基本的にググったほうが丁寧でわかりやすい。ここはあくまで
双眼鏡に重点を置いた用語解説。
英数字(A~Z)
Bk7より高屈折の光学ガラス。双眼鏡では一般にプリズムの材質を指す。
屈折率は1.56~1.57となる。F3.5の短焦点の対物レンズでも全反射が可能となる。→プリズム,Bk7,Sk15
Bak4と同様にプリズムの材質を指す。
屈折率は1.51~1.52となっており、対物F値が7以下だと全反射が起こらない部分が発生するので最近は安物でしか目にすることはない。ポロ式だと四角形の形で周辺減光が見られるので、双眼鏡を離して射出ひとみを見てみると一目瞭然である。ダハ式は射出ひとみの隣に三日月型の反射光が見られるという。
→Bak4,プリズム,Sk15 「
参考1」
「参考2」
双眼鏡中心にある一つのピントリングにて左右両目のピントをまとめて調節する方式。一般の双眼鏡は全てこの方式なので、特に記載がなければCFと思って良い。視度調節は右目で行う場合が多い⇔IF
- EDガラス(Extra-low dispersion glass, Extraordinary low dispersion glass)
異常部分分散性を持ったガラスのこと。UD, LD, SD, もしくは特殊低分散ガラスなどとも呼ばれる。基本的にはフローライトに似た特性を目指して開発されており、既存のガラスに無機フッ素化合物や無機リン酸化物・ホウ素化合物などを加えて特性を改良したものであるが、リン酸クラウンガラス (PK) などケイ素成分を含まないものも存在する。EDガラスを対物レンズに使用すると色収差の少ない双眼鏡を作ることが出来る。→フローライト
レンズの焦点距離を有効口径で割った値であり、レンズの明るさを示す指標として用いられる。F値のFとは焦点を意味するfocalから来ている。双眼鏡や望遠鏡でF値と言うと、対物レンズのF値を指す。
一般的にF値が大きい(焦点距離が長い)方が各種収差が少なくシャープになる。双眼鏡はF3~F5が多い。
左右の目のピントを独立して調節する方式。アイピースを回転させることによって行う。操作性は悪いが、構造が単純なため頑丈で防水性の高い双眼鏡を作ることが出来る。ポロ式の大型双眼鏡や高い防水性能を求められる業務用双眼鏡に採用されている。星見用途では問題なく使えるが、一般用途だと面倒。⇔CF
Bak4よりも屈折率の高いガラス。主に高級機のプリズムに使われる。→プリズム,Bak4,Bk7
あ行
屈折率の違うガラスを貼り合わせて色収差をできるだけ少なくしたレンズ。別名「色消しレンズ」
いわゆる色ズレや色にじみ。明暗の落差が大きい所でわかりやすい。これは光の波長によって屈折角が変化する為である(スネルの法則)
昔は対物レンズのF値を大きくすることで解消していたが、最近ではアクロマートレンズを使うことが多い。
高級機ではEDガラスを使うことによって色収差を抑えるのが一般的。
か行
技術的にはARコート(Anti-Reflective)とか、反射防止コートと呼ばれる。
ガラスの表面では、およそ4%の光が反射する。そこでガラス表面に薄膜を蒸着し、ガラス表面の反射光とコーティング表面の反射光を干渉させて打ち消すことで、反射光を減らし光透過率を高める仕組み。
光の透過率を高めることだけが目的ではなく、教頭内部で発生する反射光を減らすことによって像のヌケも高める働きもしている。薄膜の素材はガラス基材より低屈折率のものが用いられる。フッ化マグネシウムなどが一般的。
一層のみのものをモノコート、複数の層を持つものをマルチコートといい、マルチコートにも3~11層など、様々なものがある。現在では更に特殊なコーティングも各社から出ている。
※ARコートとは別に、高反射コートや位相差補正コートなどもある。これはダハ式の正立プリズムにのみ起こる不具合を解消する目的で使われるので、ポロ機には必要ない。
光学系において、系全体を通過する光束の代表となる仮想的な光線を指す。多くの場合は各光学素子の回転対称軸と一致し、例えば1枚のレンズでは前後2面の曲率中心を結ぶ直線となる。光軸が狂っているとは鏡筒の接眼レンズと対物レンズの光軸が一直線上にない場合(レンズが傾いている場合)と左右の鏡筒の光軸が並行でない場合(光軸平行度が狂っている場合)の二通りの意味で捉えられるため、後者は「視軸が狂っている」と表現されることもあるが、表現として正しいかは不明。
視軸と混同されがち。
ダハプリズムの補助プリズム(ペシャンプリズム)には全反射が起こらない面がある。このため、その反射面には通常アルミや銀の蒸着を行い、反射率を高める。
銀で98%前後,
アルミは91%前後、誘電体多層膜は99.5%以上となっている。銀の反射光スペクトルは短波長側でやや低下する傾向。
大まかに、安物にはアルミ,中級機には銀,高級機には誘電体多層膜だと思っていいだろう。
