156
ずっといっしょだよ ◆BEQBTq4Ltk
哀れな哀れな少女さん。
迷い込んでしまったのはおかしなおかしな世界。
いつものように過ごしていた生活にはもう戻れません。
学校に行っても自分だけは違います。
みんなと一緒に笑えても自分だけは違います。
きらきら輝いていても時間が来てしまえば自分だけは違います。
お父さん、お母さん、弟の四人家族。
毎日笑顔で過ごしていたあの生活にはもう戻れません。
おかしなおかしな世界に迷い込んでしまったのは一匹の小動物。
動物さんにお願いした少女はこれまでにない煌めきを手に入れました。
すると憧れていたような魔法を手に入れました。
哀れな哀れな少女さん。
迷い込んでしまったのはおかしなおかしな世界。
いつものように過ごしていた生活には戻れません。
正義の味方を待っていた島村卯月はその場に留まらず、一旦北上することにした。
線路の修復を待つよりも、近くに居る可能性を信じてその脚を動かす判断に至った。
視界に映る景色は何処か哀愁が漂うような、主観であるのだから本人しか解らないが、夕暮れも相まって少し気分が暗くなる。
心の中で少なからずセリューと出会えない未来が見えているからだろう。だめだ、と首を振るい奇妙な考えを捨てる。
今の自分は強いんだ。
自分をしっかり持たないとセリューの横に立つ存在として釣り合わない。
「私が憧れた正義の味方は弱くないから……えへへ」
夕日に反射する糸は紅。
まるで多くの生き血を吸ったのか、黒く輝くその色は何処か吐き気を催す。
本来は殺し屋稼業の人間が所有していた暗器の一種、当然ではあるがこの会場に来てからも血を吸ってしまった。
アイドルが殺人を犯すとはあり得ない未来であり、選択である。
様々な運命と人間が交差した故の島村卯月だが、何が彼女をここまで変えてしまったのか。
「灯りが……誰かいる?」
歩いていたところで図書館に灯りを確認した。
近くで幾つか戦闘音が聞こえるが、目視できる距離ではなく近づくのは危険。
他者と接触するとして安全性を求めた場合、図書館に入るのが一番無難だろう。
室内戦闘ならば最悪の場合、糸が活かせる。
ある程度動きが抑制される中で罠を張れば相手にとって大きな牽制となり、更に動きに制限を掛けられる。
ふぅ、と一呼吸を置いて扉に手を掛ける。
怖い。未だに人が怖い。自分がもし南ことりのように、由比ヶ浜結衣のように、鹿目まどかのように死んでしまったら。
「島村卯月、頑張りますから……だから」
そして彼女は図書館に入る。
偶想《アイドル》は弱っている。けれど、誰も手を差し伸ばしてくれない。
哀れな哀れな少女さん。
迷い込んでしまったのはおかしなおかしな世界。
いつものように過ごしていた生活にはもう戻れません。
けれど彼女は救われた。
友達も少なくて身体も弱い彼女に初めてできた友達。
おかしなおかしな世界だけれど、自然と笑顔になれました。
でも……お別れは早かった。
黒髪の少女は女神の力になりたかった。
契約も結びました。
でも……悪夢には勝てませんでした。
哀れな哀れな少女さん。
迷い込んでしまったのはおかしなおかしな世界。
いつものように過ごしていた生活には戻れません。
珈琲を飲みきったところで大総統キング・ブラッドレイは立ち上がり、カップを流しに戻す。
流石に洗い作業までは行わないものの、最低限のマナーとして机だけを拭き終えると、己はもう一度椅子に座る。
首輪解析の手掛かりとなる予定のタスクはいない。
図書館で起きた戦闘――狡噛慎也一行と一戦交えた時には既にいなかった。
それ以前に滞在していたかもしれないが、戦闘から経過した時間を考えると彼はこの近くにいないだろう。
放送で名前を呼ばれてはいないが、死んでいる可能性もある。
