あれえー、と体ごと曲げて悩んでいると、毛利がくっと迫って唇を押しつけてきた。
きよらかな清水の味がする。
「え?」
強かに飲んだ体に、水の味は嬉しくもあったが、頭が混乱する。
「……ちょ、待て待てもう一回」
案外素直に毛利はもう一度唇を押しつけてきた。
毛利の唇にも水の温度が移っていて、驚くほど冷たい。
流し込まれるそれに人肌の温もりがない。
唇の間から清水がこぼれ落ちる。
扇情的な仕草だというのに、何か裏がありそうで、やっぱり怖い。
「何、俺なわけか?毛利さっき愛なんかより慎重に考えろ、とか言ってなかったか?なあ?」
「只の一夜と国の命運を左右する婚儀を一緒くたに語るな、長曾我部」
乾燥しきった言葉に元親はぐったりした。
もうちょっと風情のある言葉が欲しい。
しかしお情けを、とか言う毛利は別の方向で怖すぎる。
「……なんで俺なわけよ」
「何度もぐだぐだと鬱陶しい。確かに我は貴様らの馴れ合いなど理解できぬ。
ならば忘れればよいものを、我は何度となく厳島の一戦を思い出したぞ。
そのたび苛立ちがおさまらぬ。貴様の顔、言葉を忘れられぬ」
やっぱり恨まれているに違いない。
寝首かかれちまうんじゃねえか、と緊張する元親に、毛利が迫った。
「日輪を拝もうと落ち着かぬ。ザビー様の説く愛を知ろうとまだ思い出す。我はザビー様に告解した。
ザビー様は、それは愛だと仰ったのだ」
あのイカレ南蛮人、余計なことを言う。
「我だけが愛を抱えているのも業腹なことよ。かくなる上は、
貴様にも愛を伝えるが情報戦略を担う我のすべき事であろう!」
「なあおいそれ恨みだろ?恨みだよなオイっ!」
毛利は否、ときっぱり首を振る。
「ふむ、貴様も先ほど好みがどうこうと言っていたか。だがこちらを振り向かぬ男を嵌めるのも一興」
凄く怖い。
「な、なんだ、じゃあ言えばお前俺の好みの女になるとでも……」
「ふん。……言ってみよ」
ひー、と怯えながら元親は頷いた。
毛利は厳島で恨みと苛立ちを刻み込んだらしいが、元親は恐れを刻み込まれた。
あんな戦はもう真っ平、必要に迫られなければ絶対に戦いたくない。
「まず徳川みてーな体でな、メシは伊達みてぇに凝ってなくても、
前田の嫁さんみてぇにすっげー旨くなくても良いんだが、
精一杯作ったって感じで、真心籠もったあったけぇもん出して欲しいよな。
ついでに甘え上手で情が濃くて、閨事も好きだが割に恥ずかしがりで、ちっと焼き餅焼きならなおいい。
そんで俺が海に出る時にゃあ、泣きながら縋り付いて来るような女だったらもう、最高だぜぇ……いで!」
鳩尾を容赦なく殴られる。宴の最中に殴られた場所と同じ所を。さてはコイツが殴ったのか。
「自分で言えっつったんだろが!」
「我はそういう男の身勝手な幻想には虫ずが走る質だ」
拳が震えていた。
「身勝手言うな、俺がでっかくなんねーで未だに姫してたら全部出来らぁ!」
「余計に気色悪いわ!大体貴様、それを我にやって欲しいか!」
早口の言い合いがふっと途切れた。
ちっちゃくてもむちむちのいい体してる毛利。毛利の作る真心こもった食事。毛利が甘える。
恥ずかしがる毛利。毛利の焼き餅。行かないで、と泣いて縋る毛利。
元親は自分の想像力の限界を思い知った。
「……いや、毛利はしなくていいや。だがな、夜這いに来たっつって殴るか?普通手は出ねえだろ、普通!」
「ふん。元親兄上と呼び甘えれば満足か」
強かに飲んだ体に、水の味は嬉しくもあったが、頭が混乱する。
「……ちょ、待て待てもう一回」
