ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1859 めーりん ON BACKSTREET
最終更新:
ankoss
-
view
外が騒がしいので、部屋の窓を開けてみるとゆっくりが居た。
「やい!くずめーりん!さっさとそこからでていくんだぜ!」
「ここはれいむと、まりさのおうちだよ!くずのめーりんはどこかへいってね!」
俺の住んでるアパートの隣には、人通りの少ない裏通りがある。
故に最近では粗大ゴミを捨てて行く、不届きな奴らが居るのでゴミ通りになりつつあった。
当然アパートの住人はあまり良い顔をしてないが、俺を含めて積極的に片付けようともしなかった。
そればかりか大家に至っては、退去者が残していった粗大ごみをそこに捨てる始末。
そんなゴミ通りを住処に選んだゆっくりが、たまに現れたりするのだ。
「じゃおじゃおぉぉん!」
「やっぱりめーりんはくずなんだぜ!まりささまがみつけた、すてきなおうちに、かってにすみついているんだぜ!」
「どうやら、せいさいがひつようみたいだね!くずのめーりんは、くずらしくしんでね!!」
黒帽子と赤りぼんのゆっくりが、大声で騒ぎ立てる。
たしか、まりさとれいむとか言う奴だ。
それと対峙しているのは、緑色の帽子の奴、ちぇんとか言う奴だっただろうか?
古びたプラスチック製の衣装ケースの中から、二匹を威嚇している様だった。
「じゃおぉぉぉぉぉ!!」
「くずのめーりんのくせに、まりささまにはむかったことを、こうかいさせてやるんだぜぇぇぇ!!」
「れいむのつよさを、おもいしってねぇー!!」
どうやら縄張り争いか何かの様だ。
それにしても、五月蝿くて敵わない。
俺はマグカップにお湯を注ぐと、外で騒ぎ立てるゆっくりに浴びせてやった。
「ゆっくりし 『バシャァァァ』 ゆ?………ゆっぎゃぁぁぁぁぁぁ!あついんだぜぇぇぇぇ!!」
「まりさ?!どうしたのぉぉぉぉ?!」
「じゃ…お?」
お湯は見事にまりさに命中、さっき沸かしたばかりだからさぞかし熱いだろう。
まりさは両目を飛び出さんばかりに見開き、お湯か涙か判らない物を飛び散らせながら転げ回った。
「あついぃぃぃぃ!!どぼじでまりさが、こんなめにぃぃぃぃぃ?!」
「くずめーりん!まりさになにをしたのぉぉぉ?!」
「じゃ、じゃおぉ?!」
れいむは何を勘違いしたのか、緑帽子のゆっくりに罵声を浴びせる。
どうやら、俺の存在に気がついてない様なので、俺はもう一杯のお湯をれいむに浴びせてやった。
「ゆっばじゃぁぁぁ?!…ゆっぎゃぁぁぁぁぁ!あづいぃぃぃぃ!!なんなのごれはぁぁぁぁ?!」
熱湯を浴びて跳ね回るれいむ。
絶叫しながら動き回っているので、周りが見えてないらしく、もがき苦しんでいたまりさの底部を踏み潰した。
「ゆげべぇ!…で、でいぶ…なにずるんだぜ…ぎぎ…」
「あづいよぉぉぉぉ!!だれかでいぶをだずげろぉぉぉぉ!!」
駆除するつもりでお湯を浴びせたのだが、体がでかい事が幸いしたのか、騒ぐだけで未だに死にそうにはない。
このままでは、余計に五月蝿いだけなので何とかしようと考えていると、ある事を思い出した。
ゆっくりという奴は苦い物と辛い物が苦手だという事に。
俺は早速濃い目のブラックコーヒーを作り、大騒ぎしている二匹にそれを浴びせた。
「ゆげっべぇぇぇぇ?!にがあつぅぅぅぅ?!ゆげろぉぉぉぉぉぉ!!」
「ゆぎゃぁぁぁぁ!!げろあつぅぅぅ?!エレエレエレエレ……」
熱湯とブラックコーヒーの死のハーモニーに、大量の餡を吐いて沈黙する二匹。
それを呆然と見つめていた緑帽子のゆっくりが、ふと俺の方を見上げる。
「じゃお?」
俺と目が合うと、首を傾げる様な仕草をしてしばし固まる。
俺はこいつにもコーヒーを浴びせてやろうかと思ったが、ポットのお湯が切れてしまった。
仕方ないので何か無いかと探していると、面白半分に買ってきて食べ切れなかった激辛スナックの袋が目に入る。
それの中身を2、3個取り出すと、緑帽子ゆっくりの目の前にそれを放った。
「じゃおぉ?」
緑帽子はスナック菓子を警戒しているのか、しばらく様子を伺っていたが、菓子を一舐めするとそれを食べ始めた。
ゆっくりは辛い物が苦手という話を聞いて居たのだが、こいつは美味しそうに放った分を完食してしまった。
