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anko3652 ドスについて
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『ドスについて』 19KB
愛で いじめ 観察 考証 ドスまりさ 現代 独自設定 失礼します。
愛で いじめ 観察 考証 ドスまりさ 現代 独自設定 失礼します。
anko2611 ゲスゆっくり奮闘記1
anko2622 ゲスゆっくり奮闘記2
anko3414 ゲスゆっくり奮闘記3
anko3417 ゲスゆっくり奮闘記4
anko3456 れいむのゆん生
anko3458 まけいぬとゆっくり
anko3461 ゆっくりに生まれて
anko3484 ゆっくりブリーダー
anko3489 休日とゆっくり
「」ゆっくりの台詞
『』人間の台詞でお願いします
誤字脱字失礼します
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anko3458 まけいぬとゆっくり
anko3461 ゆっくりに生まれて
anko3484 ゆっくりブリーダー
anko3489 休日とゆっくり
「」ゆっくりの台詞
『』人間の台詞でお願いします
誤字脱字失礼します
『えーっと、それでドスの間違った認識とは、何でしょうか?』
ある研究所の一室、応接室と呼ぶには雑多にものがあり過ぎるそこで、俺は目の前に座る白衣の中年男性に質問する。
雑誌記者である俺は、ゆっくり特集の空きページがあると言うので、そこにドスについて聞く為にここに来ていた。
眼の前の白衣の中年男性は、詳しくは知らないけどゆっくりの研究、ドスの研究をしているらしい。
どうせ空きスペース埋めるだけと、俺はそんなに本気にならす、手帳とレコーダーを横に設置されている机に置いて話を聞く。
机には様々な資料や、薬品、そしてノートPCが置かれていた。
『間違った認識と言うはね、えーっとそうだ、まずは君はドスについてどんなことを知っているかな?』
『ドスに、ついて、ですか?』
その質問に俺は、軽く目を閉じて頭に思い浮かべる。
生まれてこの方都会育ちの俺は、田舎の山などに存在するドスと触れ合ったことなどないので、必然的にネットの情報、あとは人伝に聞いた話しかない。
その中で、質問に該当そうな答えを探す。
『えっと、確か大きさは2メートル以上、固体によっては5メートルにもなり、ドススパークっていう光線で人を殺傷することがある、
そしてゆっくりオーラと呼ばれる謎の能力で人から戦意を削いだり、固体によっては姿を消したりして、人間に危害を加える固体も多い
……でしたっけ?』
思いつく限りのドスの特性を答える。
ネットで仕入れた情報もあるが、以前山に遊びに行った知人の体験談もあるのでそれなりに自信を持って答えることが出来た。
しかし。
『あー、そうだよねぇ、そーゆー感じだよね、それ間違いなんだよね』
『はい?』
……間違い、間違いとは何だろうか?
優秀な記者を気取るつもりはないが、何でも質問で解決しないように考える。
そして発言する。
『あ、あー、5メートルというのは流石にあり得ませんか、そんなに大きくなったら自重で潰れてしまいますよね、やはりそれは見間違いや尾ひれが着いたんでしょうか』
『いや、それもそうなんだけどそれだけじゃないんだよ、君が言ったドスの特性全部間違い、勘違いなんだ』
男性の言葉に俺は眉を潜める。
『全部、ですか?』
『そう、全部だ……これを見てくれたまえ』
そう言うと、男性は横の机、その資料の中から写真を取り出した。
それはゆっくりを撮影した写真だった。
場所は、この研究所の施設なのか何もない明るい白色コンクリートの部屋だった。
一際大きな、本当に大きなゆっくりれいむの周りに一般的なゆっくりたちが多数集まっている。
そのサイズの差は10倍じゃきかないほどのサイズ差だ。
『これは大きいですね……一般的ゆっくりが20センチくらいなんですから、3、いや4メートルはありますか?』
『あっはっはっは、違うよ、違う違う、良く見てっても、解らないか、じゃあこっちを見てくれ』
『え?』
俺が写真に見入っていると、男性は楽しそうに笑いながら新たな写真を取り出した。
そこにはさっきの同じように、大きなれいむの周りにゆっくりが集まっている光景が写されていたが、決定的に違うものがあった。
『え? あれ、タバコの箱? え? じゃあ、あれ?』
その写真、写っている一般的ゆっくりたちの横にはタバコの箱が置かれていた。
タバコの箱は10センチにも満たない程度のサイズ、しかしその箱に並ぶ一般ゆっくりたちは、箱の半分程度の大きさしかない。
この情報から見るに、ピンポン玉サイズしかないことになる。
『あの、これは?』
『それが2メートル、5メートルのドスの真実だよ』
俺はもう一度、その写真をまじまじと見た。
『……これ、赤ゆっくりですか』
『そうだよ』
写真に写っていたのは、大きなれいむと赤ゆっくりたちだったのだ。
確かに対比するものがなければ、数メートルのドスゆっくりに見えるかも知れない。
『山に遊びに行った都会の人が、見間違えてそれが話が大きくなったんだよ
ドスゆっくりはね、基本的に運動があまり得意じゃないから赤ゆっくりの面倒を見ることが多いんだ
だから、こんな光景が山では良く見られて、それを遠くから見た人が勘違いしたりするんだよ』
『そう、なんですか、へぇ……』
男性の説明を聞きながら、二枚の写真を見比べる。
……確かに、こんな姿を山で見たら勘違いもするか。
