102

time ◆BLovELiVE


「みく、どこだ!」

走るエドワード。
下の階ではひたすらに激しい戦闘音が響き続けている。

みくを救出したら自分も一刻も早くそこに向かわなければならない。
だからこそ、みくを急いで探し出さねば。


「みく!」

扉を開くが、誰もいない。
この階層であることに間違いはないはずだ。

「クソ、どこだ…!」

ジョセフやサファイアがいれば探知することも可能だっただろう。後藤であれば首輪探知機で探し出せただろう。美琴であれば能力をレーダーに応用して探索できただろう。
しかしエドワードにはそういったものが何もない。

気持ちだけが焦れていく。

そんな時だった。

「おい、あの嬢ちゃんを探しているのか?」

エドワードの耳にふと声が響く。
どこだ、と周囲を見回すがそこにいるのは黒猫が一匹。

「そう、こっちだ。話してるのは俺だ」
「な、猫が……、いや、詳しいことは後だ。
 前川みくの居場所、知ってるのか?」
「…ああ。あんたは彼女の仲間か?今あの嬢ちゃんは少し大変なことになってる。
 仲間なら早く助けてやってくれ」

互いの自己紹介もそぞろに、廊下を走る黒猫を追って、エドワードは走りだした。





ガタン

「みく!大丈夫か!!」
「あ、エドワード君にゃあ~」

猫の導きでたどり着いた部屋。
そこに前川みくともう一人名も知らぬ金髪の少女がいた。

こちらに笑顔を向けるその顔を見て、大丈夫そうだとほっと胸をなでおろしてみくに近づいたその時だった。


あまりにそれが自然すぎて見過ごしてしまうかとも思った。あるいは目の錯覚なのかとも。

「よかった、いなくなってからずっと心配してたんだよ~」

楽しそうな声を上げる姿はどこまでも自然で。

だというのに、その脚に本来あるべきものがない姿はどこまでも不自然で。
そんな状態で屈託ない笑顔をこちらに向ける様子は、限りなく不自然だった。

真っ赤に染まった片足の太ももから先の部分は引きちぎられたかのように欠損していて。
まるでかつて自分が人体錬成に失敗したあの日のようで。

何が起きたのか、理解できない。いや、理解したくなかったとでも言うべきだろうか。


「…ちょっとお先に~…」

その様子に気付いた金髪の少女―食蜂操祈が部屋からこっそり抜けだそうとした、その時だった。
エドワードは横を通りすがった彼女の服の襟元を掴み、思い切り壁に叩き付けた。

「痛っ…」
「――お前、みくに何しやがった」

顔を伏せたエドワードの表情は操祈には見えない。
ただ、声だけでも激昂しているのは能力を使うまでもなく十分に察せられた。

慌ててリモコンを取り出そうとする操祈の手をはたき落とし、怒鳴りあげて問い詰める。


「あいつの脚に、一体何しやがった!!!」


「やれやれ、騒がしいと思って来てみれば、いつぞやの小僧か」

と、その時背後から耳に届いた声。
近づいてくる気配などなかったにも関わらず、いつの間にかそこにいたかのように佇んでいる。
いや、エドワード自身が激昂していたからこそ気付かなかったというべきか。

「てめえ……」
「彼女は私の大切な友達だ。あまり手荒なことをされるのは困る。
 この子猫ちゃんに何をしたのか、ってことを聞きたいのかい?簡単な話だ。少し実験材料となってもらった、それだけだよ」
「実験……?」
「ああ。操祈ちゃんの能力には制限がかかっているらしくてね。それを確かめるために彼女の感覚を弄らせてもらったんだよ。
 その過程で彼女は脚を失ったが、まあ大した問題ではないだろう」
「―――――――」

その言葉で、エドワードの中で何かが切れた。

「てめええええええええええええええええええええ!!!」

両手を合わせてその腕の義手を刃へと変化させてDIOへと向けて振りかざす。
しかしDIOはまるでその程度児戯だとでもいうかのように、突き出された腕を握りしめて受け止めた。

「無駄ぁ!!」

横に放るようにその小柄な肉体を放り、宙に浮いたエドワードの体に拳を叩きつける。
息を詰まらせるエドワードだが、幸か不幸かその時の彼は痛みを感じるほど冷静ではなかった。
受け身を取って起き上がったエドワードは、地面を錬成。
柱のように形を変えた床がせり上がり、DIOに向けて突撃をかける。

だがそれすらもDIOはスタンド・『世界』を顕現させ、その拳のラッシュで粉砕。
と、その攻撃が止んだと同時に、視界が阻まれた隙を付くかのようにエドワードは手に作り出した長槍をDIOの肉体に向けて突き出す。

しかしDIOのいた場所は槍が届く直前にエドワードのすぐ横に移動していた。

対応できぬまま殴り飛ばされ、廊下に叩きだされるエドワード。

「怒りとは人の感情をこうも狂わせる。人に恐れという感情すらも忘れさせる。
 だがそれは時として死すらも意識させぬままに行動させる。生き物としては不適合なものだとは思わないかね?」
「っ…、知る、か!!」

今の一撃で冷静さを取り戻したのか、エドワードはDIOからジリジリと距離を取るように移動し始めた。
要するに前川みくから自分を引き離そうとしているのだ、とDIOは判断する。
乗ってやろうではないかとDIOはゆっくりとエドワードに向けて歩みを進める。

やがてDIOが廊下へと出てしばらく歩いた辺りで、DIOの足元に光が走った。
何が起こるのかと警戒したところで背後の壁や床が崩れ、引き返す道を塞いだ。

「ほう」

つまりは前川みくから自分を引き離したということだろう。
だが別に不都合があるわけでもない。援軍など期待してはいない。

「いい度胸だが、それはこのDIOの前では無謀でしかないことを思い知るがいい」

カツ、カツ、と。
DIOは先にいるだろう獲物へ向けて笑みを浮かべてゆっくりと歩き続けた。




「…ここか」
「あいつ、ずいぶんと派手にやってるじゃない」

ジョセフと美琴の視線の先にあるのは崩れ落ちた廊下。
おそらくはエドワードの仕業だろうし、その先にDIOはいるのだろう。

早く向かわねば、いくら何でも彼一人で相手にできるような者ではない。
と、その前にふと部屋の中を覗きこんだ二人。

「おう、嬢ちゃん達無事か?」
「にゃ~エドワード君は~?」
「あの小僧なら、DIOを追い払ったらすぐに――――っ」

と、笑顔を浮かべる少女に近づいた二人は、その欠損した脚を見て息を詰まらせた。
あまりに笑顔が自然すぎて、そのような異常な状態であること自体を想定していなかったこともある。

「……っ」

口を押さえる美琴。
その脳裏に思い浮かんできたのは、かつて絶対能力進化計画で一方通行に命を奪われた一人の少女が道端に残した体の一部。
あいつはその少女をただのモルモットにしか思っていなかったが、DIOもそいつと同類ということなのだろう。

「…あんた、そこまで堕ちてたとは思わなかったわ」

不快感を押さえつけ、視線を向けたところにいたのは壁に背を預けて座り込んだ金髪の少女。
自分にとっては気に入らない存在ではあったが、それでもあの下衆の片棒をここまで担ぐような奴だとは思っていなかった。

どうしてこんな状態の女の子がこんな自然な笑顔が浮かべられるのか。
こいつが一枚噛んでるとしか思えない。
おそらくはそういう洗脳を能力で施したということなのだろう。

