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音楽ゲームクロスワードパズル事件 -後編-

最終更新:

beatnovel

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125 :旅人:2008/01/07(月) 01:39:49 ID:ZSqGjG+T0
少し時間を遡って、小暮と町田のクロスワードパズルを解いていく姿を見てみよう。

四時半になって、大方のマスを埋める事に成功していた。
音ゲーファンである方々なら分かるようなキーワードは全て町田が解決、マス目にペンを走らせていった。
英語表記の音ゲー曲の、その意味するところを問うキーワードは小暮が担当、順調に解読を進めていった。
例えば「PLASMA」と書き入れるべき所にあたるキーワードはこんな感じになる。

「血漿。自由に運動する正・負の荷電粒子が共存して電気的に中性になっている状態」

こんなキーワードを書くなんて、犯人は結構な知識を持っているのかと小暮は思った。
町田はこのキーワードを見て、小暮君の教えている子って凄いんだねぇと呟いていた。


午後五時を回り、ようやく小暮と町田はクロスワードの全てのマスを埋める事に成功した。
結果「普通の」答えは大桟橋であった。
横浜の豪華客船ターミナルには爆弾は設置されていないだろうと小暮は考えた。
さて、爆弾が設置された大桟橋とは一体どこにあるのか?
この市にある二つの橋…市長により大桟橋と命名された、その橋に爆弾はあるのだろう…と小暮は考えた。
一方、このクロスワードの本当の事情を知らない町田は

「うん、子供が考えたにしちゃ結構な出来だったと思うよ。正直全然分からないところもあった。
このアナザーワードの答えも全部絞り込めたし、後は小暮君一人で頑張ってね。それじゃ」

とだけ言って白壁を後にした。
小暮は心の底から町田に感謝し、そして自分の成すべき事を成した。
上着のポケットから自分の携帯電話を取り出し、田中の携帯電話にコールした。
ワンコールも終わらないうちに、田中はすぐに応対した。

「こちら田中。小暮、どうだ?パズルは解けたか?」

「ええ、全部解けました。彼女の、町田さんの助けが無ければ絶対に解けませんでした。
それだけ、このクロスワードパズルの難易度は高い。音ゲーをやらない人間であればあるほど高いんです。
答えですが、普通の答えは『大桟橋』です。刑事さん、確か車の中で某国の上官が…って話をしましたよね」

「あぁ、したな………ん?まさか!」

「えぇ、そうなんです。犯人はその上官を狙っていると思われます。犯行の計画はこんな感じでしょう。
某国の上官がどちらかの大桟橋を通って市の中心街に遊びに行く。その道中の大桟橋を通っている時に橋を爆破。
・・・アナザーワードは、二つある大桟橋を特定するためのものみたいです。
アナザーワードヘルプというアナザーワードを絞り込むための枠には『High Level』とだけあり、直訳すると『高難度』という意味です。
町田さんが答えを絞り込んでくれました。結果、アナザーワードには三つの曲名が存在するということが分かりました」

「三つ!?それじゃ足りないぞ。アナザーワードの答えは6マス分じゃないか!」

「そうなんです。けど僕は、それこそが犯人が最後に仕組んだトラップじゃないかと思います。
アナザーワードについての懇切丁寧な説明、音ゲーをやらない僕たちには分からないけど、
町田さん曰く『一部を除けば簡単なヒントで構成されている』というマス埋め作業。
ここまで解読者に親切にしていたら、最後の最後に何かやらかしそうじゃないですか?」

「…詳しく、聞かせてくれ」

「刑事さん、爆弾解体処理班みたいなチームがありますよね?それを準備させながら聞いてください。
三つの曲名はですね…『冥』と『デイドリーム』と『イノセントウォールス』なんです。
刑事さんの言うとおり、この三つだけじゃアナザーワードは完成しない。
しかし、この市の大桟橋には正式名称がある。
『大桟幕橋』と『大桟冥橋』がこの市にはある。冥が被っているから、大桟冥橋に爆弾は設置されたのかも…とね、僕は考えました。
かなりの確率で大桟冥橋に爆弾が設置されていると思われます」

