Resolusion ◆L5mMuLNUiM
秋葉流は天才だ。
小学生で難関な灘高校の入試を苦もなく解いてみせ、中学生では哲学者デカルトを構造主義で批判してみせた。
その才能は法力僧としても如何なく発揮されて、ついには4人しかいない獣の槍の伝承者候補の一人に名を連ねた。
しかしそんな優秀な流にしてはこの殺し合いに参加してからの行動には不可解な点が見受けられる。
まず一つ目は一般人であるナンコと一松を民家で待機させた事。
誰が殺し合いに乗っているか分からない状況で迂闊に連れて回るのは危険だから何処かに隠れるという意見は間違っていない。
だからと言って何の備えもない普通の民家に身を潜めるのは危険だ。
一応あばら屋ではなく扉も窓もきちんとある家だから施錠すれば安全、と言えるのはある程度治安が保たれている場合に限られる。
実際このような殺し合いの場で施錠などあまり意味がない。
何かその辺りに落ちている石で叩きつけるだけで、防犯仕様でない普通の民家の扉や窓など簡単に破られてしまう。
しかも現在の時刻は深夜であり、不用心に明かりを付けてしまえばむざむざと居場所を教えてしまうだけだ。
たとえカーテンで光を隠そうとしても完全に隠すなど無理だ。
さらに二人は流の忠告を忘れて明かりを全開に付けている始末だ。
二人と過ごした時間は僅かとはいえこのような事態を防ぐためにせめて電源を落とすぐらいの対策はしてもおかしくない。
これでは逆に二人を危険に晒している事に変わりない。
二つ目は二人と情報を共有しなかった事。
このような怪しげな殺し合いに巻き込まれた以上、お互い情報を提示して共有するべきだ。
もしかしたらお互いの支給品の中に本人には価値がなくても相手にとっては価値のある物が入っているかもしれない。
またお互いの知り合いを教え合えば実際に会えた時にスムーズな対応が取れる。
だが流れは自分から一方的に若干の情報を提示するだけで二人の元から立ち去っている。
ただこの行動で流は二人からの信頼をある程度得る事に成功している。
逆に言えばこれ以上情報を提示し合うとその信頼を損なう可能性があったとも言える。
そして最後に流がいつどこで黒炎の存在を知ったかという事。
流はナンコと一松に黒炎を本来俺達の敵と説明していた。
つまり光覇明宗の法力僧として本来倒すべき敵である白面の者の眷族だと認識していたと言える。
だが初めて黒炎が白面の勢力として出てきたのは東西の妖怪が新たな獣の槍を作ろうとして潮に阻止された時だ。
だから流が黒炎の存在を知る事が出来たのはそれ以降という事になる。
そして流はその時期既に白面の者の誘いを受けて白面の側に付いている。
黒炎の事を知ったのはその際に同士討ちを避けるために情報を提示されたと考えられる。
だから本来なら敵であるはずの斗和子と対面した際に出る言葉が次のようになっても不思議ではない。
「斗和子、どこまで聞いているんだ?」
流は自分の目的のために潮やとらの側ではなく白面の側を選択していた。
それは強い覚悟を以て選び取った結果のはずだった。
だから流はこの状況でも強い覚悟を持って目的のために何とかすると決めたのだ。
▼ ▼ ▼
「嫌な予感という物は当たるものだな」
黒のパンツァージャケットと赤いスカートが印象的な制服を身にまとった西住まほは帽子に手を掛けて思わず呟いていた。
彼方の視線の先に見えるのは一目で荒廃したと分かるほど校舎――巡ヶ丘学院高等学校。
実際に嫌な予感はあった。
しばらく前から周囲の建物が荒廃したものへと変貌していて、目的地も同じようになっているのではないかと危惧していた。
しかし地図に示されているぐらいだから大丈夫ではと希望を抱いていたが、その希望は見事に打ち砕かれてしまった。
ふと後ろを振り返ると、黒尽くめの女性に肩を貸しながらプラチナブロンドの少女も複雑そうな表情を浮かべていた。
濃い水色の軍服を身にまとったプラチナブロンドの少女の名はエイラ・イルマタル・ユーティライネン。
まほよりも年下の16歳でありながら軍人であり、しかもネウロイという怪物と戦うウィッチなる者らしい。
普通なら俄かに信じられない話だが、最初の黒い怪物とエイラが空から舞い降りた事から信じざるを得なかった。
