最終戦Ⅴ
頭が非常に痛く……ちかちかとくらくらが混ざって。
それでもわたしは歩きます。守るべき人の手を引いて、ああ、まるで
ヒーローのよう。
敗戦の敗走でさえなければ、そう思えたかもしれません。
「凛々ちゃん。……身体は大丈夫? 痛む?」
「無理を、すれば。動かせなくはありません。すいません、不甲斐なくて」
娯楽施設、C-2エリア。
わたし、勇気凛々と紆余曲折さんはふたりきりで、
一刀両断さんの言うラストゲームに則って、このエリアまで逃げてきました。
逃げて、きました。優柔不断さんを、犠牲にする形で。
くやしさと申し訳なさで、わたしは背筋から暗いものがこみあげてくるのを感じました。
「本当に……不甲斐なくて……。優柔不断さんっ……!」
「凛々ちゃん……」
「優柔不断さん。大丈夫じゃ、ないですよね。わたし、また、守れなくて、見抜けなくて。
やられてばかりで、誰かを犠牲にして……どうしてわたしは、こんなにばかなんでしょう」
「……仕方ないよ。リョーコさんにあのタイミングで裏切られるなんて、
僕にもぜんぜん、予想できなかった。……凛々ちゃんは、悪くない。
とにかく、今は優柔不断さんを信じよう。
そしてその上で、……優柔不断さんが負けた場合にも備えるんだ」
「……紆余さん」
しかし、紆余さんになだめられました。
一番つらいのは紆余さんだろうに。……紆余さんも、我慢してるのに。
わたしが泣き叫ぶわけにはいきません。わたしは、つとめて冷静になろうとしました。
「そうですね……どうします? 施設から出ましょうか?」
「僕は出ないほうがいいと思う。
外は開けすぎてて、発見された場合のリスクが高い。この近くで、隠れよう」
「近く……テナントの中でしょうか」
「だね。できれば、出入りできる面が広い、交差点角のテナント」
わたしたちが今いるC-2は、先ほどまで居た中央階段よりひとつ南のエリアに当たります。
9エリアのうち、4エリアが禁止区域になったこの娯楽施設には、
自由に歩ける部分が5エリア、施設部分はここと中央階段の2エリアしか残っていません。
他はすべて駐車場エリアで、確かに紆余さんの言うとおり、かなり開けた場所です。
高い場所から見渡されれば発見されてしまいますし、
車の下や中に隠れるのは《一刀両断》を思うと危険極まりありません。
ならば、遮蔽物が多く、相手を迎え打てる、このエリアのどこかの店を使った方がいいはずだ。。
という紆余さんの言葉は、わたしも合理的だと感じました。
こんな状況になっても冷静に考えることのできる紆余さんは、やっぱりすごいと思います。
「隠れる場所……を、一番慎重に決めよう。……地図はある?」
「あ、はい」
紆余さんに従って、デイパックから地図を取り出します。
娯楽施設全体の概略図の裏に、フロアごとのテナント位置が書いてあります。
わたしはその中、C-2に並ぶテナントをじっと見て、周りの景色とも見比べつつ良い場所を探します。
薬局……喫茶店……洋服屋に、バーガーショップ……そして。
「そうなると……こことかでしょうか?
っと、見えないんですよね。すいません。ええと、ゲームセンターです」
わたしが提案したのは、ゲームセンターでした。
「広さはテナント2つ分くらい……奥行きもけっこうありますし、
雑音に紛れる形で隠れれば、一刀両断さんからも見つかりにくいかも……?」
「……」
「あの、紆余さん?」
「あ……ごめん。ちょっと、疲れがさ。
ゲーセン。そうだね……悪くないと思う。
そこに、しよう。凛々ちゃん。悪いけど、案内してくれるかな」
「え、その……は、はい」
いったん反応が止まった紆余さんを不思議に思いましたが、反対も無く、
わたしはゲームセンターに向かって、紆余さんの手を引いて行きます。
紆余さんの手は非常に冷たく、ひどく緊張しているようでした。
早く安心させてあげたい……という気持ちが生まれます。
あるいは自分が安心したいだけなのかもしれませんが、
とにかくわたしたちは、混乱のさなかで。安心できる場所を探していました。
いろんなことがありすぎて――こころがつかれきっていて。
一体何を信じればいいのか分からなくなったあやふやな現実を、安定させたいと。
「……けっこう、五月蠅いですね」
「だね」
しかしゲームセンターに入ってみると、ゲームの音が思ったよりも大きく、
わたしはチョイスを少し間違えたかな、と思いました。
音ゲーにシューティングゲー、UFOキャッチャーにレースゲーム、カードゲーム。
ゲームセンターはこれらの筐体が常に音を出していて、音密度がすごい場所です。
ゲーセンなんて行くようなキャラじゃなかったのか、その密度はわたしの頭をさらにくらくらさせました。
こんなに大きな音がする場所に長時間いるのは気が疲れそうだし、
それに、これじゃあ逆に、外からやってくる相手が立てる音を拾うことも出来なくなりそうです。
わたしは十数歩ほど歩いてテナントの中央部まで入ったところで、耐え切れなくなり、地図をもう一度取り出して、
「やっぱり、ここは少し……他の場所へ行きませんか?」
きびすを返しながら紆余さんに、そう言いました。
「いや、ここでいいよ、凛々ちゃん」
すると。
紆余さんは私の手をぐいっと引きました。
「え?」
いや、別に手は引いてないのかもしれません。その場に留まって動かなかっただけなのかも。
でもわたしは急に紆余さんがついてくるのをやめたせいで前へ進み切れずに、
反動でうしろに、
こてんと音を立ててしりもちをついてしまいました。
地図を取り出すために空けていたデイパックから、内容物がこぼれだしてしまいます。
「あ、」
「ああ、ごめん。拾うね」
紆余さんは慌てたようにその場にしゃがむと、床に落ちたものを拾いはじめました。
――呆然としながらわたしはそれを見ています。
立ち上がるのも忘れるほどでした。
紆余さん。
紆余、さん?