「あらぁ、人のことが言えるのかしら御坂さぁん」
「…どういう意味よ」
「あなたが殺し合いに乗った理由は想像が付くわ。だけどそれで本当に”彼”がそんなこと望んでると思うのかしら?」
「…あんた何言ってるのよ…。私とアイツの、何を知ってるのよ!」
「あら?今私何て言ったの?彼って誰?え?」

何故か問いかけられた美琴以上に混乱している操祈。
その様子はおかしく、何かが不自然だ。

「…嬢ちゃん、少し額を見せてもらおうか」

と、ジョセフは操祈の髪をかきあげその額を露わにした。
そこには蠢く謎の瘤が存在していた。

「やはりな。肉の芽を植え付けられてDIOの手駒にされておったか」
「…これは治せないの?」
「少なくともワシには無理じゃ。せめて承太郎がおれば…。
 今はDIOを追うことが先決じゃ。あの崩れた道の先におるんじゃろうな。頼めるか?」
「いいわよ。ただ一つだけ。DIOとあの後藤ってやつをぶっ殺したら」
「ああ、そういう約束じゃったな」

エドワードとはそういう約束だった、と聞いている。
であればこの少女との休戦協定が破られた時こそ、逆に機会だろうとジョセフは考える。
彼女に人殺しを思いとどまらせる説得が可能な機会だと。




壁や床、天井はボコボコに変形し、激しい隆起があることが確認できる。
エドワードが多用した錬金術の結果だろう。
しかし、それでも尚もDIOは健在だった。

体に多少の汚れこそあるが、大きな傷もなく余裕の表情を浮かべている。
対するエドワードはボロボロの状態で壁に背を預けて座り込んでいる。

エドワード自身、多くの異形の生物、人外と戦った経験はあった。
その中にはDIOと同等、いやそれ以上の身体能力を持った者もいた。
しかし、DIOの持った謎の能力がどこまでもエドワードを追い詰めていた。
能力自体の解明もできぬままに我武者羅に戦って勝てる相手ではない。

それでも普段のエドワードであればもっと冷静に戦うこともできただろうが、今の彼は冷静さを欠いていた。
みくの脚を奪ったことの怒り。それはDIOだけではなくあんな状態になる前に助けることができなかった自分自身にも向いているものだった。

「なかなかに面白い能力、そして人間にしてはよくやる身体能力だ。殺すには些か惜しい。
 どうだ、もし君が望むならば君を部下にしてやってもいいと思うのだが」
「…は、くたばれ下種野郎」
「そうか、残念だよ」

果たしてこのまま殺すべきか、それとも肉の芽を植え付けるべきか。
考えたDIOだが、エドワードの精神力を鑑みれば万が一があっては困る。ここは殺しておくべきだろう。

そうしてザ・ワールドの拳を構えてエドワードへと叩きつけようとしたDIO。
その時だった。

DIOのすぐ横を、電気を纏った何かが高速で通過していった。

「ほう、ずいぶん遅い到着じゃないか。
 御坂美琴、そして――ジョセフ・ジョースター
「DIO、ようやく会えたな!」

飛来した元の場所に空いた壁の穴の向こうから姿を現すジョセフと美琴。
どうやらギリギリ間に合ったらしいとジョセフは胸を撫で下ろす。

その髪の奥からサファイアが姿を現し、DIOに向けて問い詰める。

『DIO!イリヤ様はどこですか!?』
「君はあのルビーとかいう道具の仲間か?
 彼女なら少し前に離れていったよ。少し操祈ちゃんの能力で洗脳させてもらうというおまけ付きだけどね」
『っ!あなたは…!』
「落ち着くんじゃサファイア。
 DIO、色々とやってくれたようじゃな。その精算に加えてその体、エリナおばあちゃんのためにも返してもらうぞ!」
「エリナ?ああ、あの田舎娘か。くだらん」

と、DIOはゆっくりとジョセフに向けて指を突きつけながら宣言する。

「お前はその血を吸って殺すと予告しよう」
「やってみろ!」
「私のことも忘れてんじゃないわよ!」


◇◇◇


「ジャック、君たち契約者という存在は合理的に考え判断して行動する、と。
 そう言っていたね」

「ああ、程度の差こそあるが契約者は良心の呵責や情などに流されることなく判断し、行動することができる」

「改めて聞いてみても、素晴らしいものだと思うよ。人は誇りや優しさなど、ちっぽけなものに流されて理知的な判断ができずに判断を誤る。
 もし俺の世界にいたら部下に数人は欲しかったかもな」

「………」

「どうかしたかな?」

「いや、話を続けよう」

「生き物の根幹にあるのは生存への欲求だ。
 食欲、性欲、睡眠欲、その全てが生きることに繋がる。唯一性欲だけは個人ではなく種族としての生ということになるのだろうがね。
 もしそれが脅かされる感情があるとしたら、ジャック、君には何か分かるかな?」

「そうだね、例えば恐怖、かな。強い者に対する命の危険を感じた時、とか」

「ああ、人は強い力を持つものには恐怖し時には己の尊厳を投げ捨ててでも屈服する。
 だがそれは恥ずかしいことではない。人が生きること、それは自分を死から遠ざける、すなわち”安心”を得ることだ」

「分からないものではない。契約者は合理的に、すなわち最優先することは基本的に自分の命だ。
 諜報機関に雇われている者であっても、その点を考慮した場合完全に信用されているものはいない」




「時としてDIO、君は死んだことはあるかい?」

「…死に近い状態に追いやられたことはあるな。だがそれでもこうして生き延びてきたからこそ俺はここにいる」

「そうか。私は一度死んだことがあるんだよ」

「ほう、それは興味深いな。その感想を聞かせてもらってもいいかな?」

「そうだね。………案外大したことではなかったよ。
 それと同時に、死ぬことなんてそう恐れるようなものじゃないってことにも、気付いてしまった」

◇◇◇

「ち、攻撃の数が減ったら少しは楽になるかと思ったけど、そう簡単にはいかねえか…」
「ふぅ……」

物陰に身を隠しつつも刃を躱す杏子の横でタバコの煙を吐き出すノーベンバー。

「今そんなもん吸ってる暇かよ。ずいぶん余裕じゃねえか」
「これは能力を使う対価でね。私だって実は嫌煙家なんだよ。
 タバコというのはその煙から発生する副流煙による受動喫煙の方が吸った本人よりも害が強くてね」
「あーもう、そういう話なら後で聞いてやるから、今はあいつをどうにかすることから考えろよ!」
「時に杏子ちゃん、水の残りはあるかな?」
「もうねえよ。あれだけ使っても全然動きすら止まらねえじゃねえか」

地面はびしょ濡れになってところどころノーベンバーの能力で凍らされた場所が見えるものの、それだけだ。
氷結自体が足止めにもならなくなってきている。これはあの生き物も学習していっているということか。

「時に杏子ちゃん、君は確か殺し合いに乗ったって言っていたな。
 その理由を聞かせてもらっていいかい?」
「はあ?何だよこんな時に」
「いいから」

ちっ、と舌打ちをしながらも、杏子は口を開く。


「別に殺し合えって言われたから、とかそんなんじゃねえ。
 人間、生きていくためには誰かを蹴落として生きていかなきゃいけない、それが世の常じゃん。
 生きるために他人を蹴落とす、なんて、言うほどおかしいことか?」
「果たして君は本当にそう思っているのかな?」
「どういう意味だよ」
「さっきの話、盗み聞きしたわけじゃないんだけどね。君と同じような存在である子は人を守って命を落としていったという。
 少なくとも契約者にそんな行動に出る者はいないさ。自分の命を投げ出して、なんて、それこそよほど強い執着や感情が発現しないかぎりはね。
 君と私たちは違う、合理的に生きることが全てってわけでもない。あるいは非合理な想いと引き換えにその力を手にした、なんてことも有り得るかな」
「………」