エイラの肩を借りている黒尽くめの憂い気な女性の名は斗和子。
先程の破壊をもたらした者に襲われたが支給品の中にあった爆弾のようなもので九死に一生を得たらしい。
さすがに心身共に疲労したようでそれ以上の事はまだ聞けていない。
エイラと斗和子との出会いは数時間ほど前に遡る。
深夜の市街地に放り出されたまほは幾分動揺したがすぐさま冷静さを取り戻して状況を把握しようとした。
その辺りさすが戦車道全国高校生大会9連覇の偉業を達成した黒森峰女学園で見事隊長の任を果たしているだけはある。
まずデイパックの中身を確認して自身の戦力を把握、次いで
参加者名簿に目を通して自分の他に二つ見慣れた名前を見つけた。
一人目は西住みほ。
まほの実の妹であり、殺し合いなど全く似つかわしくない心優しい少女だ。
今年の全国大会で素人集団同然だった大洗女子学園を優勝に導いた実力は確かなものだが、ここでそれが役に立つか分からない。
おそらくこの異常事態に怯えている可能性の方が高く、姉として早急に合流したいところだった。
もう一人は逸見エリカ。
黒森峰女学園において立派に副隊長の任を果たしている少女だ。
元々はみほがその任に就いていたが、とある事情でみほが黒森峰を去ってからはエリカがその任に就いていた。
副隊長としてまほを支えるべく一生懸命に戦車道に励んでいたが、その責任からか若干気負う面もあった。
その気負いがこのような異常事態下で悪い方向に出ていないか心配だった。
一通り状況把握が済んだところで次に誰か他の人と接触して情報収集しながら運が良ければ二人と合流をしたい。
そのような方針で市街地を探索し始めてしばらく経った頃、突然破壊音が断続的に響いてきた。
聞き慣れた戦車の発砲音に比べればまだ小さいが、それでも普通の市街地で聞く事はない音にまほの身に一気に緊張が走った。
そして慎重に音の方に近づいてみれば、そこに広がっていたのはまるで戦車で蹂躙したかのような惨状だった。
さらにその破壊痕の終着点の川辺には斗和子が疲労困憊な状態で倒れ伏していた。
エイラがプロペラの付いた金属の筒を足に嵌めて空から舞い降りてきたのは、ちょうどその時だった。
お互い初対面でいろいろ聞きたい事もあったが、まずは人助けが優先という事でそれは後回しになった。
だが結果的にその行動がお互い殺し合いに否定的だという証明になったのは幸いだった。
とはいえ、このような場所にこのまま留まってはいられない。
先程の破壊音を聞きつけて自分達のような殺し合いに否定的な者だけでなく積極的な者が集まる可能性もある。
そのような者が集まればエイラは未知数だが碌に戦えないまほと斗和子がいるこちらが明らかに不利だ。
なにはともあれ今後のためにもまずは斗和子を一刻も早く静かに休ませられる場所に移動させた方が良かった。
そこでここは空を飛べる自分の出番とエイラが意気込んだが、残念ながらそれは叶わなかった。
エイラが空を飛ぶために使っていた金属の筒、正式名称ストライカーユニット。
これはその中でも飛行脚(航空用ストライカーユニット)と言って魔力で発現した飛行魔法で飛行する航空タイプだ。
魔力で動く魔導エンジンを搭載していて、魔女の必需品である箒の進化系らしい。
そのストライカーユニットが動かなくなったのだ。
正確にはストライカーユニットを装着したエイラが斗和子を抱えて飛び立って数メートル進んだ瞬間エンジンが突然停止した。
そのせいで二人は地面にスライディングしたが、幸い飛び立って間もなかったので特に怪我はなかった。
なぜいきなり動かなくなったのか理由は定かではないが、おそらくこの殺し合いの主催者の仕業だろう。
単純に空を飛べるという事はそれだけで大きなアドバンテージだ。
となればストライカーユニットに何らかの仕掛けを施すのは当然と言える。
そうでなければ人の手が届かない上空から一方的な虐殺が可能になってしまう。
ただ参加者を殺すのではなく参加者に殺し合いをさせたいのならそのような展開は望まれていないと考えられる。
問題はその制限がどのような内容かという事だが、こればかりは分解して調べるか何度も検証するしかない。