「あの、紆余さん」
「ごめんね。リョーコさんが来る前に決めなきゃいけないのに」
「あの、えっと、紆余さん。あの……」
わたしはちかちかした頭のなかで感情を混線させながら、何を言えばいいのか考えました。
紆余さんがわたしのデイパックから落ちたものを拾っています。
食料品や、ペットボトル、ルール用紙。拾って、デイパックに戻しています。
ボウガンを拾いました。わたしはそれを呆然と見ています。何もできるはずがありません。
おどろくしか、ないからです。
確かにそんなに遠くに落ちたわけでもないけれど。
紆余曲折さんは。
わたしが床に落としたものを全部“的確に”拾って、デイパックに戻していたのです。
「ああ、なにやってんだろ……リョーコさんに殺されちゃうな、こんなんじゃ」
「……リョーコ、さん」
「うん。リョーコさんだよ。一刀両断さんじゃなくて、リョーコさん」
あっ、と、わたしは思い出します。
実際にはわたしはその場面に居合わせたわけじゃないんですが……そういえば、
優柔不断さんがわたしに銃を見せながら作戦を説明してくれた時、こう言っていました。
――紆余は、あいつは。
――あいつにとってのリョーコさんが、
――リョーコさんじゃなくなったんじゃないかって疑ったんだ。
そして恐らくですが紆余さんは、優柔不断さん達に作戦を説明するときも、
“リョーコさん”ではない“彼女”を想定するときは、“一刀両断さん”と呼び直していたはず、なんです。
信頼関係を疑った紆余さんの中で、それが信条(ルール)であるはずなんです。
でも……でも。
だったら。おかしいですよね。
紆余さんも傍若無人も裏切ってひとりで優勝すると言い放ったあのひとを。
どうして紆余さん、あなたはリョーコさんと呼び続けているんでしょうか。
そして、どうして。
どうして紆余さんはわたしに、ボウガンの射出口を向けているんでしょうか。
そして……そして……もうひとつ。
「どうして。どうしてなんですか、紆余さん。合いません……つじつまが、合いません。
だってわたしも優柔不断さんも、ちゃんと見ました。見て、確認したのに。
タクマさんだって何も言ってなかったじゃないですか。まさか、そんな……どこから……いつから?」
今、明らかに。
紆余さんは、“見えています”。
「……分からないことと言えばさ」
狼狽するわたしに向かって、紆余さんは言いました。
「凛々ちゃんにはひとつ、分からないままのことがあるんじゃないかな」
「え……」
「ほら、優柔不断さんもそうだったみたいだけど。自分が自分じゃなくなったようなことがあったって。
それは放送を聞いたと同時に元に戻ったって……そういう話を聞いたんだけど」
「それは……それは、傍若無人が知ってると思って」
「うん。考えないようにしてた、だろう? 分かってる。
でもね、凛々ちゃん。その問題の答えは簡単なんだ。四字熟語が、消えた。それだけなんだよ」
紆余曲折さんはわたしにボウガンを向けたまま、
もう片方の手を使って、顔に巻いていた包帯を少しずつ外していきます。
「きっと、凛々ちゃんたちは同じ人の影響――第一放送で死んだ人の名前から見て、
多分心機一転さんだと思うんだけど――のルール能力を受けてしまっていたんだと思う。
そして放送で名前が呼ばれることで、四字熟語が消えた。
四字熟語が及ぼしていたルール能力が無くなって、二人は元にもどった。
特に複雑に考える必要はない、主催の言葉通りだったんだよ。でも、明確には書かれてないことだった」
だから、利用させてもらったんだ。
紆余曲折さんは傷だらけの顔を再び外気に触れさせながら、静かにそう言い放ちました。
その顔は。傷だらけのずたずたです。
顔中を刃物でかき回されたかのような傷跡がまだ化膿しつづけていて、
おもわず目を背けたくなるくらいに凄惨な光景、でした。
「利用……って。でも、紆余さん、あなたは今も、そんな顔じゃないですか」
「うん」