『解ってくれたかな? じゃあ、ちょっと待っててくれ』
俺の反応に気分を良くしたのか、男性は部屋を出ていた。
そして数分で戻ってきた、大きなゆっくりれいむと、ゆっくりまりさの二匹を連れて。
『大きいですね……あ、こっちのれいむが写真のドス、ですか?』
『うん、そうさ、ほら挨拶してみなさい』
男性の言葉にゆっくり二匹は素直に頷いて、跳ねることなく這いずって俺の前に来ると。
「「こんにちはおにーさん、ドスはドスだよ、ゆっくりしていってね」」
と、随分理知的に挨拶をしてくれた。
その辺の野良や安いゆっくりとは違う、金バッチクラスの知性を感じた。
『あぁ、ゆっくりしていってね』
俺は挨拶を返して、目の前のドスと名乗った二匹の1メートル、バランスボールほどの大きな二匹を見た。
確かの普通のゆっくりに比べてかなり大きい、しかしそれでも俺の腰程度のサイズだ。
『これがドスゆっくり……』
『そうこれがドスさ』
男性は再び椅子に座り直すと、俺に笑顔を向けた。
『それで見た感想は、どうかな?』
『いや、大きいは大きいんですけど、やっぱり思ったほどじゃなかったな、という感じですね』
『そうだろうね、それで、このドス、このサイズのゆっくりは人間に危害を加えられそうかね?』
俺が最初に言った、ドスにイメージの内の一つ。
人間に危害を加える固体もいる。
俺はまじまじと二匹を見る。
「そんなにみないでよおにーさん、ドスははずかしいよ」
「そうだよ、ドスはおとめなだよ?」
『……あ、あぁすまない』
ちなみに最初がれいむで、次がまりさだ。
俺は二匹を観察した上で、答えを出す。
『このサイズなら、腰に体当たりされたら転びますし、子供なんか潰されたりしたらかなり危険じゃないですか?』
俺は思ったままの感想を言う。
自分で言ってそれなりに確信も持てた。
ゆっくりは自分のサイズの半分ほど跳躍できる、ドスは重さもあるから半分は無理でも30センチは飛べるだろうと、考えた。
俺の言葉に男性は楽しそうに頷く。
そして、片手でドスれいむを撫でると口を開いた。
『残念、発想は悪くないけどそれには穴があるんだ』
『穴? ですか?』
さっきの自分の答えを思い返す、そして間違ってるだろう部分を探す。
俺の考えがまとまる前に男性は答えを出す。
『実はね、ドスゆっくりは跳ねることが出来ないんだよ』
『え? そうなん、ですか?』
俺は男性の言葉に、まじまじと二匹を見る。
確かにさっきは這って移動していたが、それは短い距離で跳ねる必要が無いからだと思っていた。
視線に気付いたのか、ドスまりさはおずおずと口を開いた。
「そうなんだよ、ドスになると はねると すごくいたいいたいに なっちゃうんだよ……ドスも、なりたてのころに しっぱいしたから、おぼえてるよ」
『これを見てくれ』
ドスまりさの言葉が終わるに合わせて、男性は横の机に置かれたノートパソコンを取り出した。
そして、画面を俺に向けた。
そこには動画が映し出されていた。
画面の中では大きなゆっくり、ドスまりさが寝起きなのか身体を震わせて伸びをしていた。
そしてキリっとした笑顔を浮かべて、ぴょんと跳ね、着地と同時に顔を強張らせ。
次の瞬間大きな声で鳴きながら転げまわっていた、その底部、ゆっくりの言うあんよには結構大き目の裂けた傷が出来ていた。
底部の傷から餡子を漏らしながら転げまわって、大粒の涙を流していた。
『えと、これは?』
『これがドスゆっくりが跳ねられない理由だよ、ドスになるとゆっくりは圧倒的に体内の餡子の量と、密度が増えるのだよ』
男性は、画面のドスと足元のドス二匹を交互に見て言った。
『そうなると、所詮は饅頭の皮少し高いところから落とすとパンパンのそれは簡単に弾けてしまうだ』
『なるほど……だから、ドスは跳ねられないんですか』
俺も画面と足元のドスを見つめる。
『そう、そのため子守りなどの役をすることが多くなるんだ
えっと、じゃあ次はドススパークだった、かな?』
『あ、はい、そうですね』
説明に満足したのか、博士は次に話題を移した。
次の話題はドススパーク。
主にドスまりさが放つ光線で、それは木々を焼き、人さえ殺すという。
俺は足元のドスまりさの帽子をチラッと眼にした。
話によると、この帽子の下にキノコがあり、それを租借してドススパークにするという。
もし今撃たれたら俺の下半身はどうなるのだろうかと少し不安になった。
『人を殺傷する光線、これも間違いなんですか?』
『そうさ、ちょうどドスもいるし実践してみようか』
『え?』
男性は、すっと足元のドスまりさの帽子を持ち上げた。
一瞬だけドスは顔を強張らせたが、それだけだった。
その帽子の下には、小さなキノコが3つ4つ生えていた。
男性はそのキノコを一つ、そっと抜いてまたドスまりさに帽子を返す。
『ほら、これをどうぞ』
男性はそう言うと、その小さなキノコを半分に裂き、片方を俺に渡してくれた。
俺は渡されたそれをまじまじと見つめる。
『あの、これは?』
『食べてみてくれ、結構いけるよ』
困惑する俺を気にせず、男性は自分の手に残った残り半分を口に放り込み、租借した。
『…………っ』
俺はその様子を見て、意を決してキノコを口に放り込んだ。
小さなキノコをゆっくり、ゆっくりと噛み。
『っ、か、からい、ですね、これ』
『あははは、そうだろう
でも、それほどもでもないだろう?』
キノコは、唐辛子のような後引く辛味を口の残した。
しかし、男性の言う通り、中々にいける味だった。
辛いと言っても、知って食べれば驚くほどじゃない、そのレベルだった。
しかし、これがドススパークとは?
