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13 :Style:2007/11/30(金) 21:48:47 ID:Ic4lJ7+d0
十一月を目前にした、とある日。
その日は雲一つ無い快晴だった。

外では子供達の遊ぶ無邪気な笑い声が聞こえる。

しかし、その子供達が遊んでいるすぐそばにあるマンションの一室では、ある男がしかめっ面をして悩んでいた。



('A`)「ああ、どうしても上手くいかねえ…」



彼はドクオ。
若手のサウンドクリエイターとして様々な楽曲を日々生み出している。
しかし、彼はとある事から悩みを持ってしまい、仕事に支障が出るほどになってしまっていた。


('A`)「俺は…どこを目指してるんだ?どうすればいいんだ…?」


このような自問自答を繰り返す毎日。
事の発端は、一週間程前の友人との他愛も無い会話だった…

14 :爆音で名前が聞こえません:2007/11/30(金) 21:51:09 ID:Ic4lJ7+d0
一週間前、飲み屋にて…


('A`)「それでよ、キツすぎて放置しちまったんだよ。」

(´・ω・`)「ドクオ、そりゃ駄目だろーよ…でも、僕も多分そうするな。」

('A`)「お前も人のこと言えないじゃないか、ははは。」


昔からの友人であるショボンと歓談するドクオ。
そして、恒例の事をドクオはショボンに聞いた。


('A`)「ところで、今回の曲はどんな感じだった?感想を聞かせてくれよ。」

(´・ω・`)「ああ、あのCMの曲かい?良い感じだったと思うよ。
      シーンにしっかりマッチしているし、音の作りもばっちりだと思ったよ。」

('A`)「マジか、ありがとうな。
   たまにショボンは自分も気付かない部分を突っ込んでくるから、怖いんだよなー」

(´・ω・`)「でも、無駄にはなってないだろ?」

('A`)「まあな、その点は毎回非常に感謝してるよ。」


ドクオは新しい曲を作ると、毎回ショボンに感想を聞く。
ショボンはかなり的確な指摘をしてくれる為、ドクオにとってはある意味良いパートナーのようなものだ。
今回は特に何も突っ込まれなかったので、一安心したドクオ。

だが、その後にショボンが続けた言葉がドクオの心に深く突き刺さることになる。

15 :爆音で名前が聞こえません:2007/11/30(金) 21:53:04 ID:Ic4lJ7+d0
(´・ω・`)「あ、そうだ…今回の曲に限った事じゃないんだけど、一つ言っていいかな?」

('A`)「ん、何だ?」


こんな切り出し方をするショボンも珍しいなと思いつつ、ドクオは耳を傾ける。


(´・ω・`)「この前、最近のドクオの曲を一通りまとめて聴いてみたんだけど…
      何ていうのかな、『ドクオらしさ』が見えてこないんだよ。」

('A`)「…え?」


意外な言葉だった。
さらにショボンが言葉を続ける。


(´・ω・`)「ドクオは今までジャンルが違う曲を色々作ってきた訳だけど、
      それぞれ単品で聴いて『あ、これはドクオの作品だ』って、感じ取ることができないんだよね。
      全部が全部そう…という訳じゃないんだけど。」

('A`)「………」


ドクオにとって、それはショックな一言だった。
ドクオ自身のトラックメイキング技術は高い。
だからこそ評価されて仕事を得るまでになった訳なのだが…

曲から『自分の色』を感じ取ることができない。
これは曲を作る側にとっては、非常に痛い言葉だった。


(´・ω・`)「まあ、逆にそれがドクオの特徴ともいえるのかもしれないけどね。
      気にしないで頑張っていきなよ。」

('A`)「…ああ…」


何でもない、ただの雑談だったはず。
その雑談は、一気にドクオを悩みへと落とす原因になってしまった。

16 :爆音で名前が聞こえません:2007/11/30(金) 21:54:46 ID:Ic4lJ7+d0
('A`)(自分らしさ、か…)


一週間経っても、まだ悩んでいるドクオ。
曲製作を請け負うという事は、クライアントの要望に応じて自分を曲げる…妥協しなければならない事も多い。
事実、ドクオも頭の中に浮かんだイメージを壊し、仕方無しに作り直す事が何回もあった。
とはいえ…


