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  • 二人がここにいる不思議(前編)

二人がここにいる不思議(前編)

最終更新:2023年06月21日 23:57

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二人がここにいる不思議(前編) ◆LXe12sNRSs




 西方から来る夕焼けが、ギルガメッシュと結城奈緒の影を朦朧とけぶるように見せる午後の街道。
 アレンビー・ビアズリーが南へ向かうのを目に焼き残し、数瞬後には何事もなかったかのように羽を伸ばす二人。

「――んで、次はどこへ行く?」
「そうだな――」

 珍妙な出会いから、もうすぐ丸一日が経過しようとしていた。
 当初はデコボココンビという称号がこれ以上ないほど当てはまっていた二人だったが、現在の姿にその面影は微塵もない。
 長年連れ添った夫婦のような、本人たちが意識しなくとも波長を合わせられる、奇妙とも言える息の合いようだった。
 金ぴかの鎧を着こんで、左眼の単眼鏡を律儀に着けたまま、二人きりの旅道中はまだまだ続く。
 怪しげな神父、鉢巻きの武闘家、怯える戦闘機人、青い髪のガンダムファイター、誰もが崩せなかった絶対の関係。
 それは愛や友情とは勘違いもできないほどの特殊な間柄であったが、絆が混在していたことは、誰もが否定しない。
 いったいこの関係は、いつまで続くのだろうか――? いつしか、そんな疑問も抱かなくなっていた。
 心も、考え方すらも、自然に。
 そんなときだった。

「待てい!」

 男と女、王と臣下、金ぴかと蜘蛛女――ギルガメッシュと結城奈緒。
 二人の前に、二人と同様に特殊な関係を築いている、男女が現れたのは。


 ◇ ◇ ◇



 楼閣のように聳え立つ、一軒の民家。
 広々としたバルコニーが備え付けられている三階建ての家屋は、隣接する家屋の様子を見ても、上流家庭の住まいであることが窺えた。
 その、頂上。天守閣を思わせる高所から、腕組みをしながら直下の二人を睥睨する二人がいる。
 見下ろされる二人――ギルガメッシュと結城奈緒は、夕日を背負う二人組に、嫌悪感を含む顰め面を浴びせた。
 見下ろす二人――黒いスーツを着込んだ壮年の男と、ツインテールを風に揺らす少女は、それを意にも介さない。
 屋根の上に仁王立つ二人組、その男のほうが、声をかけた側として本題を質問する。

「ワシの名は“衝撃の”アルベルト。こちらの娘は“不死身の”柊かがみ。訳あって行動を共にしておる。
 貴様ら二人を呼び止めたのは他でもない。どうやらこの殺し合いに異を唱える者達であるようだが――」
「気に入らんな」

 自己紹介から入った男――衝撃のアルベルトの言葉を、ギルガメッシュは怒気混じりの声で遮った。

「出会い頭にこの我を見下ろす姿勢、無礼などという度合いではない。
 ついでに言えばその偉ぶった語調も気に食わん。まずは地に降り、頭を下げるのが礼儀であろう?」

 首を後ろに傾け、顎を上方に逸らし、天を仰ぐという為様が、なによりギルガメッシュにとっては屈辱的だった。
 古来より、王とは民衆の上に席を置くものである。
 民は誰よりも高い位置に在る王を見失わぬように、王はより多くの民を見渡せるように、高低の関係を不動のものとしてきた。
 遥か古代に王を務めたギルガメッシュとて、その風習が確立するよりも後の人生を生きた者である。
 染み付いた慣例は、感情を刺激するほどの性格へと浸透し、怒りを生み出した。

「あー……あのさオジサン。とりあえずそこ、降りない? 意味もなく高いところに上りたがるなんて、馬鹿のすることよ?」

 これまで行動を共にしてきた経験則から学び、ギルガメッシュをこれ以上刺激しない術として、奈緒は穏便に事を運ぼうとする。

「馬鹿と煙は高いところが好き、とはよく言ったものだがな。なに、意味もなくここに立っているわけではない。
 高所から他者を見下ろすというのはなかなかに気分がいいものでな。そこに頭の出来不出来は関係ないのだよ」

 言って葉巻を吸うアルベルト。その傲岸不遜な佇まいに、反省の色や自粛の気配は欠片も感じられない。
 あまりの態度に、ギルガメッシュは苛立ちを増し、つられるように奈緒も眉を寄せた。

「それに、地を歩くのも面倒なのでな。この世界は常在戦場、そこで整地された道をふらつくなど愚の骨頂よ。
 もっともワシのように、狙われにくい高所を移動する術を持ち合わせるか、狙われることを意に介さぬほどの実力があるなら話は別だがな」

 煙を吐き出し、また葉巻を咥える。

「貴様ら二人はそのどちらでもあるまい。大方、自分たちが襲撃されるなどとは夢にも思わぬ浮ついた心でいるのか。
 もしくはそうだな、この舞台をなにかの催しだと勘違い、いや、浸っている夢想人か――」