「じゃおん!」
食べ終わると、お礼のつもりか、笑顔で俺に頭を下げるような仕草をした。
駆除するつもりでやったのだが、そんな態度に少し腹がたったので、残った菓子を全部ばら撒いてみた。
緑帽子は目をまん丸にして驚いたようで、何度も頭を下げると、撒かれた菓子を丁寧に拾い集めてプラケースの巣に運んでいった。
「じゃおぉん!」
スナック菓子を回収し終えた緑帽子は一声鳴くと、俺に再度頭を下げて巣の中に入っていった。
「それは、めーりん種だな。希少種のはずなんだが、そんな所に居るって野良って事か?」
昨日見たゆっくりの事を友人に説明した所、珍しそうにそう語った。
友人の話ではめーりん種は「じゃお」としか喋れず、辛い物も平気で食べるそうだ。
そして他種から苛められやすいゆっくりらしい、道理で昨日二匹に絡まれていた訳だ。
捕まえてゆっくりショップに売りに行こうかと考えたが、俺を見るなりニッコリ笑って「じゃお!」っと頭を下げた。
そんな仕草を見て、あげる気なんかまったく無かったはずの、コンビニで買った唐揚げの一つを与えてしまった。
めーりんは驚いた表情で俺を見て、何度もお礼を言うように頭を下げた。
野良ゆっくりの殆どが、ペットが捨てられた物だ。
たまに、調子に乗ったアホが町にやってくる事もあるそうなのだが、殆どは飽きられたか、ゲス化して捨てられ野良になる。
これだけ善良そうなのに、どうして野良生活をしているのだろうか?
俺が不思議そうにめーりんを眺めていると、めーりんが同じように首をかしげる仕草をしていた。
それからしばらくの間、俺はめーりんの行動を観察するようになった。
俺が家に居る時は、大抵巣に使用しているプラスチックケースの中で昼寝をしているようだった。
たまに、何か食料をもって帰ってくる事があるが、どこでそれを調達しているのかは解らない。
ただ、どうも生ゴミを漁っているというよりは、どこかの飲食店の残り物をビニール袋に詰めて貰ってきたような感じであった。
俺も時折、窓からスナック菓子を与えたりしてやったが、めーりんはその度に頭を下げて「じゃおん!」っと嬉しそうに声をあげた。
野良ゆっくりに餌を与えるのはマナー違反なのかもしれないが、めーりんを見ていると、なんだかついつい餌をあげてしまっていた。
野良猫等に餌付けしている人達も、こんな心境なのだろうか?
それからも、俺は飽きもせずにめーりんの様子を見ていた。
特に騒ぎもせずに、暇さえあればのんびり昼寝をしているめーりん。
割と賢くて綺麗好きなのか、巣の周りはわりと綺麗に片付けている。
時々、他の野良ゆっくりに苛められて居る所を見た事があるが、俺が助けてやると、嬉しそうに何度も頭を下げていた。
めーりんが幸せそうにしているだけで、俺もなんだが幸せな気分になっていく。
ゆっくりに癒し効果があるとは思っても居なかったが、
それまで、ゆっくりに特に興味が無かった俺だったが、めーりんを観察しているうちに、こいつなら飼っても良いと思うようになっていた。
だが、俺の住むアパートはボロな上にペットは禁止。
その内どこかに引っ越そうかとも考えたが、俺のあるバイトの給料ではそれも難しかった。
「じゃお、じゃお、じゃおおん!」
その日は珍しくめーりんが鳴いていた。
気になって窓を開けてみると、めーりんの巣の前に一人の少女が居た。
めーりんは少し怯えている様子で、俺は思わずめーりんに声をかけた。
「めーりん、大丈夫か?!」
「じゃ、じゃおぉぉん!!」
めーりんは俺に気がつくと、大きな声で返事をした。
少女も俺のほうに向き直ると、俺の顔を見て微笑んだ。
「こんにちは、おにいさん。このめーりんは、あなたのめーりんですか?」
「いや、飼ってるわけじゃないよ。まあ、その…隣人ってとこだな」
俺と少女のやり取りを不安そうに見つめるめーりん。
見た所、少女に何かされた訳でもなさそうだが、少しオドオドしているのが気になる。
「どうした、めーりん?この子に何かされたのか?」
「じゃ、じゃおおん」
俺の問いに慌てて顔を左右に振るめーりん。
少女も、何もしてませんよと俺に言う。
少女の話では、町でめーりんを見かけたので後を着けてきたのだそうだ。
「のらのめーりんは、めずらしかったので…」
めーりんは見知らぬ人間を見て、怯えていたのだろうか?
