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  • 柊かがみの憂鬱 Ⅱ

柊かがみの憂鬱 Ⅱ

最終更新:2023年07月01日 18:19

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だれでも歓迎! 編集

柊かがみの憂鬱 Ⅱ ◆tu4bghlMIw



                ▽



《……絶対に、絶対に許さない――鴇羽舞衣》


一部ボロボロになったコンクリートの海。
市街地の一角、綺麗に舗装された道路の上でかがみと舞衣達は数メートルの距離を開けて対峙していた。


「殺、した?」


舞衣の唇がまるでソレ自体が命を持っているかのようにぎこちない動作で歪む。
顔面の筋肉が硬直しているようだった。何も考えられない。全てが憎い。辛い……悲しい。

(嘘だッ……嘘だッ……嘘だッ……!!)

鬼のような、般若のような。憎しみと絶望と憤怒が混ざり合った凄まじい怒りの表出だった。
マーブル模様を描きながらに様々な感情が一つの結論を目指す。
舞衣の心はいまだ〝かがみ〟が言い放った台詞の意味を理解出来ないでいる。


「んーあぁ、殺したぜ? おっと、もしかして俺の口からじゃなくて次の放送で聞きたかったか。そいつぁ悪い事をしたなぁ」 
「な、んで……」
「何で? あらあら、おかしな事聞くのね……」

白と紫の女が嘲るように言う。柊かがみの口調の次はラッド・ルッソ。
自身で否定したスイッチを切り替えるような言葉の変化を難なく〝かがみ〟はやってのける。

まるで様々な人格が一つの身体の中に同居している乖離性人格障害患者のようだ。
彼女(あるいは彼)は遊んでいるのだろうか。それとも…………?


「そりゃあ、タァカヤ君が考えちまったからに決まってんじゃねぇかよぉ!?
 すっかりおびえきった顔の普通の女の子につよーいつよーい宇宙人の自分が殺される訳ねぇってよ!!」
「――ッ! そ、そんな……」


瞳を見開き、唇を震わせ、拳を握り締める舞衣とは対照的にゆたかが小さな悲鳴を漏らす。
だが絶望の淵にいる所をDボゥイに救われた舞衣と違い、ゆたかがDボゥイに抱いている気持ちは別の色合いを持っている。

それは、春の空のような爽やかな憧れにも似た一途な想い。
自分に自信が持てない少女が覚えた「好き」や「愛してる」には届かない憧れのようなもの。


「……る……さない」

だが、一方で舞衣がこの世界へとやって来た状況は極めて限定的なモノだった。
彼女はほんの数刻前に何よりも大切な自分の弟を失った状態で殺し合いに参加させられていた。
加えて、それに付随する環境も最低最悪のモノだ。
尾久崎晶のチャイルド、ゲンナイが美袋命に倒された事によって鴇羽巧海は命を落とした。
そして、怒りに支配された舞衣は命を自身のチャイルドであるカグツチによって殺した――と思っている。

舞衣には救いもなく、同時に心の底から大切だと思える相手もいなかった。
いや、想う事を許された相手がいなかった、と表現するべきだろうか。
彼女が想いを寄せた相手――楯祐一は幼馴染である宗像詩帆を選んだ。
だから、舞衣は自身が楯を大切な人であると思う事に抵抗を感じていたのだ。

結果として――その想いの矛先は、相羽タカヤという一人の寡黙で不器用な男へと向けられた。

しかし、


「……何? よく、聞こえなかったんだけど。質問する時は大きな声でハッキリと発音よく。
 学校で教わらなかったのかしら? そう、それでね。タカヤ君との約束があるのよ。
 聞きたい? そりゃあ聞きたいわよねぇ? でも残念だけど遺言とかじゃないのよね。
 そう、私とタカヤ君との約束ってはね……舞衣ちゃんとゆたかちゃんをぶっ殺してあげるって事! どう、素敵でしょ?」


目の前の少女の姿をした怪物が、彼を殺したと笑いながらに言うのだ。

ニコニコと〝かがみ〟が口元を綻ばる。
まるで学校の友人達と他愛のない話で盛り上がっている時のような和やかな表情だ。
ダンサーがステップを踏むように、コンダクターが楽隊のリズムを合わせるように。
〝かがみ〟はボコボコになったアスファルトの道路をコンコンと爪先で叩く。
放っておけば鼻唄でも歌い出してしまいそうなご機嫌具合だった。
そう〝かがみ〟はまるで辛い事など何一つ存在しないとでも言いたげに、殺戮の武勇伝を語るのだ。

(Dボゥイが死んだ? Dボゥイが殺された? なんで? こいつに? こんな奴に?)

