裏切り者、二人と一匹 ◆X5.tKUFx82



大六天魔王は今、デパートを起ち静かに歩いていた。
荒耶が示した方向―――即ち西へと。
その方角に争いがあるという言葉は、果たして嘘か真か。
あの女は、次に出会いし時に斬り捨てるべきか否か。
根源を目指す魔術師にとっては―――自業自得の面もあるとは言え―――迷惑極まりない思想を抱えて。


「む……」


しかし、少しばかりの時が経過した後。
信長は急にその歩みを止めた……止めざるを得なかった。
彼の行進、否、行軍を妨げる存在が現れたのだから。


「川か……面倒なものよ」

それは、二つの陸地に挟まれ目の前を静かに流れる、川であった。
軽いため息をつき、無表情のままに信長はそれを睨みつけた。
反対側への距離はそれなりにあり、川自体も見る限り浅いものはない。
これを渡ろうと思えば、素直に橋なりの手段を探す他ないだろう。
少なくとも、徒歩での横断は不可能なレベルだ。




―――ただし……普通の者に対しては、だが。


ここは通れないから迂回をしろ。
そう言われて、第六天魔王はその行軍を果たしてやめるのか?
否……そんな事、ありえる訳が無い。
覇道の邪魔をするモノがあらば、力ずくで叩き潰し、その骸の上を歩むのみ。
それが、織田信長だ。

「フンッ!!」

次の瞬間、信長の身が宙に舞った。
地を強く蹴り、その強靭な脚力で向こう岸目掛け跳躍したのだ。
普通に考えれば、常識外れもいい所だろう。
しかし先刻の戦いにおいて、既に彼は地上からビルの屋上へと瞬時に移動するという離れ業を見せている。
それに比べればこの程度の川など、そもそも障害にすらならないのだ。

ちなみに、少しばかり前に同様の手段を取った超能力者が一人いたのだが……
彼と言い信長と言い、もはや常識というものは微塵も通用しないと言うべきか。


「この程度……是非も無し」




エリアD-4。
バトルロワイアル会場のまさに中心部と言えるその地に、足を踏み入れてしばらく経った後。
信長は、前方に大きな影を見つけ、歩みを止めた。

「ほう……?」

見上げる視線のその先にあるのは、闘いに生きる者達が競い合う決闘の場。
この殺し合いにおいても例外ではなく、一つの死闘が繰り広げられた大型施設。
即ち、円形闘技場。

さて、信長がどうしてそれを前にして足を止めたのかだが。
珍しい建造物の形に、興味を示したからか?
否……そんな表面上の事など、信長にはどうでも良かった。
彼が興味を示したのは、寧ろその内部。
そこから感じられた、懐かしき『香り』に他ならない。

「血の臭い……であるか」

血。
戦場において幾度となく嗅いできた、鼻孔を擽るその香り。
それが今、目の前より微かに漂ってきている。
もっともそれは、ここが殺し合いの会場である以上珍しい事ではない。
だが……不思議な事に、信長はそれに興味を示した。
彼自身ですらも、その理由は分からない。
ただ、直感―――本能とでも言うべきだろうか―――が告げているのだ。

この中に、信長にとって意味を持つものがあると。
この香りの持ち主は、信長が良く知る者であると。


「…………」


入口を越え、廊下を越え、控室を越え。
信長は一直線に、闘技場のメインステージへと進み入る。
そこで彼が目にした光景は、本来のそれとはかけ離れた姿であった。
地面は所々が深く抉られ、焼け焦げた跡も点々と見られる。
周囲の壁面は吹き飛び、瓦礫を広く散らしている。
そして何より、地と壁の両方に飛び散っている血飛沫。
これらの要素からして、何者かによる大規模な戦闘がここであった事は想像に難しくない。