そんな事を考えていると、少女がめーりんの頭を優しく撫でた。
めーりんは気持ちよさそうに目を細めた。
そんなめーりんの様子に、少女も嬉しそうに微笑んだ。
少女が帰り際に、バッチの申請をした方が良いのでは?と俺に提案してきた。
バッチが着いていれば、ゆっくりの一斉駆除でめーりんが捕まっても、即潰されたり加工所送りにされたりする事は無いそうだ。
最低ランクの銅バッチでも、捕獲されるとまず飼い主に連絡が入るそうだ。
確かに、めーりんをこのままにして置いたら、その内駆除されてしまうかもしれない。
俺は本気で引越しを考え始めていた。
引越し先を色々探してみたが、やはり良い物件は見当たらなかった。
本格的に転職でもして、住居を変えようかと考えていると、公園の方からゆっくりの悲鳴が聞えてきた。
「ゆべら!…いだいぃぃぃぃぃ!!どぼじでごんなごどずるのぉぉぉぉぉ?!」
「ゲスにんげんは、まりささまがせいさいして…ゆっぎゃぁぁぁぁ!いだいぃぃぃ!やべろぉぉぉぉ!!」
「やめてぇぇぇ!!こんなのとかいっばぁ?!」
「おかーしゃん!ゆびぇぇぇぇぇぇん!!」
公園内では、制服を着た人間によるゆっくりの一斉駆除が行われていた。
親を潰されて、泣き叫ぶ赤ゆっくりや子ゆっくり。
人間に向かっていって、返り討ちにあうゆっくり。
逃回っている所を踏みつけられるゆっくり。
必死に命乞いをして潰されるゆっくり。
正に公園はこの世のゆっくり地獄と化していた。
そんな中で一匹のゆっくりと目があった。
駆除から逃れようと、公園のフェンスまでやって来たゆっくりの様だ。
薄汚れた、れいむ種と、傍らにはその子供と思われる、小さなまりさがいた。
「ゆひぃ!に、にんげんさん!!」
「ゆびぇぇぇ!こわいのじぇぇぇぇ!!」
俺の姿を見て怯えるれいむ。
それに反応するかのように、泣き叫ぶ子まりさ。
だが、親れいむは俺に向かって話しかけてきた。
「おねがいです、にんげんさん。れいむはどうなってもいいから、おちびちゃんだけは、たすけてください!!」
そう言われて、俺はあらためて子まりさに目をやる。
子まりさは俺と目が合うと、慌てて親れいむの陰に隠れる。
「このままだと、れいむたちはころされちゃうんですぅぅぅ!!だから、せめておちびちゃんだけでもぉぉぉぉ!!」
「そういわれてもな…」
正にその言葉通りだった。
こいつらは善良そうな種でも、めーりんを苛めたりする者もいる。
だが助けを求められて、拒むのも気が引けると思ってしまった。
以前なら、ゆっくりに対してこんな事は考えもしなかっただろう。
しかし、俺の言葉を聴いた子まりさが、俺に向かって罵声を浴びせた。
「なにしてるのじぇ?!はやくまりちゃをたすけるのじぇ!!このくじゅにんげん!!」
「おちびちゃん!どぼしてそんなこというのぉぉぉぉ?!」
親れいむは、慌てて子まりさを叱るが、子まりさは悪びれる様子はなかった。
「くじゅはくじゅなのじぇ!まりちゃをゆっくちさせないやつは、みんなくじゅなのじぇ!!」
助けて貰おうという立場のはずなのに、俺をクズ呼ばわりする子まりさ。
そんな子まりさの態度に少し呆れてしまったが、ふと、大変な事に気がついた。
駆除は公園だけなのか?
