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  • 箱庭の隅っこで愛を叫んだケモノ

箱庭の隅っこで愛を叫んだケモノ

最終更新:2023年06月15日 22:00

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箱庭の隅っこで愛を叫んだケモノ ◆2PGjCBHFlk



 破壊されし夢の跡で、どれほどの時間を無為に費やしたものか――

 螺旋王四天王が一人、怒涛のチミルフは血を吐くような激情に区切りをつけ、立ち上がった。

 もはやどれほど嘆き叫ぼうとも、失われた『夢』は戻ってこない。
 それを理解していながら立ち上がる意志を幾度も挫かれたのは、ただただ未練が誇り高き獣人の背を掴んで放さなかったためだ。

 それもそのはず――
 螺旋王に賜って以来、数々の武勇を打ち立ててきた紅蓮の威容。
 ――その最期が斯様な残骸と化して終えるなどと、誰に想像できたというのか。

 胸中に込み上げる感情は無念と悔恨の二重螺旋。
 かの雄雄しき巨神の喪失は、ただ戦力を削られたという意味合いだけに留まらない。
 ダイガンザンは螺旋王の手で、四天王一人一人に与えられた信頼の証。
 身を粉にして獣人の世のためにと戦い、勝利してきた日々。
 それを王の手ずから認められた血塗れの結晶――


 ――流麗のアディーネに与えられしダイガンカイ。
 大海原を優雅に進み、何より彼の女傑の気性を受け継いだように獰猛な青き世界の覇者。

 ――不動のグアームに与えられしダイガンド。
 大地にその巨躯を置き、如何な障害を前にも一歩も引かぬ王都防衛の堅牢な要塞。

 ――神速のシトマンドラに与えられしダイガンテン。
 見上げることのみが許された天空を統べ、螺旋王の手が陸海空の全てに及ぶことを体現した蒼穹の審判者。

 ――そして怒涛にチミルフに与えられしダイガンザン。
 人類掃討の御旗として、最前線に立ち続けるチミルフと常に共にあった旗艦。
 数多の獣人がその強大な力を前に羨望と憧憬を抱き、勝利の象徴として邁進し続ける姿に誉れ高さを心に刻んだ。

 言わばダイガンザンは獣人がニンゲンの上位存在であることの証明。
 チミルフ自らもまた信じてやまない獣人達のアイデンティティ――存在の証明だったのだ。

 それが眼前で、見るも無残に打ち砕かれ、大敗の汚辱に甘んじる光景はどうだ。


「あまりにも……そう、あまりにも滑稽ではないか」


 それは朽ち果てたダイガンザンに対する言葉でもあり、大手を振るって戦乱に参戦した自身を顧みての言葉でもあった。

 王の御心に反旗を翻し、ニンゲンの抹殺を誓って箱庭への参戦の許しを得た。
 使い慣れた大槌の威力でもって殲滅――自分達の存在価値を揺るがす下等種族を根絶やしに。
 その意志を持って降り立った戦場、そこで最初に出会ったのが別世界で自身の部下であったという曰くつきの獣人。
 そして彼の獣人に寄り添う、その心中の見定めのつかぬ人とも獣とも違う女。
 直後に現れた老人との死闘。凄まじい技量を持つ武人との戦闘に心は躍ったが、何もかもが中途半端の結果で最初の交戦は幕を下ろした。

 建物の崩壊に巻き込まれ、女と老体は死んだだろうか。
 ――否。少なくともあの老人に限っては満身創痍に近い身体で尚、永らえただろう確信がある。
 それは実際に牙を交えたことによる獣の嗅覚、野生の直感からくる確信。
 彼の老体は安息の中での穏やかな死より、血湧き肉踊る戦いの中で朽ち果てるのを望む同類。
 なれば小競り合い程度の死合に果てる道理はなく、また別の戦場で己と敵の血を流すはず。

 一方で、ヴィラルと共にいた女の生死は不明。
 一見したところ、外傷はほとんど見当たらなかった。
 それが常ならず傍らにいたヴィラルの功績か、女自身の持つ回復能力の力かは別としてだ。

 問題は消防署を崩壊に導いた爆風の衝撃に細身が耐えたかられたかどうか。
 あるいは崩落によって華奢な矮躯は瓦礫に押し潰されたやもしれぬ。
 いずれにせよ、僅かばかりでも後味の悪さがあったのは事実だ。

 シャマルの生死はチミルフの価値観からすれば些事にあたる。
 憎むべきニンゲンでないにせよ、獣人でないという時点で向けるべき感情は欠片も湧かない。
 だがしかし、その存在は獣人――いや、獣人の身体から改造されたヴィラルの心を占有していたほどのものだ。
 時と場所が違えば愛すべき部下であったかもしれぬ男。
 事実上は何の縁もないとはいえ、仮にも上司を騙った身で部下を裏切ったことになる。
 さらにはニンゲンと獣人の狭間にあったヴィラルの心根、その見極めの機会をも失ったに近しい状況。

 血風の吹き荒ぶ遊戯に興じれば、次に箱庭を埋め尽くしたるは漆黒の球体。
 黒陽の出現に意気を上げ、与えられし力の全てを揮わんと盲目的にダイガンザンを起動。
 直後の破滅はニンゲンを敵と認めるなどと口にしていながら、全力を払うに値せぬと心のどこかで思っていたが故の慢心。