 語る途中、アルベルトの眼下から一振りの剣が投げ出された。
 大砲のような勢いで直線状に伸びる刃を、アルベルトはしかし慌てず、端にいたかがみを抱えて跳び避ける。
 アルベルトの足先を狙って放たれた剣はバルコニーの足場を粉砕し、その場に僅かな灰色の雨が舞った。
 無礼な言動に怒りを覚え、ついには限界を超え行使された、ギルガメッシュの攻撃――『王の財宝』による巳六射出。
 アルベルトはそれを予期していたかのように避け、元の足場を崩されたことにより地に降り立つ。
 初対面、出会ったまだ数十秒足らず、にも関わらずの攻撃に、奈緒は驚きこそすれど叱りつけたりはしなかった。
 アルベルトに怒りを覚えていたのは彼女も同様であり、またギルガメッシュが黙っているような口もないと知っていたからである。

「――フン。名乗るよりもまず仕掛けてくるとは。よほどしつけのなっていない駄犬と見える」
「吼えるなよ、雑種。貴様の思惑、この我が見透かしていないとでも思うてか?」

 ギルガメッシュの不意打ちに遭いなお葉巻を咥えたままのアルベルトは、小脇に抱えたかがみを下ろし言う。

「ほう、貴様のような若造にこのワシの胸中が読めるとな?」
「ふん。貴様が無礼者であることには変わりないがな、我の怒りを誘い、隙を探ろうとしているのは見え見えよ。
 狡い手だ。そちらの女も含め、とても手を取り合うべく声をかけたとは思えんな。
 大方、利害が一致しただけの一時的な関係……我を狙ったのは、財目当ての愚挙か」
「はずれだ阿呆め。我らの目的は一つ――螺旋王へ至る道、そのための情報入手よ」

 壊れかけの戦闘機人に向けた情け容赦ない殺意を幾時かぶりに再燃し、ギルガメッシュは歯軋りした。
 それを嘲笑うかのように、アルベルトは余裕ぶった所作でまた煙を吐き捨てる。

「貴様らとて、この一日を指針もなく周旋していたわけではあるまい。ワシが欲するはその成果よ」
「ハァ? それってつまりは、ここから脱出したいってことじゃないの?」

 アルベルトの言葉に険しい表情を作るギルガメッシュの横、奈緒が常人としての解釈を疑問に乗せる。

「ふむ。八割は正解と言っておこう。ただし、それは貴様のような小娘が考えつく平和的解決策ではない。
 要点は二つ――螺旋王との接触、ワシとここにいる柊かがみの生還。他の者がどうなろうが知ったことではない。
 優勝という手段でもいいのだが、定員が一名のみとあってはな。他の方法、つまりは脱出策を模索するしかあるまい」
「って、ちょっとあんた! なにべらべらと本音喋っちゃってんのよ!」

 腹の底に蹲る野心、自己中心的なプランを惜しげもなく公表するアルベルトに、隣の柊かがみは声を荒げた。

「なに、この男は虚言が通じる相手ではなさそうなのでな。
 かといって懇切丁寧に協定を申し出たところで、聞き入れはせんだろう。
 ゆえに、ワシは本音を語るのみだ。我らが野望のため、礎になれとな――」

 咥えていた葉巻を教鞭のように突きつけ、アルベルトはギルガメッシュと奈緒の返答を待つ。
 即答はない。が、その表情は見るだけで心中が悟れるほど、不快に歪んでいた。

「……要するに、利用されろってこと? はっ、冗談。オッサン、あたしたちをなめすぎなんじゃない?」
「……無礼者ではなく愚者の類であったか。我の持つ万物、全てがそれ即ち財。知識とて例外ではないと知れ」
「返答はノーということか」
「無論だ」

 譲歩はなく、また交渉の余地もない。完璧なる拒絶が、各組の間に走った。
 ただし話はそれで終わらず、今までの不敬を清算せんとばかり、ギルガメッシュは鍵剣を構え、

「よかろう――ならば、決闘だ」

 アルベルトの思わぬ発案により、一時的に戦意を抑制させられた。

「この世の理はどこも等しく皆力よ。この殺し合いとて、異郷の者も多勢のようだがそれは変わるまい。
 ならば潔く力で決着をつけようではないか。ワシと貴様が戦い、勝者が敗者を従える。そういう条件のな」
「……オッサンが勝ったら、あたしたちはオッサンの下僕になるわけだ。でも、金ぴかはそんな生易しい性格してないと思うけど」
「無論だ。我は雑種を飼い慣らす趣味など持ち合わせてはいない。敗者に振るものなど、死以外にはありえんと心得よ」
「フン。先ほども言ったとおり、ワシが欲するは情報であって貴様らの命ではない。
 貴様が勝ってワシをどうにかするのは自由だがな、ワシが勝った場合、貴様は真に犬へと成り下がると思え」