杏子は口を開かない。
そこで彼女の脳裏に浮かぶのは一体何か。
願いが失わせたものか、あるいは



「さて、じゃあ宿題だ。その答えが解けた時には君に殺されてあげてもいいぞ」
「は?あんたふざけてんの?」
「ふざけてなどいないさ。
 君が本当はどうしたいのか、どう生きることが正しいと思うのか。その答えをはっきりとさせることだ。
 だが、その前に――――」

と、ノーベンバーは目をやる。
斬撃の連打が止んだと思うと、壁を跳んで後藤が突撃をかけてきた。

咄嗟に飛び退く二人。


「あまりにも遅いのでな。こちらから仕掛けさせてもらったぞ」
「そうかい。まあこちらとしてもたった今行こうと思ったところだったからね。
 タイミングとしてはちょうどいい、か」

両腕の刃を一対ずつ振りかざしながらも迫る後藤。
対するノーベンバーは無手で後藤を見据えている。

「もう一人いたはずだが?」
「彼女なら逃したよ。今の私はさしずめシンガリってやつかな」
「理解できんな。人間というものは時としてそうやって他者のために己の命を投げ出す」
「そうだね、私としてもあまり理解できるものじゃないさ」

契約者として見ても非合理極まりないものだ。
自分の命は何にも代えられぬものだというのに、それをこうして捨てようとしている。

それは死ぬことに対する恐怖。人は死んでどこに行くのか、それが分からぬからこそ恐怖し、死を恐れる。

だが、ノーベンバーは一度死んでいた。
死んだ人間は決して蘇らない。それでもノーベンバーはこうして生きている。

そして猫から、自分の仲間、ジュライとエイプリルが自分の死の影響を受けることなく生き、そしてエイプリルは死んだと聞いた。
そうすると案外死というものも大したものではない、と感じるようになってきていた。

合理的に動く契約者、それが生に重点をおくことがなくなったら一体どうなるのか。

「まあ、少なくともギリギリのところで命をかけることくらいは何ということもなくなるだけだがね」


と、ノーベンバーは再度濡れた地面を凍らせるために能力を発動させた。

「…?」

もう幾度と無く使用し、そのたびに破られてきた力。それをここで使用する意図が掴めない。
何か狙いがあるのだろうか、と考えた後藤はそれを受けることなく、跳躍して回避。
壁を蹴ってノーベンバーのいた場所へと攻撃を仕掛けようとしたが、しかしノーベンバーは凍った床を滑るようにして移動している。

何もいなくなった場所へと脚を下ろした後藤は、再度跳躍しようと地を蹴ろうとして。


「ところで知っているかな?凍った地面というのは非常に滑りやすいんだ」

その溜め込んだ力が全く見当外れの方に放出されるかのように後藤の脚がスリップ。
勢い良く転倒しかけたその体を、しかし驚愕しつつも脚を、腕を地面に突き立てて地面との衝突を防ぐ。

その時だった。


「おりゃあ!!」

ノーベンバーの後ろから、漆黒の影が巨大な槍を振りかざして後藤に迫った。
それはグランシャリオをその身に纏った佐倉杏子

(そういうことか)

得心がいったかのように心中で鎧を纏っていなかった理由を納得する。

両腕、両足を動かせない今、動かせるのは本体である自分自身でしかない。

頭を刃へと変形させて杏子の槍を受け止める後藤。
しかし元々魔法少女として常軌を逸した身体能力を持っていた者がグランシャリオを纏ったことによる相乗効果で、杏子の力は飛躍的に上がっていた。

一撃を防ぐだけで後藤の頭はあらぬ方向に弾かれる。

「取ったぜ化け物…!」

その隙に狙ったのは後藤の首。
狙ったことに深い根拠はない。ただそこを狙えば死ぬのではないかという勘のようなものだ。

風を斬るような音が鳴り響き。

一閃した槍は後藤の首の付け根に赤い線を作った。

後藤の首から血が流れ出し、切れ目から後ろへと傾き。

同時に地面に突き立っていた刃が形を崩し始める。




ついに殺した。

そう確信した杏子はグランシャリオを解除して後ろへと振り向く。
滑りそうな氷の上を、タバコに火をつけながらゆっくりと歩み寄ってくるノーベンバーの姿がそこにあった。

「へ、ざっとこんなもんだよ。じゃあ、次はあんたをボコらせてもらおうかい」
「おやおや、まだ宿題の答えは見つかってはいない――――――」

その時の杏子は、後藤を倒したものと考えていた。油断していたと言ってもいいだろう。
だから、それに反応することなどできなかった。

杏子の後ろから迫っている、一本の刃の存在に。
気付いたのはノーベンバーのみ。


「え?」

急に駈け出したノーベンバーに体を引き戻され。
その胸に一本の刃が突き立ち、血を地面に垂らしていた。

「だろう?」
「あんた、何で……」
「何、一度死んだ身だ。仲間からも組織からも、生への執着からすらも開放された身としてはこういうのもいいんじゃないかなってね」

ゴホッ、と口から血を吐き出すノーベンバー。
言うまでもなく、それは致命傷だろう。

そして刃の先には小さな異形の生物が、そしてそれは後藤の首元へと繋がって元あった場所に徐々に戻りつつある。

「賭けのようなものだったが、思いの外うまくいったようだな」

首を撥ねれば死ぬ。それは確かだ。人に擬態した寄生生物とて例外ではない。
頭部が肉体から切り離されると、その体を維持できずに干からびて死ぬだけだ。

だが、後藤の場合事情が少し違っていた。
複数の生物をその身に宿した後藤は例え首を切り離されようともまだ死には届かない。
そのまま時間が経過してしまえばたどる結末は同じだが、まだ後藤以外の寄生生物はその肉体をほんの僅かに維持できる。

だから敢えて首を落とされることで肉体を一瞬だけ崩壊させて地面に突き立った刃を解除し、そして瞬時に肉体に再接続。
無論これは相手がこちらを注視していればできないことだ。頭だけとなっても生きていることが分かれば、それだけでは非力な個体でしかない寄生生物は魔法少女を相手取ることなどできない。

故にこれは後藤自身の幸運と言ってもいいだろう。

「てめえ、そいつは私の――――」
「そうだ、最後に一つだけ言っておこうかな」

と、ノーベンバーはまるで自分が今にも食われそうな状況だということを気にする様子もなく、いつもの軽口を叩く時のような口調で杏子に話しかけていた。
その後ろから、体を取り戻した後藤の、巨大な口が迫っていることに気付いてかそうでないのか分からぬまま。

「ジャック・サイモンという名前が偽名だというのは名簿を見ていたら分かると思うからね。放送で呼ばれた時のことを考えてあっちだとどう書かれているのかを伝えておこうか」