「分かった。すぐに処理班を編成して向かわせる。ありがとう。報酬は事件が解決したらたっぷりと払う」

そう田中が言った後、小暮は通話を切った。そして、急ぎ足で白壁を出て行った。
彼の顔には、事件が解決したという安堵の色は無い。これからが大仕事だと、彼の心は叫んでいた。
小暮の足が早足から徒競走並みの速さで回転した。人の多い通りを彼は無我夢中で走っていった。

126 :旅人:2008/01/07(月) 01:42:29 ID:ZSqGjG+T0
某国上官は音ゲーの市まであと10kmもあるかないかという所を走行していた。
外はもう五時と少しばかりだというのに、ライトで照らされている所以外は真っ暗である。
上官の運転する車の後ろをついて行く車が一台。
その運転手は音楽ゲームクロスワードパズルを製作し、この事件の計画を企てた犯人である。
犯人は運転中に前の車、即ち上官の車に発信機をつけていた。
これにより、この車を追い越して先回りし、あの大桟橋の上を上官の車が走行したと確認して、
助手席においてある遠隔操作の爆破装置を作動させることが出来る。
これを犯人はもう一度視認して笑った。
そして自分の命が狙われているとも知らない上官はCDプレーヤーを一曲リピートに設定して、ずっとB4Uを聴いていた。
ノリノリで歌いながら上官はハンドルを切った。

爆発物処理班は大桟冥橋の調査をしていた。どこに爆弾があるのかを調べるためである。
橋の上を走って細々としたところを確認し、ボートで橋の裏側を調べたりしていた。
その様子を小暮は田中と共に見ていた。

少し前の時間の話になる。
小暮は通話を切った後、全速力で走りながらもう一度田中に電話を掛けたのだった。

「刑事さん、今すぐ迎えに来て下さい。お願いします、早く!」

「どうした?事件は解決し…」

「しません。このままじゃ事件は絶対に解決しないんです」

「どういう事だ、小暮?」

「すみません、嘘の事を言いました。爆弾は多分、大桟冥橋にはありません」

「あ?それじゃ…」

「大桟幕橋にあると思います。橋の名前とパズルの答えが被っていた所でですね、
それが導き出した解答だとは到底思えないんです。今僕は、駅に向かって走っています。
駅前のベンチで待っていますから、早く迎えに来て下さい!お願いしますよ!」

分かった、と田中はそれだけを言って電話を切った。小暮はゼィゼィハァハァしながら全速力で走った。
走って走って走り続けて、小暮は駅前のベンチの集まるところに辿り着いた。

それから三分後、小暮は田中の屋根に赤く光るランプを付けた車に乗り込んで大桟幕橋へと向かった。
サイレンを鳴らしながらその車は全速力で道路を疾走する。
その車がBGMとしてかけ流しているのは、犯人から送られた物の中にあったIIDXREDのサントラから、RED ZONEである。
RED ZONEを大音量でかけ流しつつ、前方を走る車を追い越しながら田中が言った。

「小暮、本当に大桟幕橋に爆弾があると思うか?」

「多分きっと絶対あります。…狙撃用ライフルってこの車の中にありますか?あれば貸してほしいのですが…」

あ?と、前方を走っていた車を追い越し終わってから田中が言った。そして、あると答えた。

「ありがとうございます。決して悪いようにはしません。絶対です」

「分かった…だが、どうして嘘の情報を言ったんだ?処理班は全員で払ってしまったんだぞ」

「処理班がいなくとも、僕達だけで爆弾の脅威を取り除けるかもしれません。
それに、犯人に署内の連絡記録などを傍受されていたとしたら、たまったもんじゃありません。
敵を欺くにはまず味方から…でしたっけ?まぁ、一種の保険みたいなものです」