舞衣は心の中で自問自答を繰り返していた。
こころの迷宮に足を踏み入れては、右も左も分からないような永久の闇の中で頭を抱える。

全てを、忘れてしまった訳ではない。
力がなかったから自分は守れなかった。足手纏いになる事しか出来なかった。
無力な自分が大嫌いだった。巧海を守れる力が欲しかった。
相手を倒す力ではなくて「大切な人」を守れる力。もう誰にも悲しい思いをさせたくなかったから……

だけど、あの時舞衣はラッド・ルッソを「殺すための力」が欲しいと願ってしまった。
チャイルドを呼び出す事の出来ない舞衣は極めて無力だ。
彼女のエレメントはただひたすら「守る事」に特化している。攻撃としての力の行使はほとんど行った事がない。

だから、舞衣は心の底からカグツチが現れてくれる事を願った。
カグツチは最強無比の力を持った強力なチャイルドだ。
大空を翔ける炎の翼、口から吐き出す天壌の劫火は森を焼き、山を消滅させる神如き破壊力を秘めている。

(でも、もうカグツチはいない。カグツチはやられてしまった……エレメントも出せない……
 憎い……この柊かがみの姿をしたラッド・ルッソが憎くて堪らない……)

カグツチは、藤乃静留との戦いによって消滅してしまった。
姫舞闘におけるルールの一つとして、チャイルドがやられた場合、HiMEはHiMEとしての力を失ってしまう。
そして「大切な人」も緑色の光になって消えてしまうのだ。
勝ち続けるしかない。誰かを守るための力は崩壊した瞬間にその持ち主を喰らい尽くすのだから。

「……絶対に、絶対に許さない」
「ああ? 別に許して欲しくなんてねーよ。懺悔してる訳じゃねぇんだから――」


ラッドはヘラヘラと、そしてニヤニヤと。
言葉が変われば表情も変わる。
だがどちらの〝かがみ〟も周囲に強烈な不快と絶望を撒き散らす存在である事だけは同義だ。

(憎い……っ、憎いっ……!!)

どんな言葉を重ねようとも舞衣には目の前の少女がラッド・ルッソにしか見えなかった。
口調もクルクルと変わるし、姿は彼女の仲間である小早川ゆたかの先輩である柊かがみのモノだ。
だが、根本的に舞衣は『本来の柊かがみ』という人間を知らない。
ラッド・ルッソと混ざり合った不純物としての〝柊かがみ〟としか顔を合わせた経験がない。

舞衣は決して聖母のような心を持った全ての罪を赦せるような人間ではなかった。
彼女は極めて普通の、どこにでもいるような女の子だ。
人間がどれだけ可能性に満ちた生き物であったとしても、十やそこらしか生きていない若者に賢者のような理性が備わっているだろうか。
柊かがみに対する思い入れが正直な話、舞衣はそれほど濃い訳ではない。
ゆたかの生き残った唯一の知り合いだ。出来るなら助けてあげたいと思う。しかし、

(私には、あの〝柊かがみ〟が――ラッド・ルッソに憑りつかれた、ただの抜け殻にしか見えない。
 なんて……私は…………最低、なんだろう……)

彼女がラッド・ルッソの口調を、仕草を示すたびに、舞衣の胸はキリキリと締め付けられるのだ。
死んだはずのラッドが何故か生き返って、そしてDボゥイを殺したと――そんな穿った視点でしか、柊かがみについて考える事が出来なくて。
吹き付ける生温い風と燃えるような太陽にまでとばっちりが行きそうなくらい、舞衣の心は荒れ狂っていた。

「とりあえず、舞衣ちゃん達がまだ殺し合う気がないなら……少しだけお話でもしましょうか。
 どれくらいタカヤ君がボロボロになって、無様に惨めに血だらけになって死んでいったとか――興味深いでしょ?」
「こ、いつ……っ!!!」
「おい、馬鹿! 待て不用意に飛び出すんじゃねぇ!」
「放してよスパイクっ!! こいつは、Dボゥイを……!」

限界だった。

しかし、武器も持たずに〝かがみ〟に向かって行こうとした舞衣がスパイクに後ろから羽交い絞めにされた。
必死にその手を振り払おうとしても、隻腕のはずの彼の拘束から抜け出せない。
腕一本なのにしっかりと身体をロックされてしまっている。

カグツチの名前を呼ぼうとも、エレメントを出してみようとも思わなかった。
どうせ何も起こらない事は分かっている。だけど、ジッとして見ている事なんて出来る訳がなくて……

「おうおう、スパイクさんよぉ。舞衣ちゃんは俺と戦いたがってるんだから好きにさせた方がいいんじゃねぇか。
 俺達大人だって、時にはガキの自主性を尊重するべきだしなぁ!」
「その口で大人を語るってかい。俺には好き勝手生きてるアンタが一番子供っぽく見えるがねぇ」
「……ふぅん。〝私〟の番だけに反論出来ないのが残念だけど……ま、どっちにしてもあなた達は戦って殺し合うしかないの。
 だって、ね。あなた達……この前私に負けたばかりでしょ。しかも懲りずにまるで同じ面子。
 流石に二度目はないわよ? 今回はそっちの白い龍もしっかり相手してあげるから……」
「……痛い所突くもんだ」

顔面を苦渋の色に染めながら、スパイクが苦し紛れに言った。
スパイク、ジン、舞衣、奈緒、そしてゆたか。
メンバーはかがみが〝かがみ〟へと変貌した時と変わっていない。
今回は「柊かがみを救う」という意志が強く存在するものの、奥の手が存在している訳ではない。