その頭に、無数の牙が生えた異形の口腔が覆いかぶさり。

ノーベンバー11。それが私の―――――」


グシャリ


まるでりんごを齧るかのような感覚で、ジャック・サイモン、ノーベンバー11の頭は後藤に捕食され、その生命を終えた。


【ノーベンバー11@DARKER THAN BLACK 黒の契約者 死亡】


◇◇◇


「一瞬で体が移動した、のう…」

「ああ。移動するだけならまだしも、気がついたら殴られたような衝撃と一緒に吹っ飛ばされてた。
 俺にも何が起こったのか全然分からなかった」

「…あれは傍から見ててもわけが分からなかったわね」

『なるほど、そのスタンド能力の謎が解けぬままにDIOに挑むのは危険ですね』

「かといって後手に回っておってはいつまでたっても奴には勝てん。ここは何か手がないか……。
 そうじゃな、何か支給品はないか?」

「って言っても、俺のところにあるのは使い方が分かんねえものばっかりだったし」

「………」

「その使い方が分からないと言った道具、少し見せてもらってもいいかの?」

「別に構わねえよ。一番分からねえのはこれなんだけどよ」

『?!これは……』

「どうしたんじゃサファイア」

『ジョセフ様、もしかするとDIOの力が一体どういうものなのか、図ることができるかもしれません』


◇◇◇

ジョセフと美琴の二人が共にDIOへと攻めかかる。
その力は後藤とはまた別の強さがあった。

黄色い人型のスタンドから放たれる力は美琴が操る瓦礫を弾き飛ばし。
ジョセフが放つハーミット・パープルは波紋が到達する前に引きちぎられる。

地力だけでも圧倒的だった。

「フン、『世界』以外の力も持ってはいるが、お前たちの前では使う必要もないというところかな?」
「舐めてんじゃないわよコラァ!」

手から電気を放つ美琴。しかし射線上にいたはずのDIOはいつの間にか美琴の背後へと回り込んでいる。
エドワードの言っていたことに納得するが、それに驚いている暇はない。

「隠者の紫(ハーミット・パープル)!」

DIOの腕に茨を巻き付けるジョセフ。
無論それで動きが捉えられるとは思っていない。
だが、せめて一瞬でも時間が稼げれば、美琴の撤退の役には立つだろうと思ってのことだ。

「ふ、無駄無駄無駄ァ!」
「ぬおっ…!」

しかしDIOはその茨を引きちぎることなく、逆に絡みついたまま美琴の元へとジョセフの体を引き寄せて放り込んだ。
勢いよく叩きつけられた美琴とジョセフの体は吹き飛び、地面を転がる。

「フン、やはり貴様のスタンドが一番生っちょろいぞ」
(チ、やはり波紋を警戒してか体を殴ってはくれんようじゃな…)

未だにエドワードが動く気配はない。
彼がもし動いてくれてさえいれば、もっと有利に戦えたのかもしれないが。

しかしいたとしてもやはり今この場にいる面々では、接近戦での殴り合いに対する力が決定的に欠けていた。

(ここは…)
「嬢ちゃん、ここから離れるんじゃ」
「何よそれ、舐められたまま背中を向けて逃げろっての?!」
「ああ、そうじゃ。こういうのは往々にして年寄りの役割と決まっておる。
 君のような若い者を生かすことができるなら本望じゃからな」
「ざっけんじゃないわよ!ここであいつをぶっ倒さなかったら――」
「戦うことばかりが全てではない。もしかしたら、何かの奇跡が起きて君が殺し合いに抗う人間となってくれることもあるかもしれん。その可能性に賭けたいんじゃ」
「…バッカじゃないの」

立ち上がった美琴は、ジョセフに背を向ける。

「まあアレじゃ。生きておったらまた会おう」

走り去る美琴を、後ろ目で見送りながらジョセフはDIOを見据えて構える。

「話は終わったか?」
「待ってくれるとはずいぶんと親切じゃのう」
「貴様の血を吸うことができるなら、殺し合いに乗った小娘一人程度気にするものでもない」
「ふ、そうか。じゃあワシも少し本気を出させてもらおうかの――!!」

と、バッグから何かを取り出すように手を突っ込みながら真っ直ぐにDIOへと直進する。

「フン!何を持っているのかは知らんが、このDIOの前では小細工など無駄!
 ならば見せてやろう!味あわせてやろう!この『世界』の力を!」

スタンド・『世界』はDIOの叫びに合わせて大きく構え。

――――――――世界(ザ・ワールド)!!!

その瞬間、世界が停止した。



ジョセフの動きも、呼吸も、心臓の鼓動も。
それはジョセフだけではない。エドワードのそれらも、いや、この会場にいる全ての参加者の”時”が止まっていたことだろう。
ただ一人、DIOを除いて。

「その体には波紋が流れているのだろう?ならそのむき出しの頭ならば何もあるまい」

ザ・ワールドの拳を顔面に叩きつける。
ジョセフの顔が無残な形に潰れるのを確認。
だが念には念を入れる。

すかさず地面に転がっていた、エドワードとの戦いの名残である先端の尖った細長い棒をジョセフの胸に向けて投げつけた。

その一撃は体を貫通して後ろへと吹き飛ばし。


「――――そして時は動き出す」

静止した世界が動き始め。




「隠者の紫(ハーミット・パープル)!」
「何っ!?」

あらぬ方向からジョセフのスタンドの茨がDIOに向けて飛来。
咄嗟に構えたことで体に巻き付くはずだった茨は腕に絡みつくに留まった。

「アーンド!波紋疾走(オーバードライブ)!!」

だが、それを振りほどく暇はない。
波紋が腕を流れ始めたことを感じ取ったDIOは、自らの腕を引きちぎって後ろに後退。
全身に波紋が流れることは阻止したものの、残された腕はボロボロに崩れて消え去り。

「ち、仕留め損なったか」
「ジョセフ・ジョースター!?貴様は確かに俺の攻撃を受けて――――」

と、さっきまでジョセフのいた場所に目をやるDIO。

そこにいたのはジョセフではなく、カレイドステッキ・サファイア。
そしてその手(?)に握られていたのは、黒衣にドクロの仮面を被りナイフを携えた男の絵が描かれたカード。

(あれは、イリヤに持たせたカードと同類の…!?)

クラスカード・アサシン。
暗殺者の英霊の魂を宿したそれは限定展開することで、僅かな間使用者と寸分たがわぬ外見の身代わりを作り出す能力を発現させる。

DIOが時を止めたのが一秒という超短時間であったがゆえに、攻撃の際の手応えで判別することができなかった。

「ち、おのれジョセフ・ジョースター!貴様ごときに腕をやられるとはな…!!」
「腕で済めば御の字じゃと思ったほうがいいぞ」

と、ジョセフがその場から飛び退いた。
その先にあるのは奥行きのある廊下。そこから微かに見える小さな人影、そして聞こえるバチバチという音。


(まさかあの小娘………)




「さっきは私の超電磁砲をまるでおもちゃみたいに扱ってくれてさぁ」

と、美琴が拾い上げたのは一つの鉄塊。あの崩壊した廊下に転がっていたものの一つ。

「なら、これなら受けられるか、試してみろってんのよ!!」

ポイ、と宙に打ち上げたそれに向けて、美琴は思い切り自分の拳を叩き込んだ。
最大限の電流を手にまとわせた、最大の一撃を。




(ち、ここは回避を――――)

