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風のイ・タ・ズ・ラ - (2007/10/18 (木) 02:12:12) のソース
**風のイ・タ・ズ・ラ ◆tu4bghlMIw 俺――衛宮士郎は悩んでいた。 思案を巡らせる度に、自然と溜息がこぼれる。 だがその原因を己に与えられた境遇やこの危機的な状況を嘆いている、という解釈でもって解するのでは不適当だ。 「はぁ……」 その気苦労の正体。それは支給品について、だった。 俺はゲームが開始してまず一番初めに名簿を初めとしたデイパックの中身の調査に着手した。 確かに目覚めてすぐ、目の前に正体不明の鞄があれば開けたくなる。 それは紛れも無く道理であり、人として、そして戦士として当然の行動だ。 しかし鞄を開けて一番初めに自分の視界へと飛び込んで来たものを見た瞬間、俺は戦士と言うよりも男として自らの眼を疑わざるを得なかった。 そりゃあさ。 支給品にだって当たり外れくらいあると思うよ。 いや、でもいくらなんでも"アレ"は無いだろ、"アレ"は。 確かに"当たり"に分類される道具も存在はした。 例えば拳銃とその予備弾。説明書にはデリンジャーと書かれていた。 確かに名前ぐらいは聞いた事がある。映画で女性の捜査官などが好んで使う小型ピストル。 マジシャンが行うカードマジックのように、掌の中に銃の全身を隠す事ができる。 こんなものを使う状況には出来るだけ遭遇したくないが、使わなければならない展開もきっと近い内に訪れる気がした。 そして次に暗視ゴーグル。 頭部に付ける事で両手をフリーにしたまま暗闇の中で行動する事が可能だ。 灯りとして支給されたのが、安定性の無いランタンだった事も相成って中々重宝するはず。 しかも光で他人に自分の接近を悟られる事も無いのは大きい。 だけど思った。いくら何でもコレは無い。 彼は考える。主催者は何を考えているのか、と。 デイパックの中にコレを詰め込む、あの髭面のオッサンの姿を思い浮かべると微妙な気持ちになる。 あまり想像していて気持ちの良い光景ではなかった。 月は頭上で爛々と輝いている。 考え事をしながら歩いていると、俺はいつの間にか小さな川(おそらく海に繋がっている)を越え、入り組んだ路地に足を踏み入れていた。 いつの間にこんな所まで。俺は焦った。 これは不味い。脳内を無駄な思索で一杯にしていて利点など一つも無いのだ。 呆けたままの自分でいるくらいならば、悩みの原因を断ち切ってしまった方が良い。 先ほど現れた覆面の男の事も気になるし、油断は出来ない。 緊張の糸を張り巡らせておかなければならないのだ。 だがあの支給品が俺の中にノイズを走らせる。 確かにそこら中に溢れているものだ。店を回ればいくつだって買う事が出来る。 とはいえこの極限状態とも言える状況でアレが支給された意味、そしてソレが自分のデイパックの中に入っているという現実は中々直視し難い。 知らず知らずの内に気になってしまうのだ。 ――そう、ならば。 捨てて、しまえばいいのだ。 その発想はまさに天元突破。頭上に電球を浮かべるだけの価値がある選択肢だった。 確かに仮にもアレは支給品。仮にもあの螺旋王ロージェノムが選定した道具の一つではある。 だが、これが役に立つ機会が訪れる可能性は限りなくゼロに近い。 いやまず文頭に"If"を十個ぐらい付ける。そして空想、次に仮定だ。 例えば様々な事情でアレを無くした相手に遭遇したとする。 そして颯爽と無言でアレを手渡す自分。 …………無いな。天変地異が起こっても在り得ないシチュエーションであると自信を持って断言出来る。 よし、捨てよう。早く捨てよう。 俺はようやく決まった方針に心を震わせ、デイパックを地面に降ろす。 周囲を軽く見渡し、襲撃者がいない事を確認。 ひとまずは大丈夫だと思うが、万が一の事態に備えて干将莫耶を投影しておく。 そしてデイパックを開く。 飛び込んで来る色彩。