もしかしたら………
「すみません、職員の方!ここに逃げ出そうとしてるゆっくりが居ますよ!!」
「あーどうも、ったく、糞ゆっくりが…」
「「どぼじでぇぇぇぇぇ?!」」
俺は子まりさが少々気に入らなかったので、ちょっと意地悪をしてその場を去る事にした。
親子ゆっくりの悲鳴を後ろで聞きながら、慌てて家に向かった。
アパートの裏のガラクタ通りに足を踏み入れ、めーりんの巣に向かう。
普段は窓から見ているだけだったので、こんなにガラクタが散乱しているとは思わなかった。
TVだのエアコンだのをここに捨てに来る神経も分からないが、そんな事を気にしている場合じゃない。
ようやく、見慣れたプラスチックケースを見つけたが、めーりんの姿はどこにも無かった。
あれから、めーりんは戻ってくる事は無かった。
外が騒がしいと思って覗いてみれば、別のゆっくりがめーりんの巣に住着こうとしているくらいだった。
俺はそんなゆっくりを駆除しながら、めーりんの帰りをひたすら待った。
捕まって駆除されてしまったのではないかとも思った。
それでも、どこかで生きているのではないかという思いは捨て切れなかった。
そして、めーりんが居なくなって数日たったある日の事。
バイトから帰って来てしばらくすると、外から聞き覚えのある鳴き声が聞えてきた。
「じゃお、じゃお、じゃおぉぉん!」
俺は慌てて窓を開けると、そこには以前ここで出会った少女に抱かれためーりんが居た。
「じゃおん!」
「おにいさん、こんにちは」
俺を見て微笑むめーりんと少女。
俺は家を出てめーりんと少女の下へ向かった。
少女の話によれば、一斉駆除があった日にたまたま町でめーりんを見かけたので、慌てて保護したとの事だった。
そしてそのままの流れで、めーりんは飼いゆっくりになったそうだ。
じゃおっと得意そうにめーりんは俺にバッチを見せてくれた。
めーりんの帽子には胴色のバッチが輝いていた。
俺としては、少し残念で寂しい気もしたが、これがめーりんにとっては一番良かったのかもしれない。
そんな事を考えていると、めーりんが器用に帽子を脱ぎだした。
そして帽子の中から虹色に光るプラスチックの宝石の様な物を取り出した。
「じゃおじゃお、じゃーお」
「いままで、おせわになった、おれいにどうぞっていってます」
少女がめーりんの通訳をしている。
どうしてめーりんの喋っている事が解るのかは知らないが、俺はそれを受け取った。
「貰っていいのか?」
「じゃおじゃーお、じゃおおん」
「めーりんのたからものだっていってます。おにいさんに、もらってほしいそうです」
「そっか、めーりんありがとうな」
「じゃおん」
めーりんは照れながら一声鳴いた。
あれから、あのめーりんとは一度も会ってない。
あの後俺は仕事も変えて引越して、今では一匹のめーりんと暮らしている。
後から解った話だが、めーりんが俺にくれた物はペットショップ等で売られているゆっくりグッツの一つのようだ。
めーりん種が好むおもちゃらしい。
あのめーりんはどこであれを手に入れたのかは解らない。
もしかしたら、元飼いゆっくりだったのかもしれないが、今となっては詳しい事は解らない。
ただ、あのめーりんが幸せであるならそれで良いだろう。
少女だと思っていた子も、どうやら胴付きゆっくりだったようだ。
あの時は気にもしていなかったが、ペットショップで似たような子を見つけたときは驚いた。
俺ももう少しよく彼女を見ていれば、背中から生えていた変わった形の羽に気が付いていたのだと思う。
「じゃお?」
俺の隣に居るめーりんが、不思議そうに俺を眺める。
「何でもないよ、めーりん。ちょっと昔を思い出していただけだよ」
「じゃおん!」
めーりんは一声鳴くと、あの不思議な虹色のおもちゃを眺めたり転がしたりして遊び始めた。
めーりんはあのめーりんと同じ様に、のんびりゆっくりしていた。
完
徒然あき
「やい!くずめーりん!さっさとそこからでていくんだぜ!」
「ここはれいむと、まりさのおうちだよ!くずのめーりんはどこかへいってね!」
俺の住んでるアパートの隣には、人通りの少ない裏通りがある。
故に最近では粗大ゴミを捨てて行く、不届きな奴らが居るのでゴミ通りになりつつあった。
当然アパートの住人はあまり良い顔をしてないが、俺を含めて積極的に片付けようともしなかった。
そればかりか大家に至っては、退去者が残していった粗大ごみをそこに捨てる始末。
そんなゴミ通りを住処に選んだゆっくりが、たまに現れたりするのだ。
「じゃおじゃおぉぉん!」
「やっぱりめーりんはくずなんだぜ!まりささまがみつけた、すてきなおうちに、かってにすみついているんだぜ!」
「どうやら、せいさいがひつようみたいだね!くずのめーりんは、くずらしくしんでね!!」
黒帽子と赤りぼんのゆっくりが、大声で騒ぎ立てる。
たしか、まりさとれいむとか言う奴だ。
それと対峙しているのは、緑色の帽子の奴、ちぇんとか言う奴だっただろうか?
