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carnival (re-construction ver) Last Phase -day break- St.4
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| 220 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/10(水) 00:03:04 ID:3/295CCY0 |
こうして3月17日の出来事は幕を閉じた。
私はルセと名乗った女性と別れ、アヤノとルークが待つ駅へと向かうバスに乗り込んだ。
二人にジェイと名乗った少年との会話、
そしてルセと名乗った女性との会話の内容を話し、色んな事を検討した。
私はルセと名乗った女性と別れ、アヤノとルークが待つ駅へと向かうバスに乗り込んだ。
二人にジェイと名乗った少年との会話、
そしてルセと名乗った女性との会話の内容を話し、色んな事を検討した。
それによって、以下の事が決定事項となった。
一つは、ルークはもうこの一連の調査行動に関わらないという事。
調査のための機械は気が向いたら作ってくれるらしいが、直接関わる気はないと言ったのだ。
もう一つは、私達のカーニバルに対する調査行動はしばらく控えるという事。
いくら私が命を狙われないとされていても、それが絶対でない限りは注意が必要だとアヤノが言ったのだ。
それに、私もしばらくはユールの事には目を向けたくない時期があった。
一つは、ルークはもうこの一連の調査行動に関わらないという事。
調査のための機械は気が向いたら作ってくれるらしいが、直接関わる気はないと言ったのだ。
もう一つは、私達のカーニバルに対する調査行動はしばらく控えるという事。
いくら私が命を狙われないとされていても、それが絶対でない限りは注意が必要だとアヤノが言ったのだ。
それに、私もしばらくはユールの事には目を向けたくない時期があった。
カーニバル事件を調べると、私のアイデンティティは消失する。
この言葉は、私が事件と何らかの関わりがある事を意味していた。
私のアイデンティティとは何なのか、
つまるところ、私の存在を証明する何かとは何なのかは分からない。
だから恐ろしかった。
この言葉は、私が事件と何らかの関わりがある事を意味していた。
私のアイデンティティとは何なのか、
つまるところ、私の存在を証明する何かとは何なのかは分からない。
だから恐ろしかった。
その恐怖が、この事件から手を引こうと思わせる。
実際、ユールなんてただの他人で、生きていようが死のうが助け出すという意味が分からない。
ただ、彼女は生きてはいるようで安心している。
それに、ジェイとかいう少年も事件を追っているようだ。彼だけに任せればいい。
ユールを美しい世界に連れ戻す、なんて思ったが、カーニバルも十二分に良い所だ。
裏に何かを隠し持っていなければの話だが、もう彼女にとってそれは関係ないだろう。
下手に首を突っ込んで、自分が自分でなくなるリスクを背負いこむ事はない。
実際、ユールなんてただの他人で、生きていようが死のうが助け出すという意味が分からない。
ただ、彼女は生きてはいるようで安心している。
それに、ジェイとかいう少年も事件を追っているようだ。彼だけに任せればいい。
ユールを美しい世界に連れ戻す、なんて思ったが、カーニバルも十二分に良い所だ。
裏に何かを隠し持っていなければの話だが、もう彼女にとってそれは関係ないだろう。
下手に首を突っ込んで、自分が自分でなくなるリスクを背負いこむ事はない。
| 221 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/10(水) 00:12:09 ID:3/295CCY0 |
時は過ぎて二月。その始まりの日。
私は家の掃除をしていた。その日はどこにも出かける用事はなく、
ただひたすら清掃作業に没頭する事が出来た。
そんな中、私は自室からあるものを引っ張り出していた。
昔の学校の成績書だった。小、中学校のものである。
私は家の掃除をしていた。その日はどこにも出かける用事はなく、
ただひたすら清掃作業に没頭する事が出来た。
そんな中、私は自室からあるものを引っ張り出していた。
昔の学校の成績書だった。小、中学校のものである。
とりあえず中を見てみる。
見て、苦虫をかみつぶしたような顔をしてしまった。
とにかく成績は悪い。最低評価は取ってはいないが、平均以下だ。
そういえば、その頃の私といえば、結構ネガティブな人間だったと思う。
どうせ何をやったって無駄だ、そんな事よりどこかに遊びに行こう……
そんな事ばかり考えていたと思う。勉強なんてものは排泄物以下のものだと思ってもいた。
見て、苦虫をかみつぶしたような顔をしてしまった。
とにかく成績は悪い。最低評価は取ってはいないが、平均以下だ。
そういえば、その頃の私といえば、結構ネガティブな人間だったと思う。
どうせ何をやったって無駄だ、そんな事よりどこかに遊びに行こう……
そんな事ばかり考えていたと思う。勉強なんてものは排泄物以下のものだと思ってもいた。
そんな事は置いておこう。
私の存在を証明する、私が私であるという事を証明する何かが
この成績書であるとするなら、喜んでカーニバル事件を続けて調査できる。
しかし、アイデンティティと呼ばれるものがそんなものであるはずがない。
人は存在を否定された時、それと同時に死んだも同然なのだと思う。
息をしているから、心臓が鼓動しているから……
そんなのは生きる理由にならない。私はそう思っているから、これが怖いのだ。
私の存在を証明する、私が私であるという事を証明する何かが
この成績書であるとするなら、喜んでカーニバル事件を続けて調査できる。
しかし、アイデンティティと呼ばれるものがそんなものであるはずがない。
人は存在を否定された時、それと同時に死んだも同然なのだと思う。
息をしているから、心臓が鼓動しているから……
そんなのは生きる理由にならない。私はそう思っているから、これが怖いのだ。
しかし、だ。私は何をやっているのだ?
私は赤の他人であるあの少女のために、命をも投げ出すと決めたのではなかったか?
私はあの少女を美しい世界に連れ戻すのではなかったか?
私はあの少女に起きた悲劇を解き明かしたかったのではないか?
私は全てを知るために動き出したのではなかったのか?
それこそが私の存在を証明する事になるのではないか?
私は赤の他人であるあの少女のために、命をも投げ出すと決めたのではなかったか?
私はあの少女を美しい世界に連れ戻すのではなかったか?
私はあの少女に起きた悲劇を解き明かしたかったのではないか?
私は全てを知るために動き出したのではなかったのか?
それこそが私の存在を証明する事になるのではないか?
だとすると、何かは不明の現在のアイデンティティは消えたとしてもだ。
未 来 で 新 し く ア イ デ ン テ ィ テ ィ は 獲 得 で き る のではないか?
