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carnival (re-construction ver) Phase 1 -preparation- 後編

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18 :carnival (re-construction ver) Phase 1 -preparation-:2009/05/11(月) 00:08:32 ID:SycOXBYy0
 それから、ユールはどうにかしてクーリー達と合流する事が出来た。
彼女を始めとする三人は電車内の人の多さに驚いていたが、時が経つにつれて慣れていった。
 この時代の電車は普通のものでも結構速い。
この時、ユール達四人が乗車していた電車は
30分の内にカーニバル最寄りの駅であるレイヴン第十地区駅に到着した。

 この時、ユールが思っていた事が二つあった。
サイのマスターが言っていた事と、白いパーカーの彼が言っていた事だ。


 マスターはカーニバルに「マキナ」という何かが隠されていると言った。
それが何かは分からないが、とにかくそう呼ばれる何かがあるらしい。全くのデタラメなのだろうが
 そして、あの白いパーカーの彼はユールに「全てを回帰に導くもの」の封印を命じた。
「全てを回帰に導くもの」の事は全く知らないものだ。何かの小説か何かにあっただろうか。
もしかしたらそういうものが、フィクションの作品の中にはいるのかもしれない。
とユールは思うが、そんな話は今まで聞いた事も見た事も無い。というより信じられない。
それはマスターの「マキナ」もそうなんだけどな、とユールは思った。

 ユールがそんな事を思っているとクーリーが話しかけ、
あれだこれだと話しているうちに電車は第十地区駅に到着した。
下車する時もあちらこちらで人ごみが発生、一気に駅全体が危険地域と化した。
ユールはクーリーと手を繋ぎながら外へ向かっていく。
後ろから、右から、左から、前から衝撃を受けながらも、二人は第十地区駅の外へ出る事が出来た。
 後でユールが人込みの方を振り返って観察してみると
そこではWSF(世界防衛軍のこと。WOSが総指揮を取る防衛軍である)の兵士とみられる人達が
一般人の人々の誘導を試みていた。しかし、WSFの誘導は効果が無いように見えた。
それはそうだとユールは思う。先ほどまであの中にいたが、
WSFの軍服を着た人達はどこにも見当たらなかったのだから。
 ユールはもう一度振り返ってクーリーの背中を見つめ、そして空を見上げた。

 ユールの目に映る空はとても清々しい青空であった。

19 :carnival (re-construction ver) Phase 1 -preparation-:2009/05/11(月) 00:17:49 ID:SycOXBYy0
 ユールとクーリーはレイヴン第十地区駅から抜け出し、
晴れ渡る青空の下で陽光を浴びていた。
ほどなくして雑踏の中からアルベルトとアリスが現れ、そしてどこかへ行ってしまった。
ユール達二人に気付いた様子は無い。
ほどなくしてキリーも二人と共にユールの視界に現れた。

「キリー!また会ったわね!」
「ええ。これからカーニバルへ行くのにどうするの?
 私は専用の送迎バスを使うつもりだけど」

それじゃね、とキリーは言ってどこかへ歩いていった。アルベルト達と同じ方角だ。
ユールがそれを見送っていくと、キリーは長蛇の列に並んでいったのが見えた。
 それを見ながら「専用の送迎バスって?」とユールはクーリーに尋ねた。
その答えに、ハァとクーリーが軽くため息をつく。
カーニバルについて下調べをする以前に誰もが知っていそうな情報だったのだが、
あの古びた家で一切の情報を遮断されてしまっている
状況に置かれているユールが相手では仕方がない、と彼は思ってユールに教えた。

「いつもこの駅とカーニバルを結んでいるのさ。
 大体十分毎に来るんだったかな。平日でさえ人がたくさん来るからね。
 まぁ今日という特別な事情がある日だから、いつもより本数は多いはずだけど」
「へぇ…それは全然知らなかった。
 じゃあ私たちもそのバスで行く?」

「いいけど…」とクーリーはそこで言葉を濁した。
ユールは何かあるのかと問い、クーリーが答える。

「あのバスって、どれも全部満員状態になるみたいなんだ。
 だから、僕は別にいいけど、ユールはどうなんだって事だよ」
「それなら大丈夫。人込みなんてもう平気よ」

20 :carnival (re-construction ver) Phase 1 -preparation-:2009/05/11(月) 00:26:15 ID:SycOXBYy0
「それにしても」とユールが小さく言った。
クーリーが何と言ったかを問うと、ユールは言葉を続けた。