紆余さんは肯定します。何を肯定しているのかわたしにはいまいち分かりません。
だって紆余さんがこうなったのは第一放送の前。
破顔一笑という人のルール能力によって、だと聞いています。
その破顔一笑さんの名前は、第二放送でもう呼ばれました。だから、
さっきの紆余さんの論に従うのであれば、もう紆余さんの顔は治っていなければおかしいはずなんです。
矛盾しています。傷が治ってない……そのまま残っているなんて。
「じゃあ、なんでまだ、傷が……?」
「うん。破顔一笑さんのルール能力はね。《顔を破る》ものだったんだ。
彼の笑顔を見たものは、顔の表面をミキサーにかけられたように、ぐちゃぐちゃにされてしまう。
目やら鼻やらがどこにあるのかもわからないくらいに、ね」
「……ぐちゃ、ぐちゃ」
傷が……残った、まま。
戻っていない。
戻っていない、けれど。
今、紆余曲折さんの顔にある傷は。
“ぐちゃぐちゃ”じゃなくて、“ずたずた”だ……。
「うん。賭けだった。とっても分の悪い、賭けだった。
自分でもバカだと思うくらいにバカな賭けだったけど。幸い、成功したんだ」
紆余さんは淡々と言いました。
「放送が終わって……その規定(ルール)を推測したあと。
僕は一刀両断さんに頼んで、わざと“自分の顔をずたずたに”してもらったんだよ、凛々ちゃん。
みんなの目を欺いて――
最後の最後まで守られて。最後の最後に、うらぎるために」
紆余曲折さんはわたしに向けて、しっかりと両目を向けました。
……ああ、なんで。言葉はひどく平坦なのに。
ひどいくらい冷たくて無機質なのに。
紆余さんの、久しぶりに光を浴びただろう目は。
どうしてこんなに、泣きそうなくらいに潤んだ、弱弱しい瞳なんでしょうか。
「だからさ……僕“たち”の、勝ちなんだ。
そして……きみの負けなんだよ、凛々ちゃん。きみは今からこのボウガンで、」
僕に殺されて、それで終わりだ。
「僕が殺して。それで全て、終わり、なんだ……そういう、約束(ルール)なんだ!!」
泣きながらそう言われて。
わたしは……かなしすぎて、なにも、言えません。
紆余さんがこのままわたしを殺してしまうのを、もう、見ているだけしかできなくて、
そしてそれは、その結末はたぶん、一番悲しいことなんだって……分かって、いるのに。
無力でした。
胸に押し付けられたゼロ距離のボウガンに。
わたし、勇気凛々は、完全に白旗を挙げました。
――僕は最低だ。
勇気凛々ちゃんにボウガンの矢を向けながら、改めて心中でそうつぶやいた。
すべては上手く行った。
僕のあずかり知らぬところでも、知っているところでも、
とんとん拍子のリズムで怖いくらいに、すべて僕の思い通りになった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
実は、僕はリョーコさんにすべてを指示したわけではない。
むしろ何も指示してないと言ってもいいくらいだ。
ただ、振り返って第一放送の後。
“覚悟”を決めて、リョーコさんをリョーコさんと呼ぶようになり、
リョーコさんがタクマさんを殺そうとするのを止めたとき。そのときには、今の形を構想していた。
すなわち、タクマさんと傍若無人をぶつけて疲弊させ、漁夫の利を奪う形。
構想しただけで、作戦はまったく考えていなかったけど。
この展開を盤石にするために僕は、
少し疲れたといってベッドに横になったあとも考え事を続けて――四字熟語の消滅ルールにたどり着いた。
そして、リョーコさんにこの傷を頼んだのだ。
「バカかお前」
横でまだ寝ているタクマさんを起こさないよう、小声で反論された。
当たり前だと思う。
「まだ破顔一笑は死んでないし!
あいつに何人が《顔を破られた》のかも分かってねーんだぞ!
お前の顔だけ戻らずに、そいつらの顔が戻ってたらどうすんだ!?
そりゃ上手くいけば、傷があり守られつつ目は見えているってアドバンテージが生まれるけどよ!