「そうか、そうじゃないか……」
私は呟いた。
これは簡単な事なのだ。
失ったものは何かで代替すればいい。
これが間違っている態度かどうかは無視しよう。そうでないと、体が震えてしまうから。
これは簡単な事なのだ。
失ったものは何かで代替すればいい。
これが間違っている態度かどうかは無視しよう。そうでないと、体が震えてしまうから。
| 222 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/10(水) 00:20:04 ID:3/295CCY0 |
その日の夕方、私はアヤノの家を訪ねた。
玄関の脇にあるインターホンを使って連絡を取り、中に入れてもらう。
玄関の脇にあるインターホンを使って連絡を取り、中に入れてもらう。
「先輩、今から夕食を作る所だったんです。
ナポリタンスパゲッティにしようとしたのですが、何か食べたいものはあります?」
ナポリタンスパゲッティにしようとしたのですが、何か食べたいものはあります?」
玄関に足を踏み入れた途端、アヤノはそう切り出した。
何か食べたいもの……と考え、私はそれが食べたいと言った。
それを聞いたアヤノは、嬉しそうな顔をして奥の方へと引っ込んでいった。
私は何か手伝う事がないかと辺りを見回したが、
既にテーブルの上の準備は済ませてあるようだった。
何か食べたいもの……と考え、私はそれが食べたいと言った。
それを聞いたアヤノは、嬉しそうな顔をして奥の方へと引っ込んでいった。
私は何か手伝う事がないかと辺りを見回したが、
既にテーブルの上の準備は済ませてあるようだった。
それからしばらくして、アヤノは両手に二つの大きな皿を持って現れた。
「お待たせしました、シェフ・アヤノがおつくりしました、スパゲッティです」
「あぁ、ありがとう。頂くよ」
「あぁ、ありがとう。頂くよ」
用意されたフォークを使って食事を進めていく。
アヤノは二口ほど口に入れた後、私にこう聞いてきた。
アヤノは二口ほど口に入れた後、私にこう聞いてきた。
「で、先輩」
「何だ? 味は美味しいぞ?」
「ありがとうございます。でも、そんな事じゃなくて……」
「今日は一体何の用でここに来たのか、だろ?」
「はい」
「……いつ、カーニバルに対する調査は再開させるつもりだ?」
「何だ? 味は美味しいぞ?」
「ありがとうございます。でも、そんな事じゃなくて……」
「今日は一体何の用でここに来たのか、だろ?」
「はい」
「……いつ、カーニバルに対する調査は再開させるつもりだ?」
アヤノはフォークを動かす手を止めた。
何か重大な事を話す前置きか、と思ったのだがそれは動きを止めた手で水を飲む準備動作だった。
ごく、と水を一口飲んでアヤノは言う。
何か重大な事を話す前置きか、と思ったのだがそれは動きを止めた手で水を飲む準備動作だった。
ごく、と水を一口飲んでアヤノは言う。
「時期が来たら、お知らせします。
それまで先輩はいつもの生活を送ってください」
「そんな……アヤノ一人に任せられるか。私だって何か手伝える事は……」
「今のところ、ないんです。作戦立案は一人でできます。
それに今ここで素人が介入されると、ちょっとだけ邪魔なんです」
それまで先輩はいつもの生活を送ってください」
「そんな……アヤノ一人に任せられるか。私だって何か手伝える事は……」
「今のところ、ないんです。作戦立案は一人でできます。
それに今ここで素人が介入されると、ちょっとだけ邪魔なんです」
| 223 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/10(水) 00:30:24 ID:3/295CCY0 |
ちょっとだけ邪魔なんです。この言葉には聞きおぼえがあった。
一年ほど前の事だっただろうか。
私はアヤノと一緒に、ルークと話したゲーセンに遊びに行った。
この時、私はギタドラでセッションしようと言いだし、アヤノはそれを承諾した。
選曲権は私、アヤノ、私、アヤノの順番と決めて
私は簡単な曲を選び、そしてプレーを始める。
この時、私はGFをプレーしており、立ち位置は1P側。スキルポイントは200程。
アヤノはdmをプレーしていて、スキルポイントは700程度だったろうか。
私はアヤノと一緒に、ルークと話したゲーセンに遊びに行った。
この時、私はギタドラでセッションしようと言いだし、アヤノはそれを承諾した。
選曲権は私、アヤノ、私、アヤノの順番と決めて
私は簡単な曲を選び、そしてプレーを始める。
この時、私はGFをプレーしており、立ち位置は1P側。スキルポイントは200程。
アヤノはdmをプレーしていて、スキルポイントは700程度だったろうか。
それから何の問題も無くプレーは終了したのだが
最後にMPDをかざした時に不意にアヤノがこう言ったのだ。
最後にMPDをかざした時に不意にアヤノがこう言ったのだ。
「ねぇ先輩、もうちょっとSP上げた方がいいんじゃないんですか?」
「……下手の横好きって奴でな。そうそう上げれるもんじゃない」
「でも、勘があるじゃないですか。勘が」
「それも絶対じゃないさ。それに高難度の曲は無理だ」
「いや、良いんですけどね、ちょっとだけ邪魔なんです」
「……何が?」
「ちょっとだけずれるんですよ。だから邪魔なんです。
……ごめんなさい、失礼な事を言いました」
「いや、本当の事なら仕方ない。謝るのは私の方だろう。すまない」
「……下手の横好きって奴でな。そうそう上げれるもんじゃない」
「でも、勘があるじゃないですか。勘が」
「それも絶対じゃないさ。それに高難度の曲は無理だ」
「いや、良いんですけどね、ちょっとだけ邪魔なんです」
「……何が?」
「ちょっとだけずれるんですよ。だから邪魔なんです。
……ごめんなさい、失礼な事を言いました」
「いや、本当の事なら仕方ない。謝るのは私の方だろう。すまない」
アヤノの言った一言から始まった回想はここで終わり、現実が再開される。
| 224 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/10(水) 00:38:46 ID:3/295CCY0 |
アヤノは「あと半年待ってください」と言っていた。
半年も、一体何をやるというのだろう。
作戦立案のためだけにこれだけの時間を割くはずがない。
しかし、私には彼女を信じるしか道が残されていない。前に進むしかない。
半年も、一体何をやるというのだろう。
作戦立案のためだけにこれだけの時間を割くはずがない。
しかし、私には彼女を信じるしか道が残されていない。前に進むしかない。
それから半年が経とうとしていた。
七月の半ば、私が夏休みを満喫している時の事だった。
朝の11時過ぎに、私のMPDにアヤノから電話がかかってきたのである。
仕方なくプレーしていたCSのポップンを中断し、電話に出る。
朝の11時過ぎに、私のMPDにアヤノから電話がかかってきたのである。
仕方なくプレーしていたCSのポップンを中断し、電話に出る。
「アヤノか、どうした?」
「先輩、とうとう機は熟しましたよ!
早く私の家に来てください! 待ってますよー!」
「先輩、とうとう機は熟しましたよ!