では、一体誰が闘ったのかだが……
信長には、それが分かっていた。
先程より感じていた、奇妙な感覚と……地に散らばるソレを目にしたのだから。


―――断面が焼け焦げ、腐臭を漂わせる無数の肉片。


―――その中に、数本混じっていた……銀色の長髪。


―――木端微塵と言う言葉が相応しい、かつて『人間だったモノ』の成れの果て。

「ここにおったか……光秀ェェッ……!!」


肉片―――地雷によって爆散した明智光秀の死体を、魔王は容赦なく踏み潰す。
グチャリと、生々しい肉の擂り潰される音が。
バキリと、骨の砕ける音が。
静かな闘技場のステージに、グロテスクな音が響き渡る。

信長からすれば、これは幸か不幸か。
この手で始末できればと、そう思っていた愚者に、こんな形で出会えようとは。
魔王は墳怒とも歓喜ともつかぬ表情で、肉片を踏み荒らす。
まるで、光秀へと抱いていた鬱憤を、存分にぶつけるかのように。

光秀からすれば、これは幸か不幸か。
会いたいと……殺したいと心より願っていた君主と、この様な形で再会する事になろうとは。
その君主に、文字通り骨の髄まで徹底的なまでに嬲られようとは。


「ふん……荒耶宗蓮
 貴様の言葉……強ち間違いでも無かったわけか」

しばらくして、信長は荒耶の言葉が持つ意味を思い返す。
成る程、この方角に争いの火種があるという言葉もこれなら納得が出来る。
愚者には違いないが、それでも光秀の実力に関してだけは、信長は認めていた。
仮にも一時は、自分の右腕を任せていた男だ。
それをただ殺すだけでなく、死体さえ完膚無きまでに破壊した者がいる。
ただ光秀を討つだけなら、ここまでする必要性ははっきり言えば無い。
ならば下手人は、光秀同様の狂人か。
あるいは、ただの一撃で人をここまで破壊し尽くせるだけの力を秘めた、殺戮者か。
どちらにせよ……争いに対して好意的な者である可能性は高い。


―――実際は、光秀自身が仕掛けた地雷で自爆したという、信長の予想を遥か斜め上にいく事実があるのだが。

「さて……」

これより、どう動くべきか。
単純に西に向かうか、それとも方角を変え参加者を探すべきか。
行動の指針となるモノを見つけられれば幸いだが、その様なものはここには……


「……む?」


そう、考えた時だった。
信長の耳に、聞き慣れたある音が聞こえてくる。
それも……徐々に、この場へと近づいてきつつある。


―――ヒヒィィィィンッ!!!

甲高い嘶き。



―――パカラッ、パカラッ。

一定のリズムで鳴り響く鉄の音。


「ほう……!」

信長はその正体を悟ると、闘技場をすぐに出る。
そして目に映ったのは、遠方より迫る一つの影。
間違いあるまい。
それは、一度は信長がその身を預けた存在。
戦場を駆ける為、求めたモノ。

「これは、思わぬ再開になったものよ……のう?」


伊達軍の馬は……再び、魔王と遭遇を果たした。






ここで、少しばかり時間は遡る。
エリアF-3の船着き場にて、彼は凄まじい窮地に立たされていた。
一言でいえば、生命の危機だ。

「ヒヒィィィィィッ!!??」

天江衣白井黒子浅上藤乃
この三人がギャンブル船へと乗り込んだ時、彼―――伊達軍の馬は一匹、船着き場に繋ぎ止められていた。
船の中という狭い空間では、その巨体だと足手纏いに他ならぬ故に。
デイパックの中に入れるという選択肢を取られなかったのは、やはりそれも巨体だから。
他の支給品を取りだすのに、はっきり言って邪魔になりかねないのだ。

さて、そんな彼がどうして今、生命の危機に曝されているのかだが。
理由は、真横にあるギャンブル船を見ればすぐに分かる……燃えている。
エスポワールは爆発を起こしながら、黒煙を上げて燃え盛っているのだ。

そして今もなお、その被害は拡大しつつある。
桃子の指示を受け、サザーランドを駆る澪の砲撃によって。


――――――どうして、どうしてこうなったぁっ!?