 この戦場に舞い降りた怒涛のチミルフの功績は、部下であったかもしれぬ男を謀り、
 人質とした女を見殺しにし、満身創痍の老体をも仕留め損ない、
 王より賜りし至高の力を惜し気もなく展開し、その力の上に胡坐を掻いた結果として全てを失う失態の積み重ね。
 ――それがこの戦場でチミルフの起こした行動の全て。


「……獣人達の夢の城を無残にも破壊され」

「……王より与えられた臣下としての名誉も、献身を捧げた日々も無為になり」

「……己と部下に課した約束もまた、泡沫の彼方へと消え去った」


 握る大槌の柄が震え、噛み締めた口の端から一筋の血が伝う。
 巨体は屈辱とそれを上回る自身への不甲斐なさに力を失い、天を仰ぐ双眸に輝きはない。

「ニンゲンとは……なんだ……ッ! 獣人とは……なんだ……っ!! 俺がこの場で掴み取ったことなど……何があるというのだ……っ!?」

 得たものは何もなく、元より手にしていた多くのものを取り落とし、欲しがる答えに辿り着く糸口さえも見つかっていない。
 ヴィラルとの約束の時は近い――ニンゲンの首を持ってこいと命じたのと同じ口で、恨み言と負け惜しみばかりを紡いでいる我が身。
 誇り高き獣人としての矜持を穢す。造物主たる螺旋王の勅命を果たすことができぬ。
 ――それを理由にヴィラルを処罰せんとするならば、断罪されるべきはむしろ自分だ。

 汚辱を死によってしか雪げぬというのなら、今の自分にこそそれは相応しい。
 そう、死ぬことでしか償えぬというならば。


「ならばこの『怒涛のチミルフ』は死によって、この屈辱と決別する……ッ!」


 武功を積み上げた日々、螺旋王四天王として『怒涛』の二つ名を授かった日々。
 部下から向けられた羨望と信頼、その部下に注いだ惜しみない親愛。
 肩を並べた戦友達――導かねばならぬものも、一目を置いたものも、性別を超えた絆に結ばれたものもいた。
 そして造物主たる螺旋王に従い、忠誠を誓った誇り高き日々――


 ――螺旋王四天王が一人、『怒涛のチミルフ』
 ――その強すぎるほどの同胞と造物主、自らの種族への愛。
 ――全ての想いを自らの行動で裏切った男は、自らの手で愚かな生に幕を下ろす。


「さらばだ……過ぎ去りし我が栄光の輝きよ……ッ!!」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「――――アルカイドグレイヴ!!!」


 雄叫びに呼応し、白銀の巨体がその手に握る神槍を鋼に突き立てる。
 穿たれた槍の穂先より放出されるのは、如何な装甲も薄紙のように切り裂く灼熱のビーム刃。
 それが紅の船体を貫通、溶解、上半身を模した機体を袈裟切りにして崩壊させ、
 すでに大地に横たわっていた紅蓮の巨神を粉砕し、さらなる瓦解の道筋へ誘う。

 風の精霊の名を冠したパイロット、そして白銀の機体の全機能の発現。
 宙を舞う巨体が連撃によって、残骸と化した要塞にさらなる破壊を刻んでいく。
 もはやそれが獣人の羨望を一身に集めた『夢』の具現であった事実を消滅させるように。
 宛がわれただけの力に溺れ、全ての獣人の誇りに泥を塗った己の醜態と決別するように。

 最後の一撃は奇跡的に原形を留めていた艦橋、その中心を真上から一直線に貫いた。
 粒子の炸裂によって艦橋内の全てが発火――遂には爆炎でもって、踏み躙られし紅蓮の栄光に終止符を穿つ。

 その大気を焼く暁の世界に雄雄しく立ち尽くす――二つの顔を持つ白き力の象徴。
 手には無双の神槍を――
 内には一騎当千の武人を――
 そしてその身は無類の強化に与った強靭な超鋼――!
 哮り狂う西の守護者、風の猛虎の名を冠したカスタムガンメン――ビャコウ。

 その操縦席にて腕を組むチミルフは、ただ無言。
 その目は破片一つもまともに残さず消滅していくかつての城を前に、決して背けることなく光景を心に焼き付けていた。
 屈辱を、敗北を、油断と慢心――そして臓腑に煮え滾るこの歓喜を忘れ得ぬために。

「これで何もかもが終わりだ……ダイガンザンも、そしてそれを賜った『怒涛』のチミルフも!」

 震える両の腕を胸の前で交差し、肩当てに触れて我が身を抱き締めるように、不甲斐ない己の身を憎悪のままに押し潰してしまうように叫ぶ。

「今より俺はただのチミルフだ……!
 四天王などともてはやされ、己が器を忘れて愉悦に浸る心など必要ない……!」

 かつてのチミルフは何も持たぬ一介の獣人であった。
 怒涛のチミルフの名の下に集った戦士達、その一人一人の立場と何一つ変わらぬ一兵卒。
 獣人と呼ばれる種族に生を受け、地下暮らしのニンゲン共を支配する使命感と王への忠誠心。
 生まれ持った強靭な肉体以外、彼の持っていたものはそれだけだった。