コマ収差とは、光学系の軸外物点から出た光線束が像面で1点に集まらず、視野端で彗星(Comet)の尾のように広がる収差。画角に比例し、有効径の2乗に比例するので大型双眼鏡で発生しやすい。また、視野周辺になればなるほどコマ収差も大きくなる。周辺層の流れは歪曲収差だと思われがちだが、コマ収差によるものも多い。
さ行
辞書には「眼球の角膜・水晶体を通り、眼底の黄斑部中心窩(ちゅうしんか)に入る直線」とある。平たく言うと「視線」のこと。
遠くを見る時は両目の視軸はほぼ並行状態であるため、双眼鏡の軸も並行に調整されている。光軸と混同されがち
同じ入射角でも短波長の光は長波長の光より屈折が大きい。屈折の公式とも言い、光学の基礎で扱われる公式。色収差やアクロマート等を勉強する上で避けては通れない公式。
光の入射角が臨界角以上になると起こる現象。プリズムでは一部の例外を除いてこの現象を使って反射を行なっている。→臨界角
像が平坦でない現象。視界中央と視野周辺でピント位置が異なる。「像が流れる」という表現はこの現象を指す事が多いが、実際にはコマ収差との複合で考えたほうが良い。単レンズでは像面湾曲が大きくなるので、最近の双眼鏡は複数のレンズを使って像をフラットにするように努力している。
た行
ダハ式のプリズムにある90°直角になった面の事で、ここで2回反射が行われる。像を線対称に反射をするために高い精度で90度の直角を作らなければならないほか、偏光が発生するために偏光をキャンセルするための特殊なコーティング(フェーズコート)が必要になる。
な行
最新のコーティング。ナノサイズの微粒子をガラス表面に作ることで実現した低屈折率のコーティング。とっても反射が少ないらしい。
は行
和製英語で、正式にはFully multi-coatが正しい。レンズの全ての面にマルチコーティングを施してある。上位機種ではプリズムにもマルチコートを施してある。どちらも同じように呼称されるので、メーカーサイトか、実機で確認するのが一番良い。
ダハ面で発生する偏光を緩和するためのモノ。中級機以上のダハ双眼鏡に施されている。
フローライト(フッ化カルシウム結晶)を人工的に作ってレンズにしたもの。可視光領域での屈折に分散が少なく、色収差が殆ど出ないという特徴がある。しかしながら傷が付きやすい、急な温度変化に弱い、潮解による曇りが生じやすい、高価であるなど、デメリットも大きい。コーワのハイランダープロミナーなどの一部高級機に使用されている。→EDガラス
双眼鏡には像を正立像にするためにプリズムを入れてある。望遠鏡はプリズムを入れていないので上下左右が反転した像になる。プリズムは大きく分けて
ポロプリズムとダハプリズムがある。ポロ式は4回反射でダハ式は6回反射。反射面が正確な平面になっていないと、像が歪んだりボヤケたりする。ガラスも完璧に均一ではなく密度にムラがあるため、ガラス中を多く通るとそれだけ解像度が落ちる。更にダハ式はダハ面や全反射が起こらない面の存在により特殊なコーティングが必要となり、高い技術と生産コストが必要。
普及機のダハは中国などで低コストで作れるようになってきているため、コストパフォーマンスの面ではやや改善されつつある。
ツァイスなどは特殊な形状のダハプリズム(アッベ・ケーニヒ型)を用いることですべての面で全反射を可能にしている。
光の振動方向が偏っていること。双眼鏡では主にダハ面で発生するものを指す。電磁気学などの理解が必要。
ま行
モノコートの一種で、反射光がマゼンタ色に見えることからこう呼ばれた。モノコート全般をマゼンタコートと呼ぶ人もいる。≒モノコート
複数の膜を持ったコーティングは全てマルチコートと言われているが、3層の低価格なコーティングと5層以上の高価なコーティングも全て「マルチコート」と一纏めにされている。このため、マルチコートを区別するために企業が独自の名称を使ってアピールしている場合もある。
低価格な3層のマルチコーティングは緑色に見えることが多い。
反射光の色を見てみる事でで多少の違いは分かるだろうが、あくまで目安にしかならないので過信は禁物。
日本語で「単層コート」。一層のみのコーティングなので透過波長に偏りが起こり、視界に色付きが発生する。一般的にモノコート機は視界が黄色っぽくなると言われている。色付きの気にならない星見などではあまり関係ないとも言われているが、個人差が大きいので何とも言えない。
や行
ら行
屈折角が90°以上の時の入射角を指す。入射角がこれより大きくなると全反射が起こる。高屈折ガラスをプリズムに使用すると入射角が小さくても全反射が起きるのでF値が小さいレンズが使える。中学理科で履修する。→全反射
わ行
ディストーションとも言う。樽型(中心部が膨らむようなゆがみ)、糸巻き型(逆に中心部が収縮するような歪み)、陣笠型(樽型と糸巻き型の複合)の三つの形態がある。樽型の有名なものだと魚眼レンズで撮影した歪みなどがそう。
最終更新:2012年06月09日 21:34