 両組を隔てていた威圧感という名の壁が、一時的に崩れる。
 両端には、構えを作る二人の男が。

「さぁ、返答を聞こうではないか“金ぴか”とやら!」
「答えるまでもない。そして知れ、我の名は金ぴかではなく“英雄王”ギルガメッシュだ!」

 こうして、戦鐘は鳴らされた――前兆はなく、唐突に、しかしこの世界の理に適った始まりだった。


 ◇ ◇ ◇


 発端は、天へと昇っていく剣だった。
 謎の爆発音を耳にし、柊かがみと衝撃のアルベルトが駆けつけた先、そこにはもう、戦闘の跡しか残されていなかった。
 未知なる超技術を持つ螺旋王を『喰らい』、ひいては宿敵である神行太保・戴宗と決着をつける。
 アルベルトの目的を理解し、互いに利用し合うという名目で協定を結んだかがみは、まず他の参加者と接触することが第一だと考えた。
 アルベルトの戦闘能力が一級品なのは既に承知の上だが、超戦闘力も、不死の力も、実のところなんの解決策にもなりはしない。
 螺旋王を喰らうチャンス……イコール、この会場からの脱出。それには、第三者の協力が必須条件だった。
 あてにしていたレーダーを失い、すぐ近くで起こっていた戦闘にも遅れてしまった失策、それを踏まえれば、天に舞い上がる剣は一筋の光明に思えた。
 だが、物事はそう上手くは進まない。

 ――『あれは駄目だな。とてもワシらの申し出を受けるような輩には思えん』

 とは、先立って剣の打ち上げ地点に偵察に出たアルベルトの言だ。
 彼曰く、そこにいたのは黄金の鎧を纏った偉そうな男と、かがみよりも年下であろう女学生の二人。
 どうやら彼らも脱出を志しているらしいことが会話から窺えたが、アルベルトが見るに、男の性格にかなり問題があるようだった。

 ――『ワシらが求めるは、より堅実な利益を齎してくれる者よ。志が同じだけでは意味がない。ワシらは慈善事業をしているわけではないからな』

 ただ脱出を願っているだけで、殺し合いに否定的な人間など論外。行動を共にしたところで、お守りに回されるのがオチだ。
 反抗の意志だけでなく、結果を出せる人材が必要。そういう点ではギルガメッシュたちも辛うじて合格点を与えられたが、

 ――『問題なのは協調性だ。よいかかがみよ、ワシらが求めるは“駒”であって“仲間”ではない。ゆえに、ワシは奴を選定する』

 使えるか、否か。まずは駄目元、会話での同調を求め、不可能ならば決闘を行使。

 ――『勝敗が決し、奴がワシに従うようならそれで良し。誓いを反故してでも自尊心を守ろうと言うのなら――』

 そこから先の言葉は、今でも鮮明に覚えている。
 しかしかがみは、願わくばそうなってほしくはないものだ、と心の隅で願望を抱いていた。

 ――『ワシが負ける可能性? 万に一つもありえんな。衝撃の二つ名の意味をよく考えるがいい』

 関西弁の銃士を容易く退けた手腕は、きっとアルベルトにとっては児戯のようなものなのだろう。
 全力で戦えば、おそらくアームスレイブすらも粉砕できる。生身でもロボットに渡り合えると、直感していた。

(仲良くみんなで手を取り合って……っていうのは、無理な話なのよね。もう)

 戦端が開かれてから、アルベルトとギルガメッシュの二人はあっという間にどこかへ走り去ってしまった。
 奈緒と共に残されたかがみは、接触前の算段を思い起こし、そして逡巡する。
 手はずどおりに事が進んだ場合、残った女学生のほうは“不死身の”柊かがみに任せると――アルベルトはそう言っていた。

(もしアルベルトが勝って、あの金ぴかの人が負けたとしたら、この子どうするのかな?)

 任せると一言で言われても、かがみにはどうすればいいのか検討もつかない。
 大人しく待っているべきなのか、それともしつこく共闘を求めてみるか、争い以外の道はないのか、などと。
 そんな平和的解決方法に縋ろうとしている自分がいて、そのことにハッと気づいて、腹が立った。

(なに言ってんのよ私……! 私は螺旋王を喰って願いを叶える……つかさやこなたを……こいつらだって!)