爆破の衝撃と熱風、轟音。
全てが至近距離で襲い掛かり、馬の心に絶望を齎してくる。
このままでは、自分の身が危ない。
一刻も早く逃げねば、死んでしまう……しかし。
彼は、不運にもそこから逃げる事が出来なかった。
真横に聳え立つ頑丈そうな電柱に結びつけられた、手綱のせいで。

そう、繰り返して言うが伊達軍の馬は一匹、船着き場に繋ぎ止められている。
逃げたくても、逃げる事が出来なかったのだ。


「ヒヒィッ!!」


だが、だからと言って諦めきれるか。
死ぬのは嫌だ……絶対に、死んでたまるものか。
馬は手綱を外すべく、決死の行動に出る。

まずはその場より全力でダッシュ、手綱を強引に引き千切ろうとする。
しかし、頑丈に結ばれたそれは一向に外れる様子が無い。
逆に馬の方が頭を後方に強く引っ張られる形となってしまい、たまらず悲鳴を上げる。
この方法は失敗だ。

ならばと、馬は数歩後ろに下がった後。
力強く、その後脚で電柱に蹴りをぶち込みにいった。
独特の反響音と共に、電柱が左右へ大きく揺れる。
蹴りが叩きこまれた箇所は大きく凹み、蹄鉄の跡が刻まれている。

いける。
後数発、渾身の力を以て叩きこめばこの忌々しい柱を破壊できる。
ようやく見えた希望に心を躍らせ、馬は二発目の蹴りを打とうとする。

しかし……その直後。



―――ドガッシャァァァァァッ!!!


「ヒィッ!?」

爆音と共に、巨大な熱の塊が柱の真横へと落下した。
砲撃で吹き飛ばされた、エスポワールの残骸だ。
強烈な熱波が肌を焼き、馬に恐怖を齎す。
後少しずれていたら、己の身が危なかったが……冗談ではない。
このままでは、いずれ自分の脳天にもこれが落ちてくるかもしれない。
潰されて、死ぬかもしれない。


――――――ふ、ふざけんなぁぁぁぁぁぁっ!!!


馬は必死になり、柱を蹴りつけた。
死にたくない、死ぬのは嫌だ。
絶対に生き延びてやる。
心の底から、現状に対して怨嗟の声を上げながら。


すると、そんな願いが通じたのだろうか……奇跡は起きた。
すぐ真横の残骸から、バチリと散った火花。
それが何と、手綱に見事飛んだのだ。
手綱に黒点が生まれ、そこから煙が生じる。
火が点いた……馬はそれを見て、目を大きく見開く。
今こそ、脱出する最大の好機。


「ヒヒィィィィンッ!!!」


全力で、全ての脚を踏み出す。
すると予想通りと言うべきか、手綱は音を立てて引き千切れた。
焼きが入り脆くなった事で、馬の力が通用したのだ。

さあ、これで晴れて自由の身。
ならばやるべき事は、ただ一つ……この場から、全速力で去るのみだ。
馬は迷う事無く、北へと真っ直ぐに逃げた。
未だ船に残る、衣達の事も気にせずに。
動物としての生存本能が、主の命に勝ったとでも言うべきだろうか。


しかし……馬は、この後すぐに己が行動を後悔するハメに陥ろうとは、夢にも思わなかっただろう。



「ッ!?」

北上を続け、円形闘技場の付近にまでたどり着いた時。
その身を、強烈な悪寒が駆け巡った。
人よりも敏感な動物特有の危機察知能力、とでも言うべきか。
何かが本能に訴えているのだ……この付近に、とてつもないものがいると。


―――ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!!


思わず、脚を止めてしまう。
一体、何がいるのか……恐怖を抱きながら、馬は周囲を見渡す。

すると……その、目の前に。


「ほう……!」


一度は、その背に乗せた男がいた。
この会場に来て初めて出会った、恐るべき武将。
邪悪が人の形を成したかの様な、畏怖すべき魔王。
とてつもないものの正体は、こいつ……!

「これは、思わぬ再開になったものよ……のう?」


大六天魔王、織田信長……!!