「何か暑くない?ここは夏なの?冬だよね?」
「ユール……地理のテストで赤点を取ってる理由がよく分かった」
「え、何それどういう事?」
「この大陸のこの場所だけ、理由は分からないけど気温が
 大体10℃辺りをキープしているんだよ」
「キープって、いつも?」
「いつも。年がら年中24時間営業中って感じで気温をキープしてる」

そうだったんだ、とユールは答え、キリーが向かった方角を見て言葉を続ける。

「バス以外で行く方法ってあるの?」
「あるよ。歩きだとかタクシーだとか。
 ユール、ここの気候を知らないでそんな服装にしちゃったんでしょ?」
「この黒のコートとね、厚めの長袖の黒い服なんだけど……
 クーリー、アレ貸してくれない?」
「アレって、PSCRの事?(解説。PSCRとは携帯型空間圧縮収納器のこと。
 四次元ポケットとかいう昔の空想上の道具に容量という制限をつけたようなものだ)」
「うん。ここでコートを脱ぐわ」

分かった、とクーリーが答え、上着から半径2cm程度の球体を取り出す。
無機質な白色をしているそれはパカッとカプセルを開けたように開き、
ユールが差し出したコートを突っ込むと、コートが段々小さくなっていくかのように
球体の中にぐいぐい入っていっていく。

「これ、改めて見ると凄い代物だよね」とユール。
「そうだね、僕もそう思う」とクーリー。
二人はそれから少しの間だけ話し合い、それから歩きで行く事に決めた。
駅からカーニバルまで距離にして約2km。若い二人にとって苦にならない距離だった。

21 :carnival (re-construction ver) Phase 1 -preparation-:2009/05/11(月) 00:35:34 ID:SycOXBYy0
 極寒の冬を過ごす人々にとって、
いきなり気温が10℃程度もある場所に行くとなると、
それは真夏を経験するようである。私の知人がそう語ったのだ。
まぁ真夏かどうかは人の個人差によるのだろうが、それはこの物語においてどうでもよい話だ。
 別の知人によれば、徒歩で2kmの距離を歩くのには
二十分もかからないそうだ。私も試してみると、実際その通りだった。

 まぁそんな事は置いておこう。
物語はユールとクーリーがレイヴン半島と呼ばれる最東端の半島に位置する
カーニバル大駐車場にたどり着いた所から再開する。


 ユールとクーリーは徒歩で駅からカーニバルへと向かっていた。
道中で他愛のない会話を交わしながら歩いていると
(とはいえ、中々にその会話の内容はディープなものだったかもしれない。
 彼らの会話の内容が、この日カーニバルで夜の10時から開催される
 トップランカー決定戦についてのものだったからだ。
 例えば、クーリーが「多分、MAKKAさんがIIDX部門で優勝するんじゃないかな」と言えば
 ユールが「いや、クーリーさ、前にKOMAWAがどうとか言っていたよね」と返した。
 会話の当時の有名なプレイヤーの名前を挙げたり、そのプレースタイルをどうこう言ったりするものだった)
地平線の向こうに旗のような物が見えてきた。
黄色の裏地に白く変わった字体で「C」とだけ描かれている。
もう少し歩いていくと、今度は城壁のような物が見えてきた。
最初は旗の立っている見張り台が、それからどんどん下が見えてくる。
古臭い色をした煉瓦の壁がユールの目に入ってくる。
 そうして後ろから三台目のバスが迫って来るのを避けながら先へ歩いていくと、
レイヴン半島を(余談だが、ユールはこの時の会話で半島の名前を知った)
殆ど使って作られ、その大多数を個人のAGCV(反重力コアを埋め込んだ乗り物の事)が占めている、
そんな巨大な駐車場とその四分の一を占める立体駐車場が見えた。

22 :carnival (re-construction ver) Phase 1 -preparation-:2009/05/11(月) 00:45:28 ID:SycOXBYy0
「とても大きな駐車場ね……ここ、全部が駐車場なんだ」