 自分がどう立ち回ればいいのか、どうすればより早く螺旋王に近づけるのか、選択肢はアルベルトに委ねた。
 なら、

「……で、あたしらはどうする?」

 黙りこくったまま思考を続けるかがみに、奈緒が面倒くさそうな顔で声をかけた。

「どうするって、それは……その……」
「……ふーん。なんか、あんたはあのオッサンのやり口に納得いってない風じゃん。
 ま、あたしはどうでもいいんだけどね。金ぴかが負けるとも思えないし。
 って言っても終わるまで暇だし、あんたらは個人的にムカツクし、どうする? ……バトる?」

 まだ幼さの残る声に妖艶な気配を纏わせて、奈緒はにんまりと笑う。
 その手にはいつの間にか鉤爪のようなものが装着されており、穏やかな物言いとは裏腹な戦意が滲み出ていた。
 自分で言うからには、腕に自信があるのだろう。そして、かがみの実力を自分よりも低く見ているに違いない。
 ――ああ、なるほど。こいつもこいつで協調性なさそうだな。
 とかがみは感じ、僅かな怒りを覚えつつ言う。

「……あなた、歳いくつ?」
「は? 14だけど」
「そう。ちなみに私は18。こんなとこで言うのもなんだけど、年上には――」
「ハァ~? 知るかっつーの。ってかなに、あんた高三? 見えねぇ~」

 わかりやすい挑発に、しかしかがみは流そうとはせず、そのままの形で受け取った。
 これならば、先輩として後輩に教育的指導を、と解釈することも可能だ。
 名目が変われば、覚悟の仕方もいくらか変わる。
 従わないのなら、力ずくで従える――そんなダークヒーローみたいなやり方を。

「いいわ、やってやろうじゃない」
「は?」
「目にもの見せてやる、って言ってんのよ」

 まさか乗ってくるとは思っていなかったのだろう、奈緒はキョトンとした顔つきで、かがみの睨むような目つきを見た。
 それに動揺した様子はない。むしろ苦笑を抑えるかのような表情で、「おもしろいじゃん」とだけ発する。

 そうして、こちらのほうでも戦鐘は鳴った――付き従う者同士、主人たちとは別の場で。


 ◇ ◇ ◇


 螺旋状の柱によって支えられた荘厳なハイウェイを背景に、二人の男が踊り狂う。
 互いに無手、しかし得物の必要性を感じさせないほどの凄まじい拳打を打ち合いながら、移動と交錯を繰り返している。
 そしてやって来た先、殴り合いをするには十分な広間へと、戦いながら進入した。

「――づえええぇいっ!」

 気合一声、衝撃のアルベルトがギルガメッシュの胸元目掛け蹴りを放つ。
 しかしその蹴りは、纏われた頑強な装甲板に弾かれ、虚しく音を鳴らす。
 威力を削がれ弾かれた蹴りはただの足へと成り下がり、格好の弱所としてギルガメッシュの目に入った。
 宙に舞うアルベルトの脚部を掴み、僅かな力を込めて振る。アルベルトはいとも簡単に体勢を崩した。
 否、『ギルガメッシュにとっては』の話。
 人間を超越した存在――英霊、またはサーヴァントと呼ばれる存在である彼にとって、これしきの肉体動作はさして難儀でもない。
 がら空きになったボディへ向け、ギルガメッシュが片方の腕を軽く薙ぐ。
 ぶつかり、たったそれだけで、アルベルトの脆弱な体は吹き飛んだ。
 ――これが、覆せぬ力の差である。
 人間というモデルは同じでありながら、種の違いが生み出す決定的戦力差が、早くも露呈しつつあった。
 当のアルベルトもギルガメッシュがただの人間であると思っていたのか、面食らった表情をしている。
 とはいえ、あれだけ偉そうな口を叩き挑みかかってきた人間だ。それなりには腕に覚えがあるのだろう。
 ギルガメッシュの攻撃に怯みこそすれど、完全に倒れはしない。なおも向きなおってくる。

「クク、ククク……」

 その様が実に滑稽で、惨めで、無様で、笑いを誘う。

「ちぃぃ……なめるなよ若造がああああぁぁぁ!!」

 勇ましく突進してきたところで、結果は変わらぬというのに。
 ギルガメッシュは俯き気味に失笑を漏らし、その間、隙が生まれた。
 防御も回避も取らないギルガメッシュの顔面へ、アルベルトが渾身の拳打を打ち込む。
 拳がギルガメッシュの頬を抉り、顔の向きを変え、打撃音を鳴らすが、

「ぬぅ!?」

 変わらない。なにも。
 ギルガメッシュの笑みも、態度も、力の差も、戦況も――なにも変わりはしない。
 たった一撃の渾身など、ギルガメッシュにとっては蚤に齧られたようなものだった。

「……この程度か、雑種? せっかく貴様に合わせ拳闘士の真似事なぞ興じてやったというのに……甚だ期待外れだ。
 よいか? 拳とはこのような脆弱ものを言うのではない。貴様のそれは、ただ五指を握り合わせただけの贋物よ。
 教授してやるから心して見よ。拳とはこう作り……」