飛来するであろうものに直感的に嫌な気配を感じたDIO。しかも今は片腕を失っている状態。
咄嗟にその射線上から離れようとした。が、足が動かない。

「ぬ!これは――」
「オレのこと、忘れてもらっちゃ困るぜ」

エドワードがDIOの足元を錬成し、その足を地面へと縫い付けて全く身動きが取れない状態へと縛り付けていた。

「おのれこのクソガキがあぁぁぁぁぁ!!」

次の瞬間、撃ちだされた鉄塊が美琴の超電磁砲の勢いで飛来し。



「ザ・ワールド!!」

しかしそれは命中することなく、壁に大きな穴を空けて外に向けて飛び出していった。

DIO自身がいたはずの場所を見やると、そこには地面に大きな穴が空いていた。
覗きこんでも下にはDIOの姿はない。おそらくはもう逃げたのだろう。


「逃してしまったか…」
『しかし私達の勝利といえるでしょう』
「あんたの芝居、少し臭いのよ。もっとマシなこと言えなかったの?」
「そうかぁ?まあワシとしてもそう深く考えての言葉じゃなかったかららしくはなかったかもしれんが…」

孫の承太郎がこの場にいたら何と言っただろうか。

「じゃが、最後の言葉だけは一応本心多めのつもりだったんじゃがな」
「…………」


そんなことを考えながらもふらつきながらも起き上がったエドワードに視線を移す二人。

「肩を貸そうか?」
「これくらいどうってことねえよ…。そんなことより、みくのところに戻らねえと……!」

そうだ。あの部屋にはみくと操祈の二人がいる。特に操祈はDIOの仲間だ。合流を考えるのが自然な流れだろう。
だとすれば、あそこにいるみくもまた危ない。

「急いで戻るぞ…!!」



「あーもう!何なのよこれ!」

思わずそうぼやき声を上げる操祈。
その手首と足には縛り上げるかのように茨が巻き付いている。

あの後警戒された操祈はジョセフのハーミット・パープルによって体を縛られて拘束されていた。
当然リモコンは手の届かない場所だ。
と言っても、現状特に意味のあるものではないのだが。

みくはたまににゃぁ~などと声を上げながら寝息を立てている。
あの足のない姿で笑顔を浮かべる姿があまりにも痛々しく、見ていられなかったために意識を落とされたのだ。

(そういえば、私ってどうしてこんなことに協力してるんだったかしら?確かDIOさんにそうするように言われて…。
 あら?だったらどうしてDIOさんの言うことに従ったのかしら……?)

することもなく、そんなふうに思いを馳せる操祈。
何か大切なものを忘れている気がする。
そもそもどうしてDIOに従おうとしたのか。その理由も薄れつつある。

カツ、カツ、カツ

そんな時に聞こえた一対の足音。

「…DIOさんかしら?」

例えその理由が分からずとも、今は信じてもいい人であるという思いまでは抜けてはいない。
きっとこの拘束も解いてくれるだろう。そんな淡い期待をしながら、扉の近くまで移動して。
足音が入り口の前で止まったことを確認し、声を出す。


「DIOさ――――」

スパッ




(あら?)

どうして自分はこうして地面へと寝転がっているのだろうか。
どうして手は自由に動くのに、手のひらや足の感覚はないのだろうか。

そして何より、今目の前に転がっている足は、一体誰のものなんだろうか?

それが自分の足であり、そしてその近くに転がっているのが自分の手の先で、そしてそれを巨大な口がボリボリ、と貪っていく姿を見た時。
何が起きたのかを理解し。


「え、あ…」

声を出すどころではなかった。
腹から下を切り落とされ、内蔵と血が零れ落ちていく。

「あのノーベンバー11とかいう男とこの女で少しは血を取り返せるかと思ったが、やはり足りんな」

そこにいたのはDIOではなく後藤。

そのこちらを見る視線は、獲物を食らう獣そのもの。

「あ……嫌………」

身動き一つ取ることができない操祈に死への恐怖が振りかかる。
だけど、こんな時に助けてくれるような人は―――

その脳裏に一人の少年の顔が浮かび上がりかけ。

「フン、やっているようだな、薄汚い野獣よ」

若干苛立ちを交えたような聞き慣れた声が響き渡った。

「DIOか」
「貴様もこっ酷くやられたようだな。腕さえこうでなければ貴様など八つ裂きにしたのだが。
 そんなことよりも今貴様が食っているものだが」


と、DIOはインクルシオをその身に纏い、一気に後藤に向けて拳を振りぬいた。

「それは俺のものだ。勝手に食い散らかすな」

陽の光が室内を照らしだす中、後藤は壁を突き破って建物の下へと吹き飛び墜落していった。

「あ…DIOさん……」
「全く、ずいぶんとやられたようだな、操祈」

DIOの目から見ても、既に助かるような姿ではない。
下半身を失って流れ出ていく血は、あと一分もその生命をもたせないだろう。

「治してやる手段がないわけではないが…、生憎と俺も血が足りないのでな。
 せっかくだ、このDIOの糧となることを光栄に思うがいい」

そう言ってDIOは操祈の首に手をやり、残った血液をゆっくりと指から吸い上げた。

少しずつ薄れゆく意識の中で、操祈はどうしてこんなことになったのだろうとこの場に来ての行動を走馬灯のように思い返していた。
最初にDIOと出会って、その後イリヤという少女と出会い。
真姫に対して洗脳をかけようとして田村玲子に脅され。
自分たちのところを離れたイリヤに対して酷い命令を植えつけたような気がする。
そしてここにきてからは前川みくの足を奪ったDIOの支持に従うままに、痛みを忘れさせた。

(…私は……何をやっていたのかしら……)

ここにきて、DIOという存在をどうしてこんなにも信用していたのか、それが分からなくなってきた。
私が信じていた人は、もっと強くて光に満ちた――――――


―――――――その幻想をぶち殺す!

ふと脳裏によぎった言葉を思い返し、操祈は全てを思い出した。

(ああ、そういう、ことだったのね……)

何故忘れていたのだろうか。
忘れられることが、覚えられないことがどれほど辛いのか理解していた私が。
私は、一体何をやっていたのだろうか。

(―――やっぱり、死んだ後も私は、”あなた”の隣にはいられないのね―――――)

きっとこんな非道なことに加担した私は、彼と同じ天国にはいけないだろうから。
だがそれも罰なのだろう。
だから、せめて自分のせいで傷つくことになったかもしれない人達に、イリヤスフィールに、前川みくに懺悔するように謝罪の言葉を思いながら。

食蜂操祈の意識は闇の中へと堕ちていった。


【食蜂操折@とある科学の超電磁砲 死亡】



「ち、後藤!!どこ行きやがった!!」

ノーベンバー11を食われた後、後藤は「血が足りん」などと言ってこちらを放置して逃走をしていた。

一旦グランシャリオを解除した杏子は、その言葉の意味を考えるより先に後藤に確実にトドメを刺すために研究所内を走り回っていた。
どういう経路で行ったのかは分からない。
だが後藤に対する苛立ちを解消しなければどうにもできない。

階段を駆け上がり、上の階へと到達した杏子は、ふと思い立ってあの二人、食蜂操祈と足を失った前川みくがいた部屋へとたどり着いていた。
扉は開いており、中からは動く人の気配が感じられる。

後藤か、それとも食蜂操祈かと思いながらも中を覗き。

「――――っ」

そこにあったのは、大量の血溜まりとその内側で干からびてミイラのようになった少女の死体。
その隣で佇むのは、鎧を着込んだ何者か。
DIOだった。

「やあ、杏子。ジャック・サイモンはどうしたのかい?」
「…くたばったよ」
「そうか」
「こっちからも幾つか聞かせろ。後藤のやつは見なかったか?」
「彼なら、今頃そこの外にいるはずだよ」
「そうかい。それともう一つ。そこの女、やったのはお前か?」

