双眼鏡の基礎知識

ここでは双眼鏡の話をする前に、まず大前提として知っておかなければならない事について説明します。


接眼レンズ 対物レンズとは

双眼鏡を見ると、大きなレンズと小さなレンズがありますね。一般的に小さいレンズに目を当てて覗きます。
そう、それが接眼レンズです。反対の大きい方のレンズを対物レンズと言います。
対物レンズ径は口径という言い方がよく使われます。
鳥見では30mm前後、星見では40mm以上が好まれています。



ポロ式とダハ式とは

ポロ式とダハ式の説明
ポロ式とはポロプリズムを使用した双眼鏡でクランク型の光路を持っています。接眼レンズと対物レンズが一直線上にならない双眼鏡は全てポロ式と思っていいです。
ポロ式にも左右の対物レンズが離れているポロ式と、対物レンズが近い逆ポロ式(インナーポロ式)があります。
ポロ式はダハ式と比べて双眼鏡が大きく・重くなりがちですが、プリズムの形状が単純なので安い価格で高い精度の物が作れるといった特徴があります。

ダハ式とはダハプリズムを使用した双眼鏡でプリズム内での反射回数が多く、ダハ面での偏光が発生するので、性能の高い双眼鏡を作るにはコストがかかるといったデメリットがある反面、軽量でコンパクトな物を作ることができます。接眼レンズと対物レンズは一直線上にあり、コンパクトに折り畳めるものもあります。接眼レンズと対物レンズが一直線なので、人の目の瞳孔間距離以上のものは通常造られません口径60mm以上の双眼鏡でダハ式を採用している双眼鏡は皆無と言ってもいいでしょう。

かつてはダハ式でポロ式と同じ性能の双眼鏡を買おうとしたら2~4倍の値段だと言われていました。今日では大量生産の恩恵により価格差がだいぶ縮まってきています。けれどもまだまだポロ式のほうが低価格高品質の物が多いようです。
ダハ式のアドバンテージは軽量な物を作れることやコンパクトに作れること、また構造上の理由から高い防水性能を持つことなどが挙げられます。つまりこれは携帯性が高いことを意味しており、ダハ式の得意な用途は双眼鏡を首にかけて長時間動きまわるバードウォッチングやスポーツ観戦などであると言えます。
対してポロ式は、その光学性能の高さやコストパフォーマンスの面から、海上の業務用用途や天体観測などで好まれています。あまり語られない他のポロ式の利点として立体感がある事などもあります。そもそも立体感とは左右の目で見た時の視界の違い(視差)によって発生します。つまり、両目が離れていれば離れているほど立体感は増していきます。ポロ式は左右の対物レンズが離れるような構造ですので視差が大きくなり、ダハ式と比べて立体感も大きくなるのです。星などの無限遠だとポロでもダハでも立体感を感じることは出来ませんが、30~40m程度までなら、本当に近くにあるような立体感や臨場感を感じることが出来るため、その立体感を好んでポロ式を選ぶ人も多いようです。
逆に、近距離を見るときはその両眼視差が邪魔をする場合もあります。近距離に強い順に並べると、逆ポロ>ダハ>ポロ の順になります。




双眼鏡に○×○○って書いてあるけど、これは?

双眼鏡に書いてあるこの掛け算。これは

倍率×対物レンズ径

を意味しています。最低限この2つが分かれば、それがどんな双眼鏡なのかが分かります。
双眼鏡の最も基礎的な情報といって良いでしょう。
倍率の説明
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倍率が上がると手ブレが大きくなり、手持ちでの使用が困難になります。手持ちの限界倍率は、日中で12倍、星見では10倍が限度だと言われています。これはあくまで成人男性を基準とした目安であり、腕力のない女性や子供,老齢の方などの手ブレに自信がない方は8倍以下を選んだほうが無難です。また、手ブレは重量双眼鏡の持ちやすさにも関係するので、自分にとって持ちやすい形状の物や自分にあった重さのものを選ぶのが良いでしょう。軽すぎても手ブレは起こるのです。

用途によって推奨される倍率(手で持って使用する場合)

     ~4倍 5~6倍 7~8倍 9~10倍 11~12倍 13倍~
天体観測
野鳥観察,自然観察
旅行,スポーツ観戦
観劇,美術館,博物館
  • ◎:代表的な倍率 ○:一般的に許容される範囲 △:手ブレに自信がある人は使用可能 ☓:推奨されない
  • ※個人差があります。また、三脚や一脚と併用するなら高倍率でも大丈夫です。