「さぁさぁ、いったい誰から俺の相手をしてくれるのかねぇ!? ああ、何なら全員一気に掛かって来てくれてもいいんだぜ。
 殲滅戦、電撃戦、打撃戦、防御戦、包囲戦、突破戦、退却戦、掃討戦、撤退戦、どれだって構わねぇしよ!」


〝かがみ〟が腹の底から己の戦いに対する思いをぶちまけた。
舞衣達は彼女の放つ強烈な威圧感に気圧される。絶対的な一手などそう簡単に見つかる訳がない。
本当に〝かがみ〟を殺すつもりで戦わなければ逆にこちらがやられてしまうだろう。
しかし、それでは意味がない。柊かがみを救い、皆で帰らなくては意味がない――舞衣がそう思った時だった。


天に金色の光を放つ『影』が現れたのは。


                ▽


《痴れ者が……その程度の力で我に敵うと思ったのか?――ギルガメッシュ》

「ふむ。そこまで戦いに執着するとは呆れた戦闘狂、いや殺人狂だな」


どこかの国の国家金庫から盗み出してきた金塊から抽出したような見事なまでの黄金色の髪。
金色のフルアーマータイプの頑強な鎧。溜息が出るほど端正な容姿と、全てを射抜くような紅の瞳。
突如大空から弾丸のような速度で飛来したのは――英雄王ギルガメッシュ、その人だった。

装備したインテリジェントデバイスマッハキャリバーを用い移動用魔法、ウイングロードを行使。
帯状魔法陣を展開し、そこをカタパルトのようにして移動する戦術は音もなく敵に接近する事に何よりも優れている。
完全にギルガメッシュはかがみの虚を突き、背後から攻撃範囲へと近づく事に成功した。

「ギ、ギルガメッシュ!?」
「なっ――」

いち早くギルガメッシュの接近に気付いた奈緒が大声で彼を呼んだ。
ほぼ同時に〝かがみ〟が振り向くも時既に遅し。
それどころか、タイミングよく『顔だけを後ろに向けた』事は〝かがみ〟に更なる災禍を呼び込む事になる。

ギルガメッシュは〝かがみ〟へと突っ込みながら、無遠慮に右腕を伸ばした。
そして、ガッチリと彼女の顔面を鷲掴みにする。
五指が頬骨からこめかみ、額と彼女の皮膚に食い込む。その拘束は完璧。ソレこそ指を切断でもしない限り外れる事はない。
マッハキャリバーの高い機動性でもって〝かがみ〟へと突撃して来た彼はそのままゴツゴツとしたアスファルトに着地。
機動性をフルドライブさせて自身に更にスピードを加算する。

そして、


「テメェ、何しやが――」
「――笑いたくば、心ゆくまで笑え。その減らず口がどこまで利けるか、我が試してくれよう。
 貴様の言葉に合わせてやるとすれば……そう『持久戦』という奴だ」
「や、やめなさいっ! なにするつも――ガ、ガァアアアアアアアアアアッ!!!」


〝かがみ〟の顔面を思い切り地面へと叩き付けた。
そしてマッハキャリバーを加速させる――当然、かがみの顔は道路へと押し付けたままだ。


「ガ、ガ、ア、ガガ、ガガア、ガガ、ガガ、ガア、アッガ――」


ズタズタに引き裂かれた〝かがみ〟の口から言葉にならない呻き声が漏れる。
ギルガメッシュは更にスピードを上げる。彼と〝かがみ〟が通った後に残るのは真っ赤な道。
そして擦り潰されミンチにされた肉。

皮膚が裂け、歯が砕かれ、肉に食い込み、神経は断裂し、小石が口腔に吸い込まれ嚥下、そして食道までも犯される。
濃いねずみ色の車道に紅が混じり、屠殺された家畜のように両手足も引き摺られるままに擦り切れる。
ズルズルに擦り剥けた皮膚が簾のように垂れ下がる。

白く真新しかったタキシードは待ち望んだ返り血ではなく、顔面から吐き出すように零れる血液で汚される。
ビクンビクンと彼女の身体が痙攣する。実験で電気を流される蛙のように筋肉だけが意味の無い動作を繰り返す。

(あ、あ、あ……)

そんな光景を、ゆたかは顔を真っ青にしながらも脳へと強制的に流し込まれた。
眼を瞑る事など考えもしなかった。いや、恐怖のあまり身体が硬直して瞳を閉じるよう思考する事さえ出来なかったのだ。
英雄王のその蛮行自体が数秒の間に行われた行為だった。
しかし、スローモーションのように全てが再生される。見たくない筈の現実まで、全てを水晶の瞳は映してしまう。

だから、ゆたかは呆然としながら見つめる事しか出来なかった。
叫び声を上げる事も、悲惨な光景に卒倒して倒れる事も出来ない。
大切な大切な先輩が血液を噴出しながら、削られ、潰され、摩り下ろされ、壊されるのを黙って見ているだけ。


〝かがみ〟の頭部がどんどん減っていく。
舗装された道路といえど、鏡のように磨かれた完全な平面という訳ではないのだ。
当然、そこには微細な起伏があり突起がある。
そんな場所を人間が身体を、しかも顔から引き摺られたとしたら――?