・……不安要素が多すぎる。あたしは反対だぜ」
「その反論はすごく普通の反応だとは思うんですが、ちょっと待ってください、リョーコさん。
“四字熟語の消滅ルール”は
ルール説明でぼやかされている。
=確定事項とまではいえない、ということを考えれば、そうそう悪い話でもないと思うんです」
僕は冷静に補足説明を加えた。
注目すべきは、四字熟語の消滅ルールはあくまで“なのかもしれない”程度の話だということだ。
ルール説明の紙に正しくルールとして記載されているわけではない。
参加者だけでは、誰もこのルールが本当かどうかを確かめるすべはない。
ならば利用できる。
「例えば破顔一笑さんに他の人がやられていて、第二放送で破顔一笑さんの名前が呼ばれ、
その人の顔が戻ってたとしても……“僕の顔はなぜか戻らなかった”で通せばいい」
「んな無茶苦茶な……いや、まあそう言われたら反論はできねえが」
それに、この作戦は第二放送で破顔一笑さんが呼ばれた場合にしか効果を及ぼさない。
その次の第三放送のときには、もう“残り二人”。
僕とリョーコさんしかいない計算だから、作戦自体が機能せず、ばれることもない。
僕の顔にちょっと一生残るレベルの傷がついてそれで終わりだ。
「その一生残るレベルの傷だってけっこう問題だとあたしは思うけどな」
「こんな場所で死ぬよりは数段ましですよ。まあ、主催側が傷を治してくれる可能性にでも賭けましょう」
そう、こんな場所で死ぬよりは数段マシだと僕は思ったのだ。
生き残るためならばなんだって、どんな可能性にだって賭けてやると誓った。
だから僕はいったん痛みが収まっていた顔のぐちゃぐちゃをもう一度ずたずたにされても、
その痛みから《逃げる》ことなく受け入れて、横のタクマさんが起きないように言葉を耐えた。
耐えきって。ぐちゃぐちゃを、ずたずたにして。
僕は退けなくなった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そのあと僕らはタクマさんと情報交換し。
タクマさんと傍若無人を殺すための日本刀を取りに行った。
ただ、日本刀が落ちているだろう場所には、日本刀が落ちていなかった。
他の武器でもいいと僕は思っていたけれど、リョーコさんは取りに行った。
その行動を僕は止めなかった。
リョーコさんはきっと、僕たちの作戦を確実なものにするために別行動を選んだのだと思ったからだ。
破顔一笑を殺しに行くか、傍若無人の現状を確認しに行くか、そのあたりだろうと。
だから僕は止めなかったし、十分が経って戻ってこなくても、全く心配していなかった。
まさか傍若無人さんと契約を結んでくるなんて、欠片も思っていなかった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
これについては、傍若無人が最終戦を持ちかけた時点で少し怪しいとは思っていたのを、
戻ってきたリョーコさんの空白時間の語りで、ほぼ完全に状況を把握した。
把握し、そしてリョーコさんに確認した。リョーコさんは信じていいと言った。充分だった。
さらに確信できる材料もあった。
最期通牒として行われた傍若無人の放送、
見せつけるようにテラスに飾られた六人の首――その中、破顔一笑さんの首が“ずたずた”になっていたこと。
“ずたずた”の秘密は僕とリョーコさんしか知らないこと。僕にしか伝わらない、切り札だ。
これを確認したときにはもう、僕はリョーコさんがリョーコさんのままなのだと、完全に理解していた。
つまり、リョーコさんはどうやってかは知らないが、今は傍若無人の下について計画に従っている。
だけどいずれ傍若無人を裏切って、タクマさんと一緒に殺すのだと。
そういう計画を完成させたのだと。
あるいは、傍若無人を奇跡的に下し、僕たちの作戦に組み込んだのだと。
それを信じることができたから、僕はさらにリョーコさんの発言を疑いにかかり、
傍若無人のルール能力を見破って、それをタクマさんと優柔不断さんに明かし……整えた。
傍若無人を倒すための作戦。
と見せかけた、僕たちが勝つための作戦を。
整えた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
作戦のメインはタクマさん。
当然の話だけど、これを動かすわけにはいかない。
タクマさんには凛々ちゃんたちが来るまで粘ってもらわないといけなかったから、
左腕をやられてピンチになったときは本当にひやひやした。
最終的には、全力を使いはたして綺麗に理想的な勝ちを見せてくれた。
優柔不断さんと凛々ちゃんにはタイトなスケジュールで挑んでもらった。
比較的僕たちを信じているタクマさんと違って、客観的に彼らには疑う余地がある。
それを潰すための、作戦執行までの時間短縮だ。