 アルベルトの身を眼前に置いたまま、ギルガメッシュは肘を引き、五指を畳み、握力を集中させ、

「……こう打つのだ!」

 棒立ちの敵へと、叩き込んだ。
 めしり、という瞬間的な破砕音が響き、アルベルトは抗うこともできないまま衝撃にのまれた。
 まるで機関車にでも撥ね飛ばされたかのように回り、転げ、粉塵を纏いながら路上を滑っていく。
 勢いが衰え止まる頃には、ギルガメッシュとの間に十メートル近い距離が生まれていた。
 衝撃がやみ、どこからか吹き込んできた風が静寂を告げても、アルベルトが這い上がることはない。
 仰向けの状態で、大の字に倒れていた。

「どうだ? これが真なる拳というものよ。学習したなら活かせよ――来世でな」

 ギルガメッシュは、遊んでいた。
 決闘などという大層な名目で始まった戦いに、童心を持ち出し、楽しむかのように興じていた。
 決闘などというのは、多くの王にとって児戯のようなものでしかない。
 怒り、憎しみ、恐れ――そういった戦意の元となる負の感情に流されるようでは、ましてや数多いる雑種に戦才で劣るようでは、王は務まらないからだ。
 王が闘争に身を置くとすれば、それは己の財と覇権がかかったときのみ。
 ゆえに、これは児戯なのだ。己の尊厳を懸けはしても、結果自体はわかりきった勝負。そこに真剣みが混ざるはずもない。
 だからこそ闘争に愉悦を求め、遊び心を加える。そうさせるほどの余裕が、王という存在の中で確立しているから。

「……つまらん」

 愉悦に浸るギルガメッシュの視界、不快な映像が目に入った。
 仰向けに倒れた衝撃のアルベルト、その右腕がいそいそと動き、胸ポケットから一本の葉巻を取り出す。
 体の状態をそのままに着火し、口に咥え、吸引し出した。
 天を仰ぎながら、苦痛の混在しない穏やかな声で言う。

「英雄王よ、貴様には背負うものがあるか?」

 目も合わせず、天を向いたままの状態で、アルベルトは質問した。
 その、敗北者としては類を見ない行動に感心を抱いたギルガメッシュは、今は無礼を不問にして会話を合わせる。

「背負うもの、だと?」
「家族でも、職務でも、なんならあの女でもいい。あるなら言ってみろ」

 それは王位に就く者にとって、なんとも馬鹿げた問いだった。

「なにをたわけたことを。我は王なるぞ? 王が背負いしものといえば国、そしてそこに住まう民に決まっておろう。
 ナオは我の忠実なる臣下の一人よ。それ以上でもそれ以下でもない。さて、世迷いごとは済んだか?」

 一時の感心を胸に秘め、はっはとギルガメッシュが小気味良く笑う。

「なるほどな」

 意味があるのかも怪しい問答、死を目前にした者の戯言であろうそれを終え、アルベルトはまだ黙らない。

「やはり違うな……戴宗とは。貴様との戦いには、滾るものがない」
「……雑種、なにが言いたい?」
「さっき言ったとおりだ。つまらん――貴様と拳を交えること自体が、つまらんと言っている」

 人間、我の強い者であれば、死の直前まで敵に歯向かおうとすることもままある。
 それら戦士の気概を持ち合わせた者は賛嘆に値する大馬鹿者であるが、この男はどこか違う。
 死を前にしても余裕を保ち、まるで死を回避できたと思いこんでいるように、眼前の死を否定している。
 なんだ、ただの気狂いか――そこまで理解し、ギルガメッシュは、

「クックック」

 堪えきれず、爆笑を漏らした。

「クッ……ハハハハハハハハハハハハハハハ! そうか、つまらんか! 我を笑い殺そうとしてよく言う!
 ……が、そうだな。我も貴様の児戯につき合うのは辟易してきたところだ。終幕にしよう」

 無邪気な笑いをあげたのは一瞬。一拍置いた次には、決闘の終焉を見届けるための冷淡な顔つきに変わっていた。
 宝具『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を取り出し、アルベルトに向けて翳す。

「―――――王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」

 間断なく、真名を解放。
 路上に寝そべるアルベルト、その上空に、無数の黒点が囲うように現れる。
 数にして三十二。宝物庫へと繋がる異次元の扉が、直下のアルベルトを三十二の瞳で睨みつけた。
 じわり、じわりと、焦らすようなスローペースで顔を出したのは――数十冊にも及ぶ書物の群れ。

「書の角に頭をぶつけて――というのも、なかなかに滑稽な死に方だと思わんか?」

 本来『王の財宝』を持って矛とするには、あまりにも情けない弾薬。
 しかし狼藉者を葬る手立てとしては、書による驟雨もまた一興、とギルガメッシュは思い至り実行する。

「――ではな雑種。来世では、“衝撃”などという不釣合いな二つ名を名乗るでないぞ」

 無限にも思われるような書物の雨は、弾丸の速度を纏ってアルベルトの身に注がれた。
 ほとんどが分厚く製本されたハードカバー、角で殴れば十分に鈍痛を与えられる品、それが速度を得ればどうなるか。
 武器と称すのはさすがに惨めだったが、凶器とするには問題ない。
 地に激突した衝撃で何冊かの本は分解し、紙がバラバラと宙を舞う様は、さながら吹雪のように思えた。
 その吹雪の中に、赤を纏った粉雪がちらり。
 それを逃さず目視したギルガメッシュは、口元だけで笑みを作ると、紙吹雪の中心地へと歩を進める。
 ほぼ同時に、書の雨もやんだ。何枚もの紙と何冊もの本で埋め尽くされた街路を、蹴散らすように進む。
 そこに、勝利の判定を下すに揺ぎない代物が陳列されていた。

