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創作小説with音ゲー  臨時まとめWiki
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Silent

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beatnovel

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264 :Silent:2009/03/12(木) 01:06:29 ID:mXyupyvs0
とある日曜日の夜、一人の女子が自分の部屋の隅でうずくまっていた。
その女の子は涙を流し、嗚咽を漏らしながら泣いている。
この日、彼女は一つの大きなものを失った。
そして…大きな絶望感に襲われていた。
これからどうすればいいのか、どう過ごしていけばいいのか。
不安と絶望が一度に押し寄せた今の状況に、彼女はただ泣くしかなかった…


この日の昼、彼女はゲームセンターで友人達と音楽ゲームで遊んでいた。
いつも通り、IIDXやDDR・ポップンで楽しく遊んでいたのだが…

ξ゚⊿゚)ξ「よし、ちょっとリベンジ行ってくるわね!」
( ^ω^)「お、もしやさっき落ちてたSense2007に挑戦する気かお?」
ξ゚⊿゚)ξ「もちろんよ! さっきは逆ボーダーだったし、もう一度やれば…!」
('A`)「ハードで逃げるという方法は取らんの?」
ξ゚⊿゚)ξ「私はハードクリアランプを極力点けたくないの!」
('A`)「あ、さいですか…」

意気揚々とIIDXの筐体ステージへと上がるツン。
先程チャレンジして、見事に落ちたSense2007(H)にリベンジを果たそうと息巻いていた。

フリーモードを選び、Sense2007を選曲するツン。
曲が始まり、順調にグルーヴゲージを伸ばしていく。

ξ゚⊿゚)ξ(さて、真ん中のここで予行練習…)
( ^ω^)「おお、殆ど減らずに抜けたお!
      この調子なら最後の部分も問題なく行けるかも…」

道中にある、ラストとほぼ変わらない譜面。
ここを問題無く捌けるならば、ラストもまず安定できる…
筈なのだが、意外とラスト目前という事で焦って落とす人も多い。
ツンはその後もゲージを落とす事無くプレーしていき、いよいよ問題のラスト部分。

ξ゚⊿゚)ξ(行ける、これなら…!)

そしてまさに最後の一小節へと突入した瞬間…
彼女の身に、ある変化が起こった。

ξ;゚⊿゚)ξ(……え?)
( ^ω^)「お、おおお! これなら…!」
('A`)「行ける! 行けえぇぇ!!」

そして曲が終了。
画面にはSTAGE CLEARの文字が表示された。
…だが、ツンはクリアした事へのリアクションも示さず、ただその場に立ち尽くしていた。

265 :Silent:2009/03/12(木) 01:10:11 ID:mXyupyvs0
( ^ω^)「おめでとうだお! ツン、見事にリベンジ達成したじゃないかお!」
('A`)「いやー、最後で崩れるんじゃないかとハラハラしてたんだが…心配無かったなー」
ξ゚⊿゚)ξ「………」

友人二人がツンに激励の言葉をかける。
しかし、その言葉にさえ彼女は全く反応を見せず、立ち尽くしたままだった。

('A`)「…ツン? おい、どうし…」
ξ;゚⊿゚)ξ「……何で……これ…まさか……そんな……」

声を発すると同時に、ツンの体が震え始めた。
ゲーム画面は既に選曲画面へと移行している。
だが、そんな事は関係無いかのように、ツンは急に異様な行動に出た。
…自分の側頭部を平手で叩き始めたのだ。

( ;゚ω゚)「な、何してるんだお、ツン!」
(;'A`)「どうしたんだよ一体! おいやめろ、やめろって!」

ブーンとドクオはツンの腕を無理矢理押さえ込み、異様な行動を続ける彼女を必死に止めた。
ツンの顔には数分前のにこやかな表情が消えており、顔面蒼白状態になっている。
それを確認したブーンとドクオは、只事では無い事が起きた事を悟った。
…しかし、その理由を聞こうとしてもツンは全く答えを返さない。
ブーンとドクオの二人に緊張が走る。