そして形も様々なソレ。 ごくり、と息を呑む。……駄目だ、これでは違う意味で興奮しているみたいだ。 雑念を振り払う。 ひとまず他の支給品を取り出しておくべきか。 デリンジャーの安全装置を確かめポケットに、次に暗視ゴーグルを―― 「そ、そこのお前ッ!! いい加減にしろ!!」 ■ 時間は少々遡る。 それは衛宮士郎が路地裏で支給品の確認をする数十分前の出来事。 「ドモン、待たせたな」 「ん……大丈夫だよ」 邂逅から数分。支給されたソレに袖を通す。 馴染みのライダースーツ……。 黒字に赤のラインが入った特注の物だ。 どうやらコレも私の支給品らしい。その証拠にデイパックの中には、あと二つだけしか特別なものは支給されていなかった。 参加者に縁のある品物が渡される場合もあるのか、と納得しておく事にする。 「よし行くぞ、ドモン。安心しろ、私についてくれば何の問題も無いからな」 「う、うん。分かったよ、なつきお姉ちゃん」 薬局で出くわした私とドモンは軽い問答の後、しばらく行動を共にする事にした。 確かに疑惑は晴れない。 このゲームに参加している人間は誰もが何かしらの特殊な能力を持っている――という仮説はおそらく正しい。 故にこのドモンも常人とは違った特殊性を持っているはずなのだが……未だその糸口さえ掴めていないのだ。 本人は否定する。自分は何の力も無い普通の子供であると。 だが炎凪や風華真白、アリッサ・シアーズのように見た目とその中身が比例しない事は多々ある。 とはいえ――。 さすがに……こんな子供を置いていく訳にもいかないか。 私達は互いの情報を交換しながら路地の奥の方へと進んだ。 頭上に見える高速道路、周囲の建物の配列から察するにここはA-6。 道なりに進もうかとも考えたのだが、止めた。 この空間に飛ばされてからまだ幾時間も経っていない。出来るだけ重要な事は周囲の状況を確認する事だ。 人通りの多そうな通りを移動して、誰かに襲撃されでもしたら元も子もない。 しかも今の私は一人ではない。ドモンを連れたまま、危険な行動を取るのは吝かではない訳だ。 少年、ドモン・カッシュが言うに名簿の中に知り合いは一人もいないらしい。 こんな小さな子供がたった一人で殺し合いに参加させられている、不信に思う部分もあったがどちらかと言えばやはり同情が勝る。 建物の角を曲がり、気配のする方向に向けて壁を盾にしながら少しだけ顔を出す。 視界に入って来たのは信じられない光景だった。 「な……ッ!?」 T字路の先には男がいた。 男と言っても若干赤みの掛かった髪色をした同年代くらいの少年だ。 彼は地面に自らのデイパックを置いて、中に手を突っ込んで支給品の確認をしているようだった。 だが、それはいい。特別な問題ではない。 彼は顔付きも大人しそうで、少なくともゲームに乗った狂人には見えなかった。話し合う余地は十分にあると思われる。 一つ、ある一点を除いた話ではあるが。 「どう、して……あれが……」 「……どうかしたの、お姉ちゃん? 誰かいたの?」 ドモンが不思議そうな顔をしながら、こちらの様子を伺う。 しかし、私にはそんな視線に応えるだけの余裕は無かった。 見間違うはずが無い。 男のデイパックの中に詰め込まれている"アレ"は私の所有物なのだから。 正確には『私のものだった』ではあるが。 それは蝕の祭が開始される大分前、まだ私達が特別な理由も無くオーファンと戦っていた頃まで遡る。 ――下着泥棒。 乙女の純情を踏み躙るまさに醜悪、下劣の一言でしか言い表せない行為。 この風華学園始まって以来の事件に女子生徒達は頭を悩ませ、恐怖に打ち震えた。 私もそんな被害に遭った人間の一人だ。 しかも一枚や二枚の騒ぎではない。ゴッソリとコレクションしていた数百枚近い下着全てを盗まれたのだ。 常日頃から下着類を収集する趣味があった私にとってそれはまさに晴天の霹靂。 それ故とんでもない格好で登校する羽目になり、あまつさえ武田の奴に……。 ……思い出すのも憎々しい、屈辱の一日だった。 しかも最後にはデュランの砲撃によって(これは半ば私のせいなのだが)全てが灰になってしまった。 そう、今目の前にあるのはその時焼失したはずのパンティーの数々。 あのフリル付きの奴だとか少し露出度の高めの奴だとか。 アレもソレもコレも、ああどう見ても私のものだ。 顔が熱い。唇が勝手にワナワナと震える。 何故全て焼失したはずのアレがここにあるのか。そんな事をじっくりと考えるより先に身体は動いていた。 「ド、ドモン……少し、ここで隠れていろ? いいな? 動くんじゃないぞ?」 「なつきお姉ちゃん? ……どうしたの、顔真っ赤だよ?」 「いや、な、何でもない。いいか、分かったな!」 ドモンがあどけない瞳を丸くしながら、疑問の色を更に濃くする。 だが私の数回に及ぶ念押しの末、ようやくしぶしぶと首を縦に振った。 そして私は通りの向こうの男に向けて大声で怒鳴りつける。 「そ、そこのお前ッ!! そこまでだ!!」 ■ 「お、お、お、お前っ!! 何を……何を、持っている!?」 「……何をって、見りゃあ分かるだろ」 腰まで届きそうなくらいの長髪を震わせながら不躾な一言。 とんでもない大声と共にいきなり現れたのは、黒のライダースーツを着込んだ黒髪の女だった。 女は今にも蒸気を噴出しそうなくらい顔を真っ赤に染め、こちらを一喝。今にも殴りかかって来そうだ。 挨拶も無しにいきなりソレかよ、と俺は少し不快感を覚えた。 もしかしてゲームに乗っているのか? そんな疑問も浮かぶが、おそらくそれは無い。 なぜなら彼女の目的は俺の命と言うよりも俺の持ち物にあるらしいからだ。 何を持っている、という事はつまりこの右手で掴んでいる"暗視ゴーグル"の事を言っているのだろう。 他に怪しいものと言えば……まぁ、一応あのデイパックの中を埋め尽くしていたパンツの山も怪しさ爆発ではあるが。 とはいえこれら女物の下着は所詮既製品。遠目から見て区別が付くとは思えない。 余程特徴的な形をしているか、強い思い入れが無ければ在り得ないだろう。 この暗視ゴーグルが、あれほどの大声を出す原因になる理由も良く分からないとはいえ。 「よこせッ!!」 「はぁ?」 「いいから早くそれをこっちに渡せ!!」 女は一歩前へと足を踏み出し、強く要求する。 こちらの事情など何も考えていないと思われる直情的な行動。 俺はそんな事よりもこのパンツの山を処分したいのだ。 身勝手な相手の態度には、こちらもそれ相応の対応で構わないと判断した。 「……やだね、少なくともコレは俺に支給されたものだ。元はアンタの持ち物だとしても所有権は俺にある」 「な、何だとっ!! いや……まぁ、確かにその通りだとは思うが……とはいえ、お前には不要なものだろう?」 正論。確かにコレは元々女の持ち物かもしれない。 だが、このゲームの中では俺に支給された道具だ。ソレをタダで渡す理由は無い。 女は俺の台詞に大層衝撃を受けたようで、ウッと嗚咽を漏らし一歩後退。 しかし妙な事を言う。 この道具は別に使用者を選ぶものでは無い筈なのだが。 だから俺は言った。ごく普通に。 息をするように、食事をするように、睡眠を取るようにその一言を発した。 「使えるだろ? 普通に」 「へ?」 「不要も何も、そのまま身に着ければいいじゃないか」 「――ッ!!!!!」 女が息を呑んだ。 ……俺、そんなに変な事言ったか? 疑問に思いつつも続ける。 この"暗視ゴーグル"の用途を。 「これは……頭に巻きつけたりすればいいのかな」 「こ、こ、こ、」 「ん?」 「この……ド変態がああああッッ!!」 瞬間、俺は信じられない光景に遭遇した。 『女の両手に銃』が出現したのだ。 背筋に電撃が走る。だが戦いに慣れた身体は自然とその状況における最善の行動を取る。 右手で投影しておいた干将莫耶を構え、デイパックを背負う。そして対峙。 だが頭の中は混乱したままだ。 在り得ない。なぜなら今、彼女は俺が行うソレと同じように――銃を投影したのだから。 