とはいえさすがにここで悠長に調査している時間はないので、結局二人で斗和子を両脇から抱えて移動するしかなかった。
いくら男性よりも女性が軽いと言っても普通ならそのような体勢での移動は10代の女子には荷が重い。
だがまほは戦車道で鍛えていて、エイラは魔力によって身体を強化する事で、それを可能にしていた。
とりあえず地図を照合して一番近くて休めそうな場所として巡ヶ丘学院高等学校を目的地に定めて市街地を進んで来て、今に至る。
(さすがにここからの移動にはやはりエイラに支給されていたものを使うしかないか)
先立って3人は何か役に立つ物はないかとお互いの支給品を提示し合っていた。
その中でまほの気を最も引いた物がエイラに支給されていたフィンランド製の自走砲BT-42だった。
まほにとっては練習試合や全国大会で対峙した継続高校の戦車としての印象が強かった。
元々まほの戦車での役割は車長だが幼い頃から西住流の後継者として精進してきたので、一応動かす事は出来た。
だが本来戦車の乗り心地は車などに比べて快適とは言えず、それで斗和子の身体に障るのではと心配して使えずにいた。
また戦力として運用するには砲手が必要であり、砲弾が発車できない以上戦車はただの移動手段でしかない。
その点まほに支給されていたドイツ製の機関銃MG42Sは戦力として申し分なかった。
ただ重量の問題でまともに使えるのが魔力で身体強化したエイラだけというのが難点だった。
エイラ曰く、501JFWの仲間であるバルクホルン大尉がよく使っていたらしい。
同じ姉同士、機会があれば色々語り合ってみたいと思った。
(BT-42は3人乗りだから全員乗る事は出来る。とりあえずまずは斗和子さんに話してみてからだな)
この周囲は荒廃した市街地。
本来戦車が最も効果的に力を発揮する場所だ。
だからこそBT-42が支給されていたのは僥倖だが、斗和子の様子から今一歩踏み込めないでいた。
そもそもあまり会話できていないせいで斗和子がどのような人物かいまいち掴めない。
それが分かればもう少し上手く交流できて展望が開けそうな気がするが、残念ながらきっかけが上手く作れなかった。
「なあ、ちょっといいか」
そして幸か不幸かそんな時、斗和子の事を知る一人の法力僧に出会ったのだった
▼ ▼ ▼
「やっぱりMG42Sはデイパックに入れておくか」
エイラは自分に渡された機関銃の処遇に悩みながら結局デイパックに戻していた。
いくら使えると言ってもそれは身体強化している間だから常にそういうわけにはいかない。
せっかく譲ってくれたのに少し申し訳なさを感じつつ元の持ち主であるまほの方を見ると、流と何やら話していた。
おそらく今後の行動の確認をしているのだろう。
本来なら中尉という立場にあるエイラもその話に加わるべきである。
だが一口に中尉と言ってもエイラは士官教育を受けたばかりだったので戦略的な話には未だ不慣れであった。
「エイラさん」
「と、斗和子さん!?」
「ふふっ、そんなに驚かなくてもいいじゃない」
「何の用ですか?」
「しばらく離れるからその前に少しお話がしたいと思ったの」
あれから話し合った結果、まほと斗和子は戦車で流が身を隠すように言ったナンコと一松を迎えて北の501JFWの基地へ。
エイラは流と共に他の参加者と接触して12時頃には合流する予定になっていた。
最初は他に候補として流と関係の深い光覇明宗総本山とまはに馴染みがある学園艦も挙がっていた。
だが総本山は中央にあって人の行き来が頻繁で危険人物と遭遇する可能性が高い事から除外。
また学園艦は脱出手段になり得る事から今の段階で集まって何かの拍子に戦闘に巻き込まれて壊れる事を避けたいので却下。
その結果501JFW基地を集合場所にしようと決めた。
人数の振り分けについてはBT-42の乗員人数が原因だった。
BT-42の乗員数は3人なので無理したところで4人が限界。
という訳でナンコと一松を迎えに行く上限は2人となり、必然的に操縦経験のあるまほとまだ疲労が残る斗和子となった。
だがあの戦車が役に立ってくれてエイラにとっては何よりだった。
あの戦車の他にエイラに支給された物は世界一臭い食べ物として名高いシュールストレミング。
