第41回 この物語を君に託す

ここに村名
↑村が建ったらここへ

GMに指示を出し、そのRPを楽しむ軽RP村です。
主にリアルが多忙な人に向けた村です。

村建て:2022年2月15日村建て、終了まで最長7日程 更新:22時

この村の参加者は予め決定されています&参加者は担当GMとの共有IDを作成いただきます。


PL:gozaさん、kintotoさん、てばさん、あずぶぅさん
GM:TSO SGM:rein-joir
見物:くらげさん、きるしゅさん

■日程について
プロローグ:2022年2月15日(火)昼頃
1d:2022年2月17日(木)22時開始
2d:2022年2月18日(金)22時開始
3d:2022年2月19日(土)22時開始
クライマックス:2022年2月20日(日)22時開始

■更新について
  • 48h更新コミット進行、基本24hで更新します。
  • 更新と同時に全員コミットし、何事もなければTCが翌日21時半にコミットし、22時更新とします。
Q:なんでわざわざそんなことを
A: 保 険 で す
単純計算でGM側は1日MAX9シーン書くことになるので、事故も起こるかもしれません。そういうときのための受け身に、バッファをいただきます。
共通IDなので「更新とともにコミットする」のはGM陣営ができるので、PLのみなさまは立ち合い不要です。

イントロダクション

20XX年、日本。

「月が姿を隠す夜、月の子を頂きにまいります」
怪盗から警察に届いた書簡。
それは、犯罪予告だった。

"キャロ・ディ・ルナ"と呼ばれるアンティークドールがある。
持ち主を不幸にするという曰く付きの、いわゆる"呪いの"人形だ。
新月の夜にひとりでに動き出すと言われている。

今まで何度も怪盗に煮え湯を飲まされてきた担当警部は
かの怪盗の狙いが"キャロ・ディ・ルナ"にあると判断し
現状の持ち主に、"キャロ・ディ・ルナ"を厳重警備する旨を伝えた。


オーダーコピペ


■オーダー①/②/③
■行動:
(PC①にちょっかいをかけてみる、など)
■場所:
(警察署/怪盗のアジト/大通り/落ち着いたカフェ/路地裏/NPC①②の屋敷/お任せ からチョイス)
■リクエスト:
(明るいシーンがいい、暗いシーンがいい、ちょっと色っぽいシーンがいい、話題に〇〇を出してほしい、アクションがいい、など。リクエストが無くてもいい)

自分でシーンを書きたい場合

  • オーダー数を1消費することで、自PCのシーンを書くことができます。
  • 気が向いたら遠慮せずにどんどんどうぞ!

感情と絆について

  • "感情"と"絆"は宣言すれば取得できます。成否判定の必要はありません。
  • 得た"絆"はクライマックスで使用すれば最終値に「+1」の補正がつくボーナスアイテムとして使用できます。

秘密開示について

  • オーダーをひとつ消費し、「〇〇(任意の誰か)の秘密を要求」と宣言すると、開示されます。自動成功であり、成否判定/対抗判定の必要はありません。
  • 秘密開示要求ができるのは2d以降の任意のタイミングです。
  • NPC②の秘密は、NPC①の秘密が開示されるまでロックされます。

クライマックスについて

  • 通常のTRPG村どおり、SixDice+補正値対決です。
  • 判定は基本的に担当PLが行いますが、予め担当GM/SGMに委任することもできます。


ワールドガイド

■場所① 警察署

  • 怪盗対策本部、資料室、もしくは人けのいなくなった警部のデスク。
  • 現在、怪盗の予告状を受けて浮足立っています。

■場所② 怪盗のアジト

  • PC③怪盗が根城にしている秘密の場所です。
  • 基本的にPC③④しか場所をしらないはずですが、招かれればその他の人間も入ることができます。

■場所③ 大通り

  • 大勢の人が行き交う駅前大通りです。買い物や聞き込みをするならここ。
  • 人目にはつきやすいですが、人が多すぎて全員が全員に無関心である為、かえって内緒話がしやすいかもしれません。

■場所④ 落ち着いたカフェ

  • PC①②が通っているカフェです。クラッシックで薄暗い、落ち着いた店内に、珈琲の香りが漂っています。
  • PC①②はよくここで相談や休憩をしています。

■場所⑤ 路地裏

  • 密談にうってつけの、ひとけのない路地裏です。
  • ごみが散らばっており、昼でも暗く黴臭く、来るものを暗鬱な気持ちにさせます。

■場所⑥ NPC①②の屋敷

  • NPC①②の住む屋敷です。大正時代に建てられたという西洋風の豪邸です。
  • 宝物庫には、"キャロ・ディ・ルナ"が安置されています。


キャラクターセレクト

PC① 警部 宮城 敦史 みやぎ あつし(担当PL あずぶぅさん)

キャラチップ:closure 落日
「省エネ型なもんでねェ。まだちょっと見物させてもらうわ」
「奴からの予告状? 鑑識に回せ。奴が狙うターゲットについて調べ上げろ。どんな小さな情報も残さず俺に集めろ!」
  • 男、42歳、176cm、66kg
  • 対怪盗担当の警部。怪盗とは、何度も検挙しようとして毎回すんでのところで逃げられている、因縁の仲。
  • 普段はぼーっとして見え、事件を謎解きとして楽しむ余裕を持つ。
  • しかし、難解な事件、特に『怪盗Jerry』絡みのことになると熱くなり、周囲が見えなくなることもある。
  • 署ではそこそこ功績をあげているが、あまり組織に従順ではなく、大きく出世するタイプではない。
  • 部下の叢雲 八重を信頼している。その裏返しとして、雑に仕事を振りがち。

能力【Boost&Fire】

  • 一瞬だけ音速を越えたスピードで動く。
  • そのスピードをパワーに乗せて攻撃する。

PC② 警部補佐 叢雲 八重 むらくも やえ(担当PL:てばさん)

キャラチップ:人狼署 刑事 荻原
「ああ、私はあの叢雲なんたら官の息女だ。それが何か?」
「まやかしや冗談のような話にこそ真実がある……こともある」
  • 女性、20代後半、170cm、62kg
  • 時々突っ走りすぎてしまう警部の面倒を見る警部補。
  • 常に冷静で、思考と直感の両方で物事に取り組む有能な女性だが、やや苦労性?
  • 表立って情熱的に振舞うことはしないが、怪盗検挙への意志は固い。
  • 父が警視庁幹部。旧家のお嬢様として育てられたが、本人は用意されたエリートコースを嫌い、現場で実力勝負をしている。
  • 喫煙家。
  • 仲はいいが性格が真逆の妹が一人いる。

能力【Mirroring Truth】

  • 鏡に写した虚像こそが対象の真実の写し絵となる。
  • 迷いを払う真実は自身や味方の潜在能力を引き出し、虚飾を剥いだみすぼらしい真実を見せつけられた敵は弱体化する。

PC③ 怪盗 『Jerry』(担当PL kintotoさん)

キャラチップ:宝石箱《Jewel Box》 金緑石 クロード
「ハァイ、オレの子猫(Tomcat)ちゃんたち♪ 今夜も遊ぼーぜぇ♪」
  • 男、22歳、177cm、54kg
  • 本名不明。『怪盗 Jerry』は通り名。
  • "キャロ・ディ・ルナ"というアンティークドールを狙って予告状を出した愉快犯。
  • 怪盗の美学に殉じており、警部とのやりとりをどこか楽しんでいるところがある。
  • 脳筋気質だがパワーがあるわけではなく、天性のスピードと身体の柔軟さで相手の急所に一撃入れて勝負するタイプ。
  • 本来の性分は、やや怠け癖があるタイプ。
  • 『怪盗』家業にはストイックで、筋トレ&食事制限など、体作りは怠らない。
  • 朝が弱い。

能力【Twilight Rendez-vous】

  • 瞬きをひとつする間に相手との距離を詰め(縮地)、人体の急所(男なら7箇所、女なら6箇所)に同時に一撃を叩き込む。

PC④ 怪盗の相棒 高遠 夏兎 たかとうなつと(担当PL:gozaさん)

キャラチップ:StarGazer 高速度星 バーナード
「可愛い女の子と高速演算は、見てて幸せになるよなあ」
「エナドリばっか飲んでないで飯を食え? うるせぇ、母ちゃんか。糖分摂ったら眠くなって思考が鈍るんだよ」
  • 22歳、男、身長は高め、一人称は「俺」。HN(怪盗としての通り名)は、バーナード。
  • 怪盗とは腐れ縁の相棒。損得にうるさく、怪盗の分け前はきっちり巻き上げている。
  • 情報分野が得意で、いつも享楽的に振舞う怪盗を、サイバー方面からサポートする。
  • 好きなものは綺麗な女の子と最新ガジェット。
  • 体力がないのを気にしている。平和主義で、暴力は苦手。
  • 気合いを入れたいときや本気の時は、ゴーグルをつける。
  • 実家は宮城の米農家。仲が悪いわけではないが現在疎遠。

能力【A Midsummer Night's Dream】

  • あらゆる電子機器と情報網を駆使し、道を迷わせる。
  • そうして生み出された悪夢の如き人間の濁流が、局所的な満員ラッシュとなって相手を襲う。
  • もちろんすべては泡沫の夢。迷い子達が慌ただしく舞台を去った後、残されるのは揉みくちゃとなった相手のみである。


NPC

NPC① オーナー 宇賀神 宇竜 うがじん うりゅう(TSO)