生きて、いられる訳がない。
それが例え人形のように整った容姿の持ち主であったとしても、その美は完全に凌辱され破壊されるだろう。
残骸として残るのは、化物のような血と肉と骨が無様に飛び出した物言わぬ死体だけ。
そう――普通ならば。

「痴れ者が……その程度の力で我に敵うと思ったのか?」

〝かがみ〟の顔を紅葉おろしにする事に飽きたのか、ギルガメッシュが彼女の身体を勢いよく空高く放り投げた。
五、六メートルほど、天高く打ち上げられた〝かがみ〟は辺りに黒く濁った血液を撒き散らしながら落下。
重力に抗う翼を持たぬ者の宿命に逆らう事は出来ず、出来の悪い球体間接人形――ジャンク――のように両脚膝脹脛をへし折りながら大地へ叩き付けられた。

(かがみ……センパイ……私が……何も出来ないから、こんな事に……?)


             ▽


《ねぇ、ひとつ質問なんだけど…………どうして今すぐにでも死なないの?――結城奈緒》

「しかし、妙だな。その低俗で熱苦しい喋り方は例の狂犬であろう。だが奴は死んだはずだ。
 加えて身体は〝衝撃〟と一緒にいた小娘か? こちらはまだ放送で名前を呼ばれていないな。
 が、この右手に残る妙な感触は何だ……? 押し殺した細胞がすぐさま産声をあげているようだ。
 殺しても殺しても再生する、という事か。ふむ、なるほど。つまりは小娘、貴様――」


金色の手甲に付着した血液を払いながら、ギルガメシュが口元を歪める。


「――不死者、という生の地獄に縛られた畜生か?」


英雄王が確信に到った瞬間、倒れ伏していた〝かがみ〟が突然、頭を上げた。
そして蒼の瞳だけを爬虫類のようにギョロつかせながら、


「……アハ、ハハハハハハッ!! き、効いたわよ……今のは……!! 本当に……本当に! 死ぬかと……思ったわ」
「ふん、どうも削り足りなかったようだな。イマイチ加減が分からんな。我には不向きの無粋な戯れだったようだ」

冷徹な瞳でギルガメッシュは全身の骨を軋ませながら起き上がろうとする〝かがみ〟を見下ろす。

彼女の修復速度は異常だった。特に斬撃系統のダメージを多く受けていたため、顔面の傷はみるみる内に治っていく。
とはいえ、額から顎までほぼ全ての皮膚をこそぎ落されていたに近い状態だ。
特に完璧なまでに破壊された口周りなどは未だ赤い肉が腐り堕ちた果実のように充血し、屍人のような様相を見せていた。

「……いやいや、まさか君が来てくれるなんてね」
「〝王ドロボウ〟よ。これは、失態だな。あのような屍人一匹すら撃滅出来んとは」
「君が怒るのも分かるんだけどね……ま、こっちにも色々事情があって」

問い詰めるような視線に射抜かれたジンだが、ギルガメッシュに威圧される気配は微塵もない。
肩を竦め、飄々と応じるその様は同じ『王』の呼び名を持つ者として、英雄王に決して見劣りはしない。
親しげな雰囲気を保ちつつ破顔一笑。とはいえ、柊かがみの動きへの警戒は解かない。

「……ギルガメッシュ」

ギルガメッシュの名を親しげに呼ぶ少女の声――結城奈緒だ。
最後に出会った時に比べ、彼女の身体がズタボロになっている事を見咎めギルガメッシュは僅かに眉を顰めた。
だが、すぐに表情を戻すと奈緒を一瞥しながら、

「ナオよ、一つ聞いておこう。あの狗はどうした?」
「狗……ああ、ドモンの事? あいつなら一度会って、それからすぐに別れちゃったけど」
「……伝令もまともにこなせんとは。やはり、奴に王を名乗る資格はないな」

頭を押さえ、ギルガメッシュは落胆の声を漏らした。
元々低かった期待値が更に下がった格好になる。このままでは最安値も間近だ。

奈緒はそんな彼を見て小さく笑った。
そう、こういう傲岸不遜で自己中心的で他人を虫けら程度にしか思ってないのがギルガメッシュなのだ。
久しぶりに出会えた安堵か――いやいやいや、何だソレは。
何故あたしがそんなモノを金ぴかに感じなければならないのだ。
まぁ確かに、かなり頼りになる事だけは事実だけど(というか、そこを除いたら何も残らない)
しかし、金ぴかの登場はあたし達にとってかなりの好機と言えるだろう。これなら……


