この下郎は跡継ぎの評価なんか、言えた立場じゃないんだよ。
何の実権もないんだよ、俺には、そしてどれだけ強くたって、旦那は一武将でしかないんだ。
戦場以外でならぼろぼろに弱いんだ。
どうして、どうして俺は下郎なんだよ、どうして何が見えても解っても、旦那に何にも出来ないんだよ。
俺に出来るのは殺すことか生かすことか牙を折ることだけだ、
殺せば伊達の暴動は収まらない、生かせば旦那の思いがおさまらない、だけど牙はどうやっても折れない。
何の実権もないんだよ、俺には、そしてどれだけ強くたって、旦那は一武将でしかないんだ。
戦場以外でならぼろぼろに弱いんだ。
どうして、どうして俺は下郎なんだよ、どうして何が見えても解っても、旦那に何にも出来ないんだよ。
俺に出来るのは殺すことか生かすことか牙を折ることだけだ、
殺せば伊達の暴動は収まらない、生かせば旦那の思いがおさまらない、だけど牙はどうやっても折れない。
蔑まれる立場の意味って、高貴な人に手を出せば普通よりもずっとずっと屈辱を与えられる事じゃないの?
どうして逆になるんだい独眼竜?下郎のすることだから無視できるって、ねえ、何それ?
どうして逆になるんだい独眼竜?下郎のすることだから無視できるって、ねえ、何それ?
ああ悔しすぎて怒れもしねえよ、旦那、だから絶対こんな薄汚いことは解らないで、
飄々としてる俺の仮面を剥がさないで、
初恋は叶わないって、諦めてほかの女に惚れなよ、お願いだ!
俺は旦那さえ良くて、旦那だけが幸せならそれで十分な、ただの下郎、ただの忍び、ただの部下なんだから!
飄々としてる俺の仮面を剥がさないで、
初恋は叶わないって、諦めてほかの女に惚れなよ、お願いだ!
俺は旦那さえ良くて、旦那だけが幸せならそれで十分な、ただの下郎、ただの忍び、ただの部下なんだから!
「……お祝いなんだからさ、ちょっとはいい物食べたいじゃない?」
内心は一つも見せずに軽く言い切る。
旦那は頷いて、その拍子にぱたぱたと滴が散った。
頷いた首が項垂れてるまんまで持ち上がらない。
落っこちた熱そうな水分を畳が吸って、色が変わる。
「そうだ。お前はいつも、そう言っていた。だから、俺が妻を得る時も、子を得る時も、
誰よりもお前が一番、俺よりも喜んでくれると思っていたのだ。……佐助」
言葉がどんどん涙声になって、もの凄い濁音混じりで名前を呼ばれる。
「うん。泣くんじゃないよ、旦那」
もう、畳が駄目になっちゃうよ旦那。
「泣いておらぬ!」
ああもう前言撤回。やっぱり旦那はまだ子供だよ。俺より背丈はでっかく育ったってのに、旦那はさー。
仕方がないから短い髪をくるくる撫でた。
「世の中ってのは、結構ままならないものなんだよ、旦那」
口にするのが結構痛かった。
「解っている!」
鼻をすすりながら言っても、あんまり説得力ないよ。
旦那は涙目で、一生懸命に独眼竜を見てた。覚えていたいんだね、旦那。
忍びにはない必死さと哀切さが全身からこぼれ落ちてて、本当に若い恋だなあと思う。
ていうかね、俺もさ、結構楽しみにしてたよ。
上田城の虜30
内心は一つも見せずに軽く言い切る。
旦那は頷いて、その拍子にぱたぱたと滴が散った。
頷いた首が項垂れてるまんまで持ち上がらない。
落っこちた熱そうな水分を畳が吸って、色が変わる。
「そうだ。お前はいつも、そう言っていた。だから、俺が妻を得る時も、子を得る時も、
誰よりもお前が一番、俺よりも喜んでくれると思っていたのだ。……佐助」
言葉がどんどん涙声になって、もの凄い濁音混じりで名前を呼ばれる。
「うん。泣くんじゃないよ、旦那」
もう、畳が駄目になっちゃうよ旦那。
「泣いておらぬ!」
ああもう前言撤回。やっぱり旦那はまだ子供だよ。俺より背丈はでっかく育ったってのに、旦那はさー。
仕方がないから短い髪をくるくる撫でた。
「世の中ってのは、結構ままならないものなんだよ、旦那」
口にするのが結構痛かった。
「解っている!」
鼻をすすりながら言っても、あんまり説得力ないよ。
旦那は涙目で、一生懸命に独眼竜を見てた。覚えていたいんだね、旦那。
忍びにはない必死さと哀切さが全身からこぼれ落ちてて、本当に若い恋だなあと思う。
ていうかね、俺もさ、結構楽しみにしてたよ。
上田城の虜30