早く私の家に来てください! 待ってますよー!」
一方的な通達だった。
おまけに私の鼓膜がいたくなるオプションも付けて。
しかし、機は熟したとは一体どういう事なのだろうか。
練りに練った作戦がようやく実行できそうなのだろうか。
とにかく、それはアヤノの家に行けば分かる事である。私は外出の準備をした。
おまけに私の鼓膜がいたくなるオプションも付けて。
しかし、機は熟したとは一体どういう事なのだろうか。
練りに練った作戦がようやく実行できそうなのだろうか。
とにかく、それはアヤノの家に行けば分かる事である。私は外出の準備をした。
| 225 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/10(水) 00:48:27 ID:3/295CCY0 |
私が外に出てから40分くらいは経っただろうか。
それくらいの時間をかけて私はアヤノの家の前に立っていた。
玄関の前にはアヤノが立っていて、私の姿を見るとすぐに手を振った。
それくらいの時間をかけて私はアヤノの家の前に立っていた。
玄関の前にはアヤノが立っていて、私の姿を見るとすぐに手を振った。
「先輩! 待ってたんですよ!」
「仕方がないだろう、少しばかり離れているんだから……」
「仕方がないだろう、少しばかり離れているんだから……」
この暑い時期に、アヤノはそれを無視しているかのように動く。
彼女の夏服から守られていない肌から、汗は一滴も見当たらなかった。
制汗剤でも使っているのだろうか、と意味のない思考を巡らせながら私は家に上がった。
彼女の夏服から守られていない肌から、汗は一滴も見当たらなかった。
制汗剤でも使っているのだろうか、と意味のない思考を巡らせながら私は家に上がった。
この時、既に居間のテーブルには昼食が用意されていた。
美味そうじゃないか、などと言って私はそれを頂くことにした。
しかし、何を用意されたのかは思い出せない。そこは重要ではないので割愛する。
美味そうじゃないか、などと言って私はそれを頂くことにした。
しかし、何を用意されたのかは思い出せない。そこは重要ではないので割愛する。
昼食を食べ終え、アヤノと「good以上の評価割合」で対戦した。
彼女の家のCSIIDXを使って、同じ曲と同じ譜面で文字通りの競い合いを演じる。
使用されたソフトは11作目であるRED(※8)。
選曲されたのは「spiral galaxy」であり、選択された難易度はハイパーであった。
私とアヤノの段位は互いに六段である。実力は均衡していると言っていい。
私は正規譜面というものがやりやすいと感じているために
アヤノからランダムをつけるように言われた。公平に試合を進めるためらしい。
結果は72%対75%で私が負けた。
何かのペナルティがつくわけでもないが
たったこれだけの差で得意げになっていたアヤノに苛立ちを覚えた。
彼女の家のCSIIDXを使って、同じ曲と同じ譜面で文字通りの競い合いを演じる。
使用されたソフトは11作目であるRED(※8)。
選曲されたのは「spiral galaxy」であり、選択された難易度はハイパーであった。
私とアヤノの段位は互いに六段である。実力は均衡していると言っていい。
私は正規譜面というものがやりやすいと感じているために
アヤノからランダムをつけるように言われた。公平に試合を進めるためらしい。
結果は72%対75%で私が負けた。
何かのペナルティがつくわけでもないが
たったこれだけの差で得意げになっていたアヤノに苛立ちを覚えた。
| 226 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/10(水) 00:59:11 ID:3/295CCY0 |
そんなくだらない勝負の話は置いておこう。
アヤノは「勝利の美酒に酔いまーす」と言って水を飲みだした。
酒じゃないじゃないか、と突っ込む気も失せていた私は代わりにこう切り出した。
酒じゃないじゃないか、と突っ込む気も失せていた私は代わりにこう切り出した。
「で、こんな勝負がしたいがために私を呼んだんじゃないよな?」
「えっ、はいそうです。ようやく機は熟したんですよ」
「では聞くが、その機は何だ?」
「えっ、はいそうです。ようやく機は熟したんですよ」
「では聞くが、その機は何だ?」
分かりませんか? アヤノはそう言って自分のMPDを見せつける。
「これですよこれ。見てください」
アヤノのMPDはインターネットに接続されていた。
それに表示されていたのはカーニバルの公式サイトトップページであった。
私は画面を下にスクロールしていき、そこで驚くべき記事を目にした。
それに表示されていたのはカーニバルの公式サイトトップページであった。
私は画面を下にスクロールしていき、そこで驚くべき記事を目にした。
「『8月7日、カーニバルで発生する料金、入園料などはすべて無料になります』……これは?」
「えーとですね、七夕って知ってますか?」
「アレだろう? 短冊という細い紙に願い事を書き、それを飾るとかいう……」
「えぇ。本来は7月7日なのですが、色々そっちの方であったんでしょう。
実際に、レイヴン大陸の元になった所では
8月7日に七夕の祭りがあったという記録もあります。変な所はありません」
「それで、これがお前の言う『機』だと?」
「そうです。ようやく機は熟したんです!」
「えーとですね、七夕って知ってますか?」
「アレだろう? 短冊という細い紙に願い事を書き、それを飾るとかいう……」
「えぇ。本来は7月7日なのですが、色々そっちの方であったんでしょう。
実際に、レイヴン大陸の元になった所では
8月7日に七夕の祭りがあったという記録もあります。変な所はありません」
「それで、これがお前の言う『機』だと?」
「そうです。ようやく機は熟したんです!」
ひどく興奮してアヤノは叫んだ。
私は彼女に落ち着くように言って、熟した機で一体何をするのかと聞いた。
私は彼女に落ち着くように言って、熟した機で一体何をするのかと聞いた。
「その日、多くの来園客が来ると予想されます。
予想では、平常営業の200%程度だと思います」
「二倍と言え」
「んで、あたしと先輩が行っても多分大丈夫だと思うんです」
「前にお前が言っていた。木を隠すなら森の中……だったか?」
「はい。そしてあたしはカーニバルの深部に潜入します。
もう既に内通者のつてはあります。先輩の出る幕は殆どないです」
予想では、平常営業の200%程度だと思います」
「二倍と言え」
「んで、あたしと先輩が行っても多分大丈夫だと思うんです」
「前にお前が言っていた。木を隠すなら森の中……だったか?」
「はい。そしてあたしはカーニバルの深部に潜入します。
もう既に内通者のつてはあります。先輩の出る幕は殆どないです」
| 227 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/10(水) 01:10:01 ID:3/295CCY0 |
「つまり、私は黙って見ていろと?」
「そういう事になります。心配しないで下さい」
「そういう事になります。心配しないで下さい」
それを聞いた私は何だか面白くなかった。
いや、不愉快という感情とは違う。
頼られてない、アテにされていない……そう思う所から来る感情だ。
多分私は悲しかったのだろう。だからこんな事を言ってしまったのだ。
いや、不愉快という感情とは違う。
頼られてない、アテにされていない……そう思う所から来る感情だ。
多分私は悲しかったのだろう。だからこんな事を言ってしまったのだ。
「私は……いてもいなくてもいいのか」
「え?」
「私に出来る事だって何かあるはずだ」
「え?」
「私に出来る事だって何かあるはずだ」
その言葉を聞いたアヤノの顔は変わった。
少しだけ、怒りの色が見える。何かまずい事でも言っただろうか。