キャラチップ:StarGazer 月輪 チャンドラ
「そんなことはどうでもいい。僕はただ、"キャロ・ディ・ルナ"を守ってくださいと申し上げているんです」
「呪いのアンティークドール? 呪いなんて、本気で信じておられるのですか?」
  • 15歳、159cm、男
  • 成功した古物商の息子
  • 控えめですが頑固な少年です。父親は現在病床にて意識不明、母親は精神を病んでおり、事実上、家を継いでいます。(※相続まわりのことは金で雇った弁護士に依頼していますが、シナリオには関係ありません)
  • 呪いのアンティークドール"キャロ・ディ・ルナ"の所持者です。"呪いのドール"を守るよう、警察に要請しています。
  • 必要以上に丁寧な口調で喋ります。

能力【As noble】

  • 自身を守る絶対不可侵な領域を作り出す。

NPC② オーナーの姉 宇賀神 菜絆 うがじん なずな(rein-joir)

キャラチップ:StarGazer 看護生 ミン
「あなたは…わたし達の味方になってくれる?」
  • NPC①の双子の姉で、おっとりした物腰柔らかな少女です。
  • 病弱な身であるため、家から出る事はないようです。
  • 若くして家督となった弟のことを案じています。

能力【Make you happy!】

  • 相手をぎゅっと抱きしめるだけ。
  • それだけなのに、何故こんなに幸せを感じるのか……諍うなんて、もう止めてしまおうという気になるのか。

サブNPC 呪いのアンティークドール キャロ・ディ・ルナ

キャラチップ:Mad Party 黒のオブジェ ドール
(宝物庫で静かに虚空を見つめている)
  • 身長60cmほどの、螺子巻き式の仕掛け人形です。
  • 古い人形ではありますが、その造りの精巧さや見る者を魅了する美しさで、破格の値段がついています。
  • 持ち主を不幸にすると言われています。

能力【能力名】

  • 能力説明

この物語を誰に託す 〜叢雲八重 前日談

■イントロダクション
+ ...
20XX年、日本。

怪盗『Jerry』と彼の検挙に燃える宮城警部の対決より数年前のこと。

都立聖倭女学院(せいわじょがくいん)高等部では、目撃した者を不幸に陥れる「血塗れのマリア」の噂が生徒の間で広がっていた。
噂が真実であると言わんばかりに学院内で事故・事件が発生。

「才女」「お姉さま」としてクラスメートに評判の八重の元にも噂や事件について相談が相次ぐ。
迷信など信じていない八重だが、煩わしい状況の解消と、自分の能力を示す機会との判断から、行動を開始する。

■ワールドガイド
+ ...

場所① 教室

  • 八重、あるいは事件の関係者のクラスの教室。
  • 近年新築された新校舎の教室で、充実した設備に、現代的かつ洗練された印象です。

場所② 学生寮

  • 中等部・高等部それぞれの生徒の学生寮。
  • 寮生には良家の子女も多いため相応に厳しいルールでの寮生活を送っていますが、全寮制ではないため朝から晩までガチガチというわけではありません。

場所③ 職員室

  • 高等部の職員室。
  • 七那月のデスクがあります。
  • 相次ぐ事故・事件への対応に追われるも、抜本的な解決に動けず教師の間でも動揺が広がりつつあります。

場所④ 生徒会執務室

  • 生徒会活動の中心となる部屋。
  • 教職員や風紀委員との連携、各部活動への働きかけ、生徒主体の相談窓口を設けるなどの動きは取っており、噂の終息を目的に動いているようです。

場所⑤ 教会

:ミッションスクールであるこの女学院では、この場所で神学の授業や祈りの時間が取られています。
  • シスターが数名常駐しており、黎人もその一人です。
  • 教会の礼拝堂の奥、中央に立って礼拝者を見下ろしているのが、「血濡れのマリア」の噂の大本になっているマリア像です。

場所⑥ 叢雲家

  • 叢雲八重の実家。
  • 両親(厳三、皐月)と妹の弥生が住んでいます。
  • 和洋折衷の、明治大正モダンな雰囲気を残す年季の入った邸宅です。
  • 八重は学生寮暮らしなので、親に呼び出されない限り(あるいは弥生と密会する場合以外)は近づきません。

■キャラクター
+ ...

PC① 女学生 叢雲 八重 むらくも やえ

キャラチップ 月狼学園 華道部 シノブ
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「ああ、私が叢雲八重だけど。私に何か?」
「まやかしや怪談のような噂話に意味があるとは思えないけど……それが困りごとになってるなら、仕方ないな」
  • 女性、18歳、167cm、55kg
  • ややくせ毛のカールヘア。
  • 中性的な雰囲気、口調。
  • いわゆる「お嬢様」タイプが苦手で、自分もそう見られないよう意識して振る舞う。
  • 文武両道、知性と直感の両刀使いの才女だが、人の期待を避けるように単独行動することが多い。
  • 一方で、自分の才能を示し、成果を上げることにはこだわりがある。
  • 苦味を効かせた紅茶が好み。ストレートで。
  • 鏡で自分の姿を見ながら自己を振り返り、集中力を高めたりする。

能力 【Mirroring Self】

  • 鏡に写した虚像に、自分の真実の姿を映す。
  • 真実を見つめることで自身の潜在能力を最大まで引き出し、全力攻撃で相手を制圧する。

PC② 実習生(許婚) 七那月 元 ななつき はじめ

キャラチップ 壱番高校 ナナツキ
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「僕は八重さんを応援します……けど、危ないことはダメですよ?」
「頼りになりませんか……? 大人らしさを見せびらかさないようにするのも逆に大人の度量かな、って思ってるんですけどね」
  • 男性、21歳、173cm、68kg
  • 丁寧な「です」「ます」口調。
  • 教育実習生として八重のクラスに赴任。
  • 担当教科は地理だが、多様な社会学系に明るい。
  • 異性に少々苦手意識があるが、八重とは平常心で接する。
  • 叢雲厳三が婿養子に迎えようとしている人物。幼いころから帝王学を叩き込まれたエリートだが、それを見せないようにしている。
  • 教員免許の取得は自らの希望によるもの。
  • 噂に対しては、実習生なりに自分にできることがないか考え、八重に協力したいと思っている。

能力 【Great Teacher's Operation】

  • 大人の指導者としての矜持を教示する。
  • 肉体言語と精神言語でHPとMPに継続ダメージを与える。

PC③ 生徒会長 神ヶ崎 阿稀 かんがさき あまれ

キャラチップ 学園Grand Cathedral 委員長 アマレット
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「学院を貶めるような噂が広がるのを許してはおけません」
「皆さん、私に力を」
  • 女性、18歳、165cm、XXkg(非公開)
  • 「ですわ」などのお嬢様口調。
  • 物静かで線の細そうな外見・第一印象の裏に、強い心の芯を持っている。
  • 学院を心の底から愛しており、「血濡れのマリア」のような噂が生徒たちの間に上ることを嘆いている。
  • 生徒会メンバーや教職員からの信頼は厚い。その信頼に応えることが自分の使命だと自任している。
  • 噂を終息させることが事件解決のためにできることを決めて、生徒会を上げて動いている。

能力 【Grand Order】

  • 大きな目的を達成するため、協力者の力を借りて巨大な力に転換し、相手を殲滅するためのフィールドを形成し、引きずり込む。

PC④ 見習いシスター 木根 黎人 きね れいと

キャラチップ 学園Cathedral シスター キネレト
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「神さまがいるならなんでこんな騒ぎが起きるんだろうね? 神さまはなにしてるのさ」
「ボクも『血塗れのマリア』なんて作り話だと思ってるよ。心配いらないって」
  • 女性、16歳、154cm、42kg
  • 学院の教会に勤めるシスターだが、同時に高等部にも所属して勉学。
  • 「ボク」っ子口調。やや実年齢より幼い雰囲気。
  • 斜に構えたところがあるが、実際は人懐っこい性格。生徒たちとは友達同士のように振る舞う。
  • 生徒会に積極的に協力して、噂に怯える生徒たちを励ましている。
  • シスターの職務には熱心でないところがあり、老シスター長とは折り合いが悪い。

能力 【Humpty Dumpty】

  • 巨大な砲台をどこからか用意し、巨大な卵を射出する。卵をぶつけて直接相手を粉砕するか、中身のベトベトで窒息させたり、動きを止めたりする。

NPC① 叢雲家 家長 叢雲 厳三 むらくも げんぞう

キャラチップ 縫田家当主 縫田 源蔵
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「大人になれ、八重」
「幸福は自分一人の才能で得られるものじゃない」
  • 男性、47歳、176cm、79kg
  • 警視庁の幹部職を勤める、キャリアの中のキャリア。
  • やはり文武両道。血筋も才能も申し分のないエリート。
  • 古くは古代のやんごとなき血筋にまで遡る家であり、その血を受け継ぎ、絶やさず、相応しいものとして存続していくことに強い使命感を持つ。
  • 常に多忙で滅多に家にはいない。家族とはリモートの会話のほうが多い。
  • 夫人の名は「皐月(さつき)」。

能力 【Jigoro Style】

  • 質実剛健な柔術技。相手の力を利用し無力化する反撃技。

NPC② 叢雲家 次女 叢雲 弥生 むらくも やよい

キャラチップ 学園Cathedral 天然 シルビア 
http://hazymoon.sakura.ne.jp/wolf/sow/img/cathegaku/136.png
「お姉ちゃんは大丈夫? 私は大丈夫だよ」
「私もお姉ちゃんみたいに強くて優しい人になりたいな……」
  • 女性、10歳、131cm、28kg
  • 八重の歳離れの妹。
  • 聖倭の系列の学校法人が運営する小学校に通う。(八重とは違う学校)
  • 実家暮らし。世話役の使用人が事実上の育ての親。
  • 柔らかい雰囲気と同時に、年齢以上に大人びた言動。
  • 八重とは仲がよく、両親に秘密でやり取りすることも多い

能力 【It's All Right!】

  • 大丈夫。何があっても、生きてる限り。
  • 究極の回復技。それ以上の言葉はいらない。
■プロローグ
+ ...
■シーン 叢雲八重 現在
+ ...
……ふう。

さて、見ているようだな。

ああ、例の語る必要のない言葉、その続きだ。
覚えているか?