スオムス出身でサルミアッキは平気なエイラでもさすがにこれには顔を顰めていた。
これで戦車まで宝の持ち腐れになってしまっていたら落ち込んでいたところだ。
「斗和子さん、あの化け物の事は……」
「大丈夫、化け物の事なら気にしていないわ」
「で、でも、私がもっと考えて行動していれば……」
先程の話し合いでは様々な事が判明した。
まず参加者が別々の世界から連れて来られた可能性。
俄かには信じ難い話だが、ネウロイや妖怪や戦車道などそれぞれの常識が食い違っている事にはそれで説明が付く。
その中で人間同士の世界大戦がエイラ以外の世界で起こった事を知って驚かずにはいられなかった。
もしもネウロイという共通の敵がいなければが自分の世界でもありえたのかもしれないと思うとゾッとした。
さらに注意するべき参加者の情報。
獣の槍と蒼月潮。
持ち主を凶暴化させて最後には獣に変えてしまう魔性の槍と、その現在の持ち主である潮。
本来なら潮は流と斗和子の知り合いで優しい少年だが、槍を持つと人が変わったようになってしまう。
さらに槍の持ち主は槍を手放しても一時的に正気に戻っても根本的な解決にはならない。
だからせめて決着は自らの手で付けたいから可能なら生け捕りにしてほしいと流からは頼まれた。
とらと紅煉。
どちらも人を喰らう妖怪で、もしも出会えば命はないレベルの危険な存在。
ネウロイかそれ以上と言われれば、そのヤバさは嫌でも伝わってくる。
灰原哀。
最初の場で殺し合いに異を唱えた少女だが、実は主催側の可能性がある。
その理由はあの年の子供にしては冷静すぎる対応を取っていた事と、あの一連の惨状が演出の可能性が高いから。
以上が流の話だが、すぐには信じられない話だ。
だがナンコという他の参加者も演出の可能性を示唆していたので、あながち間違いとは言い切れないでいた。
そしてエイラに衝撃を与えたのはアインズを主と仰ぐ集団。
この話し合いの中でようやく斗和子を襲った参加者の容姿が黄金の瞳に白い角と黒い翼を持った化け物だったと判明した。
実はエイラはその化け物と斗和子と会う前にニアミスしていた。
しかもエイラが化け物とニアミスしたのは偶然ではなかった。
最初市街地に飛ばされたエイラはビルの中から声が聞こえたので声の主を探してみれば正体は異様な形相で駆け回る化け物。
さすがに一目でヤバいと感じて、コンタクトを躊躇ってしまい見つかる事を避けてしまった。
そのためニアミスして化け物が捨てたストライカーユニットを手に入れて、破壊音を頼りに向かって2人と合流していた。
また化け物の主の名がアインズという情報も手に入れていたが、全ては結果論でしかない。
自分があの時もっと上手く対処できていれば斗和子が危険な目に遭う事はなかったと激しく後悔した。
ここまでの移動の最中に斗和子の胸を横目で見て品定めしていた事もあって申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
さらに斗和子の複雑そうな家庭環境もエイラの後ろめたさに拍車を掛けていた。
最初に流は斗和子を見た時二人だけで話をさせてくれと言った。
どういう関係か知らないが大事な人みたいだったので、しばらく二人きりで話をさせてから4人で話し合った。
だから最初二人は恋人のような間柄かと思っていたが、話し合いの中で斗和子は子持ちだという事が判明した。
しかもその子である引狭霧雄と斗和子の関係は今あまり良くないらしい。
どうやら霧雄は実の子ではなく養子のような立場で詳しくは聞けなかったが色々あったらしい。
そんな事もあって想像以上に大変な目に遭っている斗和子にエイラは負い目を感じざるを得なかった。
「ところでサーニャちゃんだったかしら。あなたが一番親しい仲間は?」
「え?」
確かにエイラとまほの知り合いの情報も先程の話し合いの中で出ていた。
その際頼もしい仲間がいて心強いと言われたが、エイラは斗和子が何を言いたいのかよく分からなかった。
だがなぜかこの先を聞いてはいけないような気がする。
自分の中の使いまである黒狐がさっきから警告しているような気もする。
だが時既に遅し。