仮に生きていたとしてもキング・ブラッドレイの皮は剥がれ落ち、ラースとしての本性が知れ渡っている可能性もあるのだ。
ホムンクルスに安々と情報を与える人間は少ない。好奇心とは訳が違う。
タスクの線を捨てたとして手掛かりになるのが、先程一読した本に記載されていた事項になる。
アインクラッドに関わることと、名簿に記載されている茅場晶彦。
確信は何もないが、地図上に記載されている施設と名簿。
聞き慣れない単語の羅列ではあるが、接触したところで無駄になるとは限らない。
首輪解析の情報が得られなくても、ありきたりな会話だけでも充分な収穫となる。
邪魔な枷を外してアメストリスに帰れるならば、特段無駄な血を流す必要もないのだから。
「珈琲でいいかね、それともまだ早い年ごろか?」
新しいカップを棚から取り出したブラッドレイは相手方に伺う。
既に手をつけているため、返答が無ければこのまま珈琲を注ぐことになるだろうが、いいのか。
「それでいいわよ……それで、順調なのあんた」
「その表情を見るに……お疲れのようだな、雷光よ」
哀れな哀れな少女さん。
迷い込んでしまったのはおかしなおかしな世界。
いつものように過ごしていた生活には戻れません。
訪れた悪夢は伝説の災厄。
ひとり、ひとりと幼い少女が倒れていきました。
絶望の先に転がる希望に手を伸ばします。
けれど、掴んだのは……だから少女は時間を遡りました。
また……逢いたいから。
哀れな哀れな少女さん。
迷い込んでしまったのはおかしなおかしな世界。
いつものように過ごしていた生活には戻れません。
死には慣れたくないものだ。
ニュースに耳を傾ければ誰がか死んでいるし、親族だって死んだこともある。
けれど現代に伴う、所謂友達や親の死には対面する機会が無い故に死がとなりにいる実感は無い。
妹達の死は見ているが、どうも説明すると違うものになってしまう。
親しい存在の死には代わりないのだが……感覚が麻痺しているのだろう。
婚后光子の死には驚きと悲しみもあったが、それよりも自分に手一杯であった。
悲しい。これは絶対だ。涙だって流した。でも、違う。
自分が想像していた死とは全然違う。
佐天涙子が死んだ時も全然違う。自分は変わってしまったのか。
きっかけはきっと上条当麻と前川みくだろうか。
解らない。
でも脚を止めるわけには行かない。自分は願いを叶えるために優勝しなくてはならないから。
「それで何から説明すればいいのよ」
ブラッドレイと対面する形で座った御坂美琴は渡された本を一読し彼に声を掛ける。
何でも、興味深いことが書いてあったが自分の知識では解らなかったようだ。
目を通した限りでは架空世界と現実の在り方について問うた物であった。
バーチャルリアリティ……所謂電脳世界との干渉及び生活については、多くの学者が名乗りを上げている。
記載されている事項も何処かで見たことがあるようなありきたりな部分も多かった。
しかしアインクラッドなる固有名詞は初めて聞いたものであり、既に実践されているような書き振りも確認出来た。
一番気になることと言えば、先に出したアインクラッドと茅場晶彦《ヒースクリフ》がこの会場に存在していることだ。
「申し訳ないがさっぱりでね。出来れば一から説明してもらいたい」
「…………歩きながら話すわよ」
男は嗤い、女は溜息を零す。
世界が違えば文化も異なるが、予備知識無しに叩き込むとなれば多くの時間が掛かる。
アインクラッドを目指すついでの時間潰しに当てるとしよう。そうでも無ければ疲労が溜まってしまう。
「アインクラッドに行くことに異議は無いのかね」
「別にいいわよ。
DIOのことは最悪後回しでもいい……エドがやるかもしれないし」
「何か言ったか」
「な、なんでもないわよ!