宇賀神宇竜と菜絆の姉弟。
宇賀神という家。
宇竜の言葉。

「姉さん」。

思い出したのは自分の過去だった。

叢雲の家。
妹の弥生と、その姉である自分。

そして、私と宇賀神の家に共通する最後のキーワード。

「呪い」だ。

私が親の期待に背いて叢雲の家の淑女であることを放棄し、敢えて父と同じ刑事の道を選んだこと。
折れた父がせめて、と用意したキャリアも蹴って、汗と怒号とヤニにまみれた男社会の現場に入ると決意したこと。
それら叢雲の家と私との確執を自分語りするだけなら、さほど多くの言葉を必要とはしないだろう。

しかし、この事件の舞台に「呪い」が介在する、という事実。
その運命、あるい出来過ぎた筋書きに対して私が思うことを語るには、別の物語が必要だ。

なあ、そこで見ているアンタ。

この続きにまだ興味があるなら、聞くといい。
どうせ覗き見くらいしかすることのない暇人、いや、暇なナニカ、なんだろう?

あるいは、アンタも「呪い」と同じ類の……………………まあいい。詮索はしないさ。

じゃあ、そっちもコーヒーでも用意して聞いてくれ。
いや、当時の私はコーヒーよりも……。
■シーン ???
+ ...
ヒョホォオッ!??

まさか八重さんにはわたくしたちのことが見えていらっしゃる……?

いやいやまさか! そんなことはあるはずない………

でもでもぉ、オカルトに詳しい八重さんには霊感のようなものが備わっていて、それでちょっとだけそれっぽいものが見えているのだとしたらぁ……?

でもまあ…………
ぶっちゃけそのへんはなんでもよいです♡

なにせ彼女はぁ、自らわたくしたちにぃ、そしてこのテラークラウンにぃ……

素敵な素敵なショウの材料を! 提供していただけるというのですからぁ♡♡♡

みなさんみなさん、これを見ない理由は、ありませんよねぇ………?

ヒョーホホホホホホッ!!

叢雲八重さん、ちょーっばかりとイレギュラーですがぁ?

わたくしの用意したショウの裏側であなたが秘めたその想い、さっそく見せていただきましょうかぁ……♡♡♡
■シーン 叢雲八重 過去
+ ...
ティーバッグを長めに浸し、苦味が出るよう濃く入れたストレートティー。
熱気を残したそれを一気に喉に流し込み、残った苦味だけを舌で転がすように味わう。

都立聖倭女学院高等部、その学生寮の一室。
三年、叢雲八重の個室。

寮での生活には相応の規則が設けられ、個室でのむやみな飲食は禁じられているが、こうした朝の一杯程度なら容認されている。

続いて、クローゼットの中に置いた姿鏡を覗き、今の自分がどんな姿をしているかを確認する。
それが八重の朝のルーティーンだ。

……少々、顔つきに疲れが出ている。
それもこれも、あの奇妙な噂と、それが原因で学院全体が落ち着かないこと。
なにより、落ち着きを欠いたほかの生徒たちが、これまで以上に八重に関わろうとしてくること。
それが原因だ。

軽く、ためいきをつく。
少し目をつむり、自分の内の意識と、鏡に見た自分の像とをすり合わせ、整合させるイメージ。
コンセントレーション。
目を開ける。
顔つきはさきほどより整った。
……よし。

そのままクローゼットで寝間着から制服に着替える。
ここの制服が比較的シンプルかつユニセックスなデザインでよかった、と入学以来から今でもつくづく思う。
外見からお嬢様趣味に染められるようなことにならず、本当に助かる。

(…………?)

あらためて、鏡を意識した。

なにか、視線を感じたような……いや、その視線は鏡に写った自分自身のものか。
だが、それならなぜ今日、今だけそのような感覚を……?

いや、それも原因は同じだ。
と八重は違和感を振り切る。

まったく、面倒なことだ。
だがそれでも、それくらいのこと、処理できなくては。

必要な支度をすべて終え、部屋を出た。
■第1章
+ ...
■シーン 叢雲八重
+ ...
「あっ、叢雲さん……!」
「ホント、今あたし、叢雲さんと目が合ったの! ホントだって〜!」
「八重さん八重さん……! 今度の追試、落としたら本当にまずくて……お願い、ココとココ、教えてほしいの……!」
「叢雲、悪いんだけど今度の大会、また助っ人に……」

エトセトラ、エトセトラ。

こうした声の数々を浴びながら、それに翻弄されることなく八重は必要なら応答をし、不要なら適度に流す。

こうしたことは中等部の頃から日常茶飯事だったので、日常の所作として自然と身に付き、振る舞えていた。

しかし……。

「八重さん、ごめん、この子が礼拝に出たくないって言って聞かなくて……」

教室の自席に着くやいなやまたも声がかかる。
『礼拝に』
そのワードだけでもう事情は明らか。

「……あの噂話を気にして? 確か……」
「『血塗れのマリア』」
「それだ。それなんだけど、ううん、どう言ったらいいのか……」

この件については歯切れの悪い言葉しか出てこなくなる。
自分でも、らしくないな、と思う。

そもそも八重は、そんな呪いだとかのオカルトじみた噂を信じていなかった。

『血塗れのマリア』。
別にそれ自体は大した噂じゃない。
聖倭女学院はいわゆるミッションスクールで、学内に教会があり、生徒は授業なり課外活動なりでその教会にはちょくちょく足を運ぶことになる。

その教会の礼拝堂の奥におわすマリア像が血に染まることがあり、それを見たものには不幸が訪れる……というものだ。
よくある怪談話で、具体的に誰がそれを目撃したのか確かでないのに、「こんな不幸が訪れる」、「あんな目にがあった」、という話だけが背びれ尾びれつけてあちらこちらから聞こえてくるようになっていった。

それだけなら噂話好き同士の話のタネでしかなく、八重が関わることはなかったのだが……問題はここ2、3ヶ月の間に具体的な目撃談と、その目撃者に実際の被害が発生し始めたことだった。
■シーン 叢雲八重(続き)
+ ...
学業や委員会の相談やら部活動の助っ人やら、学院のトラブルバスターとして扱われることには慣れていたし、日頃よりそれくらいできなくてどうする、という気持ちではいた。

でも、さすがにこんな非現実的な話混じりのトラブルには八重も対処したことがない。

「礼拝に欠席するのは……そうか、もう2度してるとなるとさすがにマズいね。学院も教会も噂を認める気はないし、礼拝は続くと思う」

生徒の不安と混乱を鎮めるためにも礼拝はじめ教会での活動を一時中止する意見と、そんなことをすれば冒涜的とも言える噂・怪談話を認めることになるとして中止に反対する意見とが、学院・教会ともに入り乱れている。
そんな中、今が礼拝は継続する決定がなされているようだった。

だがその事実を確認するだけでも、当の相談相手は涙を流して取り乱し始めてしまう。
仲介の子が慌てて慰め、八重も八重なりに励まそうとはするが、どこか気の籠もらない言葉だな、と八重自身が感じてしまう。

オカルト話もそうだが、人の心のトラブルをどうにかする術も持ち合せていない、とつくづく思う。

できるのは現実への対処しかない。
だから、八重はそうする。
手持ちのカードで勝負するだけだ。

「でも、私が聞く限り、授業や礼拝のように大勢でマリア像のところに行ったときに……変に見えたって話は、聞かない。絶対とは言えないけど、一人で像に近づかなければそこまで心配しなくていいんじゃないかな」

事実をベースに安心材料を示す。でも、また彼女の顔から不安の色は消えない。

こんな風に、八重のところに話だけでも聞いてほしいという声掛け、相談ごとがクラスの内外から後を絶たない。

もちろん、八重に『血塗れのマリア』そのものをどうにかできるとは思っていないだろう(そう思いたい)。
が、トラブルバスターとして認知されてしまっているだけで、人はそれを頼りにしてしまうものらしい。

「それに、先生たちや、生徒会も、相談に乗ってくれたり解決に動いたりしてくれてる。君も相談しに行くといいし、そうだね……私も協力できることがないか、動いてみるよ」

もう、そういうほかはなかった。
それに、ただ慰め役を勤め続けるのも限界がある。

「大丈夫。心配いらない」

最後に、取ってつけたようにならないよう気をつけながら、そう言って、それで目の前の彼女はようやく笑顔を取り戻す。

――――大丈夫だよ、八重お姉ちゃん。

それは正真正銘、借り物の言葉だった。
それでも、使えるカードなら、使う。
■シーン 叢雲弥生
+ ...
「お姉ちゃんはだいじょうぶ? 私はだいじょうぶだよ」

お姉ちゃんは優しいから、はなれていてもいつも私のことを心配してくれる。

ううん、心配をかけてしまうんだ。

だから私はお姉ちゃんに会うときや、手紙を書くときはいつも、私は大丈夫、心配ないよ、って伝えてる。

お父さんお母さんはあいかわらず忙しいけどさびしくないし、学校でなかよしのお友だちもちゃんといる。

お姉ちゃんみたいに強くて優しい人になって、お姉ちゃんが心配しなくてもだいじょうぶだって、お姉ちゃんにはそう思ってほしい。

でも、お姉ちゃんとは会えるならもっと会いたいけど。
べ、べつにそれはさびしいわけじゃなくて……お姉ちゃんとお話しするのが楽しいだけだから!
■シーン 七那月元
+ ...
『血塗れのマリア』の噂は、自分がこの学院に実習生として赴任してきたときにはもう生徒たちの間に広まっていた。

