険か。よほど体力を消耗しているようだな」

 そう言うエンブリヲとて、ブラッドレイから逃げるために連続して転移してきたため疲労困憊だった。
 しばらくは休息に専念しなければ、ブラッドレイは愚かエドワード・エルリックなる小さな少年にも敗北は必至だろう。
 不満気に鼻を鳴らし、エンブリヲは屋上フードコートの椅子にどっかりと座り込んだ。
 まずは治療から始めねば。万全の状態であればブラッドレイごときに遅れを取りはしなかった。
 さきほどは局部の痛みを緩和するために自身の感覚を麻痺させていた。
 そのためうまく集中し切れず、転移や感覚操作といった慣れた能力しか使えなかったために敗北したのだ。
 もはや慢心はない。次こそ必ず、タスクもブラッドレイも、チリひとつ残さずに消滅させると固く誓う。
 貫かれたシンボルを大事そうに撫で、切り落とされた腕の断面を撫でる。
 両者ともゆっくりと再生が始まっている。一撃で命を落としさえしなければ、どんな傷でも回復できるのは変わらないようだ。

「まずは手駒を集めねばならんか」

 しばらくはここで回復しつつ、こちらに向かってくるはずのモモカを待つ。
 悠は感覚操作を解いてやった。彼の今の状態で刺激を与え続ければ、直に理性が吹っ飛んでしまうだろう。
 手近にあった紐で両手足を縛りその辺に転がしておく。

「そうだ、サリアもいたな。あれならいい鉄砲玉か、弾除けになるだろう」

 名簿にあるもう一人の下僕の名を思い出し、エンブリヲは思い描く。
 自分に従順になるよう調教した、アンジュには一枚も二枚も及ばないおもちゃのことを。
 アンジュがこの手に落ちるまでの僅かな期間だが、彼女を愛してやるのも悪くはない。
 というか、アンジュと凛と二度もお預けにされたので誰でもいいので思う存分欲望を発散したいと、そう願うエンブリヲでもあった。


  ◆


「さて、渋谷凛くん、でよろしいかね?」
「あ……はい。そうです」

 凛の前には、ブラッドレイがいる。
 軍人は自分に背中を向け、裸身を見ないようにしてくれている。その間に凛は手渡された上着に袖を通し、とりあえず人心地ついていた。

「私はブラッドレイ。君の友人、本田未央と言ったか。彼女から君の捜索を依頼されている」
「未央が……! 未央は無事なんですか!?」
「信頼できる人間と一緒だ。彼女のことは安心していい。今からそこに送っていく」

 突然現れたブラッドレイと名乗る老人。老人というにはいささかエネルギッシュすぎる気もするが、助けられたことは紛れもない事実だった。
 さらに彼は本田未央とも会っているという。バトルロワイアルに放り込まれてからずっと振り回されてきた凛だが、ようやく状況が好転しそうだとほっとする。

「さて、あまり長居している時間はない。さっきの、鳴上悠という青年が派手に炎を吹かしてくれたおかげで私もここに来れたが、他にもアレを見た者がいるかもしれん。
 面倒なことになる前に引き上げた方がいいだろう」
「あ、はい……あの」

 月を見上げ、ブラッドレイは眼帯を装着している。
 凛はその横に並び、問いかけた。

「さっきの……エンブリヲ、は?」
「逃げたようだ。さてどこに行ったのかまではわからん。追う術もないしな」
「そう、ですか」
「乱暴されそうになったのだから、やつを憎もうとする気持ちはわからんでもない。
 だが、やめておくのが懸命だ。何の力もないただの人間が立ち向かえる相手ではない」

 真実、それはブラッドレイの親切心からの忠告だった。
 エンブリヲの魔手からある程度逃げ延びていたのだから、心根が強い少女だというのはわかる。
 しかし蛮勇と勇気は違う。太刀打ちできない相手にそうと知っていて向かっていくのは自殺行為という他ない。
 ブラッドレイは己がホムンクルスという、人間を超越し人間に敵対する存在であることを悔やんだことはない。
 しかし、絶望に負けず確固たる己の意思を貫く人間のことを、好ましいとも思う。
 そういう意味ではこの少女もあの青年も、エンブリヲなどとは比べ物にならない魂の強さを秘めている。
 惜しむらくは、その強さでブラッドレイに立ち向かってくることはない、ということか。
 宿敵として認めるほど強いわけでも、救ってやりたいと考えるほど入れ込んでいるわけでもない。しかし彼女の存在はタスクとの交渉のカードになる。
 故に、ブラッドレイは足手まといになると知りつつも彼女をタスクらのところまで連れて行ってやるつもりだった。