「裏切り者の死に場所で、裏切り者に出会おうとは何たる皮肉か……」

信長は、目の前の軍馬に微笑を浮かべ語りかけた。
自らを裏切った光秀が死に場所。
そこで、同じく自らを裏切ったこの軍馬に出会えようとは、何たる奇縁か。
迷う事無く、魔王は愛剣を抜きその切っ先を突きつける。
この身に弓を引いた者は、例え何者であろうと尽く滅するのみ。
その相手が、馬であろうともだ。

「……ッ!!」

対する伊達軍の馬は、身が竦み動けない。
いや、例えそうでなくとも動こうとはするまい。
下手な素振りを見せれば、迷う事無く信長が斬りかかってくるのは分かっているからだ。
生き延びられたと思った矢先の、この事実。
これから、一体どうすればいい?
決まっている……この場で取れるべき方法など、一つしかない。

「……それが貴様の答えか」

馬は、頭を垂れ平伏した。
絶対的な猛者である信長に、屈服したのだ。
生き延びる為には、これが最善の方法に他ならない。
それに……魔王と言えど、仮にも一度は背に乗せ共に戦った男だ。
本当に僅かながらとはいえ……仲間意識も、一応あるにはある。


さて、これに対する信長の答えは……

「フッ……よかろう、許す。
 ならば今一度、機をくれてやろうではないか?」

肯定。
信長は剣を納め、伊達軍の馬を受け入れた。
この戦場において、馬の有効性は重々承知している。
彼とて、それをここで切り捨てる程愚かではないのだ。

「だが……二度目は無い。
 次にまた、余を裏切る事あらば……その時は、その身を掻っ捌き血肉を喰ろうてくれようぞ……!!」

もっとも、再び背く素振りを見せたならば、今度こそ容赦はしない。
弁解の余地なし、問答無用で切り捨てるのみだ。
伊達軍の馬としても、馬刺しとなるのは勘弁願いたい所である。


信長が背に跨ったのを確認し、馬は立ち上がる。
第六天魔王と、伊達軍が誇る屈指の軍馬。
今再び、彼等は共闘の道を選んだ。


凶悪タッグ、ここに復活。


【D-4 円形闘技場出入り口/二日目/黎明】

【織田信長@戦国BASARA】
[状態]:ダメージ(中)治療済み
[服装]:ギルガメッシュの鎧
[装備]:カリバーン@Fate/stay night
[道具]:なし
[思考]
基本:皆殺し。
1:伊達軍の馬を駆り、参加者を殺し尽くす。
2:荒耶は可能な限り利用しつくしてから殺す。
3:首輪を外す。
4:もっと強い武器を集める。その為に他の者達の首をかっきり、ペリカを入手する事も考慮。
5:余程の事が無ければ臣下を作る気は無い。


[備考]
※光秀が本能寺で謀反を起こしたor起こそうとしていることを知っている時期からの参戦。
※ルルーシュやスザク、C.C.の容姿と能力をマリアンヌから聞きました。どこまで聞いたかは不明です。
※視聴覚室の遮光カーテンをマント代わりにしました。
※トランザムバーストの影響を受けていません。
※思考エレベータの封印が解除されましたが、GN粒子が近場に満ちたためです。粒子が拡散しきれば再び封印されます。
※瘴気によって首輪への爆破信号を完全に無効化しました。
※首輪の魔術的機構は《幻想殺し》によって破壊されました。
※具体的にどこへ向かうかは、次の書き手にお任せします。
※荒耶との間に、強力な武具があれば譲り受けるという約束を結びました。
※荒耶からの情報に不備があった場合、問答無用で殺すつもりでいます。
※伊達軍の馬の裏切りを許しました。ただし、もう一度裏切った場合は問答無用で切り捨てるつもりでいます。

【伊達軍の馬@戦国BASARA】
[状態]:信長に対する恐怖
[服装]:なし
[装備]:なし
[道具]:   
[思考]
基本:ヒヒーン
1:信長に従う
[備考]
※バイクのハンドルとマフラーっぽい装飾類を失くしました。見た目では普通の馬と大差ありません。しかし、色々な意味で「馬イク」です。
※信長に屈服しました。裏切るつもりは特にありません。
※女性によって急所に大ダメージを負った事で女性恐怖症になりました。