俺の思考に気付いたのか、先読みしたのか男性は口を開いた。
『この辛いキノコを噛み砕いて、それを噴射するのがドススパークなんだよ』
『これ、を?』
口の中に僅かに残る辛味を思い出して、首を傾げる。
『まぁ、納得いかないだろうから、説明させて貰うよ
ゆっくりは辛いものが苦手、それは知ってるね?』
『えぇ、一応は』
虐待動画や、そうでなくてもカプサイシン入りのゴミ袋を破ろうとして悶絶するゆっくりなんてその辺で腐るほど見る。
俺の言葉に、男性は満足そうに頷く。
『この辛いキノコを噛んで吐き出す、それを皮に受けたゆっくりはその辛味に弱い性質から悶絶することになる
そうすると、人間に似た語彙体系を持つ彼らは[やけるようにいたい]と認識するんだ』
男性はそこで言葉を区切る。
『焼ける、燃える、そこの関連からゆっくりはドススパークで物を燃やすという妄想を手に入れた
そして、人間相手に脅すときにドススパークで燃やす、ということを言い出すようになったんだ
ドスゆっくりはそれを不可能と知ってはいるが、一般的なゆっくりは知らない
そして何より、この辛味の毒きりの様な技をドスは結多様するんだ』
『そうなんですか?』
『あぁ、群れ内でのいざこざに、そして天敵である捕食種に、そして群れ同士の抗争に
対ゆっくりにおいて、この辛味の毒霧は広範囲、といってもゆっくりにとっては、だけど
広範囲に撃てて、尚且つ一撃必殺の威力をも秘めているからね』
細かく噛み砕いて、吐き出す。
確かに、便利なのかも知れない。
ゆっくりの単体対単体を基本にした戦闘にしたら、一騎当千とまではいかなくてもそれなりに。
『ドスには我慢できても、普通のゆっくりなら口に入っただけで悶絶して餡子を吐き出すし
肌についたら転げまわる、そして痛みを熱いと判断する
そこから尾ひれがつき、ドススパーク=燃えるの図式が生まれる
そして、それを脅し文句に使うのがドススパークの死傷の噂だよ』
俺は話を聴いて、確かにこんなデカイ饅頭に殺されるなんて堪ったもんじゃないしな、と頷く。
ドススパーク、辛いキノコのエキスを浴びて[燃える]ような痛みを受け。
そこから伝聞と憶測と、ゆっくりの妄想により出来上がったのか。
なんともゆっくりらしい必殺技だ。
『ドスになりたての者には、本当にドススパークで人間を殺せると思っている固体もいるからね
ドスのドススパークで殺すよ、等と脅されることも実際にあるのでね』
『なるほど、そこでまた勘違いとなる訳ですか』
『その通り、ドススパークについてはもう良いかな?』
『はい、では、次のゆっくりオーラについて、お願いできますか?』
俺は話の区切りで、話題を変える。
それに男性は小さく頷く。
『ゆっくりオーラというのは、これは存在しない』
『しない、ですか』
さっきまでのように実証も何もなく、そのまま断言。
『ゆっくりオーラはドススパークのような元あっての妄想ではなく、完全なゆっくりの妄想なんだよ』
男性は呆れたように笑いながら、肩をすくめた。
そして足元にじっとしているドス二匹に視線を向けた。
『ドスがいるとゆっくり出来る、というゆっくりの根拠のない理論、そこから生まれた妄想なんだよ』
『ドスがいるとゆっくり出来る、ですか』
俺も同じく、足元で実にゆっくりしてる二匹を見た。
『ドスをいればゆっくり出来るから始まり、それがどんな思考回路で言ったか人間さえにも効くゆっくりオーラになったのだよ
そして、ドスがそれを自分で発現すればそれを妄信するゆっくりは信じる
[今からゆっくりオーラをだすよ]とでも、言えば勝手にゆっくりするのさ』
『そんなもんですか』
『そんなもんだよ、色々実験してみたがゆっくりオーラはついぞ発見できなかったよ』
もしかしたら、ゆっくりオーラの研究について結構時間などを割いたのかも知れない。
そう感じさせるような呆れた表情をしていた。
俺はそこには言及せず、最後の話題に移る。
『では、その、姿を消したりと、言うのは?』
再びドスまりさのキノコを採取している男性に質問する。
『姿を消す、ゆっくりステルスと言われるものだね、うん』
『ゆっくりステルス、ですか』
聞き慣れない言葉に、少し首を捻る。
『これについては、ゆっくりオーラと違ってそれなりの物があるんだ』
男性はそう言うと、キノコを齧りながら先ほどのパソコンを手に取り、また動画を開いて俺に向けた。
俺は黙ってそれを見る。
そこには、ドスまりさとその周りに成体ゆっくりが佇んでいるものだった。
どうにも和やかとは言いがたい感じの会話をしている。
内容は省くが、ドスの周りにいるのは俗に言うゲスゆっくりらしく。
自分たちの長の座を譲れと喚いているらしい。
ドスはどうにも不機嫌そうな顔をしているが、やがて大きく溜息を吐き。
「ゆっくりしていってね!!」と、大きな声で叫びそして帽子を外し大きく息を吸い膨らんだ。
ドスの言葉に返事をしていたゲスたちはハッと我に返ったような仕草をして、そして……。
「ドスはどこにいったの!?」
「きえっちゃったよ!」
「ゆっくりでてきてね!」
などと叫んでいた、そして目の前にドスがいるのに一切構わずドスを探しに跳ねて画面から消えていった。
『……どういうことですか? これ』
状況が良く解らず、俺は男性に質問する。
男性は、パソコンを戻して俺の問いに答えてくれた。
『ゆっくり、野生や教育を受けていないゆっくりは[ゆっくりしていってね]と呼ばれると、瞬間的にそれに対する返答以外の思考が停止するんだよ
あぁ、この子達はドスだし、何より教育されてるからそんなことはないがね』
ドス二匹は、言葉に反応せず相変わらずゆっくりしている。
『そして、思考を停止している間は完全に無防備、目の前で何があっても理解できない認識できないんだ
その間にドスはゆっくりにとっての固体認識の鍵たる帽子を脱ぎ、大きく膨らむ
普通飾りである帽子をなくせば、ゆっくりに[ゆっくりできない]と称され制裁の対象になるだが
ドスについて、それはない、何故か解るかな?』
『それは……』
出された質問に必死に頭を回転させる。
ドス二匹を見ながら考えるが、答えは出ない。
それに男性は鷹揚に頷き、言葉を続けた。
『それはサイズが大きいからさ、ゆっくりたちが認識できるサイズはドスより少し小さいのがギリギリなんだよ
だから彼らは自分より大きな人間に喧嘩を売るんだ、必要な部分以外を認識出来ないから
認識できないということは見えないといことさ、ドスは相手の思考停止の内に帽子を取り個体認識を阻害し
更に大きく膨らみ、ゆっくりの認識外のサイズに変貌することで、認識から消えてしまうのだ』
『なるほど、認識能力を超えることで、その外に出るんですか』
『その通り、そしてこれを知ったゆっくりが人間に話し、そこから生まれたものだよ、姿を消せるという話は』
『なるほど、大変参考になりました、今日は本当にありがとうございました』
俺は取材に協力してくれた男性に礼を言い、レコーダーやらを回収し、
土産にドスキノコを1パックも貰い帰路についた。
……。
…………。
「おい! そこのにんげん! まりさにたべものをよこすのぜ!」
『あぁ?』
今日の取材を頭の中で推敲しながら、家路を急いでいると、薄汚いゆっくりまりが何やら俺に声をかけてきた。
今日見たドスまりさと違い、知性も理性もなさそうな酷い顔をしていた。
「きこえなかったのぜ!? まりさはたべものを よこせっていってるのぜ!」
『…………あ、そだ』
疲れているので、さっさと潰そうと考えた俺は鞄を漁り、貰ったドスキノコを手に取る。
そして……。
『ゆっくりしていってね!』
と大きな声で叫んでみる。
俺の声に合わせてまりさの「ゆっくりしていってね!」が聞こえてきたが、それより早くまりさの後ろに回りこむ。
ハッと我に帰ったまりさは、キョロキョロと俺を探す。
「ゆっ!? ゆゆ?! い、いないのぜ? どこにいったのぜ! でてくるのぜ!」
左右に忙しなく視線を行き来させる。
今日学んだゆっくりステルスの応用編? だ。
少し不安がっていたが、そこはゆっくり直ぐに自分の良い様に脳内変換。
「ゆっ、きっとまりさをこわがってにげたのぜ! まったくにんげんはなさけないのぜ!」
そう判断したらしいまりさは、「ゆふん」と偉そうな息を吐いた。
そこで俺は後ろから軽く蹴ってやる。
「ゆぎゃん!? ……な、な、なにしやがるのぜぇぇぇえ!? ゆっ!? さっきのにんげん!?」
『よう』
驚くまりさに、気さくに声をかける。
しかし俺の気さく差を無視して、まりさは顔をむかつく笑みに変える。
「ゆぁぁぁぁん? にげたよわよわのにんげんがなにしてるのぜぇ? またまりささまにボコボコにされたいのかぜ?」
いつの間にか、俺はこのまりさにボコボコにされていたらしい。
まったく、ゆっくりの妄想には頭が下がる、こりゃ噂も生まれるってもんだ。
変な納得をしながら、俺はまりさに話しかける。
『はぁ? 逃げた? なに言ってんだよ、俺は面倒だからゆっくりステルス使ってお前から見えなくしてただけだっつの』
「はぁぁぁぁあぁあ?! にんげんごときが ゆっくりステルスなんてつかえるわけないのぜ!