エイラの耳はその先の言葉をはっきりと聞き取っていた。
「私思うの。もしもキリオと会えたのがあの時が最後だったらって。そうなってしまったら絶対後悔するはず。
だからエイラちゃん、大切な人がいるなら後悔しないようにしなさい」
狐としても、魔女としても、エイラと斗和子は役者が違いすぎた。
▼ ▼ ▼
「エイラと何を話していたんですか?」
「少しね。大人の女性として悩める少女にアドバイスをしてあげたの」
ここまでの流れを振り返って斗和子は概ね満足していた。
最初本来なら敵である流から共闘の申し出があった時、別にそこまで意外だとは思わなかった。
白面の眷族として斗和子の役割は人間社会で云うところの外交官に当てはまる。
自由に動けない本体の代わりに来るべき復活の時に備えて有利な状況へ展開する事が主な役割だ。
法力僧・引狭とキリオを利用して光覇明宗に亀裂を走らせて、獣の槍を破壊するように仕向けた工作もその一つ。
そして更なる亀裂となる楔の候補として目を付けていたのが秋葉流だ。
以前から婢妖がもたらす情報に加えて最近の動向を合わせれば、十分こちら側に付く目はあると思えた。
そしてどうやら斗和子の死後、無事に流を味方に引き入れる事に成功したようだ。
そう斗和子は一度死んだ。
その記憶は曖昧だったが、そうなったのであろうなと理解した。
獣の槍破壊工作はほぼ成功していた。
実際獣の槍を破壊するところまでは漕ぎ着けたのだ。
あとは真相を知って絶望の淵に追いやられた光覇明宗と蒼月潮を始末すれば全て終わるはずだった。
だがそうはならなかった。
なぜなら蒼月潮の呼びかけに応じて獣の槍が復活したからだ。
そして自ら戦いに赴いて返り討ちにされて、その辺りで斗和子の記憶は途切れていた。
斗和子は最後の最後で順番を間違えた事を悟った。
蒼月潮。
獣の槍の正当な伝承者である奴から先に始末しなければいけなかったのだ。
だから斗和子はこの殺し合いにおいて蒼月潮を優先的に殺すと決めたのだ。
もちろん獣の槍があるのかどうか分からなかったという理由もあるが、何より槍がなければ潮を殺すのは容易だ。
だから流の提案に最初は不服だったが、よくよく考えてみればそれもアリだと思えた。
ジンのような殺意に満ちた者には蒼月潮殺害を依頼するのは特に問題ない。
だが残念ながらこの殺し合いにはエイラやまほのように殺し合いには否定的な者もいる。
だから最初しばらくはどう切り出すか考えて二人とは迂闊な交流は避けていた。
そして二人の話を聞く限りそのような甘い考えの者はまだまだいるらしい。
そのような者に蒼月潮の殺害を持ちかけても素直に受け入れるとは思えない。
だが流の提案のように獣の槍と合わせて危険性を説き、且つ生け捕りで良いというのなら受け入れやすい。
嘘というものは真実の中に混ぜてこそより効力を発揮する。
だから先程の話の中には嘘もあれば真実もある。
ただ中には紅煉が危険な存在という隠す必要もない真実もある。
何にせよ最終的に潮を殺せれば途中の過程はどうでもいい。
とりあえずは流の方針に乗って情報収集と情報操作に専念して参加者間の扇動に努めよう。
まずはエイラへの揺さ振りはあのようなものでいいだろう。
もしもあれほど大事にしているサーニャという者が死んだりすれば、今から考えるだけで楽しみだ。
大きな想いがある者ほど実に扱いやすい。
強力な法具を作りたい引狭然り、偽りの愛情を疑いなく信じ続けたキリオ然り、そして流然り。
と言っても、斗和子も流を全面的に信用しているわけではない。
ただ今は力が回復しきっていないから話に乗ってみても良いと思っている。
先程自分に支給された物は爆弾のような物と鉄扇と石鏡と言っていたが、実はまだ一つある。
青酸カリ――埋伏の毒にはお誂え向きの支給品だ。
しばらく扇動に専念するのでどこかで役に立つかもしれない。
(そういえば灰原という女子にも会ってみたいものだ)
ちなみに灰原の話を持ちかけたのは斗和子だ。
理由はどうという事はない。
最初の場で生意気にも白面の眷族である黒炎を睨みつけて笑っていたからだ。
その気概に対してのささやかな褒美とでも言おうか。
決して意趣返しの類ではない。
実際に出会ったら感謝すらしてもらいたいと斗和子は小さく笑っていた。