 しかし――


「……あの、間違いだったらすみませんけど。わざと、逃がしませんでしたか?」

 少女はブラッドレイの想像を超えて聡明だった。
 よほどの恐怖に直面したというのに、冷静にブラッドレイとエンブリヲの戦闘を観戦し、そして自分なりに分析しているほどに。
 しん、と静寂。顔を傾け、眼帯をした方の瞳で、ブラッドレイは凛を見る。

「何故、そう思う?」
「あ、あの……何となくそう思っただけなんですけど。でも何ていうか、最後、撃たれたとき」

 凛は、確固たる根拠があって言ったわけではない。
 胸の片隅にあったほんの僅かな疑問。いつもなら黙って通り過ぎるだろうそれを。
 死地を切り抜け、友人と再会できるという昂揚が、つい口を滑らせた。

「あなたのその眼なら、後ろに避けなくても斬って落とせたんじゃないかなって」

 ぽつりと、引き金となる言葉を、言ってしまった。
 風が吹く。
 熱は過ぎ去り、ここにはもう灰しか残っていない。
 凛とて別に、真剣に疑問の答えを聞きたかったわけでもない。ただ言ってしまっただけだ。

「す、すみません変なこと言って。行きましょうか」

 失敗したか、と気まずげに声を大きくし凛が促す。
 その背中に、ブラッドレイは一つ尋ねてみることにした。

「凛くん。一つ、いいだろうか?」
「は、はい」
「君は何故、自分がここにいると思う?」
「えっ……?」

 哲学的な質問を投げられたのかと、顔中に疑問符。
 しかしブラッドレイはそうではないと苦笑する。

「単純に、この殺し合いに何故巻き込まれたのか、ということだ。
 君については未央くんから簡単に聞いている。私やあのエンブリヲのように、戦いに身を置く者ではないことも」
「そんなの、わかりません……」
「私はこう思っている。君は、君らは……人間だから、なのではないかと」

 元より解答を期待したわけではない。
 ブラッドレイ自身がこの殺し合いについて考える所見を、この少女に聞いて欲しかっただけだ。

「人間だから?」
「うむ。私やエンブリヲ、そして美遊という少女……どれも純粋な人間を遙かに超越した力を有している。
 おそらく他にもそういった戦闘に特化した人間は数多くいるだろう。単に殺し合いをさせるだけであれば、そういう者たちだけを集めれば良い。
 君や先ほど会った園田という少女は、無力だ。力ある人間に出会えば無残に狩り殺されるのは目に見えている」
「それは……」

 凛が一般人と違うところは何かと問われれば、アイドルだから、としか返せない。
 歌や踊りでファンを魅了するエンターテイナー。夢の様な時間をファンと共有する存在……
 しかしそんなものは、殺し合いに放り込まれる理由としては考えるにも値しない。

「おそらくこの殺し合いは、人間とそうでない化け物との生存競争なのだろう。
 無論、一方的な殺戮にならぬような配慮はされているのだろうが。 
 しかるべき手段さえあれば、君が私やエンブリヲを打倒することも決して不可能ではない」
「生存、競争……」
「戦う意志を持たぬ者から脱落していく。あるいは、意志があっても力のない者から。
 広川という男が何を求めているのかはわからんが……そこで生まれる我らと人間との意志と力のぶつかり合い。
 おそらくは、そういうものを見たいのではないかな」

 ブラッドレイはこのとき、静かに眼帯を解きその眼を凛に見せつけていた。
 ウロボロスの刻印。世界を食らう蛇。六芒星を呑み込む者。
 人間ではなく、ホムンクルスであることを示す証。
 ブラッドレイを超人たらしめる最強の眼。剣よりも銃よりも信頼する武器。
 その眼で、渋谷凛を射抜く。

「あなたも……人間じゃ、ない……?」
「然り。そして、今から君を殺そうと思う」

 ブラッドレイは剣を抜き、愕然とする凛の眼前に突きつけた。

「当初の予定では生かしておくつもりだったが、この眼のことを知られてはな。
 鋼と焔の錬金術師がいる以上、私がホムンクルスであるのは遅かれ早かれ露見することではあるが……。
 それでも私の能力までは、未だ知らんはずだ。綻びは今の内に解消しておかなくてはな」

 ブラッドレイの認識では、エドワード・エルリックともロイ・マスタングとも、直接の交戦経験はない。
 例外は強欲のグリードを捕獲した際、アルフォンス・エルリックに戦闘を目撃されたことだが、あれとてブラッドレイの能力を特定する確たる根拠には至らない。
 渋谷凛を生かしてタスクらの信頼を得るメリットと、最強の眼の全貌が露見するデメリット。秤にかければ後者が勝った。
 故にブラッドレイは、ここで渋谷凛を斬ると決めた。
 凛は殺害を予告されてなお、逃げようとはしなかった。否、到底逃げきれるものではないと悟っていたからだ。
 エンブリヲと渡り合ったことで心身ともに消耗したことに加え、ブラッドレイの放つ圧倒的なまでの殺気。
 ブラッドレイにはエンブリヲのような遊びはない。殺すと言ったら必ず殺す男なのだと、本能で理解させられていた。