あれはゆっくりしたゆっくりのなかでも、とくにゆっくりしたドスしかつかえないわざなのぜ!
ゆっくりしてない にんげんが つかえるわけないのぜ! ゆひゃひゃひゃひゃ!!」
『へぇ、じゃあもう一回してやるから今度はしっかり見てろよ?』
「なぁんかいでも みてやるのぜ!」
俺はまりさの返事を聞き、また大きく息を吸い……。
『ゆっくりしていってね!』
と言い同時に後ろに回りこむ、返事をしたまりさはまたさっきと同じようにキョロキョロしだした。
「い、いない、の、ぜ……つ、つかえるはず ないのぜ! ゆっくりステルスはドスみたいにゆっくりしたゆっくりしかつかえないのぜ!!
にんげん ごときがつかえて いいわざじゃないのぜ!」
さっきとは違う、慌てた様子に俺はついつい笑いそうになってしまった。
……応用版ゆっくりステルス結構使えるな。
俺は笑い声を堪えて、またまりさを軽く蹴った。
「ゆびぇ! な! なんなの、ぜぇ……に、にんげん、なんで、そこに」
『言ったろゆっくりステルス使ったって』
俺は事もなげに言い放つ。
実際事もないのだが、ただ後ろに回っただけなんだから。
しかし、まりさにとってはドスにしか使えない技を、それも二回も目の前で使われ顔には大量の汗が浮いていた。
物理的論理的思考では物事の優劣を考えることが難しいゆっくりだが、ゆっくり的思考ではそれなりの反応を示す。
[ドスしか使えない技を使う人間]
その不気味さに、まりさは怯えていた。
「お、おまえは、なんなの、ぜ……」
『なにって、人げ……』
俺はそこまで言ってふと思いついた。
「ゆ?」
『実はな俺は、ドスなんだ、いやドスは全て人間なんだ』
そう言って笑ってみせる。
「な、なにばかなことをいってるのぜ? ゆ、ゆひゃ、ほんとうににんげんが、お、おろかなのぜ……」
否定するまりさの言葉に力はない。
俺は後押しすることにした。
『否定するなら仕方ない、ドスを否定するものにはドススパークだ!』
「ゆひっ!?」
俺は手に隠したドスキノコを頭から抜き出したように見せながら、ゆっくりに口に含んだ。
「や、やめ、やめるぜ、は、はったりは、よ、よすの、ぜ!」
そしてまりさに見えるように、わざとらしく租借する。
適度にペーストになったら、俺はゆっくりゆっくりまりさに顔を近づける。
「やめろ! やめるのぜ! そ、それいじょう ちかづいたら せ、せい、せいっさいなのぜぇぇぇぇええ!!」
『制裁はこっちの台詞だ、ドススパーク!!』
「ゆひっぃぃぃぃいい!?!!?!?」
口の中のキノコを、まりさに向けて噴出した。
一瞬フリーズしたまりさは次の瞬間。
「い、い、いたいいたいいたい!!! いたいのぜえぇぇぇえ! あ、あつい、あついのぜぇぇぇええええ!!」
と、叫んで転げまわり始めた。
運よく口には入らなかったのか、皮膚についただけのようだ。
必死にキノコを落とそうと地面を転がるが、上手くいかないらしく、痛みに声をあげ続けていた。
『あっはははは、ドスに逆らうからこうなるんだよ! ゆっくり理解してね!』
「なんでぇぇっぇぇええ!!? なんでドスがにんげんなのぉぉおおぉおお!!!」
ゆっくりの口調を真似た俺に、まりさはもう本気でドスだと信じているらしい。
泣き転がりながら、喚いていた。
俺はその姿を横目に見ながら、去り際に言ってやった。
『ドスはね人間さん、いや人間様に作って貰ったんだよ! ゆっくりを騙してゆっくりを虐めると人間さまと同じにしてもらえて
毎日あまあま沢山食べられるんだよ! ドスはねゆっくりはゆっくりさせないために、人間様に作られたんだよ!』
誰が聞いても苦笑しそうなことに、まりさは……。
「う、うそなのぜぇぇぇぇぇえぇぇぇぇええ!!!」
と叫んでいた。
俺はクスクス笑いながら、家に帰った。
ある研究所の一室、応接室と呼ぶには雑多にものがあり過ぎるそこで、俺は目の前に座る白衣の中年男性に質問する。
雑誌記者である俺は、ゆっくり特集の空きページがあると言うので、そこにドスについて聞く為にここに来ていた。
眼の前の白衣の中年男性は、詳しくは知らないけどゆっくりの研究、ドスの研究をしているらしい。
どうせ空きスペース埋めるだけと、俺はそんなに本気にならす、手帳とレコーダーを横に設置されている机に置いて話を聞く。
机には様々な資料や、薬品、そしてノートPCが置かれていた。
『間違った認識と言うはね、えーっとそうだ、まずは君はドスについてどんなことを知っているかな?』
『ドスに、ついて、ですか?』
その質問に俺は、軽く目を閉じて頭に思い浮かべる。
生まれてこの方都会育ちの俺は、田舎の山などに存在するドスと触れ合ったことなどないので、必然的にネットの情報、あとは人伝に聞いた話しかない。
その中で、質問に該当そうな答えを探す。
『えっと、確か大きさは2メートル以上、固体によっては5メートルにもなり、ドススパークっていう光線で人を殺傷することがある、
そしてゆっくりオーラと呼ばれる謎の能力で人から戦意を削いだり、固体によっては姿を消したりして、人間に危害を加える固体も多い
……でしたっけ?』
思いつく限りのドスの特性を答える。
ネットで仕入れた情報もあるが、以前山に遊びに行った知人の体験談もあるのでそれなりに自信を持って答えることが出来た。
しかし。
『あー、そうだよねぇ、そーゆー感じだよね、それ間違いなんだよね』
『はい?』
……間違い、間違いとは何だろうか?