「そこになおれッ!!」 そして発砲。挨拶とばかりに数発の弾丸が飛来する。 干将莫耶でソレを――いや、牽制か。 この軌道、おそらくまともには一発も当たらない。弾速も見切れないほどではない。 下した判断は正しく、軽く身を捩っただけで弾は一発も当たらず通りの向こうへと消えた。 「ちッ!! その腐った性根、叩き直してやる!!」 「おい待て!! お前、今投影したのかッ!?」 わざと外しているのか、女の放つ銃弾は俺とは微妙にずれた射線軸を描く。 だがさすがに突っ立っている訳にもいかず、後退せざるを得ない。 確かに獲物のリーチを考えれば接近するのが最善の策なのだろう。 相手の武器は銃。必ず弾が切れる瞬間が到来するからだ。 しかし、その銃が投影によって創られた武器であるならば話は別だ。 確信こそ持てないが、限りなくソレに近い予感はある。現に女は両手の銃からその体積以上の弾丸を発射しているのだから。 しかもその連射は明らかに『リロード』という概念を取捨した攻撃。 弾が永遠に切れない、加えてあの連射速度だ。驚異的としか表現出来ない。 今はコチラをからかうように全ての銃撃を外しているから良いものの、おそらくそれは自信の表れ。 本気になればいつでも俺を蜂の巣に出来ると暗に言いたいのだろう。 舐められたものだ、と唇を噛む。 「投影? 何を訳の分からない事を言っている!? クソッ、デュランさえいれば……」 俺は弾丸の嵐を掻い潜りながら考える。 彼女はおそらく魔術師ではない、と思う。まず、一切の魔術回路を確認出来ない事。 俺は遠坂ほど索敵系の能力は強くないが、彼女の体内に全く魔力の流れを感じ取れない事は確か。 巧みな技術で隠蔽している可能性もあるが、さすがにそこまで行かれると俺の能力外だ。 だがそれと同時に投影で無ければ何なのだ、という疑問が浮かび上がる。 投影<<グラデーション・エア>>は一般的には非常に効率の悪い魔術で、この魔術を得意としている魔術師はほとんどいないと遠坂からは聞いている。 まず一から十まで全て魔力で再現する上に、人間のイメージは穴だらけであるためオリジナル通りの性能など望めないため。 加えて投影した物は結局幻想であるが故に世界にリペントされ、次第にただの魔力塊に戻ってしまうという欠点を持っているためだ。 つまり俺やアーチャーのように、宝具を再現出来たりするのは例外中の例外で普通では無いと言う事になる。 だが彼女の手にある拳銃から感じる印象は明らかに本物のソレ。 どう見ても"完全"に投影されている。 ――だが。 魔力を感じないと言う事は、あの銃の構成を魔力以外の力を使って行っているという訳。 しかしソレは一体どんな原理なのか? ……分からない。どうなっているんだ? 俺は数々の疑問を抱えながら、逃亡を開始した。 ■ 私、チェスワフ・メイエルは憤慨していた。 何に、と言われれば私を置いて茶色の髪をした少年を追い掛けていってしまった玖我なつきに対してだ。 ――使えない。 確かに私は不死者。この世の理から外れ永遠の命を生きるもの。 だが力自体は普通の少年のソレと変わらない。 いかに死なない、とは言っても、殺す技能に長けている訳では無いのだ。 故に銃を何も無い場所から作り出す能力を持つ、玖我なつきと行動を共にする事にした。 彼女は私を庇護しているつもりだったのだろうが、その実は単純なる変わり身。 せいぜい死ぬまで利用してやろう、そんな事を考えていた。 だが、現実はどうだ。 護るべき対象である私を放り出し、自らと縁のある品物を持つ男を追い掛けて行ってしまった。 もしもこの場に殺人鬼やゲームに乗った人間が現れたらどうする? 私はあっという間に殺される。無残に、惨たらしく、花の茎を折るように容易く。 そんな事も想像出来ない者に同行者としての価値も無い。 加えて思ったほど彼女は射撃が上手くない――ような気がする。 銃を作り出す能力、などという便利な特技を持っているのならば、ソレを十分に生かせる程度の腕前はあると思ったのだが……。 