古びたプラスチック製の衣装ケースの中から、二匹を威嚇している様だった。
「じゃおぉぉぉぉぉ!!」
「くずのめーりんのくせに、まりささまにはむかったことを、こうかいさせてやるんだぜぇぇぇ!!」
「れいむのつよさを、おもいしってねぇー!!」
どうやら縄張り争いか何かの様だ。
それにしても、五月蝿くて敵わない。
俺はマグカップにお湯を注ぐと、外で騒ぎ立てるゆっくりに浴びせてやった。
「ゆっくりし 『バシャァァァ』 ゆ?………ゆっぎゃぁぁぁぁぁぁ!あついんだぜぇぇぇぇ!!」
「まりさ?!どうしたのぉぉぉぉ?!」
「じゃ…お?」
お湯は見事にまりさに命中、さっき沸かしたばかりだからさぞかし熱いだろう。
まりさは両目を飛び出さんばかりに見開き、お湯か涙か判らない物を飛び散らせながら転げ回った。
「あついぃぃぃぃ!!どぼじでまりさが、こんなめにぃぃぃぃぃ?!」
「くずめーりん!まりさになにをしたのぉぉぉ?!」
「じゃ、じゃおぉ?!」
れいむは何を勘違いしたのか、緑帽子のゆっくりに罵声を浴びせる。
どうやら、俺の存在に気がついてない様なので、俺はもう一杯のお湯をれいむに浴びせてやった。
「ゆっばじゃぁぁぁ?!…ゆっぎゃぁぁぁぁぁ!あづいぃぃぃぃ!!なんなのごれはぁぁぁぁ?!」
熱湯を浴びて跳ね回るれいむ。
絶叫しながら動き回っているので、周りが見えてないらしく、もがき苦しんでいたまりさの底部を踏み潰した。
「ゆげべぇ!…で、でいぶ…なにずるんだぜ…ぎぎ…」
「あづいよぉぉぉぉ!!だれかでいぶをだずげろぉぉぉぉ!!」
駆除するつもりでお湯を浴びせたのだが、体がでかい事が幸いしたのか、騒ぐだけで未だに死にそうにはない。
このままでは、余計に五月蝿いだけなので何とかしようと考えていると、ある事を思い出した。
ゆっくりという奴は苦い物と辛い物が苦手だという事に。
俺は早速濃い目のブラックコーヒーを作り、大騒ぎしている二匹にそれを浴びせた。
「ゆげっべぇぇぇぇ?!にがあつぅぅぅぅ?!ゆげろぉぉぉぉぉぉ!!」
「ゆぎゃぁぁぁぁ!!げろあつぅぅぅ?!エレエレエレエレ……」
熱湯とブラックコーヒーの死のハーモニーに、大量の餡を吐いて沈黙する二匹。
それを呆然と見つめていた緑帽子のゆっくりが、ふと俺の方を見上げる。
「じゃお?」
俺と目が合うと、首を傾げる様な仕草をしてしばし固まる。
俺はこいつにもコーヒーを浴びせてやろうかと思ったが、ポットのお湯が切れてしまった。
仕方ないので何か無いかと探していると、面白半分に買ってきて食べ切れなかった激辛スナックの袋が目に入る。
それの中身を2、3個取り出すと、緑帽子ゆっくりの目の前にそれを放った。
「じゃおぉ?」
緑帽子はスナック菓子を警戒しているのか、しばらく様子を伺っていたが、菓子を一舐めするとそれを食べ始めた。
ゆっくりは辛い物が苦手という話を聞いて居たのだが、こいつは美味しそうに放った分を完食してしまった。
「じゃおん!」
食べ終わると、お礼のつもりか、笑顔で俺に頭を下げるような仕草をした。
駆除するつもりでやったのだが、そんな態度に少し腹がたったので、残った菓子を全部ばら撒いてみた。
緑帽子は目をまん丸にして驚いたようで、何度も頭を下げると、撒かれた菓子を丁寧に拾い集めてプラケースの巣に運んでいった。
「じゃおぉん!」
スナック菓子を回収し終えた緑帽子は一声鳴くと、俺に再度頭を下げて巣の中に入っていった。
「それは、めーりん種だな。希少種のはずなんだが、そんな所に居るって野良って事か?」
昨日見たゆっくりの事を友人に説明した所、珍しそうにそう語った。