敵意と警戒を込めて、槍を握りしめながら杏子は問う。
髪の色から判別するに、おそらくは食蜂操祈。
何故彼女が干からびているのか。

「彼女は後藤に食われかけていてね。もう虫の息に近かったから、このDIOの糧として有意義に活用させてもらったのだよ」
「なるほどね」
「別に気にすることはあるまい。どうせ死ぬ命だったんだ。そして君だって同じ信条だったのだろう?」
「ああ、そうだな。それは否定しない」


「ただ――――」

と、杏子はその体にグランシャリオを再度纏い直す。

「今ので確信した!やっぱりあんたのことは気に入らねえ!!」

元々戦うつもりはなかったし後藤を優先するつもりでもあった。
しかし、今目の前にいるこいつも後藤と同じくらいには腹立たしい存在なのだと認識して。
その瞬間、この男のことを放っておくことができなくなっていた。

「ほう、この帝王に挑むか。いいだろう、遊んでやる」

そうして突き出した杏子の槍は、DIOの体を研究所の外へと叩き出した。


「やはり、まだ足りんな」

一人と半分の血肉を食らったが、それでもまだ餓えは癒えない。
やはり一体分を消滅に追いやられたのが響いているようだ。

苛立つ思いと、戦いへの渇望がまだ燻ってはいる。
だが、それよりも先に失った一体分をどうにかしたかった。
現状でも戦えなくはないが、万全には程遠く体を覆うプロテクターの隙間も増えている現状だ。

「やはり田村玲子か泉新一を探すか」

DIOから聞いた、田村玲子は南側にいるという話。
大まかな場所すら分かれば、後は寄生生物同士の脳波によって詳細な場所の判別が可能だ。

まずは田村玲子。
やつを食らって万全な状態へと体を持ち直した後でDIOを、そしてこの場で戦った多くの人間を殺すとしよう。

体を成す一つを失った獣、しかしその足はまだ止まらない。
血塗れた牙は、その手の刃は、新たな体、そして獲物を求め続ける。


【F-2/1日目/午前】

【後藤@寄生獣 セイの格率】
[状態]:両腕にパンプキンの光線を受けた跡、全身を焼かれた跡、疲労(大)、ダメージ(大) 、寄生生物一体分を欠損
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、首輪探知機、拡声器、不明支給品0~1、スピーカー
[思考]
基本:優勝する。
1:泉新一、田村玲子に勝利し体の一部として取り込む。
2:異能者に対して強い関心と警戒(特に毒や炎、電撃)。
3:セリムを警戒しておく。
4:余裕があれば脱出の手掛かりを集める。首輪も回収する。
5:南に向かい田村怜子を探し取り込んだ後DIOを殺す

[備考]
※広川死亡以降からの参戦です。
※異能の能力差に対して興味を持っています。
※会場が浮かんでいることを知りました。
※探知機の範囲は狭いため同エリア内でも位置関係によっては捕捉できない場合があります。
※デバイスをレーダー状態にしておくとバッテリーを消費するので常時使用はできません。
※敵の意識に対応する異能対策を習得しました。
※首輪を硬質化のプロテクターで覆い、その上にダミーを作りました。
※首輪の内側と接触している部分は硬質化して変形しません。
※寄生生物一体を欠損した影響で両腕から作り出せる刃の数が2つに減って全身のプロテクターの隙間も広がっています。



「ち、てめえ…!」

片腕のDIOに対し、比較的万全の状態でなおかつあちらよりも性能が上であるはずのグランシャリオをまとっているにも関わらず杏子はDIOに食いつけずにいた。
理由は簡単だ。
あれほど大見得を切ったDIO自身がまともに戦おうとしないのだ。

適度に牽制しては距離をとってこちらの攻撃射程から離れる。
杏子の精神を逆撫でする戦い方には苛立ちを隠しきれなかった。

「私が怖いのかよ!?ちゃんと戦え!」
「まあそう焦るな。こちらもいい場所を探しているところだ」

と、DIOはビルの並ぶ建物群を駆け回っていた。

そして、やがて一つの建物の前で止まる。

「ふむ。次の根城とするにはこの辺りか」
「何ごちゃごちゃ言ってやがる!」

そう呟いたDIOに向けて、杏子は槍を構えて突撃。
グランシャリオと魔法少女を合わせ、そこに杏子自身の苛立ちの感情が混じったことで後藤の時以上の威力を吐き出し。

「ザ・ワールド!!」

しかしそれもDIOのその力の前では何の意味もなかった。
いきなりDIOが目の前に現れたと思うと体はスタンドの拳を受けたかのように大きく吹き飛んでいた。
そこから態勢を立て直すこともできぬままに、拳のラッシュが襲いかかり。


やがて杏子のグランシャリオは解除されて地面に倒れこんだ。

「て、めえ……」
「まだ意識があるか。ふむ、この腕の代わりとして使うべきか、それとも……」
「お前…何を……」
「静かにしているといい。目が覚めた時には、君には何の不安もない幸福が包んでいるよ」
「やめ、ろ……!」

ゆっくりと手を伸ばすその姿に嫌な予感を感じ拒絶するように身を捩るも意味をなさず。
杏子の声はやがて闇の中に消えていった。


『私が受けた攻撃は顔を狙っての拳が一発、そしてあの長い棒による刺突です。
 しかし不可解なのは、この2つの攻撃に全くタイムラグが存在しなかったことです』
「つまりは、やつはその2つの攻撃を同時に放った、ということか?」
『そうなるのですが、しかし先ほどの瞬間移動と合わせるとただ複数の動作を同時に行う、などというものではないようにも感じられます』

サファイアとジョセフがDIOの攻撃の分析を進めながら、3人はみくのいた部屋に辿り着いた。


「…………」

目の前に転がっている、食蜂操祈だったものを見下ろす美琴。
仲がいい相手、などというつもりは微塵もない。
むしろ仲は悪かった方だろう。
それでもこうして無残な姿で事切れている様子を見れば何も思わないことなどない。

時、DIOも後藤もどこにもおらず。
ただ眠る前川みくだけがそこにあった。

「何であいつ、こっちは生かしたのかしら」
「…時間稼ぎ、かのう。足の無くした女の子をワシらが放置していけるはずもないとでも踏んでおるのじゃろうか」

だが、だとするならばDIOはこの建物の外に出た、ということになる。
この燦々と日の照る空間に。
何かしらの、太陽から身を守る術を手にしているということか。

「おい、起きろみく」
「にゃあ?あ、エドワード君にゃあ~。みく待ってたんだよ♪」
「ああ。悪いな、少し待たせちまった」

その笑顔はあいも変わらず輝いている。
足の欠損さえなければ、エドワードも笑顔で返せただろう。

立ち上がろうとするみくだが、しかし片足で立ち上がることなどできずバランスを崩して倒れこんでしまう。

「にゃはは、何か立てないにゃ。まるでカカシさんにでもなったのかにゃあ?」
「………」

ギリッと歯を食いしばるエドワード。
ジョセフもそのみくを見る瞳は険しいものだった。

「カカシ系アイドルっていうのも面白いかもしれないにゃあ。
 そうだ、エドワード君、もしみくがアイドルデビューしたら、CD買ってほしいな。
 ネコでカカシ系アイドルなんて、何だか珍しくて面白いと思うにゃ」
「…ああ。
 みく、帰ったらお前にはいい義足を作ってやる…。それで元通りには…できねえと思うけど。
 すげえ腕のいい奴を知ってるんだ。だから、頑張ろう、な?」
「ぎそく?よく分からないけど嬉しいな。
 大丈夫、みくは自分を絶対に曲げないから!どんなことがあっても絶対にアイドルになるって思いは曲げないにゃ!」
「ああ、その意気だ……」

