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carnival (re-construction ver) Last Phase -day break- St.9

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beatnovel

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16 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 18:45:49 ID:E7A4fxlJ0
 私達二人は外に出て、第一ブロックから修復済みの橋を渡って第三ブロックへと歩いていった。
その時は丁度、ライブが行われようとしていた。
 ユールは私にこれを見ようよと誘ってきたのだ。
もちろん、私に断る理由はない。逆に彼女と一緒にそれを見ていたかった。
 この時はまだ円卓を囲む来園客はあまりいなかった。
良い位置に私達は立ち、そして一番最初のグループの出番を待つ。
開始予定の時間を過ぎても、演者は誰も円卓の上にあがっていない。
円卓を囲う人間の数がどんどん増えるが、誰も円卓の上にいなかった。
これは変だと思ったのだが、私は何も言わないことにした。
もうすぐ何かが始まる気がする。何かが……

「みなさん、今日はー! どうもフルールです!」

 円卓の上には誰もいない。
ただ、スピーカーからは確かにフルールの声が聞こえてきている。
周りの人間がざわつき始めた。隣にいるユールの声もあまり聞こえなくなってくる。

「クロイス、上、上だよ!」
「何だって? 上がどうかし……あ!」

 確かに上に、つまり空にフルールはいた。
ついでに、どういうわけかトナカイまでもが空を飛んでいた。
というよりは空を飛ぶトナカイが、フルールを乗せたそりを引っ張っていた。
おまけにフルールの着た服が赤い気がした。

「今日はクリスマス! 皆さんにプレゼントをしながら歌っちゃいまーす!!」

 フルールがそう言うと、そりの後ろの部分が動いたように見えた。
同時にパラパラと何かが落ちてくるのが分かる。
小さなパラシュートをつけた、小さな正方形の箱であった。

17 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 18:54:46 ID:E7A4fxlJ0
 それらはフルールの歌う「赤鼻のトナカイ(ロック風味)」とともに
ゆっくりとやや重力に逆らいながら落ちてきた。
 私は右手を上に伸ばし、二つの箱を手に取った。
一つをユールに渡し、もう一つは私が持って開けてみる。
中には赤くて丸い小さな球体が入っていた。

「これ、もしかして……」
「クロイス、見て見て! どう?」

 ユールに声をかけられたので、彼女の方へ振り向く。
そこには鼻に先の球体を付けた彼女の姿が見えた。

「いっつも泣いてた トナカイさぁんは!
 こぉよいこそはと 喜びました! イェー!」

 原曲よりロック調な演奏に合わせてか、
フルールの歌もそこらの子供が歌うようなそれに比べて、ノリが良い。

「さぁ、皆でそれを付けて、一緒に歌いましょー!」

 フルールが歌い終えた後でそう言った。
そのための赤鼻なのだなと感心し、私は喜んで赤鼻を付けた。

「それじゃ、もう一回行くよー!
 真っ赤なおぉ鼻のぉ となかいさぁんは! ハイ!
 いっつもみんなの 笑い者ぉ! 皆も一緒にぃ!!」

「「「でもそのとっしぃのぉ クリスマスのっ日!
   サンタのおっじさぁんはぁ いぃいぃまっしったっ!!」」」

18 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 19:06:49 ID:E7A4fxlJ0
 そうしてフルールのパフォーマンスは終了した。
この初めからのものすごい勢いが
この一連のライブの成功を導いたといっても、全く過言ではないと思っている。

 フルールの後は、いつも通りのメンバーだった。
彼女と同じく、音楽ゲームの新曲枠に名を連ねる実力派の様々なグループがいた。
彼らの演奏、歌唱は最高のものである。
 中でも、ロックバンド「Ties of affection」の
「エアポート」という曲が一番聞いて心に来るものがあった。
このバンドのメンバー達が目指しているのは「綺麗で暖かいロック」なのだそうだ。
 ちなみに、彼らがこの曲を演奏し終えた時に驚くべき知らせがあった。
この曲がGFdm新作の新曲としてプレーできるようになるのだという。
正直に言うと、私はかなり嬉しかった。あんな綺麗なロックをプレーできるなんて。


