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死にたい奴この指とまれ:第10話

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匿名ユーザー

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「『よだかの星』という話をご存知ですか?」

「聞いたことあるような…」

「宮沢賢治です。醜い姿をバカにされ続けた夜鷹は最後、星になるのです。天高く舞い上がって、

そのまま大気圏を突き抜けて燃え盛って、星になります」

「ようは、自殺したってことか」

「私が開発した夜鷹自殺は少し違います。天高く舞い上がった後、流星になります」

「でも、一瞬で終わったら、誰も見ないうちに消えちゃったりして」

「その心配はありません。完璧な演出で、多くの人に目撃されるよう、仕組んであります」

「シミュレーションが未完成です。体験の部分がどうしても作り切れてません…。

要するにぶっつけ本番になりますが、よろしいですか?」

「もう、おじいさんに全て任せたよ」

「ありがとうございます。どのように見えるかだけ、シミュレーションできます」

スクリーンには群青の夜空。その中をまっすぐに昇って行く光の玉が見える。

山の影も超えて、ゆっくりと昇ってゆく。

光の玉が「パッ」と消えた。その刹那、斜め下方へ零れ落ちるように光の筋が走った。

「綺麗だ…」

一郎は恍惚とした表情でその様を見送った。

「皆、呆然と夜空を見上げるでしょう。あなたは光の玉となって昇ってゆきます。最後はひと筋のほうき星になって消える。

一瞬の美しさに全てをかけました」

「東京からは、見えるの?」

「大丈夫です。半径500キロ以内なら十分に見えます。東京の方角へ流れ落ちるよう、設定もできます」

「そっか…。じゃあ、そうしよう。流れ星になるよ」

「ぶっつけ本番なのが心苦しい。計算上は100%成功していますので、ご安心ください」

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