友人の話ではめーりん種は「じゃお」としか喋れず、辛い物も平気で食べるそうだ。
そして他種から苛められやすいゆっくりらしい、道理で昨日二匹に絡まれていた訳だ。
捕まえてゆっくりショップに売りに行こうかと考えたが、俺を見るなりニッコリ笑って「じゃお!」っと頭を下げた。
そんな仕草を見て、あげる気なんかまったく無かったはずの、コンビニで買った唐揚げの一つを与えてしまった。
めーりんは驚いた表情で俺を見て、何度もお礼を言うように頭を下げた。
野良ゆっくりの殆どが、ペットが捨てられた物だ。
たまに、調子に乗ったアホが町にやってくる事もあるそうなのだが、殆どは飽きられたか、ゲス化して捨てられ野良になる。
これだけ善良そうなのに、どうして野良生活をしているのだろうか?
俺が不思議そうにめーりんを眺めていると、めーりんが同じように首をかしげる仕草をしていた。
それからしばらくの間、俺はめーりんの行動を観察するようになった。
俺が家に居る時は、大抵巣に使用しているプラスチックケースの中で昼寝をしているようだった。
たまに、何か食料をもって帰ってくる事があるが、どこでそれを調達しているのかは解らない。
ただ、どうも生ゴミを漁っているというよりは、どこかの飲食店の残り物をビニール袋に詰めて貰ってきたような感じであった。
俺も時折、窓からスナック菓子を与えたりしてやったが、めーりんはその度に頭を下げて「じゃおん!」っと嬉しそうに声をあげた。
野良ゆっくりに餌を与えるのはマナー違反なのかもしれないが、めーりんを見ていると、なんだかついつい餌をあげてしまっていた。
野良猫等に餌付けしている人達も、こんな心境なのだろうか?
それからも、俺は飽きもせずにめーりんの様子を見ていた。
特に騒ぎもせずに、暇さえあればのんびり昼寝をしているめーりん。
割と賢くて綺麗好きなのか、巣の周りはわりと綺麗に片付けている。
時々、他の野良ゆっくりに苛められて居る所を見た事があるが、俺が助けてやると、嬉しそうに何度も頭を下げていた。
めーりんが幸せそうにしているだけで、俺もなんだが幸せな気分になっていく。
ゆっくりに癒し効果があるとは思っても居なかったが、
それまで、ゆっくりに特に興味が無かった俺だったが、めーりんを観察しているうちに、こいつなら飼っても良いと思うようになっていた。
だが、俺の住むアパートはボロな上にペットは禁止。
その内どこかに引っ越そうかとも考えたが、俺のあるバイトの給料ではそれも難しかった。
「じゃお、じゃお、じゃおおん!」
その日は珍しくめーりんが鳴いていた。
気になって窓を開けてみると、めーりんの巣の前に一人の少女が居た。
めーりんは少し怯えている様子で、俺は思わずめーりんに声をかけた。
「めーりん、大丈夫か?!」
「じゃ、じゃおぉぉん!!」
めーりんは俺に気がつくと、大きな声で返事をした。
少女も俺のほうに向き直ると、俺の顔を見て微笑んだ。
「こんにちは、おにいさん。このめーりんは、あなたのめーりんですか?」
「いや、飼ってるわけじゃないよ。まあ、その…隣人ってとこだな」
俺と少女のやり取りを不安そうに見つめるめーりん。
見た所、少女に何かされた訳でもなさそうだが、少しオドオドしているのが気になる。
「どうした、めーりん?この子に何かされたのか?」
「じゃ、じゃおおん」
俺の問いに慌てて顔を左右に振るめーりん。
少女も、何もしてませんよと俺に言う。
少女の話では、町でめーりんを見かけたので後を着けてきたのだそうだ。
「のらのめーりんは、めずらしかったので…」
めーりんは見知らぬ人間を見て、怯えていたのだろうか?