「それが武功を立て、慕ってくれる部下を持ち、
 名誉を積み重ねる内に虚栄心を肥え太らせた……何たる未熟! 何たる情けなさよ!」

 今のチミルフの自戒の言葉を聞けば、彼をよく知る女傑は真っ先にそれを否定したろう。
 元よりこの獣人は己を顧みない男だ。立場に執着したことなどなく、権力を笠に理不尽な命を部下に強いたこともない。
 戦いとあらば自ら最前線へ赴き、戦列に轡を並べた同胞達に率先して敵を打ち倒す。
 積み重ねられた武功と信頼に見合うだけの人柄、部下や戦友、王までも彼を認めたのはその弛まぬ意志があってのこと。

 だが周囲の評価など、それこそ彼の男には何の意味も持たない。
 彼にとって重要なのは己が信念と覚悟、何より王の意思に従って結果を出し続けること。
 結果は自らの虚栄心を満たすためではなく、全ては我が種族全体の繁栄のために。
 輩のために捧げ続ける一死一生。唯一、それを果たすためだけの全身全霊の祈り。

「そのためには四天王の座も、『怒涛』の二つ名も、縋り付く過去の栄光も惜しくはない!」

 ――それが只のチミルフが生涯かけて、己に課した歪まぬ信念。

「見るがいい、王よ! これが獣人の正道だ! 俺の生きる道筋だ! ただ一介の獣人の、血と泥と屈辱に塗れた戦いの覚悟だ!」

 滑稽な道化の戯言と、すでに王は見放しているかもしれぬ。
 哀れな敗残者の遠吠えよと、立場を同じくした男達の嘲笑の的かもしれぬ。
 確かな友情を誓った戦友の成れの果てと、唯一無二の彼女は嘆いているかもしれぬ。

 だがもはや立ち止まれぬ。
 後戻りする道はなく、確かにあった絆は自ら断ち切った。
 絆が、愛が、進む足取りを重くするというのならば、今の自分には必要ない。

「――ただ、誇りだけがあればいい。それだけがあれば、俺は俺の生を誇れる」

 ならば、征くとしよう。
 この箱庭の戦争において、ただ一介の獣人の背にかかる責任はあまりにも重い。
 それは獣人という種族全ての存在価値。獣人はニンゲンに勝るのか、劣るのか。
 下等と侮ってきた劣等種族が、獣人の上に立つという世界を否定するための戦い――

「だがこの身体の、この心の、何と軽きことよ――」

 取り繕うべき上辺を脱ぎ捨てたその矮小な価値の、何たる軽さか。
 名誉も信望もかなぐり捨て、今、チミルフは一介の武人の心を取り戻した。
 ――それがこの上なく、心地良い解放感を伴う。

「そうだ……元より俺は戦うことしか能がない。戦うことでしか己の存在価値を証明できない。
 戦うことでしか生を実感できない。戦わなければ生きてはいけない――そういう生き物だった」

 そう理解したというならば、己の生き甲斐を、全生命を賭してできることを果たすがいい。
 見せつけられた脅威に怯え、ただただ被った衝撃に慄くだけなどまさしく獣人に相対したニンゲンの姿。
 獣人は違う。チミルフの信じる獣人に、斯様な弱さは許されない。

 脳は全て戦いのために巡り、勝利することのみを貪欲に求める器官であればいい。
 剛力は全て敵を叩き潰すためにあり、巨躯は弱者を震え上がらせるためのものであればいい。
 心の虚栄心は掻き消し、ただひたすらに目的を貫き通す覚悟だけが据えられればいい。

 胆が据われば胸を張り、憤怒の余熱は血の沸騰に変遷する。
 瞑目する巨体の獣人の脳裏では、すでに次なる戦いのための綿密な戦議が始まっていた。


「先の紅の螺旋……まさしく破壊の象徴よ。ダイガンザンを一撃の下に葬る威力。恐るべきはそれがあの黒陽から発射されたものではないということか」

 ビャコウの跳躍によって咄嗟に暴波から逃れたチミルフだが、
 その威力の前に戦慄し、崩壊していく移動要塞に目を奪われていたわけではない。
 砕け散るダイガンザンを目の端に捉えながら、
 暴悪の衝撃に激しく心を揺さぶられながら、それでも戦いの本能は敵の姿を捜していた。
 最初に光を放った病院よりさらに西――破壊の始まりはそこからだった。

 モノレールの線路を掻き消し、病院を塵芥に変え、
 ダイガンザンを葬った螺旋は世界の境界線に触れ、箱庭の反対側から再び顔を覗かせる。
 海を、大気を消滅させる暴虐の前に石造りの灯台など障害の名目すら果たせず木っ端微塵。
 ――そして出発点に破壊が舞い戻った時、再び鮮やかに世界が紅で染まったのだ。

 その爆発の確認を最後に、チミルフの意識は崩壊せしダイガンザンへと向く。
 その後の醜態は語るまでもなく、女々しい未練がましさと決別するのに要した時間はどれほどのものだったか。
 気づけば東の空からは黒陽と対極の真の極光が昇っている。