「保険、か…ところで小暮、どうして爆弾が大桟幕橋にあると思ったんだ?」

「それは…冥を除いたアナザーワードの二曲のアルファベットの一部を選んで並び替えていくと
『SCREEN』となるからなんですよ。…これが絶対的な証拠だ、と言うつもりはありませんが。
最後のどんでん返しでね、こういう事ってありそうじゃないですか。ねぇ、刑事さん?」

「そうだな…どんでん返しか、十分ありそうな話だな。小暮探偵、お前は本当に凄いよ」

127 :旅人:2008/01/07(月) 01:44:40 ID:ZSqGjG+T0
その頃某国上官は「B!B!B!B4U!」と歌いながら下り坂を走行していた。
もう何十回B4Uを流しているか分からないが、上官にとってそんな事はどうでもよかった。
カーナビが、次の交差点を左へ曲るようにと指示を出していた。
上官はそれに従ってハンドルを左へ切った。後ろから続いた犯人は右にハンドルを切った。
上官は一つの大桟橋へ、犯人はもう一つの大桟橋から近い高い山の近くにあるコンビニへと車を走らせた。

大音量でRED ZONEをかけ流しながら走った豆腐屋の車の中で田中に教わったとおりに、小暮はライフルの構え方などを確認する。
消音機もバッチリ。安全装置も外した。
後は狙うだけ。
小暮が覗くスコープの視界は大桟幕橋の裏側にあった。

アナザーワードは、大桟橋の特定の他に爆弾がどのようなところにあるかも教えてくれていたのだった。
白壁と呼ばれるイノセントウォールス。大桟幕橋の裏側の壁は白かった。大桟冥橋の裏側は黒かった。
つまり、それが何を意味するのかというと…もう言わなくても分かるだろう。


爆弾は大桟幕橋の裏側にあるのだという事を意味していた。


犯人は下り坂の先の十字路を右に曲がった後、コンビニで車を降りて高い山の階段を駆け上がっていった。
右手に持つレーダーに上官の車の位置と大桟幕橋の裏側に設置した爆弾が、点として光っている。
左手には遠隔操作の爆破装置が握られている。犯人は爆破ショーを高みの見物をと決め込んでいた。
山を登り、開けた崖で犯人は立ち止まる。結構な高さを上ったものだ、と犯人は思った。
そして、右手にあるレーダーを見る。上官と爆弾の距離はもう、2kmも無かった。

小暮はスコープの十字の照準に爆弾を捉えていた。正確にはそこから少しずれた所だ。
クロスワードを作り、爆弾も自作し、わざわざ橋の裏側に設置するような大仕掛けの犯罪だ。
犯人には無いと思っているミスがあるかもしれない。
甘い考えかもしれないが、そのミスが照準の脇にある爆弾にあるなら、小暮が狙っている場所を撃つ事は無駄ではないかもしれない。
決して爆弾がその機能を果たさない事を期待していたわけではない。
爆弾の設置状態が悪化している事に小暮は期待していた。
…こんな大仕掛けの犯罪なら準備には相当な時間を要するだろう。
…爆弾の設置だって並の苦労ではないはずだ。
…爆弾を橋に張り付けているものが寿命を迎える事だってあり得る。
…橋の裏側に爆弾を設置するのは高度な技術を要するはずだ。
そう小暮はそう考えていた。橋にある爆弾をそのまま解体することは難しいだろう。
なら、橋の下にある川に爆弾を落とせば、それならば爆発しても被害はそれほど大きくならないはずだ。
橋の裏側に爆弾をつけるなんて手段が限られてくるはず。その手段次第では、爆弾を川に落とすことが出来るかもしれない。
こんな考えを田中に話した時、彼はこう返した。