 そして14:00を過ぎたあたりにはライブは終わり、
次は14:30~15:45、16:00~17:40、最後の開催時間が19:00~23:00であるアナウンスが流れた。
最後のライブの時間だけが長いが、何か特別な事でもあるのだろう。
私はすでに宿の確保はしているから、最後のライブを観る事は出来るだろう。

「ねぇクロイス、さっきのはとても良かったね!」

 そんな考え事をしているときに、ユールはそう声をかけてきた。

「あぁ、次はどうする?」
「次? そうだね、じゃあクロイスに任せる」
「そうか……んじゃ、一度第一ブロックに戻っていいか?
 あそこの土産屋の屋上に喫茶店がある。そこのサンドイッチが美味いんだ」
「うん、分かった。じゃあそこに行こう!」

 ユールはそう言い、私の後をついていく形で歩き出した。
この時もまた、メトロを使わずに歩いて橋を渡ることにした。
それは私が美しいカーニバルの景観を眺めながら歩きたいということもあったし、
なにより隣にはあのユールという少女がいる。
メトロなんか使って早く目的地に着くより、
折角だから一緒にいられる時間を増やしたいと思うのは当たり前だと思う。
それに……あの喫茶店が、ユールと別れる場所になるから。

19 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 19:19:09 ID:E7A4fxlJ0
 歩き始めてから二十分ほどが経った。
土産屋の前で立ち止まり、空を見上げる。
カーニバルに訪れた時より、雲の量が増えている気がする。
雨が降るかもしれない。いや、この寒さだと雪が降るだろう。

「ところで、お前、寒くはないか?」
「ううん。クロイスはどうなの?」
「私は別に寒くはない。
 ただ、その喫茶店が屋上にあるから
 お前は大丈夫かと思って聞いたんだ」
「そう……やっぱクロイスは優しいんだね」
「なんでそうなる。行こう」

 人に褒められるというか、良い言葉をかけてもらえる経験というのはあまりない。
だから私は恥ずかしくて、そんな返ししか出来なかった。

 階段を上って、私達は屋上の喫茶店にたどり着いた。
とりあえず顔を合わせるように席につき、
そしてウェイターに注文をして頼んだものが来るまで話をすることにした。

「ねぇクロイス、ここで過ごしたらどうするの?」
「……一回カーニバルを離れる。行かなければならない所がある」
「そこって?」
「母親の墓だ。面白い所でも何でもない」
「なに、命日が今日って事?」
「いやまぁ、そうなんだが……人の事情を詮索して楽しいか?」
「クロイスも人の事を言えるの~? なんてね。ゴメンね」
「いいや、いいさ。人の事は言えない。
 ところで……今日はクリスマスだよな。何の日かは知っているか?」

20 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 19:30:15 ID:E7A4fxlJ0
「何かの宗教の、なんか凄い人が生まれた日だって、マキナから聞いたんだけど」
「まぁそれで正解だ。けど、サンタクロースの事は知っているか?」
「うん。子供のいる家族が見せる幻でしょ?」
「お前、その答え方はないだろ……
 そうじゃなくて。それもゆうが言ったのか?」
「違うよ。私が小さい頃に、クーリーの父さんが相談したの」
「何て?」
「『ちょっと、ちょっとユールちゃん。
  実はジェームズにプレゼントを渡したいんだがなぁ……』
 って言われたのが、確か七歳くらいの時のクリスマス三日前だったかと思うんだけど」
「で、それでお前は何て言ったんだ?」
「『自分の子供なのに、何をプレゼントしたら喜ぶか分からないの?』って。
 それを相談しに来たっていうのに、私ったらダメよね。
 結局クーリーのお父さんは、何かのぬいぐるみをプレゼントしたはずよ」
「そうか……それがきっかけで、お前はサンタクロースの事を知ったわけだな?」

 ユールはうん、と言いながら頷いた。
その時の事を頭の中で思い浮かべてみて、
ユールは少なからずともショックを受けたに違いないと思った。

「そうか……」
「でも、今の子供たちなんて皆知っているでしょ?」
「確かにそうだな。この日にプレゼントをしてくれる奴は、親か親戚の誰かだ。
 サンタクロースの名を騙った、偽物だ……」
「クロイス? どうしたの?」
「いや、なんでもない。
 ちょっと私が話をしていいか? ちょっとだけ長いが」
「いいよ」
「分かった。だが少し時間をくれ。何を言うか整理するから」