優秀な記者を気取るつもりはないが、何でも質問で解決しないように考える。
そして発言する。
『あ、あー、5メートルというのは流石にあり得ませんか、そんなに大きくなったら自重で潰れてしまいますよね、やはりそれは見間違いや尾ひれが着いたんでしょうか』
『いや、それもそうなんだけどそれだけじゃないんだよ、君が言ったドスの特性全部間違い、勘違いなんだ』
男性の言葉に俺は眉を潜める。
『全部、ですか?』
『そう、全部だ……これを見てくれたまえ』
そう言うと、男性は横の机、その資料の中から写真を取り出した。
それはゆっくりを撮影した写真だった。
場所は、この研究所の施設なのか何もない明るい白色コンクリートの部屋だった。
一際大きな、本当に大きなゆっくりれいむの周りに一般的なゆっくりたちが多数集まっている。
そのサイズの差は10倍じゃきかないほどのサイズ差だ。
『これは大きいですね……一般的ゆっくりが20センチくらいなんですから、3、いや4メートルはありますか?』
『あっはっはっは、違うよ、違う違う、良く見てっても、解らないか、じゃあこっちを見てくれ』
『え?』
俺が写真に見入っていると、男性は楽しそうに笑いながら新たな写真を取り出した。
そこにはさっきの同じように、大きなれいむの周りにゆっくりが集まっている光景が写されていたが、決定的に違うものがあった。
『え? あれ、タバコの箱? え? じゃあ、あれ?』
その写真、写っている一般的ゆっくりたちの横にはタバコの箱が置かれていた。
タバコの箱は10センチにも満たない程度のサイズ、しかしその箱に並ぶ一般ゆっくりたちは、箱の半分程度の大きさしかない。
この情報から見るに、ピンポン玉サイズしかないことになる。
『あの、これは?』
『それが2メートル、5メートルのドスの真実だよ』
俺はもう一度、その写真をまじまじと見た。
『……これ、赤ゆっくりですか』
『そうだよ』
写真に写っていたのは、大きなれいむと赤ゆっくりたちだったのだ。
確かに対比するものがなければ、数メートルのドスゆっくりに見えるかも知れない。
『山に遊びに行った都会の人が、見間違えてそれが話が大きくなったんだよ
ドスゆっくりはね、基本的に運動があまり得意じゃないから赤ゆっくりの面倒を見ることが多いんだ
だから、こんな光景が山では良く見られて、それを遠くから見た人が勘違いしたりするんだよ』
『そう、なんですか、へぇ……』
男性の説明を聞きながら、二枚の写真を見比べる。
……確かに、こんな姿を山で見たら勘違いもするか。
『解ってくれたかな? じゃあ、ちょっと待っててくれ』
俺の反応に気分を良くしたのか、男性は部屋を出ていた。
そして数分で戻ってきた、大きなゆっくりれいむと、ゆっくりまりさの二匹を連れて。
『大きいですね……あ、こっちのれいむが写真のドス、ですか?』
『うん、そうさ、ほら挨拶してみなさい』
男性の言葉にゆっくり二匹は素直に頷いて、跳ねることなく這いずって俺の前に来ると。
「「こんにちはおにーさん、ドスはドスだよ、ゆっくりしていってね」」
と、随分理知的に挨拶をしてくれた。
その辺の野良や安いゆっくりとは違う、金バッチクラスの知性を感じた。
『あぁ、ゆっくりしていってね』
俺は挨拶を返して、目の前のドスと名乗った二匹の1メートル、バランスボールほどの大きな二匹を見た。
確かの普通のゆっくりに比べてかなり大きい、しかしそれでも俺の腰程度のサイズだ。
『これがドスゆっくり……』
『そうこれがドスさ』
男性は再び椅子に座り直すと、俺に笑顔を向けた。
『それで見た感想は、どうかな?』
『いや、大きいは大きいんですけど、やっぱり思ったほどじゃなかったな、という感じですね』
『そうだろうね、それで、このドス、このサイズのゆっくりは人間に危害を加えられそうかね?』
俺が最初に言った、ドスにイメージの内の一つ。
人間に危害を加える固体もいる。
俺はまじまじと二匹を見る。
「そんなにみないでよおにーさん、ドスははずかしいよ」
「そうだよ、ドスはおとめなだよ?」
『……あ、あぁすまない』
ちなみに最初がれいむで、次がまりさだ。
俺は二匹を観察した上で、答えを出す。
『このサイズなら、腰に体当たりされたら転びますし、子供なんか潰されたりしたらかなり危険じゃないですか?』
俺は思ったままの感想を言う。
自分で言ってそれなりに確信も持てた。
ゆっくりは自分のサイズの半分ほど跳躍できる、ドスは重さもあるから半分は無理でも30センチは飛べるだろうと、考えた。
俺の言葉に男性は楽しそうに頷く。
そして、片手でドスれいむを撫でると口を開いた。
『残念、発想は悪くないけどそれには穴があるんだ』
『穴? ですか?』
さっきの自分の答えを思い返す、そして間違ってるだろう部分を探す。
俺の考えがまとまる前に男性は答えを出す。
『実はね、ドスゆっくりは跳ねることが出来ないんだよ』
『え? そうなん、ですか?』
俺は男性の言葉に、まじまじと二匹を見る。
確かにさっきは這って移動していたが、それは短い距離で跳ねる必要が無いからだと思っていた。
視線に気付いたのか、ドスまりさはおずおずと口を開いた。
「そうなんだよ、ドスになると はねると すごくいたいいたいに なっちゃうんだよ……ドスも、なりたてのころに しっぱいしたから、おぼえてるよ」
『これを見てくれ』
ドスまりさの言葉が終わるに合わせて、男性は横の机に置かれたノートパソコンを取り出した。
そして、画面を俺に向けた。
そこには動画が映し出されていた。
画面の中では大きなゆっくり、ドスまりさが寝起きなのか身体を震わせて伸びをしていた。
そしてキリっとした笑顔を浮かべて、ぴょんと跳ね、着地と同時に顔を強張らせ。