少しだけ、怒りの色が見える。何かまずい事でも言っただろうか。
「先輩、いいですか? 先輩は依頼主なんです。
その依頼主が探偵と共に行動して何かいい事でもありますか?」
「……いや、無いだろうな」
「ですよね。だから、その日の潜入調査は任せて下さい。
それに先輩の話じゃ命の保証はされているみたいだし」
「アレは私に対してで、それに絶対の保証じゃない」
その依頼主が探偵と共に行動して何かいい事でもありますか?」
「……いや、無いだろうな」
「ですよね。だから、その日の潜入調査は任せて下さい。
それに先輩の話じゃ命の保証はされているみたいだし」
「アレは私に対してで、それに絶対の保証じゃない」
私はそれだけ言って帰る用意をした。
アヤノは元気に手を振って私を送ってくれた。私も手を軽く振って返した。
アヤノは元気に手を振って私を送ってくれた。私も手を軽く振って返した。
ただ、嫌な予感がしていた。
8月7日の七夕。何かが起きる。
それは私になのかアヤノになのか、それともユールになのか。
分からないが、私の勘は警鐘を鳴らしていた。
8月7日の七夕。何かが起きる。
それは私になのかアヤノになのか、それともユールになのか。
分からないが、私の勘は警鐘を鳴らしていた。
(※8…大して重要なことではないので、間をおいて解説する事にした。
サブストリームを含めるとREDは12作目という事になるが
実は8thと9thのCS作品が発売される間に、全世界の音楽ゲームのプレイヤーに
アンケートを取って作られた、トレジャーボックスという名曲集ソフトがあるため
REDは13作目という事になる。ややこしいが、この時代ではそういう事になっている)
サブストリームを含めるとREDは12作目という事になるが
実は8thと9thのCS作品が発売される間に、全世界の音楽ゲームのプレイヤーに
アンケートを取って作られた、トレジャーボックスという名曲集ソフトがあるため
REDは13作目という事になる。ややこしいが、この時代ではそういう事になっている)
| 230 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/12(金) 23:30:52 ID:tDCSVFlX0 |
8月7日がやってきた。
この日の朝、私が目覚めた場所はあのホテル「ジュデッカ」である。
部屋番号は忘れたが、とにかくそこで目を覚ましたのである。
いつもなら私は自宅で起床し、自宅で就寝する。
一体何があってここで目を覚ましたのかというと、勘の告げた警鐘のせいである。
この日の朝、私が目覚めた場所はあのホテル「ジュデッカ」である。
部屋番号は忘れたが、とにかくそこで目を覚ましたのである。
いつもなら私は自宅で起床し、自宅で就寝する。
一体何があってここで目を覚ましたのかというと、勘の告げた警鐘のせいである。
アヤノが機は熟したと言ったあの日、私は漠然と不安を感じていた。
協力者の助けもあるが、アヤノ一人でカーニバルに潜入するという
あの計画にはどうしても不安を感じていたのだ。
私はアヤノを信用していない訳ではない。
しかし私は彼女を出来る事なら傷つけたくないのだ。
協力者の助けもあるが、アヤノ一人でカーニバルに潜入するという
あの計画にはどうしても不安を感じていたのだ。
私はアヤノを信用していない訳ではない。
しかし私は彼女を出来る事なら傷つけたくないのだ。
だからこうして朝の五時という私にとっては異常な時刻で起床し、
そしてチェックアウトを済ませる事になった。
日はまだ昇っていない。光こそは見えるのだが、まだ暗い。
その時は、第五地区駅前の噴水を見ながら時間を潰していた。
弱い光を照り返しながら噴き出し、そして重力に従って落ちる水を見ながら私は考えていた。
そしてチェックアウトを済ませる事になった。
日はまだ昇っていない。光こそは見えるのだが、まだ暗い。
その時は、第五地区駅前の噴水を見ながら時間を潰していた。
弱い光を照り返しながら噴き出し、そして重力に従って落ちる水を見ながら私は考えていた。
私がカーニバルに行ったところで、アヤノに何か出来るわけがない。
仮に何かが出来たとしても、私は彼女の邪魔になるだけだ。
仮に何かが出来たとしても、私は彼女の邪魔になるだけだ。
これを何回も繰り返していた。
気が遠くなるほどの回数だったか、それとも数回程度の回数だったかは問題ではない。
そのループの中、私は一つの結論を導き出した。それが重要だ。
気が遠くなるほどの回数だったか、それとも数回程度の回数だったかは問題ではない。
そのループの中、私は一つの結論を導き出した。それが重要だ。
私は何もやれなくたっていい。私はただ、見守っていればいいんだ。
| 231 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/12(金) 23:41:04 ID:tDCSVFlX0 |
それから5:30出発の電車に乗り、第十地区駅で下車。
バスは使わずに歩きでカーニバルへと向かった。
旅行鞄を持ちながら歩いていくと、私はある考え事をしていた。
バスは使わずに歩きでカーニバルへと向かった。
旅行鞄を持ちながら歩いていくと、私はある考え事をしていた。
ユールが生きているという事は、
すなわち彼女はカーニバルで生活しているという可能性がある。
もしかするとWOS本部に身柄を拘束されているかもしれないが……
しかし、階級は不明だがあのルセというWSF女性兵士に指図できるような立場にいるのだとしたら
ユールは何かをやり遂げて誰かに認められた、という事になる。
ユールがやり遂げた何か、そしてユールを認めた誰かは分からない。
もっとも、これは仮説なので正解かどうかは分からない。
これはユール自身と答え合わせをしなければ、どうしたって分からないのだろう。
すなわち彼女はカーニバルで生活しているという可能性がある。
もしかするとWOS本部に身柄を拘束されているかもしれないが……
しかし、階級は不明だがあのルセというWSF女性兵士に指図できるような立場にいるのだとしたら
ユールは何かをやり遂げて誰かに認められた、という事になる。
ユールがやり遂げた何か、そしてユールを認めた誰かは分からない。
もっとも、これは仮説なので正解かどうかは分からない。
これはユール自身と答え合わせをしなければ、どうしたって分からないのだろう。
その謎を解き明かす鍵を見つけるには、アヤノの潜入調査に期待するしかない。
私に出来る事は、ようやく登った朝日を見つめ、世界は美しいと改めて感じる事しかなかった。
私に出来る事は、ようやく登った朝日を見つめ、世界は美しいと改めて感じる事しかなかった。
他に何かできる事があるとすれば、花のように黙って見つめる事しか思い浮かばない。
| 232 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/12(金) 23:46:56 ID:tDCSVFlX0 |
私は6:10頃にカーニバルに到着した。
この時に既に多くの人が受付の前に並んでいる。
受付の建物がいくつか増えていて、臨時体制を取っているのだなと分かった。
この時に既に多くの人が受付の前に並んでいる。
受付の建物がいくつか増えていて、臨時体制を取っているのだなと分かった。
私がカーニバルに入園したのは6:30頃だったと思う。
まだ朝が始まったばかりなのに、ここにいた人々は皆生き生きしていた。
死んだ目をしている者はいない。いたのは楽しそうな眼をしている者だけだった。
まだ朝が始まったばかりなのに、ここにいた人々は皆生き生きしていた。
死んだ目をしている者はいない。いたのは楽しそうな眼をしている者だけだった。
その時は、私は第一ブロックにいた。
復興したお土産屋の屋上には喫茶店がある。
屋外に開かれた店で、白いテーブルが10個、白い椅子が30席あった。