(;'A`)「なあ、答えろよツン! 一体どうしたん…」
ξ;゚⊿゚)ξ「……聞こえない……何で…どうして聞こえないの……?」
( ;゚ω゚)「…え…?」

二人はツンが発した言葉に耳を疑った。
『聞こえない』…確かに彼女はそう言葉を発した。
その言葉の意味は、考えるまでも無く…

(;'A`)「ツン…まさか、耳が聞こえなくなったのか…?」
ξ;゚⊿゚)ξ「どうして……何でなのよ……!」

ドクオが問いかけた言葉に全く反応せず、ただパニック状態に陥り続けるツン。
この様子を見て、二人はツンの状況を完全に理解した。

('A`)「ブーン、何か書くものと紙無いか!?」
( ^ω^)「わかった、ちょっとゲーセンの人に頼んで貰ってくるお!」

言うやいなや、すぐにゲームセンターのカウンターへと走っていったブーン。
一方ドクオは、パニック状態のツンを落ち着かせようとなだめ続けた。

('A`)(…ツンが急に妙な行動をしたからどうしたんだと思ったが…
   まさかこんな事になってるとはな…)

266 :Silent:2009/03/12(木) 01:15:30 ID:mXyupyvs0
先ほどのツンの異様な行動は、恐らく耳の異常に気が付いての確認に加え、
パニック状態に陥った事からの行動だったのだろう。
ドクオはツンの背中を撫でて落ち着かせようと試みるが、なかなか元の状態には戻らない。
状況が状況だけに、当然であるとも言えるが…
程無くして、ブーンがA4コピー紙数枚とシャープペンシルを持って戻ってきた。

( ^ω^)「お待たせ、店員さんから紙を貰ってきたお!」
('A`)「サンキュー、それじゃ早速…」

ブーンから紙を受け取ったドクオは、すぐに文面を書き始めた。
ドクオ自身も、ツンの状況を知って軽いパニック状態になっていたが、
あくまで冷静に『伝えるべき事』を吟味し、紙に文を綴っていく。
ブーンは既にゲームオーバーになっている筐体から、ツンのパスを回収。
そしてドクオは、文面を綴った紙をツンに見せて『筆談』を開始した。

('A`)『ツン、今耳が聞こえなくなってるんだよな?
   どういう状態になっているのか、話してくれ』
ξ゚⊿゚)ξ「…微妙にノイズが聞こえてくるような感じで、殆ど何もわからないの。
     鼓膜に振動が伝わってくるのがわかる分、何だか変な感じで…」
('A`)『成程な。まあ…とりあえず病院へ行こう。
   たった今なったばかりだから、もしかしたら治るかもしれないからな。
   何でも早めに治療を受けるのが一番だ』
ξ゚⊿゚)ξ「…うん…」

ツンは様々な音が渦巻く『普段の状態』から、急に音の無い世界に放り込まれた。
その時の衝撃たるや、想像を超えるものであっただろう。
自分自身が普段『あって当然』と思っているものが急に消える。
これは実に恐ろしい事だが、普段そのような事を考えている者は殆どいないだろう。
その分、その状況へと突き落とされた時の精神的ダメージは計り知れない。
ブーン達はツンの心理状態を気遣いつつ、ゲームセンターを出て病院へと歩いていった。

267 :Silent:2009/03/12(木) 01:18:44 ID:mXyupyvs0

病院へ入った後、ツンは検査を受ける事になった。
検査を受けている間にブーンはツンの家へと連絡をし、ドクオは医師からの説明を受けていた。

('A`)「ツンは一体どうなってしまったんですか?
   あんないきなり耳が聞こえなくなるって事あるんですかね…?」
( ><)「検査の結果が出るまで何とも言えませんが、中途失聴というのは普通にある症状です。
      主にストレスや大きい音による耳へのダメージ、ウイルス等によっても引き起こされるんですよ」
(;'A`)「う、そうなんですか?
    てことは、俺なんかも普通に聴力を失う危険性があるって事か…」

話を聞いているうちに、少し恐怖感を感じたドクオ。
正直聞かなきゃよかった…そんな思いが、ドクオの頭をよぎった。

( ><)「そうです、失聴は他人事ではないんですよ。
      …話を戻しますが、失聴には伝音性と感音性、そしてこの二つが混ざった混合性というものがあります。
      簡単に言いますと、内耳までに問題があるか、内耳より奥に問題があるかという事です」
('A`)「内耳って確か、音を聞く為に一番重要な部分でしたよね?」
( ><)「ええ、私達は内耳の働きによって初めて音を聞く事ができるんですよ。
      もちろん耳の一番奥にある為、そこに音を伝える外耳と中耳がきちんと働いていないといけませんがね」
('A`)「…あ、つまり『外耳や中耳に問題があるか、音を伝える神経に問題があるか』という違いですか?」
( ><)「その通りです」