ユールが感心したように言う。
クーリーはそれに頷き、そして前を歩くユールの背を追う。
 ふと、ユールの目に入ったものがあった。
立体駐車場の前にバスが近づく。
しかし、バスはそれを登らず、その入り口前で停車して乗客を停車させていった。
「ねぇ」とユールは立ち止まってクーリーの肩を叩き、指でバスを指し示しながら訊ねる。

「あのバス、何であの立体駐車場を上がらないんだろう」
「あぁ、あれはそういうシステムなんだ。
 カーニバルの構造は知っているよね?というより知っていて欲しいんだけど」
「うん。ポップンの第一ブロック、IIDXの第二ブロック、
 ギタドラの第三ブロック、DDRの第四ブロックだよね。
 それぞれが橋で繋がれていてさ。違ったかな」
「それで大体合っているよ。
 この駐車場、カーニバルの玄関口にもなっているんだ。
 駐車場の屋上から第一ブロックの外壁の城壁があるでしょ?」
「あの古臭い感じのする煉瓦のアレ?」
「それそれ。城壁の上に駐車場からかけられた橋があって、
 そこからカーニバルへ入園するんだ」

へぇ、とユールが納得したように言った。
クーリーはユールが理解を示したことが嬉しかったのだろう、
喜びをその顔に浮かべながらユールに言った。


        「それじゃ、一緒に行こうよ」

38 :carnival (re-construction ver) Phase 1 -preparation-:2009/05/17(日) 00:50:48 ID:C/VzCHF40
 ユールとクーリーの二人は立体駐車場を車が使う坂を使って登っていた。
残念ながら、歩く人のための階段はまだ作られていなかったようだ。
突如、車が発進して危ない目にあった事もあったが、二人がそんな危険を避けながら
立体駐車場の屋上にたどり着いたのは駅から歩いて30分後の事だった。
 周りには動きだしそうな車はいなかった。ユールはその安心からくる心理的な余裕をもって
自分のMPDをいじっているクーリーの方に視線を向けた。
彼はMPDに表示される時刻を確認しているようだった。
ユールからは見えなかったが、MPDは今の時刻を「09:40:23」と表示していた。

「もう09:40にもなるんだなぁ、早いなぁ…」
「え、もうそんな時間になるの?」
「そうだよ」

クーリーはそう言い、次の瞬間には気まずそうな顔をし、口を開いた。

「あ、まずい!」
「どうしたの?」
「第二ブロックで10:00から三作先のACがお披露目なんだ!」
「今のIIDXは12の『HAPPY SKY』だから、15作目ってこと?」
「そうだよ。サブタイトルは『DJ TROOPERS』だって!痺れるねぇ!」
「へぇ、トルーパーズねぇ…軍隊モノ?」
「そうそう。昼間からは第二次隠し要素が出現、第一次の各隠しが解禁されるんだよ!」
「でもそれって、大きなネタバレじゃない?いいの?」
「いいのいいの!このネタバレなロケテみたいなイベントは
 抽選で選ばれた人しか遊べないから。ホラ、これ見てよ。
 チケットが当選したんだ。確率は5000分の1なんだ」
「すごいじゃない!でも情報流出は?そういうのってあるんじゃないの?」
「それは大丈夫。プレー前審査も厳しいからね。そう打ち出していたよ」
「だから情報流出はないって事ね?」
「そういうこと。まぁあのスタッフさん方の事だから、将来15作目がACデビューしたら
 もっと凄い隠しを持ってくるんだろうけどね。今も未来も楽しみさ!」

そんな事を話しながら、二人は立体駐車場とカーニバルとを結ぶ煉瓦の橋の前まで来た。
橋の上には電飾によって大きく、そして煌めくアーチがある。
橋の前の両脇には受付口があり、そこで名前やら住所やらを書いて受付をするようだった。
 この時、二人の他に人はあまりいなかった。
タイミング的に二人は運が良かったといえよう。
 数人の受付の時間待ちを経て、ユールが先に受け付け用紙にペンを走らせた。

39 :carnival (re-construction ver) Phase 1 -preparation-:2009/05/17(日) 01:01:08 ID:C/VzCHF40
「ユール・クーリー。
 住所はレイヴン大陸第五地区○××■……」