ウェイターは二人。マスターと思しき人が一人でやっているようだ。
私はそこでコーヒーとサンドイッチを頼んだ。
しばらくしてウェイターがその二つを乗せた皿を持ってやってくる。
私はそれを受け取り、食しながら下の様子を見る。
復興したお土産屋の屋上には喫茶店がある。
屋外に開かれた店で、白いテーブルが10個、白い椅子が30席あった。
ウェイターは二人。マスターと思しき人が一人でやっているようだ。
私はそこでコーヒーとサンドイッチを頼んだ。
しばらくしてウェイターがその二つを乗せた皿を持ってやってくる。
私はそれを受け取り、食しながら下の様子を見る。
基本的にカーニバルへ入園した者は
パレードでもやらない限りゲームコーナーやお土産屋等の施設にいる。
勿論、屋外にいて楽しそうに話をする者もいる。
カーニバル事件からの復興も完了したおまけに
新たに普通の遊園地にあるようなアトラクションも建造された。
だから、それを楽しみに行く者もいる。
パレードでもやらない限りゲームコーナーやお土産屋等の施設にいる。
勿論、屋外にいて楽しそうに話をする者もいる。
カーニバル事件からの復興も完了したおまけに
新たに普通の遊園地にあるようなアトラクションも建造された。
だから、それを楽しみに行く者もいる。
そしてその中で、私だけが彼らとは違う理由でここにいることを改めて思い知らされる。
しかし私はここで何をしたいのかが分からない。何をすべきなのか、勘も教えてくれなかった。
だから、コーヒーカップを手に取ったまま旅行鞄に取り付けてある
赤ポップ君のストラップに、どうしたらいいんだろうな、なんて言っていたのだ。
しかし私はここで何をしたいのかが分からない。何をすべきなのか、勘も教えてくれなかった。
だから、コーヒーカップを手に取ったまま旅行鞄に取り付けてある
赤ポップ君のストラップに、どうしたらいいんだろうな、なんて言っていたのだ。
| 233 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/12(金) 23:54:57 ID:tDCSVFlX0 |
喫茶店でサンドイッチを食べ終え、
コーヒーのおかわりを頂いていると、誰かが私の席に近づいてきた。
コーヒーのおかわりを頂いていると、誰かが私の席に近づいてきた。
「半年ぶりね、調子はどうなの?」
無言で振り向いて相手を確かめる。
半袖の服に、スラックスのようなズボンをはいた女性がいた。
そこで私ははっとした。椅子から転げ落ち、もう一度横転してから立ち上がって身構える。
半袖の服に、スラックスのようなズボンをはいた女性がいた。
そこで私ははっとした。椅子から転げ落ち、もう一度横転してから立ち上がって身構える。
「お前は……ルセか!」
「そうだけども、少し落ち着こうよ。お互い丸腰なんだし
……すみませーん! コーヒー一杯と苺のショートケーキお願いします!」
「そうだけども、少し落ち着こうよ。お互い丸腰なんだし
……すみませーん! コーヒー一杯と苺のショートケーキお願いします!」
かしこまりました、とウェイターが言ったのが聞こえた。
私は警戒を解いてもとの椅子に座り、ルセは私の真正面に座った。
私は警戒を解いてもとの椅子に座り、ルセは私の真正面に座った。
「で、とうとう私を殺しに?」
「だからさっきも言ったでしょ。そんなつもりは全くないわ」
「それでも、ただ単に話をしに来たわけではないだろう?」
「いいえ、あなたの言うとおりよ、クロイス」
「だからさっきも言ったでしょ。そんなつもりは全くないわ」
「それでも、ただ単に話をしに来たわけではないだろう?」
「いいえ、あなたの言うとおりよ、クロイス」
何故ルセが私の名前を……とは思ったのだが、受付の名簿を見て分かったのだろう。
そう推測して、次に聞いてみたい事が浮かんだ。
そう推測して、次に聞いてみたい事が浮かんだ。
「私の名前は……分かったみたいだな」
「えぇ、とても特別な名前ね」
「特別か……こんな名前を付けた親を恨んでいるとは分からんだろうな」
「良い名前だと思うわよ? それとも何、嫌なの? この名前が?」
「嫌だな。これで幼い頃に散々バカにされた。そんな名前を好きになれるか?」
「いえ……ごめんなさいね、ホント」
「謝る必要はない。それで、少し尋ねたいことがある」
「えぇ、とても特別な名前ね」
「特別か……こんな名前を付けた親を恨んでいるとは分からんだろうな」
「良い名前だと思うわよ? それとも何、嫌なの? この名前が?」
「嫌だな。これで幼い頃に散々バカにされた。そんな名前を好きになれるか?」
「いえ……ごめんなさいね、ホント」
「謝る必要はない。それで、少し尋ねたいことがある」
| 234 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/12(金) 23:58:24 ID:tDCSVFlX0 |
私がそう言うと、ルセの眉がピクリと動いたような気がした。
これは聞いてよいものかどうか迷ったが、決心がついたのは早かった。
これは聞いてよいものかどうか迷ったが、決心がついたのは早かった。
「お前たちは、というかWSFというかWOSと言うべきか……
私の事を一体どこまで知っているんだ? 答えられなければ答えなくていいが」
「ショックを受ける覚悟があるなら、話してもいいけど。
……あなたの通学している大学は把握しているし、あなたの現住所も把握している」
「だろうな。それくらい朝飯前だろうからな」
「まぁ、ちょっとした邪魔はあったの」
「邪魔? 一体誰が?」
「正体不明のハッカーね。誰か特定できればいいんだけど……
それより、今日は無料の日って事で来たんだろうけど、何かやらかすの?」
私の事を一体どこまで知っているんだ? 答えられなければ答えなくていいが」
「ショックを受ける覚悟があるなら、話してもいいけど。
……あなたの通学している大学は把握しているし、あなたの現住所も把握している」
「だろうな。それくらい朝飯前だろうからな」
「まぁ、ちょっとした邪魔はあったの」
「邪魔? 一体誰が?」
「正体不明のハッカーね。誰か特定できればいいんだけど……
それより、今日は無料の日って事で来たんだろうけど、何かやらかすの?」
その言葉に私の心臓が一際大きく鼓動した。
別に私が何かをするわけではない。アヤノが潜入し、情報を得るだけだ。
別に私が何かをするわけではない。アヤノが潜入し、情報を得るだけだ。
「いや、遊びに来た」
「はいウソ。ウソったらウソ。このウソつき!」
「はいウソ。ウソったらウソ。このウソつき!」
ルセは子供が囃したてるようにそう言った。
彼女の態度の豹変ぶりに、私はこう呟かざるを得ない。
彼女の態度の豹変ぶりに、私はこう呟かざるを得ない。
「なんなんだ、いきなり……」
「だってね、目を見れば分かるんだよ?」
「目って、どうして」
「最新式のバイザーを使うまでもないんだよね。
あなたの目だけ、他のお客さんとは違うから。
言っちゃうとね、遊びに来ている人の目をしていないのよね」
「だってね、目を見れば分かるんだよ?」
「目って、どうして」
「最新式のバイザーを使うまでもないんだよね。
あなたの目だけ、他のお客さんとは違うから。
言っちゃうとね、遊びに来ている人の目をしていないのよね」
そんな馬鹿な、と思うと同時に何かひっかかりを感じた。
彼女の発言の何が気になったのだろうか。考えてみて、それはすぐに見つかった。
彼女の発言の何が気になったのだろうか。考えてみて、それはすぐに見つかった。
| 235 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/13(土) 00:02:52 ID:g1lUcB6M0 |
「ルセ、さっき最新式のバイザーがどうしたって言ったな?」
「言ったわよ」
「そのバイザーって、ただの日よけではないのだろう?