 朝焼けに瞼を焼かれながら、その輝きも、眼球に沁みるような痛みも妙に心地いい。

 ――暁は目覚めを、戦いの始まりを告げる鐘だ。
 深遠の闇の中で戦うことを許されない身体が、血の渇望を光の中に求めるが故の。

 瞬き一つで戦意を新たに思考を切り替える。
 忘我の間に起きた出来事もまた、見過ごすわけにはいかないものばかり。

 墜ちた黒陽を映した目を細め、球体を三日月に削った一撃にチミルフは思いを馳せる。
 あるいはその一撃も、紅の暴威の結果ではあるまいか。

 世界を塗り替える破光が箱庭を一周した際に起きた一際強い爆発を、チミルフは相殺と捉えている。
 かの一撃を放った者の下に破滅が回帰し、それを打ち払うために同じだけの破滅を必要とした。
 故の煌き――あの滅亡の渦中にいたものが、相殺したとはいえ無事にいるとは考え難いが。

「死んだとすれば、次は黒陽を落とせしものの推測と矛盾するか」

 そもダイガンザンを起動せしめたのは、あの漆黒の太陽と対抗するためのこと。
 出現した瞬間の敵機体が万全だったことは、この双眸に懸けて疑いようのない事実。
 つまりダイガンザンも、強大な黒き太陽も、運命を同じく紅の螺旋に引き裂かれたことになる。

 さらにこの二つの目が恐怖のあまり夢を見ていたのでないとすれば、
 先の赤き制裁はガンメンやそれに類する兵器の力によるものではない。
 ただ一握の存在――チミルフの巨体に比すれば矮躯と表現する他にない、そのニンゲンが揮った力だというのだ。

 ――これが笑い話でなければ、何になるというのだろうか。

「俺はここにくる以前に、ガンメンと対等に渡り合う”ニンゲン”に出会っていた。
 にも関わらずありえないなどと、その発言こそがありえん」

 少なくとも数多ある世界の中で、ガンメンに対抗し得る単体があることを自分は知っていた。
 そしてこの会場内にいる参加者が、その単体と同等かそれ以上のものと螺旋王に目されて召集されたことも。
 だとすれば黒の太陽もダイガンザンも、その力量をもって落とせる存在がいて不思議はない。
 これまでの自分の考えはニンゲンを下等と侮ることで、その力に目をつけた螺旋王の眼力すら嘲っていたことになる。

 ニンゲンは断じて下等種族ではない。
 ただ獣人が、そのニンゲンと比較して尚、上等な種族なだけである。

 チミルフが証明しなければならないのはその一点、そのために必要なのは意識の改革だ。

 与えられた敗北感と、この六時間の間に経験した全ての情報から先入観を修正する。
 ヴィラルとシャマルを抜きにしても、この会場の中にはまだおよそ三十人近い参加者が残っているのだ。
 その中の一人、武人としての格を備えた老体との戦いを思い出す。
 満身創痍の身ながら一切の遅れを取らぬ鋼の精神力――流石は螺旋王が選んだ適応者なだけのことはある。
 最低限、あの老人クラスが二十人以上いることを想定すべきだ。
 そしてその頂点には先の紅の螺旋の持ち主がいる。

 あの破壊に再び相対することを思えば、知らずチミルフは身体が震えるのを隠せない。
 恐怖――ではなく、より鮮烈な戦いに挑める歓喜の武者震いを。

 強者に挑めるのは武人としての本懐、相手が強大であることを喜びこそすれ、嘆き慄くなど軟弱者のすることだ。

 満を持して放たれた螺旋の暴威――なればあれこそが彼の参加者の渾身の一撃。
 その破壊力は直撃されたものの身体を滅するだけに留まらず、その破滅を目撃していたものの心を折るほどの圧倒的さを誇る。

「だからこそ……あれを破れば、俺の勝利だ」

 地金はすでに晒されている。
 威力、範囲ともに驚異的な一撃ではあるが、それ故に生じる躊躇いがあろう。
 相殺の経緯を見れば、あの転移現象が使用者の想定の埒外であったことは容易に想像できる。

 またあれほどの攻撃が、このゲームの中で繰り返し使用されたはずもない。
 今でこそ半壊状態にまで陥ったこの戦場だが、あの螺旋は揮われるまで曲りなりにも健在であった。
 そこから導き出される結論は――

「回数制限。あるいは威力を制御できていない。
 もしくは……他の参加者を巻き込みたくない……とでもいう気か?」

 前者はともかく、後者は想定する必要があるだろうか。
 ヴィラルとシャマルの関係のように、この会場内で巡り合い、互いの利害によって同盟を結ぶ輩がいるのはわかる。
 ニンゲンとは群れる生き物だ。種族として大多数のものが貧弱な肉体を持つ以上、小さきものが群れるのは当然のこと。
 シャマルのように弱い存在もいる中では、そういったものが徒党を組む可能性も十分にある。

「だがあの破壊の具現者が、そういったものを庇護するような存在か……?」


 力の性質だけで他者を推し量ることなどできはしないが、この想像に限れば正解な気がする。
 何より問答無用でダイガンザンを打ち砕いたその手並み。
 ――まさか起動したのがチミルフであったと見抜いてのことではあるまい。
 断言する。彼の存在は騎乗者が誰であろうと、同じ暴威で紅蓮の要塞を落としたと。
 そこから想像できる相手の輪郭は――