「……鬼に金棒ならぬ、信長に馬か」

同時刻。
信長と軍馬のやり取りを、スクリーン越しに眺めている男がいた。
ディートハルト・リート
彼は第四放送を終えた後……自室にて、信長の行動にしばらく着目していた。

荒耶宗蓮と接触を果たし、その名まで明かされた魔王の動き。
それに少々の興味が沸いたのだ。
もっとも、大した成果は得られず……
信長は、荒耶の事など然程気にしないで、今まで通り殺戮を求め動き回っている様にしか見えなかった。

(しかし……奴の事を差し引いても、この男の動きは気にかかる。
この殺し合いを左右する、大きな要因になりうるからな)

それでもなお、ディートハルトは信長の動きが気になっていた。
もはや参加者の数は三分の一になり、そして死者の数も先程の第四放送の段階において大きく落ち込んだ。
そして……今や信長は、生き残った全参加者の中でも最強と言えるレベルにある。
彼に抵抗できる者が、現状どれだけ残っているだろうか?

(信長の行く先々で争いが起こり、血飛沫が迸り、多くの死傷者が出てきた。
言うなれば……大規模な『災害』か)

そんな彼が、馬と言う移動手段を再び手に入れてしまった。
全く、笑いごとではない……まだ、会場にいる間だけならば良い。
しかし、信長が優勝を果たしこちらに牙を剥いてきたらどうするつもりだ?
ナイトメアフレームやモビルスーツを持ちだして、鎮圧を図るか?
いや……この男には、それが通用するかですらも正直言って怪しいところがある。
そうならない為に用意した首輪の爆破機構ですら、この男は無力化しているのだ。
不可能をねじ伏せ、可能にしてしまう……そんな圧力が、第六天魔王には不思議と感じられてならない。

(しかし……首輪か。
一体、如何なる方法で無力化をしたのか……)

さて、ディートハルトには一つ気にかかる事があった。
信長は、どうやって首輪の爆破機構を無力化させたのだろうか?
まさかこの男が、機械技術に長けている筈も無い。
そもそも、まずは魔術的機構をどうにかせねば爆破機構を無力化させるなど不可能な筈だ。

(……やはり、上条当麻の幻想殺しか)

しかし、それについてはすぐに答えが出せた。
信長の交戦記録を覗いてみたところ、彼は上条当麻と二回程やり合っている。
恐らくはその時に、偶然にも首輪の魔術的機構を破壊されてしまったのだ。
その後、何かしらのアクシデントが起きた事によって、爆破機構が働くなったと推察出来るが……

ここで、いよいよディートハルトは頭を悩ませた。
この疑問自体は、バトルロワイアルの開始時からずっとあった。
しかし心のどこかで、魔術の様なオカルトとは無縁だからと、無意識に遠ざけていたか。
もしくは、すぐに死亡するかとタカを括っていたか……だが。
殺し合いも佳境を迎え始めている今となっては、もはや言わざるをえまい。


(どうして……どうして、上条当麻をゲームに参加させたのだ?)


幻想殺しを持つ上条当麻を、どうしてこのバトルロワイアルに参加させたのだと。

彼と他の参加者との間で、争いを起こさせる為か?
確かに、それは有りうる……事実として、スザク達を初めとする参加者達に彼の思想は否定された。
そういう起爆剤としての意味では、間違いなく上条当麻は最適の人材だったのだろう。

だが、幻想殺しの存在はそれを差し引いても危険ではないか?
実際問題、信長という最悪の殺戮者を制御不能とされたのだ。
そして、彼同様に首輪の機能を無力化される者が現れれば……この殺し合いは、打破されるだろう。
はっきり言えば、ディートハルトはそれ自体は別に構わない。
殺し合いが止められるなら止められるで、然したる問題とは捉えていない。

問題は、どうして主催者達が自らの首を絞める様な真似をしたのかという事だ。


(いざとなれば、上条当麻の首輪をすぐにでも爆破させるつもりだったのか……いや。
何かが腑に落ちない……本当に、幻想殺し『だけ』なのか?)