('A`)「…ふう、こう家の中で長時間悩んでいたら気が滅入るな。
   ちょっと外で気分転換してくるか。」


自転車に乗り、外へ繰り出したドクオ。
行く当ても無いので、適当な場所をぶらぶらとしてみる。




適当に動いた先で、大きめな商店街を通過したドクオ。
そこでは八百屋等の掛け声に混じって、様々な音楽が流れてくる。
流行のJ-POPから大御所のビートルズ・ちょっと懐かしい曲等…
それぞれの店の色によって様々だが、実に多様な音楽がドクオの耳に入ってきた。
その度に、ドクオはどうしても色々考えてしまう。


('A`)(ビートルズに坂本龍一…
   こんな大御所と自分を比べるのは失礼だけど、確かに凄い。
   少し聴いただけで『このアーティストの曲だ』とわかるもんな…)


どうしても、曲のスタイルについて考えてしまうドクオ。
そんな事を考えているうちに、目の前に小さなゲームセンターが見えた。


('A`)(…ちょっと遊ぶか。
   たまにはこういう所でストレス発散してもいいよな。)

17 :爆音で名前が聞こえません:2007/11/30(金) 21:56:21 ID:Ic4lJ7+d0
自転車を道の脇に停め、ゲームセンターに入るドクオ。
学生以来久々に感じる、この雑多な感じ。
しかし楽しさが詰まっているこの空間に、先程の複雑な気分が少し飛んでいった。

早速、目に付いたゲームで遊ぶドクオ。
UFOキャッチャー・モグラ叩き・シューティング…
こういう施設で散財するのもたまにはいいな、と思いながら遊び続けた。


しばらく遊び、何か他にめぼしい物は無いかと店の奥へ行く。
そこで目の前に入ったものは…


beatmaniaIIDXだった。


('A`)(…懐かしいな、もう何年やってなかったか…)


元々ドクオは、初代beatmaniaからプレーしていた。
プレーしているうちに、その影響で作曲を始めたのだった。
そのまま曲作りにのめり込む内に、いつしか仕事としても成功していった。
ただ、曲作りを始めて以来beatmaniaには全く触れていなかったのも事実。
実に約五年ぶりの対面だった。


('A`)(…久々にやってみるか。
   七鍵盤は2nd位までしかやってなかったから、もうきついかもしれないけどな…)

18 :爆音で名前が聞こえません:2007/11/30(金) 21:57:49 ID:Ic4lJ7+d0
筐体の前に行き、硬貨を投入する。
昔より値段が下がっている事に少し驚きつつも、ゲームを開始する。


('A`)「へえ、NORMALなんて難易度ができてるのか。
   レベルを見る限り、昔のLIGHT7っぽいな。
   …って、普通難易度がHYPERなんて表記にされてんのか?
   後、ANOTHERがほぼ全曲に設定されてら…
   もう隠し譜面にはなってないんだな。」


とりあえず、昔慣れ親しんだ曲からプレーしていくドクオ。
5.1.1に.59・RUGGED ASH等…
流石に五年ぶりなので、一部の曲は危ない感じではあったが無事クリアできた。
四曲設定だったので、次が最後。
ここで、新しい方の曲をやってみる事にした。


('A`)「難易度がどれも高いな…
   仕方ないからNORMALに変更しておくか。
   さて、と…これをやってみるか。」


選んだのは『spiral galaxy』
あえて最新作から選ばないのはドクオらしいというべきだろうか。
ゆっくりと楽しみ、プレーを終えた。

19 :爆音で名前が聞こえません:2007/11/30(金) 21:59:39 ID:Ic4lJ7+d0
('A`)「久しぶりだったけど、結構楽しかったな。
   …せっかくだし、もう一回やるかな。」


丁度順番待ちの人は誰も居らず、ドクオはそのまま二回目のプレーに突入した。
次は比較的最近の曲から選ぶ事にし、適当に目に留まった曲を選択した。

最初に選んだのは『LESSON 5』
軽快なポップスだなーと思いつつプレーしていたドクオは、ちょっとした事に気付く。
どこかで感じたような…何だろう、この感覚は。
そんな事を思いつつ、一曲目を終了。
選曲画面に移っても、ドクオは少し考え込んでいた。


('A`)(さっきの曲…あの音…どこかで…?)