「ふん」

 見下ろし、鼻で笑う。
 紙の中に埋もれるのは、鮮血に塗れた肉、肉、肉……肉、としか判別できない品々が、そこら中に散乱していた。
 どれが元頭部でどれが元内臓だったのかすらわからない。結果的な惨状は、本の角に頭をぶつける程度では済まされなかった。

「あれしきの砲撃で原型を失うとは……耐久力からして凡百な――」
「まこと凡百な眼力よの」

 声が聞こえてきた。
 ギルガメッシュ以外の、何者かの声が。
 肯定せざるを得ない、衝撃のアルベルトの肉声が。
 バッと振り向き、背後を確認する――いない。
 顔を正面に戻し、アルベルトはそこにいた。

「なにっ!? 貴様よもや――――ガ!?」

 ギルガメッシュが己の目を疑う間、アルベルトは瞬速の手刀を、金色の鎧の継ぎ目を縫うようにして捻り込む。
 ギルガメッシュの口から、鴨の首を締め上げたような呻きが漏れた。

「――真っ向勝負が信条のワシだが、貴様の慢心ぶりがあまりにも目に余るのでな。少々小細工を弄させてもらった」

 脳髄を白色が埋め尽くす――間際、アルベルトの肩に、見慣れぬ女物のケープが羽織われているのを見た。
 シルバーケープ――皮肉にも、ギルガメッシュが殺したクアットロの固有装備であり、アルベルトに支給されたそれの持つ、高性能ステルス機能が勝敗を決した。

「どうだ? 純粋な力の差を見せつけられるよりも屈辱的であろう? ワシの言葉が理解できているか、怪しいがなぁ!!」

 アルベルトは捻じ込んだ掌から、ゼロ距離による衝撃波を放つ。
 衝撃はギルガメッシュの体と鎧の僅かな隙間に浸透し、全身を駆け巡る。
 充満した力が溢れ、内部から鎧ごと弾け飛んだ。ギルガメッシュ本体も、ずたずたに傷を刻まれる。

 ――それは、一瞬の油断。常の慢心が生んだ、ほんの一瞬の逆転だった。
 アルベルトが最初から本気を出していたとしても、小細工を使わず真っ向から対立したとしても、結果はこうなっただろう。
 衝撃のアルベルトは――初見のイメージもあって――ギルガメッシュが対等と判断するに値しない存在だったからだ。
 敵が奇策や奥の手を秘めていたとしても、我の勝利は揺るがぬと信じて疑わない。強者ゆえの慢心を常として備えていた愚。
 だが、意識を闇に閉じる瞬間になっても、ギルガメッシュはそれを悔いたりはしなかった。
 自らの性格が呼び込んだミスなど、彼の強い自尊心が認めるはずもない。ただそれだけの話である。


 ◇ ◇ ◇


「まったく、彼奴のせいで髪が乱れてしまったわ」

 また静寂の戻った路上。
 柊かがみが待つ帰途へと着いたアルベルトは、偶然見かけた理髪店から拝借した櫛で、髪型を整えながら歩いていた。

「時間は……思ったよりも早く片付いたな。それだけ彼奴が見込み違いだったというわけだが……む?」

 ふと、アルベルトが立ち止まる。
 違和感を覚えたのは、耳だった。

「ほう……かがみめ、任せるとは言ったが……」

 女性の悲鳴が聞こえる。
 やけに甲高い、ホラー映画の主演女優みたいな絶叫だ。
 アルベルトが苦笑を漏らしつつ音源の元に駆けつけると、

「なかなかにおもしろい状況になっているな」

 そこには二人の少女がいた。
 一方は柊かがみ。そしてもう一方は、ギルガメッシュがナオと呼んでいた女。
 しかし、互いにその姿は変貌を遂げていた。

 かがみは、全身に夥しい量の血液と裂傷を纏い、それをリアルタイムで修復させながら、
 ナオは、かがみの異様な姿に恐れをなしたのか腰を抜かし、化け物でも見るような涙目で、

