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上達への足掛かり

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beatnovel

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234 :保守人:2008/03/02(日) 16:04:46 ID:RpW0kJBnO
肌を刺すような寒い夕暮れ。
今日もニデラの為にゲーセンへと自転車を進める。
彼はいつも一人でニデラをやっており、他の常連と3人程度でローテーションする、というのが常だった。
彼の腕はSP3段。
昔からまめに遊んでいる古参ではあるが、プレイ回数に見合った実力が身についていない自分にセンスの無さを感じていた。
それは彼のプレイスタイルに問題があるのだが、自分自身では気付いていない。
試行錯誤したり上級者に聞けば前に進めるかもしれないが、彼はチャレンジ精神が旺盛でも無ければ上級者に知り合いなどいない。最も足踏みしやすい典型的なタイプなのだ。
向かうゲーセンは筺体は1台であるが4曲設定なのでEXTRA STAGEを軽く出せない彼にとっては非常にありがたい場所である。

235 :保守人:2008/03/02(日) 16:06:33 ID:RpW0kJBnO
ゲーセンに到着すると常連AがSTANDERDの4曲目だった。
常連Aも彼と同じでいつも単独、よって次は彼の順番である。
待ち時間を気にしない彼だが、すぐにプレイできると思うと若干心躍る。
サイフの中の100円玉を確認し、筺体後の順番待ち用の椅子に座る。
このゲーセンは筺体から両替機の距離が遠いので常に残弾数に気を配らなければならない。
いざ筺体の前に立って100円ありませんでした、なんて事は死んでも避けたいので、彼はどこぞの兵隊のように残弾数には気を使う戦士である。
常連Aはプレイが終わると彼にどうもと軽く会釈し筺体を離れた。
常連Aは落ち着いた雰囲気、オシャレ眼鏡の痩身男性である。
恐らく同い歳であろうAは彼とは会話したを交わした事こそ無いものの会釈する程度の顔見知りではある。

236 :保守人:2008/03/02(日) 16:07:12 ID:RpW0kJBnO
Aの腕前はSP十段。
一体何をしたらそこまで行けるのか検討が着かないどころか実力の距離が判らない。
アブソ灰での壁は彼にとって何年前だろうと考えながらAに会釈を返し筺体前に立つ。
まさに彼はアブソ灰を壁に前に進めないでいた。
曲は昔から好きなのだがクリアできないでいる彼のマイベストにはアブソが余裕の1位にランクインしている。
そして今回も最後にアブソを選曲するも、いつもの様に敗北である。
普段できない物がいきなりホイホイとクリアできるわけが無いが、残念ながら今の彼にはその自覚が無い。

237 :保守人:2008/03/02(日) 16:08:50 ID:RpW0kJBnO
周囲に悟られない程度にがっくりしながら筺体を離れる彼。
だが今回はアブソ人生で一番ゲージが残った。
視界に入るゲージにハラハラしながら奮闘するも
「やっぱりダメか」
と、思わず小さく愚痴を零してしまった。
どうやら常連Aに聞こえてしまったか話し掛けたように見えたか
「もうすぐですね」
と笑顔で慰めを返してきた。
毎回クリアできない恥ずかしさと独り言を聞かれたあげく、返された恥ずかしさで彼は赤面し、そそくさと椅子に腰掛けた。
先生の事をお母さんと呼んでしまう事と同レベルの失態に彼は後悔しながらも100円の残弾を確認しようとしていた。この辺はマメな男である。

238 :保守人:2008/03/02(日) 16:09:37 ID:RpW0kJBnO
会話はあれで終わっていたと思いきやAは話を続けてきた。
「ハイスピをもう少し上げるといいかもしれないですよ」
いきなりの会話続投についていけず
「ふぇ?」
と彼。阿保な子の様な返答をしてしまうがAは構わず続けた。
「いや、曲毎にハイスピとかSUD+を意識して変えると結構変わるんですよね。試してみるといいですよ」
言われてみればハイスピSUD+なんて昔からこんなもんだろう程度に設定していた。むしろ足枷オプションという認識だった。
「そんなに変わりますか?SUD+なんてあるだけ難しくなる気がするんですけど」
違うのだろうか。SUD+があれば譜面を見る時間が短くなるから難しくなる。彼はそう思い込んでいる。

239 :保守人:2008/03/02(日) 16:10:44 ID:RpW0kJBnO
「じゃあ僕の言う設定でやってみて下さい」
Aはそう言うと彼に再プレイを薦めた。
彼が言うにはLOVE AGAIN TONIGHT灰をHS3.0のSUD+を150でやってみろ、だそうだ。
ちなみに今まではHS2.5紙無しだ。
クリアすら危ういのでは無いかと心配していると
「ゲージは見ないで、GREATのちょい上を見る感じでやるといいですよ」
とAが軽く最後の補足をした。

いざ始まると今までとの違いに驚いた。
譜面が落ちてくるのが速い。
今までは見てから判定ライン付近で押す感じだが、それでは間に合わないのは当然。
Aの言うようにGREATの文字のやや上を見ながら押す事にした。
視界でGOODやPOORの文字がちらつく。
ズレているのか?と修正を試みると黄グレやピカグレが出るようになってきた。
が、気を緩めるとまたGOODがちらちらと顔を出す。
彼はGREATの文字を維持するのに必死になった。

240 :保守人:2008/03/02(日) 16:11:37 ID:RpW0kJBnO
新たな事柄に集中し続けたせいか、曲が終わるといつも以上に疲れていた。
「ちょっと速めだったかな?でもいい感じですよ」
Aはリザルト画面を指差しながら感想を伝えた。
画面にはAAランクと自己ベスト更新の表示があった。まさにいい感じだった。
「本当ですね。いっぱいいっぱいでしたけどこんなに違うものなんですね」
素直に感想を述べた。自然と口許が緩む。
「視界に譜面がいっぱい見えると目が混乱するから、見える譜面の数を少なくするんですよ。
 あ、すみません難しいですね。とにかく自分に合った紙の高さとハイスピを見つける事です」
とAは見た目に違わぬロジカルな話をしたが自分で切り上げた。
彼も判ったか判らないか、それには触れない。
「ありがとうございます。色々と試してみますね」

241 :保守人:2008/03/02(日) 16:12:43 ID:RpW0kJBnO
それから彼はハイスピを上げすぎたり紙を下げすぎたりと何回か落ちながらも、スコアを更新していった。


スコアももちろんだが、実力向上のカギとも言えるハイスピ、SUD+という収穫を得た。
この辺りで停滞するプレーヤーは得手してHS、SUD+にこだわらない故に前に進めていない気がする。
だが彼は壁を越えるカギをAに貰った。

彼がアブソ灰をクリアする日は遠くないだろう。



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