「とにかく! そんな事はどうでもいいからさ、手を貸してよ金ぴか。
 いい? 不死の酒ってのを飲んだ柊かがみがラッドをね……なんか食べ……いや、違うな。
 何ていうか、あまりにファンタジー過ぎて説明しにくいんだけど吸収しちゃったみたいなの。それで――」
「我と出会えた感動のあまり口数が増えるのは分かるが、そこまででよい。事情は察しているつもりだ」

うんうん、と頷きながらギルガメッシュが言った。が、言われた方は納得しかねる。
会っただけで感動なんてする訳がない。
それこそ動物園にパンダでも見に行った方がよっぽど胸が躍るだろう。


「いや、全然ないからソレ。まぁでも……分かってるなら話は早い、かな」
「照れずともよい。何、久しぶりに会った臣下の頼みだ。加えて我はそこそこ機嫌が良いのだ。
 容易い事よ――――柊かがみを我に殺せ、と言いたいのであろう?」


自身に満ちた表情で、ギルガメッシュは奈緒に堂々と宣言した。

――うん、訂正しよう。やっぱりこいつは全然分かっていなかった。

いや、一瞬でも「さすが金ぴか、無駄に頭の回転が速い」とか思ってしまったあたしが悪いのだ。
そもそもよくよく考えてみれば、あたし達が柊かがみを助けたいと願っている事をこのゴールデンバカが知り得る訳がない。
コイツにそういう、人間らしい慈愛の心とか他人を救いたいと思う心が存在する訳がないのは重々承知していた筈なのに。
ゆたかの大切な人を守りたい、暗黒の世界から救い出したい!なんて純粋な気持ちを理解出来るよう、頭が出来ていないのだろう。

「…………違うって。アイツの身体からラッド・ルッソを追い出して、本物の柊かがみを取り戻したいの。
 小憎たらしい相手だけど、ゆたかの……大事な先輩だから」

ちょっと投げやりな感じで奈緒は自分達の目的をギルガメッシュに告げた。しかし、

「意味が分からんな。何故、そんな回りくどい道を歩まねばならんのだ?
 我が進む道は全てが王道。至高へと到る覇道よ。あのような小汚い畜生は今すぐにでも塵に還した方がよいとは思わんか?」

帰ってきた解答はあまりにもギルガメッシュらしいの一言に尽きた。 
奈緒は気が気でなかった。何しろ、この会話を奈緒達にかがみを救って欲しいと頼んだゆたかも聞いているのだ。
妙な方向に話が進んだら、ギルガメッシュがゆたかを恫喝し始める可能性だって捨て切れない。

「おい奈緒、ジン」

その時、傍らのスパイクが咎めるような口調で二人の名前を呼んだ。

「……何」
「あまり……聞きたくない話題かもね」
「〝コレ〟がお前らの言っていた偉そうで傲慢だけどその代わり何だって出来る英雄王サマか?」
「……残念ながら、そう」
「まぁ、一応……そうだね」
「ったく、マジかよ……」

ちょっとシュンとしながら、奈緒とジンがスパイクの問い掛けにしぶしぶと答えた。
二人とも、まさかギルガメッシュが出会って早々こんな大ボケをかましてくれるとは夢にも思っていなかったのだ。
仲間達に彼の事を美化して伝え過ぎた事を微妙に悔いる。

「待て、聞き捨てならんな。そこの雑種よ――我を愚弄する気か? 余程命が惜しくないと見える」
「いや、今の戦闘見ただけでもあんたの実力はそれなりに理解したよ。
 とはいえ人間誰にでも欠点はある。俺はそういうのは大して気にしない性質でね。安心してくれ」
「――欠点、だと?」
「……っと、失言だったか」

スパイクの言葉にギルガメッシュが更に苛立ちを募らせる。
欠点、などという単語は天上天下唯我独尊完全無欠を自負する彼にとっては存在する筈のない言葉だ。

「おいおいおいっ! 俺の事を忘れてお喋りしてもらっちゃ困るねぇ、ギルちゃんよぉ!!
 アンタは俺の最高の餌だっつーの! あん時は殺し損ねたけどよぉ、見ろよ今はまだ俺はピンピンしてるぜぇ!
 俺の中から〝ラッド・ルッソ〟だけを取り出して柊かがみを救い出す!? おぅ、やれるモンならやってみろっつー話だぜ!
 絶対死なねぇと慢心しきったお前を俺はぶち殺す!!」


立ち上がった〝かがみ〟の視線は真っ直ぐギルガメッシュへと注がれる。
既に全身の再生は終了。
砕けた両足の骨も、引き摺られ擦り切れた皮膚も身体ベースである柊かがみの健康状態へと至った。
顔面の傷口もほぼ完治に近い状態と言えるだろう。
飛び散った血液すら綺麗に傷口に吸い込まれて元通りだ。所々ズタボロになったタキシードだけが唯一の爪痕と言えるかも知れない。

……なるほど。
実際、金ぴかが現れた以上〝かがみ〟の関心がアイツに向けられるのは分かる気がする。
映画館での無茶苦茶なバトルの際、ラッド・ルッソはギルガメッシュを第一のターゲットに定めていた。 
柊かがみの意思が沈み、ラッドっぽい人格がメインとなっている今〝かがみ〟が金ぴかを狙うのはある意味道理に適っている。

ラッド・ルッソの殺人の定義は『絶対に自分が死なないと思っているような生温い奴を殺して殺して殺しまくる』だ。
金ぴかは見れば分かるが、自分が死ぬとか負けるとかやられるとか微塵も思っていない。
まさに絶好の獲物という奴だろう。〝かがみ〟の中のラッドっぽい部分がそう考えるのも不思議では……

――ん?