「最期に何か、言い遺すことはあるか? 希望するなら未央くんに伝えよう」

 どのみち最後には彼女も殺すが、と付け加える。
 殺す。何気なく口走られた、あまりに非現実的な言葉。
 テレビのニュースやドラマ、映画の中でしか聞かないような言葉をごく自然に吐ける。
 凛は眼前の男が凛や未央、卯月といった人間とは絶対に相容れない化け物なのだと、改めて悟った。

「私、は……私たち、人間は……」

 逃げられない。
 殺される。
 怖い。
 震える。
 涙が抑えられない。
 それでもたった一つ、胸に生まれたこの気持ちは嘘ではない。
 エンブリヲが未央や卯月たちについて口にしたときと同じ。
 大切なものを脅かされたとき、人間が生み出す炎のような感情――憤怒(ラース)。
 凛は胸に宿る怒りそのままに、ブラッドレイの造られた眼を見据え、宣言した。

「あんたたちなんかに、絶対負けないから」

 それが、最期の言葉だった。
 ブラッドレイの剣が少女の心臓を貫く。
 凛は眠るように目を閉じ、断絶を受け入れた。
 346プロダクション・シンデレラプロジェクトに所属するアイドルの渋谷凛は、そうして死んだ。

「死するとも、矜持は捨てず、か。成る程……」

 友へ伝える言葉ではなく、人間の敵への宣戦布告。
 物言わぬ屍となった少女から剣を引き抜く。
 そのまま首を斬り落とそうとし――何も斬ることなく剣を収めた。

「少女よ、見事なり。その気高さに免じて、これ以上の辱めは行うまい」

 首輪を外すためには、実物が必要だ。だがそんなものはこれから先、いくらでも手に入れる機会がある。
 たとえ最期の一瞬とはいえ、渋谷凛はブラッドレイに抗うほどの強い意志を示した。
 戦士ではない、アイドル。その輝きは、確かにブラッドレイを魅了したのだ。
 人間からホムンクルスに進化――あるいは堕落したブラッドレイにとって、人間が垣間見せるそうした魂の強さは何故だか眩しく思える。
 その憧憬が、少女の死に様を汚すことを良しとしなかった。
 凛の亡骸を抱え、ホテルを出て水辺へと歩み寄る。そのまま冷たい川へと分け入り、真ん中辺りで手を離した。
 蒼の少女が、水底へと沈んでいく。
 ブラッドレイはじっと、その眼を以ってしても少女の影が追えなくなるまで、見届けた。


 川から上がる。
 当初の予定とは違うが、得たものの多い一時だった。
 まず、エンブリヲの異能をこの眼で存分に確かめることができた。

「あやつめをプライドに食わせれば、我らの計画はさらなる完成を見る。もう人柱に拘泥する必要もないかもしれん」

 この場にはホムンクルスの長兄たるプライドがいる。
 捕食した者の記憶や能力を我がものとするホムンクルス。
 彼がエンブリヲを喰らえば、それで手に入る知識や能力は国家錬成陣の発動成功と伍するかもしれない。
 討とうと思えば討てたエンブリヲを見逃したのはそのためだった。

「とはいえ、この場では我らも無敵ではない。ともすればあやつも私も不覚を取る可能性は十分にある」

 タスクに首輪を外させてアンジュとやらを保護するのはその保険だ。
 当初の予定通り人柱二人を確保して元の世界に帰還する。
 あるいはエンブリヲから全てを簒奪し、その力を「父」に献上する。
 ブラッドレイとしてはどちらでも良い。
 そしてどちらにせよ、人間や他の化け物との衝突は免れないだろう。
 どのような展開になっても対応できるよう、プライドやエンヴィーとの合流を急ぐ。
 同時にこの忌々しい首輪を外す。最強の眼を使っているとき、一秒ごとに身体に重くのしかかる疲労を感じていた。
 可能性があるとすればこの首輪だろう。タスクがこれを外せるというのなら、それまでの間生かしておく価値はある。

「これも思えば錬金術では到底創造し得ない器物だ。実に興味深い」

 新たに入手した光剣をズボンのベルトに挟む。
 光剣は刺剣と渡り合えるほどの切れ味を持ち、なおかつ軽量で携行性も高い。
 惜しむらくは剣先に重量がないため微妙に扱いづらいことだが、ブラッドレイの技量なら問題なくカバーできる。
 そして奇襲性もある。近接戦の最中、突如として現れる二本目の剣に対応できる者は少ないだろう。