優柔不断さんは銃の試し打ちもできなかっただろう。そして今頃死んでいるはずだ。
僕とリョーコさんは、初手で倒される役を演じた。
というかリョーコさんの作戦ではそうなっていたみたいだ。
今考えると合理的なのだけど、まさかいきなり本気で殴り飛ばされるとは知らなかったので、
これについては僕は普通に驚いたし普通にかなり痛かった。
それと僕を心配して飛び込んでくるリョーコさんの演技が完璧だったから、
作戦なんて全くなくて、すべて僕の勘違いだったのかと疑ってしまったくらいだ。
あとから考えれば――あれは、タクマさんを完全に勘違いさせるために必要だったのだろう。
タクマさんはあの本気のやられた振りがなくても僕らを疑いはしなかっただろうけど、
あれで彼の頭の中から“僕たちが裏切る/裏切ってた”可能性を完全に排除できたと思う。
きっとタクマさんはあそこから死ぬまでずっと、リョーコさんが本当はどっちなのかとか、
誰かが裏切るんじゃないかとかを、考えることはなかったはずだ。
何も考えずに幸せに戦えたはずだ。
彼を仲間だと偽った僕らが彼に贈ってあげられたのは、せいぜいその時間だけだ。
ごめんなさい。謝っても当然足りないし、恨まれて当然だけど、ごめんなさいとしか言えない。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
……ただ、ひとつ言うならば。
全ての作戦を完遂させるためのキーパーソンにして一番の障害が、タクマさんだったことも確かだ。
タクマさんしか傍若無人と相討ちになれそうな四字熟語はいないのに、
2エリア先の銃声を耳にはっきりとらえてしまうほどにタクマさんは“耳が良い”。
五感まで《強く》できるなんて想定外にもほどがある。
耳が良すぎるタクマさんの前で。
致命的なワードを発言して作戦がばれてしまうことを、僕たちはなにより恐れていた。
最後の最後までリョーコさんと細かい打ち合わせをできず、アイコンタクトで済ませたのは、
そうせざるを得ないほど《強い》タクマさんが近くに控えていたからだった。
秘密の会話ができない状況。
出来たのはせいぜい、鉄の盾を切ってもらうお願いをすることくらいだった。
これくらいなら疑われないし、タクマさんの目から隠せば包帯の切れ端と共に銃口へ詰めることもできる。
リョーコさん側の傍若無人との契約にも、触れることは恐らく無い、と踏んだ。
正解だったようで、リョーコさんは嬉しそうに鉄の盾を切ってくれた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
かくして僕とリョーコさんは明確なことはなにも言わず、
互いに互いがどういう作戦を取ってるのかを明かさないままに。
当初の目的、
傍若無人と切磋琢磨の同時殺害という綱渡りな作戦を遂行し。なんとか成功させた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
さらにそこから――唯一用意できた《百発百中》の爆弾を使うために、
予想通り、リョーコさんは一人で勝ち逃げするという嘘をついて、
“僕が仲間ではない”ことを凛々ちゃんと優柔不断さんにアピールしてくれた。
そして優柔不断さんは僕の思い通りに、リョーコさんをどうにかするために銃を向ける。
僕は凛々ちゃんと逃げて(あるいは逃がされて)その場から消える。
分断は完成し、そして優柔不断さんのほうはすでに仕込みも完了している。
あとは彼が引き金を引くだけで、僕たちに残されたハードルはひとつだけになる。
すなわち、凛々ちゃんの殺害。
この一つを、あと一つを、乗り越えるだけで。
全てが終わる。
全てが。終わりだ。
「……」
でも。
僕はまだ。
引き金を、引けていない。
引けて、いない。
――指が。全く動かない。
「どうしたんですか、紆余さん」
凛々ちゃんが僕に問う。
「わたしに手はもうありません。確かに、わたしの負けです。早く終わらせて、ください」
それは僕も知っている。
もう、胸にボウガンを押し当てた。
どこからでも現れる《りんりんソード》が生成されきる前に、
僕は凛々ちゃんを殺すための引き金を引くことができる。
相討ちもありえない。凛々ちゃんの攻撃を《曲げている》間に彼女を殺せばいいだけ。
だから詰みなのだ。もう王手はかけたのだ。
それなのに。僕は最後の一つのハードルを、越えられていない。
自分の引き金で人を殺すという、それだけのハードルを。
こんなところまできておいて。――――越えることが、できていない。
「ふざけないで、ください」
凛々ちゃんは僕に怒った。
「優柔不断さんに渡した銃。あれに、細工していたんでしょう。
あれを撃った瞬間に優柔不断さんが不利になる様な細工を。でなければ渡しませんもんね」