いや、おそらく気のせいだ。 狙って外していたに決まっている。 そうでも無ければあそこまで乱射して、一発たりとも当たらないなんて奇跡が起こるはずは無いのだ。 そう考えると更に庇護者としての条件は悪化する。 私がいるのだから、さっさと足でも打ち抜いて無力化してしまえば良かった筈。 それをしなかったという事は彼女も私に対してあまり良い感情を抱いていなかったと言う事の裏付けになる。 「……行くか」 既にここに留まる理由は皆無。 もう少し、利用しやすい人間かとにかくそれに類する人間。 分かり易く、高い能力を持った参加者と接触する。 今はまだ積極的な行動に移る時では無い。時間はもうすぐ四時。直に夜も明ける。 【B-6 道路(マップ左上) 一日目 黎明】 【チェスワフ・メイエル@BACCANO バッカーノ!】 [状態]:健康、なつきに失望 [装備]:なし [道具]:支給品一式、アゾット剣@Fate/stay night 薬局で入手した薬品等数種類(風邪薬、睡眠薬、消毒薬、包帯等) [思考] 1:ゲームに役立ちそうな人間と接触する 2:アイザック、ミリア、ジャグジーに警戒 3:自分以外に不死者が存在するなら、喰われないよう警戒する [備考] ※なつきにはドモン・カッシュと名乗っています ※不死者に対する制限(致命傷を負ったら絶命する)には気付いていません ※参戦時期は食堂車に黒服集団(レムレース)と白服の男(ラッド一味)が現れた直後です よって、ラッドの事やレイルトレーサー(クレア)の事を知りません ■ ――ドモン、だと? 私は走り去る少年の後ろ姿を見詰めながら思索に耽っていた。 "なつき"という少女と"ドモン"と名乗る少年が接近していた事に、当然私は気付いていた。 茶色の髪の少年は無用心にも道のど真ん中でデイパックを広げていたため、ギリギリまでソレに気付かなかったようだが。 直接二人の声を聞いた訳では無い。 だが唇の動き――読唇術で二人が何を喋っているかは十分に知る事が出来た。 そして確かに少女は呼んだのだ、連れの少年を"ドモン"と。 このゲームに参加している人間に二人も"ドモン"という名前の者は存在しない。 精々被るのは『エドワード』という名前ぐらい。 つまり、あの少年は何らかの理由で偽名を名乗っているという事になる。 確かに相手を警戒する、という心がけは重要だ。 だが偽名を使う、となると話は別。明らかに信頼関係を構築する意志がない事を暗に意味している。 しかしあんな幼い少年がゲームに乗っている、と問い掛けられれば疑問符を浮かべざるを得ない。 さて、どうする。 当初の目的通り、少年を追いかけるべきか。 それとも何故か"ドモン"という名前を名乗っている少年にターゲットを変更するか。 両者とも大して離れてはいない。 今からならば、どちらにも追いつく事が出来るだろう。 この状況下で私が取るべき選択肢は―― 【A-6中心部/ 一日目 黎明】 【シュバルツ・ブルーダー@機動武闘伝Gガンダム】 [状態]:健康 [装備]:いつも通りの覆面スーツ(ブーメラン付き) [道具]:赤絵の具@王ドロボウJING、自殺用ロープ@さよなら絶望先生 [思考] 0:衛宮士郎、またはチェスワフ・メイエルを尾行する(どちらを追い掛けるかは次の書き手さんに任せます) 1:このファイトの破壊、犠牲者を最低限に食い止める(悪人には容赦しない)。 2:士郎を隠れて見張る。命に関わる時は助け、必要に応じて叱咤し教育する。 3:ドモンと合流。ただ、それほど焦る必要はないと感じている。 ※制限には薄々感づいているようです。 ※電流爆破金網時限デスマッチでドモンと戦った後、もしくはデビルガンダムと共に吹き飛んだ後から参戦。 後続の書き手の方が書きやすいほうを選んでください。 ※完全に気配を遮断しているため、よほどの達人でない限り感づかれることはありません。 ■ 「はぁ、はぁ、はぁ……いい加減、観念したら……どうだ。変態め――」 「アンタ……こそ……何、意味の分からない事を……」 私の下着を持った男を追い回して数十分。 ようやく私は奴を追い詰めた。 背後は川、つまり背水の陣という奴だ。 風は凪、水は時化。 月は空を照らし、紺碧の空は雲一つない純粋な暗闇。 私も男も汗だくだ。フルマラソンでも走った後のような強烈な動悸が止まらない。 ここは一体何処だ。すぐ側に水が流れている事からどこかの川沿いだという事は分かる。 とはいえ、今現在優先すべきはこの変態男から下着を奪い返す事だ。 しかし油断は禁物。 相手は一度も反撃して来なかったものの、同時にこちらの弾丸も未だ一発も命中していない。 余程の使い手なのだろうか、まさかこれだけ撃って全てかわされるとは思わなかった。 「しかし……女の下着を履く所か……く……あ、頭に巻く趣味を持った男がこのゲームに参加しているとはな……」 言葉にするだけで恥ずかしくなる。 そういう趣向を持った人間が存在する事はニュースや噂などで聞いた事はあったが、さすがに本物に出くわした経験は無かった。 だが男はさも当たり前のように言ったのだ。 『そのまま身に着ければいいじゃないか』 『頭に巻きつけたりすればいいのかな』 その話しぶりは明らかに常習犯のソレ。 見たり盗んだりするだけではなく、身に付ける――常軌を逸している。 しかし、次に男から返って来た台詞はあまりにも予想外の一言だった。 「下着……って何言ってんだ? アンタが欲しいのはこの暗視ゴーグルじゃないのかよ?」 「え?」 頭がグルグルする。冷や水をぶっ掛けられた感じだ。 あ……んしゴーグル? コイツは何を言っているんだ? この男は女物の下着を頭に被って喜ぶ変態で―― 「もしかしてアンタが欲しかったのってあのパンツの山か? なら好きなだけくれてやるよ、どうせ捨てる所だったし」 男の言葉を聞いた瞬間、私は崩れ落ちた。 ■ 「……おい」 「スマン、本当に悪い事をした!! この通りだ」 最後は呆気なかった。つまりこの追い駆けっこは完全に彼女の勘違いが原因だったと言うのだ。 女(玖我なつきと名乗った)は頭を下げて、謝りまくっている。 一発も銃弾が命中しなかったため、この程度で済んだのだ。 あの銃(いつの間にか消えている)から発射されていたのは明らかに実弾。 当たれば皮が裂け、肉が弾ける。立派な凶器だ。 「いいよ、結局当たらなかったんだし。ええと……玖我だっけ、それよりアンタの銃について教えて欲しいんだけど」 「銃? エレメントの事か?」 玖我は右手を上げる。 瞬き一つ、次の瞬間その手には先程の拳銃が握られていた。 近くで見ると驚くほど小さい。俺に支給されたデリンジャーと同じくらいなのでは無いだろうか。 だがあの連射、射程、そして給弾を必要としない独特の機構。 銃を模した宝具なんて聞いた事も無いが、優れた能力を持っているのに変わりは無い。 「……やっぱり、魔力の流れは感じないか。"投影"って言葉にも聞き覚えはないだろう?」 「無いな。それに私の力は高次物質化能力――魔法などという小説のような能力とは関係ない」 高次物質化能力か……また妙な単語が出て来たな。 確かに魔術とは別系統の能力者が存在する可能性も高かったが、いきなりそんな人間と出くわす事になるなんて。 遠坂辺りがゲームに参加していたら、どんな顔をしただろうか。 「それより……その、私の"アレ"はお前のデイパックの中か?」 「……ああ、早く引き取ってくれ」 川岸の岩の上に置いておいた俺のデイパックを一瞥しながら玖我が問い掛ける。 俺も若干言葉を濁しながら答える。 他人に自分のデイパックを漁られるのはあまり好ましい事では無いが状況が状況だ、仕方ない。 「いいか、見るんじゃないぞ!!」 「……分かったよ。というかもう散々――」 「うるさい! それ以上言うんじゃない!」 軽く溜息。俺は右手の指で頬を軽く掻いた。 これじゃあどっちの持ち物だが分かったものじゃない。 