首輪を外せる手掛かりが掴めそうなら乗っかるわ。爆破の障害は取り除きたいから」
再び出会った両者は互いに歩んできた道のりを説明する。
共に死者の戦果を上げているものの、無傷という訳には進んでいない。
元より手は結んでいるが、やはり一人で多くの参加者を殺すのは骨が折れる。
同盟を掻き消すことなどしなく、情報交換を行い次の進路はアインクラッドに。
「そうか……それで、客は君の友人かね」
「あんたじゃないの。少なくとも私の客《知り合い》じゃあないわ」
問題も無く進んでいる情報交換に何やら聞き慣れない単語が飛び交う。
客――新たな来訪者でも現れたのだろうか。
しかし図書館のメインルームに滞在しているのはキング・ブラッドレイと御坂美琴だけ。
けれど大総統は抜刀すると剣を一振り。
何も無い空間を一閃した虚への一撃ではあるが、何かが響く。
目を凝らしていると、どうやら糸のような物が彼に向かって伸びていたようだ。
「完全な奇襲ではあったが、まだ気配を殺し切れていない。
先程までは普通の人間であった存在からしてみれば――大したものだがね、島村卯月君」
哀れな哀れな少女さん。
迷い込んでしまったのはおかしなおかしな世界。
いつものように過ごしていた生活には戻れません。
何度繰り返しても。
何度繰り返しても。
何度繰り返しても……。
(き、気付かれて……逃げなきゃ……っ!)
図書館で談話しているキング・ブラッドレイを殺さんと糸を伸ばしたが気付かれていた。
由比ヶ浜結衣を殺すきっかけとなり、セリューをも殺そうとしたホムンクルス。
会話する余地も無く制裁対象ではあったが、格の違いを一瞬で悟った。
剣一振りで糸を弾き返す存在に勝てる訳が無い。
思えばセリューも最期までキング・ブラッドレイには苦戦していた。
自分が勝てる道理など、どう発想すれば辿り着くのか疑問に思ってしまう。
何処か調子に乗っているような、何でも出来る気になっていたかもしれない。
「この糸は……やはり賢者の石が使われている」
追い掛けて来ないキング・ブラッドレイを気にしつつも島村卯月は糸を回収し撤退する。
勝てない、殺される、逃げないと。
考えるよりも先に本能が叫ぶままに行動を取るが――敵は一人ではない。
ホムンクルスと会話する女も悪だ。
殺してもいい存在だ。糸で首を撥ねてしまっても誰も悲しまないだろう。
回収する矛先に力加減を調整し、女の首を狙うように仕向けるも――格の違いを見せつけられることになる。
女は首を捻り糸を回避すると、軽く指先を弾く。
島村卯月が気付いた時には、髪を結んでいたリボンが完全に焼け落ちていた。
「え、え……え……?」
理解が追い付かない。
電気が走ったかのように眩きを感じ、瞳を閉じた。そして開ける。
すると自分のリボンが消えていた。仕掛けは不明だが仕掛け人は女だ。
種の分からない現実は単純に恐怖心を煽る。
次にもう一度行われては、島村卯月に対処する方法など存在しない。
今は逃げる。ただそれだけを考えて逃げればい。
幸い敵は追い掛けて来る素振りを見せないのだ。この機を活かさなければ確実に死んでしまう。
島村卯月が目指すは先程滞在していた駅長室。
その後、セリューと合流するために民宿を目指す。
憧れの人に逢えれば――それでもう、満たされるから。
島村卯月が逃げた後にゆっくりと、図書館から出て来るキング・ブラッドレイと御坂美琴。
傷も負って無ければ、精神的な疲労も一切受けていない。
御坂美琴は聞いた所、襲撃してきた女は島村卯月という名前らしい。
何でも戦う力を持たない少女だったらしいのだが、先の姿を見るに信じられない。
彼女も変わった人間なのだろう。何処かの超能力者と同じように。
しかし言ってしまえばそれだけの存在であり、見逃した所で何一つ問題など無い。
「そう言えば、逢ったわよ」
思い出したように御坂美琴が呟く。
それは図書館に来る前に出会った独りの少年の話。
「セリム・ブラッドレイ……何か迷っているみたいだったけど――ってあんた聞いてる?」
隣を見るとキング・ブラッドレイは少し笑っていた。