ディートハルトは、すぐに手元のパソコンを操作する。
首輪の機能を無力化させる鍵は、何も幻想殺しだけではない。
両儀式が持つ直死の魔眼の様に、その可能性を秘めた力だってある。

もし、己の予感が正しければ。
もし、主催者の狙いがそれだったとしたならば。
恐らくは、この中のどこかに『それ』はある。


(……!! 間違いない、これだ!)

ディートハルトは、ディスプレイを見て目を見開いた。
それは、参加者全員に支給された支給品のリスト。
そこにあったのだ……首輪の魔術的機構を、いとも容易く破壊できる道具が。

(ルールブレイカー。
あらゆる魔術を無効化する、キャスターの宝具……持ち主は両儀式か)

ディートハルトの中で、ついに予想が確信に変わった。
幻想殺しや直死の魔眼は、その持ち主が死ねば効力を失う。
魔術的機構を破壊できるであろうその術も、意味をなさなくなるのだ。
つまり、殺し合いが始まってから早期に彼等が死亡していたならば、首輪の解除は出来なくなっていただろう。
だが……支給品は違う。
ゲイボルグを初めとする一部の特例を除けば、誰にだって扱える代物だ。
例え、上条当麻や両儀式が死亡したとしても……ルールブレイカーは、誰にでも扱える。
誰が手にしても、首輪を外す鍵となりうるのだ。
こんなものを用意するなんて……考えられる理由は、一つだけしかない。

(……主催は、殺し合いの中で参加者が首輪を外す事を望んでいる……いや。
首輪を解除されようがされまいが、関係ない計画を組んでいる……
こんな単純な事に、どうしてもっと早く気がつかなかった……!!)


口元を手で押さえ、眉間に皺を寄せる。
主催打破を狙う参加者が首輪を解除したとしても、それが叶わず優勝者を除く全員が死亡したとしても。
この殺し合いを企んだ首魁にとって、どちらでも良かったのだ。
言ってみれば、参加者が足掻く様は余興。
それを見て悦に浸り、楽しもうという考えだ。

(言峰や忍野達は、この事をどこまで知っている?
荒耶はそれを知っていたからこそ、裏切る様な行動をとっているのか?
そうだ、インデックス……あの娘は?)

そうなると、同じく主催の一員として動く彼等の動向も怪しく見えてくる。
脳裏に次々と、疑問がわき上がって来る。


―――こちらを裏切り動く荒耶は別にして、言峰や忍野メメはこの事を知っているのか?


―――それとも……主催の側近として動くインデックスですらも含め、全員が掌で踊らされているのか?



――――――そこまでする、主催の目的とは一体何だ?



(……何か、ヒントがある筈だ。
奴等の目的を……謎を知る鍵が……!)

ディートハルトは、再びパソコンを操作。
殺し合いの始まり―――広場の演説より、映像記録及び盗聴記録をスタートさせる。
ほんの僅かでもいい。
バトルロワイアルの真の目的……それを知る鍵が転がっていないかを、確かめる為に。


(ゼロ……貴方ならば、この事態をどう考えますか?
それとも……貴方の事だから、既に答えを導き出しているのかもしれませんね)



【?-? ???/二日目/黎明】

【ディートハルト・リート@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:健康
[服装]:普段着(セーターにジャケット)
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:主催側の目的を探る。
1:はじめから全ての記録を洗い直す。
2:生きてこのゲームを終了させる。
3:言峰と妹達への密かな恐れ
[備考]
※参加者の情報をかなり詳しく知りました。
※主催側は神殺しの力を欲していると仮定を立てましたが、彼自身も懐疑的です。
※主催側は参加者が首輪を外そうが外せまいが問題ない計画を立てているのではと、判断しています。


時系列順で読む


投下順で読む


275:拡散スルハ死ノ恐怖 織田信長 289:絆キズナ語ガタリ 半端者・阿良々木暦
272:第四回定時放送 ~二四時間後~ ディートハルト・リート 290:許せないのどっち(前編)
269:衣 野性の闘牌 伊達軍の馬 289:絆キズナ語ガタリ 半端者・阿良々木暦


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最終更新:2010年10月17日 01:32