「唯我独尊。己が力量に絶対の自信を持ち、己が信念の覇道に一切の疑念を持たぬ。慈悲も情愛も我欲に比すれば無為そのもの。
 他者と共に行動することがあるとすれば、自身の目的に利用するため……まるで独裁者の有様だな」

 力のみを追い求めるか。決して譲れぬ信念を律するか。
 いずれにせよ、強者は個が強すぎるのが必定。
 非凡な強さを持つものは、非凡な精神構造でなければ耐えられない。
 まだ見ぬ孤高の覇道を唱える存在に苦笑しつつ、しかしチミルフの戦意は熱を上げ続ける。

 過ぎた力は、強さは、自信は、戦いの中で全て鎖となりえる。
 数刻前のチミルフが己に与えられた強力な力に溺れたように、強さに自負のあるものほど戦いには隙が生じ易い。
 それは本来、弱者からは隙とすら見破れないような僅かな綻びでしかない。
 その綻びを突くことこそが、今のチミルフが持てる最大にして一縷の勝機。

 ――ダイガンザンの死は無駄ではない。
 愚かな『怒涛のチミルフ』が死に、一介の武人たる獣人チミルフを戦場に呼び戻した。
 さらには敵対する参加者が持つ、最大級の攻撃の実態を肌で感じ取ることができた。
 もしも彼の存在に『怒涛のチミルフ』が一見の前に遭遇していたとすれば、為す術もなくあの滅びの前に大敗を喫したことだろう。

 だがそのIFはない。規模も威力も知れた技など、恐るるに足らぬ。
 技があると知れたならば、出させないか出せない状況を作り出せばいいだけのこと。
 こちらがダイガンザンを失ったことと、敵の最大戦力が割れたことの痛手は拮抗している。

「……五分と五分だぞ、ニンゲン」

 吠声は決して虚勢ではない。
 戦いの中で最大級の力を最初に見せつけること、それの持つ意味をチミルフは知っている。
 圧倒的な力でもって敵を殲滅、士気をへし折るというのは自身も人類掃討の折に幾度となく実行した手だ。
 それを意趣返しの如くニンゲンにやられたわけだが、だからこそその狙いと弱点がわかっている。

「会場内の多くのニンゲンの心は折れたかもしれん……だがな! だがな、ニンゲン……ッ!
 俺はまだだ! 俺の心は……獣人の牙は、容易く折れぬものと知れ!!」

 仰ぎ見た天にまだ見ぬ夢の仇を幻視し、チミルフは正義でもなく悪でもなく、ただ高らかに己の存在を咆哮した。



 ――ここに螺旋王が率いし獣人達の、その栄光の歴史の話をしよう。

 かの王はかつて螺旋族の末席にその身を置き、宇宙をスパイラルネメシスの脅威より救済せんと目論むアンチ=スパイラルと戦う戦士であった。
 しかし王の連なる螺旋族は他の螺旋の民が同じであったように、宇宙救済の大義名分を掲げる敵に対し敗れ去ることになる。
 意志を挫かれるということは即ち、螺旋力の源を失うことに等しい。
 生き残った王は螺旋力の大半を、目的のない永きに亘る怠惰の中で喪失した。
 友を、家族を、愛する人を、争いの中で喪った王には再び剣を手に取る意志などない。

 それでも大地を、空を、宇宙を求めるのが人の性。
 人は暗闇の中では生きられない。光を、大気を、自然を彩る色を――人は求め続けた。
 アンチ=スパイラルとの決戦でその数を減少させた人間は、それでも再び繁栄を目指す。

 その意志はアンチ=スパイラルにとって忌まわしきものであり、敗北者からすれば歴史を掘り起こす蛮行に他ならない。

 人類の進化に、歯止めをかける必要があった。
 かくして王は獣人という人の亜種を創造することを決意する。
 ――彼らを率いて地上を征圧し、人類に地下生活を強いることで一定数以上に数を増やさせぬように努めた。
 その生命すら誕生させる膨大な螺旋力を理性で覆い隠すために、感情のほとんどを抑圧することを自身に任じてだ。

 その統治が数百年にも上れば、地上の存在すら知らない無知な人間ばかりが増えた。
 中には地上の覇権を求めて反旗を翻した輩もいたが、対するのはかつて世界どころか宇宙の命運を懸けて戦った男の部下たる獣人。
 技術力、戦力その他の差は計り知れず、獣人側が人間に遅れを取る機会などあるはずもない。
 惜し気もなく与えられる起動兵器ガンメンの力の前に、人間はひれ伏す他になかった。


 ――獣人の歴史はまさしく、ただ勝利だけを与えられ続けてきた歴史なのだ。


 だからこそ、その数百年はひたすらに停滞だけが支配した世界だったといわざるをえない。
 獣人達の目的は種の繁栄ではなく、王の命に従って地上を支配し続けること。
 そのために必要なものは全て揃っている。
 それ以上を望むことなど、下等なニンゲン相手に過ぎた警戒、臆病な心の表れと揶揄された。
 ――前進は種族の力を高めるのと同時に、獣人のプライドを傷付けかねない諸刃の刃であったのだ。
 これまで必要なかったのだから、これからも必要とはなり得ない。
 もしも今以上を戦いに要するのであれば、それは下等種族の力が増したことを、もしくは獣人の種族の力が衰えたことを意味する。