次の瞬間大きな声で鳴きながら転げまわっていた、その底部、ゆっくりの言うあんよには結構大き目の裂けた傷が出来ていた。
底部の傷から餡子を漏らしながら転げまわって、大粒の涙を流していた。
『えと、これは?』
『これがドスゆっくりが跳ねられない理由だよ、ドスになるとゆっくりは圧倒的に体内の餡子の量と、密度が増えるのだよ』
男性は、画面のドスと足元のドス二匹を交互に見て言った。
『そうなると、所詮は饅頭の皮少し高いところから落とすとパンパンのそれは簡単に弾けてしまうだ』
『なるほど……だから、ドスは跳ねられないんですか』
俺も画面と足元のドスを見つめる。
『そう、そのため子守りなどの役をすることが多くなるんだ
えっと、じゃあ次はドススパークだった、かな?』
『あ、はい、そうですね』
説明に満足したのか、博士は次に話題を移した。
次の話題はドススパーク。
主にドスまりさが放つ光線で、それは木々を焼き、人さえ殺すという。
俺は足元のドスまりさの帽子をチラッと眼にした。
話によると、この帽子の下にキノコがあり、それを租借してドススパークにするという。
もし今撃たれたら俺の下半身はどうなるのだろうかと少し不安になった。
『人を殺傷する光線、これも間違いなんですか?』
『そうさ、ちょうどドスもいるし実践してみようか』
『え?』
男性は、すっと足元のドスまりさの帽子を持ち上げた。
一瞬だけドスは顔を強張らせたが、それだけだった。
その帽子の下には、小さなキノコが3つ4つ生えていた。
男性はそのキノコを一つ、そっと抜いてまたドスまりさに帽子を返す。
『ほら、これをどうぞ』
男性はそう言うと、その小さなキノコを半分に裂き、片方を俺に渡してくれた。
俺は渡されたそれをまじまじと見つめる。
『あの、これは?』
『食べてみてくれ、結構いけるよ』
困惑する俺を気にせず、男性は自分の手に残った残り半分を口に放り込み、租借した。
『…………っ』
俺はその様子を見て、意を決してキノコを口に放り込んだ。
小さなキノコをゆっくり、ゆっくりと噛み。
『っ、か、からい、ですね、これ』
『あははは、そうだろう
でも、それほどもでもないだろう?』
キノコは、唐辛子のような後引く辛味を口の残した。
しかし、男性の言う通り、中々にいける味だった。
辛いと言っても、知って食べれば驚くほどじゃない、そのレベルだった。
しかし、これがドススパークとは?
俺の思考に気付いたのか、先読みしたのか男性は口を開いた。
『この辛いキノコを噛み砕いて、それを噴射するのがドススパークなんだよ』
『これ、を?』
口の中に僅かに残る辛味を思い出して、首を傾げる。
『まぁ、納得いかないだろうから、説明させて貰うよ
ゆっくりは辛いものが苦手、それは知ってるね?』
『えぇ、一応は』
虐待動画や、そうでなくてもカプサイシン入りのゴミ袋を破ろうとして悶絶するゆっくりなんてその辺で腐るほど見る。
俺の言葉に、男性は満足そうに頷く。
『この辛いキノコを噛んで吐き出す、それを皮に受けたゆっくりはその辛味に弱い性質から悶絶することになる
そうすると、人間に似た語彙体系を持つ彼らは[やけるようにいたい]と認識するんだ』
男性はそこで言葉を区切る。
『焼ける、燃える、そこの関連からゆっくりはドススパークで物を燃やすという妄想を手に入れた
そして、人間相手に脅すときにドススパークで燃やす、ということを言い出すようになったんだ
ドスゆっくりはそれを不可能と知ってはいるが、一般的なゆっくりは知らない
そして何より、この辛味の毒きりの様な技をドスは結多様するんだ』
『そうなんですか?』
『あぁ、群れ内でのいざこざに、そして天敵である捕食種に、そして群れ同士の抗争に
対ゆっくりにおいて、この辛味の毒霧は広範囲、といってもゆっくりにとっては、だけど
広範囲に撃てて、尚且つ一撃必殺の威力をも秘めているからね』
細かく噛み砕いて、吐き出す。
確かに、便利なのかも知れない。
ゆっくりの単体対単体を基本にした戦闘にしたら、一騎当千とまではいかなくてもそれなりに。
『ドスには我慢できても、普通のゆっくりなら口に入っただけで悶絶して餡子を吐き出すし
肌についたら転げまわる、そして痛みを熱いと判断する
そこから尾ひれがつき、ドススパーク=燃えるの図式が生まれる
そして、それを脅し文句に使うのがドススパークの死傷の噂だよ』
俺は話を聴いて、確かにこんなデカイ饅頭に殺されるなんて堪ったもんじゃないしな、と頷く。
ドススパーク、辛いキノコのエキスを浴びて[燃える]ような痛みを受け。
そこから伝聞と憶測と、ゆっくりの妄想により出来上がったのか。
なんともゆっくりらしい必殺技だ。
『ドスになりたての者には、本当にドススパークで人間を殺せると思っている固体もいるからね
ドスのドススパークで殺すよ、等と脅されることも実際にあるのでね』
『なるほど、そこでまた勘違いとなる訳ですか』
『その通り、ドススパークについてはもう良いかな?』
『はい、では、次のゆっくりオーラについて、お願いできますか?』
俺は話の区切りで、話題を変える。
それに男性は小さく頷く。
『ゆっくりオーラというのは、これは存在しない』
『しない、ですか』
さっきまでのように実証も何もなく、そのまま断言。
『ゆっくりオーラはドススパークのような元あっての妄想ではなく、完全なゆっくりの妄想なんだよ』
男性は呆れたように笑いながら、肩をすくめた。
そして足元にじっとしているドス二匹に視線を向けた。
『ドスがいるとゆっくり出来る、というゆっくりの根拠のない理論、そこから生まれた妄想なんだよ』
『ドスがいるとゆっくり出来る、ですか』
俺も同じく、足元で実にゆっくりしてる二匹を見た。
『ドスをいればゆっくり出来るから始まり、それがどんな思考回路で言ったか人間さえにも効くゆっくりオーラになったのだよ