とはいえ呆れながらも玖我の要求通り、後ろを向く。厄介事は早めに何とかして貰いたい。 「どれ…………う……これは確かに」 デイパックを開ける音、そしてドサドサと何か布が地面に落ちてくる音が続く。 特にやる事もないので何となく、空を見上げた。 少し周りが明るくなってきたような気がする。同時に時計を確認、そろそろ四時になる。 それに頭上の雲の様子を見るに風も吹いて来たようだ。 ん……風? 「うおッ!?」 「何だ、風――ッ!?」 まさにそれは風の悪戯。 在り得ない状況における在り得ない現象。 これだけ空は晴れているのに。雨雲も何も無いはずなのに。 何だこの何もかもを吹き飛ばすような"突風"は? 「おいッ!! 玖我、あ……」 「あ、あ、あ、あ…………」 振り返った俺の視界に飛び込んで来たのはカラフルでヴァリエーションに富んだ下着が風に飛ばされ、川に落下し流されていく光景、そして――。 地面に膝を付き、がっくりと項垂れる玖我の姿だった。 【A-4 川岸 一日目 黎明】 【玖我なつき@舞-HiME】 [状態]:疲労(中)、チェスに軽度の不信感、下着を流されたショック [装備]:ライダースーツ@舞-HiME [道具]:支給品一式、風華学園高等部制服@舞-HiME、不明支給品2(本人確認済み) [思考] 1:私の下着が…… 2:士郎と情報を交換後、チェスの元へ向かう 3:舞衣、静留、奈緒と合流する 4:この殺し合いから脱出する [備考] ※チェスの名前をドモン・カッシュだと思っています ※なつきは以下の仮説をたてました ・今回の殺し合いは蝕の祭をモデルにした物 ・テッカマンとHiMEは似たような存在 ・螺旋力=高次物質化能力に近い特殊な力 ・螺旋遺伝子を持った者=特殊能力者 ・この殺し合いの参加者は皆、何かしらの特殊能力を持っている ※参戦時期は蝕の祭が終了した後です 【衛宮士郎@Fate/stay night】 [状態]:疲労(中) [装備]:デリンジャー(2/2)@トライガン [道具]:支給品一式、暗視ゴーグル、デリンジャーの予備弾20 [思考] 1:殺し合いを止める。 2:イリヤの保護。 3:できる限り悪人でも救いたい(改心させたい)が、やむを得ない場合は―― ※投影した剣は放っておいても30分ほどで消えます。 真名解放などをした場合は、その瞬間に消えます。 ※本編終了後から参戦。 ※なつきのパンティーコレクション@舞-HiMEは全て川に流されました。どこに流れ着くのかは不明。 ※士郎はなつきが凄まじい銃の腕を持っていると思い込んでいます。 [補足] 【なつきのパンティーコレクション@舞-HIME】 数百枚にも及ぶ女性物の下着。 持ち主である玖我なつきの最大の趣味、それは下着を集める事。 特にパンティー収集は彼女の最大の関心事である。 原作ではこのコレクションを全て盗まれ、ノーパンで過ごしている所を舞衣達に見つかった辺りからなつきのヘタレ街道が始まった訳で……。 ちなみにその話のラストで全部焼失している。 【デリンジャー@トライガン】 メリル・ストライフが愛用する小型拳銃。 掌の中にすっぽりと収まるため、暗殺には重用する。 射程が短く、装弾数も少ないため使い方には注意が必要。 *時系列順で読む Back:[[夜に起きてれば偉いのか?]] Next:[[今 そこにいる私]] *投下順で読む Back:[[夜に起きてれば偉いのか?]] Next:[[今 そこにいる私]] |032:[[汝は~なりや?]]|チェスワフ・メイエル|088:[[阿修羅姫(前編)]]| |009:[[バトルロワイヤル開始! ファイター大集合!]]|シュバルツ・ブルーダー|084:[[セカンドチャンス]]| |032:[[汝は~なりや?]]|玖我なつき|074:[[片道きゃっちぼーる]]| |009:[[バトルロワイヤル開始! ファイター大集合!]]|衛宮士郎|074:[[片道きゃっちぼーる]]|