みくが言葉を口にするたびに、エドワードの心が削られていくような感覚に陥っていた。
少女が無くした足は戻らない。それこそ賢者の石でもなければそのような奇跡を望むべくもない。

彼女が正気を取り戻した時、一体どんな顔をするのか。それを考えるだけでも気が変になりそうだった。

「…………」

そんな様子を静かに見つめていた美琴は、やがて意を決したようにエドワードに声をかけた。

「ねえ、ちょっといい?」


◇◇◇

「...なあ。お前ってなんで殺し合いに乗ったんだ?」

「はぁ?何よいきなり」

「曲がりなりにもこれから手を組むかもしれないってやつのこと知ろうって思っただけだろ」

「別に、何だっていいでしょ?」

「……そういやお前、さっき学園都市がどうとか言ってたよな。もしかして最初に死んだあの上条当麻ってやつ…」

「…………」

「だったら、悪いことは言わねえ。戻れなくなる前に殺し合いに乗るなんて止めろ。そいつだって、そんなこと望むはずねえ」

「あんたに、一体何が分かるのよ…!」

「あそこで死んだあいつのことは全然知らねえけど、それでもあいつは自分の友達がそうやって人を殺すようなやつになって喜ぶやつじゃねえってことぐらいは分かるだろ!
 お前だって、それは自分が分かってんじゃねえのかよ!」

「……………」

「それに、あいつを生き返らせたいって言うんだったら別に最後の一人まで残る必要はねえんだよ」

「…どういうことよ?」

◇◇◇

そうではない。
そうではないのだ。



「私の支給品を使ったら、この前川みくって子を救うことができるかもしれないわ」
「…本当か?」

この時のエドワードは精神的に弱っていて判断力が正確とはいえなかった。
それに曲がりなりにも後藤やDIOといった面々と共闘したことによる信頼関係がある程度は3人の間で存在した。

だからこそ、後は隙さえ伺えれば実行に移せると思った。

「だから、ちょっとその子のこと私に見せてくれない?」
「ああ、頼むぞ美琴」


ゆっくりと足を進める。
その歩みはこれまでの人生のどんな時間よりも長く感じられた。

今ならまだ引き返せる。
まだ戻れる。

心の中で誰かが叫んでいた。

それでも、私は選んだのだ。
他のだれでもない、自分の意志で、その選択を。
だから、それを今更現状に甘えて崩すわけにはいかなかった。

脳裏に浮かび上がっていく色んな人達の顔。
初春。
佐天さん。
婚后さん。

黒子。

そして、上条当麻。

(みんな、……ごめん)

彼らに心の中で謝罪の言葉を述べて。

「初めまして、前川さん、だっけ。私は御坂美琴」
「にゃあ?エドワード君の友達にゃ」
「…ええ、そんなところかな」
「どうしたのかにゃ。何だか、すごくつらそうな顔をしてる気がするにゃ?」
「……えぇ?そうかな…?」
「だけど大丈夫!みくはアイドルだから、御坂のことも笑顔にしてあげるからにゃあ!」
「そう。ありがとう」

短いやりとりで揺れる心に蓋をして。

「じゃあ、少しだけ、ビリっとくるからね」

バチッ


こうして、御坂美琴は初めて己の能力で人の命を手にかけた。



『ジョセフ様!御坂様を止めてください!』

気付いたようにサファイアがそう声をあげて。

「じゃあ、少しだけ、ビリっとくるからね」

その言葉にジョセフがピンと来た時には全てが遅かった。

「嬢ちゃん!止めるんじゃ!!」

バチッ

前川みくの体に、御坂美琴の体から放出された電流が流れたように見えて。
次の瞬間、その体が一瞬痙攣したかと思うとみくの体は完全に動かなくなった。

「…!おい…、美琴!何をしやがった!」
「この子の体に電気を通して心臓を止めたわ。一瞬だから痛み自体はそんなになかったはずよ」
「おい!みく!みく!!!」

揺さぶりながら呼びかけるエドワード。しかし全く反応することはない。
心拍を確かめるが、鼓動は完全に止まっていた。

「てめえぇ!!」

激情の余り、美琴に殴りかかるエドワード。
大ぶりで避けられたはずのそれを、美琴は避けることなく受けて地面に尻もちをつく。

「何でだ!何でみくを殺した!!」
「あんた、本気でこいつを守っていけると思ってんの?」

怒りの眼を向けるエドワードに対し、美琴は死んだ魚のように虚な瞳で話しかけていた。

「足をなくしたこの子が、本気でアイドルをやっていけると思ってんの?この子が正気を取り戻した時、本当に全てを受け入れられると思ってるの?」
「そんなこと…、だからって生きていなきゃどうにもならねえだろうが!!」
「それにこの子に義足を作ってあげるって言ってたけど、この殺し合いの間はどうするつもり?足を無くした足手まといを連れたまま、ずっと生き残れるつもりなの?
 現にこの子に構っていたらDIOの思うように逃げられてるんでしょ?」
「そんなの、みくが死んでいい理由にはならねえだろうが!」

正論を語るように言葉を紡ぐ美琴。しかしそんなものをエドワードは決して受け入れられない。

その様子を見て、美琴はため息を一度ついてエドワードの手を振り払って壁に空いた穴に向く。

「おい、まだ話は終わってねえだろ…!」
「その様子だと、流石に共闘はもう無理ね。私は先にDIOを追うわ。
 あんた達はその後、ってところかしら」
「待て、美琴!!」

そのまま、呼びかける声にも振り返ることなく。
御坂美琴はエドワード、ジョセフの前から立ち去っていった。




「ぐ……おぇっ……」

一人になったところでむせ返るように腹の奥から響いてきた嘔吐感に口を押さえる美琴。
さっきのようにエドワードとの戦いでの時とは比べ物にならない不快感だった。


――――何だか、すごくつらそうな顔をしてる気がするにゃ?

あのほんの短いやりとりの中で言われた言葉が脳内でリフレインする。

その言葉を投げかけられた時はまだ間に合うはずだった。
だが、この道を選んだ。

そう、選んだ時点でもう戻れないのだ。
上条当麻を殺されたから、とか。槙島聖護に言われたから、とか。
そういう問題ではない。

自分で、皆を殺して願いを叶えてもらい、上条当麻を生き返らせると、そう決めたのだから。
だから、もうその選択をした時点で引き返すことも省みることもできない。

例えその選択の果てに、彼と共に歩む資格を失うとしても。


「……は、ははは」

乾いた笑いが漏れてくる。
もう全てを諦めたかのような、空虚な笑いが。

「ねえ、黒子…」

呟いたのは、自分が最も信頼している一人の少女の名。


「あんた、いつだったか言ったわよね。もし私が災厄をまき散らすようなやつになっても、自分のやることは変わらないって」


「あんただったら……私を止めて……いや」

殺してくれるかな?