【D-3 荒廃した市街地/早朝】
【斗和子@うしおととら】
[状態]:大~中程度の消耗、BT-42乗車中
[装備]:
[道具]:支給品一式、鉄扇@うたわれるもの 偽りの仮面、『永』の字が刻まれた石鏡@名探偵コナン、青酸カリ@名探偵コナン
[思考・行動]
基本方針:蒼月潮の抹殺(+獣の槍の破壊)。
1:蒼月潮を殺してくれる人間を探す(もしも殺し合いに否定的なら生け捕りを持ちかける)。
2:光覇明宗の狙いを探る。
3:ある程度回復するまで流達と行動を共にして扇動に専念する。
※死ぬ直前からの参戦。
※流から自分が死んでからの経緯を聞きました。
※アインズ、アインズを主と仰ぐ集団を要注意人物として認識しています。
【西住まほ@ガールズ&パンツァー】
[状態]:健康、疲労(小)、BT-42運転中
[装備]:BT-42@ガールズ&パンツァー
[道具]:支給品一式、不明支給品0~2
[思考・行動]
基本方針:脱出。
1:ナンコと一松と合流して501JFW基地へ向かう。
2:みほやエリカと出来るだけ早く合流したい。
※最終話以降からの参戦。
※潮、とら、紅煉、灰原、アインズ、アインズを主と仰ぐ集団を要注意人物として認識しています。
【秋葉流@うしおととら】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3
[思考・行動]
基本方針:
1:何とかしないとな。
2:エイラと共に他の参加者と接触する。
3:12時頃には501JFW基地で皆と合流する。
※白面の側に付いた以降からの参戦。
※アインズ、アインズを主と仰ぐ集団を要注意人物として認識しています。
【エイラ・イルマタル・ユーティライネン@ストライクウィッチーズ】
[状態]:健康、魔力消費(小)、斗和子への負い目、サーニャが心配で堪らない
[装備]:
[道具]:支給品一式、零式艦上戦闘脚二二型甲@ストライクウィッチーズ、MG42S@ストライクウィッチーズ、シュールストレミング@現実
[思考・行動]
基本方針:脱出。
1:流と共に他の参加者と接触する。
2:12時頃には501JFW基地で皆と合流する。
3:サーニャ……。
※潮、とら、紅煉、灰原、アインズ、アインズを主と仰ぐ集団を要注意人物として認識しています。
※ストライカーユニットの制限:離陸エリアから出た場合魔導エンジンが停止する。
▼ ▼ ▼
「ちくしょう、二手に別れるのか!?」
4人から少し離れた場所から様子を窺っていたスピードスターは4人の行動に戸惑いを露わにした。
数時間前ヴァルカナ達から離れたところで首輪探知機を見たスピードスターは画面に表示された文字を見て焦っていた。
そこには『残り使用回数1回』と『次リセット時間は06:00』と表示されていた。
そして改めて調べたところ、この探知機には使用回数が設定されている事が判明した。
それによると使用できるのは定期放送のある6時間ごとに2回ずつだった。
つまり次の放送までに探知機が使えるのはあと一度だけ。
思わぬ落とし穴に陥ったスピードスターはそれ以降使い所を見極めようと市街地を慎重に捜索していた。
そして運良く探知機を使う事なく4人の参加者を発見できた。
だがせっかく見つけたのに運悪く分かれて行動するところらしい。
一方は軽い感じの青年と外国の女性。
一方は同年代の女性と大人の女性。
どちらも光宗を誘惑しそうな女性がいる事には変わらないが、あいにくこの距離だと追跡できるのはどちらか一方だけだ。
スピードスターは迷いに迷った結果に出した結論は――。
【D-3 荒廃した市街地/早朝】
【スピードスター@迷家-マヨイガ-】
[状態]:健康
[装備]:レミントンM870
[道具]:支給品一式、首輪探知機(次リセット時間06:00までの残り使用回数1回)
[思考・行動]
基本方針:光宗を保護する。邪魔する奴は誰だろうと殺す。
0:どちらを追うべきだ……。
1:首輪探知機を使い、光宗を探しだす。
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最終更新:2016年10月14日 23:16