そんな事を考えていると、少女がめーりんの頭を優しく撫でた。
めーりんは気持ちよさそうに目を細めた。
そんなめーりんの様子に、少女も嬉しそうに微笑んだ。
少女が帰り際に、バッチの申請をした方が良いのでは?と俺に提案してきた。
バッチが着いていれば、ゆっくりの一斉駆除でめーりんが捕まっても、即潰されたり加工所送りにされたりする事は無いそうだ。
最低ランクの銅バッチでも、捕獲されるとまず飼い主に連絡が入るそうだ。
確かに、めーりんをこのままにして置いたら、その内駆除されてしまうかもしれない。
俺は本気で引越しを考え始めていた。
引越し先を色々探してみたが、やはり良い物件は見当たらなかった。
本格的に転職でもして、住居を変えようかと考えていると、公園の方からゆっくりの悲鳴が聞えてきた。
「ゆべら!…いだいぃぃぃぃぃ!!どぼじでごんなごどずるのぉぉぉぉぉ?!」
「ゲスにんげんは、まりささまがせいさいして…ゆっぎゃぁぁぁぁ!いだいぃぃぃ!やべろぉぉぉぉ!!」
「やめてぇぇぇ!!こんなのとかいっばぁ?!」
「おかーしゃん!ゆびぇぇぇぇぇぇん!!」
公園内では、制服を着た人間によるゆっくりの一斉駆除が行われていた。
親を潰されて、泣き叫ぶ赤ゆっくりや子ゆっくり。
人間に向かっていって、返り討ちにあうゆっくり。
逃回っている所を踏みつけられるゆっくり。
必死に命乞いをして潰されるゆっくり。
正に公園はこの世のゆっくり地獄と化していた。
そんな中で一匹のゆっくりと目があった。
駆除から逃れようと、公園のフェンスまでやって来たゆっくりの様だ。
薄汚れた、れいむ種と、傍らにはその子供と思われる、小さなまりさがいた。
「ゆひぃ!に、にんげんさん!!」
「ゆびぇぇぇ!こわいのじぇぇぇぇ!!」
俺の姿を見て怯えるれいむ。
それに反応するかのように、泣き叫ぶ子まりさ。
だが、親れいむは俺に向かって話しかけてきた。
「おねがいです、にんげんさん。れいむはどうなってもいいから、おちびちゃんだけは、たすけてください!!」
そう言われて、俺はあらためて子まりさに目をやる。
子まりさは俺と目が合うと、慌てて親れいむの陰に隠れる。
「このままだと、れいむたちはころされちゃうんですぅぅぅ!!だから、せめておちびちゃんだけでもぉぉぉぉ!!」
「そういわれてもな…」
正にその言葉通りだった。
こいつらは善良そうな種でも、めーりんを苛めたりする者もいる。
だが助けを求められて、拒むのも気が引けると思ってしまった。
以前なら、ゆっくりに対してこんな事は考えもしなかっただろう。
しかし、俺の言葉を聴いた子まりさが、俺に向かって罵声を浴びせた。
「なにしてるのじぇ?!はやくまりちゃをたすけるのじぇ!!このくじゅにんげん!!」
「おちびちゃん!どぼしてそんなこというのぉぉぉぉ?!」
親れいむは、慌てて子まりさを叱るが、子まりさは悪びれる様子はなかった。
「くじゅはくじゅなのじぇ!まりちゃをゆっくちさせないやつは、みんなくじゅなのじぇ!!」
助けて貰おうという立場のはずなのに、俺をクズ呼ばわりする子まりさ。
そんな子まりさの態度に少し呆れてしまったが、ふと、大変な事に気がついた。
駆除は公園だけなのか?