普段こういう事について非常に苦手意識を持つドクオだが、今回はきちんと話を理解しようとしていた。
何せ普段から仲の良い友人がこんな事態になってしまったのだ。
ドクオは自分自身も、なるべく症状についての知識をつけておこうと考えていたのだった。
それは、他ならぬ友人のツンの為だった。

( ><)「例えば伝音性の障害だった場合、補聴器で音を大きくして内耳まで届かせれば聞こえるようにはなります。
      やっかいなのは感音性の方で、こちらは神経に関わっているので大掛かりな治療が必要なんですよ。
      今回はいきなり聞こえなくなったという事ですが、正直それだけではどちらかの特定はできません。
      やはり検査の結果を待ってみないと…」
('A`)「…そうですか…」

医者の説明を聞いたものの、不安要素が積もるばかり。
もし混合性だったら最悪の結果だ。
なるべくならば、伝音性の障害であってほしい…
祈りにも似た気持ちで、ただドクオはツンの検査結果を待ち続けた。

( ^ω^)「ドクオ、ツンの家には連絡入れておいたお。
      多分後十数分で到着すると思うお」
('A`)「ああ、わかった。
   …そろそろ検査結果も出る頃じゃないかな。
   願わくば…悪い結果じゃない事を祈るぜ…」
( -ω-)「………」

268 :Silent:2009/03/12(木) 01:22:19 ID:mXyupyvs0
約十分後、検査室からツンが出てきた。
ツンのもとへと駆け寄る二人。
だが彼女の表情は、相も変わらず沈んだままだった。
丁度その時、ツンの母親も病院へと駆けつけた。
ツンに声をかけるものの、何を言っているのかわからないという反応を返される。
母親は、目の前の信じられない現実に絶望したような表情になった。
慌ててドクオがフォローするも、到底そのショックを和らげられるものではない。
二人を心配するブーン達。
それに加え、先程の医師からの説明が頭の中で回り続ける。
思考がどんどんネガティブな方向へと傾き始めた二人に、後から出てきた医師が声をかけた。

( ,,゚Д゚)「そのまま三番の診察室へお入り下さい。
     検査結果をご報告致します」

言われるままに診察室へと移動した四人。
そこで聞かされた結果は、四人を落胆させるものだった…


J( 'ー`)し「…複合性聴覚障害ですって…!?」
( ,,゚Д゚)「はい、ツンさんの検査結果ですが…
     伝音経路(外耳・中耳)は殆ど機能していませんし、聴覚神経の働きが著しく低下しています。
     とはいえ、こうしていきなり聴覚に重度の障害が起こる事は珍しいんです。
     大体のケースでは、ある程度の初期症状が出てくるものなのですが…」

呆然とするブーンとドクオ。
最もなってほしくない結果になってしまった…その事実が、全員に重く圧し掛かる。
医師は、更に話を続けていく。

( ,,゚Д゚)「ツンさんの場合、原因の特定が難しいんです。
     中途失聴は過度のストレスが原因だったり、大きな音による耳へのダメージ、
     またウイルス等による障害のケースもあるのですが…
     調べたところ、そのどれでも無いようなんです」
(;'A`)「そ、それじゃあ…一体原因は何なんですか?」
( ,,゚Д゚)「今のところ不明、としか…
     実は中途失聴というのは、原因不明のものも多いんですよ。
     ツンさんの場合、まさにそのケースになってしまったとしか…」
J( 'ー`)し「そんな…」

ツンへの説明とドクオ達への説明を交互に続けていく医師。
ツンの表情も、ますます暗くなってくる。
厄介な状態と知らされてしまっては、無理も無い事だが…

( ,,゚Д゚)「後、治療についてなのですが…
     ご本人の同意等もありますし、治療法をこれから説明致しますので…」
( ^ω^)「あ、それじゃあ僕らは部屋の外に出ていますね」

この辺りまで来ると、流石に赤の他人が同席している訳にもいかない。
そう考えたブーン達は、診察室前で待つ事にした。

269 :Silent:2009/03/12(木) 01:26:01 ID:mXyupyvs0

診察室前の長椅子に座り、ツン達が出てくるのを待つ二人。
相変わらず二人の表情は暗いままだった。

( ^ω^)「…なあドクオ、治療方法がどうのとか言ってたけど…
      耳を治すのって、そんなに複雑な事をやるのかお?」
('A`)「聞きかじりな知識で悪いけど、確か音を聴こえるようにするのは
   補聴器を使ったり、人工内耳を付けたりする必要があるんだったかな。
   特にツンの場合は複合性と言ってたし、両方付ける必要があるのかも…」
( ;゚ω゚)「…それって、もしかして手術が必要なのかお!?」
('A`)「人口内耳を付けるんだったら、その必要があるだろうな…
   ツンがそれをよしとするかどうか、そこが問題なんだろうけど…」