妙な感覚を覚えつつ、別の曲を選択する。
二曲目、三曲目は違和感無く終了した。
そして四曲目、これまたたまたま目に付いた『Foundation of our love』
曲が進む毎に、あの妙な感覚がまた来る。


('A`)(確かにこの音や調子…どこかで聴いた様な……!?)


曲がもう少しで終わり、という所で『ある事』に気付いた。
だが、確証は無い。
そこでドクオは、プレーが終了してすぐに自転車へと飛び乗り、家へ飛んで帰った。
すぐさまパソコンを起動して、ある事をインターネットで探す。


…そして辿り着いた先が、『djTAKA作曲一覧』だった。

20 :爆音で名前が聞こえません:2007/11/30(金) 22:01:27 ID:Ic4lJ7+d0
そのページには、彼の別名義で作った曲も羅網されていた。
じっくりと書かれている曲表を見ていると…

そこには、先程プレーした『.59』『spiral galaxy』『LESSON 5』『Foundation of our love』が入っていた。


('A`)「やっぱり…あれらの曲、全部同じ人が作っていたのか。」


チルアウト・テクノ・ポップス。
ジャンルがこれだけ違うのに、どことなく何処かで聴いた事があるような音…と感じたのは、これが原因だった。
同時にそれは、今の自分に足らないものだった。

元々ドクオは、beatmaniaに影響されて多種多様な曲を作り始めた。
だが、自分自身に『これが好き』というものや『こういう感じを目指したい』というものが無く始めてしまった。
そのまま曲作成の『技術』だけを突き詰めたため、半分宙に浮いた状態になってしまったのだ。


改めて自分自身のルーツを見つめ直すドクオ。
自分は何が好きだったのか、何に惹かれていたのか。
当時よくプレーしていた楽曲なども思い出しながら、根幹の部分をもう一度見つめた。



…そして、彼は結論を見出した。

21 :爆音で名前が聞こえません:2007/11/30(金) 22:04:18 ID:Ic4lJ7+d0


(´・ω・`)「最近、ドクオの曲に一本芯が通ってきている感じがするね。」

('A`)「そうか?まあ、そう感じてくれたのなら嬉しいかな。」


いつもの居酒屋で、ドクオはショボンと再び会っていた。
そこには約一ヵ月半前の悩みが消えたドクオがいた。

あの後ドクオは、まだ不完全ながらも自分自身の根幹を見つけることが出来た。
その結果、自分の曲に所謂『ドクオスタイル』を出すことが出来るようになってきたのだ。
以前のドクオは、変幻自在なスタイル…所謂、一つの形を持たないスタンスだった。
結果、そのような『注文通りの曲』を欲する企業等からの受注数は減ったが…
ドクオのスタイルに惚れ込んだ場所からの作曲注文やライブオファーが増え、結果的には以前より良い状態になった。


('A`)「ショボン、ありがとうな。」

(´・ω・`)「ん、何が?」


ちょっと照れ笑いをしながら話すドクオ。
そんなドクオを、少し不思議そうにショボンが見る。


('A`)「いや…な、今回も良いアドバイスをくれて感謝してるって事だよ。」

(´・ω・`)「それ、この前も聞いた様な気がするけどな。
      僕のアドバイスなんて一つの意見に過ぎないんだから、あまり囚われなくて良いと思うよ。」

('A`)「いや、ショボンのアドバイスは貴重だよ。
   これからも毎回聞かせてもらうから、よろしくな。」


これを聞いて、ショボンが小さく笑う。

22 :爆音で名前が聞こえません:2007/11/30(金) 22:06:05 ID:Ic4lJ7+d0
(´・ω・`)「どうしたんだよ、今日はいつもと違うなー
      …まあ、僕はドクオの曲のファンだから、何かあったらいつでも相談に乗るよ。」

('A`)「ああ、ありがとう。」

(´・ω・`)「本当に何だかいつもと違うなあ。
      …まあいいや、そろそろ何か頼もう。
      お腹が減ってきたよ。」

('A`)「そうだな、じゃあいつものやつ頼むか。
   すみませーん、串揚げおまかせ10本とモツ煮にホッケ開きー!」


いつものように、楽しく語らいながら食事を取る二人。
そこには、迷いを破って一回り成長したアーティストの顔があった。
そして、そのアーティストを優しく見守る者も。



街はクリスマスムードが強まり、年末の到来が近い事を実感できる。
来年は、ドクオがサウンドコンポーザーとして大きく飛躍できる年となるかもしれない…



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