案外素直に毛利はもう一度唇を押しつけてきた。
毛利の唇にも水の温度が移っていて、驚くほど冷たい。
流し込まれるそれに人肌の温もりがない。
唇の間から清水がこぼれ落ちる。
扇情的な仕草だというのに、何か裏がありそうで、やっぱり怖い。
「何、俺なわけか?毛利さっき愛なんかより慎重に考えろ、とか言ってなかったか?なあ?」
「只の一夜と国の命運を左右する婚儀を一緒くたに語るな、長曾我部」
乾燥しきった言葉に元親はぐったりした。
もうちょっと風情のある言葉が欲しい。
しかしお情けを、とか言う毛利は別の方向で怖すぎる。
「……なんで俺なわけよ」
「何度もぐだぐだと鬱陶しい。確かに我は貴様らの馴れ合いなど理解できぬ。
ならば忘れればよいものを、我は何度となく厳島の一戦を思い出したぞ。
そのたび苛立ちがおさまらぬ。貴様の顔、言葉を忘れられぬ」
やっぱり恨まれているに違いない。
寝首かかれちまうんじゃねえか、と緊張する元親に、毛利が迫った。
「日輪を拝もうと落ち着かぬ。ザビー様の説く愛を知ろうとまだ思い出す。我はザビー様に告解した。
ザビー様は、それは愛だと仰ったのだ」
あのイカレ南蛮人、余計なことを言う。
「我だけが愛を抱えているのも業腹なことよ。かくなる上は、
貴様にも愛を伝えるが情報戦略を担う我のすべき事であろう!」
「なあおいそれ恨みだろ?恨みだよなオイっ!」
毛利は否、ときっぱり首を振る。
「ふむ、貴様も先ほど好みがどうこうと言っていたか。だがこちらを振り向かぬ男を嵌めるのも一興」
凄く怖い。
「な、なんだ、じゃあ言えばお前俺の好みの女になるとでも……」
「ふん。……言ってみよ」
ひー、と怯えながら元親は頷いた。
毛利は厳島で恨みと苛立ちを刻み込んだらしいが、元親は恐れを刻み込まれた。
あんな戦はもう真っ平、必要に迫られなければ絶対に戦いたくない。
「まず徳川みてーな体でな、メシは伊達みてぇに凝ってなくても、
前田の嫁さんみてぇにすっげー旨くなくても良いんだが、
精一杯作ったって感じで、真心籠もったあったけぇもん出して欲しいよな。
ついでに甘え上手で情が濃くて、閨事も好きだが割に恥ずかしがりで、ちっと焼き餅焼きならなおいい。
そんで俺が海に出る時にゃあ、泣きながら縋り付いて来るような女だったらもう、最高だぜぇ……いで!」
鳩尾を容赦なく殴られる。宴の最中に殴られた場所と同じ所を。さてはコイツが殴ったのか。
「自分で言えっつったんだろが!」
「我はそういう男の身勝手な幻想には虫ずが走る質だ」
拳が震えていた。
「身勝手言うな、俺がでっかくなんねーで未だに姫してたら全部出来らぁ!」
「余計に気色悪いわ!大体貴様、それを我にやって欲しいか!」
早口の言い合いがふっと途切れた。
ちっちゃくてもむちむちのいい体してる毛利。毛利の作る真心こもった食事。毛利が甘える。
恥ずかしがる毛利。毛利の焼き餅。行かないで、と泣いて縋る毛利。
元親は自分の想像力の限界を思い知った。
「……いや、毛利はしなくていいや。だがな、夜這いに来たっつって殴るか?普通手は出ねえだろ、普通!」
「ふん。元親兄上と呼び甘えれば満足か」
きゅんとした。
「だから貴様、どこまで変態か!閨で兄呼ばわりされて喜ぶな!」
直後にひっぱたかれる。しかしこんなちっちゃいお手々で叩かれてもそう痛くはない。
むしろ何か燃えてくる。
直後にひっぱたかれる。しかしこんなちっちゃいお手々で叩かれてもそう痛くはない。
むしろ何か燃えてくる。