「やってみる価値はある。…それで、事件は解決するかもしれない」

128 :旅人:2008/01/07(月) 01:49:25 ID:ZSqGjG+T0
小暮は爆弾が何で大桟幕橋に張り付いていたのかを理解した。細いワイヤーだった。
アレなら寿命が来て爆弾が落ちる事は無いだろうと思われた。
あのワイヤーを撃って切る事が出来れば、爆弾は川へ落ちてゆく。絶対に。
小暮はそう確信して、照準をワイヤーに合わせてトリガーを何回も何回も引いた。
音も無く弾丸を飛ばすライフル。その銃口から大口径の弾丸がワイヤー目がけて何発も飛んでいく。
全弾がワイヤーに命中、小暮の読みどおりに事は進んだ。爆弾が重力に逆らうことなく川へ落ちてゆく。


犯人はスコープで大桟冥橋を見ていた。警察のが意味も無い行動を続けているのが手に取るように分かった。
分かって、大笑いした。
なんて無能なんだ、警察という組織は。本当に無能だ。無能すぎる!
ヒントも殆ど簡単なものにしてやったクロスワード一つさえ、奴らには解けなかった。
無様な警察。己が無能を思い知れ!と本当にそう口にした犯人はレーダーをもう一度見た。
上官と爆弾の距離はあと600m程であった。その数字はどんどん減少していく。500、400、300…数字は確かに減っていく。
とうとう、数字は100mを切った。二桁の数字を表すレーダーを見て、犯人はまた大笑いした。
そして左手を掲げて、 目を瞑って「ヒャッホウ!」と叫び、赤い起爆ボタンを押した。
少し遅れてドーンと音が聞こえた。
目を開けたとき、そこには崩れ落ちてゆく大桟幕橋が自分の目に映るのだろう。そう確信して犯人は目を開けた。


爆弾は、水面に触れた時に爆発した。


小暮と、その近くに立っていた田中は、強烈な爆風で吹っ飛ばされた。二人は思いっきり背中から着地した。
小暮は立ち上がろうとしたが、駄目だった。気を失ってしまったのだった。田中が小暮をゆするが、返事は無い。
田中はすぐに自分の職場に連絡を入れて、その後に救急車を呼んだ。
周りは野次馬達で騒がしいというのに、小暮が目を覚ますことは無かった。死んだ、という訳ではなさそうだが。

129 :旅人:2008/01/07(月) 01:52:19 ID:ZSqGjG+T0
「どうして…俺の完璧な計画が…無能な警察に…?あいつらは違う橋を探していたのに…どうして、どうして…」

大桟橋に近い山の開けた場所で、この事件の首謀者が呆然として突っ立っていた。

「俺が所属する暗殺組織が目をつけたあの上官を殺せば、俺は巨万の富を得ていたに違いないのに…
俺の計画は完璧だったのに…どうして爆弾がちゃんと働かなかったのだろう?どうして…」

彼の顔には諦めに近い表情が浮かんでいた。
お終いだ、お終いだと彼は心の中でずっと呟いていた。

「これで俺は殺される…奴を殺れなかったから…どこかで組織のスナイパーが俺の頭を狙っているんだ…ハハ・・・
畜生…奴を殺って俺は儲けるはずだったのに…畜生!死んでたまるかぁ!組織が何だ!俺は死なないぞ、俺は死」

彼はバーン!という大きな音を聞いて前へ吹っ飛んだ。自らの意思ではなく、何かの沢山の物に吹き飛ばされていた。
何だろう、と思う間もなくいきなり視界が真っ暗になった。と同時に沢山の何かが体中を貫いて猛烈な痛みを残していった。
また、それと同時に体が浮かんで落ちてゆく感覚があった。あ、俺の目の前は崖なんだっけ。
そう彼が思い出してから少し間をおいて、彼の五感や内臓や脳は彼の意思に反して機能を完全に停止した。

犯人の後ろで散弾銃を構えていた男が一発、犯人の背中を狙って発砲した。犯人の体は簡単に吹っ飛んで崖から落ちていった。
何秒か経ってドサッという音がした後、散弾銃の男は崖から下を見下ろした。そこには役立たずの暗殺者の死体があった。
近隣の住民らしき人物が死体を見つけ、震えているのが目に見えた。その人はすぐにそこから逃げ去った。
恐らくは警察に電話するのだろう。自分や組織にはなんら不都合は無いと思われるが、立ち去った方が良いだろう。
そう思い、犯人を殺した男はその山を立ち去った。