女学院、それも宗教的な文化的背景のある学院では、そのような噂話、というか怪談の一種が広まるのもおかしくはないか――なんて、自分の出身校でもあったいわゆる学校の怪談のようなものかと、むしろノスタルジー……なんていうほど昔のことじゃないのだけれど……を感じてさえいたものだった。

だけど、今は違う。
噂の『血濡れのマリア』を見たという生徒が次々と出てきて、実際に不幸に見舞われた。
教員たちはその不幸を『血濡れのマリア』の呪いなどと認めるわけには当然いかず、「不幸な」事故や事件の再発防止と、生徒たちの動揺を鎮めるための対策を講じる必要があった。

ここ聖倭女学院は銘家の令嬢ばかりを預かる名門校だ。
このような不祥事にはことさら敏感で、校長・教頭からも全教員はもちろん、自分のような教育実習生にまで「この事態にはくれぐれも慎重に対応を」と強く念押しされていた。
教育委員会やPTA,保護者会などの団体からの要請も厳しいのだろうと予想がつく。

学院の基本姿勢として強調されたのは
「生徒の事故や事件と噂話の間には、一切の関連を認めない」
という点だった。
むしろ噂の存在を認めない、抹消したい、という意思が表れていた。
事故や事件は噂が原因ではなく、学院としては実際に起きた事故・事件に対してのみ対応する、ということだ。
言葉にしてみれば当然、と言えなくもない。
超常現象を認める、などと言えるわけがないだろう。
なにより、その超常現象の出どころが、この学校の精神的な支柱でもある教会のマリア像、だなんてことを認めるわけにはいかないのだ。
事故や事件によって学院の安全・安心が脅かされる以上に、学院の威信が脅かされることを恐れている、とも言えるのだろうか。

「…………というわけで、教員側は噂そのものに対処する動きは取れないんですよ。それが現状です。
もちろん、噂に怯える生徒たちの相談には担任や保健主事の先生なんかが当たったりしてますが、それもあくまで現実的な事故や事件に巻き込まれないための指導相談や、心のケアがメインです。噂の出どころはもちろん、真偽を探るなんてことはするはずがありません」

などと説明をしている相手は、自分の受け持ちクラスの生徒の一人、叢雲八重だ。
彼女が職員室にまで直接出向いて自分と話をするなんてことはこれまでなかったが、事情が『血濡れのマリア』についてとなると、おおよそ生徒たちに頼られて動かざるを得なかったのだとは察しが付いた。

「それにしても八重さん……トラブルバスターとして事件を解決しよう、というその心意気は買います。
…………これは教員としてではなく、アナタのパートナーとして、です」

そう。叢雲八重は、自分のパートナーだ。
なにかの例え話とかではなく、正式に、叢雲家と七那月家の間でも認められ、何より自分自身が八重さんを人生のパートナーと認めた。

「僕は八重さんを応援します……けど、危ないことはダメですよ?」
■シーン 七那月元(続き)
+ ...
そう言うと、八重さんは、これ見よがしに盛大に溜息をついた。
「ナツキさん、むしろ教員としての忠告でいい。パートナーとか、むしろ保護者のような立場で私を見るのはやめてほしい」

八重さんは自分を「ナツキさん」と呼ぶ。
さすがに名前では読んでくれない。残念だけど、そのへんも少しずつだ。

「だいたい、なんであなたが教員なんかに……それもこの学院に実習生なんかに……本当に私に近づくのが理由じゃないんだよな?」
「その点は何度もそうだと答えていますよ? 教職を選んだのも本心から僕がそれをしてみたいからです」

もう繰り返し言っていることだが、八重さんは自分が偶然この学院の、なにより八重さんのクラスの担任の下に実習生として赴任してきたことが、いまだに偶然だとは信じていないようだった。
でもまあ、そこは別によくて、それより。

「八重さん……あなたなら、わかるでしょう?
家によって決められた道をそのまま歩くんじゃなく、自分の道は自分で決めたい、ってことは」

八重さんに納得してもらいたいのは、そこだ。

「僕がそうであるように、八重さん、あなたもそういう人だ。
あなたは叢雲の家に縛られる人じゃない。そんなことは一目でわかっています。
だからこそ僕は、あなたのことを――――」

「わかった、わかった。ナツキさん、そのことはいい。今は。だから――――」

心底煩わしいとばかりにオーバーリアクションでこの話題を振り払おうとする。
叢雲家の令嬢でありながら、家が求めるような箱入り娘であることを拒否し、常に気丈に振る舞おうとする彼女だが、それでも隠し切れない年齢相応の態度に、思わず笑みがこぼれてしまう。

「ええ。わかってますよ。
教師に近い立場から得られる情報は八重さんとできる限り連携しますし、僕自身も、この騒動を原因から解決できるなら、そうしたいと思っています。
……多少越権行為だったり、学院の意思に背くことになっても、ね」

もちろん、最後は小声だ。
すると今度は「そういうところも教員らしくない」と厳しく指摘される。
「ええ、これ以上ない教師側の協力者になろう、って言っているのに……」
いや、これは言い過ぎか。所詮は実習生の身。できることに限りはある。

けど、自分もただの平凡な実習生の身分に納まるつもりはない。
見た目が頼りないとは、八重さんに限らずよく言われることだが……。

「大人らしさを見せびらかさないようにするのも逆に大人の度量かな、って思ってるんですけどね」
と答えておいた。
これも大人未満ゆえの背伸びだろうか。
仕方がない。
七那月の家がそれを求めて、それに応え続ける子供であって、いつしかさらにその要求を超えた自分という人間を形成しようと心に誓うようになったのだ。
そしてそれは自分一人で為すのではなく……自分の目の前で難しい顔をしている八重さんとともに。

あの日、そう誓ったのだった。
■シーン 神ヶ崎阿稀
+ ...
「では、始めましょう。今日の議題も、引き続き『血塗れのマリア』事件の対策について、ですね。皆さんよろしくお願いします」

阿稀はいつものように定例会議の開始を告げた。

生徒会執務室。

聖倭の『倭』、つまり人と人が互いに委ね合う協調の心……転じて『和』となり『輪』『環』を表す円卓がこの執務室の中心に据えられており、その宅を囲むのはもちろん学院内から選出された精鋭の徒たち……

すなわち、聖倭女学院高等部生徒会執行委員の面々である。

神ヶ崎阿稀はその代表。
高等部生徒会長を3年連続で勤め上げてきた、この学院で生徒会長と言えばこの人、と言わしめる有名人だ。

が、一見した雰囲気、物腰、やや華奢とも言える体型などからは、強く人を率いて押し進むようなリーダーシップ、カリスマのようなものは感じさせない。

人の序列を意識させづらい円卓で、かつ部屋の奥の席を特に選んで着席するでもなく、事前の情報なく一目で阿稀が生徒会長であると判断するのは難しい。

ウェイブのかかった長い黒髪。その前髪をアンティークなヘッドドレス風のバンドで留めて、小さな額の下に黒目の大きな瞳が目立つ。
整った姿勢で円卓に着く様は月並みだが洋風人形のよう、と例えるのが相応しく見える。

だが、可愛らしく着飾られて座っているだけの人形では勤まらないのが、まして三年の間ずっとその席に居続けることはできないのが生徒会長というもので、その事実が阿稀をただのお人形のような人ではないということを生徒たちにも教師たちにも知らしめている。

いや、あるいはその生徒会長という肩書と、人形らしさとの落差にこそ、阿稀の人物としての奥の深さが表れているのかもしれない……。

ともあれ、阿稀の一言をきっかけに会議は始まり、役員たちによって議事は粛々と進む。
阿稀は要所要所のみで発言し、重要な決定は常に阿稀の承認を伴う。

「……ええ。引き続き、直接の被害者の方々との面談ができるよう、学院側との交渉を進めましょう。
渉外は手配を。もちろん、必要なら私と副会長も同席します。
風紀委員や課外活動への情報共有の働きかけは今後も続けます。ですが、やはり当事者の証言ほど有力な情報はありませんから」

その声は静かで、けれど強い決意を感じさせる、柔らかくもよく響く声色。
その瞳の奥は深く、小さいながら強い輝きがうかがえる。

聞くものを惹きつけ、見るものが思わず覗き込み、逆に覗かれていると思わせる。
深淵。だが、それは心地よい深み。
一見した印象とは裏腹の、強烈なカリスマ。

間違いなく、生徒会は阿稀を中心として結束し、活動し、機能していた。

「はい。では、本日は以上で」

その一言で会議は終わる。
しかし今回は例外が二つ。

「……いえ。最後に一つだけ。生徒会は、(わたくし)は、学院を貶めるような噂が広がるのを許してはおけません。皆さん、私に力を」

阿稀にしては珍しく、私情を含んだような一言だ。
が、一同は黙して頷く。そして整然と離席していく。

「会長。外でお待ちの方が。お話があると」
先に退室した書記が戻ってきてそう伝えてきた。

「ああ、叢雲さんですね。お通ししてください」
「あ、あの方が」
合点がいった、という顔で頷く。叢雲八重の名前と名声は生徒会にも知られている。

「頼もしいお方がいらしたわ。是非とも協力できたらと思うのだけれど」
ころころ、と笑った。
■シーン 神ヶ崎阿稀(続き)
+ ...
「ええ、(わたくし)達生徒会としても、この事件はなによりも大事、一刻も早い解決を目指していますわ」