可笑しい事を言ったつもりはない御坂美琴だったが、反応が反応である。
少々苛立ち混じりに言葉を放ってしまったが、彼は怒らずに言葉を返す。
「その話――道中に聞かせて貰おうかね」
ホムンクルスは実際に血の繋がりがあるのだろうか。
それは親心か、単なる好奇心かは不明だが――彼は笑っていた。
【D-5/図書館/一日目/夕方】
【キング・ブラッドレイ@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
[状態]:疲労(中)、出血(小)、腕に刺傷(処置済)、両腕に火傷(処置済、腹部に刺し傷(致命傷ではない、処置済)
[装備]:デスガンの刺剣(先端数センチ欠損)、カゲミツG4@ソードアート・オンライン
[道具]:新聞、ニュージェネレーションズ写真集、茅場明彦著『バーチャルリアリティシステム理論』(全て図書館で調達)
[思考]
基本:生き残り司令部へと帰還する。そのための手段は問わない。
1:橋を渡り御坂美琴と共にアインクラッドに向かう。
2:ヒースクリフ(茅場明彦)と接触し、情報を聞き出す。
3:自分の素性を無闇に隠すことはしない。
4:稀有な能力を持つ者は生かし、そうでなければ斬り捨てる。
5:プライド、エンヴィーとの合流。特にプライドは急いで探す。
6:エドワード・エルリック、ロイ・マスタング、有益な情報、技術、帰還手段の心得を持つ者は確保。現状の候補者はタスク、アンジュ、余裕があれば白井黒子も。
7:エンブリヲ、御坂美琴にもう一度会ったら……
8:島村卯月は放置。
9:自分が不利だと判断した場合は殺し合いの優勝を狙うが……
[備考]
※未央、タスク、黒子、狡噛、穂乃果と情報を交換しました。
※御坂と休戦を結びました。
※超能力に興味をいだきました。
※マスタングが人体錬成を行っていることを知りました。
※これまでの戦いを経て、「純粋に戦いたい」「強い者と戦いたい」という感情が無意識に大きくなりつつあります。
※糸(クローステール)が賢者の石で出来ていることを確認しました。
【御坂美琴@とある科学の超電磁砲】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、深い悲しみ 、自己嫌悪、人殺しの覚悟
[装備]:コイン@とある科学の超電磁砲×3 、能力体結晶@とある科学の超電磁砲
[道具]:基本支給品一式、回復結晶@ソードアート・オンライン、アヴドゥルの首輪、大量の鉄塊
[思考]
基本:優勝する。でも黒子たちと出会ったら……。
0:DIOは絶対に殺す。
1:橋を渡りキング・ブラッドレイと共にアインクラッドに向かう。
2:もう、戻れない。戻るわけにはいかない。
3:戦力にならない奴は始末する。 ただし、いまは積極的に無力な者を探しにいくつもりはない。
4:ブラッドレイは殺さない。するとしたら最終局面。
5:殺しに慣れたい。
[備考]
※参戦時期は不明。
※槙島の姿に気付いたかは不明。
※ブラッドレイと休戦を結びました。
※アヴドゥルのディパックは超電磁砲により消滅しました。
※マハジオダインの雷撃を確認しました。
何を勘違いしていたんだろう。
自分が強くなった訳ではないのだ。変わっていない。
けれど、キング・ブラッドレイに挑んだということは何処か自信かあったのだろう。
本田未央と西木野真姫。
彼女達相手には有利に振る舞えた。
覚悟をしていない同じ普通の少女達と戦えば有利になるのは当たり前である。
此方には武器がある。決意がある。同じ代表に立つ人間としては器が異なる。
しかしそれが元から格上であるキング・ブラッドレイに勝てる発想には決して繋がらない。
帝具は強力だ。
使い切れていなくても充分脅威になる優れた暗器ではあるが、自身が強くなる訳ではないのだ。
島村卯月は何処か自分が強くなったと過信していた。
元々アイドルだった自分に戦える力など在るはずが無い。けれど夢を見ていた。
憧れの存在であるセリューの隣に立てると勝手に勘違いしていた。
島村卯月は弱い。
何を思い上がっているのか。人を殺せる訳など無いだろうに。