そして、ドスがそれを自分で発現すればそれを妄信するゆっくりは信じる
[今からゆっくりオーラをだすよ]とでも、言えば勝手にゆっくりするのさ』
『そんなもんですか』
『そんなもんだよ、色々実験してみたがゆっくりオーラはついぞ発見できなかったよ』
もしかしたら、ゆっくりオーラの研究について結構時間などを割いたのかも知れない。
そう感じさせるような呆れた表情をしていた。
俺はそこには言及せず、最後の話題に移る。
『では、その、姿を消したりと、言うのは?』
再びドスまりさのキノコを採取している男性に質問する。
『姿を消す、ゆっくりステルスと言われるものだね、うん』
『ゆっくりステルス、ですか』
聞き慣れない言葉に、少し首を捻る。
『これについては、ゆっくりオーラと違ってそれなりの物があるんだ』
男性はそう言うと、キノコを齧りながら先ほどのパソコンを手に取り、また動画を開いて俺に向けた。
俺は黙ってそれを見る。
そこには、ドスまりさとその周りに成体ゆっくりが佇んでいるものだった。
どうにも和やかとは言いがたい感じの会話をしている。
内容は省くが、ドスの周りにいるのは俗に言うゲスゆっくりらしく。
自分たちの長の座を譲れと喚いているらしい。
ドスはどうにも不機嫌そうな顔をしているが、やがて大きく溜息を吐き。
「ゆっくりしていってね!!」と、大きな声で叫びそして帽子を外し大きく息を吸い膨らんだ。
ドスの言葉に返事をしていたゲスたちはハッと我に返ったような仕草をして、そして……。
「ドスはどこにいったの!?」
「きえっちゃったよ!」
「ゆっくりでてきてね!」
などと叫んでいた、そして目の前にドスがいるのに一切構わずドスを探しに跳ねて画面から消えていった。
『……どういうことですか? これ』
状況が良く解らず、俺は男性に質問する。
男性は、パソコンを戻して俺の問いに答えてくれた。
『ゆっくり、野生や教育を受けていないゆっくりは[ゆっくりしていってね]と呼ばれると、瞬間的にそれに対する返答以外の思考が停止するんだよ
あぁ、この子達はドスだし、何より教育されてるからそんなことはないがね』
ドス二匹は、言葉に反応せず相変わらずゆっくりしている。
『そして、思考を停止している間は完全に無防備、目の前で何があっても理解できない認識できないんだ
その間にドスはゆっくりにとっての固体認識の鍵たる帽子を脱ぎ、大きく膨らむ
普通飾りである帽子をなくせば、ゆっくりに[ゆっくりできない]と称され制裁の対象になるだが
ドスについて、それはない、何故か解るかな?』
『それは……』
出された質問に必死に頭を回転させる。
ドス二匹を見ながら考えるが、答えは出ない。
それに男性は鷹揚に頷き、言葉を続けた。
『それはサイズが大きいからさ、ゆっくりたちが認識できるサイズはドスより少し小さいのがギリギリなんだよ
だから彼らは自分より大きな人間に喧嘩を売るんだ、必要な部分以外を認識出来ないから
認識できないということは見えないといことさ、ドスは相手の思考停止の内に帽子を取り個体認識を阻害し
更に大きく膨らみ、ゆっくりの認識外のサイズに変貌することで、認識から消えてしまうのだ』
『なるほど、認識能力を超えることで、その外に出るんですか』
『その通り、そしてこれを知ったゆっくりが人間に話し、そこから生まれたものだよ、姿を消せるという話は』
『なるほど、大変参考になりました、今日は本当にありがとうございました』
俺は取材に協力してくれた男性に礼を言い、レコーダーやらを回収し、
土産にドスキノコを1パックも貰い帰路についた。
……。
…………。
「おい! そこのにんげん! まりさにたべものをよこすのぜ!」
『あぁ?』
今日の取材を頭の中で推敲しながら、家路を急いでいると、薄汚いゆっくりまりが何やら俺に声をかけてきた。
今日見たドスまりさと違い、知性も理性もなさそうな酷い顔をしていた。
「きこえなかったのぜ!? まりさはたべものを よこせっていってるのぜ!」
『…………あ、そだ』
疲れているので、さっさと潰そうと考えた俺は鞄を漁り、貰ったドスキノコを手に取る。
そして……。
『ゆっくりしていってね!』
と大きな声で叫んでみる。
俺の声に合わせてまりさの「ゆっくりしていってね!」が聞こえてきたが、それより早くまりさの後ろに回りこむ。
ハッと我に帰ったまりさは、キョロキョロと俺を探す。
「ゆっ!? ゆゆ?! い、いないのぜ? どこにいったのぜ! でてくるのぜ!」
左右に忙しなく視線を行き来させる。
今日学んだゆっくりステルスの応用編? だ。
少し不安がっていたが、そこはゆっくり直ぐに自分の良い様に脳内変換。
「ゆっ、きっとまりさをこわがってにげたのぜ! まったくにんげんはなさけないのぜ!」
そう判断したらしいまりさは、「ゆふん」と偉そうな息を吐いた。
そこで俺は後ろから軽く蹴ってやる。
「ゆぎゃん!? ……な、な、なにしやがるのぜぇぇぇえ!? ゆっ!? さっきのにんげん!?」
『よう』
驚くまりさに、気さくに声をかける。
しかし俺の気さく差を無視して、まりさは顔をむかつく笑みに変える。
「ゆぁぁぁぁん? にげたよわよわのにんげんがなにしてるのぜぇ? またまりささまにボコボコにされたいのかぜ?」
いつの間にか、俺はこのまりさにボコボコにされていたらしい。
まったく、ゆっくりの妄想には頭が下がる、こりゃ噂も生まれるってもんだ。
変な納得をしながら、俺はまりさに話しかける。
『はぁ? 逃げた? なに言ってんだよ、俺は面倒だからゆっくりステルス使ってお前から見えなくしてただけだっつの』
「はぁぁぁぁあぁあ?! にんげんごときが ゆっくりステルスなんてつかえるわけないのぜ!