ひとみ径や明るさとは

「ひとみ径」と「明るさ」はどちらも双眼鏡の明るさの単位で、
ひとみ径^2=明るさ
の式で表されます。またひとみ径は双眼鏡の「倍率」と「対物レンズ径」が分かれば、以下の式で計算できます。
対物レンズ径/倍率=瞳径

天体観測では一般的に明るさよりもひとみ径で話をします。

瞳径と用途の関係

         瞳径→ 2.5mm 3mm 4mm 5mm 6mm 7mm
天体観測(都会)    
天体観測(田舎)    
自然観察(日中)    
自然観察(夕方・林の中)
旅行やスポーツ観戦   
観劇・美術館・博物館  
夜間の警備       
※天体観測の瞳径について、「全国光害マップ」のページで分かりやすくまとめています。



実視界とは

実視界、見掛視界の説明(上記のものと同じ画像)
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                             ↑見掛視界                 ↑実視界
双眼鏡を動かさずに見ることができる範囲。対物レンズの中心点からはかった角度を実視界といいます。実視界が広いほど目標物は探しやすくなります。
1000m先視界(1000ヤード先視界)で表示されている場合もありますが、これらは計算によって近似値が出せます。
1000m先視界≒実視界x17.5
   実視界≒1000m先視界÷17.5
1000y先視界≒実視界x52.5
   実視界≒1000y先視界÷52.5


見掛け視界とは

見掛け視界は接眼レンズをのぞいたときに見える範囲を角度で表したもので、近似的には下記式で求められ、旧JIS規格(JIS B7121:1993)でもそのように定義されていました。
見掛け視界=実視界×倍率
この式は、簡単に誰でも見掛け視界が求められ、また天体望遠鏡のように高倍率のものだと誤差が少ないとても有用な近似式なのですが、双眼鏡のように倍率の低い光学系では誤差がかなり大きくなります。したがって近年では下記式が使われるケースがとても多くなっています。ISO規格(14132-1:2002)や、望遠鏡新JIS規格(特性 JIS B7121:2007,用語 JIS B7157:2003)でも同様に定義されています。
tan ω' = Γ × tan ω
見掛け視界:2ω'  実視界:2ω  倍率:Γ

旧規格の見掛け視界で55°前後だと標準視界、50°以下は挟視界、60°以上は広視界(ワイド視界)というのがおおよその目安になります。
コンパクト機と7x50(8x56,10x70)などのひとみ径7mm機は、光学設計上の問題で広視界にすることが困難であるため、必然的に45~55°のものが多くなります。
ワイド視界が必要なら30mmクラス以上の物を選ぶのが妥当。

見掛視界×実視界 早見表(旧規格)

見掛→ 45° 50° 55° 60° 65°
7倍 6.4° 7.1° 7.9° 8.6° 9.3°
8倍 5.6° 6.3° 6.9° 7.5° 8.1°
10倍 4.5° 5.0° 5.5° 6.0° 6.5°



アイレリーフとは

双眼鏡を覗いている状態で、顔から徐々に双眼鏡を離していくと、双眼鏡が覗きにくくなっていきます(当たり前)
逆に目と接眼レンズを近付け過ぎると、同じように見え辛くなったり、視界の端が真っ黒になったりします。
実は双眼鏡には機種ごとに目と接眼レンズのスイートスポットというものが決まっており、これが長いものはメガネをかけたまま覗くことが可能になります。一般的に15mm以上あると、眼鏡使用のまま楽々覗くことができるとされており、そういった双眼鏡にはロングアイレリーフとかハイアイポイントといったキーワードが付いてくることが多いです。

カタログでは同じ15mmであっても、機種によって覗きやすさがかなり違うので、メガネ使用者は実際に手にとって試してみるのが良い。


最短合焦距離とは

双眼鏡によって、ピントが合う最短距離が違います。双眼鏡を選ぶ際、用途によってはこれがかなり重要になってきます。
美術館や博物館などでは、見たい対象までの距離が2m程度と、非常に近い場合もあり、この場合だと、最短合焦距離が2m以下の双眼鏡でないとピントが合いません。
逆に天体観測用途だと常にピントは無限遠で使用しますので、この項目については無視しても問題はありません。
※近視の方でメガネを外して覗くことがあれば、最短合焦距離の短いかわりに無限遠側のピントが合わせきれないことがあります。

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最終更新:2014年11月05日 08:17
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