その時、奈緒の頭の中にとある不思議な疑問が浮かび上がった。
そうだ。当たり前に考えていけば、これはどう考えても変だ。
あれ……何だ、コレ。どうなってんの……?


「貴様、何か勘違いをしているようだな」
「はぁ? まさかこの期に及んで、まだ私とは戦う気になれないとでも言うつもり?」
「だから貴様は愚図だというのだ……そろそろ、その悪趣味なごっこ遊びは止めにしたらどうだ」

尊大に、ギルガメッシュが言い放った。

「ごっこ……遊び、だと?」
「そうだ――ナオ、お前も核心に至っているはずだ。
 いや、我を除けばこの場にいる人間で、その真理にたどり着ける人間は貴様しかおるまい」


ギルガメッシュが突然、奈緒に話を振った。
スパイクやゆたかなどはギルガメッシュの言葉の意図を掴めず首を傾げている。

やっぱり、金ぴかは全てを見抜いていたようだった。
理知的な推理力や理詰めの論理構成。そういう分野はギルガメッシュの専門外かもしれない。
だけど、彼の最大の武器はその『化け物じみた全てを見抜く超眼力』だ。
過程を全てすっ飛ばして結論へと至る魔法のような能力。だから、分かっている筈なのだ。


「アンタさ、誰?」

――何が正しくて、何が歪なのかも全て。

「……つれないわね。結城奈緒ちゃん? 私とあなたが何回戦ったと思ってるのよ。
 それにラッドとだってあなた、会ってるじゃない。かがみがラッドを喰う瞬間にも立ち会っていたし……」

一瞬、面食らった表情を浮かべた〝かがみ〟が笑いながら答える。
確かにあたしはかがみとラッドには会った事がある。
ぶっちゃけ、不死身の柊かがみに関して言うなら誰よりも険悪でムカつく因縁がある自負もある。
ラッドだってあの馬鹿騒ぎを何とか生き延びて再会した時は、それなりに話もした。
だけど、


「違うよ。だって――アンタはラッドでもかがみでもないでしょ?」


〝かがみ〟はそのどちらとも違う。まったく、別の……存在だ。


「……ああ、そういう事か! 確かに、混ざっちまったからなぁ!
 いくらメインは俺だとしても、かがみからの影響も少なからずあるのは当然――」
「だから、違うって」


〝かがみ〟を見ていると一つだけ、気になる事がある。
それは、コイツが自分自身をどういう感じで認識しているのか、って事。
〝かがみ〟は気付かない、いや、気付けないのかもしれない。
でも、コイツがラッドでもかがみでもないと、あたしは胸を張って断言出来る。

ところが、この〝かがみ〟は自身を『ラッド・ルッソ』と呼んだ。
つまり、意識していないのだろう。
忘れてしまったのだろう。ラッドにとって、一番大切だったモノを。
きっと、自分が――ラッドのおっさんであるのだと思い込もうとしているのだ。


自分が自分でなくなる感覚なんて、あたしは一度も味わった事はない。
催眠術も変な洗脳もトンと縁がないのだ。
ずっとあたしはあたし、結城奈緒として今まで生きてきた。

そりゃあ周りの人間が誰一人として信じられない時期もあった。
というか、つい最近までずっとそうだったんだけど。

だけど、もし――その自分を失ってしまったとしたら?
それは人なのだろうか。不死者という死なない化物になったとしても、心は裸の人間のままだ。

少なくとも、あたしが出会った〝不死身の柊かがみ〟はそうだった。
人だからこそ夢を持つ。人だからこそ過去を捨て切れない。人だからこそ――神を目指した。


「本当に、気付いてないの?」
「だから……何をよ。私はラッドだって言ってるでしょ? あ、もしかして柊かがみの口調を使うのがおかしいって事?」
「違う。ここまで言って分からないなら……アンタは、すごく可哀想な人だよ」
「可哀想? おいおい同情してくれんのかぁ? まったく奈緒ちゃんは優しいねぇ、ヒャハハハハハハハハッ!!
 ついでにその辺で顔ボコボコにしてくたばってるタカヤ君に十字でも切りに行くかぁ!?」


笑い声は空虚。荒れ果てた廃墟に木霊する夕焼けのノイズみたいだ。
全然不愉快じゃない。ただただ、哀れに思うだけ。
アイツが意図してるのとはまるで違う意味で胸の奥が痛くなるだけ。