「……女児二人の、戦場での対立か。滅多に拝めるものでもなかろうに」

 かがみたちの遥か背後で、アルベルトは観戦を決め込んだ。


 ◇ ◇ ◇


 夕闇の降りかけた、けぶるように色彩のぼけた景色の下。
 結城奈緒は、夕闇に滲み出すように点在する彼女を見た。
 彼女は、立っている。奈緒は、尻餅をついてそれを見上げている。
 背中にあたる冷たい感触は、コンクリート塀によるもの。いつの間にか、路地裏の袋小路に追いつめられていた。

 乱れ、縮れ、ざっくばらんに切り捨てられた髪――修復。
 斬れ、裂け、彫刻のように幾重もの切創が作られた皮膚――修復。
 滲み、零れ、夥しい数の切創から噴き出す粘質の血液がスライムのように――修復。

 それら、メインディッシュとなる痛烈かつ異常な映像を、奈緒はほとんど強要される形で見ていた。
 肝心なのは、これがテレビなどの映像媒体を通したものでなく、本人の目を通した生の光景であるということである。
 死に直結するのは間違いない傷や血が、リアルタイムで“戻っていく”という異常な様を、匂い付きで見せつけられている。
 まず、胃に変な圧迫感を覚えた。胃液が食道を逆流するような錯覚に襲われ、軽く吐く。
 眼前から放たれる鉄錆じみた血の匂いと、口内を満たす嘔吐物の悪臭。ダブルパンチに鼻が曲がった。

 そこまで不快な気分を強要されても、奈緒はなにもしなかった。
 いや、できなかった。もしくはすでにしたのだが、なんにもならなかった。

 騒がず、呻かず、動かず――震え、微動し、脂汗を垂らし、声を枯らす。
 精神を恐怖に蹂躙された人間の、よくあるケースの一つ。
 奈緒は怯えていた。目の前の、“不死身の柊かがみ”が見せる異常に。

「――痛みってさ、ある程度のものだと慣れるのよ」

 今もなお修復中の裂傷は、奈緒がエレメントによってつけた傷だ。
 初めは脅しのつもりだった。糸で軽く切りつけて、絆創膏程度で治まる傷を与えてやるつもりだった。
 それだけでかがみは驚いて、震えて、泣いて、その様を嘲笑ってやる、つもりだったのに。
 結果は真逆。かがみの持つ二つ名――不死身の異様に、度肝を抜かれた奈緒がいる。

「あなた、グロいのって平気? なわけないか、腰抜かしちゃってるもんね」

 かがみは言いながら、宙を泳ぐようなゆったりとしたスピードで歩み寄る。
 異形の像が視界の中で大きくなっていくのを頭の隅で捉えながら、奈緒は現実を否定した。
 ありえない――殺し合いをするために集められた参加者の中に、死なない人間が紛れているなんてありえない!
 だって、死なないのならば安全ではないか。優勝決定ではないか。ズルイじゃないか。殺されるだけじゃないか――
 容易く覆された命の法則を、奈緒は畏怖して怯えるしかなかった。
 カタカタと上下の歯を打ち鳴らす間、かがみの負った傷が完全に修復を終え、元の状態に戻る。

「もう、治っちゃったけど。どうする? 次はどこに傷をつける? あ、それと、初めに言ったこと忘れちゃいないわよね?」

 かがみが首を横に傾いで、尋ねる。たったそれだけの動作が、どうしようもなく不気味に思えた。
 ギルガメッシュたちが去り、奈緒たちが対立を始める際、かがみが言ったのだ。
 ――私は最初はなにもしない。だけど、後であなたから受けた痛みを何倍にもして返す。と。
 奈緒はこれを、やれるもんなら、と笑って流した。そのときの自分が憎らしい。
 なにせ、何度エレメントを振ったか、何条糸を繰ったか、何回かがみに傷を与えたのか、もうわからなくなっていたのだから。
 あれが何倍にもなって自分に返ってくるなど、考えたくもない。

「ねぇ、どうしたのよ。もうおしまい?」
「……っ、ぅ、さいっ! あ……たっ、なん、な、っよ!」

 言葉になっていない声で、奈緒はかがみの不条理に怒りをぶつけた。
 裂かれた皮膚が自動で繋がるなど、零れた血が勝手に蠢くなど、人間業じゃない。化け物の所業だ。
 これでかがみがオーファンのような異形だったならば、まだ納得もできるし、ここまでの畏怖も感じない。
 なのにかがみは、人間の形を保ってそれをやってのけている。
 人型でありながら人間を逸した深優・グリーアの例をもっても、かがみの不死身という異常は、納得できない。