21 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 19:39:13 ID:E7A4fxlJ0
 それから数十秒の時が経った。
ユールが急かしたので、私は言葉を探りながら口を開くことにした。

「サンタクロースの由来って知っているか?」
「由来? 知らない。マキナは知ってるかもしれないけど」
「そうか。それだったら教えよう。
 私もうろ覚えで、記憶している量は少ないが……
 ……昔にだな、ニコラオスって人がいたんだよ」
「ニコラオス?」
「そう、ニコラオスだ。この人がサンタクロースの由来となった人物らしい」
「らしい?」
「さっきも言ったが、今から話す事は全部うろ覚えの事だ。
 気になったら自分で調べてくれ」
「分かった」
「それで、このニコラオスという人はどこかの国で
 例の宗教の司祭をやっていたらしい。まぁ偉い人ってところだ。
 ある日ニコラオスは、三人の娘を嫁がせる事の出来ない家庭の存在を知った。
 理由は簡単だ。貧乏だからだ。このままでは娘達は身売りで飛ばされてしまう」
「なんか、やばいんじゃない?」
「そうだ。確かに危機的な状況下にはあったはずだ。
 そこでだ。ニコラオスは真夜中にその家にやってきた。金貨を持ってな。
 で、ニコラオスは誰にも見つかることなく、
 その家の煙突から金貨を投げ入れた。
 丁度その家の暖炉では、靴下が下げられていた。洗濯したものを乾かしていたんだろう」
「それで?」
「それで終わりさ。誰が渡してくれたのかは知らないが、例の金貨で
 貧乏一家は助かった。娘を売り飛ばさないで済むんだからな。
 そして……本当にそれで終わりだ。何回も言うが、これはうろ覚えだ。
 これを鵜呑みにするなよ? 気になったら自分で確かめる方が利口だ」
「分かった、分かったよ。で、それがサンタクロースの由来?」
「そうだ」
「良い話じゃない!」
「そうか、そりゃよかった」

22 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 19:55:25 ID:E7A4fxlJ0
「でもさ、クロイス?」
「どうした」
「さっきクロイス、なんか変だったよね?」
「変? 何が?」
「サンタクロースは子供の親とかが演じる偽物だ、みたいな事を言った時よ」
「言ったな。それが変だったか?」
「何か、怒っているみたいだった」
「怒る? まぁ確かに怒りたくなるさ」

 私がそう言うと、ユールは何を言っているんだろうというような顔をした。

「え? それってどういう意味?」
「まだ分からないか、これがどういう事かってのが」
「全然。どういう事?」
「……まぁ話そう。私にとっては話したくはない事だが、いいさ」

 私はそう言って、一度深呼吸をする。

「もう知っているだろうが、私の名前はサント・クロイスというんだ」
「知っているけど、その名前がどうかしたの?」
「何回も私の名前を言ってみろ。そうしたら分かる」
「分かった。サントクロイス、サントクロイス、サントクロイ……あ!!」

 どうやら分かったらしい。
どうして私が、自分の名前を嫌う理由が……

23 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 20:06:23 ID:E7A4fxlJ0
「そうか、クロイスの名前、あぁそうか!
 この名前は『サ ン タ ク ロ ー ス』になるんだ!!」
「そういう事だ。お前、今まで分からなかったのか……
 子供の頃は、よくそれでネタにされてな、その名前が嫌になった。
 クロイスなんて姓は別に良いんだ。
 問題なのは、サントって名前だけだった。それだけの話だ。
 いや、それだけじゃない。もう一つだけ教えておく」
「え、まだ何かあるの?」
「あるさ。さっきニコラオスの話をしたな?
 その人は私の先祖……だと母から聞いた。かなり遠い血筋らしいが」
「ええぇ!? そんじゃ、クロイスは……」
「私は、サンタクロースの由来となった人物を先祖に持ち、
 そして名前もサンタクロースっぽいという、ふざけた奴ってことだ」
「……すごいじゃん! すごいじゃん!!」
「まぁそう騒ぐな。お前を黙らせるのにぴったりのプレゼントを用意してある」

