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午前0時の天体観測

最終更新:

beatnovel

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361 :M:2008/11/24(月) 15:06:21 ID:oUAHNBHO0
1000円札を100円玉10枚に両替して男はタバコを1本取り出し火をつけた
吐き出した煙は現状の自分の様にふわふわと上に浮いていき消えていく

男のいる場所とは、水曜日深夜0時のゲームセンター
実はこの男、2ヶ月ほど前に3年間働いていた会社を突然クビになってしまった
そして実家の親に泣きついて今はお小遣いをもらいながらグウタラと生きる、ニートになってしまっている
そんな今の自分を「やり切れない」と思いつつも、ゲームセンターというこの場所で現実逃避をしていた

いつもの様にスロット、エヴァンゲリオンの台を回していた男はやり切れない顔で2本目のタバコに火をつけた
丁度その時、大きな声が男の体を震わせた
一体何が起こったんだ?と思い男はスロットのクレジットを早々と消費し騒ぎが起きている場所へと向った

そこはゲーセン内でも一層薄暗い場所になっていて、大きな音が耳をキンとさせた
ここには音ゲーと呼ばれているゲームの類がここに集中して置かれている
そして多くの人だかりの中心に座っている女性に目を向けた

362 :M:2008/11/24(月) 15:07:03 ID:oUAHNBHO0
男性は画面の上から落ちてくる光の様な雨を持っているスティックで目にも止まらぬ速さで叩いていた
まるで流れるような動きに男は目を奪われ心を躍らされた
そして自分と同じ様に、そこに集まっていた人達もジックリと男性の動きに見惚れていた
そして音楽が終わると、その女性は観客達と多少会話をして、また新しく曲を選び人々を魅了していった

男は「凄い」という気持ちと「羨ましい」という気持ちが二律相反していた
自分と女性を比較してしまい、自分という存在がとても劣悪でしょうもない物に思えた
男「(俺もこのゲームが出来たら、皆の中心の中で笑えるのかな。あの人みたいになれるのかな?)」
女性「あの、すいません。並ばれてますか?」
男「──へ?」

363 :M:2008/11/24(月) 15:07:37 ID:oUAHNBHO0
考え事をしていた男は、演奏を終えた女性が自分に近づいてきているという事に全く気づいていなかった
そして突然声を掛けられて焦っていたという事もあって男はつい「あ、はい」と言ってしまった
女性「どうぞ~」
男の頭の中は真っ白でロボットの様な動きで男性がさっきまで座っていた椅子に座った
もちろんさっきの男性を見ていたギャラリー達は今、自分という存在を注視している
いくらなんでも突然すぎた、やった事もないゲームをこれだけの人に見られているのだ
しかし男は「(どうにでもなれ!!)」と思い100円を入れる場所を探し当てスルリと穴の中に押し入れた
お金を入れても全く画面が変わらない事に男は内心ドキドキしていた
そしてしばらく経った時
女性「あの~このゲームをやるのは初めてですか?」
男「は、はい。そうなんですよ……」
女性「まずはここを押すんですよ」
男は教えられた場所をスティックで弱弱しく叩いた、そしたら画面が変わり軽快な男の声が流暢に流れた
その後も女性に最初はビギナーモードがいいと教えられ、その通りに進み曲を選ぶ画面らしきものが出た
女性「好きな曲をここで選ぶんです」
男が疑問に思ったり分からない事があったら、女性は親切に教えてくれた
男はおぼつかない手で「天体観測」を選んだ

364 :M:2008/11/24(月) 15:08:15 ID:oUAHNBHO0
そして落ちてくる音目掛けて、スティックを振った
まるで男の中で何かがぶっ壊れた気分だった、情けない自分の事も会社をクビにされた事も天体観測が流れてる間はなくなっていた
夢の様な時間は終わり、100円分を楽しんだ所で椅子から立ち上がり女性にお礼を言うと、心臓の高まりを抑え切れないままにその場から離れた
──俺は出会ってしまった、ドラムマニアに

次の日も同じ水曜日の時間帯にゲームセンターに赴きドラムマニアで遊んだ
その次の水曜日も、次の水曜日も次の水曜日も次の水曜日も……
しかしいくらその時間帯のドラムマニアでプレイしていても、あの女性と出会う事はなかった
自分でも上達した、という事は目に見えて分かっていた。そしてそんな自分を女性に見てもらいたいと思った
いつの日か女性と自分が肩を並べてドラムマニアをやれる日がくるだろうと男は信じていた

365 :M:2008/11/24(月) 15:08:49 ID:oUAHNBHO0
それから3年という月日が経ち男は新しい職場にもまれながらも充実した人生を過ごしていた
上司「よう、今日は呑みに付き合えよ」
男「いや、今日はすいません。用事があるんですよ」
上司「なんだよ、付き合い悪いじゃねーか」
男「あはは、また明日呑みに行きましょうよ」
上司「ったく、分かった分かった。また明日な。お疲れさん」
男「お疲れ様です」
頭を下げた男はいつもの場所に向った
水曜日の深夜0時ドラムマニアの前に
男「よう、皆頑張ってるな」
男性A「お、やっぱり来たな」
男性B「しっかしお前は水曜日のこの時間にはいっつも来るんだな」
男「まぁな、さてやるか」
カバンの中から2本のスティックを取り出し100円を機械に押し入れる
男性A「しっかしお前も上達したよな、昔は俺と同じ位だったってのに」
男性B「今じゃお前より上手い奴を見つけるのも苦労するよ」
男「そんな事ねーよ、俺だって一生かけても越えられない存在ってのがいるんだ。
  ずっとその人の事待ってるんだけどな」
そして男は選曲をして決定する
男性A「またその曲か?上達しても1曲目にそれやるのは変わらないんだな」
男「ほっとけ」
そして水曜日深夜0時のこの場所で俺は彼女を待ちながら天体観測を開始する



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