 故に彼らは種族の本能からして停滞を望んだ。
 ただその場に留まり続けることを。前進も、後退も、その長き生の中で価値を見出さず。
 定められた必然的な勝利の上にのみ、自分達の存在価値を信じることで。

 ――その数百年に及んだ本能の約定が今、根底から覆されている。

 ニンゲン相手に敗北するなど、許されないという次元の話ではないのだ。
 許されないのではなく、あり得ない。あってはならない。負ける方がむしろ難しい。
 獣人達の間では話題に上ることすらない、妄言乱心の類の夢想――その屈辱にあろうことか、四天王が甘んじたのだ。

 立場に未練を抱いていたかつてのチミルフは、その敗北の上辺の意味しか捉えなかった。
 たとえ相手が何者であろうと、叩き潰すそれのみだ――口当たりのいい言葉で敗北感を紛らし、武勇に相応しい外面を取り繕った愚かな自分。
 その慢心が機動六課との戦いに次いで、ここでの二度目の敗北に繋がったのだ。

「だがな……この二度の敗北が俺に、教えてくれたことがある……ッ!」

「それは敗北から学べたことで、俺は強くなれるということだ――ッ!!」

 勝利を前提とし、変わらぬ戦いの日々では何一つ得ることなど叶わない。
 真に勝利を欲さんとすれば、勝つか負けるかの殺し合いの果てに、魂を燃やし尽くすことが要求される。
 これまでチミルフが踏んできた血に染まる大地は、全て『戦い』の名を借りた殺戮遊戯。
 武人であると自らを誇り、他者からも形容された自身は虚像に過ぎなかった。


 何故ならばチミルフは二度の敗戦を乗り越え――今ようやく、本当の戦場に立ったのだから。


 負けることが恥だったのではない。戦わぬことこそが本当の恥辱だったのだ。
 敗北から学べることのなんと多いことか。
 己の身で体感して初めて、この臓腑を焼き焦がす屈辱にも種類があることを知った。
 怒りとは胸を焼き尽くす憎しみではない、両足を支える礎なのだ。
 『怒涛』の二つ名を冠していながら、その真の意味を知らなかったなど笑止千万。

 今の状況になったからこそわかる、ニンゲン共の強さの価値を。
 獣人の歴史が勝利の刻印だとすれば、ニンゲンの歴史は敗北の烙印だ。

 ――宇宙全土!
 ――多元世界全土!
 ――無限の此処から無限の彼方まで全てを見渡したとしても、ニンゲンほど負け続けた存在など他にあるまい!

 だからこそ奴らは強い。強くなる理由がある。
 なればこそ獣人はさらなる強さを求めなければならない。
 敗北の味を知り、本当の意味で貪欲に勝利を求める心で、戦いの螺旋の中で高みへ駆け上がるのだ。

「笑え……今の滑稽な俺を笑うがいい、アディーネ。
 お前と轡を並べた戦いの日々……それも全て遠き、ハリボテの上に栄光よ」

 獰猛に歯を剥き出して、獣面を豪気な喝采で満たしてチミルフは笑った。
 全てを失い、敗北に打ちひしがれ、愛も絆も何もかもを投げ捨てた男が満足そうに笑う。


 ――今、チミルフは初めて、数百年の獣人生の中で初めて、生きていた。


 激しい歓喜に身を打ち震わせた刹那のことだ。
 ――唯一無二の王の声が箱庭に満ちたのは。



 ――――生き延びた者達よ、聞くといい。



 遠き空か、はたまた近き大気を震わせてなのか、幾年月も揺らぐことのなかった声に微かな感情が宿るのに忠臣は気づいた。
 だが言及するまい。この時ばかりは頭を垂れ、膝を突き、伏して言葉を拝聴するのみ。
 チミルフが箱庭に投じられてからの六時間、その戦場で起きた全ての出来事を透徹した眼差しで王は見届けていただろう。
 ならば不徳によってダイガンザンを失いしことも、御身の眼前で果たした失態。

 死者と禁止エリアを告げる王の言葉の中に、とうとう腹心に賜わされた言葉はなかった。
 そのことに何ら落胆もしていない己を顧みて、チミルフは口の端を歪ませて獣面に皺を寄せる。
 紡がれた死者の連名の中に、チミルフに纏わる存在は一つも含まれていなかった。
 それでも尚、瞑目してしばしの黙祷を捧げたのは、人と獣人とを度外視した上で戦士達の死を悼んだからに他ならない。

 相対する運命を与えられず、箱庭の無情に散った戦士達。
 だがその死は決して無駄にはならない。その生は僅かばかりでも螺旋王の御心の礎となる。
 ただ漠然と過ごしたものには与れぬ報奨――戦場を舞う存在にこれ以上の褒美があろうか。


「生きることは、戦うということなのだから――ッ!」


 吠声に呼応し、ビャコウが高々と宙を舞う。
 刃の肩装甲が静まり返った朝焼けの空を切り裂き、巨大な顔面の鮫ような牙が主人の覇気に打ち震えて歓喜を表す。
 灰と煤に塗れたはずの白い機体が暴風の中で輝きを取り戻し、顔面の額に位置するもう一つの顔面の双眸が戦意の炎を滾らせた。