「何より……渋谷凛、か。中々、歯応えのある敵であった」

 強き人間を打倒した。それこそがある意味、この戦いでの最高の戦果だといえるかもしれない。
 彼女の亡骸はもう浮かんでくることはないだろう。川に底があるのか、あるいは奈落に続いているのか。
 どちらにせよ、彼女はもう誰の目にも留まることはない。
 その輝きは蛇によって呑み込まれたのだから。
 ブラッドレイは踵を返し、図書館へ向かう道を急いだ。
 タスクと未央に向けたカバーストーリーを頭の中で書き上げつつ、一人夜の道を往く。



【渋谷凛@アイドルマスター シンデレラガールズ  死亡】


【F-6/川岸/黎明】

【キング・ブラッドレイ@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
[状態]:疲労(極大)、腕に刺傷(処置済)
[装備]:デスガンの刺剣、カゲミツG4@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品、不明支給品0~2(刀剣類は無し)
[思考]
基本:生き残り司令部へと帰還する。そのための手段は問わない。
1:図書館に向かいタスクらと合流。稀有な能力を持つ者は生かし、そうでなければ斬り捨てる。
2:プライド、エンヴィーとの合流。特にプライドは急いで探す。
3:エドワード・エルリック、ロイ・マスタングは死なせないようにする。
4:有益な情報、技術、帰還手段の心得を持つ者は確保。現状の候補者はタスク、アンジュ。
5:エンブリヲは殺さず、プライドに食わせて能力を簒奪する。
[備考]
※未央、タスクと情報を交換しました。


【E-5/平原/黎明】

【タスク@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
[状態]:健康
[装備]:スペツナズナイフ×2@現実
[道具]:基本支給品
[思考・行動]
基本方針:アンジュの騎士としてエンブリヲを討ち、殺し合いを止める。
1:アンジュを探す。
2:D-5図書館でブラッドレイの合流を待つ。
3:エンブリヲを殺し、悠を助ける。
[備考]
※未央、ブラッドレイと情報を交換しました。
 ただしブラッドレイからの情報は意図的に伏せられたことが数多くあります。

【本田未央@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:健康、汗びっしょり
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・行動]
基本方針:殺し合いなんてしたくない。帰りたい。
1:渋谷凛、島村卯月、前川みく、プロデューサーとの合流を目指す。
2:D-5図書館でブラッドレイの合流を待つ。
[備考]
※タスク、ブラッドレイと情報を交換しました。
 ただしブラッドレイからの情報は意図的に伏せられたことが数多くあります。


【F-7/ジュネス屋上/1日目/黎明】

【エンブリヲ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
[状態]:疲労(極大)、右腕・局部再生中
[装備]:FN Five-seveN@ソードアート・オンライン
[道具]:ガイアファンデーション@アカメが斬る!、基本支給品×2
[思考・行動]
基本方針:アンジュを手に入れる。
1:悠のペルソナを詳しく調べ、手駒にする。
2:舞台を整えてから、改めてアンジュを迎えに行く。
3:タスク、ブラッドレイを殺す。
4:モモカ、サリアと合流し、戦力を整える。
[備考]
※出せる分身は二体まで。本体から100m以上離れると消える。本体と思考を共有する。
 分身が受けたダメージは本体には影響はないが、殺害されると次に出せるまで半日ほど時間が必要。
※瞬間移動は長距離は不可能、連続で多用しながらの移動は可能。ですが滅茶苦茶疲れます。
※能力で洗脳可能なのはモモカのみです。
※感度50倍の能力はエンブリヲからある程度距離を取ると解除されます。

【鳴上悠@PERSONA4 the Animation】
[状態]:失神、全裸、疲労(絶大)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・行動]
基本方針:仲間と合流して殺し合いをやめさせる。
0:…………
1:エンブリヲから逃げる。
[備考]
※登場時期は17話後。現在使用可能と判明しているペルソナはイザナギ、ジャックランタン。
※ペルソナチェンジにも多少の消耗があります。


※橋~音ノ木坂学院の間に騎英の手綱解放による光が走りました。
※廃教会~川の間にジャックランタン全力攻撃による炎が走りました。


時系列順で読む


投下順で読む


012:Brave Shine キング・ブラッドレイ 060:その一歩が遠くて
033:神の発情 エンブリヲ 062:マッド・スプリクト
鳴上悠
渋谷凛 GAME OVER
016:人為世界のエンブリヲ タスク 065:図書館にて
本田未央
最終更新:2015年06月07日 20:24