そんな事を話していた直後、診察室からツン親子が出てきた。
ツンは微妙にうつむき加減のまま、黙り続けている。
やはりショックがまだ続いているのだろう。

J( 'ー`)し「二人とも、本当にありがとうございます。
     すぐにこの子を病院に連れて行ってくれて、連絡まで頂いて…」
( -ω-)「いえ、そんな…」
J( 'ー`)し「…またしばらくしたら、遊んでやってくださいね」
('A`)「はい…」

わずかな言葉を交わした後、ツンの母親はブーン達に頭を下げた。
ツンもわずかに頭を下げた後、二人で病院を後にした。

('A`)「…俺達も帰るか」
( -ω-)「……うん」

楽しく遊んでいただけなのに、まさかこんな事になるとは…
これまでの事が夢か幻だったら良いのに。
そんな思いが、ブーン達の頭に浮かんでは消えていった。
現実というものは、時に信じられないものや事柄を突きつける。
頭ではわかっているつもりでも、いざその時が来るとこれだけの混乱を生むものとは…
如何に自分達が頭の中だけでわかったつもりになっていたのか、それを実感した二人だった。

270 :Silent:2009/03/12(木) 01:30:00 ID:mXyupyvs0

翌日から、ツンは学校を休んだ。
欠席理由は風邪という事で届けられていたが…これは、ツンの母親によるものだった。
やはり、事実をそのまま学校側へと届けるのは勇気が出なかったのだろう。
休みは長期に渡り、結局その週にツンが出てくることは無かった。
…そして土曜日、ツンが聴力を失って六日目…

( ^ω^)「…ん、メール…誰からだお?」

休日をだらだらと過ごしていたブーンに、一通のメールが届いた。
差出人は…ツンだった。

( ^ω^)「ツンからだお!
      何々…『予定が空いていたら、うちに来てくれない?』かお…」

元々休日に予定などある筈も無いブーン。
メールを読み終わってすぐ、ブーンは自転車に跨ってツンの家へと飛ばした。
途中で同じくツンに呼ばれたドクオと合流し、目的地へと急ぐ二人。
二人とも一週間休み続けたツンが心配だったのだ。

ツンの家に到着し、インターホンを押すブーン。
中から出てきたのは、ツンの母親だった。

J( 'ー`)し「まあ、ブーン君にドクオ君…いらっしゃい。
     遊びに来てくれたの?」
( ^ω^)「ええ、ツンから遊びに来ないかって誘いが来まして」
J( 'ー`)し「あの子が……そう、来てくれてありがとう。
     ツンは今、自分の部屋にいるわ。
     もし良ければ…元気付けてやってちょうだい」
('A`)「…やっぱりまだ、元気無い状態なんですか?」
J( 'ー`)し「多少良くはなったんだけど…やっぱり、ショックはなかなか抜けないものね」
('A`)「…そうですか…」

やはり、まだ心の状態は芳しくないらしい。
そのまま家に上げてもらったものの、ブーンとドクオに迷いが生じていた。
落ち込んでいるであろうツンに対して、どのような顔をしてツンと対面しようか…
結論が出ないまま、二人はツンの部屋の扉を開けた。
しかし部屋へと入ったその直後…二人にとって意外な表情が見え、そして久しぶりな声が聞こえてきた。

ξ゚⊿゚)ξ「いらっしゃい、ブーンにドクオ」

そこには、『笑顔の』ツンがいた。
その表情を見て、安堵感に包まれる二人。
一週間前の痛烈な表情が脳裏に焼きついていた二人にとって、これほど安心するものはなかっただろう。

271 :Silent:2009/03/12(木) 01:34:27 ID:mXyupyvs0
( ^ω^)「おお…いつものツンだお!」
('A`)「良かったよ、心配してたんだぜ?
   あ、普通に会話してるけどもしかして…音、聞こえるようにな…」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんね、実は私…聴こえないままなんだ。
     悪いんだけど、また筆談でお願いできるかな?」
(;'A`)「……あ、ああ……」