 これまで幾度となく共に戦場を駆け抜けたカスタムガンメンが、真の意味で手足のように扱える感覚。
 研ぎ澄まされた集中力、緩むことを忘れた戦意の鼓動、それらが脳を活性化させる。
 口内を湿る血の味を味覚が鮮明に捉え、嗅覚が朝の気配を如実に嗅ぎ取る。聴覚は高き空を吹き荒ぶ風の声を聞いた。
 大気の振動を細胞の一つ一つが肌で感じ取り、広がる視界は地平線の彼方まで遠く見渡せる。

 これが敗北を知ったことの変化――心の殻を一つ破った男の前進。
 何もかも失ったはずの、ただ一つ残ったこの身がやけに熱い――!

 その飽くなき前進の炎こそ、螺旋王が人間に求めた進化の灯火だと今のチミルフは気づかない。
 未だ獣人の域を超えるまでに至らぬその身では、螺旋力に覚醒することもまた夢のまた夢。
 だがしかしと、己の内側から溢れ出す止め処ない活力を手にしてチミルフは思うのだ。

 たった二度の敗北から学べたことで、チミルフは自身が強くなれた実感がある。
 頭が悪く、戦うことにしか価値を見出せなかった自分が、だ。
 ならば賢き獣人は。まだ若き未来ある獣人は。この可能性を前に、さらなる飛躍を望めるのではないか。

(見たい……見たいぞ俺は! その世界を!
 獣人がさらなる繁栄を遂げ、真に世界を支配するに相応しい種族となる未来を!)

 ――そのためにも、俺はまだニンゲンを知る必要がある。

 ただ戦い、勝利するだけを追い求めるのならば今までと何も変わらない。
 螺旋王が希望を見出した戦場にて、ニンゲンではなく獣人の方が彼の王の統治する世に相応しいことを証明し続けなければならぬ。

 見定め、知る必要がある――そのためにも。
 ニンゲンとの遭遇を求める。肉体は弱くとも、精神に強き芯を抱くものがいい。
 肉体精神共に強いものに出会い、戦いたい気持ちは確かにある。
 だが勝利するだけでは、この込み上げる衝動を口下手な自分では説明できないのだ。

 賢く、心強きものとの遭遇が望ましい。
 捕えてその心根を暴き、強さの根源を何としても持ち帰る――!

「それがこの場に存在する唯一の純粋な獣人、チミルフに課せられた一念だ――!」

 優先すべきはヴィラルとの接触。
 チミルフより早くこの戦場に馳せ参じ、ここまで生き残った古強者。
 その経験に大いに学ぶところあり。仮初め偽りの上司と部下の建前など、より大きなものの前には無価値と化すのだ。
 幸いなことにシャマルの名は放送に含まれていなかった。
 つまり消防署の崩落から難を逃れ、今も生を繋いでいることとなる。
 ヴィラルが約束を守ると信じて行動しているならば心は痛むが、全ては大儀のための小事と冷血に徹して切り捨てた。

 そして今一つ、ヴィラルの他にチミルフの心を占めている人物がいる。


 ――その名はニア。
 ――螺旋王の第一王女、その冠を被ったニアという名の少女。

 チミルフが忠誠を誓う螺旋王とは別の世界。
 異世界の螺旋王の娘として生まれ、おそらくはその世界の獣人の上に立つ高貴な存在。

 多元世界の理論を忠実に理解できてはいないものの、ヴィラルとの遭遇という経験を得て本質は理解しているつもりだ。
 仮初めの部下との対話の中で違和感を持たれなかったということは、違う世界であっても自分は自分という存在であり続けるらしい。
 ならばそんな自分が螺旋王の娘とやらにどのように接しているか、想像にも関わらず実体験の如く鮮明に思い浮かんだ。

 造物主たる王と同様に忠誠を誓い、その御身のために献身、命を投げ出すことも厭うまい。

 チミルフはその程度には今も自分を評価している。
 その程度できなくて、獣人軍団の兵達に名を並べられるものか。
 主のために命を投げ出す覚悟など、生まれ出でた時より本能に刻み込まれている。

 獣人の頂点に君臨する螺旋王――だがその身は獣人のものではない。
 今まではそのことに疑問を抱いたことはなかった。
 チミルフにとって螺旋王は、ニンゲンの身体を持つ存在という以前に神に等しいからだ。
 姿形が人型でも、その存在の本質は神――神を信じるものにとって、神である事実以外など些事に過ぎない。


 その盲目的な妄信を螺旋王に向けるのは本能――ならば、その娘に対してはどうだ?