重い足取りはゆっくりと、DIOを探して歩み始めた。
もう帰ることはできない光へと背を向けて、闇の中に進んでいくかのように。



(すまん、初春ちゃん…、御坂美琴のこと、止められなかった…)

ジョセフ、サファイアは鎮痛な面持ちで、みくの傍に跪くエドワードを見つめていた。

「何でだよ……。何でこうなっちまうんだよ……」

エドワードの口から放たれるのは強い後悔、そして自身を責める想い。

「何が国家錬金術師だ…、何が人柱だよ…、女の子一人助けられないで…何が…俺はっ……!」

絶望に沈むエドワード。
その姿に、ジョセフとサファイアは声をかけることもできぬままに見守るしかできなかった。


【前川みく@アイドルマスター シンデレラガールズ 死亡】



【F-2/一日目/午前】

【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:疲労(中~大) 、ダメージ(大)
[装備]:いつもの旅服。
[道具]:支給品一式、三万円はするポラロイドカメラ(破壊済み)@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース、市販のシャボン玉セット(残り50%)@現実、テニスラケット×2、
カレイドステッキ・サファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、クラスカード・ライダー&アサシン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ(アサシン2時間使用不可)、ドミネーター@PSYCHO PASS-サイコパス-
[思考・行動]
基本方針:仲間と共にゲームからの脱出。広川に一泡吹かせる。
0:エドワード・エルリックに対応。
1:御坂美琴の説得とサファイアの仲間であるイリヤの探索、DIOの追撃をしたいが…。
2:仲間たちと合流する
3:DIOを倒す。
4:DIO打倒、脱出の協力者や武器が欲しい。
[備考]
※参戦時期は、カイロでDIOの館を探しているときです。
※『隠者の紫』には制限がかかっており、カメラなどを経由しての念写は地図上の己の周囲8マス、地面の砂などを使っての念写範囲は自分がいるマスの中だけです。波紋法に制限はありません。
※一族同士の波長が繋がるのは、地図上での同じ範囲内のみです。
※殺し合いの中での言語は各々の参加者の母語で認識されると考えています。
※初春とタツミとさやかの知り合いを認識しました。
※魔法少女について大まかなことは知りました。
※時間軸のズレについてを認識、花京院が肉の芽を植え付けられている時の状態である可能性を考えています。
※仕組みさえわかれば首輪を外すこと自体は死に直結しないと考えています。


[サファイアの思考・行動]
1:ジョセフに同行し北に向かい、イリヤとの合流を目指す。
2:魔法少女の新規契約は封印する。




【エドワード・エルリック@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、全身に打撲、右の額のいつもの傷、精神的衰弱
[装備]:無し
[道具]:ディパック×2、基本支給品×2 、ゼラニウムの花×3(現地調達)@現実、
不明支給品×0~2、ガラスの靴@アイドルマスターシンデレラガールズ、
パイプ爆弾×4(ディパック内)@魔法少女まどか☆マギカ、みくの不明支給品1~0
[思考]
基本:主催の広川をぶっ飛ばす
0:みく……
1:???????
[備考]
※登場時期はプライド戦後、セントラル突入前。
※前川みくの知り合いについての知識を得ました。
※ホムンクルス達がこの殺し合いに関与しているのではと疑っています。 関与していない可能性も考えています。
※仕組みさえわかれば首輪を外すこと自体は死に直結しないと考えています。



【御坂美琴@とある科学の超電磁砲】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、深い悲しみ 、自己嫌悪、人殺しの覚悟? 、吐き気、頬に掠り傷
[装備]:コイン@とある科学の超電磁砲×4
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2
[思考]
基本:優勝する。でも黒子たちと出会ったら……。
0:DIOを追撃し倒す。 DIOを倒したあとはエドワード達を殺す。
1:もう、戻れない
2:戦力にならない奴は始末する。 ただし、いまは積極的に無力な者を探しにいくつもりはない。
3:ブラッドレイは殺さない。するとしたら最終局面。
4:一先ず対DIOの戦力を集める。(キング・ブラッドレイ優先)
5:殺しに慣れたい。
[備考]
※参戦時期は不明。
※槙島の姿に気付いたかは不明。
※ブラッドレイと休戦を結びました。



「つまり、ここに近づいてくるやつがいたらぶっ殺しちゃえばいいんだよな?」
「そういうことだ。俺は少し疲れたのでな。できれば夜まではゆっくりしたいが、まあ疲れが取れるまででも構わん」
「りょーかい。あんたには食い物分けてもらった恩もあるしね」

そう言って、DIOは立ち並ぶ建物の一つの中に入っていく。
その周囲で、杏子は槍を回しながら周囲を見回す。

「さて、頼まれたからにはしっかり仕事しないとな」

DIOが休んでいる間、とりあえず自分のやるべき仕事を果たすとしよう。
それが今の自分のやりたいことなのだから。

「…ん?そういや、何か忘れてるような…」

ふと、何か大切なものを忘却している気がした。
誰かに何か言われたような。
誰かに伝えられた何かがあったような。


「…ま、いっか」

そう言って杏子は周囲を見張りながら、DIOに分けてもらった食料に手を伸ばす。
その額で蠢く肉の瘤を意識することなく。


「あの嬢ちゃん、まさか……」

その杏子の様子を影から眺めている猫。

あのDIOの言うことを聞くというのは明らかにおかしい。
だが、今の自分に何かできるか?

「なんとかしないと、まずいことになるぞ…」

猫は考える。今どうするのが最善か。どうすればいいのか。


【F-1/一日目/午前】

【DIO@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ】
[状態]:疲労(大)、右腕欠損
[装備]:悪鬼纏身インクルシオ@アカメが斬る!
[道具]:ディパック×1 基本支給品×1
[思考]
基本:生き残り勝利する。
0:休息し疲労を回復させた後、ジョセフ達を殺す。
1:ジョースター一行を殺す。(アヴドゥル、ジョセフ、承太郎)
2:花京院との合流。
3:休息中の見張りは杏子に任せる。
4:寄生生物は必ず殺す

[備考]
※禁書世界の超能力、プリヤ世界の魔術、DTB世界の契約者についての知識を得ました。
※参戦時期は花京院が敗北する以前。
※『世界』の制限は、開始時は時止め不可、僅かにジョースターの血を吸った現状で1秒程度の時間停止が可能。
※『肉の芽』の制限はDIOに対する憧れの感情の揺れ幅が大きくなり、植えつけられた者の性格や意志の強さによって忠実性が大幅に損なわれる。
※『隠者の紫』は使用不可。
※悪鬼纏身インクルシオは進化に至らなければノインテーターと奥の手(透明化)が使用できません。


【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:精神疲労(中)、疲労(中)、全身に切り傷及び打撲(それぞれ中)、ソウルジェムの濁り(中)、額に肉の芽
[装備]:自前の槍@魔法少女まどか☆マギカ、帝具・修羅化身グランシャリオ@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品一式、医療品@現実 大量のりんご@現実 不明支給品0~2(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いについて考える。
0:建物に近づいてくるやつはぶっ殺す。
1:巴マミを殺した参加者を許さない。
2:殺し合いを壊す。それが優勝することかは解らない。
3:承太郎に警戒。もう油断はしない
4:何か忘れてる気がする。
[備考]
※参戦時期は第7話終了直後からです。
※DARKER THAN BLACKの世界ついてある程度知りました。
※首輪に何かしらの仕掛けがあると睨んでいます。

※杏子の傍を猫が見守っています




088:邂逅 賢者の意思/意志 ジョセフ・ジョースター 110:ぼくのわたしのバトルロワイアル
エドワード・エルリック
御坂美琴 109:雷光が照らすその先へ
095:STRENGTH DIO 107:帝王に油断は無い
食蜂操祈 GAME OVER
前川みく GAME OVER
ノーベンバー11 GAME OVER
佐倉杏子 107:帝王に油断は無い
後藤 112:パラサイト・イヴ
最終更新:2015年12月10日 00:22