「……うん」
「そんなことをしておいて自分は引けないんですか」
「……うん」
「優柔不断さんには引き金を引かせて殺しておいて。自分は引き金を引いて殺せないんですか」
「……うん」
「ふざけないでください」
怒りながら、涙を流して。
「わたしは。貴方を軽蔑しましたよ、紆余さん」
と、凛々ちゃんは言った。
当たり前だと思う。
僕は頷く。言葉もない。
……凛々ちゃんは、言葉を続ける。
「全部。嘘だったんですよね」
「うん」
そうだ。全部嘘だった。
「タクマさんは。あなたのことを仲間だと信頼してました。それも嘘だった」
「うん」
そうだ。それも嘘だった。
「わたしと優柔不断さんは、あなたの作戦についていった。でもそれも嘘だった」
「うん」
そうだ。でもそれも嘘だった。
「あなたはみんなを駒みたいに扱って」
「うん」
そう。
「一刀両断さんも駒みたいに扱って、傍若無人すらも駒にして。もてあそんで!!」
「そうだ」
うん。
「みんな、あなたが殺したんじゃないんですか。ぜんぶあなたのせいじゃないですか」
「そうだね」
うん。そうだね。
「なのに、面と向かって殺すのだけ出来ないだなんて……っ!!」
「そんな道理、通るわけないよね。……僕もそう思うんだ。僕も、そう思うんだよ、凛々ちゃん」
でも僕は。
「でも僕は……殺せないんだ」
――事故みたいな形で殺した猪突猛進さん。
――腔発事故を僕が仕組んで、遠隔的に殺した優柔不断さん。
僕が殺すことができたのは、
こんなふうに僕の意志が、最後の一手では必要ないような場面でだけ。
“僕のせいじゃない”と思えるような形で、だけだ。
勇気凛々ちゃんに向かって引き金を引くのはこれらのケースとは違う。
ルール能力のせいでも、銃のせいでもない。
僕のせいだ。
僕が引き金を引くせいで、凛々ちゃんはこの世からいなくなる。
そう思うだけで。僕の腕は硬直し目から涙が溢れて呼吸は荒くなり心臓は跳ねて身体が震えた。
でもこんなの、一刀両断さんを、
リョーコさんを僕の駒にしたときからずっと分かっていたことだ。
ひどく単純な話。僕の手じゃ、僕は殺せない。
僕は“殺せない人間”なんだって突き放すつもりももうない。
弱虫なだけ。何かのせいにしなきゃ、間接的じゃなきゃ、人を殺せないってだけだ。
僕は弱いのだ。なによりも。誰よりも。
「だけど……でも。成長しなきゃ、いけないんだ」
「……」
「これを成長だなんて言っちゃいけないのかもしれないけれど。
こんな……こんなことまでやってしまったんだから。やったんだから。
……僕はきみを殺さないとダメなんだ。僕が、終わらせなきゃ、ダメなんだ。
じゃないと……いままで僕が殺してきた人たちに。申し訳が、たたないじゃないか」
「そうですね。肯定するしか、ないです」
「……」
「でもたぶんそれ、無理ですね」
言われて僕は自分の手が自分の思い通りに動いていないことに気付く。
うわあ。……何だこれ。
僕、引き金に指すらかけれてないじゃないか。
「う、わ……あ……」
「情けないですね。たくさんのひとを殺しておいて。
こんなちっぽけな女の子ひとり、殺せないなんて」
「……ぅあ……」
「最低です」
「……」
「あなたは最低です、紆余曲折さん」
うつむきながら、憎らしげに。
自分でもさんざん思っていることを言われて僕は。
自分でもさんざん思っていた通りに言葉を心に突き刺されて。
そして。
ボウガンを、取り落として、負けを認める……
……それすら、そんなことは、できなかった。
もどれない。
止まれない、動けない。
進めないのに、退けない。
「…………」
僕はもう殺してしまった。猪突猛進さん、優柔不断さんだけじゃない。
凛々ちゃんが言った通り、タクマさんや傍若無人も僕が殺したようなものだし、
例えば
殺し合いを打倒するって僕が本気で思ってさえいれば、
その上で話せば、青息吐息さんや先手必勝さんとだって分かり合えたかもしれない。
でも、信じられなかった。
僕は信じられなかった。
たった数人頑張ったところでこんな理不尽な実験をどうにかできるだなんて信じられなかった。
みんなでがんばればどうにかできるとか、そういう感情論を信じられなかったし、
傍若無人がぶらさげた脱出への希望も、倒せば教えてやるなんて都合の良い条件(ルール)も、
検討するまでもなく信じられなかった。
最初から他の全てを疑ってかかって。だからこそ作戦は成功した。
信じたのは一刀両断、リョーコさんだけだ……いや、そう言えるかどうかは、かなり怪しい。
だって他の人が信じられてないのにどうしてリョーコさんだけ信じられたって言うんだ。
きっと、信じているという体で突き放していただけだ。
リョーコさんを信じているふりをすれば他の人を信じなくていいから、信じていただけ。
むしろ裏切って欲しいって思ってた節さえあるかもしれない。