あれはゆっくりしたゆっくりのなかでも、とくにゆっくりしたドスしかつかえないわざなのぜ!
ゆっくりしてない にんげんが つかえるわけないのぜ! ゆひゃひゃひゃひゃ!!」
『へぇ、じゃあもう一回してやるから今度はしっかり見てろよ?』
「なぁんかいでも みてやるのぜ!」
俺はまりさの返事を聞き、また大きく息を吸い……。
『ゆっくりしていってね!』
と言い同時に後ろに回りこむ、返事をしたまりさはまたさっきと同じようにキョロキョロしだした。
「い、いない、の、ぜ……つ、つかえるはず ないのぜ! ゆっくりステルスはドスみたいにゆっくりしたゆっくりしかつかえないのぜ!!
にんげん ごときがつかえて いいわざじゃないのぜ!」
さっきとは違う、慌てた様子に俺はついつい笑いそうになってしまった。
……応用版ゆっくりステルス結構使えるな。
俺は笑い声を堪えて、またまりさを軽く蹴った。
「ゆびぇ! な! なんなの、ぜぇ……に、にんげん、なんで、そこに」
『言ったろゆっくりステルス使ったって』
俺は事もなげに言い放つ。
実際事もないのだが、ただ後ろに回っただけなんだから。
しかし、まりさにとってはドスにしか使えない技を、それも二回も目の前で使われ顔には大量の汗が浮いていた。
物理的論理的思考では物事の優劣を考えることが難しいゆっくりだが、ゆっくり的思考ではそれなりの反応を示す。
[ドスしか使えない技を使う人間]
その不気味さに、まりさは怯えていた。
「お、おまえは、なんなの、ぜ……」
『なにって、人げ……』
俺はそこまで言ってふと思いついた。
「ゆ?」
『実はな俺は、ドスなんだ、いやドスは全て人間なんだ』
そう言って笑ってみせる。
「な、なにばかなことをいってるのぜ? ゆ、ゆひゃ、ほんとうににんげんが、お、おろかなのぜ……」
否定するまりさの言葉に力はない。
俺は後押しすることにした。
『否定するなら仕方ない、ドスを否定するものにはドススパークだ!』
「ゆひっ!?」
俺は手に隠したドスキノコを頭から抜き出したように見せながら、ゆっくりに口に含んだ。
「や、やめ、やめるぜ、は、はったりは、よ、よすの、ぜ!」
そしてまりさに見えるように、わざとらしく租借する。
適度にペーストになったら、俺はゆっくりゆっくりまりさに顔を近づける。
「やめろ! やめるのぜ! そ、それいじょう ちかづいたら せ、せい、せいっさいなのぜぇぇぇぇええ!!」
『制裁はこっちの台詞だ、ドススパーク!!』
「ゆひっぃぃぃぃいい!?!!?!?」
口の中のキノコを、まりさに向けて噴出した。
一瞬フリーズしたまりさは次の瞬間。
「い、い、いたいいたいいたい!!! いたいのぜえぇぇぇえ! あ、あつい、あついのぜぇぇぇええええ!!」
と、叫んで転げまわり始めた。
運よく口には入らなかったのか、皮膚についただけのようだ。
必死にキノコを落とそうと地面を転がるが、上手くいかないらしく、痛みに声をあげ続けていた。
『あっはははは、ドスに逆らうからこうなるんだよ! ゆっくり理解してね!』
「なんでぇぇっぇぇええ!!? なんでドスがにんげんなのぉぉおおぉおお!!!」
ゆっくりの口調を真似た俺に、まりさはもう本気でドスだと信じているらしい。
泣き転がりながら、喚いていた。
俺はその姿を横目に見ながら、去り際に言ってやった。
『ドスはね人間さん、いや人間様に作って貰ったんだよ! ゆっくりを騙してゆっくりを虐めると人間さまと同じにしてもらえて
毎日あまあま沢山食べられるんだよ! ドスはねゆっくりはゆっくりさせないために、人間様に作られたんだよ!』
誰が聞いても苦笑しそうなことに、まりさは……。
「う、うそなのぜぇぇぇぇぇえぇぇぇぇええ!!!」
と叫んでいた。
俺はクスクス笑いながら、家に帰った。
……。
…………。
それから数日にして、俺の記事が無事スペースに乗ることを確約してもらい一段落したある日。
『ん、なになに……』
戯れで買ったゆっくり情報誌に、こんな記事があった。
[ドスゆっくりが野生の群れで迫害されている!?]
というタイトルの記事で。
読み進めると、ゆっくりの守護者であり群れの長であるドスゆっくりたちが、群れのゆっくりから攻撃を受けて迫害されているという記事だった。
ゆっくりたちはドスを「ゆっくりできない」「うらぎりもの」「にんげんのどれい」などと言って嫌悪しているらしい。
この事件の原因は不明だが、範囲は徐々に拡大しているらしい。
『…………へぇ、妙なこともあるもんだなぁ』
数日前の自分がまりさに行ったこと、言ったことをすっかり忘れ。
俺はドスキノコを齧り、ゆっくりと過ごした。
…………。
それから数日にして、俺の記事が無事スペースに乗ることを確約してもらい一段落したある日。
『ん、なになに……』
戯れで買ったゆっくり情報誌に、こんな記事があった。
[ドスゆっくりが野生の群れで迫害されている!?]
というタイトルの記事で。
読み進めると、ゆっくりの守護者であり群れの長であるドスゆっくりたちが、群れのゆっくりから攻撃を受けて迫害されているという記事だった。
ゆっくりたちはドスを「ゆっくりできない」「うらぎりもの」「にんげんのどれい」などと言って嫌悪しているらしい。
この事件の原因は不明だが、範囲は徐々に拡大しているらしい。
『…………へぇ、妙なこともあるもんだなぁ』
数日前の自分がまりさに行ったこと、言ったことをすっかり忘れ。
俺はドスキノコを齧り、ゆっくりと過ごした。
「にんげんのてさきのドスはしんでね!」
「な、なんでそんなこというの!? ドスはみんなのドスでしょぉぉぉおおおお!!」
「な、なんでそんなこというの!? ドスはみんなのドスでしょぉぉぉおおおお!!」
ドスの叫びは森から森に伝播していった。