故に島村卯月は憧れていた場所をただ遠くから見ていただけである。
見ていただけであり、決して自分がその場所に立っている訳ではないのだ。
哀れな哀れな少女さん。
迷い込んでしまったのはおかしなおかしな世界。
いつものように過ごしていた生活には戻れません。
だから今度こそ……逃がさない。
再び駅員室に戻った島村卯月は喉が乾いたのか、流しの蛇口を捻りコップに水を溜める。
それを一気に飲み干すとぷはー、っと声を漏らし一息付けたようだ。
キング・ブラッドレイとあの女から逃げる際、死を覚悟していたが彼らは追って来なかった。
詮索はしない。生きているだけで有り難いと思うべきである。
「………………首は、ある」
優しく自分の首に手を携えて、生きていることを再確認する。
そう、私は生きている。何度も自分に言い聞かせるように、何度も、何度も繰り返す。
「流しが詰まっていますね」
タオルを手に纏い、排水部分に詰まっているであろう汚物を撤去する。
別にする必要も無いが、育ちがいいのだろう。自分から率先して行う所謂良い子が彼女である。
「何かぬめっとし――――――――て」
手に取った物を一度落としてしまう。
うずらの卵程のサイズでぬめり感があったそれを拾い上げると、驚きの声を漏らす。
声を追い掛けるようにそれをまた落とし、今度は流しに向かって込み上げる嘔吐物を吐き散らす。
何故だ。
手に取ったそれは危険の証である。こんな物が流しに詰まっている筈がない。
自分が先に訪れた時には無かった。そうすると去った後に誰かが来たのだろうか。
ならば危険人物が近くに滞在している可能性があり、この空間の危険度は大きく跳ね上がることになる。
『うーん、ちょっと硬いかなあ』
ノイズ混じりに声が走る。
聞き慣れなた声だ、自分の――島村卯月の声だから。
「何かを思い出し――うっ」
込み上げる嘔吐物を一旦堪え、ゴミ箱の方へ移動する。
『思ったよりも骨って硬いんですね……硬いから骨か』
流しに向かっていれば異臭が常に身体を襲い、吐き気と罪悪感が押し寄せる。
――罪悪感が島村卯月の中で蘇る。
『ここを繋ぎ合わせれば……うーん裁縫よりも難しいです』
其処にあった【彼女達】は消えた。
何処に行ったかと尋ねられれば死んだ――天国へ行っとでも回答しようか。
けれど駅員室に運ばれた時点で【彼女達】は死んでいた。
ならば誰かが【彼女達】を運んだ証拠であり、【彼女達】とは【死体】を表す。
島村卯月が先程見つけた【ソレ】は【彼女達】の物である。
どちらかの【ソレ】かは解らないが、人体の部品であるが故に【死体】から零れ落ちたのだろう。
『この糸を使っていたのはとっても器用な方だったんですね。私もセリューさんの役に立ちたいから……頑張らないと』
思い出した、と島村卯月は口を抑える。
そうだ、【彼女達】の行先を島村卯月は知っているのだ。
何処かにある【死体】の場所も把握している――動かしたのは自分だから。
『ぐちゃぐちゃして気持ち悪い――ごめんなさい』
「わ、私……っ! ぅああ!! ああああああああああああああ、どうか、ああ、どうかしてい、て……………」
叫ぶ。叫ぶ。叫ぶ。
思い出してしまった、嗚呼彼女は忘れていればいいものを思い出してしまった。
駅員室を飛び出す前に島村卯月は【彼女達】を使って練習をしていた。
帝具であるクローステール――殺人をも可能にする糸の実験に【死体】を使用した。
『何度もぐちゃぐちゃにしてごめんなさい。その代わり――』
「あ、ああ、あああ、あああ、あ、あ、あ、ああ、あああ、あああ、あ、あ、あ、、ああ、あああ、ああ、」
我慢出来なくなった島村卯月は全てを思い出しながらゴミ箱を開ける。
もう駄目だ、抑えきれない、何で、どうしてこんなことに、ごめん、な、さいと呟きながら。
そして島村卯月は【彼女達】と対面する。
何故ゴミ箱を開けた所で【死体】と再開することになるのか。
答えは一つであり、島村卯月は知っていた。何せ【彼女達】を使って実験したのは。
「ご、、めんね、、、、あ、、あ、、ああ、あ、あああ、あ、あ、うゅ、、、、、ぉぉぉおぉろ、、ろぉぉろおぉぉぉ、、おろぉぉ、ああ、あ、ぉおお、あ」