阿稀は目の前の訪問者、叢雲八重にそう告げた。

「叢雲さんに協力していただけるなら本当に頼もしく思います。能力も、人望も申し分ない。ぜひ生徒会員に立候補していただきたいと常々思っていますのに」

八重を執務室に通して、円卓に着くより先に本題を切り出してきた八重に対して、阿稀は八重の傍に寄ってそう笑いかける。
並べば八重のほうが少しだけ目線が高く、その視線の鋭さや堂々とした様だけを見ると、八重こそが生徒会長かと見まがう雰囲気を纏っている。


「生徒会ってガラじゃあないよ、私は」
そう言って八重は苦笑する。
謙遜ではなく本心からの言葉だが、それでもどこかで言葉にすること自体への照れのようなものを八重は感じた。
自分が人の輪の中心にいて、人を率いて何かを行う、というイメージがわかないのだ。
それは、日頃、自分自身の姿を鏡で確認していても、そうだった。

「私はそうは思いませんが……いえ、押し付けがましいのはよくありませんわね」

そう言って笑顔を向けながら「どうぞ、お掛けになって」と円卓への着席を促す阿稀の、人への動作を促す自然さ一つ取っても自分との違いは明らかで、さらには阿稀の柔らかな物腰が、いかにも自分がそうすまいと心がけているお嬢様然とした様子で、そのあたりも八重と阿稀が真逆のタイプに見える。


が、阿稀は八重をそう評価していない。
すでに八重のことを頼もしい協力者(になってもらう)のと同時に、強力なライバルとも見なしていた。

「勧誘のようなことを言いましたけれど、実際のところ、叢雲さんには生徒会にはできない動きを取っていただけるのを期待していますの」
「そうだね。私もあなた達の一員になるのは違うと思ってる。そうだな…遊撃隊というか……」
「探偵、という例えが相応しいのでは」
「探偵……ね。なんだか期待されすぎてる気をするけど」
「もちろん、大いに期待していますわ!」
満面の笑顔。
「……そりゃあ、期待に応えないとね」
苦笑するが、どこか挑戦的でもあり。

「私には生徒会の権限がありますが、一方でそのためにできることに制限もあります。そこで」
「学院のしがらみのない探偵の出番、ということだね」
「はい。私たちが得た情報や成果や叢雲さんと共有します。代わりに」
「生徒会では得られないものを私が得て、共有する」
「そういうことです。お話がはやくて助かりますわ」
「生徒会の権限と人脈で面で攻める、一方で私は線で、ってところかな」
「本当に……あなたが生徒会のメンバーでいらしたら………いえ、なんでもありませんわ」
「……私は、人の役に立とうだとか、リーダーになろうだとか、そういうつもりはないんだ。ただ…」

ただ、自分が自分であるために。
その言葉は飲み込んだ。いや、続けることができなかった。
自分がそれを認められることもまだできず、また、阿稀のような人の前で言葉にするのもはばかられた。

「……素敵だと、思いますよ。叢雲さんのようなやり方も。
(わたくし)には、(わたくし)のやり方がある。叢雲さんにも、そうだというだけのことだと思います」

そういう阿稀のほうを、八重は見た。
吸い込まれそうな目をしているな、と思う。
と同時に、その目の奥にあるものが確かな輝きでありながら、その光の色を見通すことが難しい、とも思える。
自分が鏡に自分の姿を写し、目を合わせるときに似た、けれどどこかで確実に違う何か。

思わず、目をそらす。不自然でない程度に。

「神ヶ崎さん、さすが生徒会長。なんでもお見通しってことかな」
「ふふ、そんな大げさなものでは。ただ、叢雲さんとお話しているのは楽しくて、ついおしゃべりになってしまいます」
「そうかな。ありがとう。まあ、なによりこの問題の解決に向けて、うまくやっていけたらいいね」
「そうですわね。よろしくお願いいたします」
「ああ」

握手する。

不思議な手だ、と八重はやはり思った。
細く、小さく、人形のようで、なのに力強い。

意外と小さい手、と阿稀は思った。
見かけとは裏腹、可愛い人。
■シーン 木根黎人
+ ...
「ちょっと木根さん! また礼拝堂の掃除当番サボったんでしょ! 久米さんが優しいからってまた彼女に押し付けて~!」

真面目な若シスター長は今日もお説教。

「押しつけじゃないよーん。ギブ・アンドぉー・テイクだよーん。久米っちにはちゃんと気になるセンパイ(もちろん同性)とのキッカケをつくってあげたしぃー。持ちつ持たれつ。Win-Win。主よ、木根は愛を実践しておりますよーん」

まあ若シスター長には苦労ばっかり押し付けてるのかもだけど。
でもそれは彼女が自分で苦労だと思ってるから苦労になってるだけでしょ。
苦労の押しつけ、っていうよりは甘えてる? そうかも。でも、それも愛。ボクなりの。
若シスター長って可愛いもん。甘えたくなるよね。怒ってるのも可愛い。

でも、世間は、この学院の教会は、教会の老シスター長は、これを愛とは呼ばないってさ。
まあしゅーきょーの解釈ってのもいろいろって歴史も証明しているらしいし?
いーんじゃない?

まあボクはこんな感じのノリなんでシスターとしては落第点らしいし、いろいろめんどーだけども、それはそれでなんとかココでやってる。

そんなココは今『血濡れのマリア』の噂で持ち切り。エライヒトたちはあたふた。
ボクたちくらいのシスターは、正直、面白がってなくもない。
ボクとしては、そんなことくらいで大騒ぎしすぎ、ちょ、って感じ。うん。

ただ大人たちがギャーギャーやってるのはいいんだけど、ボクのお友達、シスター仲間も生徒も含めて『血濡れのマリア』を、この教会を、怖がっちゃってるのは、ちょっと。いただけない。

「だいじょーぶだいじょーぶ。ボクも『血塗れのマリア』なんて作り話だと思ってるよ。心配いらないって。教会の人間のボクが言うんだから、間違いない!」

困っている人の話は聞くし、相談に乗るし、懺悔や告解を受けるのはまさにシスターの仕事だ。
え? それは神父の仕事? まーいーじゃん。平等平等。
(この懺悔とか告解って言葉の使い方? 使い分け? とかも? めんどーだよね色々さ)


教員の人や生徒会の人たちが質問とかしに来ることも増えてきた。
ボクが直接話すことはあんまりないけど、協力できることはするよー、って。
特にさ、あの生徒会長だよ、噂の。
神ヶ崎さん。
直接お話することがあって、ビックリ。なんか、すっごい頑張ってるなーって感じ。キレーだし。

そんでそんで。
今日はあの『聖倭の苦労人』・・・じゃない、『聖倭のトラブルバスター』こと、叢雲八重氏が話があるんだってー。
『血濡れのマリア』退治でもするのかな? くくくっ。

有名人と立て続けにお話できるなんてさ、『血濡れのマリア』騒ぎも悪くないんじゃない?
罰当たり? くくっ。
■シーン 木根黎人(続き)(叢雲八重視点)
+ ...
八重はオカルトを信じていないのと同じくらいに、神の信仰についてもそれほど熱心ではなかった。
もちろん、学業の評価には差し障りない程度には神学や関連行事には取り組んでいる。が、あくまでそれは学業や学校行事として、であり、八重に信仰心というものは存在しない。

だが、実際に『血濡れのマリア』に怯える生徒たちを目の当たりにして、さらには学院側がその騒動の解決に躍起になっているのを知ると、オカルトというものや、信仰というものが実社会に大きく影響するのだという事実を認識させられる……そう八重は感じていた。
非現実的な事柄、超常的な事柄というのも、あながち無視できない、無関心ではいられないのか、ということも。

この学院の教会に関わるようになるのも3年、これまでは義務を行う場でしかなかったこの建物が、今では少々違う意味を持って見えてくる。

礼拝堂に入り、高みからこちらを見下ろすマリア像――――もちろん、血に濡れてなどいない――――を、睨め付けるようにして見上げる。

怪談が生まれる環境とはどのようなものか。
自分が相対すべきもの、解決すべき相手というのは、『血濡れのマリア』そのものではなく、それが生まれ、広まる環境そのものではないか、と八重は確認する。

その大元であるここ教会について、あらためて調べなければ……そう考えて動き始めたが、教会の関係者からの協力はおろか、話を聞くだけの約束を取り付けるのさえも難しかった。
学院側の圧力もあるが、教会組織自体もまた、『血濡れのマリア』の怪談を認めたくない、関わってはいけない、という態度が見て取れた。

ましてやいち生徒などに首を突っ込ませていい問題ではない、ということだろう。
罰当たりな、という言葉を浴びせられもした。
返す言葉も浮かんだが、無用な対立を生むのは得策でないし、宗教観について論じる気もさらさらなかった。そういうものは授業の単位目的だけで十分だ。

そんな中、唯一快く対話に応じてくれたのが、木根黎人という年下の修道士だった。

  *

「まずはこの場を設けてくれたこと、お礼を言うよ。ありがとう、木根さん。」

少々距離のある言葉、少なくとも学院の子供同士の言葉じゃないな、と我ながら思いつつ、ただの個人的な興味での聞き込みなどではないことを態度でも表明することが、普段からトラブルの調整役などに関わることが多い八重には板についてしまっている。