音楽ゲームクロスワードパズル事件。
後にそう呼ばれるようになった事件のその後はどうなったのか。犯人は捕まったのか、その動機はなんだったのか。
上官は無事だったのか、そして、小暮はどうなってしまったのか。

結局、犯人は捕まらなかった。動機も分からなかった。
推測される動機のひとつとしては、某国上官に恨みを持っていたのではないか、というものがある。
上官に恨みを買うような行為をしたことは?と取り調べるが、上官は身に覚えがないと述べた。
上官は傷一つ負う事は無かった。むしろあの爆発が何かの演出と思っていたらしい。
これを聞いた田中刑事はただ、溜め息を一つつくばかりであった。
爆発から数分後、大桟冥橋に近い高い山の近くに住む住人から死体を発見したとの報告があった。
警察はこの死体を検死、その死体が背中から複数の銃弾を撃ち込まれていた事を確認した。
警察側の見解では、この死体こそが犯人であったに違いないと見ている。

130 :旅人:2008/01/07(月) 01:55:19 ID:ZSqGjG+T0
小暮のその後はどうなったのだろうか。
実際、ただ気絶していただけだった。救急車が来た頃には彼はピンピンしていた。
その後田中と共に救急隊員らに土下座をする羽目にはなったのだが。
小暮は警察から報酬百万円を手に入れて、その後の警察の活動には手を出さなかった。
あと、大桟幕橋は少しぐらついただけで、後に市による修繕が行われると予告されただけだった。

音楽ゲームクロスワードパズル事件から三日後の日曜日。
朝方、小暮は自分の事務所の電話から町田に連絡していた。
昼頃から白壁で遊ぼうよ、と彼は町田に誘い、彼女は賛同した。

昼の一時、白壁の出入口辺りで小暮と町田は合流した。
小暮がドラム、町田がギターで一回セッションした後、三日前にパズルを解いていた休憩スペースに向かった。
小暮が近くの自販機で350mlの缶コーラ二本を買って戻っていく。かんぱーいと町田が言って乾杯した。
小暮は町田に合わせてアルミ缶を打ち合わせた。ゴクリと一口飲んでから町田が話した。

「ねぇ、三日前の大桟橋爆発事件、私生で見たんだよ!
誰も信じてくれないんだけどさ、小暮君ねぇ、信じてよ!結構五月蝿いんだね、爆弾の爆発音って。
これ、どこかの有名なバンドのライブ見るより貴重な体験だと思わない?」

「そう思いますよ。僕も、爆弾が生で爆発するところと有名バンドのライブ、
どっちを見ると言われたら爆弾を見るって言いそうです。あ、そのことで一つ」

言って、小暮は金一封とかかれてある封筒を町田に渡した。

「何も言わずに受け取って下さい。今日はこれを渡すために誘ったようなものですから」

「うわぁ、一万円の束じゃない!百万円くらいありそうじゃないの!何々、どんな仕事をしたの?
誘拐?浮気調査?…あ、それじゃあ大桟橋の件は関係ないか。一体何の事件を解決したのさ?」

音楽ゲームクロスワードパズル事件。それだけを言って小暮は席を立ち、出入口へと歩き出した。
町田は何のこと?と言いたげな顔をしていたが、しばらくして「嘘!?」と叫んでいた。
小暮は白壁越しからかすかに聞こえた、町田が真相に気づいた叫びを聞いてくすりと笑った。そして思う。


あなたが居なければこの事件は解決出来なかった。だからあの百万円はあなたが貰うべき物なんだ。
誰もが僕の立場なら、多分きっと絶対、そう思うでしょう?そう、これは当然の事なんだ。



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