「ったく、言ったでしょ? 私は、“不死身の柊かがみ”。決して死なない女なのよ」

 馬鹿な。ありえない。ありえない。馬鹿な馬鹿な馬鹿な。ありえないったらありえない。そんな馬鹿な。馬鹿な!
 かがみとの距離が、手を伸ばせば届きそうなくらいまで狭まっていたことを本能で感じ、瞬間的に恐怖を凌駕して攻撃に転ずる。
 窮地に立たされても、切り札であるジュリアはやはり呼び出せない。
 ただ爪型のエレメントを振り、その指先から伸びる切れ味抜群の糸を放つ。
 極細の糸が皮膚を切り裂いて、絡むように肉に入り込んだ。
 びくん、とかがみの体が痛みに痙攣し、しかしその顔はくすっと笑う。
 ばっくりと開いた口から、鮮血が流れ出る。腕から、足から、頬から、いたるところから。
 流血が各所を伝い、重力のまま下へと導かれる。
 が、次の瞬間には滝登りだ。
 伝い落ちた血が、逆流するかのごとく皮膚を上っていく。
 わかりきっていた結果をまた見せつけられ、奈緒は泣きたくなった。
 血が元の傷に収まり、開いた口が閉じる頃になっても、奈緒は身動き一つできない。
 そこで奈緒は、かがみの左頬を上っていく、やたらと遅い血の塊を見つけた。
 他の血はもうとっくに体内に帰ったというのに、左頬の血だけはなぜか、出来損ないの子みたいにのろのろしている。
 この子はいったいどこに帰ろうとしているのか――向かう先を目で追っていって、ゾッとした。
 瞼だ。かがみの左瞼が、ぱっくり切れていた。
 左目――傷――銃――玖我なつき――倍返し――奈緒の背筋を、冷たいなにかが走りぬける。

「目、気になる?」

 奈緒がやたらと左目を凝視していることに気づいたかがみは、なにを思ったか妖艶に微笑み、

「じゃあ、まずは目にしよっか」

 そんなことを口にして、

「左目。抉っちゃうわね」

 わざわざおぞましい単語を選んで、

「――――――――――――――――――――――――ひ」

 奈緒が喉を鳴らしことなんて気にもせず、手を伸ばすのだ。
 指の先端が目に近づきすぎて、像がぼやけて、さらに涙で滲む。
 こつん、と眼球に触れたような気がした。
 かりっ、と爪先が眼球を引っかく。
 ぷちゅっ、とゼリーを潰したような音。

「……ひあ、ああああ、ああああ、あああ、ああああ、あ、あああ、ああ、ああああ、あ、ああああああああああああああああ」

 それらすべて、恐怖心が生んだまやかし。
 左目がアイパッチに覆われていることなど完璧に忘れ、奈緒はかつての喪失感――左目を失った瞬間を――脳裏に思い出していた。
 思い出しながら、気絶した。


 ◇ ◇ ◇


 人間、やればできるものなんだな、とかがみは感心した。
 決してゼロではない痛みに耐え切れたのも、
 ひょっとしたら殺されるかもしれないという恐れに打ち勝ったのも、
 相手がより怖がるようホラーものの映画や小説を思い出しながら演技に徹したのも、
 全部、いっぱいいっぱいだった。だが、やり遂げた。

「くっくくく……随分とまぁ、たくましくなったものではないか。のう、不死身の」
「み、見てた、の?」

 前方に失神した奈緒、そして後方にはいつの間にやら、ややスーツを汚して戻ってきた衝撃のアルベルトが立っている。

「まさか、不死身の能力をこんな形で活かすとはな。常人にはない発想よ。案外、向いているのではないか?」
「なにによ、なにに。それに、あんたがわざわざそう紹介したんじゃない。言わなくてもいいのに、“不死身の”柊かがみなんて」

 そうだったな、とアルベルトはまた失笑を漏らした。なんだか馬鹿にされている気分だったが、不思議と嫌ではない。
 むしろ――利用し合う仲とはいえ――この地で出来たパートナーに認めてもらえたようで、嬉しくさえあった。

「ところで、あの金ぴかの人はどうしたの?」
「む? 機転は利くが、思慮は足らんか? ワシがここにいる時点で、軍配がどちらに上がったかは明白であろう」
「勝ち負けのことを聞いてるんじゃないわよ。その……まだ生きてるのか、ってこと」

 遠慮がちに尋ねたかがみの横、アルベルトはああなるほど、と笑わずに言った。
 せっかく巡り会えた他の参加者。しかも有力な情報を持つかもしれない二人組。
 協力、もしくは利用にこじつけられれば行幸だが、やむをえぬ場合、アルベルトは殺害も辞さないと断言していた。
 かがみも、既に一度人道を踏み外した者である。アルベルトの現実的な方針には、本心はともかく賛同を示していた。
 だからこそ、余計に気になっていたのかもしれない。

「始末した」

 その結果は、アルベルトの口からたった一言で、簡素に告げられた。

「いや、正確には――」

 早合点しそうになったところを、続きが入る。

「――これから、始末するところだ」




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198:螺旋の力に目覚めた少女 結城奈緒 199:二人がここにいる不思議(後編)
192:例え絶望に打ちのめされても 衝撃のアルベルト 199:二人がここにいる不思議(後編)
192:例え絶望に打ちのめされても 柊かがみ 199:二人がここにいる不思議(後編)

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