案の定、目の前の木根黎人は、ぱちくり、というオノマトペが文字のままそのまま聞こえてきそうな反応だ。

「木根さんもわかってると思うけど、この件にはなんというか、アンタッチャブルな空気が漂っててさ。学院も教会も、生徒が口を出すことじゃない、の1点張りで」

不平や愚痴をこぼすように軽口。
もちろんはじめからそうなることは織り込み済みでのことだが、少しでも相手の口が軽くなってくれればという狙いでもある。本音も少々だが。

「それでもクラスメートとかからは相談事とかがひっきりなしでさ。生徒会も協力しようってことで話がついてるし、それくらいで引っ込んでられないんだ、実際」

なにより、自分自身がそんな半端を許せない。
その本音は、胸にしまいつつ。

「木根さんも、いろいろ相談を受けたりしてるって聞いたんだ。それと、生徒会からも聞き込みを受けてる、とか。
そのときの話の繰り返しになる部分もあるだろう、けど――――そうだな」

少し間を置く。
言いたいことは決まっているが、言い回しを少し思案して、それから口を開く。

「私は生徒会とか、この学院だとかの看板を背負ってるわけじゃない。生徒代表ってわけでもない。
だから――――もう少し、ぶっちゃけ話でもできたらな、って思ってる。
私も、相談にどう対応していいか困っててさ」

そう話を振った。
■シーン 木根黎人(続き)
+ ...
はー。
やっぱり『聖倭のトラブルバスター』って言われる人はすごいなー。
なんか大人だ。
あと、アンタ……っちゃ?
わかんないけどすげー。八重さん噂どおり頭いいんだね。

まあいいところのお嬢様ばっかりの学院だし、当然お勉強のほうもすばらしー人がいっぱいじゃああるんだけど。八重さんのキレッキレのオーラは他とは違うって感じ。

そんな学院にボクみたいなのは場違いってのはあるんだけど。
それはまーここは教会で、神さまの慈悲ー、だとか、慈愛ーとか慈善ーとかとか。
そういうものがあるんで、ボクみたいな子の居場所があるわけです。
ま、その中でもボクはやっぱり落ちこぼれーの落第点ーの、なんだけどさ。
ま、そのへんはいいや。

「へー、八重さんでも、困ったりするんだ。
でもボクなんかと悩みの次元が違いそうー」

くくくっ、と笑う。
印象悪いって言われるんだけど、癖でさ、どうしようもない。
でも、八重さんは気にする風じゃなさそう。
やっぱ人間ができてる人ってこーなんだね。
あー、そういえば。

「生徒会って言えば、生徒会長さん。
あの生徒会長さんまでボクの話を聞きに来てさ。
すっごいなーって。こんなことでもなかったら、接点ぜったいなかったよ。
八重さんともさ。
なんか、ボクなんか、感謝しちゃいそーなくらい。

え?
いや、その血濡れの? マリア様にさー」

そんな感じで話をしてると、八重さんも『血濡れのマリア』のことは信じてないみたい。
おお、ボクも。ボクも呪いなんて信じてない。

ひょっとしてひょっとして。
この人とボク、お友達になれたりするだろうか。
そんなことになったら、ますます感謝だね。マリア様。
■シーン 七那月元
+ ...
学生寮に足が赴いてしまったのは本当に偶然、というか何の気なしの行動でしかなかった。
赴任して間もない学院で、全体像を知っておきたい気持ちからあちこち足を向けていたのは確かだが、それでも男性が女学院の寮に近づくというのはあまり褒められた行為ではないことくらいは理解している。

「あら、七那月先生。こんなところでお会いするなんて」

そういうタイミングで決まって気まずい出会いが訪れるのが世の常だ。
これじゃ、父にも、叢雲厳三(おとう)さんにも、いや、八重さんにまで𠮟られてしまうな……。

「ああ、神ヶ崎さん。こんにちは」

またよりにもよって出会う人物が生徒会長とは。
あくまで平静を保って挨拶をする。
相手によっては取り繕っているとでも受け取られそうだが、果たして。

「先生……失礼を承知で伺いますけど、なんの用事でここにいらっしゃったのですか?」
「ええ、学院にはやく慣れたくて、構内を一通り見回っていたんです。場に慣れるのに、自分の足で歩いて、目で見て回るのが習慣というか、性分のようなものなので」

自分の言葉に神ヶ崎さんは、
「そうでしたの。そういえば先生は地理が専門でいらっしゃいましたね。やはりまずは学院の地理もおさえなければ、というわけですね」
と特に訝しんだり、咎める様子は見せない。

「いやあ、お恥ずかしい……確かにうっかりでも、用もなく男性が近づいていい場所じゃなかったですね……」

無意識に頭を掻くような仕草とともに一礼し、そのままその場を立ち去ろうとする。だが、

「叢雲八重さんのことが気になって……のことではございませんの?」

その一言に足がつい止まる。
うしろめたさがあるわけじゃない。生徒会長である神ヶ崎さんがここにいて、自分にそのこと(・・・・)を問いかけてきた事実に、興味が湧いてしまった。

「どこで、誰から聞きました? まさか本人から?」

はぐらかすのはやめた。
神ヶ崎さんとは今回の呪い騒動の件で、生徒会が教職員を強調して対応をしている関係で、まだ教育実習生とはいえ、自分も会話をした経緯があり、名前を顔を知っている間柄だ。
もちろん自分のプライベートについて直接話したことはない。

ただ、八重さんが今回の騒動に関わる中で、生徒会ともコンタクトを取っていることは知っていた。聞けるなら八重さんから直接、しかなさそうなのだが、果たして彼女がこの神ヶ崎嬢とそこまで親睦を深めたりしたのだろうか?

「いいえ違います。でも八重さんとはそんなお話をゆっくりとできるようになれたら、と思いますけど」
くすくす。ころころ。
そんな音を立てたように笑うお嬢様からは、素直にそう思っているようでしかなく、嫌味のような邪さは感じられない。

「……噂ですよ。もう、とっくに噂になってます。お気づきになられないんですね。ああ、それは八重さんもそうみたいですけど。噂の当事者のほうが案外気が付かないものなのでしょうか」
「………そうなんですか。いやあ、気づきませんでした。でも、さすがに耳が早い。やっぱりそういう立場だからこそなのかな?」
「そうかもしれませんわね。でも」

そこで一瞬、言葉を切り。

「噂というのはそういうものですよ。広がりはじめればあっという間。
…………『血濡れのマリア』、あれも同じです」

「うーん、それと一緒にされるのは、さすがに気持ちがよくないなあ」

「そうですね。失礼しました。
でも……失礼を重ねるのを承知で申しますわね」

「……どうぞ」

ここで話を切る気にはなれなかった。
少し、意地を張っているかもしれない。
教師として。大人として。男として。
那月の家の者として。
八重さんのパートナーになる者として。

「八重さんとのご交際。私は心から応援いたしますわ。自分で言いながら偉そうだとは思いますが。

……それだけに。

やはり相応に、慎重なふるまいを、先生にはお願いしたいと思いますの。

喜ばしい噂。
ですが少し間違えば簡単に、恐ろしい噂に飲み込まれてしまう恐れがあります」

「飲み込まれる……?」

なんとなく、話の行先に察しはついた。
だが、最後まで聞いておくのが度量というものだろう。

「ええ。
今や、学院中が『血濡れのマリア』の噂に混乱しています。
たとえ先生が寮を訪れる理由の中に八重さんのことがあったとしても………男性教師が本来立ち寄る場所でないところに赴いている、ということがどう『血濡れのマリア』の噂と結び付けられて、危険視されるかわかりません。

なにより……これこそ申し上げにくいことですが、
先生は学院にとっての新参の方。
今の状況においては疑われやすいお立場………わかりますよね?」
「…………なるほど」
「教師で、あの八重さんの関係者でもあられる七那月先生……(わたくし)、疑いたくありませんし、疑われるような状況に置かれるのは望みませんの。
………ご自重くださいね」

「なるほど、なるほど……八重さんのことも考えてくださり………。その、いいですね」
「え?」
「いえ、あなたたちくらいの年齢では、そうした友情がふとした折に生まれるものだなあ、って」
「………友情……ですか。なんだか照れくさいですね」

友情、と言っても、この年ごろの関係というのは複雑なものだ。
(というほど自分が彼女たちと年が離れているわけでもないけれど、それはさておき)
どちらも優秀・有名人な神ヶ崎さんと八重さん。
今回の騒動のような特別な状況で、対抗心のようなものも手伝って、少なくとも神ヶ崎さんは八重さんのことを意識するようになったのだろうか。

「えっと、ひょっとして神ヶ崎さん、はじめから僕のことを見張ってました?」

「え? まさかそんな。私はそんなこと」

私は、か。生徒会の結束は生徒会長、神ヶ崎さんを中心に固いものと聞いている。
誰か彼女の使いが自分を、いや、学院中の疑わしい対象を見張っている可能性は否定できない。