 私はそう言って、コートのポケットから、赤と青の二つのPSCRを取りだした。
それをユールに手渡し、これを私が去った後に家に戻ってから開けるように言った。

「家に帰ってからじゃないと開けちゃ駄目なの?」
「あぁ、駄目だ。ここで開けると色々とまずい。
 開ける順番も決まっている。赤を開けて、次に青を開けてくれ」
「そう……あ、クロイスの頼んだサンドイッチ、来たよ」
「お前の苺パフェもな。それじゃ、頂くとしよう」

24 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 20:18:17 ID:E7A4fxlJ0
 こうして私はユールにプレゼントを渡し、そしてカーニバルを離れた。
そこから私は南へと歩を進めた。そこには私の母の墓がある。
 元々、母はレイヴン大陸の出身だった。
だからファルコン大陸に墓はない、という決まりはないのだが、
父の提案で、母の墓はレイヴン大陸に作られることになった。

 それには理由がある。個人情報の公開は嫌だが、ここはぐっとこらえる。
私がまだ幼い頃、母はクリスマスプレゼントを買うためにレイヴン大陸を訪れたのである。
 今ではカーニバルがレイヴン大陸第十地区を代表する施設だが、
元々そこには何もなかった。何もなかったからこそ、
冬でも例の特異気温で凍りつかない東レイヴン海を見に行く人が多かった。
 私のリクエストで、母は東レイヴン海の写真を撮影することになった。
母はこれに応えて写真を撮影してくれたのだが、悲劇はそこで起きた。

 母が家を出発してから数日後のことだ。
家にレイヴンの警察が電話をかけてきたのだ。
その電話曰く、母は水死体となって発見されたという。
 原因は全く持って不明。
母は自ら命を絶つような人間ではないし、そうする理由もメリットも無い。
何かの事故で死んでしまった、と考えるのが一番自然なのであった。
 母が死んだ事を出張先で知った父は、すぐに飛んで戻ってきた。
そして、悲しい顔をして私にこう言ったのである。

「大丈夫だよサント。母さんはお前のせいで死んだんじゃないから。
 それで、母さんのお墓を建てなきゃいけない。
 僕は母さんの故郷であるレイヴン大陸に、
 そして死んだ場所の近くに墓を建ててやりたいと思っている。
 サント、お前はそれでいいかい?」

 幼い頃の私に、はいもいいえも言えないと思うのだが、
父は確かにそう言ったのである。私は深く考えられずに首肯した。


 そんな訳で母は死に、そして私が向かう先に墓が建てられたのである。
母の墓はこの先にある岬に建てられている。
何もない場所に、ただ一つだけある石の墓標。
そこに私は、まさに目の前に立っていた。

25 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 20:30:27 ID:E7A4fxlJ0
「母さん。私は……昔から勘が優れていたと言ったけど、
 あれは全部、与えられたものだった。
 母さんが、お金のために私を提供したのかもしれないな。
 もしかすると、父さんかもしれない……いや、そんな事はどうでもいい」

 私は母の墓の前で口火を切った。
単なる独り言である。しかしこれは、私にとってはある種の宣誓なのだ。

「私は、与えられたもので自分の存在を証明する気にはならない。
 私を証明するものは、人の幸せのための挺身の心だ。
 体の中に流れるサンタクロースの血が、そう叫んでいる。
 ……だから母さん。もし、ここにいたとしたらと仮定をした上で話す。
 この一年で色々な事が起きた。だが、私は大丈夫だ。
 揺るぎのないアイデンティティを得る事が出来たから。だから、大丈夫だ」

 私は母の墓にそう告げた。
そして踵を返し、カーニバルの方へ歩いていく。
既に時刻は15:00を過ぎている。
急がなくてもいい。ゆっくり歩いていこう。

26 :carnival (re-construction ver) Last Phase -day break-:2010/05/29(土) 20:33:42 ID:E7A4fxlJ0
 ここで、私の物語は幕を閉じる。

 これで大体の謎は明かした。
明かしていない事はないとは思うが、
もしあったとしても、これまでのを読めば分かるだろう。
それに、もうこんなに長いものを書くのはたくさんだ。

 しかし、もう少しだけこの物語は続く。
あと少しだけ、読んで欲しいものがある。
私と別れた後のユールの物語である。





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