「はっは! 幕は張らせてもらったぜ!」
彼方から元親が叫んだ。一面に紫の陣幕を張り巡らせて妻の元へ駆け寄る。
毛利軍では、この幕を張られたら『貴様らのような駒は要らぬ。寄るな』の合図としている。
後にこの幕を“暗君の陣幕”と呼ぶこととなるのはまた別の話。
「なんだ!?」
武蔵が僅かに怯んだ。その隙に輪刀を手にかける。
「元就、今なら誰も見ちゃいねえよ!」
言われて、元就は武蔵に気付かれぬよう足を大きく開く。
そして左手に得物を取り、右手で顔を庇うような構えを取った。
「我が技を食らうがいい」
地面が小爆発する。開いた足の間から“発”の光柱が立ち、武蔵の尻を焦がす。
文字通り尻に火がついた。
叫びながら自らバットとパイプで檻を破壊し、バタバタと尻を叩きながら海に飛び込み菊門の危機は免れる。
しかし尻の部分の布地は無残にも燃えていた。
「あっちー!ひきょうだぞ!」
「貴様に言われる筋合いはない」
濛々とした砂煙の中から姿を現した元就も、腿の布地が燃え焦げていた。
ただし肝心な部分だけは辛うじて残っていたが。砂をはたきながら、悠然と立上がる。
この一撃を当てる為に耐えて来た。武蔵を退け檻から出られればこちらのもの。
「期待通りの活躍だろ?」
「ふ…期待以上だ」
元親が駆け寄り、南蛮風の上着を羽織らせようとするが、それを元就は突き返した。
武蔵がこちらへ向かって来ていたからである。
「やーめた! お前、強いやつ知らね?」
鉄パイプと釘バットを放り、頭の後ろで指を組む。
その格好からの攻撃はまず無いと見て、元就は鼻で笑う。
「負けを認めたか」
「つまんねーだけ!」
その返答に元親の中で、自分の不甲斐なさや、武蔵の妻に対しての仕打ちやら、恨みつらみが積もって、今の内に叩いておこうと提案する。
だが元就はそれを制し、今ここでやる必要は無いと首を振った。
「我より僅差で強い者なら知っている。力しか能のない馬鹿だがな」
本願寺の生臭坊主か、それとも武田の師弟、或いは戦国最強のあの男か。
元親の脳裏に様々な顔が浮かんでは流れていく。
「もう、どうでもいーからさ!はやくそのピーコだかおすぎだかをおしえろよ!」
「四国の長曾我部元親だ」
「おい毛利、」
俺を売ってんじゃねぇぞ、とまで言わせず、口を塞がれた。
彼方から元親が叫んだ。一面に紫の陣幕を張り巡らせて妻の元へ駆け寄る。
毛利軍では、この幕を張られたら『貴様らのような駒は要らぬ。寄るな』の合図としている。
後にこの幕を“暗君の陣幕”と呼ぶこととなるのはまた別の話。
「なんだ!?」
武蔵が僅かに怯んだ。その隙に輪刀を手にかける。
「元就、今なら誰も見ちゃいねえよ!」
言われて、元就は武蔵に気付かれぬよう足を大きく開く。
そして左手に得物を取り、右手で顔を庇うような構えを取った。
「我が技を食らうがいい」
地面が小爆発する。開いた足の間から“発”の光柱が立ち、武蔵の尻を焦がす。
文字通り尻に火がついた。
叫びながら自らバットとパイプで檻を破壊し、バタバタと尻を叩きながら海に飛び込み菊門の危機は免れる。
しかし尻の部分の布地は無残にも燃えていた。
「あっちー!ひきょうだぞ!」
「貴様に言われる筋合いはない」
濛々とした砂煙の中から姿を現した元就も、腿の布地が燃え焦げていた。
ただし肝心な部分だけは辛うじて残っていたが。砂をはたきながら、悠然と立上がる。
この一撃を当てる為に耐えて来た。武蔵を退け檻から出られればこちらのもの。
「期待通りの活躍だろ?」
「ふ…期待以上だ」
元親が駆け寄り、南蛮風の上着を羽織らせようとするが、それを元就は突き返した。
武蔵がこちらへ向かって来ていたからである。
「やーめた! お前、強いやつ知らね?」
鉄パイプと釘バットを放り、頭の後ろで指を組む。
その格好からの攻撃はまず無いと見て、元就は鼻で笑う。
「負けを認めたか」
「つまんねーだけ!」
その返答に元親の中で、自分の不甲斐なさや、武蔵の妻に対しての仕打ちやら、恨みつらみが積もって、今の内に叩いておこうと提案する。
だが元就はそれを制し、今ここでやる必要は無いと首を振った。
「我より僅差で強い者なら知っている。力しか能のない馬鹿だがな」
本願寺の生臭坊主か、それとも武田の師弟、或いは戦国最強のあの男か。
元親の脳裏に様々な顔が浮かんでは流れていく。
「もう、どうでもいーからさ!はやくそのピーコだかおすぎだかをおしえろよ!」
「四国の長曾我部元親だ」
「おい毛利、」
俺を売ってんじゃねぇぞ、とまで言わせず、口を塞がれた。