でも、本物の【ラッド・ルッソ】と【柊かがみ】を知らない人間にとって……これはきっと全く違う光景に見えている筈だ。

「ラッドッ!!」
「とと、馬鹿ジッとしてろ! お前の気持ちも分からなくはねぇがよ……」
「だったら放してよ! あいつは、あいつのせいでっ……!」

Dボゥイという名が出ただけで突如、舞衣が大声で喚き始めた。
スパイクが必死に止めるが、彼も〝かがみ〟に対して、大分業を煮やしているように奈緒には感じられた。

……確か尾久崎晶が敗退して、アイツの弟君が死んだ時もあれくらい取り乱してたって聞いたっけ。
元々、ヒステリーっぽい気質なのだろうか。それにしても、あの錯乱っぷりは相当なモノだと思うが。
そもそも、鴇羽って楯祐一と付き合ってるんじゃなかったのか。
いつのまにか別れていた? まぁ、あの男なら分からない話でもない。

ただ……それ以外にも、幾つか気になる事はあるのだ。
アイツの態度はまるで、『まだ蝕の祭が終わっていない』ような具合なのである。

そして、それ以上に不思議なのは――アイツ、いつまでチャイルドやエレメントが出せないんだろうか、という事。


「ま、舞衣ちゃん……」
「ゆたか……? ごめん、ごめんね……! でも、あたし……」


柊かがみの中に入った〝かがみ〟の意思は、辺りに不興と厄災を撒き散らす。
個人の認識と主観の食い違い、掛け違えた歯車がぎこちない音を立てて油の切れたロボットのように躍る。


ラッドを知らない者は、〝かがみ〟を見て彼という人間をただの気違いの殺人狂だと判断するだろう。

かがみを知らない者は、〝かがみ〟を見てもイマイチこの現状に実感が持てない筈だ。
目の前のよく喋る殺人鬼のイメージが大き過ぎて、かがみは消えてしまったのではないかと疑い出す。
そしてラッドのイメージも変わっていく。
彼が何のポリシーも流儀も哲学も持たない低俗な快楽主義者に思えてくる――リライトされる。

奈緒は思う。あたし達は人間だ。神様なんかじゃない、と。

だから、そんな全てを見通すような視点で物事を考えている訳がない。
閉じられた小さな世界の中で必死にもがいている。きっと……どんな人間だってそうだ。
あたし以外の奴にはきっとこの〝かがみ〟は本当に異様な存在に見えている筈なのだ。

だけど、


「メインだとか、サブだとか、そういう問題じゃなくてさ。
 アンタはそのどっちとも違うって言うか。身体は確かに柊かがみだけど、本当にそれだけ。
 頭の中は所詮、劣悪なコピーよ。かがみでもない。ラッドにもなれない。ぶっちゃけ、贋作以下ね」


あたしだけは【柊かがみ】も【ラッド・ルッソ】も知っている。

だからあたしは、二人を……かがみだけではなく、ついでにラッドも救うために頑張らないといけない。

別にあのおっさんを助けたいと心から願っている訳ではない。
というか、これこそ自分の大嫌いな偽善者的行為そのものだとも思う。
だけど――あたしはアイツに借りを返さないといけないのだ。

ラッドは初めて出会った時、あたしを殺さずに見逃した。
気が変わったとか、元々気まぐれな性格だった、とか。
そういう言い訳は山のように思いつくけど、いまいち釈然としない。
あの時のあたしは完全にビビッてた。
背中を向ける事だけはしなかったけど、戦ったら確実に殺されていただろう。

――もしかして、情けを掛けられたのかもしれない。

だから、この場で逆にあたしがラッドに同情し返してやるのだ。
柊かがみに喰われてしまったラッドを……死人のような眼をして……絶望に顔を染め上げて死んでいった彼へのせめてもの手向けとして。


「な、何ですって……!? コピー? 贋作? 笑わせてくれるわね。私は、私はラッドよ!」
「ハッ――あんたはラッドとかがみの名前に泥を塗る存在でしかないわ。
 それだけじゃないわ。あたしは……倒れてて詳しい場面は見てないけど、アルベルトの眼帯、アンタしてたじゃない。
 それってつまり、あのおっさんの遺志を継いだって事じゃないの。
 BF団とか神になるとか……その辺、全部忘れちゃったみたいだけどさ。ねぇ――――違う?」


〝かがみ〟がここに来て初めて、狼狽の色を覗かせた。
奈緒はあの時、彼女が柊かがみから〝かがみ〟へと変化した時の光景を脳裏に浮かべる。
戦いに敗北した奈緒は暴走し始めた時には気を失っていたが、事の顛末はゆたかやスパイクから聞いていた。

――柊かがみは眼帯が取れた瞬間、切り替わるように凶暴な人格を露にした。

おそらく、彼女の中には二つのキャラクターが存在するのだろう。
本物のラッド・ルッソがそっくりそのまま、残っている可能性もあるが、ここは考えないでおく。

そしてアレは少なくとも、ラッドではない。
奈緒もそこまでラッド・ルッソと深い交流があった訳ではないが、それでも分かるのだ。
彼は快楽に溺れたシリアルキラーなどではなかったし、己の定義に該当する相手だけを殺す――そういう人間だった。
だが、そもそも今の〝かがみ〟は非常に矛盾に満ちた存在だ。だって……