見せられたらで良いから、見せてもらえないだろうか」
「言ったわよ」
「そのバイザーって、ただの日よけではないのだろう?
見せられたらで良いから、見せてもらえないだろうか」
私の言葉を受けたルセは、無言で服のポケットからPSCRを取り出し、それを開封した。
中身を見てみると、そこにはゴーグルのようなものがあった。
中身を見てみると、そこにはゴーグルのようなものがあった。
「これ、ゴーグルっていう代物じゃ……」
「そう思うでしょ? でも、これはWSF隊員が戦闘時に使う大事なものなの。
視界に映るあらゆる物体の情報を収集して、戦闘をサポートする。
初期型のこういったサポート装置がサンバイザーの形だったから、そう呼んでいるの」
「そうなのか……ややこしいな……」
「よかったら、つけてみる?」
「そう思うでしょ? でも、これはWSF隊員が戦闘時に使う大事なものなの。
視界に映るあらゆる物体の情報を収集して、戦闘をサポートする。
初期型のこういったサポート装置がサンバイザーの形だったから、そう呼んでいるの」
「そうなのか……ややこしいな……」
「よかったら、つけてみる?」
はい、と言ってルセは私にバイザーを手渡した。
私はこれを装着するつもりは全くなかった。もしかすると何かの罠かもしれないからだ。
しかし、素人がこれに何を仕組んでいるかなんて見ても分かるわけがない。
仕方がないので、私はバイザーを装着する事にした。
私はこれを装着するつもりは全くなかった。もしかすると何かの罠かもしれないからだ。
しかし、素人がこれに何を仕組んでいるかなんて見ても分かるわけがない。
仕方がないので、私はバイザーを装着する事にした。
視界は全くもってクリアーである。何か色がつくのかとは思ったのだが、そんな事はないようだ。
そして、バイザーから送り込まれる情報は膨大にあった。
まず、目の前にあるテーブルは、どこを何キログラムの力で攻撃すれば簡単に破壊できるかとか、
ルセの外見から予測された体重は何キログラムなのかとか、
私が今座っている場所からウェイターまでの距離は何メートルとか、
テーブルの上で煙を上げるコーヒーの成分が表示されていたりだとかしていた。
他にも視界補助機能として、暗視機能や赤外線視認機能はもちろんの事
音波を探知する機能、X線で物を見る機能、エネルギーを視認する機能などが装備されていた。
そして、バイザーから送り込まれる情報は膨大にあった。
まず、目の前にあるテーブルは、どこを何キログラムの力で攻撃すれば簡単に破壊できるかとか、
ルセの外見から予測された体重は何キログラムなのかとか、
私が今座っている場所からウェイターまでの距離は何メートルとか、
テーブルの上で煙を上げるコーヒーの成分が表示されていたりだとかしていた。
他にも視界補助機能として、暗視機能や赤外線視認機能はもちろんの事
音波を探知する機能、X線で物を見る機能、エネルギーを視認する機能などが装備されていた。
「カフェインってのは、結構入っているもんなんだな」
「え、何? そんなことまで表示してるの?」
「細かい事まで、多分私が思いつく限り以上の情報が表示されてる」
「はぁーっ、やっぱ最新型とだけはあるようねぇ……」
「え、何? そんなことまで表示してるの?」
「細かい事まで、多分私が思いつく限り以上の情報が表示されてる」
「はぁーっ、やっぱ最新型とだけはあるようねぇ……」
送り込まれる情報を享受し、何だか面白くなった私は色んなものを見た。
その時私が足をつけていた床の材料は、ある材料Xが70%、材料Yが22%、Zが8%で構成されているのを知った。
見渡せば一つは目に入るカーニバルの旗が、推測でだが約一年半前に作られたものである事を知った。
他にも見たものは山ほどある。
戦闘用として使うだけではもったいない、もっと日常生活で役立てればいいのに。
そう思った私は旅行鞄を見た。鞄はこの材料で作られている表示。いつ作られたかを示す表示。
強度を示す表示。危険度を示す表示。色んな表示が視界を埋める。その中に違和感は確かにあった。
その時私が足をつけていた床の材料は、ある材料Xが70%、材料Yが22%、Zが8%で構成されているのを知った。
見渡せば一つは目に入るカーニバルの旗が、推測でだが約一年半前に作られたものである事を知った。
他にも見たものは山ほどある。
戦闘用として使うだけではもったいない、もっと日常生活で役立てればいいのに。
そう思った私は旅行鞄を見た。鞄はこの材料で作られている表示。いつ作られたかを示す表示。
強度を示す表示。危険度を示す表示。色んな表示が視界を埋める。その中に違和感は確かにあった。
| 236 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/13(土) 00:11:08 ID:g1lUcB6M0 |
こんな色なんてあっただろうか。
旅行鞄はほとんどが白く、いくつかの部品が黒い。
この時代においてはモノクロタイプと呼ばれるものだ。
その鞄に、こんな色なんてあっただろうか。
旅行鞄はほとんどが白く、いくつかの部品が黒い。
この時代においてはモノクロタイプと呼ばれるものだ。
その鞄に、こんな色なんてあっただろうか。
視線をそのままに、私はそっとバイザーを外した。
ルセが「もういいの」と訊ねてきたが、それを無視してゆっくり外していった。
バイザーを外しきった時、私は違和感の正体に気がついた。
ルセが「もういいの」と訊ねてきたが、それを無視してゆっくり外していった。
バイザーを外しきった時、私は違和感の正体に気がついた。
「これが、これが変だったのか……」
「これって、一体何が?」
「これって、一体何が?」
ルセが私の独り言にくらいついた。
いや、これがな……そう言って私は鞄に取り付けていた
赤ポップ君のストラップを手に持ってゆらゆらさせる。
ルセはそれを見て、ははぁと感心したように呟き、こう言った。
いや、これがな……そう言って私は鞄に取り付けていた
赤ポップ君のストラップを手に持ってゆらゆらさせる。
ルセはそれを見て、ははぁと感心したように呟き、こう言った。
「それが、茶色に見えたんでしょ?」
「どうしてそれを?」
「あらー、まだそこは改善されてないのか……」
「質問に独り言で返すのはどうかと思うんだが」
「研究班は何をやっていたんだろう……」
「どうしてそれを?」
「あらー、まだそこは改善されてないのか……」
「質問に独り言で返すのはどうかと思うんだが」
「研究班は何をやっていたんだろう……」
ずっと独り言を続けるルセに注意を向けるため、
