死人が出ます。悲恋です。苦手な方は要注意。
戦は、負け戦だった。
「退避、退避ぃーっ!!」
誰かの声が響くと同時、いよいよその統率は乱れ、屍の数は増えていった。
誰かの声が響くと同時、いよいよその統率は乱れ、屍の数は増えていった。
「佐助ぇっ!お館様をお守りいたせ!!」
「旦那は!」
「此処で食い止める。命令だ、行けっ!」
命令。とあれば従わねばならない。
「お任せくださいな、旦那!」
置いていくことは少し躊躇われたが、しかし迷わず佐助は木々を飛んだ。
「旦那は!」
「此処で食い止める。命令だ、行けっ!」
命令。とあれば従わねばならない。
「お任せくださいな、旦那!」
置いていくことは少し躊躇われたが、しかし迷わず佐助は木々を飛んだ。
「佐助、幸村を迎えに行け」
ああ、もう。どうしてここの主従はこうなのだろう。
自分はその幸村から言われて守りに来たというのに、当の本人がこれだ。
「ならばお主に約束をしよう。わしは必ず逃げ延びる。この信玄が約束を違えるか」
「……もう、俺様行ったり来たりじゃないですか!」
ああ、もう。どうしてここの主従はこうなのだろう。
自分はその幸村から言われて守りに来たというのに、当の本人がこれだ。
「ならばお主に約束をしよう。わしは必ず逃げ延びる。この信玄が約束を違えるか」
「……もう、俺様行ったり来たりじゃないですか!」
しかし、その言葉は正直ありがたかった。
いくら殿で戦っていたとはいえ、遅すぎる幸村のことが気がかりだったからだ。
いくら殿で戦っていたとはいえ、遅すぎる幸村のことが気がかりだったからだ。
「幸村を連れて、共に帰って参るのじゃ!佐助ぇ!!」
信玄は無事逃げ延びたと、部下の忍が報告してきた。ならば、徳川は軍を引いただろう。
何せ日本一の兵が殿を務めているのだ。深追いは、得策ではない。
それなのに、幸村はまだ見えてこない。
「俺様が行くまで、ちゃんと生きててよ、旦那ぁ!」
縁起でもないが、心からそう願いを込めて叫んだ。
何せ日本一の兵が殿を務めているのだ。深追いは、得策ではない。
それなのに、幸村はまだ見えてこない。
「俺様が行くまで、ちゃんと生きててよ、旦那ぁ!」
縁起でもないが、心からそう願いを込めて叫んだ。
幸村は、佐助と別れたその場所のまま、多くの屍が横たわる中、ただ一人立っていた。
「旦那!」
ああ、よかった。生きていた。
安堵しながら、主の元へと飛んだ。
ああ、よかった。生きていた。
安堵しながら、主の元へと飛んだ。
「……佐助。お館様はご無事か」
「大丈夫。ちゃんと生きてるよ」
「……そうか、ならばよかった」
「ほら、旦那もいつまでもそこに立ってないで一緒に……っ!!」
「大丈夫。ちゃんと生きてるよ」
「……そうか、ならばよかった」
「ほら、旦那もいつまでもそこに立ってないで一緒に……っ!!」
ああ。どうして気づかなかった。
主からむせ返るほどの血の匂いがしていたというのに。
いつものように、返り血なのだろうと、どうして思い込んでしまった。
もっと早くに気づいて、もっと早くに迎えに行って。
そうしたら、そうしたならば。
主からむせ返るほどの血の匂いがしていたというのに。
いつものように、返り血なのだろうと、どうして思い込んでしまった。
もっと早くに気づいて、もっと早くに迎えに行って。
そうしたら、そうしたならば。
「旦那っ!」
ぐらりと倒れる幸村を、慌てて抱きかかえた。
真っ赤な命の雫が、熱を奪いながら流れていくのが見えた。
ぐらりと倒れる幸村を、慌てて抱きかかえた。
真っ赤な命の雫が、熱を奪いながら流れていくのが見えた。
そうしたならば、助けられたかもしれなかったのに。
いずれ生まれ来る日の為に12
いずれ生まれ来る日の為に12