ユールは必要事項をすべて書き終え、次にクーリーに順番が回った。

「ジェームズ・クーリー。
 住所はレイヴン大陸第五地区×■◆▽……」

クーリーがペンを走らせている途中、ユールが口を開いた。

「そう言えば、ねぇクーリー」
「どうしたの?」
「どうしてクーリーは何で自分のセカンドネームで呼ばせているんだっけ?」
「あぁ、単にジェームズって名前が嫌なだけ。ユールには悪いんだけどね」
「どうして謝るのよ」
「それは…ほら、僕に話しかけているのにさ、自分に話しかけているような感じにならない?」
「それはないわ。私は私。クーリーはクーリーよ」

ユールがそう言うと、クーリーはありがとうと答えながら
必要事項を書き終えた受け付け用紙を係員に渡した。
二つの用紙を受け取った係員は「カーニバル入園証」と銘打たれたカードを二人に渡し、
「良い時間を」と言ってにっこり微笑み、次の客の応対をし始めた。


(蛇足だが解説。この時代では普通はこういった業務を
 機械等を使って無人で行うため、とても珍しいものだった。
 人が応対するため、非効率的だと指摘される問題点も見受けられたが、
 私はこちらの方が味があって良いと思うし、人々の大半もそう思っていたようだ)

40 :carnival (re-construction ver) Phase 1 -preparation-:2009/05/17(日) 01:11:37 ID:C/VzCHF40
 地上から三十メートルの高度、
立体駐車場からカーニバル第一ブロックまでを結ぶ、煉瓦造りの長さ200mにもなる橋を二人は渡った。
 一度二人が立ち止まって橋の手すりから下を覗き込むと、東レイヴン海が波打っているのが見える。
(テンポを崩すようだが解説を。大陸周辺の海はその大陸の名前を冠する。
 この海の場合はレイヴン大陸の東にあるから東レイヴン海と呼ぶ、という事になる)
その波は力強く、しかし小さく見えた。二人のいる所の高度の関係で
大きい小さいの関係はそう見えるだけだったのだが。
 海を見たユールはなんて高い所にいるのだろうと一種の感動を覚えた。
が、隣で歩くクーリーは感動どころじゃないようだ。
心を動かされるという意味では感動しているのだろうが、
彼は高所恐怖症の人間であったのだ。良い意味での感動に浸っているはずがない。

「ユール…ちょっとそろそろいいかな」
「あ、そろそろ行く?」
「うん…高い所だって認識しちゃうとやっぱ駄目だ。
 早くカーニバルに行こう」

クーリーはそう言うと再び歩き出した。
ユールはいつもより早足で歩くクーリーの背中を追う。
 一羽の烏が鳴き声を上げながら橋の上を飛び、
その影が橋に落ちていった。
誰もがこう思うだろう。「あぁ、烏の影なんだな」と。
しかし、ユールにはそれが不吉な予感として感じられた。
烏。昔読んだ童話によれば、鳥は災厄を運ぶ者とされていた。
「レイヴンの黒い鳥」。そんなタイトルの恐ろしい童話があった事をユールは思いだした。


 ある国での話。小さな子供がごみを漁る烏を追い払おうとしたら
その烏が嘴で子供の胴を貫いて殺して心臓をついばんだ。
それを知って哀しみ、そして怒った両親は烏を銃で殺そうとする。
烏はそれをものともせずに子供の両親を同じように殺してしまう。
そんな事が繰り返され、烏を殺そうとする手段は段々と大々的なものになり、
軍隊が出動して全滅、最後の手段としてミサイルまで運用される事になった。
しかし、信じられない事に烏はミサイルの直撃を受けても傷一つもつけずに生きていた。
烏は多くの死が万延した国を悠然と何処かへ飛び去っていった。