私は拳を軽く握ってテーブルをコンコンと多々いた。
ルセはそれにすぐ気付き、ごめんねぇと言って続けた。
私は拳を軽く握ってテーブルをコンコンと多々いた。
ルセはそれにすぐ気付き、ごめんねぇと言って続けた。
「その答えは、多分あなたのパートナーが見つけてくれる」
| 237 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/13(土) 00:21:00 ID:g1lUcB6M0 |
その言葉を聞いて、私はすぐにバイザーを装着した。
色んな視界補助装置を切り替えながら、私はある場所だけを見つめていた。
ターミナルタワーの海面より下、言うならばタワーの深部と言ったところだ。
X線、赤外線、音波、エネルギー……
ほぼ全ての装置を切り替えてそこだけを見たが、
おかしなことに、構造的に考えて海底にも伸びているはずのタワーが見えなかった。
これなら、いるかどうかは分からないが、アヤノの姿なんて視認できるはずがない。
色んな視界補助装置を切り替えながら、私はある場所だけを見つめていた。
ターミナルタワーの海面より下、言うならばタワーの深部と言ったところだ。
X線、赤外線、音波、エネルギー……
ほぼ全ての装置を切り替えてそこだけを見たが、
おかしなことに、構造的に考えて海底にも伸びているはずのタワーが見えなかった。
これなら、いるかどうかは分からないが、アヤノの姿なんて視認できるはずがない。
「見えない? 見えないよね」
「ルセ、タワーの下…下は……?」
「特殊な造りになっているの。
もしここが襲われた時、一番重要なものはタワーの深部にあるのね。
で、特殊な視界を持つ者から見えない素材を使っているの。
……もちろん、来園客の命も大事よ。深部にあるのは二番目に大事なものなの」
「それはお前たちが隠している秘密なんだろう?」
「……言っても言わなくても、正解って事になるわよね」
「ルセ、タワーの下…下は……?」
「特殊な造りになっているの。
もしここが襲われた時、一番重要なものはタワーの深部にあるのね。
で、特殊な視界を持つ者から見えない素材を使っているの。
……もちろん、来園客の命も大事よ。深部にあるのは二番目に大事なものなの」
「それはお前たちが隠している秘密なんだろう?」
「……言っても言わなくても、正解って事になるわよね」
恐らく、アヤノは事前調査を入念に行っていた。
そしてターミナルタワー深部にWOSが隠している秘密、
即ちカーニバル事件とユールの死の秘密があると分かった。
さらに、ルセの「あなたのパートナー」発言から、その推測が当たっている可能性は強まる。
そしてターミナルタワー深部にWOSが隠している秘密、
即ちカーニバル事件とユールの死の秘密があると分かった。
さらに、ルセの「あなたのパートナー」発言から、その推測が当たっている可能性は強まる。
「ルセ、頼む」
「なに?」
「私を今すぐ殺してくれてもいい。だから、彼女には手を出さないでくれ」
「彼女? あなたのパートナーの事?」
「言っても言わなくても、正解になるだろ?
お願いだ。ユールに頼まれたとか異端何とかっていうのを無視してもいい。
その対象を私ではなく彼女に移してくれ。頼まれる義理はないだろうが、お願いだ!」
「なに?」
「私を今すぐ殺してくれてもいい。だから、彼女には手を出さないでくれ」
「彼女? あなたのパートナーの事?」
「言っても言わなくても、正解になるだろ?
お願いだ。ユールに頼まれたとか異端何とかっていうのを無視してもいい。
その対象を私ではなく彼女に移してくれ。頼まれる義理はないだろうが、お願いだ!」
言っていて、私は何を口走っているのだろうと思った。
誰だって、いざという時には自分の命が大事なはずだ。
例外はあるが、ドラマや映画では自己犠牲が当たり前に存在している。
しかし現実においてはそれは絵空事でしかなく、その精神は存在しないはずなのだ。
そう思っていながら、私はある事に気がついた。
そういう意味では、私はまさに「異端因子」なのだろうな、という事だ。
誰だって、いざという時には自分の命が大事なはずだ。
例外はあるが、ドラマや映画では自己犠牲が当たり前に存在している。
しかし現実においてはそれは絵空事でしかなく、その精神は存在しないはずなのだ。
そう思っていながら、私はある事に気がついた。
そういう意味では、私はまさに「異端因子」なのだろうな、という事だ。
| 238 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/13(土) 00:33:15 ID:g1lUcB6M0 |
そんな事を考えていた私の思考は
両目から溢れる涙の感触で現実を考え始めた。
涙を流したのはいつ以来だろうか。そんな思考は生まれた途端に捨てた。
両目から溢れる涙の感触で現実を考え始めた。
涙を流したのはいつ以来だろうか。そんな思考は生まれた途端に捨てた。
「無理ね」
あっさりとこれだけ言われて、余計な思考をキープできるだろうか。
残念ながら、私にはそれは出来ない。出来る者はいるのだろうが、私には無理だ。
残念ながら、私にはそれは出来ない。出来る者はいるのだろうが、私には無理だ。
「そうか……」
私は涙を拭い、旅行鞄を持って椅子から立ち上がった。
バイザーを装着し、駆け出して階段を降りようとすると、
バイザーを装着し、駆け出して階段を降りようとすると、
「待ちなさい!」
ルセが引き留めた。
私は踏み出そうとした左足で強烈にスタンプし、それを軸足にバックターンしながら叫んだ。
私は踏み出そうとした左足で強烈にスタンプし、それを軸足にバックターンしながら叫んだ。
「うるさい! アイツが死ぬかも知れない時に黙っていられるか!」
「だから待ちなさいって。少し落ち着こうよ、あの時は言い忘れてたんだから」
「言い忘れだと?」
「うんそう、言い忘れ。にしてもクロイス、
あなたがここまで熱い人だとは思わなかったわ」
「だから待ちなさいって。少し落ち着こうよ、あの時は言い忘れてたんだから」
「言い忘れだと?」
「うんそう、言い忘れ。にしてもクロイス、
あなたがここまで熱い人だとは思わなかったわ」
怒りと焦りと不安で押しつぶされそうになった頭は
ルセの言葉で落ち着きを取り戻し、冷静な判断が出来るようになった。
それを感謝しつつ、私はルセに向けてこう言った。
ルセの言葉で落ち着きを取り戻し、冷静な判断が出来るようになった。
それを感謝しつつ、私はルセに向けてこう言った。
「言い忘れた事って何だ」
「半年前、あなたに言ったわよね?