そして耐え切れなくなった【殺人鬼】は【死体】に向かって嘔吐物を吐き散らす。
ゴミ箱から覗く顔に【ソレ】は――【目玉】は付いていない。
練習した後の【ゴミ】はゴミ箱に捨てられていた。
身体はバラバラとなり、所々に欠陥を残しながら無理やり詰め込められている。
これは【ゴミ】であり、【成果品】ではない。
それもその筈だ。
椅子に座っている【彼女達】は――崩れた表情でずっと、ずっと島村卯月を見つめているのだから。
哀れな哀れな少女さん。
迷い込んでしまったのはおかしなおかしな世界。
いつものように過ごしていた生活には戻れません。
運命からは逃げ切れませんでした。
異なる会場に集められても、希望は残っていませんでした。
奇跡に縋ることも出来なくて、少女さんの夢は儚く消えました。
でも、悲しいことだけではありません。
少女さんと女神はまた出会う事が出来ました。
でも、嬉しいことだけではありません。
女神さんは死んでしまい、少女さんも死んでしまいました。
哀れな哀れな少女さん。
迷い込んでしまったのはおかしなおかしな世界。
いつものように過ごしていた生活には戻れません。
死んでしまっては少女さんはもう、繰り返すことができません。
何度も、何度も、なーんども。
繰り返していたことは死んでしまって、終わってしまいました。
でも、大丈夫。
哀れな哀れな少女さん。
迷い込んでしまったのはおかしなおかしな世界。
いつものように過ごしていた生活には戻れません。
もう離れ離れにはなりません。
天国で一緒だから? ううん、違います。
だってもう女神と少女さんは一緒だから。
辛い時には肩代わりして、一緒に悲しんで、一緒に笑ってくれる。
だから怖くありません。
ずっと一緒だから。
永遠に女神と少女さんはくっついているから。
もう離れ離れになりません。
ずっといっしょだよ。
ふたりはえいえんにいっしょだからもうはなれません。
【D-6/駅員室/一日目/夕方】
※駅員室の流しには目玉が転がっています。
※駅員室のゴミ箱には魔法少女のゴミが捨てられています。
※駅員室の椅子には左半身が鹿目まどか・右半身が暁美ほむらの縫われた死体が座っています。
【島村卯月@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:正義の心、『首』に対する執着、首に傷、疲労(大)精神的疲労(極大)吐き気、死にたい、罪悪感、この世から消えたい思い、セリューに逢いたい思い
[装備]:千変万化クローステール@アカメが斬る! まどかの見滝原の制服、まどかのリボン、髪型:ツインテール
[道具]:ディバック、基本支給品×2、不明支給品0~2、金属バット@魔法少女まどか☆マギカ、今まで着ていた服、まどかのリボン(ほむらのもの)
[思考]
基本:島村卯月っ、笑顔と正義で頑張りますっ!!
000:誰か…………………
0:線路の修復が完了次第、セリューのもとへと向かう。
1:高坂穂乃果の首を手に入れる。
2:高坂勢力、及びμ'sを倒す。
3:死にたい、助けて、死にたくない、セリューさん………………凛ちゃん、未央ちゃん?
[備考]
※参加しているμ'sメンバーの名前を知りました。
※服の下はクローステールによって覆われています。
※クローステールでウェイブ達の会話をある程度盗聴しています
※ほむらから会場の端から端まではワープできることを聞きました。
※本田未央は自分が殺したと思っています。
※μ's=高坂勢力だと卯月の中では断定されました。
『悪』:高坂穂乃果、白井黒子、小泉花陽、アカメ、泉新一、田村怜子、後藤、足立透、キング・ブラッドレイ、セリム・ブラッドレイ、エンヴィー、キンブリー、魏志軍、アンジュ、槙島聖護、DIO、セリューを撃った高坂勢力の男(名前は知らない)
『正義』:エスデス、ヒースクリフ、ほむらの友達(佐倉杏子、美樹さやか)、サリア、エンブリヲ
『保留』:マスタング、雪ノ下雪乃、ウェイブ
最終更新:2016年03月17日 11:17