僕なんかみじめに裏返されて、簡単に信じすぎだぜって、殺されるのが関の山だろうなんて。
疑っていたんだろう僕は。馬鹿にしてほしかったんだろう。
投げやりに問えば心は肯定していた。ほら、やっぱりそうだ。……最低だ。
けど。残念ながら、上手くいってしまったんだ。
僕が知らないうちに僕の作戦は完璧なものになっていて。
誰もがそれを疑うことなく、騙され、僕はそれに従うしかなくなった。
それはもうぜんぶまとめて誰かのせいにしたいくらいに。
自分でも自分が信じられなくなるくらいに、すべて思い通りに、なってしまった。
でも、元をただせば全部僕のせいだし。僕はそうしなければ生き残れていないだろう。
紆余曲折は何も、何もかも、自分さえも信じずに。
それでも生きたいとだけ願って。
すべて疑ってすべて騙した。
人を駒にして、弄んで、紆余曲折の果てに殺した。
その事実だけは確実だ。絶対に信じられるものだ。
だからその現実を受け入れて、
前に進まなきゃいけないのに。どうして僕は、僕の手は。……僕は、動けないんだ。
「……」
床に涙が落ち続けている。
凛々ちゃんはただ、まっすぐ僕の目を見据えている。
もう凛々ちゃんは泣いていなかった。ただ、見定めるように、僕を見ている。
床に落ちる涙は僕のものだ。
自分でもびっくりするくらいぼろぼろと、僕は情けなく泣いてしまっていた。
どうにもできない現実に駄々をこねる子供のようだった。
どうしようもなくダメな僕は子供だった。
僕はゲームに勝って勝った気になっているだけの、現実に負けた子供だった。
「――――」
ぶざまに泣き叫びながら凛々ちゃんの胸に飛び込みたい衝動に駆られた。
もう三秒、いや四秒もすれば、何も考えずにそうしていたかもしれない。
あるいは何も覚悟を決めぬままに、時間に突き動かされるまま引き金を引いていたかもしれなかった。
それは放棄だ。そんなことをすれば何もかもダメになる。それは分かっていたけれど。
僕は押しつぶされるように、そうなろうと、していた。
けれどその一秒前に。
タイムリミットが、やってきた。
「――どうしたよ、紆余。まだ殺してないのか? なあ。それは、ルール違反じゃないか」
リョーコさんだ。
「あ……」
「“最後の二人になって。あたしを殺す”んだろ、紆余。
だったら。だったら、そいつを殺せないようじゃだめだよな? なあ?」
「……リ、リョーコ、さん」
隠れる場所をここにするとか、そういう段取りは決めていないはずなのに。
リョーコさんが。あまりにも早く。僕と凛々ちゃんの前に、現れた。
この早さはいったい――と思ったところで僕は周りの騒がしさを思い出す。
そうだ、ここはゲームセンター。
ゲームセンターと僕に関わりがあることは、もうリョーコさんには話していたんだっけ。
「そいつを殺せないのは……ルール違反だよなァ。
で、ルール違反は……契約(ルール)破棄とみなすぜ、紆余……!」
リョーコさんは不遜に笑っていた。
僕はおそろしくなった。
そう、僕はリョーコさんが来るまでに凛々ちゃんを殺せなかった。
チャンスがやってきたのに、すぐ殺して二人きりになればいいものを、殺さなかった。
殺せなかったも殺さなかったもこの場合は同じだ。
リョーコさんから見てみれば、これは……優柔不断どころじゃない僕のこれは、裏切り行為だ。
そして。そのしっぺがえしはどうなるか――分かっていた、はずじゃじゃないか。
日本刀が、構えられる。
「あたしを殺したはずの男を、あたしが殺すことになるとはな」
「一刀両断、さん……やめてください!!」
「わめくな小娘。これはあたしと紆余の問題だ」
「……でも! もう、もう……やめてくださいよ、こんなの!
おかしいです! 約束だから殺さなきゃなんて! なんで、なんでこんな!」
「――止めないで、凛々ちゃん」
僕はボウガンを捨てて、凛々ちゃんを制止した。
当然だと思ったからだ。
「きっと……これが僕の、
因果往訪ってやつなんだよ。誰も信じきれずに、
自分すらも信じられなきゃ……結局は誰かを裏切って、殺されるだけなんだ」
「紆余さん!!」
「遺言はそれでいいな? それじゃあ……行くぜ、紆余」
「はい……ごめんなさい、リョーコさん」
僕は実は見えていたその両目をこのときばかりはしっかり見開いた。
リョーコさんは一歩で距離を詰め、構えていた日本刀をさらに大上段へ。
二歩目を踏み込むと同時に、
勢いよく、日本刀を振る――凛々ちゃんにもそれは、止められなかった。
ごめんなさい、と僕は呟き。
リョーコさんは刀を振った。
日本刀の刀身は。
奇麗な直線を描いて。
僕の頭を、ぱしんと叩いた。
「……え?」
そして、僕は。《斬られ》……なかった。
リョーコさんが振り下ろしたのは刀の、刃ではなく。峰のほうだった。
「え?」「……え」
え?