「そう、ラッドのおっさんのポリシー……『自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる』だっけ?」
「ああ、そうだっ! 俺はそういう腑抜けた人間を見てると無性に殺したく――」
「アンタ馬鹿? だって、今のアンタって『不死者』じゃん。誰よりも自分が一番死に遠い人間だよ?」


ピシリと割れる。世界が、ぐにゃりと歪む。

「あ――ははっ! そ、それが違うのよ奈緒ちゃん。確かに私は不死の酒を飲んだけど、ちゃんと死ぬの!
 この空間には制限ってものがあってね。ほら見て! この首輪が私に制限を……! だから今の私は、私は……不死なんかじゃ……!」
「あのさぁ、制限って――首輪の力じゃないんだけど」
「…………え?」

信じていた全てのものがガラガラと音を立てて壊れていくような。

「でしょ、ジン」
「……まぁ正確にはギルガメッシュの考察なんだけどね。俺達にけったいな枷を嵌めてるのは――天だよ。
 遥か大空を覆うドーム状の防護結界……これが能力制限の正体だね。首輪にはね……そんな力はないんだ。
 現に舞衣は首輪が取れてるけれど、今でも若干身体能力が抑えられているそうだ」
「う、そ…………だろ?」


殺さなければラッドではない。
だが、自分が安全で死なない不死者になった時点でラッドはその存在理由を失う。
殺しを正当化するための方便は消え〝かがみ〟には『少しだけ死に難い身体』だけが残った。


「殺して人が少なくなればなるほど、アンタは不死者に近づいていく。じゃあ人を殺せる訳がないよね。
 あたしはね、絶対に絶対に絶対に……死なないよ。ほら、殺したくなってこない?
 アンタの大好きな自分が死ぬなんて夢にも思ってない人間だもの! でもね、アンタはあたしを殺せない。
 優勝する……なんてのも無駄っぽいよ。
 あの髭面のおっさんが約束を守ってくれるって考えられるめでたい頭してんのなら止めないけど。
 で、アンタが攻撃して来たら、あたしはこう判断するもの――アンタは結界を破って不死になりたいからあたしを殺そうとしてる、って」
「殺せば殺すほど……私は……死ななくなる? でも、私は……あれ? 殺さないとラッドじゃ……」
「っていうかさ――」


それは終わりのない禅問答。千日手。スリーフォールド・レピティション。

ラッド・ルッソとは己の定めたルールに乗っ取り、欲望のまま殺人を犯す存在だ。
彼ほど死に対して真摯に向かい合った人間はおらず、彼ほど死に対して敬意を払った者も早々いない。
敬虔なる教徒ですらない彼にとって、死とは何よりも身近なモノだった。
常に死と隣り合わせで生きるため、そのためだけにラッドはひたすら殺人を犯していたのだ。

だから、殺せば殺すほど自身が死から遠ざかっていく――そう認識してしまった瞬間に何もかもが破綻を来たす。
〝かがみ〟の中のラッドを模倣していた全てが終幕を迎える。
コンピュータシステムに侵入したクラッキングプログラムがネットワークに多大な損傷を与えるように。
軋み歪み、彼女の中に決定的な矛盾を発生させる。

その揺らぎこそが〝かがみ〟が作り出していた偽りの人格に終焉をもたらすのだ。

そして――



「ねぇ、ひとつ質問なんだけど…………どうして今すぐにでも死なないの?」

奈緒のこの言葉こそが、全てを崩壊へと誘う最後のトリガー。


何かが壊れたような、そんな静寂が辺りを包み込んだ。
音抜きされた空気はまるで世界の終わりを想起させる。焼き尽くすような光が大地に降り注ぐ。

全ての人間が息を呑んで、事の成り行きを見守っていた。
ギルガメッシュもスパイクも舞衣もゆたかもジンも、まるで一切の言葉を発しようとしない。
奈緒が踏み込んだのは禁じられた領域だ。
そう、それはきっと〝かがみ〟が忘れたくて忘れたくて堪らなかった事実。


「わた、私っは……俺? お、俺が、私……? お、俺は……どうなったんだ?
 ラッドは……ラッド・ルッソは……? かがみ……俺が……不死者?」


それが終わりの始まりだ。

〝かがみ〟は再生した――不死者である――自身の掌を絶望に染まった眼で見つめる。
ガクガクと彼女の両膝が砕けたように震え始める。
額や首筋には大粒の汗を浮かべ、かがみとラッドの言葉がついに混ざり始める。


幾つもの精神が融合した彼女の身体は非常に不安定だ。
確かに、柊かがみの心は儚く脆弱な年頃の少女のソレだった。
だが、彼女が喰った男の精神はどうだったと言うのだろう。
彼は強いのか。どのような状況にあっても自分自身の流儀を貫き通せる人間なのか。


そしてもしも彼が、その『流儀』を手放したとしたら、それは彼であると言えるのだろうか――?


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