あなたを殺さない三つ目の理由は、誰からの命令だった?」
「ユールがお前たちにそう命令したと聞いた」
「そうそう。それ、ちょっとした不備があってね……」
「半年前、あなたに言ったわよね?
あなたを殺さない三つ目の理由は、誰からの命令だった?」
「ユールがお前たちにそう命令したと聞いた」
「そうそう。それ、ちょっとした不備があってね……」
| 239 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/13(土) 00:41:55 ID:g1lUcB6M0 |
そこで私は気がついた。
そして、ユールに感謝しなくてはならないと深く感じた。
いつか必ず彼女に会って、これに「ありがとう」と言わなければならない。
そして、ユールに感謝しなくてはならないと深く感じた。
いつか必ず彼女に会って、これに「ありがとう」と言わなければならない。
「もう気がついたかと思うけど、ユールはこう言ったの。
『カーニバルで起きた事と、私が死んだ事に疑問を持って立ち上がる人が出ると思う。
もし本当にそんな人が現れたら、殺しちゃ駄目。
その人と協力関係にある人も殺さないで。お願いだから』って。今のあなたみたいに」
「それじゃ……」
「あなたのパートナーは監視はしているけど殺しはしない。
色んなデータを取る目的もあるし、私はユールと約束したしね」
『カーニバルで起きた事と、私が死んだ事に疑問を持って立ち上がる人が出ると思う。
もし本当にそんな人が現れたら、殺しちゃ駄目。
その人と協力関係にある人も殺さないで。お願いだから』って。今のあなたみたいに」
「それじゃ……」
「あなたのパートナーは監視はしているけど殺しはしない。
色んなデータを取る目的もあるし、私はユールと約束したしね」
ルセはそう言って笑った。とても良い笑顔だった。
私も笑った。本当に良かったと心の底から思えてきた。
私も笑った。本当に良かったと心の底から思えてきた。
「そういえば、フルールのライブには行かないの?」
「フルール? あぁ、あの歌手か……」
「フルール? あぁ、あの歌手か……」
一月にカーニバルに調査に行った時、
第三ブロックに逃げ込んだ私が見た歌手の名はフルールといった。
あの後、軽く調べたら直ぐに詳細が分かった。
初デビューがあのライブだったようだ。だから「今度また~」という発言をしたのだろう。
そんな彼女は順調に名を知られるようになり、
ついには音楽ゲームの新曲枠(※9)で歌を歌う事が発表された。
第三ブロックに逃げ込んだ私が見た歌手の名はフルールといった。
あの後、軽く調べたら直ぐに詳細が分かった。
初デビューがあのライブだったようだ。だから「今度また~」という発言をしたのだろう。
そんな彼女は順調に名を知られるようになり、
ついには音楽ゲームの新曲枠(※9)で歌を歌う事が発表された。
「……行こう、かな」
「そう? 10:25からだそうだけど、行ってらっしゃい」
「そう? 10:25からだそうだけど、行ってらっしゃい」
そうルセは言うと席を立ってここを去った。
(※9…音楽ゲーム最新作の新曲とは、そのバージョンの新曲と+αとして数曲を足したものである。
αの分は、過去で言う版権曲と、現代のゲームミュージック作曲者が作曲した曲だ。
説明が分かりにくいかもかもしれない。理解できなければ、ここで謝らせていただく。
当時、フルールは最新作であるポップン14に「落ちる流れ星」という歌を提供する事が予定されていた。
実際にそれは提供され、その歌の人気は結構高かったようである)
αの分は、過去で言う版権曲と、現代のゲームミュージック作曲者が作曲した曲だ。
説明が分かりにくいかもかもしれない。理解できなければ、ここで謝らせていただく。
当時、フルールは最新作であるポップン14に「落ちる流れ星」という歌を提供する事が予定されていた。
実際にそれは提供され、その歌の人気は結構高かったようである)
| 240 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/03/13(土) 00:48:35 ID:g1lUcB6M0 |
その後、私はカーニバルで適当に遊び、
フルールのライブに行って、それから家に帰った。
その道中、生きている事の喜び、音楽ゲームで遊べる事の喜び、
そして久々に歌を聴く喜びをかみしめてばかりいた。
フルールのライブに行って、それから家に帰った。
その道中、生きている事の喜び、音楽ゲームで遊べる事の喜び、
そして久々に歌を聴く喜びをかみしめてばかりいた。
そして私は二つの事に気がついた。
一つは、ルセにバイザーを返し忘れた事。
もう一つは、今まで外れなかった勘が外れた事。
私はアヤノが危険な目に遭うかもしれないと勘により察知した。
しかし、現実には何も起こらなかった。初めて、勘が外れた。
この場合、それは良い事なのだが、少なからず動揺していた自分がいた事に驚いた。
一つは、ルセにバイザーを返し忘れた事。
もう一つは、今まで外れなかった勘が外れた事。
私はアヤノが危険な目に遭うかもしれないと勘により察知した。
しかし、現実には何も起こらなかった。初めて、勘が外れた。
この場合、それは良い事なのだが、少なからず動揺していた自分がいた事に驚いた。
そして私の物語は急展開を迎える。
10月10日、アヤノが私を呼びだした。
10月10日、アヤノが私を呼びだした。
「大変な事が分かったんです、先輩!」
留守番電話に残されたメッセージ。それは多分忘れる事はないだろう。
「カーニバルが、WSFが、WOSが抱えているトップシークレットが分かりました!」