だが、彼女の聴覚はそのままだった。
一度は安堵した二人だったが、またすぐに現実へと戻された。
そして三人は一週間前のあの日と同じように、声と文字での会話を始める。

ξ゚⊿゚)ξ「来てくれてありがと。
     何ていうか…迷惑かけちゃったね」
('A`)『何言ってんだよ、友達だったら当然だろ?
   あれで迷惑だってんなら、普段からツンには迷惑かけられっぱなしだぜ?』
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと、それどういう意味よ!
     …なんてね、本当に…ありがとう…」

優しい表情になり、言葉を続けるツン。
その表情を見て、ブーン達の緊張も少しずつ解けていく。
そんな二人の様子を察知したツンは、自分の耳について少しずつ語り始めた。

ξ゚⊿゚)ξ「あれからもう一度耳の検査をしたんだけどね…
     どうも私、補聴器や人工内耳を付けても聞き取りにくい状態のままなんだって。
     その説明を受けて…それならいっそ、このままで良いって思ったんだ」
( ^ω^)『どうしてだお? 少しでも改善されるなら、処置を受けた方が良いんじゃ…』
ξ゚⊿゚)ξ「…私ね、耳が聞こえなくなった日…ずっと泣いてたんだ」

ツンがいつもと違う表情になり、静かに語り始めた。
ブーン達は鉛筆を一度手元へ置き、その言葉へと静かに耳を傾ける。

ξ゚⊿゚)ξ「泣いても叫んでも、物にあたっても…何も聞こえない。
     自分の声さえわからないし、すぐそばで物が落ちても、はっきりと認識できない。
     悲しいときにいつも聴いていたCDを再生しても、何の音が出ているのかさっぱり。
     聞こえるのは…微かなノイズだけ」

すぐ近くにあったテレビ台の扉を開き、ブーン達に見せるツン。
そこには、DVDプレーヤーやゲーム機、そして音楽ゲームの専用コントローラ等が置いてあった。

ξ゚⊿゚)ξ「DVDや普通のゲームなんかは、見るだけでも結構楽しめるんだけどね。
     一番大好きだった音ゲーは…正直、もう楽しめなくなっちゃった」

どこか悲しげな表情で、台の扉を閉めるツン。
そして彼女はそのままの姿勢で、更に話を続けていく。

272 :Silent:2009/03/12(木) 01:37:25 ID:mXyupyvs0
ξ゚⊿゚)ξ「音が無い音ゲーって、こんなにも面白くなくなるんだね。
     あれだけ楽しんでいたゲームなのに…今はもう、やる気が殆ど無いんだ。
     それに…もう音楽が聴けないっていうのも…
     例え治療……しても…せいぜい一部の音…が…多少聞こえるだけだって……」

話しているツンの声が、段々と震えてくる。
それに伴って、表情も徐々に崩れてきた。

ξ;⊿;)ξ「音が聞こえないっていうのが…こんなに辛いなんて思わなかった…
      お父さんや…お母さんの声も聞けないし…ブーンやドクオの声だって…
      何も…何も……!」

これまで堪えていた思いが吹き出し、ツンは涙を流し始めた。
最初にブーン達に見せた笑顔、それは二人に心配をかけさせまいとしたツンの心配りだったのだ。
だが、二人を相手に心の内を話しているうちに…塞き止めていた思いは決壊した。
音が無くなった悲しみは、わずか一週間で消えるはずも無かったのだ。
嗚咽を洩らしながら泣き続けるツン。

その時、ブーンとドクオの二人はツンの肩にそれぞれ手を乗せた。
あくまで優しく、包み込むように。
それに気付いたツンは、顔を上げて二人の顔をゆっくりと見る。
そこには友人として…いや、親友としての優しい顔をした二人がいた。
ドクオは優しく微笑み、ツンに紙を手渡す。
そこには、二人からのメッセージが書かれていた。

('A`)『一人で抱え込むなよ。
   ツンには頼りになる両親がいるし、大切な友人もいるだろ?』
( ^ω^)『僕達じゃ頼りにならないかもしれないけど、心の支えの足しにはなれると思うお。
      それに…音楽は聴くだけのものじゃないお。
      現にさっき、ツンは音楽を楽しんでいたお!』