「うーん、手ごわいのは、『血濡れのマリア』だけでもないような気がしますねえ……」

「……どういうことでしょうか」

そんなふうに小首をかしげる神ヶ崎さんも、実のところはまんざらでもないだろうに。

「それを言うなら、先生こそ。その若さで学院に入り、ましてやあの八重さんとのご交際…………並外れたものを秘めているのではなくて?」

「……やれやれ、勘のいい若者はなんとやら、ですねえ」
「先生、それ、悪人のセリフらしいですよ?」

■シーン 叢雲厳三
+ ...
叢雲家の客間。

応接間とは別に設けられた畳敷きの大広間で、障子で仕切られた廊下の向こうにはその部屋と同程度かそれ以上に広い中庭が設けられている。
その庭や、この客間は純和風に整えられたもので、叢雲家の歴史の古さを感じさせるものだが、一方でこの和風の家屋と連結した別館は、大正モダンな洋風建築となっており、八重とその妹の弥生の私室などはそちらにある。

この日、その客間に七那月元は通されて、家の主が現れるのを待っていた。

話題は間違いなく、聖倭女学院への教育実習赴任についてだ。

情報を得るのがはやい……公務でなければ、財界や政界でも勤まるお方だ、と七那月はその主を評価する。
ただし、少々親バカでは、という気もするが。
しかし我が娘だから、というわけでなくても、熱を上げてしまう気持ちはわかる。
他の誰でもなく、親に負けじと彼女に熱を上げているのが、自分自身なのだから。

「待たせてすまなかった」

部屋に見合う和装に身を包み、その主、叢雲厳三が姿を現した。
警視庁の幹部であり、職務中はビジネススーツか警官の正装に身を包む彼だが、プライベートのゆったりとした和装に身を包んでいても、その威厳や圧力は損なわれることがない。

「いえ、ご多忙のところをお時間を割いていただき、恐縮です」
正座を崩さず、腰を折って一礼する。

厳三はそれに「うむ」とだけ返し、そのまま七那月の対面に座する。

「呼びつけたのはこちらだ。畏まらなくていい」

それを聞いて七那月は伏せた面を上げる。
手慣れた所作で、特別に畏まった気持ちではない。幼いころから身に着いたものだ。

「それに君は時間を割くに値する人物だと評価しているつもりだからな」

もちろんそうだろう。
でなければこの場にいられることもないし、そもそも八重さんの婚約者でいられるわけもない。

「君なら今日の要件ももちろんわかっているだろう……それだけに解せないところもある。
少々、軽率ではないか……?」

単刀直入に切り出してくる。
静かな問いかけの言葉だが、場の厳かな雰囲気と、言葉を発する当人の持つオーラに、たいていの人物は飲まれて萎縮してしまうことだろう。

七那月はもちろんそうならず、負けじと気構える様子もなく、至って平常心である。

「実習先が八重さんの学院になったのは本当に偶然です……と言っても、信じてはいただけないでしょうか」

「そのような偶然がありうるのか、にわかには信じがたい。が、同時に君がそのような工作をするというのも、同時に信じがたいのだがな」

軽い嘆息。呆れているというほどではないが、、それでも若者の軽率を嘆く色は感じられる。

「君はまだ若い。だがそれでも家を背負う者には違いない。その家の重みを私情に用いるようでは、果たして……と思うが」

「確たる証拠がない状況で推測に基づく苦言を述べるというのも、少々短慮ではありませんか?」

対して、あくまで皮肉さを口調に籠めずに告げる。
これに眉をひそめる厳三。

「警務に属する者であればなおのこと、か」

「私も七那月の家の将来背負う者として若輩ながらの誇りがありますし、叢雲が婿に迎える家の名を易々と汚すような行いをする家でないことを信じています」

「……ふ。言うわ」
「表立った状況からではなく、これからの日々で、信をいただけるものと確信しています。
僕は、家と家の形式的な縁に寄るものだけでなく、逆にゆきずりの恋情でもなく、自分の生涯を共に歩む人として、八重さんを妻に、と考えています。
例え近くにいるとはいえ、不適切な交遊などは、決して」

顔を伏す。

……すこし間があって、厳三の口から、わかった、の言が発せられた。

「むしろ、その覚悟の一端でも、八重の方に備わっていればな……。
いや、八重は若い。こうなった以上、教員の習いとして、君からも指導を頼む」

「わかりました」

「……前にも言ったが、そもそもなぜ教員を選ぶ?
君には実業家としての道が開かれているはずだが」

「僕は、もっとたくさんの道を歩きたいんです。
たくさんの人を見て、いろいろな道があることを知りたい。
そして、自らだけでなく、多くの人に、その道の多さを知ってほしい、道の探し方を学んでほしい……。

家を背負う覚悟はありますが、家に縛られたくはない。
もっと広く世を見て歩く、そうしてこそ、家の名に相応しい人間になれる……そう思っています」

「……若いうちにできることかもしれんな。それに今の時代であればなおのこと」

そう言うと、庭のほうに厳三は目をやる。

「……八重を頼む。あれは賢しいだけに見るべき道を見失っている」

「………」

「あれが男児として…………いや、聞かなかったことにしてくれ。それも古い人間の考えだ」

「…………一緒に、幸せを探したいと思います」

「父としては複雑なものだよ、その言葉は」
■第2章 New
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■マスターシーン インターミッション
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学院の対応、生徒会の活動、そして叢雲八重の行動により、『血濡れのマリア』の怪談騒動は落ち着きを見せ始める。

だが、このような騒動に発展した理由――なぜ怪談に結びつくような事故・事件が多発したのか――、そしてなにより『血濡れのマリア』の怪談がどこから出てきたものなのか……それらについてはいまだ、明確なアンサーが出ていない。

学院はその点については追及しない姿勢を変えず、このまま事態が鎮静化すればよしの態度。
生徒会の活動では、個々の事故・事件に対する「現実的な解」は集められたが、いずれも警察の介入があれば即座に調べ上げるであろうレベルのものばかり。
(そして現に、刑事事件として扱うものでない不慮の事故、人間関係のトラブルのレベルにとどまっていた)

それでも。
火のない所に煙は立たぬは世の常。

不可解な事件の裏には、「秘密」がある。
■シーン 叢雲八重
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今日の終礼の鐘が鳴る。
この学院では鐘の音も学内放送のスピーカーからではなく、教会の鐘楼の下げられた実物の鐘のものだ。

起立、一礼し、今日の授業が終わる。
放課後に広がる解放的なムードは、『血濡れのマリア』騒動が起きてからというものの不安と困惑に変わっていたが、今は多少落ち着きを取り戻しているように見える。
八重の元に相談に来る生徒も(あるいは泣きついてくる生徒も)幸いにして減った。
こちらから積極的に動いた成果が出たと言えるだろうか。
……正直、ホッとしている。

聖倭のトラブルバスターだとか言われていても、いち生徒に過ぎない身にできることは限られている。
時間の制約、行動の制約、諸々ある中でできること。
それはやはり自分がトラブルバスターと呼ばれているからこそのこと。
これまでの困りごと相談、お悩み解決によって培われた人の縁、人脈だ。
それが八重に使える最大のカード。
人海戦術・公的な調査なんかは生徒会に……あの神ヶ崎会長に任せておけばいい。
そう、こうして学院はひとまず落ち着きを取り戻したように見えるのも、学院と、生徒会の努力によるものだろう。

こちらは数こそこなせないが、かつての依頼人や問題の当事者だった生徒たち一人一人からじっくりと話を聞ける。
過去に売った恩を買い戻すようで最初は少々気にかかったが、みんなはこちらの引け目を吹き飛ばすように熱心に応えてくれた。
もちろん誰もが有益な情報を持っている訳じゃない。
それでも、うわべではない感情のこもった情報から見えてくるものがある。と、八重はこの件で改めて感じていた。

『血濡れのマリア』……怪現象の目撃情報(いずれも間接的なものだが)や被害者についての情報などから派生して、ゆくゆくは騒動に関わった生徒たちのプライベート……生々しい日常の出来事や人間関係、人となりやパーソナリティに関する噂話まで聞くことにもなる。

噂……そう。
『血濡れのマリア』については、結局、それを目撃したという直接的な証言は得られなかった。

『被害者』たちはいずれも
「『血濡れのマリア』の噂が聞こえるようになってから一人で礼拝堂に近づいた」
とか
「日頃から礼拝を真面目にやっていなかった」とか、
果ては
「怖がる生徒の反応が面白くて『マリア』の呪いなどを盛って噂を広げていた」
と言った感じで、結局のところ、『血濡れのマリア』の噂に対して何かしらの反応をした……程度の接点しかない。

「これで『血濡れのマリア』の被害と呼べるのか……?」
色々と聞いた話をまとめていて、思わず口に出たのがそれだった。

そして共通点がもう一つ。
そうした彼女たちは誰もが不安を抱えていた様子だった。
もちろん誰でも大なり小なり不安や悩みの一つは抱えているものだ。

だが、彼女たちのそれは、そうしたレベルを超えている…と思える。
不安の度合いに対して具体的な閾値を引くことは難しい。
八重の個人的な主観、感覚になる部分は否めないが、それでも言語化すれば、それは「学生としての日常生活の遂行に支障をきたしている」かどうか。

よくよく話を聴いてみると、彼女たちは今回の騒動の前から何かしらのトラブルを抱えていたと言えた。
そのほとんどが、学園内、もしくは家庭内のトラブル。
それも厳しい学業と規律に対する劣等感、反発心などのネガティブな感情に起因するものがほとんどだ。

以前からトラブルバスターなどと言われていた八重だったが、かつての依頼や悩みなど表面的で可愛いものだ、そう思えるような根の深さを感じさせる。

(自分は、みんなの……世の中のことを、上辺でしか見れていなかったのか……)

そう、思えるほどに。
■シーン 七那月元
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自分が八重さんのためにできることなんて僅かなものだった。
だけどそれは自分の微力を嘆いているわけじゃない。
八重さんは想像どおりの有能さで、自分たち教職員にも、建前は協力体制としつつも、実際は彼女を使い勝手のよい駒にしたかったであろう生徒会にも、遂行できない役回りを見事に演じていた。