もしかしたら………
「すみません、職員の方!ここに逃げ出そうとしてるゆっくりが居ますよ!!」
「あーどうも、ったく、糞ゆっくりが…」
「「どぼじでぇぇぇぇぇ?!」」
俺は子まりさが少々気に入らなかったので、ちょっと意地悪をしてその場を去る事にした。
親子ゆっくりの悲鳴を後ろで聞きながら、慌てて家に向かった。
アパートの裏のガラクタ通りに足を踏み入れ、めーりんの巣に向かう。
普段は窓から見ているだけだったので、こんなにガラクタが散乱しているとは思わなかった。
TVだのエアコンだのをここに捨てに来る神経も分からないが、そんな事を気にしている場合じゃない。
ようやく、見慣れたプラスチックケースを見つけたが、めーりんの姿はどこにも無かった。
あれから、めーりんは戻ってくる事は無かった。
外が騒がしいと思って覗いてみれば、別のゆっくりがめーりんの巣に住着こうとしているくらいだった。
俺はそんなゆっくりを駆除しながら、めーりんの帰りをひたすら待った。
捕まって駆除されてしまったのではないかとも思った。
それでも、どこかで生きているのではないかという思いは捨て切れなかった。
そして、めーりんが居なくなって数日たったある日の事。
バイトから帰って来てしばらくすると、外から聞き覚えのある鳴き声が聞えてきた。
「じゃお、じゃお、じゃおぉぉん!」
俺は慌てて窓を開けると、そこには以前ここで出会った少女に抱かれためーりんが居た。
「じゃおん!」
「おにいさん、こんにちは」
俺を見て微笑むめーりんと少女。
俺は家を出てめーりんと少女の下へ向かった。
少女の話によれば、一斉駆除があった日にたまたま町でめーりんを見かけたので、慌てて保護したとの事だった。
そしてそのままの流れで、めーりんは飼いゆっくりになったそうだ。
じゃおっと得意そうにめーりんは俺にバッチを見せてくれた。
めーりんの帽子には胴色のバッチが輝いていた。
俺としては、少し残念で寂しい気もしたが、これがめーりんにとっては一番良かったのかもしれない。
そんな事を考えていると、めーりんが器用に帽子を脱ぎだした。
そして帽子の中から虹色に光るプラスチックの宝石の様な物を取り出した。
「じゃおじゃお、じゃーお」
「いままで、おせわになった、おれいにどうぞっていってます」
少女がめーりんの通訳をしている。
どうしてめーりんの喋っている事が解るのかは知らないが、俺はそれを受け取った。
「貰っていいのか?」
「じゃおじゃーお、じゃおおん」
「めーりんのたからものだっていってます。おにいさんに、もらってほしいそうです」
「そっか、めーりんありがとうな」
「じゃおん」
めーりんは照れながら一声鳴いた。
あれから、あのめーりんとは一度も会ってない。
あの後俺は仕事も変えて引越して、今では一匹のめーりんと暮らしている。
後から解った話だが、めーりんが俺にくれた物はペットショップ等で売られているゆっくりグッツの一つのようだ。
めーりん種が好むおもちゃらしい。
あのめーりんはどこであれを手に入れたのかは解らない。
もしかしたら、元飼いゆっくりだったのかもしれないが、今となっては詳しい事は解らない。
ただ、あのめーりんが幸せであるならそれで良いだろう。
少女だと思っていた子も、どうやら胴付きゆっくりだったようだ。
あの時は気にもしていなかったが、ペットショップで似たような子を見つけたときは驚いた。
俺ももう少しよく彼女を見ていれば、背中から生えていた変わった形の羽に気が付いていたのだと思う。
「じゃお?」
俺の隣に居るめーりんが、不思議そうに俺を眺める。
「何でもないよ、めーりん。ちょっと昔を思い出していただけだよ」
「じゃおん!」
めーりんは一声鳴くと、あの不思議な虹色のおもちゃを眺めたり転がしたりして遊び始めた。
めーりんはあのめーりんと同じ様に、のんびりゆっくりしていた。
完
徒然あき