 『こちら』のチミルフが生を受けた世界と同じく、獣人の支配する『あちら』の世界で生を受けた第一王女ニア。
 獣人がニンゲンを下等と嘲り、掃討する世界の中で、王都テッペリンにて日々を送った彼女はどのような扱いを受け、その果てにどんな信念を持つのか。

 それは正しく、チミルフの胸中を期待の感情で埋め尽くした。
 螺旋王の『娘』――造物主と似た立場にありながら、決定的に違う場所に立つニンゲン。
 獣人を従えるに相応しい志を持つのか、あるいは人に寄った思考を持つ裏切り者か。

 大多数のニンゲンが絶望と失望、血と混沌の中に沈んだ戦場で永らえている王女。
 その心情を拝聴したい。志を示してほしい。
 そして生まれて初めて生を実感するチミルフを、王の系譜に連なるものとして裁いてほしい。

 如何なる審判が紡がれようと、納得し、己を肯定できるような不可思議な確信で満たされている。

 ビャコウを駆り、目指す進路の先には墜ちた黒き太陽がある――

 あれだけの巨躯が浮上し、一撃の下に地へと打ち落とされたのだ。
 箱庭の中のありとあらゆる参加者がその一連を目撃し、あの場で集うことが予想される。
 それならばチミルフが果たすべきは、誘蛾灯にまんまと誘い出される愚かな獲物を根絶やしにすること――ではない。

 油断は禁物。我武者羅に獣爪を振り上げるだけならば、それこそ獣と変わらない。
 獣の敏捷性と戦闘力に、知能を併せ持つからこそ誉れ高き獣人と呼べるのだ。

 紅の暴威の一件が、猪突猛進を申告する青い自分に歯止めをかける。
 己を知った自分に次に必要なのは相手を知ること――さすれば勝利はぐっと近付こう。


「まずはニンゲンの見極めよ……
 そのためにも、激戦の渦中に飛び込むのは向こう見ずな愚かさの体現。
 俺が追い求めるに足る獲物は黒い太陽、それに向かう道筋にある――!」


 参加者の集結地点足り得る旗印――それを目指す参加者こそが今の目的に相応しい。


 高高度飛行を控え、伏した虎の如く静寂の移動を開始する。
 牙にかかる獲物を獰猛に捜し求めるその姿は、血に飢えた獣と何ら変わらない。
 だが戦意の炎に滾る双眸に、等しく光るのは理知の輝き――獣と一線を画す理性の証明だ。


 ならば獣の本能と人の知に至った今のチミルフの姿は、まさしく獣人という存在の体現者であろう。


 土壇場で生まれ変わった一握の武人が、白銀の猛虎の力を用いて逆襲を始める。
 全てを失いし敗残者。見るも無残、惨めで愚かな敗軍の将――

 そんな我が身であるからこそ、できることがあるのだと己の存在を高く高く謳って。
 胸に抱くのは求めて止まない螺旋の意志の本質。王への変わらぬ忠誠。
 真の武人として戦場に挑める昂ぶり。そして未だ拝謁の叶わぬ異世界の王女への期待。

 ない交ぜとなる感情の奔流を猛る自身の咆哮に乗せ、一介の獣人が戦場を駆け抜ける。
 一介の獣人が戦場を――駆ける。


【C-8/禁止エリア山中/二日目/朝】
【怒涛のチミルフ@天元突破グレンラガン】
[状態]:全身に肉体的疲労とダメージ(小)、敗北感の克服による強い使命感、ビャコウ搭乗中
[装備]:愛用の巨大ハンマー@天元突破グレンラガン(支給品扱い)、ビャコウ@天元突破グレンラガン
[道具]:デイパック、支給品一式、(未確認の支給品が0~2個ありますが、まだ調べてません)
[思考]
基本:獣人以外を皆殺しにする上で、ニンゲンの持つ強さの本質を理解する。
0:黒い太陽方面にて参加者を捜索、相手を見て交戦如何を決める。
1:ヴィラルと接触したい。
2:螺旋王の第一王女、ニアに対する強い興味。
3:強者との戦いの渇望(東方不敗、ギルガメッシュ(未確認)は特に優先したい)。
4:ヴィラルが首を一つも用意できなければ、シャマルの首を差し出させるかもしれない。
5:夜なのに行動が出来ることについてはあまり考えていない(夜行性の獣人もいるため)。

[備考]
※ヴィラルには違う世界の存在について話していません。同じ世界のチミルフのフリをしています。
※シャマルがヴィラルを手玉に取っていないか疑っています。
※チミルフがヴィラルと同じように螺旋王から改造(人間に近い状態や、識字能力)を受けているのかはわかりません。
※ダイグレンを螺旋王の手によって改修されたダイガンザンだと思っています。
※螺旋王から、会場にある施設の幾つかについて知識を得ているようです。
※大破したダイグレンはチミルフの手で木っ端微塵、もはや墓標すら残っていません。
※『怒涛』の二つ名とニンゲンを侮る慢心を捨て、NEWチミルフ気分です。
※自分なりの解釈で、ニンゲンの持つ螺旋の力への関心を抱きました。ニンゲンへの積極的交戦より接触、力の本質を見定めたがっています。(ただし手段は問わない)


【ビャコウ@天元突破グレンラガン】
チミルフ専用カスタムガンメンで、本編ではカミナの死因となる一撃を放ったという曰くつきの機体。
名前の由来は白虎。
主な武装はビーム刃を放つ槍で、
ビーム刃による貫通突撃アルカイドグレイヴと、ビームを刃から直接打ち出すコンデムブレイズという
近距離遠距離それぞれに対応した必殺技を併せ持つ。
必殺技を披露する機会すら与えられなかったシトマンドラwithシュザックに比べて随分優遇されている気がする。


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