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泡姫の恋19

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匿名ユーザー

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昔自分は、元就の所に宝を寄越せと襲った事がある。
今でも彼はきっと中国の財宝目当てで、自分が乗り込んで来たと思っているだろうが、それは全くの誤解で実は…元親は元就が欲しかったのだ。
初めて彼を見たのは、まだ自分が子供の頃。
瀬戸内の会合で父親と共に四国の自城に彼が来ていた時、庭の石に腰掛、猫と共に日向ぼっこして、戯れていたのを遠くから眺めた時。
その横顔はとても優しそうに微笑んでいて、そんな少年に幼い元親は目を奪われ言葉を失った。
でもあの頃引っ込み思案で人見知りの激しかった自分が、声を掛ける事など出来ようもない。
それから大人になって予想外に成長し過ぎた体は、近隣の男達から醜女だと噂を立てられ、早々に己は嫁にはいけないと諦めが付いた。
海賊稼業は天職のよう、今まで狭い四国の地で燻っていた彼女の魅力を一気に開花させ、大事な部下達も沢山出来た。
人間として凄く幸せを感じすらすれど、やはり何処かで未だ女で在りたいと思う事もあった。
そんな時ふと思い出した初恋の少年。
毛利の男児見たさに、勢いのまま中国を攻めたのが事の真実である。
はっきり言って今思えば馬鹿だとしか言い様が無いが、その時の自分は何としても一目成長した彼を見たかったのだ。
運命など信じる歳でも無かったのに…。

そしてやっと会えたあの時の少年は端整な顔立ちのまま、とても綺麗な青年に成長していて、
見惚れると同時に…何て冷たい面になったのだろうと思った。
しかし彼はその目の奥で、悲痛な声を上げているような寂しさを感じ、だから元親は元就に色んな言葉を伝える事にした。
それは彼が今まで築いて来たモノを否定する言葉ばかり。
だから彼にとってすれば、行き成りやって来た海賊風情のしかも女如きに、そんな事を言われる謂れはなく、自分は鬱陶しくて目障りな生き物でしかなくなっただろうけど、それでも構わないから、何とかして元就に気付いて欲しかった。
冷たい面で全て覆っても、心が凍ってしまっても、人間の感情は決して無くなる事はないのだと。
痛みを感じている自分にちゃんと向き合って、それは決して弱さではないと教えてやりたくて、何度も言葉を掛け、時には褒めたりもした。
結果、幾度目かの戦いの末、彼の仕組んだ策で厳島に誘き寄せられ、自分は倒された。
きっとあの時のアレは、所謂生死の境というものなのだろう。
元就の腕の温もりを初めて感じて、彼の叫びを聞いたのもその時が初めて…、自分が彼にとって《何かのきっかけ》になれたのだと分かると、あれだけ嫌っていた死も、案外悪い物ではないのかもしれないとさえ、思ってしまえた。
そう思えるように成る程元就に恋していたという自分を、生まれて初めて可愛らしい生き物と感じた。
そして同時に今までこんな自分に着いて来てくれた大事な部下達に、無責任で自分勝手な頭で悪かったと謝罪の言葉を紡ぎながら、目の前が暗闇に変わる…。

「それでもあの頃の気持ちは、やっぱ忘れちゃいけなかったんだ…」
元就は元親の話す言葉を、静かに聞き続けてくれていた。


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