 そんな話だったかしらとユールは記憶をほじくり返してみた。
数秒後に彼女が下した結論は、まぁそれで大体合っているはずだといういい加減なものだった。

41 :carnival (re-construction ver) Phase 1 -preparation-:2009/05/17(日) 01:19:47 ID:C/VzCHF40
 煉瓦の橋を渡り、カーニバルへの門へとたどり着いた二人は驚くべき出迎えを受けた。
 玄関先である第一ブロックから、大量の色とりどりの風船が一気に空へと舞い上がった。
そして、立派な行進隊による、当時のポップンの現行バージョンである
13作目にしてサブタイトルを「カーニバル」とする作品のテーマ曲「ポップンカーニバルマーチ」が
大音声で第一ブロック中に響き渡っていた。

「いつ聞いてもいい曲よね。それにしても、あの曲が本当にマーチング演奏されるなんて」
「素晴らしい事だと思うよ、これは。心からそう思ってる」

ユールの呟きにクーリーはそう返した。
二人の小さな会話を掻き消す程の音量で、
ユール達の立ち位置からでは姿の見えない行進隊はテーマ曲を演奏し続けていた。


 文章だけで表すとなると、これがどれだけ凄かったか、美しかったか、という
程度のことかは分かってもらえないだろう。
それだけ、私に文才が無いという事だ。
ならば、絵でも書いたりしてこのレポートに添付しようかと考えたが、
私には絵の才能もない。下手糞な絵なんざ描いた所で仕方がない。

 話が飛んでしまった。誰も私の身の上話を見聞きしたいという訳でもあるまいに。
ここにお詫びの意を表し、話を進めていこう。
 お詫び替わりに、ここで解説をしよう。話など後でいくらでも進められる。
二人がカーニバルに入園した際、タイミングよく風船が上がり音楽が流れたのだが、
別に二人はVIP的な待遇を受けているという事はない。
あるイベントが始まったと同時に二人が入園したため、
その開始の合図の風船、音楽が二人を出迎えたように見えただけだった。

42 :carnival (re-construction ver) Phase 1 -preparation-:2009/05/17(日) 01:30:51 ID:C/VzCHF40
クーリーは何かに気付いた様子で第一ブロックの外周に建てられている
城壁の見張り台に上って下を見下ろした。そして「あっ!」と叫んでクーリーは続ける。

「ユール!」
「どうしたの?」
「もう『パレード』が始まっちゃってるよ!」

クーリーの言うパレードとは、カーニバル内において
決められた時間で行われる行進イベントである。
 この時代においては珍しい行進イベントであった。
今となっては古臭い、地面にタイヤを介して力を押しつけて走る
ド派手な特殊大型車両の上に(全長600m、幅は30m、高さは40mという化け物車だ)
カーニバルピエロと呼ばれる特殊メイクを施されたこれまたド派手な人々が
踊ったり、その大型車両の周りを動きながら踊っている。


 実はこのパレード、この時代の住人の常識を軽く逸している。
他の遊園地でもカーニバルで行われていたようなパレードはあった。
20分から30分程度で終わるようなものだったが、カーニバルのパレードはそれらに比べると異常に長い。
そう、長さという面でカーニバルで行われているパレードは常識を逸しているのだ。
 カーニバルを構成する全てのブロックは一つの島で成り立っているのだが、
その島を円形の面積に置きかえるとするなら、一番広いのが円面積に変換して半径7kmの第二ブロック。
続いて4kmと3kmの第四、第三ブロック。
最後に一番小さいのは第一ブロック。先述のように半径2km。
 半径2kmの円をのろのろと一周するというだけでも結構時間がかかるが、
このパレードは(まだ解禁されていない第四ブロックを除く)他のブロックも行進する。
この時間から始まったと考えても、終わるのは13時位になるのだろう。
 念のために付け加えるが、(その必要はないのだろうが、念のため)
先の文章はあくまで島の形を円に変え、そしてそれが
どれだけの大きさなのかという事を言いたかっただけだった。
変な誤解を与えたのなら、それは書き手としての私の力不足だ。申し訳ない。