『聖倭のトラブルバスター』は伊達じゃない、自分の出る幕などほとんどない、というわけだ。

学院の騒動は終息に向かい、表向きの平穏が訪れる。

『血濡れのマリア』などという子供じみた怪談なんて初めからなかったように。それが、学院が望んだシナリオだ。
学院の拠り所であり、歴史的に継承されてきたミッションスクールとしての伝統、誇り、信仰。
それらを汚すような怪談が、生徒の中から立ち現われ、それが実際に害をなしたなど、あってはならない。
まして、それが外部に漏れ出て認知されるなど。

恐らく政治的な動きもあったことだろう。
各界の名士の御息女も多く預かっている学院だ。
(そう、叢雲家の出の八重さんも、その一人)

このような騒動があったことが明るみに出るのは良しとせず、それをもみ消すために働きかける伝手をはじめ、さまざまな力を持っている。
その圧力はこの学院にも及ぶだろう。
対外的に事なきを得たとしても、現在の学院の運営者たちには何らかの処理処分が下ると考えられる。

事は内々で収束し、事件は解決。
実習生に過ぎないとはいえ、教職側である自分としても、事なきを得るのであればそれでいい。

――――八重さんのパートナーとしては、さにあらず、だけれども。


彼女が納得していないのは明らかだ。
『呪い』の被害者たちの相談役として彼女が耳を傾けたことで、八重さんが彼女たちの心の支えになってやれたのは間違いないだろう。
それ自体、トラブルの鎮静化にはおおいに貢献してはいる。

しかし、肝心なのはそもそもの『血濡れのマリア』の噂とはなんだったのか。
八重さんはそのことをうやむやにしたまま解決とはしない、いや、したくないのだろう。

そして、今回の件で、そうした噂話が瞬く間に広まったこと、そうした噂に翻弄されるクラスメートたち……いや、人間というものに、疑問と、ある種の気づきを得たようだ。

ある日の放課後、職員室で八重さんと話す機会ができたとき、こう、話を振ってみた。

「……八重さんは、結局のところ、どう思ってますか? 『血濡れのマリア』のような……オカルトのようなものを、信じますか?」
■シーン 七那月元(続き)(叢雲八重視点) New
+ ...
「オカルト……。いや、私は」

信じてない。と言いかけて、口をつぐむ。

確かに『血濡れのマリア』の話そのものは怪談、オカルトの類のものだ。
しかし……それに多くの女生徒が……いや、学園中が振り回された……今もまだ振り回され続けている現状を踏まえると。
それが単なるオカルト、もっというとホラ話の類、と片づけることに、抵抗が生じる。

その話を信じるもの、現実の事件を話と結び付けようとする意志、それを封殺しようとする周囲の人々……。
『血濡れのマリア』は単なる怪談ではなく、学園の中で大きなうねりとなってその存在を大きくしようとしている。

「その話を信じる、信じない……というものじゃない、という気がしている。
ほら、よくある都市伝説……とかもそうだ。
どこからか目撃談が出てくる。それらしい写真とか映像とかも。
でも、その後、その存在を証明できる客観的な証拠は現れない。
けど、それを肯定したい人、否定したい人で世間は持ち上がるし、興味がないとしている人にだって、その名前や噂話が存在していることは認知されて………現実の人間に、何かしらの影響を与えている」

そこまで一気に話してしまう。

「今回のことで、そのことがよくわかった。
だから、オカルト……非現実的な怪異とか、そうした話の真実性よりも……それを信じる人たち、巻き込まれる人たちにとっては、オカルトが真実になっていくんだな……とは、思ってる」

だけど、そんなことに気づいたことで、何が解決するというのだろう。
自分なりに自分を納得させているだけじゃないのか。

真実は、何もわかっていないのに、事態だけは終息して、事件は終わったことに、むしろなかったことになっていく。

……むしろ、この学園の、生徒たちの闇は深くて、表面的な事件の裏にある、本当に解決すべき事態は……生徒たち一人ひとりの心の傷や……他人が立ち入ることの難しい不幸や……そうしたものは、目の前にありありと現れてしまっているというのに。

私はただ、言葉を続けられず、視線を落とすことしかできない。

こんなところをナツキさんには……ナツキさんにも見せたくないのに。

■シーン 七那月元(続き) New
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「なるほど。……結局、最も奇妙で不可解なものは、噂や怪談などよりも、それらを信じて語る人間のほう、なのかもしれませんね」

八重さんの言葉にそう一言だけ添えて、あとは嘆息して、自分も言葉を切る。

やはり、叢雲の娘。自分の約束の人は、本当に頭が切れる。
まだ学生の立場にあって、もうこの混沌とした自体に自分なりの整理をつけ、新たな知見を、物語を見い出そうとしている。

八重さん自身はそれに喜びを見いだせず、悔やみ、俯いて、己の無力を嘆いているのだろう。
むしろ、それこそが成長だ……と年上であることを振りかざして、何になるというのか。

しかし……いや、だからこそ、愛しきパートナーには、そこからさらに先に進む、そのあと押しをしなければいけない。

「八重さん。……これは教師としての僕と、八重さんの身内としての僕の、両方の立場が混じっての話になりますが。
八重さんのように……叢雲の家の人のように、やがては大勢の人の上に立って動くことになる人には」

これは、半分、事実ではない。
八重さんの御父さん、叢雲厳三は娘を自らと同じ道に進ませることを、よしとしていない。
その事実に対する八重さんの意地を、あえてこう言うことで刺激しているのだ。
そして自分のそうした意地の悪い意図も、八重さんはもちろん気づいている。
それでいて、八重さんはその意地悪を、無視できない。

それもまた、呪いだ。
と、いうことにも、近く八重さんに気づいてもらえるだろうか。

「表の顔として、怪しい噂話や怪文書の類などに惑わされない、厳格さが求められます。……一方で」

そこで間を置く。
演出だ。これも呪い。呪い、魔術、暗示……ささやかな演出の積み重ねが、見るものを縛り、操る。

「そうした怪しげな手段で世を惑わそうとする輩はいつの時代も湧いてきます。そうした者たちのこと、その者たちの手段について……対処する側も、熟知しておかなければいけません。
それが、人の上に立って表の世界を治めていく人物に求められる……裏の顔です」

「裏……の、顔……」

八重さんの表情が複雑に変わっていく。
そして、定まっていなかった視線、目の焦点がどこか一点を指しなおし、光がともるのがよくわかる。

「なるほど………ありがとう。ナツキさん。やっぱり教師なんだね、ナツキさん」
「はい、教師ですよ。そう思ってもらえてなかったのは……いえ、そこまで心外でもありません」

負け惜しみに聞こえてほしいが、そこは上手くいかないかもしれない。自分もまだまだ未熟だ。

「ふふ……でも……ナツキさんには、心当たりがあるんじゃないのか……この事件の」
「心当たり……ううん、そうですね。知識と過去の経験から、類推することはできると思います。けど、やはり自分で動いて、調べて、得たものから導き出したものでなければ、思わぬ落とし穴にはまることになりますね。これは学校のレポートや論文にも言えることですが。……現実に安楽椅子探偵なんて気取るのは、難しいですね」
「じゃあナツキさんが動かないのは、やっぱり教師だから?」
「ああ、ええ、それもありますけど……
やっぱり、この事件の、いえ、物語の主役は……八重さん、あなただから、と思っているからですね」
■シーン 神ヶ崎阿稀 New
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表向き。
阿稀は生徒会長として対『血濡れのマリア』にまつわるトラブルへの諸々の対応をつつがなく処理し、この事態について生徒会は手を離すフェーズに入っていた。

しかし…

「まったく終わってなど、いないのですけど」

手元に揃えた資料に目を通す阿稀の顔は、普段の洋風人形を思わせるそれとは異なる渋面を浮かべている。

生徒会として使える手駒とは別に、家の伝手から探偵まで手配して入手した情報だ。
探偵は、社会の裏の筋にまで手が届く、とびきりの手練れ。

しかし、その手腕を振るってなお、これらの情報を入手するのに調査の痕跡を消せず、相手に気取られる危険があったと、探偵からは報告を受けた。

「不甲斐ない。本当に、誰もかれも……この学院を守り育むのに相応しい人物など、やはり大人の中には存在しないのでしょうか……」

阿稀はこの学院を、聖倭女学院を愛している。
愛だ。純粋に、ただ1人の生徒としての、無償の愛。

だが、この学院は、学院の子たちは、残酷で狂暴で、愛が失われたこの世界の中にあって、あまりにも脆く、儚い。
守らなくてはならない。

それが、尊き者の義務。
己が使命に自覚し、指名に殉ずることを誓った者の義務だ。

『血濡れのマリア』などというバカげた与太話であっても、それが学院の子らをむしばみ、地獄に落とすというのなら……それは徹底して排除しなければいけない。
蓋をして終わり、などでは生ぬるいのだ。

そして、そのような対応しかできない大人。
そんな大人に任せていては、学院もまた腐敗していく。
大人では、学院は守れない。

そして……学院が信仰する……神とやら。
ああ、あなたは何も守れはしない。本当にあなたの眼は開いているの?
何も見ず、何もせず、愛などそこにありはしない。

学院に、神など要らない。
オカルトの呪いなどとともに、葬ってしまいましょう。

それが、愛。
阿稀が人として実践する、現世に存在する愛……。


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最終更新:2024年02月25日 14:23