「あー、驚いたか? っはは、最後まで騙されんのが上手い奴らだよ、お前らは」
「……どう、いう、こと、ですか?」
けっきょく直前に目を瞑ってしまっていた僕がその目を開けると、リョーコさんが笑っている。
さっきのように切迫した、怒りをはらんだかようなものではなく、むしろ場違いなほどに朗らかに。
笑いながらリョーコさんは、僕の髪の毛をわしゃわしゃしてこう言った。
「お前が凛々を殺せるわけねーなんて、読めてたんだよあたしには。
むしろ平気な顔してあたしに“僕には無理なんで殺してください”って言うかと思ってた」
「な……」
「っていうか! あたし以外殺すなよ! それこそ契約(ルール)違反だっての。
二人になるまではお前は守られ続けるっていう話だろ、何がんばって凛々を殺そうとしてんだ。
お前に殺されていいのはあたしだけなんだよ! いいかげんにしろ、妬けんだろーが!」
「そ、そんな……で、でもちょっと待ってください、リョーコさん!
どっちにしたって、凛々ちゃんを殺さないと二人になれないじゃないですか!」
「あー、もう……言うぞ、それは間違いだったんだよ!
分かってろよ。推理不足にも程がある。疑いすぎのうえに適当に流しすぎ。解釈不足だぞ、紆余!」
「……なっ!?」
「嘘じゃねーんだよ。“脱出口”は! 存在するんだよ!
そして――このバトルロワイヤルで生き残れるのは、一人じゃねえ!」
乱暴に、リョーコさんが言い捨てたその言葉を――僕は受け入れるのに時間がかかった。
え、嘘。
それは嘘のはずで。
最終戦のエサとして使われた、撒き餌のはずじゃ……?
「……どういうことですか、リョーコさん!?」
「右に同じです!! それじゃ、どうしてあなたたちはタクマさん達を殺したんだって話になるじゃないですか!」
「それは必要だったんだよ、凛々。脱出口の出現には条件(ルール)がある」
リョーコさんは続けて提示した。
“第三放送の後”。
誰でも行ける、特定の場所に、脱出口は現れる、と。
「つまり、残り二人まで減る必要はあるんだ。――ま、もちろん脱出口を通れるのは一人だけだぜ?
じゃなきゃそのタイミングで出す意味はないからな。ただそのルールには“裏”がある。
ロワのルールを読み込んだ紆余になら、この意味は分かるとあたしは思ってるが……どうだ」
「……」
「ちなみにこれは全部、前回優勝者かつ主催側でもある傍若無人に聞いた言葉だ。
信頼性って意味じゃこれ以上はほぼないはずだろ? さあ、紆余……考えてみろよ」
「……ええ……?」
「……」
話しについていけない凛々ちゃんが目を点にして制止する。
そのそばで、いまだに信じられない気持ちになりつつも、
僕はリョーコさんによって新たに提示された条件をよく咀嚼して、
最初の最初、屋上へ進むスロープを見ながら読んだルール用紙のルールと照らし合わせた。
……確かに。本当にそんな展開になるのであれば、可能だ。
脱出口を通れるのは一人だけ。
しかしそれ以上の人数で生き残ることは、事実上可能だ。
だけど。
それでも、生き残れるのは、結局二人だけ、だ。
「それでも、二人だけ、」
「そうだな」
「……な、なら……!」
「あたしと、お前で生き残る。凛々を殺す。そう言いたいんだろ。
でも残念ながらそれは無理だ。もうひとつ、お前は勘違いしていることがある」
「……?」
「“あたしは傍若無人を裏切ってなんかない”」
「?」「!?」
「あたしは。一刀両断もといリョーコさんは。
このバトルロワイヤル、全部の約束、契約を! ここまで全部、ちゃんと守ってんだよ。
つまりどういうことか? めんどいからシンキングタイムは一刀両断して、一気に言うぜ。
傍若無人は“自分が殺されることも契約に含んでいた”んだ。そして。傍若無人とあたしが結んだ契約は!」
リョーコさんは、いろいろ置いてけぼりの僕“たち”を指差して。
「お前ら“二人”を、生き残らせることだったんだよ。紆余。そして……凛々!」
この最終戦が開かれた、本当の意味を――ついに知らされる、ことになった。
用語解説
【紆余曲折】
事情が込み入っていて複雑で、解決に手間取ること。
あるいは単に曲がりくねった道のこと。
名前通り、彼が置かれていた状況は、事情が複雑に込み入った状況だった。
最終更新:2015年03月10日 00:01