43 :carnival (re-construction ver) Phase 1 -preparation-:2009/05/17(日) 01:40:05 ID:C/VzCHF40
 ポップンカーニバルマーチ(以下、PCMと記述する)が響き渡る
第一ブロック外周を囲む城壁の上に立っていた二人は、
大規模な混雑を避けるためにそこでパレードを見物していた。
 ブロック全体から浮上する大量の色とりどりの風船。
響き渡るPCM。楽しそうな歓声。ユールはそれを見聞きして嬉しくなった。
隣にいるクーリーの横顔を見ても、浮かべている表情はユールのそれと変わらないようだった。
 パレード隊がブロック中央の大きな噴水を中心とする広場に到着、
それを中心にぐるりと回り、隊は第三ブロックの方へ(ユール達から見て右。方角は東)進んでいった。
ゆっくりと時間をかけてPCMと歓声は遠ざかり、風船も浮上する数が減り、終いには無くなった。
 そしてそこで、クーリーは第二ブロックへ行く事、連絡はMPDを用いてする旨を
ユールに伝えると階段を降り、第二ブロックへ通じる橋を目指して歩いていった。
 ユールも人もまばらな第一ブロックに降り、そして噴水へと向かった。
(多くの人が第一ブロックから姿を消した。その理由はパレードの追っかけだそうだ。
 私には信じられなかったが、カーニバルではよくある事らしい)

 石畳の地面を歩いて噴水に近づいたユールは、
噴水広場を囲むようにして建造されている数件の細長い煉瓦造りの建物、
その内の土産屋を営む建物に目をやった。
 時代錯誤ってレベルじゃないんじゃないのか、これは?
今どき、言えばアンティークな、普通に言えば歴史的な風景をこのブロックは持ち合わせている。
ポップンをフーチャリングしているこのブロックだけが、特別こんな作りになっているのだろうか。
ユールにはそれは分からなかった。まぁ、いいか。ユールはそう思い直して土産屋に足を入れた。
 土産屋の近くにベンチがあった。
その上には誰かが置き忘れて行ったらしいカーニバルのパンフレットがあった。
それに掲載されている写真を見る限りでは、どうやらどのブロックも古臭い作りになっているようだ。

 いくらこの日が無料の日とはいえ、土産屋は代金を取っていた。
しかし、ユールが入った店は九割引きセールという事で、
かなり良心的な価格設定だという事は彼女にとって幸運だっただろう。
 ユールは多くの商品を眺めながら歩いていた。
店内では静かに「Atlantic Spotted Dolphin(ACポップン10 ヒーリングフュージョン)」
がBGMとして流れていたが、ユールの目にある物が止まったせいでそれは全く聞こえなくなった。

 ユールが見つめていたのは一体の人形だった。
白い肌、薄い青のセミロングの髪、赤がかかった綺麗な黒い眼。
ただの子供向けのような人形だった。三頭身の着せ替え人形のような、そんな感じ。
ユールはそんな人形に圧倒的なリアリティを感じた。
その人形があまりにもリアリティを追求した物だから、という事ではない。
まるで、そんな人間が確かに実在するような、そんな感じ。
そしてユールは予期していた感じのした気配を背後に感じた。
かつ、かつ、と小さいながらも足音は彼女に近づき―――

    「ねぇ、ちょっとお話しましょ?」

―――ユールの横にいきなり現れた誰かが、そう声をかけた。

 ユールが声のした方を見ると、そこにいたのはあの人形そっくりの少女だった。

44 :carnival (re-construction ver) Phase 1 -preparation-:2009/05/17(日) 01:46:53 ID:C/VzCHF40
 ここで、この物語は一つの段階を終えた。
プロローグに書いたので気づいているかもしれないが、
この物語(式のレポートのつもりだ)は「Phase」という単位で分けている。
 何故、章を意味する「Chapter」ではなく、段階を意味する「Phase」を使うのか。
私にはある考えがあって「Phase」表記を使っている。
単純に「章」よりも「段階」の方がこの物語の本質を言い表しやすいとか、
こちらの方が章表記よりは分かりやすいと私が思ったからだ。
 さて、この「段階」では「preparation」という言葉を使った。
調べてみるとこの言葉は「準備」を意味する単語である事が分かった。
そう、準備だ。私がこの時代における色々な事を説明するための
準備段階であると捉えられるし、後々他の意味でも捉えられるのではないかと思う。

 さて、この「Phase」のエピローグはここで終わりにしよう。
次の「Phase」では色々な驚きが待っていると思う。
どうか楽しみに次の段階を読んで欲しい。それでは、次のプロローグで。





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