この文章を見て、ツンは不思議そうに二人を見上げる。
ブーンのメッセージが、不可解な内容だったからだ。

ξ;⊿;)ξ「私が音楽を楽しんでいたって…どういう事?」

その言葉を受けて、ブーンはすぐに紙へ文章を書き足した。
そこには、こう書いてあった。

( ^ω^)『最近無意識に始めたものだと思うんだけど、部屋に入ってきた時ツンは指をリズム良く動かしていたお。
      多分、頭の中で再生していた音楽に合わせて指を動かしていたんじゃないかお?』
ξ;⊿;)ξ「…あ…」

その行為は、確かに耳が聞こえていた頃にはやっていなかった。
音が聞こえなくなり、ツンは無意識に『リズム』を求めていたのだった。
ツンは確かに記憶にある音楽を、寂しさを紛らわす為に頭の中で再生していた。
…確かに、音が聞こえなくてもツンは『音楽を楽しんでいた』のだった。

273 :Silent:2009/03/12(木) 01:43:11 ID:VlalL5710
('A`)『ツンがこれから、音が聞こえなくなった事に対してどう向き合っていくか…
   それはツン自身が答えを出さなくちゃいけない。
   答えを出すまでは、じっくり時間をかけて悩みまくれ。
   そして答えが無事出たら、ブーンも俺も最大限のフォローはしていくぜ。』
ξ゚⊿゚)ξ「うん…ありがとう…」

音楽は耳だけに頼るものじゃない…
そんなブーンの一言が、微かだがツンの心に響いた。
途中で音を無くしてしまった人間は、そう簡単に『自分は耳が聞こえない』と割り切ることができない。
ツン自身は比較的早く障害認識をしたものの、そこからの絶望感に囚われ続けていた。
音楽を心から愛していたからこそ、その絶望は深いものだったのかもしれない。
しかし友人であるブーン達に悩みを打ち明け、そして友人からのフォローを受けたことで
ツンの心に一筋の希望が差し込んだ。
そしてそれは、自分自身の新しい人生へと向き合う覚悟を決めた瞬間でもあった。

ξ゚⊿゚)ξ「…二人とも、ありがとう。
     私…ようやく決心がついた。
     いつまでもこのまま止まってちゃ…何にもならないもんね…」

ブーンとドクオは、その言葉に笑顔で頷き返した。
そしてツンも…笑顔を二人に返した。
長い暗闇から、ようやく抜け出すことができたツン。
彼女は今確かに、新しい人生に向けての第一歩を踏み出した…


一ヵ月後、ブーンとドクオは相変わらずゲームセンターで音楽ゲームを楽しんでいた。
以前と唯一違いがあるところといえば、ツンがいない事…
あれからツンは、音楽ゲーム目当てにゲームセンターへ行くことはなくなった。
ブーン達と遊ぶ頻度は減っていないが、ゲームセンターで遊ぶ事は殆ど無くなったのだった。

(´・ω・`)「…何だかツンが居ないと寂しいものがあるね。
      音が聞こえなくなった…か…
      あれだけ好きだった音楽が聴けなくなって、寂しいんじゃないかなあ…」
( ^ω^)「いや、ツンは今でも音楽をきちんと楽しんでるお」
(´・ω・`)「え?」
('A`)「ブーンの言っている事は本当だぜ。
   ツンは今でも、ちゃんと音楽を楽しむ日々を送ってる」
(´・ω・`)「え、でも確かにツンは耳が聞こえなくなったって…ど、どういう事だい?」
('A`)「はは、つまりな…」

同時刻、ツンは自分の部屋で趣味の絵を描いていた。
少しずつ出来上がっていく絵。
それは、屋外でライブをする人達の絵だった。

ξ゚⊿゚)ξ「ふんふん、ふふん…♪」

自分自身にも聞こえぬ、鼻歌を歌いながら絵を仕上げていく。
あれからツンは、音楽をモチーフとした絵を描き続けていた。
やはりあれだけ愛していた音楽から完全に離れることはできない。
だが、自分は耳で音を楽しむことが難しい。
ならばどうするか…そう考えたツンが取ったのが、『音楽を形として残す』事だった。
音楽を演奏するときの躍動感、そして興奮。
それらを全て、一枚の絵に残してみよう…
そう考えて、ツンは筆をとったのだった。

('A`)「あいつは確かに、音楽を心から楽しんでいるよ」

最後の一筆を書き終え、静かに鉛筆を筆入れに置いたツン。
その顔には、良い音楽を聴いた後の満足感を受けたような笑みが浮かんでいた。



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